説明

画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】マルチバンド画像の画像品質を目的に応じて高品位に保ちつつ、保存、伝送の際に負荷を減らすことが可能な画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体を提供する。
【解決手段】複数の単バンド画像を取得する取得手段と、各単バンド画像の重要度を決定する決定手段と、前記重要度からマルチスペクトル画像を生成する生成手段とを有し、前記決定手段は、特定波長域に属する単バンド画像に対する重要度をあらかじめ設定する設定手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカラー複写機、カラーファックス、デジタルカメラなどカラー画像を読み込む画像処理装置に関し、特に、分光分布データを用いて対象物の表示色を正確に再現する画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置やデジタルカメラなどの多くの撮像機器では、一般的に光のRGBに対応する3つの透過波長域に対する色分解フィルタを通し撮像される。一方、透過波長域の異なる多種類のフィルタを通して被写体を撮影するマルチスペクトルカメラ等の撮影機器機により、全波長域(例えば可視光域)を波長ごとにバンド分割して各バンドの情報を獲得し、その結果から全波長域の画像情報を獲得する方法が主流になりつつある。
【0003】
ここで、図1は、マルチスペクトルカメラの構成例を示す図である。波長の異なる分光特性をもつ複数のフィルタは、円盤状の回転フィルタ4の円周に沿ってバンド波長順に設置されている。撮影対象物からの反射光は、光学系3を通過し、回転フィルタ4上の一つのフィルタを通過してバンド情報を示す光に分解される。
【0004】
CCDセンサ2の前に配置された回転フィルタ4を駆動モータにより回転させることで、CCDセンサ2に対向するフィルタが切り替わり、入力光を各バンド情報が示す光に分解する。バンド情報を示す光の強度は、CCDセンサ2およびA/D変換器52によってデジタル信号値に変換され、画素に対応した形式でデータ格納部53に格納される。
【0005】
通常、回転フィルタのフィルタ数が少ないほど、サンプリングにかかる処理時間が短縮され、高速撮影が可能になるので、フィルタ数はできるだけ少なくする。
【0006】
マルチスペクトルカメラによって獲得された分光分布データは、フィルタにより分解されるバンドごとの情報であるから、そのままでは全波長域における分光分布データとして用いることはできない。
【0007】
そこで、バンドごとの情報を用いて、全波長域における分光分布データを獲得する必要がある。なお、マルチスペクトルカメラによって獲得されるバンドごとの画像それぞれを[単バンド画像]と呼ぶのに対し、全波長域含む画像を「マルチスペクトル画像」と呼ぶことにする。
【0008】
マルチスペクトルカメラによる撮影では、獲得されるすべてのバンド情報を処理するために、大量のメモリが必要となり、処理時間もかかる。近年、マルチスペクトルカメラで撮影した画像の保存、圧縮方法に関して種々の技術が出願されている。
【0009】
例えば、特許文献1は、画素毎にバンド数が異なり、必要なバンド以外は捨て、全波長域の分光分布データを作成し、マルチスペクトル画像を格納するためのメモリ軽減を目的とする画像処理装置およびその方法が開示されている。
【0010】
これによると、画素毎にバンド数を異ならせ不必要なバンド情報を捨てる事で、マルチスペクトル画像の画質と収納メモリの軽減を実現することが可能となる。
【0011】
特許文献2は、基準となる単バンド画像を決め、可逆圧縮し、残りは、波長域が近接するバンド間の差分画像を作成、圧縮し、データ量を減らし、基準となる単バンド画像はノイズが少なく、画質が良好なものを選出することができる画像圧縮装置、圧縮方法及びプログラムが開示されている。
【0012】
これによると、デジタルカメラを対象とし、最も画質が良い単バンド画像を可逆圧縮、残りを波長域が近接するバンド間の差分画像として(可逆/非可逆)圧縮することでデータ量を減らし収納メモリを軽減できる。
【特許文献1】特開2002−185974号公報
【特許文献2】特開2005−294916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1は、画素単位でバンドを扱う面では、処理が複雑である。
【0014】
特許文献2は、デジタルカメラ画像を対象としているが、入力データの特性を生かしきれないという欠点がある。
【0015】
