説明

画像処理装置、消耗品管理システム及びサーバ

【課題】カートリッジ等の消耗品が不正に持ち出されて使用されるのを防止し、効率良く且つ適正に消耗品を管理できるようにすることを目的とする。
【解決手段】例えば第1ネットワークグループ100において、サーバ機能を有する第1通信BOX2のメモリ(NVRAM)24には、ネットワークグループ毎(通信BOX毎)の識別IDが設定されたテーブルを含む、各種テーブルが保存されている。一方、各インクのICタグには、予め通信BOXから識別IDを書き込んでおく。また、各MFP(例:MFP−D6)は、第1通信BOX2から各テーブルの情報を取得してメモリ(NVRAM)64に保存しておく。そして、MFP−D6は、インク18が装着されたとき、そのインク18のICタグ19から識別IDを取得して自身に保存されている識別IDと比較し、両者が一致した場合にそのインクの使用を許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、この画像処理装置に装着されて使用される消耗品を管理するための消耗品管理システム、及びこの消耗品管理システムを構成するサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタ機能やファクシミリ機能、スキャナ機能などの複数種類の機能を備えた複合機が普及している。オフィスなどの規模の大きい組織の中においては、業務効率向上等のため、複数の複合機を各々適所に設けて利用するケースが増えている。
【0003】
こういったケースでは、インクを収容したインクカートリッジ(以下単に「カートリッジ」と言う)などの、複合機で使用される消耗品を、例えば部署毎、フロア毎、或いは工場・建物毎といったグループ単位で保管・管理し、所属するグループ内の複合機に対してのみ使用するよう取り決めがされていることも多い。このような場合、あるグループで保管されているカートリッジが、別のグループに所属する社員により持ち出されてその別のグループで使用されてしまうといった、不正持ち出し、不正使用が問題となる。
【0004】
組織内における不正持ち出しを防止する技術として、例えば特許文献1には、プリンタにより印刷された機密文書の不正持ち出しを防止する技術が開示されている。具体的には、機密文書の印刷にはタグ付きの用紙を用いる。このタグには持ち出しルールが設定されており、セキュリティゲート通過時にタグの情報を読み取って持ち出しの可否が判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−46886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の不正持ち出し防止技術では、セキュリティゲートにタグとの通信や持ち出し可否の判定などを行うための機器・システムが必要となり、システムの規模が大きくなる。しかも、この技術をカートリッジに適用した場合に、例えばセキュリティゲート以外の別ルートで持ち出されるなどの何らかの方法でカートリッジが不正持ち出しされてしまうと、正規の場所以外でそのカートリッジが不正使用されてしまう。つまり、あくまでも不正に持ち出されることを防止する技術であって、それが複合機に装着された場合にその使用を阻止することまではできない。
【0007】
そのため特許文献1に記載の技術は、特にカートリッジなどの複合機に装着して使用される消耗品の不正持ち出し・不正使用を防止する技術としては採用するのは困難である。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、カートリッジ等の消耗品が不正に持ち出されて使用されるのを防止し、効率良く且つ適正に消耗品を管理できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、所定の識別情報が記憶されたサーバとネットワークを介して相互に通信可能に接続される画像処理装置であって、サーバに記憶されている識別情報を取得するサーバ識別情報取得手段と、当該画像処理装置で使用される消耗品が備える消耗品内識別情報記憶部に記憶されている識別情報を取得する消耗品識別情報取得手段と、この消耗品識別情報取得手段により取得された識別情報とサーバ識別情報取得手段により取得された識別情報とを比較する比較手段と、この比較手段による比較の結果、両者が一致した場合にその消耗品の使用を許可する、使用可否判断手段と、を備えている。
【0009】
上記構成の画像処理装置によれば、サーバに記憶されている識別情報と一致した消耗品のみ使用可能とし、識別情報が一致しない消耗品は使用不可とすることができる。つまり、ある識別情報が付与された消耗品を、識別情報が異なる他のネットワーク等で使用しようとしても使用できない。そのため、消耗品が不正に持ち出されて使用されるのを防止することができ、消耗品の管理を効率良く且つ適正に行うことができる。
【0010】
消耗品の使用可否の判断は、画像処理装置への装着時に行われるようにしてもよいが、請求項2に記載のように、装着しなくても判断できるとより便利である。即ち、画像処理装置は、消耗品が装着されていない状態でその消耗品の消耗品内識別情報記憶部に記憶されている識別情報を無線通信により取得する無線取得手段を備える。そして、比較手段は、無線取得手段により消耗品から識別情報が取得された場合、その取得された識別情報とサーバ識別情報取得手段により取得された識別情報とを比較し、使用可否判断手段は、その比較の結果に応じて、その消耗品が使用可能であるか否かを示す使用可否情報を出力する。無線取得手段は、サーバ識別情報取得手段とは別に設けられたものであってもよいし、サーバ識別情報取得手段が無線取得手段としても機能するように構成してもよい。
【0011】
上記構成の画像処理装置によれば、消耗品を画像処理装置に装着することなく消耗品から識別情報を取得してその使用可否を判断できる。そのため、ユーザは消耗品を装着する前にその消耗品の使用可否を知ることができ、ユーザに対する利便性が高まる。
【0012】
そして、サーバからの識別情報の取得等は、より具体的には請求項3に記載のように行うことができる。即ち、サーバ識別情報取得手段は、サーバに記憶されている識別情報を所定のタイミングで取得する。また、サーバ識別情報取得手段により取得された識別情報が記憶される装置内識別情報記憶部を備える。そして、比較手段は、装置内識別情報記憶部に記憶されている識別情報を、消耗品から取得した識別情報との比較対象とする。
【0013】
サーバからの識別情報の取得は、消耗品の使用可否を判断する度に行うようにしてもよいが、そのようにすると、ネットワークのトラフィックに悪影響を及ぼすおそれもある。そこで、予めサーバから識別情報を取得して記憶しておけば、ネットワークトラフィックへの影響を抑制できる。
【0014】
ここで、上記構成の場合、画像処理装置に記憶されている識別情報に対し、サーバ側の識別情報が変更・更新されていて消耗品の識別情報もその変更・更新された識別情報となっている可能性がある。つまり、画像処理装置に記憶されている識別情報が古い情報となってしまっている可能性がある。
