説明

画像処理装置、画像処理方法、印刷システムおよびプログラム

【課題】 複数の装置で画像処理を分散して行う場合、他の装置で実行した処理を重複して実行することが多く、システム全体の処理効率が良くない。
【解決手段】 各装置で実行した処理に基づいて、処理履歴と補正指示とを更新し、更新した処理履歴と補正指示とを次の装置に送信し、次の装置が補正指示と処理履歴とに基づいて自身で画像に実行する処理を特定して実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理を必要とする画像処理装置、画像処理方法、印刷システムおよびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているプリント注文処理システムのように、画像を補正する処理を伴う印刷システムでは、その処理の負荷を分散するために、複数の装置で処理を分担して実行することがある。
【0003】
画像補正処理の多くは、まず補正対象の有無を判別し、次に補正処理に必要となるパラメータを抽出し、更に抽出したパラメータを利用して画像を補正するという一連の処理を有している。(補正対象の有無を判別する処理は補正処理の種類によっては省略可能である)。例えば、赤目現象(カメラのストロボ等を利用した撮影によって被写体の目が赤く写る現象)を補正する赤目補正を行う場合は顔検出によって画像中に顔が存在するかどうか判別し、顔が存在するならば黒目部分の位置や大きさをパラメータとして抽出する。更に、抽出したパラメータに基づいて赤くなっている黒目部分を予め用意している色に置き換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−172333
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のプリンタは、他の装置で画像データからどの様なパラメータを取得したか又は画像データにどの様な処理を実行したかなどの情報を取得していないので、既に他の装置で実行した処理を重複して実行することもあり、システム全体の処理効率が良くない。
【0006】
また、特許文献1のシステムでは顧客PC側でもデジタルカメラ等から取得した画像に補正処理をしている。デジタルカメラから入力する画像データは既にJPEG等の形式に符号化されていることが多いので補正処理のために複合化する必要がある。ここで、符号化と複合化の繰り返しは画像品質を劣化させる可能性があるので、補正した画像は高圧縮の符号化をせずに他の画像処理に送ることが好ましい。しかし、システムの前段で画像補正まで実行してしまうと、各画像処理装置間のトラフィックが増加してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る画像処理装置は、画像と当該画像に対する補正指示とを受け付ける受付手段と、前記画像から、前記画像について実行された画像処理の履歴を取得する取得手段と、前記履歴に基づいて前記補正指示を更新する更新手段と、前記更新手段の更新した補正指示の示す処理を前記画像に実行する画像処理手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、他の画像処理装置で実行済みの画像補正又はパラメータを取得できるので、重複して処理をすることを低減させシステムの処理効率を向上させることができる。
【0009】
また、本発明によれば、符号化による画像品質の劣化とトラフィック量の増加とを抑制しつつ効率的に画像補正処理の負荷を分散させ、システムの処理効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態としての印刷装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態としての印刷システムの構成を示すブロック図である。
【図3】補正処理情報の統合処理について説明するための図である。
【図4】補正処理情報の統合処理のフローチャートである。
【図5】画像処理部の処理を示すフローチャートである。
【図6】印刷制御部の処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態としての印刷システムの構成を示すブロック図である。
【図8】補正処理項目の適用ポリシー設定メニューと補正処理項目設定メニューとを示す図である。
【図9】機器設定、ジョブ情報のテーブルと統合したテーブルとを示す図である。
【図10】検出処理と補正処理の対応を示す分割リストの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を例示的に詳細に説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成要素の相対配置、装置形状等は、あくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
また、本明細書において「プリンタ」とは、印刷機能に特化した専用機に限らず、印刷機能とその他の機能を複合した複合機や、記録紙上に画像やパターンを形成する製造装置等も含むものとする。
