説明

画像処理装置、検査装置、測定装置、画像処理方法、測定方法

【課題】画素毎に、検出素子の個体差を考慮した校正を施す。
【解決手段】格子状に等間隔に配列された複数の検出素子61を有し、各検出素子61が検出した被写体としてのプリント基板Wの画像を画素毎に分解して出力する撮像ユニット20、40を備えている装置に適用される。個々の画素の個体差を表す個体差ファクタα、βを記憶し、記憶された個体差ファクタα、βに基づいて、当該検出素子61毎に線形な校正値を出力し、前記検出値校正処理部225が演算した校正値Iχcに基づいて、画素毎に目標物理量としての輝度値Bや材料厚さχを演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、検査装置、測定装置、画像処理方法、測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像やデジタル画像の処理においては、撮像された画像の輝度値または透過X線量に基づいて、被写体の材料厚さや形状等を正確に反映する技術が重要となる。かかる要請に応えるため、例えば特許文献1は、画面上で表示された画像の関心点を選択し、さらに画面に表示された濃度幅設定用のスケールから濃度幅を選択することにより、当該関心点における減弱度(attenuation level)Aを濃度中心値とする所望濃度幅の画像を表示する技術を開示する。減弱度ALは、撮像されたX線画像のカウント値nと、被写体の存在しない状態でのカウント値N0とを用いて式(1)の通り演算される。
【0003】
【数1】

【0004】
特許文献1の技術では、撮像時の減弱度ALを画素毎に記憶して、当該減弱度ALに基づく画像を表示装置に表示する一方、アクリル等の校正材の材料厚さとの相関関係を複数の撮影条件毎に予め記憶している。このように減弱度ALと、実在(組織)の尺度となる校正材の材料厚さとの相関関係が保持されていることから、画像の表示装置を操作して、関心領域の画像のコントラストを強調するウィンドウ処理を行っても、画像上の濃度と実在(組織)との関係を維持することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3221032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、画素毎に演算された減弱度ALに基づいて、校正材の材料厚さを演算していたが、検出素子が個々に有する個体差については、考慮されていなかった。仮に正常な検出素子であっても、検出素子のそれぞれに増幅部ゲインの個体差や、暗電流レベルの個体差等は、存在する。しかも、各検出素子の個体差は、非線形な特性を有する。そのため、特許文献1に開示された技術のように、仮に各画素で同一の撮影対象を同一の撮影条件で撮像したとしても、カウント値nが非線形な個体差を有することから、式(1)によって得られた減弱度ALもまた、画素毎にばらつくことになり、減弱度ALと相関のある材料厚さを正確に求めることができなくなるという不具合があった。
【0007】
本発明は、本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、画素毎の個体差をも考慮した画像処理装置、検査装置、測定装置、画像処理方法、測定方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、格子状に等間隔に配列された複数の検出素子を有し、各検出素子が検出した被写体の画像を画素毎に分解して出力する撮像ユニットを備えた画像処理装置において、個々の画素の個体差を表す個体差ファクタを記憶する個体差ファクタ記憶手段と、記憶された個体差ファクタに基づいて、各当該検出素子毎に線形な校正値を演算する校正手段と、前記校正手段が演算した校正値に基づいて、前記画素毎に目標物理量を演算する目標物理量演算手段とを備えていることを特徴とする画像処理装置である。この態様では、X線撮像ユニットまたは光学撮像ユニット等の撮像ユニットから検出素子が検出した画像が画素毎に分解され、その目標物理量が演算される。「目標物理量」は、被写体の厚さや、輝度値が好適な例である。この目標物理量の元になる検出値は、個々の検出素子が有する非線形な個体差によってばらついた値であるが、本態様では、個体差ファクタ記憶手段に記憶されている個体差ファクタに基づいて、校正手段が個々の検出素子毎に線形な校正値を出力する。そのため、目標物理量演算手段は、個々の検出素子の個体差の影響が除去された値となるので、演算される目標物理量は、精緻な値となる。「個体差ファクタ」は、増幅部ゲインや、暗電流レベルが例示されるが、それに限らない。
【0009】
好ましい態様において、同一の被写体を少なくとも2回撮像するように、前記撮像ユニットによる撮像動作を制御するシフト撮像制御手段を備え、前記シフト撮像制御手段は、撮像と撮像の間に、前の撮像で何れかの検出素子が検出した被写体に係る画素単位の部位を、後の撮像で他の検出素子が再度検出することができる移動量で、前記被写体と前記撮像ユニットとを、それらの対向方向と直交する方向に相対移動させる相対移動制御部と、前記撮像ユニットが出力した検出値を補完する補完処理手段とを含み、前記校正手段は、相対移動の前後における各撮像結果に基づいて得られる前記検出値からそれぞれ前記校正値を演算するものであり、前記目標物理量演算手段は、前記校正手段が演算した各校正値に基づいて、前記目標物理量を当該被写体の画素毎にそれぞれ演算するものであり、前記補完処理手段は、演算された目標物理量の平均値を当該被写体の画素毎に演算することにより、最初の撮像で取得できなかった画素の目標物理量を後の撮像で取得した目標物理量で補完するものである。この態様では、例えば、欠陥検出素子がある場合に、当該欠陥検出素子の検出値を他の正常な検出素子で補完することが可能になる。また、検出素子が、複数のパネルに分割されて配置された仕様であっても、パネル間の隙間を被写体と撮像ユニットとの相対移動後の撮像によって補完し、全体として一枚の大きな画像を得ることが可能になる。何れの場合においても、検出された出力が校正手段によって校正され、その校正値に基づいて目標物理量が演算されるので、補完される検出値ないし目標物理量は、極めて精緻なものとなる。
【0010】
好ましい態様において、前記撮像ユニットは、複数の前記検出素子が格子状に等間隔に配列されてなるパネルを、その面方向に複数並べて面一に配置した複合パネルからなり、隣り合う前記パネル同士で隣接する前記検出素子同士の間隔は、当該パネルにおける各検出素子の配列ピッチの整数倍である。この態様では、相対移動後の撮像によって、最初の撮像時に複合パネルの間に位置する被写体の部位を当該複合パネル内の画素数と同じ密度で補完することができる。
【0011】
好ましい態様において、各検出素子のうち、不良素子を検出する不良素子検出手段と、検出された不良素子の周囲にある正常な検出素子の検出値に基づいて、当該不良素子の検出値を補完する検出値補完手段とを備えている。この態様では、いわゆるドット飛びがハードウェア上で生じている場合であっても、周囲の検出素子の検出値に基づいて、不良素子の検出値を補完し、全体として欠陥のない画像を得ることができる。
【0012】
本発明の別の態様は、上述した画像処理装置と、前記画像処理装置が出力した前記目標物理量に基づいて、前記被写体の良否を判定する良否判定処理手段とを備えていることを特徴とする検査装置である。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、上述した画像処理装置を備えている測定装置であって、前記撮像ユニットは、当該検出素子でX線を検出して検出値を出力するX線撮像ユニットであり、所定の基準材を透過したX線の前記検出素子による検出値と前記基準材の材料厚さとの相関関係を表す基準値を前記検出素子毎に記憶する基準値記憶手段を備え、前記目標物理量演算手段は、前記校正値と前記基準値とに基づいて、当該検出値に対応する目標物理量を前記検出素子毎に求め、この求めた目標物理量を基準材相当の材料厚さとして出力するものであることを特徴とする測定装置である。この態様では、目標物理量演算手段が被写体の材料厚さを計測する計測手段として機能し、基準材相当の材料厚さが、校正手段によって演算された校正値に基づいて演算されるので、それぞれの個体差に拘わらず、各検出素子間で整合性のとれた正確な基準材相当の材料厚さを目標物理量として演算することができる。
【0014】