【0015】
そこで、そのような可能性を考慮して、例えば請求項4に記載のように、サーバ識別情報取得手段は、比較手段による比較の結果、一致しなかった場合は、サーバから識別情報を再取得し、比較手段は、比較の結果、一致しなかった場合は、サーバ識別情報取得手段により再取得された識別情報と消耗品から取得した識別情報とを再比較し、使用可否判断手段は、比較手段による再比較の結果に応じた動作を行うようにするとよい。
【0016】
つまり、識別情報を比較して一致しなかった場合は、あらためて、サーバから最新の識別情報を再取得し、その再取得した識別情報と消耗品の識別情報が一致した場合には使用を許可する。これにより、消耗品の使用可否判断をより的確に行うことができる。
【0017】
次に、請求項5に記載の発明は、サーバと少なくとも1つの画像処理装置とがネットワークを介して相互に通信可能に構成された消耗品管理システムであって、サーバは、所定の識別情報が記憶されたサーバ内識別情報記憶部を備え、画像処理装置に装着されて使用される消耗品は、識別情報が記憶された消耗品内識別情報記憶部を備えている。そして、画像処理装置は、サーバのサーバ内識別情報記憶部に記憶されている識別情報を取得するサーバ識別情報取得手段と、消耗品の消耗品内識別情報記憶部に記憶されている識別情報を取得する消耗品識別情報取得手段と、この消耗品識別情報取得手段により取得された識別情報とサーバ識別情報取得手段により取得された識別情報とを比較する比較手段と、この比較手段による比較の結果、両者が一致した場合にその消耗品の使用を許可する、使用可否判断手段と、を備えている。
【0018】
このように構成された消耗品管理システムによれば、画像処理装置が、サーバの識別情報と消耗品の識別情報を比較してその比較結果に基づいてその消耗品の使用可否を判断するため、請求項1と同様の効果が得られる。尚、この消耗品管理システムを構成する画像処理装置は、上述した請求項2〜4の何れかの構成とすることもできる。
【0019】
消耗品に対する識別情報の記憶は、具体的には請求項6に記載のように行うようにするとよい。即ち、消耗品へ識別情報を送信する識別情報送信手段を備えるようにする。そして、消耗品は、識別情報送信手段から送信された識別情報を受信する受信手段と、この受信手段により受信された識別情報を消耗品内識別情報記憶部に記憶させる記憶手段とを備えている。このように、消耗品に対する識別情報の記憶(登録)を識別情報送信手段にて行うようにすることで、消耗品毎に所望の識別情報の記憶を容易かつ確実に行える。
【0020】
識別情報送信手段が具体的にどこに備えられているかは任意に決めることができるが、請求項7に記載のように、サーバに備えられ、そのサーバのサーバ内識別情報記憶部に記憶されている識別情報を消耗品へ送信するように構成してもよい。
【0021】
このように構成することで、簡単な構成で、サーバに登録されている識別情報を容易且つ確実に消耗品へ送信し、登録することができる。
ここで、識別情報送信手段による消耗品の識別情報の書き換え(更新)を無制限に許容すると、例えば識別情報が不正に書き換えられて本来使用できないはずの画像処理装置で不正使用されてしまうといった、セキュリティ上問題が生じるおそれがある。
【0022】
そこで、識別情報の更新回数に対しては、請求項8に記載のように制限を設けるようにするとよい。即ち、消耗品が備える記憶手段は、識別情報の記憶を、その記憶前に既に記憶されている識別情報に代えて新たな識別情報へ更新することにより行う。また、消耗品は、記憶手段による識別情報の更新回数を保持する更新回数保持手段を備え、更に、当該システムは、更新阻止手段を備える。この更新阻止手段は、識別情報送信手段が消耗品へ識別情報を送信する際、更新回数保持手段に記憶されている更新回数と予め設定された更新上限回数とを比較して、その更新回数が更新上限回数以上ならば新たな識別情報への更新を阻止する。
【0023】
このように、更新上限回数未満までは識別情報の更新を許容し、それ以上の更新は許容しないようにすることで、不正使用の防止効果を維持しつつ、消耗品の管理の自由度を広げることができる。
【0024】
次に、請求項9に記載の発明は、請求項5〜請求項8の何れか1項に記載の消耗品管理システムであって、少なくとも1つの画像処理装置からなるグループを1つのネットワークグループとして、複数のネットワークグループが構築され、該ネットワーク毎に同一又は異なる識別情報を設定可能に構成されている。また、サーバは、1又は複数のネットワークグループに対して1つずつ設けられている。そして、サーバのサーバ内識別情報記憶部には、少なくともそのサーバに対応した1又は複数のネットワークグループの識別情報が、該ネットワークグループ毎に個別に記憶されている。
【0025】
つまり、ネットワークグループが複数存在し、その複数のネットワーク毎に識別情報を設定して消耗品の管理が行われる。そのため、複数のネットワークグループが構築されるような規模の大きな組織等においても、ネットワークグループ毎に消耗品の管理を適正に行うことができる。
【0026】
この場合、更に請求項10に記載のように構成してもよい。即ち、各サーバには、異なる種類の消耗品毎に個別に、その種類の消耗品を使用することが可能なネットワークグループが対応付けられた使用可能グループ情報が設定されている。そして、画像処理装置の使用可否判断手段は、比較手段による比較の結果、一致した場合は、更に、その消耗品が、該画像処理装置が属するネットワークグループ内で使用可能な設定となっているか否かをサーバに設定されている使用可能グループ情報に基づいて判断し、使用可能となっている場合に、その消耗品の使用を許可する。
【0027】
上記のように構成することで、異なる複数のネットワークグループにおいて識別情報は同じに設定した上で、これら各ネットワークグループにおける使用可否を個別に設定でき、例えばある種類の消耗品は複数のネットワークグループで使用できるようにし、別のある種類の消耗品は特定のネットワークグループのみ使用できるようにする、といった、よりきめ細かな使用可否の設定が可能となる。
【0028】
次に、請求項11に記載の発明は、ネットワークを介して少なくとも1つの画像処理装置と相互に通信可能に接続されるサーバであって、所定の識別情報が記憶されたサーバ内識別情報記憶部と、このサーバ内識別情報記憶部に記憶されている識別情報を画像処理装置へ送信する第1識別情報送信手段と、画像処理装置に装着されて使用される消耗品に対し、サーバ内識別情報記憶部に記憶されている識別情報を送信する第2識別情報送信手段と、を備えている。
【0029】
このように構成されたサーバによれば、自身に記憶されている識別情報を画像処理装置及び消耗品にそれぞれ送信するため、上述した消耗品管理システムを実現でき、よって請求項1と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態のインク管理システムの概略構成を表す構成図である。