そこで、本発明は、上述の問題を解決するためのものであり、マルチバンド画像の画像品質を目的に応じて高品位に保ちつつ、保存、伝送の際にメモリ軽減を行う画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、複数の単バンド画像を取得する取得手段と、各単バンド画像の重要度を決定する決定手段と、前記重要度からマルチスペクトル画像を生成する生成手段とを有し、前記決定手段は、特定波長域に属する単バンド画像に対する重要度があらかじめ設定されている画像処理装置であることを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記特定波長域とは、固有画像中における特定部分の色域に属し、前記固有画像の識別に有効な波長域であることを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記特定波長域とは、記憶色が属する波長域であることを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の画像処理装置において、前記決定手段は、複数の条件を組み合わせて重要度を再設定することを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像処理装置において、前記複数の条件は、取得した画像に付随する情報と、取得した画像が特定物体を含むか否かの識別を行った結果と、取得した画像から得られる統計的な評価値とを含むことを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像処理装置において、前記生成手段は、重要度の高い単バンド画像ほど画像品質を高く保つようにマルチスペクトル画像を生成することを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記生成手段は、重要度の低い単バンド画像の解像度を下げる処理と、重要度の低い単バンド画像の圧縮率を上げて圧縮を行う処理とを行うことを特徴とする。
【0023】
請求項8に記載の発明は、複数の単バンド画像を取得する取得工程と、各単バンド画像の重要度を決定する決定工程と、前記重要度からマルチスペクトル画像を生成する生成工程とを有し、前記決定工程は、特定波長域に属する単バンド画像に対する重要度をあらかじめ設定する画像処理方法であることを特徴とする。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項8記載の画像処理方法をコンピュータに実行させるプログラムであることを特徴とする。
【0025】
請求項10に記載の発明は、請求項9記載のプログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な記録媒体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、マルチバンド画像の画像品質を目的に応じて高品位に保ちつつ、保存、伝送の際に負荷を減らすことが可能な画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本実施形態に記載する「単バンド画像」とは、光の一の波長帯のみの強度を示す画像をいう。
また、「マルチスペクトル画像」とは、対応する波長帯(透過波長域)が互いに異なる複数の単バンド画像で構成される画像をいう。
【0028】
本実施形態に係る画像処理装置に対する入力画像データは、マルチスペクトルカメラ等を用い、透過波長域が異なる複数種類のフィルタを通して撮影されたマルチスペクトル画像データを構成する単バンド画像データである。
【0029】
例えば、10個の単バンド画像が対応する波長域は可視光波長域400nm〜700nmの波長域をそれぞれ10個のフィルタが透過する波長帯と一致し、その波長帯の主波長も互いに異なることとなる。
【0030】
また、これは一例であって、波長域は可視光域のみに必ずしも限定する必要はなく、よりチャンネル数(バンド数)が多い(例えば28チャンネルの)マルチスペクトル画像データ、あるいは、よりチャンネル数が少ない(例えば7チャンネルの)マルチスペクトル画像データを入力画像データとすることも可能である。
【0031】
本実施形態では、入力画像データとして、対応する波長帯が互いに異なり、可視光域におけるマルチスペクトル画像を再現するに必要な全てのバンド分の単バンド画像が取得されるとし、バンド数は10個とする。
【0032】
図3を用いると、400nm〜700nmの波長域において10個の波長域がある。波長の短い順から番号を割り振り、バンド情報とする。
【0033】
また、マルチスペクトル画像としての10個の単バンド画像は、マルチスペクトルカメラ等の撮影手段から直接入力することも可能であるが、図2における例では、撮影装置100から出力される全ての単バンド画像データは、画像処理装置200のデータ格納部A101に格納されている。
【0034】