また、別の態様は、上述した測定装置において、前記基準材相当の材料厚さとしての目標物理量に対応した濃度データを記憶する濃度データ記憶手段と、前記画像処理装置が出力した前記目標物理量と、前記濃度データ記憶手段に記憶されている前記濃度データとに基づいて、前記被写体の画像を各検出素子の配列に対応した配列で表示する表示手段とを備えている。この態様では、校正値に基づいた精緻な目標物理量と、この目標物理量に対応する濃度データとに基づいて、精度の高い画像を表示することが可能になる。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、格子状に等間隔に配列された複数の検出素子を有し、各検出素子が検出した被写体の画像を画素毎に分解して出力する撮像ユニットと、前記撮像ユニットが撮像した画像を処理する画像処理手段とを備えた画像処理装置を用いた画像処理方法において、個々の画素の個体差を表す個体差ファクタに基づいて、各当該検出素子毎に線形な校正値を演算する校正ステップと、前記校正値に基づいて、前記画素毎に目標物理量を演算する目標物理量演算ステップとを備えていることを特徴とする画像処理方法である。
【0016】
好ましい態様の画像処理方法において、前記撮像ユニットによって同一の被写体を少なくとも2回撮像し、撮像と撮像との間に、前の撮像で何れかの検出素子が検出した被写体に係る画素単位の部位を、後の撮像で他の検出素子が再度検出することができる移動量で、前記被写体と前記撮像ユニットとを、それらの対向方向と直交する方向に相対移動し、相対移動の前後における各撮像結果に基づいて得られる検出値からそれぞれ前記校正値を演算し、演算された各校正値に基づいて、前記目標物理量を当該被写体の画素毎にそれぞれ演算し、演算された目標物理量の平均値を当該被写体の画素毎に演算することにより、最初の撮像で取得できなかった画素の目標物理量を後の撮像で取得した目標物理量で補完するステップを含む。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、上述した画像処理方法を用いた測定方法において、前記撮像ユニットの当該検出素子でX線を検出して検出値を出力し、前記校正値と、所定の基準材を透過したX線の前記検出素子による検出値と前記基準材の材料厚さとの相関関係を表す基準値とに基づいて、当該検出値に対応する基準材の材料厚さを前記検出素子毎に求め、この求めた値を基準材相当の材料厚さの目標物理量として演算するステップを含んでいることを特徴とする測定方法である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、X線撮像ユニットまたは光学撮像ユニット等の撮像ユニットから検出素子が検出した検出値から目標物理量を演算する際に、当該検出値の非線形な出力を線形な出力に校正し、目標物理量を演算する基礎としているので、個々の検出素子の個体差の影響を除去した校正値に基づいて、精緻な目標物理量が演算される結果、複数の検出素子間で整合性がとれた正確な画像作成や、被写体の計測が可能になるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る装置の断面略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るパネルの平面略図である。
【図3】図2のパネルを複合した複合パネルの平面略図である。
【図4】図1の実施形態に係るブロック図である。
【図5】図1の実施形態に係るER図である。
【図6】図1の実施形態に係る検出素子の試験例を示すフローチャートである。
【図7】図1の実施形態に係る検査例を示すフローチャートである。
【図8】図7の続きを示すフローチャートである。
【図9】図7の検出値校正処理サブルーチンを示すフローチャートである。
【図10】材料の材料厚さと透過X線量との関係を示すグラフである。
【図11】図9の補完処理サブルーチンを示すフローチャートである。
【図12】不良素子の検出値を補完する例を示す説明図であり、(A)は、図の凡例、(B)は、欠陥素子と正常な素子とが混在している状態を示す具体例、(C)は、補完された状態を示す例である。
【図13】図1の実施形態に係るシフト撮像の例を示すフローチャートである。
【図14】図13の続きを示すフローチャートである。
【図15】図14の続きを示すフローチャートである。
【図16】図1の実施形態に係るシフト撮像の例を単純にモデル化して示す最初の撮像状態を示す略図である。
【図17】図1の実施形態に係るシフト撮像の例を単純にモデル化して示す2番目の撮像状態を示す略図である。
【図18】図1の実施形態に係るシフト撮像の例を単純にモデル化して示す3番目の撮像状態を示す略図である。
【図19】X線量と出力信号との相関関係を示すグラフである。
【図20】X線量と出力信号との相関関係において、プロファイルの繰り返し性を示すグラフであり、(A)は良品の特性、(B)は不良品の特性である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
まず、図1および図4を参照して、本発明の一実施形態による画像処理装置100の構造について説明する。なお、本実施形態に係る画像処理装置100は、本発明の「検査装置」や「測定装置」の一例でもある。この画像処理装置100は、印刷処理を含む表面処理が施された被写体としてのプリント基板Wを撮像し、はんだ部分の高さの計測や、良否判定等を処理する機能を有する。
【0022】
図1を参照して、本実施形態に係る異物検査装置は、ハウジング10内に検査対象となるプリント基板Wを載置するステージ11を備えている。ステージ11は、コンベア機構で具体化されており、図略の駆動機構によって、所定の水平方向に沿う搬送方向と、この搬送方向と直交する水平方向とに移動可能になっている。以下の説明では、ステージ11の搬送方向に沿う水平方向をX方向、これと直角な水平方向をY方向、垂直方向をZ方向という。ステージ11は、所定の検査位置でプリント基板Wを停止させて保持することが可能なように構成されている。また、ステージ11は、検査が終了したプリント基板Wを所定の検査位置から搬送方向に搬送して、画像処理装置100からプリント基板Wを搬出することが可能なように構成されている。
【0023】
ステージ11の搬送方向上流側には、プリント基板Wをステージ11に搬入する搬入コンベア12が設けられている。また、ステージ11の搬送方向下流側には、プリント基板Wをステージ11から搬出する搬出コンベア14が設けられている。搬入コンベア12は、所定の工程を終了した後、プリント基板Wを一枚ずつステージ11上に搬入する。搬出コンベア14は、画像処理装置100内で検査処理が終了したプリント基板Wをステージ11から搬出する。
【0024】
ハウジング10内には、プリント基板Wの表面を撮像し、そのアナログ信号を出力する光学カメラ20と、光学カメラ20に撮像されるステージ11上のプリント基板Wに光を照明する照明装置30とを有している。これら光学カメラ20、照明装置30は、図略の駆動機構によって、ステージ11の上方で、XYZ方向に移動可能に構成されている。
【0025】
光学カメラ20は、例えば、CCDカメラ等から構成されている。光学カメラ20は、検査位置の真上で停止し、その直下にレンズ21を向けて、ステージ11上のプリント基板Wを撮像するように構成されている。
【0026】
他方、照明装置30は、光学カメラ20のレンズ21が上方から臨む開口部321が頂部に形成されたドーム状形状を呈しており、ドームの内面側には、上下に分割された複数の照明が設けられている。具体的には、開口部321の設けられた頂点側から順に、上段照明部322と、中段照明部323と、下段照明部324とが設けられており、それぞれの照明部322〜324には、複数の白色LEDが周方向に配設されている。また、上段照明部322には、赤外線照明光を照射する赤外線照明が併設されている。従って、照明装置30からプリント基板Wに対して照射された照明光を用いて、光学カメラ20は、開口部321からプリント基板Wの上面を撮像し、2次元(平面)に係るアナログ信号を出力するように構成されている。この光学カメラ20による撮影で、後述する白色LEDによる照明光の下では赤色R、緑色G、青色Bに対応したRGBの各画像が得られ、赤外線照明光の下では、赤外画像が得られる。本実施形態では、光学カメラ20で撮像後に生成されるデジタル画像の輝度値のうち、赤色R、緑色G、青色Bの各輝度値を平均した輝度平均値を演算のパラメータにしている。これら輝度平均値は、制御ユニット200の画像処理部220によって、画素毎に処理される。
【0027】
次に、ハウジング10内には、ステージ11上のプリント基板Wに対してX線を照射するX線放射装置40と、X線放射装置40からX線が照射されたプリント基板WのX線画像を撮影するX線カメラ50とを備えている。
【0028】
X線放射装置40は、筒状のコリメータ本体に対して発光器と、発光器から放射されるX線を透過させる細管とを装着し、細管を透過したX線をコリメータ本体から放射する構成のものである。X線放射装置40は、図略のX線放射装置駆動ユニットによって、ハウジング10内に移動可能に担持され、ステージ11の上方からX線をステージ11上のプリント基板Wに放射するものである。X線放射装置40から放射されたX線は、一部がプリント基板W等に吸収されて減衰した状態でプリント基板Wを透過する。
【0029】