【図2】実施形態のインク管理システムにおける各通信BOXに保存(共有)される通信BOX識別情報テーブル及びインク情報テーブルを表す説明図である。
【図3】実施形態のインク管理システムで使用されるタグ情報テーブル及びカートリッジ情報テーブルを表す説明図である。
【図4】実施形態の各通信BOXでのLCD表示例を表す説明図である。
【図5】実施形態の各MFPでのLCD表示例を表す説明図である。
【図6】各通信BOXで実行される使用場所管理登録処理を表すフローチャートである。
【図7】図6の使用場所管理登録処理におけるS190の識別ID書き換え処理の詳細を表すフローチャートである。
【図8】各MFPで実行される使用可否判定処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態のインク管理システム1は、例えば工場を有する企業内に構築されたものであり、ある工場(図1では「△△工場」)の2F(2階)に構築された第1ネットワークグループ100、同じ工場の3Fに構築された第2ネットワークグループ200、及び同じ工場の5Fに構築された第3ネットワークグループ300を少なくとも含む、複数のネットワークグループからなるものである。
【0032】
第1ネットワークグループ100は、サーバ機能を有する第1通信BOX2と、複数のMFP(Multi Function Peripheral;複合機)3,4,5,6とがネットワーク(本例では有線LAN)8を介して相互にデータ通信可能に接続されたものである。ネットワーク8にはパーソナルコンピュータ(PC)7も接続されている。
【0033】
尚、他の第2ネットワークグループ200及び第3ネットワークグループ300も、具体的構成の図示は省略したものの、第1ネットワークグループ100と基本的な構成は同じである。即ち、第2ネットワークグループ200は第2通信BOXを、第3ネットワークグループ300も第3通信BOXを、それぞれ備え、各ネットワークグループそれぞれ、通信BOXに一又は複数のMFPやPCがネットワークを介して接続されている。
【0034】
第1通信BOX2は、PSTNやIP網などの外部回線9と接続され、各MFP3〜6と外部回線9との間のファクシミリ通信、データ通信、通話や、PC7と外部回線9との間のデータ通信を中継するものであり、CPU21,ROM22,RAM23,電気的に書き換え可能な不揮発性メモリであるNVRAM(以下単に「メモリ」と言う)24,表示・操作部25,LANインタフェース(I/F)26,タグリーダライタ(R/W)27,WANI/F30などを備えている。
【0035】
表示・操作部25は、各種情報を画像表示するためのLCD(Liquid Crystal Display)やタッチパネル、各種操作ボタン等を備えてなるものである。LANI/F26は、ネットワーク8を介したデータ送受信を担い、WANI/F30は、外部回線9を介したデータ・各種信号等の送受信やネットワークグループ相互間(詳しくは通信BOX相互間)の各種データの送受信を担う。タグリーダライタ27は、各MFP3〜6で使用されるカートリッジに取り付けられたICタグとの間で非接触通信を行うためのものである。
【0036】
この第1通信BOX2は、サーバ機能を有し、ファクシミリ受信データを一旦保存して必要に応じて各MFP3〜6へ送出するなどの各種機能を有する他、本実施形態では、ネットワークグループを識別(通信BOXを識別)するための識別ID等の情報が集約された通信BOX識別情報テーブル(図2(a))と、各MFP3〜6で使用されるインク(カートリッジ)の管理状況に関する情報(保管場所や使用可能場所に関する情報等)が集約されたインク情報テーブル(図2(b))と、ネットワークグループ毎に登録されている各カートリッジのICタグの情報等が集約されたタグ情報テーブル(図3(a))とを保持しており、必要に応じて各MFP3〜6へ提供する。
【0037】
第1通信BOX2のメモリ24には、これらサーバ機能を実現するための各種プログラムや上記各テーブルが格納されており、これら各種プログラムをCPU21が実行することによりサーバ機能が実現される。
【0038】
通信BOX識別情報テーブルは、図2(a)に示すように、各ネットワークグループの通信BOX毎(サーバ毎)に、その通信BOXの属するネットワークグループ名、通信BOXの設置場所、通信BOXのMACアドレス、及び通信BOXの識別IDなどが対応付けられてなるものである。
【0039】
この通信BOX識別情報テーブルの作成・更新は、後述するように各ネットワークグループのPC7で行われる。また、通信BOX本体でもユーザ操作等により作成・更新できる。但し、各ネットワークグループで作成・更新可能な情報は当該ネットワークグループ自身の情報である。そして、各通信BOXが相互にデータ通信を行って情報共有することで、各通信BOXにて生成された情報が集約され、結果として図2(a)に示すような各グループの情報が集約された通信BOX識別情報テーブルが生成される。そのため、結果的にはこの通信BOX識別情報テーブルは各通信BOXが持っていることになる。
【0040】
インク情報テーブルは、図2(b)に示すように、カートリッジの種別毎に各インクの保管場所(テキスト情報)、対応機種、カートリッジの外観画像、管理担当者名と内線番号、ネットワークグループ毎の使用可否情報などが対応付けられてなるものである。
【0041】
尚、本実施形態では、MFP−A3に対応した(使用可能な)インク種別は「BR−01」、MFP−B4及びMFP−C5に対応したインク種別は「BR−02」、MFP−D6に対応したインク種別は「BR−03」である。各インクいずれも、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色がある。
【0042】
このインク情報テーブルも、ネットワークグループ毎にPC又は通信BOX本体等にて生成・更新され、それぞれ生成されたネットワークグループが対応付けられる。図2(b)に示すインク情報テーブルは、第1ネットワークグループ100に対応したもの、つまり第1ネットワークグループ100内で登録・保管されたカートリッジの管理状況を示すものである。
【0043】
この図2(b)のインク情報テーブルのうち、ネットワークグループ毎の使用可否情報は、各カートリッジがそれぞれどのネットワークグループで使用できるのかを示したものであり、本例では、このテーブルに対応した第1ネットワークグループ100内、即ち△△工場2F内においては、当該第1ネットワークグループ100内で登録された全てのカートリッジ(つまり当該第1ネットワークグループに対応した図2(b)のインク情報テーブルに登録されている全てのカートリッジ)が「○」(使用可能)となっている。
【0044】