また、データ格納部A101には、撮影時の光源情報も格納されており、データ処理部102において、被写体反射率の単バンド画像データを算出する。
【0035】
重要度決定部103は、各単バンド画像の重要度を設定する。基本的に、画像品質の高く保持したい場合において、重要度は高く設定されるが、その形態は様々である。
【0036】
例えば、絵画の複製を高品位に行いたい場合、絵画固有の特定波長域における単バンド画像の重要度は高く設定されるが、偽造防止を行いたい場合には逆に低く設定されるなど、目的に応じた設定を行う。
【0037】
また、後述する特定波長域の情報としては、記憶色や、紙幣や絵画などの特定した固有画像が持つ色域の波長域情報であり、固有画像の識別に有効な波長域になりえるものの総称である。これらの情報は特定波長域情報として格納されている。詳細は後述する。
【0038】
また、マルチスペクトル画像生成部104は、単バンド画像データ、及び重要度より、マルチスペクトル画像データを生成する。
【0039】
データ格納部B105には、生成されたマルチスペクトル画像データが格納される。また、データ格納部B105は、外部とのネットワークとつながっており、生成されたマルチスペクトル画像を外部に送信することも可能である。
【0040】
一方、色変換部106は、マルチスペクトル画像からプリンタやディスプレイ等の画像出力装置107へ出力するのに適した色信号データ116を生成する。
【0041】
以下、上述した実施例を用いてさらに詳細に本発明にかかる画像処理装置を説明する。
【実施例1】
【0042】
本実施例にかかる画像処理装置の処理について図4および図8を用いて説明する。
本実施例では、図4を用いて被写体の反射率を利用した特定波長域(記憶色)有無の判別に関して、また、図8を用いて、本実施例の処理手順の一例を説明する。
本実施例では、入力画像が自然画像である例である。
【0043】
まず、入力画像が自然画像であり、画像出力装置において色を高品位に保って出力したい場合について説明する。
【0044】
入力画像が空や人物の肌などで、その分光分布が特定波長域に偏っている場合、取得した10個の単バンド画像のうち重要なのは特定波長域に属する数個であり、残りの情報はあまり重要ではない。
データ処理部102は、入力画像データである単バンド画像データ110から被写体反射率に関する単バンド反射率画像データ112を算出する手段である。
【0045】
最初に、単バンド画像を取得する(ステップS1)。
取得された各単バンド画像は、(被写体の反射率)×(光源のエネルギー)となっている。
【0046】
よって、各単バンド画像データの各画素のデータを光源分光分布の対象波長における値で割ることにより、各バンドの反射率を求めることができる。光源分光分布データ記憶部201には、予め光源の分光分布データが記憶されている。
【0047】
次に、光源の分光分布データ201を取得する(ステップS2)。
取得は光源条件入力/設定手段203で指定する。
【0048】
次に、単バンド反射率画像を取得する(ステップS3)。
取得方法について以下に述べる。
光源分光分布データ記憶部201には、いくつかの典型的な光源の分光分布データ、例えば、自然光源(晴天、曇天)、蛍光灯、白熱灯、1種類以上のストロボ光源などの分光分布データが予め記憶されている。
【0049】
ここに記憶されている光源のいずれかの分光分布データを反射率の算出に利用したい場合には、光源条件入力/設定手段203より撮影条件(晴天、雨天、蛍光灯など)を指定する。
【0050】
例えば、晴天が指定された場合には、制御手段202の制御により、光源分光分布データ記憶部201に記憶されている晴天の分光分布データがデータ処理部102に与えられる。
【0051】
また、他の例として、ストロボ有りの撮影であった場合、ストロボの分光分布データが光源分光分布データ記録手部201から呼び出され、データ処理部に渡される。データ処理部102は、与えられた光源の分光分布データを用いて各単バンド画像データを割ることにより、単バンド反射率画像データ112を算出する。
【0052】
重要度決定部103は、特定波長域情報304を取得する(ステップS4)。
次に、図5における重要度決定部103では、単バンド反射率画像データ112と取得した特定波長域情報304を用いて、重要とするバンドの選択を行う。
【0053】
特定波長域情報格納部304には、典型的な記憶色のデータ、例えば人間の肌、青空、木々の緑などの分光反射率において、どの波長域が重要であるかに関する情報が格納されている。
【0054】
画像条件入力/設定手段305によって、入力画像が自然画像であることが指定されると、特定波長域情報格納部304に格納されている記憶色の波長域情報が解析処理部に送信され、解析処理手段306において、被写体解析が行われる(ステップS5)。
【0055】