X線カメラ50は、ステージ11上のプリント基板Wを透過したX線を受けることにより、当該プリント基板WのX線画像を撮影するものである。X線カメラ50は、図略のX線カメラ駆動ユニットによってハウジング10内に移動可能に担持され、ステージ11の下方でプリント基板Wを透過したX線を受けるものである。本実施形態において、X線カメラ駆動ユニットは、X線放射装置40によるX線の放射方向に対応して、X線カメラ50をXYZ方向に変位することができるようになっている。X線カメラ50は、撮像したX線画像のデータを制御ユニット30に出力するように構成されている。
【0030】
X線撮像時では、X線放射装置40やX線カメラ50と干渉しないように、それぞれの駆動ユニットによって、光学カメラ20や照明装置30がハウジング10内の適所に退避することができるようになっている。また、逆に、光学カメラでの撮像時では、X線放射装置40やX線カメラ50が、それぞれの駆動ユニットによって、ハウジング10内の適所に退避することができるようになっている。
【0031】
ところで、光学カメラ20やX線カメラ50には、検出した光またはX線を電気信号に変換する変換素子が設けられている。各変換素子は、それぞれ光用またはX線用の検出素子をマトリックス状に配列したパネル60を組み合わせたものである。このパネル60について、共通の仕様を説明する。
【0032】
図2を参照して、パネル60は、複数の検出素子61を備えている。各検出素子61は、縦横が同じピッチPtでマトリックス状に並んでいる。
【0033】
詳しくは後述するように、各検出素子61は、検出した輝度値またはX線量に対応する検出値Yを画素毎に制御ユニット200に出力するように構成されている。
【0034】
次に、図3を参照して、上述したパネル60を複数組み合わせた複合パネルPLを構築することも可能である。複合パネルPLは、複数のパネル60を縦横に同じ間隔を隔ててマトリックス状に並べて構成されている。複合パネルPLのパネル枚数は、4枚に限らず、2枚でも6枚でもよい。
【0035】
隣り合うパネル60、60同士で隣接する検出素子61、61同士の間隔Pdは、当該パネルにおける各検出素子61の配列ピッチPtの整数倍であり、図示の例では、2倍(Pd=2Pt)になっている。無論、間隔PdをPtと等しくしてもよい。或いは、Ptの三倍に設定してもよい。制御ユニット200は、複合パネルPL全体で各検出素子61を一意に特定することのできる識別番号Eで、各検出素子61の出力や、検出素子61自身を管理することができるようになっている。
【0036】
光学カメラ20やX線カメラ50で撮像された画像は、制御ユニット200で処理された後、表示ユニット70(図4参照)に表示されるようになっている。表示ユニット70は、例えば、液晶ディスプレイで具体化され、制御ユニット200の処理内容を表示するものである。また、表示ユニット70には、図略のポインティングディバイス等、入力装置が接続されており、オペレータが適宜、記憶装置300に記憶されたプログラムに従って、必要な設定やデータを入力することができるようになっている。
【0037】
図4を参照して、画像処理装置100は、制御ユニット200によって制御されるように構成されている。制御ユニット200は、ステージ制御部210、コンベア制御部211、光学カメラ制御部211、照明制御部213、X線放射装置制御部214、X線カメラ制御部215、並びに表示制御部216を論理的に備えている。また、後述する測定処理や検査処理等を実行するために、画像処理部220、計測処理部221、良否判定処理部222、GUI処理部223、不良素子検出処理部224、検出値校正処理部225、目標物理量演算処理部226、検出素子補完処理部227、並びにシフト撮像処理部228を論理的に構成している。
【0038】
制御ユニット200は、論理演算を実行するCPU、CPUを制御するプログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、装置の動作中に種々のデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、並びにフログラムや種々のデータ(パラメータ)を記憶する補助記憶装置等で構成される記憶装置300を備えている。これらのモジュールを論理的に構成することにより、本実施形態に係る制御ユニット200は、光学カメラ20による撮像やX線カメラ50等によるX線撮像の撮像処理を制御する撮像制御部を構成している。
【0039】
各制御部41〜46は、記憶装置300に記憶されているプログラムやデータに従って、マイクロプロセッサが処理を実行することにより、ステージ11、コンベア12および14、光学カメラ20、照明装置30、X線放射装置40、X線カメラ50、並びに表示ユニット70等を制御する論理的なモジュールである。
【0040】
各処理部220〜228は、記憶装置300に記憶されているプログラムやデータに従って、マイクロプロセッサが処理を実行することにより、光学カメラ20またはX線カメラ50で撮像した際に出力される信号に基づいて、当該プリント基板Wの撮像、計測、検査、表示を行うための論理的なモジュールである。
【0041】
画像処理部220は、後述する記憶装置300のデータベースに基づいて、撮像されたアナログ画像やX線画像を画素毎に処理してデジタル化し、所定の撮像データを生成するためのものである。本実施形態においては、この画像処理部220が、検出値Yを補完する補完処理部を兼ねている。
【0042】
計測処理部221は、画像処理部220によって処理された撮像データに基づいて、プリント基板Wのはんだ部分の高さを計測するためのものである。
【0043】
良否判定処理部222は、画像処理部220によって処理された撮像データに基づいて、撮像されたプリント基板Wが良品か否かを判定するためのものである。
【0044】
GUI処理部223は、表示制御部216の処理内容に基づき、表示ユニット70に種々のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を表示する機能を奏するものである。本実施形態に係るGUI処理部223は、表示された画像の濃度を変更するための濃度スケールを表示することができるようになっている。
【0045】
不良素子検出処理部224は、複合パネルPLに採用されている検出素子61のうち、不良品を検出するものである。検出素子61の不良の態様としては、出力信号が全くないもの、出力信号が常に最高値であるもの、或いは、同一条件での撮像であるにも拘わらず、出力信号が異なるもの、X線量と出力信号との相関関係グラフが少なくとも一部で規定の傾きを有しないもの(図19の特性D1。同図の特性G1、G2は、良品の特性を示す。)、プロファイルの繰り返し性が低いもの(図20(B)参照。図20(A)は、繰り返し性が良好であるものを示す。)等が例示される。本実施形態では、記憶装置300に不良判定用のプログラムを設けて、検出素子61の良否判定を実行できるように構成されている。そして、不良と判定された検出素子61については、マスキングをかけて、撮像時に利用しないこととしている。
【0046】
検出値校正処理部225は、後述するフローチャートにより、検出素子61が検出した検出値Yの非線形な個体差を校正するモジュールである。本実施形態においては、この検出値校正処理部225が、本発明の校正手段の一例である。
【0047】
目標物理量演算処理部226は、検出値校正処理部225が演算した校正値Iχcに基づいて、画素毎に材料厚さχや輝度値B等の目標物理量を演算するためのモジュールである。
【0048】
検出素子補完処理部227は、不良と判定された検出素子61が出力すべき検出値Yを他の正常な検出素子61の検出値Yで補完するためのモジュールである。この検出素子補完処理部227の動作は、検出値校正処理部225により校正された値に基づいて実行される。
【0049】
シフト撮像処理部228は、シフト撮像のために、同一のプリント基板Wの撮像要部を少なくとも2回撮像するように、光学カメラ20やX線カメラ50等の撮像ユニットによる撮像動作を制御するためのモジュールである。ここでシフト撮像とは、一回の撮像で欠落した画像を補うために、撮像位置を変更して同一の被写体を複数回撮像する方法をいう。詳しくは後述するフローチャートで実現されるように、本実施形態においてシフト撮像処理部228は、撮像と撮像の間に、前の撮像で何れかの検出素子61が検出したプリント基板Wの撮像要部に係る画素単位の部位を、後の撮像で他の検出素子61が再度検出することができる移動量で、プリント基板Wの撮像要部と撮像ユニットとを、それらの対向方向(図示の例では、Z方向)と直交する方向(XY方向)に相対移動させる相対移動制御部と、検出値Yを補完する補完処理部とを論理的に含んでいる。
【0050】