一方、この第1ネットワークグループ100で登録されたカートリッジを他のネットワークグループで使用できるか否かについては、インク種別(カートリッジ種別)BR−03のカートリッジについては第1ネットワークグループ100以外は全て「×」(使用不可)であるが、BR−01及びBR−02のカートリッジについては、第2ネットワークグループ200内(即ち△△工場3F)及び第3ネットワークグループ300内(即ち△△工場5F)でも「○」(使用可能)となっている。また、第1〜第3ネットワークグループ以外(即ち△△工場外)では全て「×」(使用不可)となっている。こういった使用可否の設定は、後述するようにユーザ操作等によって行うことができる。
【0045】
そして、各ネットワークグループのインク情報テーブルも、各通信BOX間で共有される。そのため、各通信BOXは、他の通信BOXで生成・更新等されたインク情報テーブルも持っており、それぞれ必要に応じて使用する。
【0046】
また、タグ情報テーブルは、図3(a)に示すように、インク毎(カートリッジのICタグ毎)に固有ID番号、対応機種、インク種別、及び識別IDが登録されてなるものである。このタグ情報テーブルも、ネットワークグループ毎に生成され、それぞれ生成されたネットワークグループが対応付けられて、各通信BOX間で共有される。
【0047】
PC7は、周知のパーソナルコンピュータであり、CPU71,ROM72,RAM73,電気的に書き換え可能な不揮発性メモリであるNVRAM(メモリ)74,表示・操作部75,LANI/F76などを備えている。表示・操作部75は、例えばユーザが各種入力操作を行うためのキーボードとLCDとにより構成されている。
【0048】
このPC7は、内部に各種アプリケーションソフトがインストールされている他、第1通信BOX2を介してインターネットに接続でき、Webサイトとの間で各種データのダウンロード・アップロードが可能である。PC7は更に、上述した通信BOX識別情報テーブル及びインク情報テーブルをユーザ操作により作成して第1通信BOX2へ送信する機能(ソフト)も有している。
【0049】
PC7による通信BOX識別情報テーブルの作成は、例えば、通信BOX名、ネットワークグループ名、通信BOX設置場所、及び識別IDを入力して第1通信BOX2へアップロードすること等により行われる。そして、作成されたテーブルが、第1ネットワークグループ100内の各MFP3〜6へ送信される。
【0050】
PC7によるインク情報テーブルの作成・送信は次のように行われる。まず前提として、第1通信BOX2は、ネットワーク8にMFPが接続されると、その都度、自動的にその接続されたMFPと所定のデータ通信を行って、そのMFPの機種や対応インク種別などを取得する。そのため、第1通信BOX2のメモリ24には、ネットワーク8に接続されている各MFP3〜6の機種や対応インク種別が記憶されている。
【0051】
また、インク情報テーブルの雛形が所定のWebサイトにある。そこでユーザは、PC7を操作して、Webサイトからインク情報テーブルの雛形を取得する。雛形の初期状態は、何れの項目も基本的には空白となっているため、これをユーザが入力操作等して埋めていくことになる。但し、ネットワーク8に接続されているMFPの機種や対応インク種別については上記のように第1通信BOX2に記憶されているため、PC7が第1通信BOX2からこれらを自動的に取得することで、インク情報テーブルのうち対応機種とインク種別については自動的に埋め込まれる。そのため、ユーザは、対応機種及びインク種別以外の各種情報について、順次埋めていくこととなる。但し、対応機種及びインク種別についても、ユーザ自ら入力できるようにしてもよい。
【0052】
PC7で作成されたインク情報テーブルは、通信BOX2へ送信され、通信BOX2に登録(即ちメモリ24に記憶)される。尚、インク情報テーブルの作成をWebサイトから雛形を取得して行うようにするのは一例であり、インク情報テーブルを具体的にどこでどのように作成するか、作成したインク情報テーブルをどこで保持しておくか、などについては種々の形態をとることができる。本例では、第1通信BOX2本体でユーザ操作等によりこのインク情報テーブルを生成・更新することもできる。
【0053】
第1通信BOX2と接続されているMFP−A3,MFP−B4,MFP−C5及びMFP−D6は、何れも、プリンタ機能やファクシミリ機能、スキャナ機能などの複数種類の機能を備えた複合機である。このうちMFP−D6は、このMFP−D6に対応したカートリッジ18が着脱可能である。カートリッジ18にはICタグ19が取り付けられ、MFP−D6には、カートリッジ18の装着時にそのICタグ19と無線通信してデータの読み書きを行うための内部タグリーダライタ67aが設けられている。更に、MFP−D6には、カートリッジ18の非装着状態でICタグ19と無線通信してデータの読み書きを行うための外部タグリーダライタ67bも設けられている。他の各MFP3〜5も同様の構成であるため、以下の説明では、代表としてMFP−D6について説明する。
【0054】
MFP−D6は、CPU61,ROM62,RAM63,電気的に書き換え可能な不揮発性メモリであるNVRAM(メモリ)64,表示・操作部65,LANI/F66,上述した各タグリーダライタ67a,67b,インク装着検知部68,プリンタ部69,及びスキャナ部70などを備えている。
【0055】
表示・操作部65は、各種情報を画像表示するためのLCDやタッチパネル、各種操作ボタンなどを備えてなるものである。また、インク装着検知部68は、当該MFP−D6にカートリッジ18が装着された場合にこれを検知するものである。尚、図1ではMFP−D6に1つのカートリッジ18が装着された状態が図示されているが、実際には各色(4色)のカートリッジが装着され、インク装着検知部68はそれぞれの装着の有無を個別に検知する。プリンタ部69は、プリンタ機能を実現するものであり、スキャナ部70は、スキャナ機能を実現するものである。
【0056】
内部タグリーダライタ67aは、対応するカートリッジが装着された場合にそのカートリッジのICタグとの無線通信によりそのカートリッジの情報を取得するために用いられる。また、外部タグリーダライタ67bは、その通信可能範囲内にカートリッジが近接した場合にそのカートリッジのICタグとの無線通信によりそのカートリッジの情報を取得するために用いられる。
【0057】
図1に示すように、各カートリッジ10,12,14,16,18にはそれぞれ、ICタグ11,13,15,17,19が取り付けられている。例えばMFP−D6に装着されるカートリッジ18に取り付けられているICタグ19は、主として、送受信部19a,制御部19b,メモリ19cを備えている。送受信部19aは、第1通信BOX2のタグリーダライタ27やMFP−D6の各タグリーダライタ67a,67bとの間で無線にてデータ送受信を行う。制御部19bは、当該ICタグ19の動作全体を制御するものであり、メモリ19cに対する各種データの読み書きを制御する。
【0058】