【0013】
(実施例1)
図2は、本発明の一実施形態である実施例1に係る印刷システムの概略構成を示すブロック図である。図2の印刷システムは印刷する画像と印刷要求とをユーザーから受け付ける受付装置201と、ユーザーが印刷する指示をした画像を印刷する印刷装置213とを有している。受付装置201と印刷装置213はインターネット等の通信網(以下、ネットワークと称す)で通信可能に接続されている。各装置は画像処理部205(第1画像処理手段)、217(第2画像処理手段)を備え、これらの複数の画像処理部によって入力画像を分担して処理してから印刷部220で印刷をする。
【0014】
受付装置201は、画像入力部202、ユーザーインターフェース203(操作手段、以下、UI部と称す)、受付処理制御部204、画像処理部207を備える。受付装置201は、ユーザーが扱うパーソナルコンピューター(以降、PCと称す)やフォトプリンタ、デジタルカメラ等の装置である。
【0015】
画像入力部202はスキャナやメモリカードリーダ、BluetoothやUSB(Universal Serial Bus)などの入出力インターフェースであり、外部から画像データを取得する。UI部203はタッチパネルやボタン、キーボードを備え、ユーザーからの操作を受け付け、ユーザーからの印刷要求を取得する。印刷要求はプリントアウトまでに行う画像補正を示す補正指示を含んでいる。なお、ユーザーが明確に補正指示を設定しなくとも、例えば初期設定で装置又はアプリケーションに所定の画像補正が設定され、ユーザーが初期設定を変更しない限りデフォルトの補正指示が発行されるようにしてもよい。
【0016】
画像処理部205の解読部206はUI部203から補正指示を取得し、更に画像入力部202より得られる画像データに、画像補正やパラメータ取得に関する処理履歴および画像から取得したパラメータが添付されていないかを解読して取得する。そして画像処理部205で実行させる処理を決定する。解読部206は、入力される画像を解読するために種々の画像フォーマットのメタデータを解釈するための辞書や、後述のDTD(Document Type Definition)を保持している。
【0017】
例えば、画像入力部202で取得した画像がデジタルカメラで撮像された画像である場合、補正履歴としてはホワイトバランス補正、露出補正、色補正などを実行した履歴が残されていることがある。また、顔認識機能のあるデジタルカメラで撮像された画像についてはパラメータとして認識した顔の位置、大きさ、個数などがメタデータとして添付されることがある。また、他のPCで処理されているものについてはデジタルカメラで撮像されたものに加えて赤目補正、色補正、明度補正、彩度補正、シャープネス処理、覆い焼き処理等を実行したことを示す情報が補正履歴として残っていることがあり、各補正処理に関連するパラメータが補正履歴と関連付けられて添付されている。
【0018】
画像処理部205の更新部207は、画像処理部207が画像データに対して行った補正処理や検出処理の履歴および関係するパラメータを画像データに付加する。例えば、補正指示が美肌補正処理を示している場合、美肌補正処理に関係する処理として肌色領域検出処理や顔検出処理を実行し、各検出処理で取得したパラメータを更新部207によって記録する。検出処理と補正処理の関係は後述の分割リスト(図10参照)を参照すればよい。なお、更新部207は、検出処理や補正処理を実行した履歴を、補正処理で扱ったパラメータと一緒にXML(eXtensible Markup Language)形式で画像データに添付する。従って、解読部206はXMLのタグを定義するDTDを保持し、DTDを参照することでXMLの記述が示す処理履歴の内容を解釈する。なお、更新部207は受付処理制御部204から取得する補正指示を更新し処理履歴と同様にXML形式で画像データに添付してもよい。
【0019】
受付処理制御部204は画像処理部205に画像処理を実施させてから、印刷装置213へユーザーから印刷要求のある画像データと補正指示情報と更新した補正履歴と受付装置201で検出したパラメータとを印刷ジョブとして送信する。
【0020】
印刷装置213は、UI部215、統合部216、画像処理部219、印刷部220を備える。
【0021】
UI部215によって印刷装置213に固有の機器設定がなされる。機器設定は図8に示すように、印刷装置213の実行可能な補正処理の夫々について「実施:履歴が無ければ実施する。」、「必須:履歴の有無に関わらず常に実施する」、「スキップ:自身では実施しない」の何れか1つの条件が設定されていることを示す。
【0022】
統合部216は印刷制御部214が受付装置201から取得した補正指示と処理履歴と、UI部215から取得した機器設定とに基づいて画像処理部217に送信する補正指示を作成する。統合部216は前述のDTDを保持し、更新部207がXML形式で画像データに添付した処理履歴を解釈する。なお、更新部207が補正指示もXML形式で記述している場合はXML形式の補正指示を定義するDTDも保持する必要がある。