次に、図5を参照して、本実施形態では、撮像されたプリント基板Wの検査や測定、画像処理を施すための種々のデータを記憶したテーブル301〜310が登録されている。各テーブル301〜310は、ここで、「テーブル」とは、2次元マトリックス(行と列)でデータを保存する記憶領域のことをいい、以下の説明では、テーブルの列を項目、テーブルの実現値(列に割り当てられる実際の値)をタプルという。また、図において、(PK)は主キーを、(FK)は外部キーを、それぞれ表わしている。主キーは、テーブル内において、タプルを一意に識別する属性である。外部キーは、主キーと同じ値を持つことによって、当該主キーを有するテーブルのデータを参照するためのものである。さらに、図中の矢印は、テーブル間の関係(リレーションシップ)を表わしており、矢印の終点側のテーブルにある外部キーが矢印の起点側のテーブルにある主キーを参照していることを示している。
【0051】
まず、記憶装置300には、各カメラ20、50に採用される複合パネルPLのデータを格納するパネルテーブル301が設けられている。このパネルテーブル301には、項目として、パネル60(複合パネルPLに用いられているものを含む)を一意に特定するパネル識別番号と、当該パネル60におけるX座標の上限値を示すX座標上限値Nxと、当該パネル60におけるY座標の上限値を示すY座標上限値Nyとが含まれている。従って、各項目に保存されるタプルに基づいて、パネル60毎に検出素子61の総数を調べることが可能になる。
【0052】
パネルテーブル301には、検出素子テーブル302が関連づけられている。検出素子テーブル302は、項目として、パネルテーブル301と関連づけるための項目{パネル識別番号}の他、検出素子識別番号を複合パネルPL全体の中から一意に特定するための検出素子識別番号と、マスキングフラグと、増幅部ゲインαと、暗電流βとが含まれている。マスキングフラグは、初期値は、Falseとされ、当該検出素子が不良と判定された場合にTrueとされる。この結果、撮像時には、不良と判定された検出素子の出力を演算対象から外すことが可能になる。また、{増幅部ゲインα、暗電流β}は、検出素子61の個体差を校正するための個体差パラメータの一例を示しており、これらのデータが実験等に基づいて、予め検出素子テーブル302に保存されることにより、制御ユニット200は、個々の検出素子61の個体差を校正することが可能となる。
【0053】
次に、本実施形態では、撮像条件を保存する撮像条件テーブル303が含まれている。これは、画像処理をする際に、撮像条件によって、同一のプリント基板Wを同一の装置で撮像した場合でも減弱度等が異なることに鑑み、パラメータとして利用することとしているのである。撮像条件テーブル303には、撮像条件識別番号によって、タプルを特定することができるようになっている。
【0054】
次に、撮像された画像を保存するために、記憶装置300には、画像データテーブル304と、画像データテーブル304に関連づけられた画素データテーブル305が登録されている。画像データテーブル304は、項目として、一回の撮像で得られた画像を一意に特定するための画像識別番号と、撮像条件識別番号と、シフトカウンタとを含んでいる。撮像条件識別番号は、画像識別番号を撮像条件テーブル303と関連づけるための外部キーであり、このキーを項目に含ませることにより、撮像された画像がどのような撮像条件で撮像されたのか、特定することが可能になる。また、シフトカウンタは、同一のプリント基板Wを所定の条件下で複数回撮像した場合に、その回数をカウントするためのものであり、初期値は1である。
【0055】
次に、画素データテーブル305は、画像毎に画素を管理するためのテーブルであり、項目として、画像識別番号と、画素識別番号と、検出値Yと、校正値Iχcと、輝度値Bと、検出素子識別番号とを含んでいる。画像識別番号を項目として含み、且つ主キーとすることで、画像と画素とを関連づけて、一意に画素を特定することが可能となる。検出値Yは、検出素子テーブル302が出力したデータである。この検出値Yの個体差は、非線形である。本実施形態では、画素データテーブル305に検出素子識別番号が設けられているので、何れの画素の検出値Yが何れの検出素子の検出結果によるものであるかを特定することができる。次に、校正値Iχcは、検出値Yに含まれる非線形な個体差を校正した値である。この校正値Iχcは、画像処理部220が、当該画素の輝度値や材料厚さなどの目標物理量を決定するための基礎となる。この校正値Iχcを画素毎に保存することにより、画素毎に検出素子61の個体差を演算した校正値Iχcで、所定の目標物理量を演算することが可能となる。
【0056】
次に、本実施形態では、基準材データテーブル306が登録されている。この基準材データテーブル306は、撮像された画像を表示ユニット70で表示したときに、表示された任意のエリアの濃度を変更する場合、そのエリアの高さが、プリント基板の何れの部分の高さと対応するかを関連づける基準となる材質(基準材)を保存するものである。この基準材データテーブル306に保存される基準材としては、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、銅が好適な例である。
【0057】
次に、記憶装置300には、撮像条件テーブル303並びに基準材データテーブル306と関連づけられる基準材厚さ変換テーブル307が登録されている。この基準材厚さ変換テーブル307は、項目として、撮像条件識別番号、透過X線量Iχ、基準材識別番号、並びに基準材厚さtを含んでおり、撮像条件と、透過X線量Iχと、基準材とが特定された場合に、その条件に適合する基準材の厚さtが特定されるようになっている。
【0058】
次に、記憶装置300には、濃度設定をするためのX線画像濃度設定テーブル308と、光学画像濃度設定テーブル309とが設けられている。これらのテーブル308、309は、何れも検出された出力に応じて濃度を特定するための項目{設定識別番号、濃度}を有している。また、出力に関する項目としては、X線画像濃度設定テーブル308については、透過X線量Iχが、光学画像濃度設定テーブル309については、輝度値Bが、それぞれ含まれている。
【0059】
次に、記憶装置300には、表示ユニット70に画像を表示するために必要なデータを登録する表示データテーブル310が登録されている。この表示データテーブル310は、項目として、CRT表示座標、撮像識別番号、画素識別番号、表示輝度値、撮像条件識別番号、基準材識別番号、透過X線量Iχ、設定識別番号とを含んでおり、各外部キーに対応する画像(画素)データテーブル304、305、基準材厚さ変換テーブル307、設定テーブル308、309と関連づけられている。この結果、表示ユニット70の画面上で表示された画像の関心点を選択し、さらに画面に表示された濃度幅設定用のスケールから濃度幅を選択することにより、当該関心点における透過X線量Iχに基づく所望濃度幅の画像を表示することが可能になる。
【0060】
次に、検出素子61の試験処理の一例について説明する。
【0061】
図6を参照して、検出素子61の試験処理では、マスキングの決定と個体差パラメータ(増幅部ゲインα、暗電流β)の取得が実行される。まず、検出素子61の識別番号Eが初期化されて(ステップS1)、動作試験が実行される(ステップS2)。上述したように、検出素子61の不良態様は、出力信号が全くないもの、出力信号が常に最高値であるもの、或いは、同一条件での撮像であるにも拘わらず、出力信号が異なるものであることから、材料厚さχが0のときのX線量での反応や、所定の材料厚さχのときの検出性能、並びに、同一被験物を検出したときの検出精度の高さ等が試験され、個々の試験結果に基づいて、良否判定制御ユニット200の不良素子検出処理部224によってなされる。本実施形態では、この動作試験において、個々の検出素子61の個体差パラメータについても検出する。
【0062】
制御ユニット200は、記憶装置300に記憶されたプログラムに従って、検査された検出素子61の良否判定を実行し(ステップS3)、仮に良否判定において良品と判断された場合、制御ユニット200は、動作試験S2において検出された個体差パラメータを該当タプルに保存する(ステップS4)。他方、仮に不良であった場合には、検出素子テーブル302の該当タプルについて、マスキングフラグをTrueに更新する(ステップS5)。
【0063】
ステップS4またはステップS5が終了した後、制御ユニット200は、検出素子61の識別番号Eをインクリメントし(ステップS6)、残余の検出素子61の有無を判定する(ステップS7)。仮に全ての検出素子61の試験が終了している場合には、プログラムを終了し、未試験の検出素子61がある場合には、ステップS2に移行して、上述した処理を繰り返す。
【0064】
上述した処理により、全ての検出素子について、良否が判定され、不良品については、マスキングが施されて、検出値Yの精度が担保される。なお、マスキングされた検出素子が出力すべき検出値Yについては、詳しくは後述するように、良品と判定された他の検出素子の検出値Yに基づいて補完される。
【0065】
次に、図7および図8を参照して、試験結果を終了した装置によるプリント基板Wの検査工程例について説明する。なお、図7および図8に示した例は、図2のパネル60単体でプリント基板WをX線検査した場合である。
【0066】