第1通信BOX2のタグリーダライタ27は、各カートリッジのICタグとの無線通信により在庫登録を行うために用いられる。例えば図1に示すようにあるカートリッジ10を第1通信BOX2のタグリーダライタ27に近づけると、タグリーダライタ27がカートリッジ10のICタグ11から必要な情報を取得して、このカートリッジ10を登録すると共にICタグ11へ識別IDを送信する。
【0059】
カートリッジ18のICタグ19には、そのメモリ19c内に、図3(b)に示すカートリッジ情報テーブルが記憶されている。具体的には、そのカートリッジ18固有の固有ID番号と、インク種別(本例では「BR−01」の黒(black))、及び所属ネットワークグループを示す識別IDが記憶されている。但し、識別IDについては初期状態では空白であり、通信BOXのタグリーダライタによって書き込まれる。
【0060】
尚、図示は省略したが、ICタグ19には、当該ICタグ19において識別IDが書き換えられた回数も記憶されている。本実施形態では、1つのカートリッジに対する識別IDの書き換えは所定の書換許容回数まで可能となっている。
【0061】
また、第1通信BOX2は、自身の識別IDが書き換えられた場合、書き換え前の過去の識別IDを保存しておくよう構成されている。第1通信BOX2の識別IDを書き換えるケースは、例えば引越やネットワークグループ全体の再構築など、種々考えられる。そのような場合、通信BOXの識別IDの書き換えに伴って、この通信BOXから識別IDが書き込まれた各カートリッジについても同様に識別IDを書き換える必要が生じる。そこで本実施形態では、通信BOXの識別IDが書き換えられた場合には書き換え前の過去の識別IDも保存しておき、カートリッジの識別IDを書き換える際、カートリッジのICタグに既に記録されている識別IDが、通信BOXに保存されている過去の識別IDと一致した場合にのみ、識別IDの書き換えを許容するようにしている。
【0062】
MFP−D6のメモリ64には、後述する使用可否判定処理のプログラムを含む各種プログラム等が記憶されている。また、第1通信BOX2に記憶されている各テーブルも、第1通信BOX2から送信されてメモリ64に記憶される。このうち図2(a)の通信BOX識別情報テーブルについては、自身が接続されているサーバの識別情報(第1通信BOX2に対応した情報)が送信され、これによりMFP−D6は、自身がどのネットワークグループに属しているのかを認識することができる。MFP−D6は、それら各テーブルの情報に基づき、後述するようにカートリッジの使用可否を判断することができる。
【0063】
第1通信BOX2からMFP−D6への各テーブルの送信タイミングは種々考えられ、本実施形態では少なくとも、PC7で作成されたテーブルが第1通信BOX2へ送信・記憶された時、及び第1通信BOX2にて各テーブルが作成・更新された時に、第1通信BOX2が各MFP3〜6へ送信し、これが各MFP3〜6で記憶される。
【0064】
尚、第1ネットワークグループ100は△△工場の2Fに構築されたものであるが、その中で第1通信BOX2とMFP−D6は同じ部屋(本例では□□課の部屋)に設置され、その部屋の中に□□課ロッカー101があり、この中にBR−03のカートリッジが保管される。このBR−03のカートリッジは、図2(b)のインク情報テーブルに設定されているように、第1ネットワークグループ100内でのみ使用可能となっている。
【0065】
一方、他の各MFP3〜5及びPC7は他の部屋(本例では庶務部門の部屋)に置かれている。そして、その庶務部門の部屋には庶務ロッカー102があり、この中にBR−01及びBR−02のカートリッジが保管される。これらBR−01及びBR−02のカートリッジは、図2(b)のインク情報テーブルに設定されているように、第1ネットワークグループ100内で使用可能となっているほか、他の各ネットワークグループ200,300でも使用可能となっている。
【0066】
本実施形態のインク管理システム1における、最も特徴的な機能は、各MFP3〜6において、自身に装着あるいは近接されたカートリッジについてその使用可否を判断する機能である。この機能の実現過程で、図5(a)の識別ID再取得確認画面、同図(b)の使用可能確認画面、同図(c)の使用可能エリア外確認画面、及び同図(d)の使用不可通知画面などがMFPにてLCD表示される。
【0067】
また、この機能を実現すべく、上述したようにPC7にて通信BOX識別情報テーブル及びインク情報テーブルを作成して第1通信BOX2へ送信・記憶することができ、更に、第1通信BOX2本体においても、新規のカートリッジについて、そのカートリッジのICタグとの通信及びユーザ操作によって、インク情報テーブル及びタグ情報テーブルの更新が可能である。その更新の過程で、図4(a)の登録要否確認画面、同図(b)のインク保管場所選択画面、及び同図(c)のネットワークグループ毎の使用可否選択画面などがMFPにてLCD表示される。
【0068】
更に、本実施形態のインク管理システム1では、ネットワークグループを新設した場合、即ち新たなネットワークグループの通信BOXが新設された場合、その新設された通信BOXにて直接、或いは既設の通信BOXのいずれかにて、その新設されたネットワークグループの新規登録が可能である。具体的には、ユーザの入力操作等によって、図2(a)、(b)に示した各テーブルの情報が更新(新規ネットワークグループの分の情報が追加)されることとなる。尚もちろん、これらテーブルの更新は、新設されたネットワークグループを構成するPCにて行うことも可能である。
【0069】
次に、上述した各機能を実現するために各通信BOX(例えば第1通信BOX2)にて実行される処理のうち、カートリッジの登録を行うための使用場所管理登録処理について、図6を用いて説明する。この処理は、第1通信BOX2のCPU21が定期的に実行するものであり、CPU21は、この処理を開始すると、まずカートリッジのICタグを確認できたか否か、即ちタグリーダライタ27にてカートリッジのICタグとの通信が開始されたか否かを判断する(S110)。そして、ICタグを確認すると(S110:YES)、そのICタグからICタグ情報を読み出す(S120)。ここでは、ICタグに記憶されているカートリッジ情報テーブル(図3(b))の情報を読み出す。
【0070】
そして、読み出したインク種別が、第1ネットワークグループ100において登録されていない(つまり図2(b)のインク情報テーブルに登録されていない)新しい種別であるか否かを判断する(S130)。
【0071】
ここで、新しい種別ではない場合は(S130:NO)、カートリッジに識別IDが登録済みであるか否か判断する(S140)。そして、識別IDが登録されていない場合は、そのカートリッジのICタグへ、当該第1通信BOX2の識別IDを記録するよう指令を送信する(S150)。
【0072】