例えば、肌色において、重要となる波長域に属する単バンド画像において、空間的な分布の偏りや、ヒストグラム連続性などの統計的な情報を取得し、その単バンド画像内におけるあるレベル以上の画素の占有率を算出する。
【0056】
更に各単バンド画像データに対して重要度を設定する(ステップS6)。例えば、ステップS5において、記憶色の占有率が高かった単バンド画像には重要度が高く設定され、占有率が低かった画像、もしくは記憶色外の波長域に対する単バンド画像には重要度が低く設定される。
【0057】
次に、図6におけるマルチスペクトル画像生成部104において、各単バンド画像の品質を異ならせる。具体的には、各単バンド画像に対して設定された重要度情報117と、単バンド画像データ110が入力されると、重要度の高いバンド画像ほど高品質となるような画像処理が行われる。
【0058】
例えば、解像度処理手部401において重要度の低い単バンド画像に対し解像度を落とす解析度処理が行われる(ステップS7)。若しくは、圧縮処理部403において重要度の高い単バンド画像に対しては可逆圧縮方式、低い単バンド画像に対しては非可逆圧縮方式を用い、さらに高い圧縮率で符号化が成される(ステップS8)。
圧縮方法に関しては既知の方法を用いればよく、例えば、Jpeg形式やJpeg2000形式などと同様の方式を選択することが可能である。
【0059】
ステップS8の処理で、圧縮処理を行った後、画像が記録される(ステップS9)。生成されたマルチスペクトル画像114はデータ格納部Bに格納され、必要に応じて外部ネットワーク108に接続された装置によって外部に送信される。
【0060】
一方、色変換部106は、マルチスペクトル画像の色変換を行う(ステップS10)。これをCMYKデータとして、画像出力装置107に送信する。出力装置107は、画像処理装置200から出力されるCMYKデータを用いて画像を出力する。本実施例では、出力される色信号をRGBとする(ステップS11)。
【0061】
生成されたマルチスペクトル画像データを、RGB表色系の等色関数とのコンボリューション演算によって積分し、三つの値を持つ表色ベクトルデータに変換する。
【0062】
一般には、三つの値をもつ表色ベクトルデータにはL*a*b*表色系やXYZ表色系などのデバイスに独立な色空間のデータが選択される。より具体的には、マルチスペクトル画像データより、分光分布データP(λ)、XYZ表色系の等色関数x(λ),y(λ),z(λ)を用いて以下の式により三刺激値XYZを求め、次にこの三刺激値からRGB信号への変換を行う。
x=∫P(λ)・x(λ)dλ(380nm≦λ≦780nm)
Y=∫P(λ)・y(λ)dλ(380nm≦λ≦780nm)
Z=∫P(λ)・z(λ)dλ(380nm≦λ≦780nm)
得られた三つの値をもつ表色ベクトルデータは、画像処理装置200から画像出力装置107に伝送される。画像出力装置107は、三つの値をもつ表色ベクトルデータを観察環境における最適な画像出力装置107の出力信号データ116に変換する。
【0063】
画像出力装置107としては、RGB信号値を用いるディスプレイや、CMYK信号を用いるプリンタ、および、RGB、CMYK以外の多色信号値を用いるディスプレイ若しくはプリンタなどが挙げられる。
【0064】
このような出力装置においては、三値の表色ベクトルデータに対して、出力装置のしゅつりょく特性を考慮して適切な出力を行うためのCMS(カラーマネジメントシステム)などの機能が存在する。そこで、色変換部106の処理は、このようなCMSを利用して画像出力装置107に適切な出力信号116を生成する。
【0065】
本実施例では、プリンタに対し、色変換テーブルによる線形補間演算方法を用いる。この方法では図7のようにRGB3次元入力空間を格子状に分割し、各格子点に対して色変換パラメータ、すなわちプリンタ用CMYK色信号の各値を設定し、格子点間の入力色に関しては、近傍の8つの格子点パラメータを用いて線形補間を行うことにより出力値116を求める。
【0066】
以上の処理によって、入力画像データに適したマルチスペクトル画像データを取得するための画像信号処理を実現する。
【0067】
本実施例によれば、透過波長域が互いに異なる複数の単バンド画像からなるマルチスペクトル画像を生成する際に、複数の単バンド画像を取得し、各単バンド画像の重要度を決定し、前記重要度を用いて単バンド画像の画像品質を異ならせてマルチスペクトル画像を生成する際に、特定波長域に属する単バンド画像に対する重要度をあらかじめ設定しているため、画像品質の劣化を最小限にしつつ、生成されるマルチスペクトル画像のデータサイズを小さくできる。
【0068】
また、特定波長域とは固有画像の識別に有効な波長域であり、画像中における特定部分の色域に属するため、画像固有の色品質の劣化を最小限にしつつマルチスペクトル画像を生成できる。