まず、検査工程のプログラムを実行することにより、制御ユニット200は、入力画面を表示する(ステップS20)。この入力画面には、プリント基板Wの品番、プリント基板Wの処理枚数Niが入力されるようになっている。なお、表示画面には、プログラムを実行するための実行ボタンと、設定をキャンセルして図略のメニュー画面に遷移するためのメニューボタンとが設けられている。
【0067】
制御ユニット200は、ステップS20の入力画面を表示した後、全ての入力が終了するのを待機する(ステップS21)。ステップS21の判定は、実行ボタンが操作されたことをトリガーとして判定される。図7では省略されているが、入力に不備がある状態(入力漏れ、または誤入力)で実行ボタンが操作された場合には、エラー表示を行い、エラーの内容を表示して、オペレータに再入力を促すように構成されている。また、このタイミングでメニューボタンが操作されると、設定をキャンセルして、図略のメニュー画面に遷移する。
【0068】
入力が完了したと判定した場合、制御ユニット200は、設定された内容に基づいて、ワーク処理枚数Ni、必要写真枚数Nj、並びにパネル60のX座標、Y座標の上限値Nx、Nyを取得する(ステップS22)。ここで、ワーク処理枚数Niは、検査対象となるプリント基板Wの枚数である。必要写真枚数Njは、一つのプリント基板Wについて、必要な画像の枚数である。
【0069】
次いで、制御ユニット200は、ワーク処理枚数Niのカウント変数Iを1に初期化し(ステップS23)、ステージ11や搬出入コンベア12、14を駆動してI番目のプリント基板Wを搬入する(ステップS24)。
【0070】
次に、制御ユニット200は、必要写真枚数Njのカウント変数Jを1に初期化し(ステップS25)、光学カメラ20や照明装置30を撮像位置から退避させ、X線放射装置40とX線カメラ50とを所定の撮像位置に移動する(ステップS26)。次いで、制御ユニット200は、ステップS26で撮像位置に移動したX線放射装置40とX線カメラ50とによってX線撮像を実行する(ステップS27)。次いで、撮像されたX線画像について、検出値Yの校正処理サブルーチンが実行される(ステップS28)。このサブルーチンS28では、検出素子61毎の検出値Yが校正される。次いで、前記校正値Iχcに基づいて、制御ユニット200の計測処理部221は、目標物理量としての材料厚さχを演算する(ステップS29)。
【0071】
図8を参照して、次いで制御ユニット200の良否判定処理部222は、演算された材料厚さχの良否を判定する(ステップS30)。この判定結果と取得された画像は、濃度設定テーブル308または309の設定値に基づき、表示ユニット70に表示される(ステップS31)。なお、図示の例では、GUI処理部223によって、画像の横に濃度を変更するための濃度幅設定用スケールがGUIで表示される。従ってオペレータは、画面上で表示された画像の関心点を選択し、次いで画面に表示された濃度幅設定用スケールから濃度幅を選択することにより、当該関心点を濃度中心値とする所望濃度幅の画像に変更することができるようになっている。
【0072】
画像表示を実行した後、制御ユニット200は、カウント変数Jをインクリメントし(ステップS32)、必要な写真枚数の写真を撮影したか否かを判定する(ステップS33)。この判定で、仮に必要な写真が残っている場合には、ステップS26に移行して上述した処理を繰り返す。他方、必要な写真を全て取り終えた場合には、プリント基板Wの搬出動作を実行する(ステップS34)。次いで、制御ユニット200は、カウント変数Iをインクリメントし(ステップS35)、必要なプリント基板Wを全て検査したか否かを判定する(ステップS36)。仮に検査が必要な全てのプリント基板Wを検査し終えている場合には、フログラムを終了し、未検査のプリント基板Wがある場合には、ステップS24に戻って上述した処理を繰り返す。
【0073】
次に、図7の検出値校正処理サブルーチンS28について、図9を参照しながら説明する。
【0074】
図9を参照して、検出値校正処理サブルーチンS28では、検出素子61の識別番号Eが1に初期化されて(ステップS280)、当該識別番号Eに係るタプルが読み取られる。図5に示したように、検出素子テーブル302には、マスキングフラグが含まれており、このマスキングフラグの値によって、当該検出素子61の良否を判定することができる。制御ユニット200は、識別番号がEの検出素子について、マスキングフラグの値がFalseであるか、すなわち、良品であるか否かを判定する(ステップS281)。仮に、マスキングフラグの値がTrueである場合、すなわち、当該検出素子61が不良と判定されている場合、後述する画像補完処理サブルーチンS290が実行される。
【0075】
他方、マスキングフラグの値がFalseである場合、すなわち、当該検出素子61が良品である場合、画素データテーブル305から、E番目の検出素子による検出値Yを読み取る(ステップS282)。
【0076】
次いで、制御ユニット200は、読み取った検出値Yと、E番目の検出素子について保存されている校正パラメータを検出素子テーブル302から読み取り(ステップS283)、これらの値に基づいて、校正値としての透過X線量Iχcを演算し、保存する(ステップS284)。この校正値Iχcの演算により、検出値Yが有する非線形な個体差が校正されるので、個々の検出素子61の個体差に拘わらず、校正値Iχcは、一様にプリント基板Wの特性を表すことができる。すなわち、同一条件で同一のプリント基板Wを撮像した場合には、同一の校正値Iχcを得ることができ、その結果、同一の濃度データを得ることが可能になる。
【0077】
次いで、制御ユニット200は、識別番号Eをインクリメントし(ステップS285)、全ての検出素子61について検出値Yの校正が終了したか否かを判定する(ステップS286)。仮に未処理の検出素子61がある場合には、ステップS282に移行して上述した処理を繰り返す。また、全ての検出素子61について、検出値Yの校正が終了した場合には、メインルーチンに復帰する。
【0078】
次に、本実施形態に係る校正のメカニズムについて、サンプル例を用いて、説明する。
【0079】
一般に、X線撮像において、X線の初期強度をI0、製品の厚さをχ、線形吸収係数をμとすると、透過X線量Iχは、
【0080】
【数2】

【0081】
で表される。例えば線形吸収係数μが約0.5の場合、厚さχを0から8まで9段階とると、表1のような演算結果になり、図10のようなグラフが得られる。
【0082】
【表1】

【0083】
次に、サンプルとして、a〜hの8つの検出素子61の検出値Yを調べることとする。各検出素子61に、増幅部のゲインαや、暗電流βレベルの個体差を表2の通り設定した場合、材料厚さχ=0における各検出素子61の検出値Yは、同表2の通りとなる。
【0084】
【表2】

【0085】
このような条件下で、材料厚さχ=2.0の製品Aをこれらa〜hの8つの検出素子61で検出した場合、その検出値Yは、表3の通りとなる。
【0086】
【表3】

【0087】
ここで、aという検出素子61の検出値Yを基準に考えると、各検出素子61の検出結果に基づく材料厚さχの値は、表3の通りばらつくこととなる。
【0088】
各検出素子61による検出値Yや、材料厚さχは、非線形であることから、表3の右端欄に示したように、それらの平均値を求めても、正確な検出値Yにはならないことがわかる。
【0089】
このような現象は、特許文献1に開示された先行技術でも同様であり、減弱度ALは、表4の通りばらつくことがわかる。
【0090】
【表4】

【0091】
特許文献1の技術においても、減弱度ALにばらつきが生じるのは、検出されたカウント値n自体が非線形の個体差を含んでいるからであると考えられる。
【0092】
これに対して本実施形態においては、図9に示したフローチャートにおいて、検出値Yと、事前に保存されている校正パラメータとによって、検出値Yが校正されるので、表5に示したように、個体差に拘わらず、一様な校正値Iχcを得ることが可能となる。
【0093】
【表5】

【0094】
以上の原理に基づき、個体差を有するa〜hの検出素子61を用いて、材料厚さχの異なる製品A〜Eを検出した場合、校正値Iχcを求めることによって、表6に示したように、精緻に製品A〜Eの材料厚さχを演算できることが確認された。
【0095】
【表6】

【0096】
上述のような校正処理は、図9の画素補完処理サブルーチンS290においても、実施されている。
【0097】
図11並びに図12を参照して、画素補完処理サブルーチンS290を実行する際、制御ユニット200は、E番目の検出素子の周囲にある正常な検出素子61(a〜d、f〜h)を特定する(ステップS291)。具体的には、E番目の検出素子の周囲にある検出素子のマスキングフラグを参照し、マスキングフラグの値がFalseのものを選定してその個数Nnをカウントする。図12の例の場合、個数Nnは、7である。
【0098】