これにより、この指令を受信したICタグに、受信した識別ID(即ち第1ネットワークグループを示す識別ID)が書き込まれることとなる。CPU21は更に、第1通信BOX2自身のタグ情報テーブル(図3(a))を更新する(S160)。即ち、現在のタグ情報テーブルに対し、上記カートリッジのICタグ情報を新規追加(テーブルを1行追加)する。尚、タグ情報テーブル中、インク種別毎の「対応機種」については、例えば第1通信BOX2がWebサイトから取得するなど、種々の方法で取得・登録できる。
【0073】
このように、ICタグへの識別IDの書き込み指令、及びタグ情報テーブルの新規追加をすることで、そのカートリッジの新規登録が完了した後は、そのカートリッジを第1通信BOX2から離す旨をLCD表示する(S310)。
【0074】
S140の判断処理において、識別IDが既に登録されていると判断された場合は、識別IDがカートリッジに登録済みであることをLCD表示し(S170)、更に、識別IDの書き換えを行うか否かをユーザに問うための所定の画面をLCD表示する(S180)。そして、ユーザにより識別IDの書き換えを望まない旨の所定の入力操作がなされた場合は(S180:NO)、S310に進むが、ユーザにより識別IDの書き換えを望む旨の所定の入力操作がなされた場合は(S180:YES)、識別ID書き換え処理(S190)を行った上でS310に進む。
【0075】
図7に、S190の識別ID書き換え処理の具体的内容を示す。即ち、CPU21はまず、カートリッジのICタグに登録されている識別IDと、第1通信BOX2に保存されている過去の識別IDとを比較する(S410)。そして、両者の識別IDが一致するか否か判断し(S420)、一致しない場合は、識別IDの不一致により書き換えできない旨をLCD表示して(S490)、この識別ID書き換え処理を終了する。
【0076】
一方、識別IDが一致したら(S420:YES)、カートリッジのICタグに記録されている書き換え回数を読み出す(S430)。そして、その読み出した書き換え回数が書換許容回数未満であるか否か判断し(S440)、書換許容回数未満でない場合は、書き換えの累積回数が書換許容回数に到達していることにより書き換えできない旨をLCD表示して(S480)、この識別ID書き換え処理を終了する。
【0077】
一方、読み出した書き換え回数が書換許容回数未満ならば(S440:YES)、カートリッジのICタグへ、新たな識別ID、即ち第1通信BOX2に現在登録されている最新の識別IDに書き換えるよう指令を送信する(S450)。更に、カートリッジのICタグへ、現在記録されている書き換え回数を更新(1つ増加)させるよう指令を送信する(S460)。これにより、この指令を受信したICタグは、受信した最新の識別IDに書き換えると共に、書き換え回数を更新することとなる。そして、カートリッジを通信BOXから離す旨をLCD表示して(S470)、この識別ID書き換え処理を終了する。
【0078】
図6に戻り、S130にて新しい種別のインクと判断された場合は(S130:YES)、図4(a)に示す登録要否確認画面をLCD表示して(S200)、登録するか否かを判断する(S210)。図4(a)は、新たにBR−04の種別のインクが検知された旨が表示されている。そして、この画面で「いいえ」が押されると(S210:NO)、S310に進むが、「はい」が押されると(S210:YES)、第1通信BOX2に識別IDが登録されているか否か判断する。通常、第1通信BOX2には自身の識別IDが登録されているはずであるが、例えば設置した直後であるなど、第1通信BOX2自体に識別IDが登録されていな可能性もあるため、このS220の判断処理を行うのである。
【0079】
そして、第1通信BOX2に識別IDが登録されていない場合は(S220:NO)、識別IDの登録を促す所定の画面をLCD表示し(S230)、識別IDの登録受け付けのための所定の処理を行って(S240)、S250に進む。一方、第1通信BOX2に識別IDが登録されていたら(S220:YES)、そのままS250に進む。
【0080】
S250では、図4(b)に示すインク保管場所選択画面をLCD表示する。この画面は、新たなBR−04のカートリッジについてそれをどこに保管するのかをユーザに選択させる画面であり、ユーザが何れかの保管場所を選択(タッチ操作)して「設定」を押すか、「新規登録・修正」を押して新たな保管場所を入力等すると、その保管場所が受け付けられる(S260)。更に、図4(c)に示すネットワークグループ毎の使用可否選択画面をLCD表示する(S270)。この画面は、新たなBR−04のカートリッジについて、各ネットワークグループでの使用可否をユーザに選択させる画面であり、ユーザがネットワークグループ毎に使用可否を選択(「○」か「×」の何れかにタッチ)して「設定」を押すと、その使用可否選択結果が受け付けられる(S280)。この画面において「新規登録・修正」を押すと、ネットワークグループの新規追加や修正を行うこともできる。
【0081】
そして、S150と同じようにカートリッジのICタグへ当該第1通信BOX2の識別IDを記録するよう指令を送信して(S290)、ICタグに識別IDを書き込ませる。更に、自身の各テーブルをそれぞれ更新して(S300)、S310に進む。
【0082】
次に、各MFP(例えばMFP−D6)にて実行される処理のうち、カートリッジの使用可否を判断するための使用可否判定処理について、図8を用いて説明する。この処理は、MFP−D6のCPU61が定期的に実行するものであり、CPU61は、この処理を開始すると、まず、インク装着検知部68の検知結果に基づき、カートリッジが装着されたか否かを判断する(S510)。そして、装着が確認されたならば(S510:YES)、その装着されたカートリッジのICタグからICタグ情報(図3(b)のカートリッジ情報テーブル)を読み出す(S520)。
【0083】
そして、ICタグ情報として識別IDが読み出されたか否か判断する(S530)。ここで、例えばまだ未登録のカートリッジであって識別IDが登録されていなかった場合は(S530:NO)、使用可能であることを示す確認画面をLCD表示する(S580)。つまり、未登録のカートリッジについては使用を許可するのである。
【0084】
一方、識別IDが読み出された場合は(S530:YES)、その読み出した識別IDと、当該MFP−D6のメモリ64に保存されている識別ID(即ち第1通信BOX2から取得した通信BOX識別情報テーブルに基づく識別ID)とを照合する(S540)。
【0085】
そして、両者の識別IDが一致したか否か判断し(S550)、一致した場合は(S550:YES)、更に、当該MFP−D6のメモリ64に記録されている、ネットワークグループ毎の使用可否情報(即ち第1通信BOX2から取得したインク情報テーブルにおける、ネットワークグループ毎の使用可否を示す情報)とを照合する(S560)。