【0069】
さらに、特定波長域として記憶色が属する波長域を用いているので、記憶色を正確に再現するマルチスペクトル画像を生成できる。
【実施例2】
【0070】
本実施例にかかる画像処理装置の処理について図2および図10を用いて説明する。
本実施例では、入力画像がデジタルカメラファイルフォーマットである。
図10は、本実施例の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0071】
図2におけるデータ格納部A101からデータ処理部102には入力画像データが110が渡される(ステップS20)。
ここで、実施例1との違いは、渡されるデータが撮影時の設定等を記述したヘッダ情報付きのデータであると言うことである。
具体的には、デジタルカメラファイルフォーマットの標準であるExifファイル形式である。
【0072】
データ処理手段102においてヘッダ情報が抽出され112、重要度決定部103に渡される(ステップS21)。
【0073】
個々で、Exifファイル形式を用いれば、撮影時の被写体モード(人物撮影、風景撮影、夜間撮影)やストロボの有無、重要視したい色域などを知ることができる。
【0074】
例えば面積率が小さい人物部分であっても、被写体モードが人物に設定されていれば肌色を重要視することができる。
【0075】
重要度決定部103において画像条件入力/設定部305により入力画像が先のデジタルカメラファイルフォーマット画像であることが指定されると、解析処理部306において、先のヘッダファイル112情報を解析する(ステップS22)。
【0076】
次に、特定波長域情報格納部304から被写体に有効な波長域を得る(ステップS23)。
【0077】
重要度結果算出303は、各単バンド画像に対する重要度を設定し、重要度情報117を作成する(ステップS24)。
【0078】
次以降の処理では、実施例1におけるステップS7以降の処理と同じである。
【0079】
即ち、解像度処理を行う(ステップS25)。その後、圧縮処理を行う(ステップS26)。その後、マルチスペクトル画像の記録を行う(ステップS27)。その後、色変換処理を行う(ステップS28)。その後、画像出力を行い、終了する(ステップS29)。
【0080】
このように、デジタルカメラファイルフォーマットに付随している情報を用いれば、単バンド画像データを直接解析することなく、重要な波長域を決定することができるので、各単バンド画像の重要度を高速に設定することができるなど、実施例1よりも高精細かつ高速な処理を行うことも可能である。
【0081】
本実施例によれば、取得した画像に付随する情報を用いて各単バンド画像の重要度を設定しているので、画像固有の色を正確に再現するマルチスペクトル画像を生成できる。
【実施例3】
【0082】
本実施例にかかる画像処理装置の処理について図4、図5および図6を用いて説明する。
本実施例では、入力画像がスキャナから読み込まれた画像である。
【0083】
本実施例の場合、光源条件入力/設定部203を介し、光源分光分布データ111は、スキャナで使用されている光源が選択される。
【0084】
また、画像条件入力/設定手段305では、画像データがスキャナ入力画像であることを設定する。
【0085】
重要度決定部103において、出力画像の目的に応じて重要度を設定しなくてはならない。本実施例では、入力画像が以下の場合について述べる。
(1)絵画の精巧な複製画像を得たい場合
(2)一般の文書画像の一部に画像がレイアウトされている場合
(3)紙幣や証券の偽造防止を行いたい場合
【0086】
(1)絵画の精巧な複製画像を得たい場合
特定波長域情報格納部304には絵画の識別に有効な波長情報が格納されている。精巧な複製画を得たい場合、絵画の識別に有効な波長域に対応する単バンド画像の重要度を大きく設定するという意味で実施例1と同じ動作である。
【0087】
(2)一般の文書画像の一部に画像がレイアウトされている場合
文書/絵柄混在の場合、一般的に色味が重視されるのは絵柄の部分であるため、解析処理306において、像域分離処理を行い、画像の絵柄部分のみを抽出し重要度を設定する。絵柄部分が自然画像の場合は実施例1と同じ動作をし、絵柄部分が絵画などの固有画像である場合は(1)の例と同じ動作をする。
【0088】
(3)紙幣や証券の偽造防止を行いたい場合
特定波長域情報格納部304には紙幣の識別に有効な波長情報が格納されている。偽造防止を行いたい場合、被写体、つまり紙幣の識別に有効な波長域に対応する単バンド画像の重要度を小さく設定する。さらに、偽造防止が目的の場合、重要度を低くした単バンド画像と空間的に相間の高いバンド画像に関しても重要度を低く設定し、その後のマルチスペクトル画像生成部104において、それら単バンド画像の画像品質を落とし、精巧な複製ができないような画像処理を行う。