次に、制御ユニット200は、正常な検出素子61のカウント変数Nを1に初期化し(ステップS292)、特定された正常な検出素子61のうち、N番目の検出素子61による検出値Yを読み取る(ステップS293)。図12の例の場合、N番目の検出素子61がaであるとすると、その検出値Yは、425である。次いで、この検出素子61に設定された校正パラメータを検出素子テーブル302から読み取る(ステップS294)。次いで、検出値Yと校正パラメータとによって、透過X線量Iχを校正値Iχcとして演算し、その値を画素データテーブル305に保存する(ステップS295)。なお、正常な検出素子61として判定されたもののうち、既に校正値Iχcが演算済である場合には、上述したステップS293〜S295を省略するようにしてもよい。次いで、制御ユニット200は、カウント変数Nをインクリメントし(ステップS296)、正常と特定された検出素子61の全てについて校正値Iχcが演算されたか否かを判定する(ステップS297)。仮に未処理の検出素子61がある場合には、ステップS293に戻って上述した処理を繰り返し、全ての検出素子61の処理が終了した場合には、特定された正常な検出素子の校正値Iχcを個数Nnで平均する(ステップS298)。図12の場合、検出素子61(a〜d、f〜h)の校正値Iχcは、それぞれ図12(B)に示すように、0.368、0.315、0.393、0.368、0.368、0.382、0.174であるから、その平均値は、0.338である。そして、本実施形態では、この平均値が図12(C)に示されるように、eの検出素子61の校正値Iχcとされるので、メインルーチンでの演算によって、材料厚さχは、2.16と演算される。
【0099】
上述した図9以下のフローチャートでは、X線によるプリント基板Wの検査対象の高さを演算する方法として例示したが、検出値校正処理サブルーチンS280や補完処理サブルーチンS290は、光学カメラ20に用いられる光電パネルに適用可能であることは、いうまでもない。
【0100】
次に、図13から図15のフローチャート並びに図16から図18の模式図を参照しながら、本実施形態に係るシフト撮像について説明する。例えば、図3のような複合パネルを採用した際、パネル60、60間に欠落画像が生じることになるが、この欠落画像を複数の撮像で補完することが可能となる。
【0101】
図13を参照して、検査工程のプログラムを実行することにより、制御ユニット200は、図7の制御と同様な入力画面を表示する(ステップS50)。この入力画面には、プリント基板Wの品番、プリント基板Wの処理枚数Niが入力されるようになっている。なお、表示画面には、プログラムを実行するための実行ボタンと、設定をキャンセルして図略のメニュー画面に遷移するためのメニューボタンとが設けられている。
【0102】
制御ユニット200は、ステップS50の入力画面を表示した後、全ての入力が終了するのを待機する(ステップS51)。ステップS51の判定は、実行ボタンが操作されたことをトリガーとして判定される。図13では省略されているが、入力に不備がある状態(入力漏れ、または誤入力)で実行ボタンが操作された場合には、エラー表示を行い、エラーの内容を表示して、オペレータに再入力を促すように構成されている。また、このタイミングでメニューボタンが操作されると、設定をキャンセルして、図略のメニュー画面に遷移する。
【0103】
入力が完了したと判定した場合、制御ユニット200は、設定された内容に基づいて、ワーク処理枚数Ni、必要写真枚数Nj、シフト回数Nk、並びにパネル60のX座標、Y座標の上限値Nx、Nyを取得する(ステップS52)。ここで、シフト回数Nkは、シフト撮像において、プリント基板Wと撮像ユニットとが、それらの対向方向(Z方向)と直交する方向(XY方向)に相対移動する回数である。このシフト回数は、複合パネルPLの仕様等によって決定されるものである。本実施形態においては、撮像ユニットの装着時に、シフト回数Nkが、シフトする方向とシフト量とともに、事前に制御ユニット200にティーチングされるようになっている。
【0104】
次いで、制御ユニット200は、ワーク処理枚数Niのカウント変数Iを1に初期化し(ステップS53)、ステージ11や搬出入コンベア12、14を駆動してI番目のプリント基板Wを搬入する(ステップS54)。
【0105】
次に、制御ユニット200は、必要写真枚数Njのカウント変数Jを1に初期化し(ステップS55)、光学カメラ20とX線カメラ50のうち、一方を撮像位置から退避させ、他方を所定の撮像位置に移動する(ステップS56)。次いで、制御ユニット200は、シフト回数Nkのカウント変数Kを1で初期化し、(ステップS57)、その値を画像データテーブル304のシフトカウンタに保存する(ステップS57)。これにより、撮像された画像をシフト回数別に識別することが可能となる。
【0106】
次に制御ユニット200は、ステップS56で撮像位置に移動した撮像ユニットによって撮像を実行する(ステップS58)。次いで、撮像されたX線画像について、検出値Yの校正処理サブルーチンが実行される(ステップS59)。このサブルーチンS59では、図9で示した検出値校正処理サブルーチンS28と同様の処理により、検出素子61毎の検出値Yが校正される。
【0107】
次いで、制御ユニット200は、カウント変数Kがインクリメントされ(ステップS60)、全てのシフト回数分だけ撮像が実行されたか否かを判定する(ステップS61)。仮にシフト回数に満たない場合には、撮像位置のみ2画素分所定方向にシフトして、ステップS58に移行し、上述した処理を繰り返す。例えば、図3の複合パネルPLを使用した場合、図16に示すように、シフト方向は、矢印AWで示す斜め右上45°に設定される。また、間隔Pdは、当該パネルにおける各検出素子61の配列ピッチPtの整数倍(2画素分)に設定されているので、シフト量は、X方向とY方向にそれぞれ2画素分に設定される。このような設定により、プリント基板Wと撮像ユニットとが相対移動する前に何れかの検出素子61が撮像したプリント基板Wに係る画素単位の部位を、他の検出素子61が再度撮像することが可能となる。
【0108】
図14を参照して、次いで制御ユニット200は、カウント変数K、Px、LをそれぞれPx=1、L=0に初期化するステップS71〜S72)。ここで、カウント変数Pxは、撮像された画像の画素を特定する変数であり、Lは、当該画素について、撮像された回数を表す。図3から明らかなように、パネル60が隙間を隔てて複合されている場合、撮像位置によって、シフト撮像された回数は、異なっている。そこで、画素毎に撮像された回数をカウントして、正確な平均値を求めることができるようにしているのである。
【0109】
次いで、制御ユニット200は、画素データテーブル305を参照し、K枚目の画像に係る画素(x,y)が校正値Iχcを有しているか否かを判定する(ステップS73)。仮に画素(x,y)が校正値Iχcを有している場合には、カウント変数Lをインクリメントし(ステップS74)、校正値Iχcがない場合(すなわち、撮像されていない場合)には、ステップS74をバイパスする。
【0110】
ついで、制御ユニット200は、撮像された回数をカウントし終えたか否かを判定し(ステップS75)、カウントし終えていない場合には、ステップS73に移行して、上述した処理を繰り返し、カウントが終了している場合には、画素(x,y)に保存されたL個の校正値Iχcを平均し、平均値Iχavを演算する(ステップS76)。次いで、制御ユニット200は、演算された平均値Iχavに基づいて、画素(x,y)の輝度値Bを演算し、画素データテーブル305に保存する(ステップS77)。
【0111】
その後、制御ユニット200は、カウント変数Pxをインクリメントし(ステップS79)、全ての画素について、輝度値Bが演算されているか否かを判定する(ステップS79)。仮に未処理の輝度値Bがある場合には、ステップS72に戻って、上述した処理を繰り返す。
【0112】
次に、図15を参照して、全ての画素について輝度値Bの演算を終了した場合、制御ユニット200は、カウント変数Jをインクリメントし(ステップS80)、必要な写真枚数の写真を撮影したか否かを判定する(ステップS81)。この判定で、仮に必要な写真が残っている場合には、ステップS57に移行して上述した処理を繰り返す。他方、必要な写真を全て取り終えた場合には、プリント基板Wの搬出動作を実行する(ステップS82)。次いで、制御ユニット200は、カウント変数Iをインクリメントし(ステップS83)、必要なプリント基板Wを全て検査したか否かを判定する(ステップS84)。仮に検査が必要な全てのプリント基板Wを検査し終えている場合には、フログラムを終了し、未検査のプリント基板Wがある場合には、ステップS54に戻って上述した処理を繰り返す。
【0113】
次に、図16を参照して、シフト撮像の具体例を単純にモデル化して説明する。以下に示す例では、上述したシフト撮像をX線カメラ50で実行し、画素(0,0)から画素(17,17)までの画像を得た例である。
【0114】