このS560の照合は、より具体的には次のように行う。MFP−D6は、図3(a)に示す、各ネットワークグループのタグ情報テーブルについても、所定のタイミングで第1通信BOX2から取得しているため、そのタグ情報テーブルと照合することで、まずはそのICタグ情報を読み出したカートリッジについてその対応機種(本例ではMFP−A)やそれがどのネットワークグループで登録されたものであるかを認識できる。そこで、その認識結果をもとに、そのカートリッジが属するネットワークグループに対応したインク情報テーブル(図2(b))と照合することで、そのカートリッジを使用可能なネットワークグループがわかる。
【0086】
そして、そのカートリッジが自グループ内(本例では第1ネットワークグループ100(△△工場2F)内)で使用可能の設定となっているか否か判断し(S570)、使用可能の設定となっている場合は(S570:YES)、図5(b)に示すような、使用可能であることを示す使用可能確認画面をLCD表示する(S580)。そして、この画面においてユーザが「確認」を押すと、この使用可否判定処理を終了する。
【0087】
使用可能の設定となっていない場合は(S570:NO)、図5(c)に示すような、使用可能エリア外であることを示す使用可能エリア外確認画面をLCD表示する(S590)。そして、この画面においてユーザが「確認」を押すと、更に、カートリッジを取り外すよう促す画面(図示略)をLCD表示することでユーザにカートリッジの取り外しを促し(S600)、カートリッジが取り外されたら(S600:YES)、この使用可否判定処理を終了する。
【0088】
一方、S540における識別IDの照合の結果、識別IDが一致しなかった場合は(S550:NO)、図5(a)に示すような、識別IDの再取得の要否を問う識別ID再取得確認画面をLCD表示する(S610)。そして、ユーザによる識別IDの再取得要求があるか否か判断し(S620)、この画面でユーザが「いいえ」を押した場合は(S620:NO)、図5(d)に示すような、使用不可であることを示す使用不可通知画面をLCD表示して(S650)、S600に進む。
【0089】
一方、図5(a)の識別ID再取得確認画面でユーザが「はい」を押した場合は(S620:YES)、第1通信BOX2から、当該第1通信BOX2にて登録されている最新の識別IDを再取得する(S630)。そして、その再取得した最新の識別IDと、カートリッジのICタグから読み出した識別IDとが一致するか否か判断し(S640)、一致した場合はS560に進み、一致しなかった場合はS650に進む。
【0090】
以上説明した本実施形態のインク管理システム1によれば、識別IDが一致するか否かによってカートリッジの使用可否が判断され、識別IDの異なるカートリッジは使用できない。そのため、カートリッジが不正に持ち出されて使用されるのを防止することができ、カートリッジの管理を効率良く且つ適正に行うことができる。また、ネットワークグループ毎に識別IDの付与やカートリッジの使用可否を設定できるため、ネットワークグループ毎にカートリッジの管理を適正かつきめ細かに行うことができる。
【0091】
また、カートリッジをMFPに装着することなく、そのカートリッジの使用可否を判断可能であるため、ユーザはカートリッジを装着する前にその使用可否を知ることができ、ユーザに対する利便性が高まる。更に、通信BOXに対する各テーブルの設定・更新等を容易に行うことができ、カートリッジのICタグの識別IDについても書換許容回数の範囲内で書き換え可能であるため、管理の自由度が大きい。
【0092】
[変形例]
本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。例えば、サーバ機能を通信BOXに持たせることは一例に過ぎず、何れかのMFP又はPCにサーバ機能も持たせるようにしたり、或いはサーバ機能を備えた別の装置を設けるようにするなど、サーバ機能をどこに持たせるかについては特に限定されるものではない。
【0093】
また、MFPへのカートリッジ装着時に使用不可と判断された場合には、例えばどの種別のカートリッジなら使用可能なのか、またそれはどこに保管されているのか、といった情報を表示等するようにしてもよい。また、カートリッジのICタグを通信BOXのタグリーダライタに読み取らせることで、通信BOXにて、そのカートリッジをその通信BOXのネットワークグループで使用可能か否か判断・表示等させるようにしてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、カートリッジの識別IDの書き換えについて、通信BOXに保存されている過去の識別IDと一致した場合のみ可能としたが、これはあくまでも一例であり、例えば固有ID番号が一致したら書き換え可能としたり、或いは無条件に書き換え可能としたりするなど、書き換え可能か否かの条件設定は適宜決めることができる。
【0095】
また、上記実施形態では各ネットワークグループの識別IDがいずれも同じであったが、ネットワークグループ毎に異なる識別IDを設定できることは言うまでもない。識別IDの内容も種々考えられ、例えば通信BOXのMACアドレスを識別IDとしてもよい。
【0096】
また、各ネットワークグループの通信BOXがそれぞれ上記各テーブルを持つ必要は必ずしも無く、何れか1つ(或いは複数)の通信BOXが上記各テーブルを持っていて他の通信BOXがそれを参照しにいくという形態でもよい。ネットワークグループ毎に個々に通信BOXを備えることも必須ではなく、複数のネットワークグループに対して1つの通信BOXを備えるようにしてもよい。また、ネットワークグループが1つしかない場合であっても当然に本発明を適用できる。
【0097】
また、ネットワーク8は有線に限らず無線ネットワークでもよい。また、カートリッジと通信BOXとの通信(及びMFPとの通信)は、非接触のICタグに限らず、他の種々の通信方式を用いることができる。また、サーバと接続するMFPの数も特に限定されるものではない。また、本発明の適用は、カートリッジの保管管理に限定されるものではなく、他のあらゆる消耗品に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1…インク管理システム、2…第1通信BOX、3〜6…MFP、7…PC、8…ネットワーク、9…外部回線、10,12,14,16,18…カートリッジ、11,13,15,17,19…ICタグ、19a…送受信部、19b…制御部、19c…メモリ、21,61,71…CPU、22,62,72…ROM、23,63,73…RAM、24,64,74…メモリ(NVRAM)、25,65,75…表示・操作部、27…タグリーダライタ、37a,47a,57a,67a…内部タグリーダライタ、37b,47b,57b,67b…外部タグリーダライタ、68…インク装着検知部、69…プリンタ部、70…スキャナ部、100…第1ネットワークグループ、200…第2ネットワークグループ、300…第3ネットワークグループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の識別情報が記憶されたサーバとネットワークを介して相互に通信可能に接続される画像処理装置であって、
前記サーバに記憶されている前記識別情報を取得するサーバ識別情報取得手段と、