【実施例4】
【0089】
(記録媒体例)
本実施例について図9を用いて説明する。
図9は、本画像処理装置のシステム構成例を示すブロツク図である。
図9に示す画像処理システムは、ワークステーションとプリンタが接続されている。
ワークステーション(コンピュータ)102は、前記した画像処理の機能を実現するもので、ディスブレイ103、キーボード12、ブログラム読取装置10および演算処理装置30などで構成されている。
【0090】
演算処理装置30は、種々のコマンドを実行可能なCPU21に、ROM22、RAM23かバスで接続され構成されている。
【0091】
また、パスには大容量記憶装置であるDlSK24と、ネットワーク上の機器と通信を行なうNlC25が接続されている。
【0092】
プログラム読取装置10は、各種のプログラムコードを記憶した記憶媒体、すなわち、フロツピディスク、ハードディスク、光ディスク(CD‐R0M,CD一R,CD−R/W,DVD−ROM,DVD―RAMなど)、光磁気ディスク、メモリカードなどに記憶されているプログラムコードを読み取る装置で、例えば、フロッビディスクドライブ、光ディスクドライブ、光磁気ディスクドライプなどである。
【0093】
記憶媒体に記憶されているブログラムコードは、プログラム読取装置10で読み取って、DlSK24などに格納され、このDlSK24などに格納されたブログラムコードをCPU21によって実行することにより、前記した画像処理方法などを実現することができるようになる。
【0094】
また、コンピユータか読み出したブログラムコードを実行することにより、そのブログラムコードの指示に基づき、コンビュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)やデパイス・ドライパなどか実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前記した機能が達成ざれる場合も含まれる。
【0095】
ここで、本発明は、回転フィルタを用いるマルチスペクトルカメラの利用に限定されるものではなく、例えば複数の波長に感度を有するフィルタを配置したエリアセンサーで構成されるマルチスペクトルカメラにも適用可能である。
【0096】
さらに、特定波長の光を発光する複数の光源を切り替える、複数の波長に感度を有するフィルタを切り替えるラインセンサによって構成されるマルチスペクトルカメラであっても良い。
【0097】
つまり、所定の波長域における短バンド画像を獲得することができるマルチカメラであればよく、その光学的構成には依存しない。
【0098】
また、以上の実施例で説明した本発明の画像処理装置における処理の手順は、本発明の画像処理方法の手順でもある。
【0099】
したがって本発明の画像処理方法についての説明は繰り返さない。また、本発明の画像処理方法の手順をパソコンやコンピュータ上でソフトウェア処理により容易に実現し得ることは明白である。そのためのプログラムはアプリケーションプログラムの形をとることも出来る。
【0100】
また、本発明の画像処理装置はハードウェアとして実現し得ることは当然であるが、さらにコンピュータ上でソフトウェア処理により実現できることも明白である。
本発明の画像処理装置をコンピュータ上で実現するためのプログラム、及び同プログラムが記憶された磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、及び同プログラムが記録された磁気ディスク、光ディスク、記憶素子などの各種媒体も本発明に記憶できる。
【0101】
本発明によれば、取得した画像が特定物体を含むか否かの識別を行い、その結果を用いて各単バンド画像の重要度を設定しているので、識別結果に応じてマルチスペクトル画像のデータサイズを制御できる。
【0102】
また、取得した画像から得られる統計的な評価値を用いて特定色域の占有率を解析し、その結果を用いて重要度を再設定しているので、識別結果に応じてマルチスペクトル画像のデータサイズを制御できる。
【0103】
また、複数の条件を組み合わせで重要度を再設定しなおしているので、画像の使用目的に適した色再現を行うマルチスペクトル画像を生成できる。
【0104】
また、空間的に相間の高い単バンド画像間において、重要度を同程度に設定しなおしているので画像の使用目的に適した色再現を行うマルチスペクトル画像を生成できる。
【0105】
また、重要度の高い単バンド画像ほど画像品質を高く保つようにマルチスペクトル画像を生成しているため、画像の使用目的に適した色再現を行うマルチスペクトル画像を生成できる。
【0106】
また、重要度の低い単バンド画像の解像度を下げているので、生成されるマルチスペクトル画像のデータサイズを効率的に小さくできる。
【0107】