各パネル60には、表2に示したaからhの8種類の検出素子61が配列されている場合を想定する。図示のモデルの場合、最初の撮像は、画素(−2,−2)から画素(15,15)までの範囲に撮像位置が設定される。図3の複合パネルPLで撮像した最初の画像は、図16の実線で示すエリアのように、中央部分に十字路の未撮像エリアが残っている。
【0115】
図13のステップS62が実行されて、図16の仮想線で示したように、撮像位置が変化すると、最初の画像と次の画像は、図17のように重複するので、未撮像のエリアは、図17の斜線で示したように、僅かな面積に低減する。従って、この操作を複合パネルPLの間隔Pdに応じた回数(図示の例では3回)だけ繰り返すことにより、最終的には、図18の実線で示すように、画素(0,0)から画素(17,17)までの隙間のない画像を得ることができる。
【0116】
図16から図18までの撮像データは、例えば、画素(0,0)から画素(7,0)に着目した場合、表7のようになる。
【0117】
【表7】

【0118】
例えば、図16から図18の例において、最初の撮像で撮影されなかった画素の座標が(6,0)(7,0)であったとする。次の撮像では、これらの座標(6,0)(7,0)をシフトした検出素子61が撮像することにより、これらの座標(6,0)(7,0)についても、材料厚さχを得ることが可能となる。
【0119】
そして、この具体例で着目すべきことは、個々の検出素子61は、それぞれ個体差を有しており、これらは、非線形であるので、単純な平均化では精緻な値を得ることができないのであるが、本実施形態では、図13のステップS59で撮像した画素毎に校正値Iχcを演算し、これら校正値Iχcに基づいて、平均値や、目標物理量となる輝度値B、或いは材料厚さχを演算しているので、精緻な目標物理量を演算することが可能となる点である。
【0120】
以上説明したように、本実施形態の態様の一つは、格子状に等間隔に配列された複数の検出素子61を有し、各検出素子61が検出した被写体としてのプリント基板Wの画像を画素毎に分解して出力する撮像ユニット20、40を備えた画像処理装置において、個々の画素の個体差を表す個体差ファクタα、βを記憶する個体差ファクタ記憶手段としての検出素子テーブル302と、記憶された個体差ファクタα、βに基づいて、当該検出素子61毎に線形な校正値Iχcを出力する校正手段としての検出値校正処理部225と、前記検出値校正処理部225が演算した校正値Iχcに基づいて、前記画素毎に目標物理量としての輝度値Bや材料厚さχを演算する目標物理量演算処理部226とを備えている画像処理装置である。
【0121】
このため本実施形態では、光学カメラ20またはX線カメラ50等の撮像ユニット20、40から検出素子61が検出した画像が画素毎に分解され、その輝度値B、材料厚さχ等が目標物理量として演算される。この目標物理量の元になる検出値Yは、個々の検出素子61が有する非線形な個体差によってばらついた値であるが、本実施形態では、検出素子テーブル302に記憶されている個体差ファクタα、βに基づいて、検出値校正処理部225が個々の検出素子61毎に線形な校正値Iχcを出力する。そのため、目標物理量演算処理部226は、個々の検出素子61の個体差の影響が除去された校正値Iχcを基礎としているので、演算される輝度値B、材料厚さχは、精緻な目標物理量となる。「個体差ファクタα、β」は、増幅部ゲインや、暗電流が例示されるが、それに限らない。
【0122】
また本実施形態では、前記撮像ユニット20、40による撮像動作を制御するシフト撮像制御手段として機能する制御ユニット200を備えている。この制御ユニット200は、撮像と撮像の間に、前の撮像で何れかの検出素子61が検出したプリント基板Wの撮像要部に係る画素単位の部位を、後の撮像で他の検出素子61が再度検出することができる移動量で、前記プリント基板Wと前記撮像ユニット20、40とを、それらの対向方向(Z方向)と直交する方向(XY方向)に相対移動させる相対移動制御部(制御部210〜制御部216等)と、前記撮像ユニット20、40が出力した検出値Yを補完する補完処理部としての画像処理部220とを含み、前記検出値校正処理部225は、相対移動の前後における各撮像結果に基づいて得られる前記検出値Yからそれぞれ前記校正値Iχcを演算するものであり、目標物理量演算処理部226は、前記検出値校正処理部225が演算した各校正値Iχcに基づいて、前記輝度値B、材料厚さχを当該プリント基板Wの画素毎にそれぞれ演算するものであり、前記画像処理部220は、演算された輝度値B、材料厚さχの平均値を当該プリント基板Wの画素毎に演算することにより、最初の撮像で取得できなかった画素の輝度値B、材料厚さχを後の撮像で取得した輝度値B、材料厚さχで補完するものである。
【0123】
このため本実施形態では、例えば、欠陥素子がある場合に、当該欠陥素子の検出値Yを他の正常な検出素子61で補完することが可能になる。また、検出素子61が、複数のパネル60に分割されて配置された仕様であっても、パネル60間の隙間をプリント基板Wと撮像ユニット20、40との相対移動後の撮像によって補完し、全体として一枚の大きな画像を得ることが可能になる。何れの場合においても、検出された出力が検出値校正処理部225によって校正され、その校正値Iχcに基づいて輝度値B、材料厚さχが演算されるので、補完される検出値Yないし輝度値B、材料厚さχは、極めて精緻なものとなる。
【0124】
また本実施形態では、前記撮像ユニット20、40は、複数の検出素子61が格子状に等間隔に配列されてなるパネル60を、その面方向に複数並べて面一に配置した複合パネルPLからなり、隣り合う前記パネル60同士で隣接する前記検出素子61同士の間隔は、当該パネル60における各検出素子61の配列ピッチの整数倍である。
【0125】
このため本実施形態では、相対移動後の撮像によって、最初の撮像時に複合パネルPLの間に位置するプリント基板Wの部位を当該複合パネルPL内の画素数と同じ密度で補完することができる。
【0126】
また本実施形態では、各検出素子61のうち、不良素子を検出する不良素子検出処理部224と、検出された不良素子の周囲にある正常な検出素子61の検出値Yに基づいて、当該不良素子の検出値Yを補完する検出素子補完処理部227とを備えている。
【0127】
このため本実施形態では、いわゆるドット飛びが、光学カメラ20やX線カメラ50等のハードウェアに生じている場合であっても、周囲の検出素子61の検出値Yに基づいて、不良素子の検出値Yを補完し、全体として欠陥のない画像を得ることができる。
【0128】
本発明の別の態様は、上述した画像処理装置と、前記画像処理装置が出力した目標物理量に基づいて、前記プリント基板Wの良否を判定する良否判定処理部222とを備えている検査装置である。
【0129】
本発明のさらに別の態様は、上述した画像処理装置を備えている測定装置であって、前記撮像ユニットは、当該検出素子61でX線を検出して検出値Yを出力するX線カメラ50であり、所定の基準材を透過したX線の前記検出素子61による検出値Yと前記基準材の材料厚さχとの相関関係を表す基準値を前記検出素子61毎に記憶する基準材厚さ変換テーブル307を備え、前記目標物理量演算処理部226は、前記校正値Iχcと前記基準値とに基づいて、当該検出値Yに対応する輝度値B、材料厚さχを前記検出素子61毎に求め、この求めた輝度値B、材料厚さχを基準材相当の材料厚さχとして出力する測定装置である。
【0130】
本実施形態では、目標物理量演算処理部226がプリント基板Wの材料厚さχを計測する計測手段として機能し、基準材相当の材料厚さχが、検出値校正処理部225によって演算された校正値Iχcに基づいて演算されるので、それぞれの個体差に拘わらず、各検出素子61間で整合性のとれた正確な基準材相当の材料厚さχを輝度値B、材料厚さχとして演算することができる。
【0131】
また、本発明の別の態様は、上述した測定装置において、前記基準材相当の材料厚さχとしての輝度値B、材料厚さχに対応した濃度データを記憶する濃度データ記憶手段としての濃度設定テーブル308、309と、前記画像処理装置が出力した前記輝度値B、材料厚さχと、前記濃度設定テーブル308、309に記憶されている前記濃度データとに基づいて、前記プリント基板Wの画像を各検出素子61の配列に対応した配列で表示する表示ユニット70とを備えている。
【0132】
このため本実施形態では、校正値Iχcに基づいた精緻な輝度値B、材料厚さχと、この輝度値B、材料厚さχに対応する濃度データとに基づいて、精度の高い画像を表示することが可能になる。
【0133】
本発明のさらに別の態様は、格子状に等間隔に配列された複数の検出素子61を有し、各検出素子61が検出したプリント基板Wの画像を画素毎に分解して出力する撮像ユニット20、40と、前記撮像ユニット20、40が撮像した検出値Yを補完する補完処理部としての画像処理部220とを備えた画像処理装置100を用いた画像処理方法において、個々の画素の個体差を表す個体差ファクタα、βに基づいて、各検出素子61の非線形な出力を校正して、当該検出素子61毎に線形な校正値Iχcを出力する校正ステップと、前記校正値Iχcに基づいて、前記画素毎に輝度値B、材料厚さχを演算する輝度値B、材料厚さχ演算ステップとを備えている画像処理方法である。