当該画像処理装置で使用される消耗品が備える消耗品内識別情報記憶部に記憶されている識別情報を取得する消耗品識別情報取得手段と、
前記消耗品識別情報取得手段により取得された識別情報と前記サーバ識別情報取得手段により取得された識別情報とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果、両者が一致した場合にその消耗品の使用を許可する、使用可否判断手段と、
を備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記消耗品が装着されていない状態で、その消耗品の前記消耗品内識別情報記憶部に記憶されている識別情報を無線通信により取得する無線取得手段を備え、
前記比較手段は、前記無線取得手段により前記消耗品から識別情報が取得された場合、その取得された識別情報と前記サーバ識別情報取得手段により取得された識別情報とを比較し、
前記使用可否判断手段は、その比較の結果に応じて、その消耗品が使用可能であるか否かを示す使用可否情報を出力する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記サーバ識別情報取得手段により取得された識別情報が記憶される装置内識別情報記憶部を備え、
前記比較手段は、前記装置内識別情報記憶部に記憶されている識別情報を、前記消耗品から取得した識別情報との比較対象とする
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置であって、
前記サーバ識別情報取得手段は、前記比較手段による比較の結果、一致しなかった場合は、前記サーバから前記識別情報を再取得し、
前記比較手段は、前記比較の結果、一致しなかった場合は、前記サーバ識別情報取得手段により前記再取得された識別情報と前記消耗品から取得した識別情報とを再比較し、
前記使用可否判断手段は、前記比較手段による前記再比較の結果に応じた動作を行う
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
サーバと少なくとも1つの画像処理装置とがネットワークを介して相互に通信可能に構成された消耗品管理システムであって、
前記サーバは、所定の識別情報が記憶されたサーバ内識別情報記憶部を備え、
前記画像処理装置に装着されて使用される消耗品は、前記識別情報が記憶された消耗品内識別情報記憶部を備え、
前記画像処理装置は、
前記サーバの前記サーバ内識別情報記憶部に記憶されている前記識別情報を取得するサーバ識別情報取得手段と、
前記消耗品の前記消耗品内識別情報記憶部に記憶されている識別情報を取得する消耗品識別情報取得手段と、
前記消耗品識別情報取得手段により取得された識別情報と前記サーバ識別情報取得手段により取得された識別情報とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果、両者が一致した場合にその消耗品の使用を許可する、使用可否判断手段と、
を備えていることを特徴とする消耗品管理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の消耗品管理システムであって、
前記消耗品へ前記識別情報を送信する識別情報送信手段を備え、
前記消耗品は、
前記識別情報送信手段から送信された前記識別情報を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された前記識別情報を前記消耗品内識別情報記憶部に記憶させる記憶手段と、
を備えていることを特徴とする消耗品管理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の消耗品管理システムであって、
前記識別情報送信手段は、前記サーバに備えられ、そのサーバの前記サーバ内識別情報記憶部に記憶されている前記識別情報を前記消耗品へ送信する
ことを特徴とする消耗品管理システム。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の消耗品管理システムであって、
前記消耗品が備える前記記憶手段は、前記識別情報の記憶を、その記憶前に既に記憶されている識別情報に代えて新たな識別情報へ更新することにより行い、
前記消耗品は、前記記憶手段による前記識別情報の更新回数を保持する更新回数保持手段を備え、
前記識別情報送信手段が前記消耗品へ前記識別情報を送信する際、前記更新回数保持手段に記憶されている更新回数と予め設定された更新上限回数とを比較して、その更新回数が前記更新上限回数以上ならば新たな識別情報への更新を阻止する更新阻止手段を備えている
ことを特徴とする消耗品管理システム。
【請求項9】
請求項5〜請求項8の何れか1項に記載の消耗品管理システムであって、
少なくとも1つの画像処理装置からなるグループを1つのネットワークグループとして、複数の前記ネットワークグループが構築され、該ネットワーク毎に同一又は異なる前記識別情報を設定可能に構成されており、
前記サーバは、1又は複数の前記ネットワークグループに対して1つずつ設けられ、
前記サーバの前記サーバ内識別情報記憶部には、少なくともそのサーバに対応した1又は複数のネットワークグループの前記識別情報が、該ネットワークグループ毎に個別に記憶されている
ことを特徴とする消耗品管理システム。
【請求項10】
請求項9に記載の消耗品管理システムであって、
前記各サーバには、異なる種類の前記消耗品毎に個別に、その種類の消耗品を使用することが可能な前記ネットワークグループが対応付けられた使用可能グループ情報が設定されており、
前記画像処理装置の使用可否判断手段は、前記比較手段による比較の結果、前記一致した場合は、更に、その消耗品が、該画像処理装置が属する前記ネットワークグループ内で使用可能な設定となっているか否かを前記サーバに設定されている前記使用可能グループ情報に基づいて判断し、使用可能となっている場合に、その消耗品の使用を許可する
ことを特徴とする消耗品管理システム。
【請求項11】
ネットワークを介して少なくとも1つの画像処理装置と相互に通信可能に接続されるサーバであって、
所定の識別情報が記憶されたサーバ内識別情報記憶部と、
前記サーバ内識別情報記憶部に記憶されている識別情報を前記画像処理装置へ送信する第1識別情報送信手段と、
前記画像処理装置に装着されて使用される消耗品に対し、前記サーバ内識別情報記憶部に記憶されている識別情報を送信する第2識別情報送信手段と、
を備えていることを特徴とするサーバ。

【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−210784(P2012−210784A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78372(P2011−78372)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】