さらに、重要度の低い単バンド画像の圧縮率を上げて圧縮を行っているので、生成されるマルチスペクトル画像のデータサイズを効率的に小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】マルチスペクトルカメラの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明にかかる画像処理装置の処理の一例を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明にかかるバンド情報を示す図である。
【図4】本発明にかかる画像処理装置の処理全体を説明するためのブロック図である。
【図5】本発明にかかる重要度決定部の処理を説明するためのブロック図である。
【図6】本発明にかかるマルチスペクトル画像生成部の処理を説明するためのブロック図である。
【図7】RGB3次元入力空間を格子状に分割し、各格子点に対して色変換パラメータを示す図である。
【図8】第1の実施例にかかる画像処理装置の処理を示すフローチャート図である。
【図9】本発明にかかる画像処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図10】第2の実施例にかかる画像処理装置の処理を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0109】
100 撮影装置
101 データ格納部A
102 データ処理部
103 重要度決定部(決定手段)
104 マルチスペクトル画像生成部(生成手段)
105 データ格納部B
106 色変換部
200 画像処理装置
107 画像出力装置
116 色信号データ
112 単バンド反射率画像データ
201 光源分光分布データ記憶部
203 光源条件入力/設定手段
304 特定波長域情報
305 画像条件入力/設定手段
306 解析処理手段
401 解像度処理手部
403 圧縮処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単バンド画像を取得する取得手段と、
各単バンド画像の重要度を決定する決定手段と、
前記重要度からマルチスペクトル画像を生成する生成手段とを有し、
前記決定手段は、特定波長域に属する単バンド画像に対する重要度があらかじめ設定されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記特定波長域とは、固有画像中における特定部分の色域に属し、前記固有画像の識別に有効な波長域であることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記特定波長域とは、記憶色が属する波長域であることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記決定手段は、複数の条件を組み合わせて重要度を再設定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記複数の条件は、取得した画像に付随する情報と、取得した画像が特定物体を含むか否かの識別を行った結果と、取得した画像から得られる統計的な評価値とを含むことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記生成手段は、重要度の高い単バンド画像ほど画像品質を高く保つようにマルチスペクトル画像を生成することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記生成手段は、重要度の低い単バンド画像の解像度を下げる処理と、重要度の低い単バンド画像の圧縮率を上げて圧縮を行う処理とを行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
複数の単バンド画像を取得する取得工程と、
各単バンド画像の重要度を決定する決定工程と、
前記重要度からマルチスペクトル画像を生成する生成工程とを有し、
前記決定工程は、特定波長域に属する単バンド画像に対する重要度をあらかじめ設定することを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
請求項8記載の画像処理方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項10】
請求項9記載のプログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−159068(P2009−159068A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332501(P2007−332501)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】