【0134】
好ましい態様の画像処理方法において、前記撮像ユニット20、40によって同一のプリント基板Wを少なくとも2回撮像し、撮像と撮像との間に、前の撮像で何れかの検出素子61が検出したプリント基板Wに係る画素単位の部位を、後の撮像で他の検出素子61が再度検出することができる移動量で、前記プリント基板Wと前記撮像ユニット20、40とを、それらの対向方向と直交する方向に相対移動し、相対移動の前後における各撮像結果に基づいて得られる検出値Yからそれぞれ前記校正値Iχcを演算し、演算された各校正値Iχcに基づいて、前記輝度値B、材料厚さχを当該プリント基板Wの画素毎にそれぞれ演算し、演算された輝度値B、材料厚さχの平均値を当該プリント基板Wの画素毎に演算することにより、最初の撮像で取得できなかった画素の輝度値B、材料厚さχを後の撮像で取得した輝度値B、材料厚さχで補完するステップを含む。
【0135】
本実施形態のさらに別の態様は、上述した画像処理方法を用いた測定方法において、前記撮像ユニット20、40の当該検出素子61でX線を検出して検出値Yを出力し、前記校正値Iχcと、所定の基準材を透過したX線の前記検出素子61による検出値Yと前記基準材の材料厚さχとの相関関係を表す基準値とに基づいて、当該検出値Yに対応する基準材の材料厚さχを前記検出素子61毎に求め、この求めた値を基準材相当の材料厚さχの輝度値B、材料厚さχとして演算するステップを含んでいることを特徴とする測定方法である。
【0136】
以上説明したように、本実施形態によれば、X線カメラ50または光学カメラ20等の撮像ユニット20、40から検出素子61が検出した検出値Yから輝度値B、材料厚さχを演算する際に、当該検出値Yの非線形な出力を線形な出力に校正し、その校正値Iχcに基づいて輝度値B、材料厚さχを演算しているので、個々の検出素子61の個体差の影響を除去した校正値Iχcに基づいて、精緻な輝度値B、材料厚さχが演算される結果、複数の検出素子61間で整合性がとれた正確な画像作成や、プリント基板Wの計測が可能になるという顕著な効果を奏する。
【0137】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0138】
10 ハウジング
11 ステージ
12 搬入コンベア
14 搬出コンベア
20 光学カメラ
30 照明装置
40 X線放射装置
50 X線カメラ
60 パネル
61 検出素子
70 表示ユニット
100 画像処理装置(検査装置、測定装置)
200 制御ユニット(良否判定制御ユニット)
300 記憶装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状に等間隔に配列された複数の検出素子を有し、各検出素子が検出した被写体の画像を画素毎に分解して出力する撮像ユニットを備えた画像処理装置において、
個々の画素の個体差を表す個体差ファクタを記憶する個体差ファクタ記憶手段と、
記憶された個体差ファクタに基づいて、各当該検出素子毎に線形な校正値を演算する校正手段と、
前記校正手段が演算した校正値に基づいて、前記画素毎に目標物理量を演算する目標物理量演算手段と
を備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理装置において、
同一の被写体を少なくとも2回撮像するように、前記撮像ユニットによる撮像動作を制御するシフト撮像制御手段を備え、
前記シフト撮像制御手段は、
撮像と撮像の間に、前の撮像で何れかの検出素子が検出した被写体に係る画素単位の部位を、後の撮像で他の検出素子が再度検出することができる移動量で、前記被写体と前記撮像ユニットとを、それらの対向方向と直交する方向に相対移動させる相対移動制御部と、
前記撮像ユニットが出力した検出値を補完する補完処理手段と
を含み、
前記校正手段は、
相対移動の前後における各撮像結果に基づいて得られる前記検出値からそれぞれ前記校正値を演算するものであり、
前記目標物理量演算手段は、
前記校正手段が演算した各校正値に基づいて、前記目標物理量を当該被写体の画素毎にそれぞれ演算するものであり、
前記補完処理手段は、
演算された目標物理量の平均値を当該被写体の画素毎に演算することにより、最初の撮像で取得できなかった画素の目標物理量を後の撮像で取得した目標物理量で補完するものである
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像処理装置において、
前記撮像ユニットは、複数の前記検出素子が格子状に等間隔に配列されてなるパネルを、その面方向に複数並べて面一に配置した複合パネルからなり、
隣り合う前記パネル同士で隣接する前記検出素子同士の間隔は、当該パネルにおける各検出素子の配列ピッチの整数倍である
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の画像処理装置において、
各検出素子のうち、不良素子を検出する不良素子検出手段と、
検出された不良素子の周囲にある正常な検出素子の検出値に基づいて、当該不良素子の検出値を補完する検出値補完手段と
を備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置が出力した前記目標物理量に基づいて、前記被写体の良否を判定する良否判定処理手段と
を備えていることを特徴とする検査装置。
【請求項6】
請求項1から4の何れか1項に記載の画像処理装置を備えている測定装置であって、
前記撮像ユニットは、当該検出素子でX線を検出して検出値を出力するX線撮像ユニットであり、
所定の基準材を透過したX線の前記検出素子による検出値と前記基準材の材料厚さとの相関関係を表す基準値を前記検出素子毎に記憶する基準値記憶手段を備え、
前記目標物理量演算手段は、前記校正値と前記基準値とに基づいて、当該検出値に対応する目標物理量を前記検出素子毎に求め、この求めた目標物理量を基準材相当の材料厚さとして出力するものである
ことを特徴とする測定装置。
【請求項7】
請求項6記載の測定装置において、
前記基準材相当の材料厚さとしての目標物理量に対応した濃度データを記憶する濃度データ記憶手段と、
前記画像処理装置が出力した前記目標物理量と、前記濃度データ記憶手段に記憶されている前記濃度データとに基づいて、前記被写体の画像を各検出素子の配列に対応した配列で表示する表示手段と
を備えていることを特徴とする測定装置。
【請求項8】
格子状に等間隔に配列された複数の検出素子を有し、各検出素子が検出した被写体の画像を画素毎に分解して出力する撮像ユニットと、
前記撮像ユニットが撮像した画像を処理する画像処理手段と
を備えた画像処理装置を用いた画像処理方法において、
個々の画素の個体差を表す個体差ファクタに基づいて、各当該検出素子毎に線形な校正値を演算する校正ステップと、
前記校正値に基づいて、前記画素毎に目標物理量を演算する目標物理量演算ステップと
を備えていることを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
請求項8記載の画像処理方法において、
前記撮像ユニットによって同一の被写体を少なくとも2回撮像し、
撮像と撮像との間に、前の撮像で何れかの検出素子が検出した被写体に係る画素単位の部位を、後の撮像で他の検出素子が再度検出することができる移動量で、前記被写体と前記撮像ユニットとを、それらの対向方向と直交する方向に相対移動し、
相対移動の前後における各撮像結果に基づいて得られる検出値からそれぞれ前記校正値を演算し、
演算された各校正値に基づいて、前記目標物理量を当該被写体の画素毎にそれぞれ演算し、
演算された目標物理量の平均値を当該被写体の画素毎に演算することにより、最初の撮像で取得できなかった画素の目標物理量を後の撮像で取得した目標物理量で補完する
ステップを含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
請求項8または9記載の画像処理方法を用いた測定方法において、
前記撮像ユニットの当該検出素子でX線を検出して検出値を出力し、
前記校正値と、所定の基準材を透過したX線の前記検出素子による検出値と前記基準材の材料厚さとの相関関係を表す基準値とに基づいて、当該検出値に対応する基準材の材料厚さを前記検出素子毎に求め、この求めた値を基準材相当の材料厚さの目標物理量として演算する
ステップを含んでいることを特徴とする測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−122895(P2012−122895A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274857(P2010−274857)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】