【0023】
印刷制御部214は印刷対象の画像データと、この画像データの処理に用いたパラメータと、印刷対象の画像データに対する補正指示とを受付装置201から受信する。さらに、この画像データについて統合部216が統合した補正指示を画像データやパラメータと一緒に画像処理部217へ送信する。
【0024】
画像処理部217は自身で実行する処理を、取得した補正指示に基づいて特定し、特定した処理を実行する。印刷部220は画像処理部217による画像補正が完了した画像を印刷する。なお、印刷装置213は図1に示すプリンタ100であり、その詳細は後述する。
【0025】
次に図2の印刷システムを用いて画像を印刷する処理の概要を図3のフローチャートを用いて説明する。
【0026】
まず、ステップS301において受付装置201の画像入力部202がユーザーから画像データと画像に対して希望する画像補正の設定を含む印刷要求とを受け付ける。
【0027】
ステップS302で受付装置201の解読部206は印刷要求から補正指示を取得する。さらに、画像入力部202から入力した画像データに処理履歴やパラメータが添付されている場合には処理履歴やパラメータを取得する。
【0028】
次にステップS303で、受付装置201の解読部206は補正指示と処理履歴およびパラメータに基づいて、自身(ここでは画像処理部205)で実行する処理を決定する。
【0029】
ステップS304で画像処理部205は解読部206の決定した処理を実行する。
【0030】
ステップS305で受付装置201の更新部207は画像処理部205の実行した処理に基づいて処理履歴を更新し、更新した処理履歴と関係するパラメータを処理対象の画像データに添付する。
【0031】
ステップS306で、印刷する画像を処理する次の装置(ここでは印刷装置213)があるのでステップS307に遷移する。そして、ステップS307で受付処理制御部204が、印刷装置213にユーザーから印刷要求のある画像データと補正指示と更新した補正履歴と受付装置201で検出したパラメータとを含む印刷ジョブを後段の印刷装置213へ送信する。
【0032】
印刷装置側で解読部218、更新部219および画像処理部217は上述のステップS302〜S306までの処理を実行する。(詳細は省略。)
ステップS306で、印刷する画像を処理する次の装置がない場合は、ステップS308で画像処理部217が印刷用のレンダリングデータを作成し、印刷部220がレンダリングデータに基づいて印刷を実行する。
【0033】
次に、解読部206(又は解読部218)の処理を図5のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS501で補正指示と処理履歴とを読み込み、処理履歴に基づいて補正指示を更新する。さらに、ステップS502では画像処理部205(又は画像処理部217)で実施する検出処理と補正処理とを特定する。処理履歴に基づいて補正指示を更新する方法についての詳細は後述する。
【0034】
どの検出処理、補正処理を自身の画像処理部205(又は217)で実行するかを特定する方法として、補正指示の示す補正処理に関する検出処理は受付装置201が優先的に実施する様にし、印刷装置213では補正指示の示す残りの処理を実施する。または、各装置の処理負荷や、印刷ジョブの種類などから自身の画像処理部で処理すべきかどうか決定するようにしてもよい。
【0035】
ステップS502で特定した処理の中に検出処理があればステップS503で分岐しステップS504に遷移して、パラメータを取得するために検出処理を行う。さらに、ステップS505で、処理履歴と補正指示とを更新し取得したパラメータを画像に添付する。一方、検出処理が実行する処理として特定されていなければステップS503からステップS506へ遷移する。
【0036】
ステップS506ではステップS502で特定した処理の中で補正処理が有るか否かを判断し、無いと判断された場合には処理を終了する。一方、ステップS502で特定した補正処理が有る場合には、ステップS507でその補正処理を実行する。そして、ステップS508で補正処理の出力結果を確認し、エラーが発生していればステップS509に遷移して、エラーが発生したことを後述する受付処理制御部204(又は印刷制御部214)に通知する。一方エラーが発生していなければ、ステップS510に遷移し、実行した補正処理に基づいて処理履歴を更新し、処理を終了する。
【0037】
次に、印刷ジョブに含まれる処理履歴、補正指示を参照して、印刷装置213の統合部216が補正指示を更新する処理について図4のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
まず、ステップS401で機器設定を取得する。続いて、ステップS402で印刷ジョブの処理履歴と補正指示(テーブル302)とを読み込む。さらにステップS403で機器設定を補正指示に統合する。ここで、ステップS402で印刷ジョブに補正指示が添付されていない場合は、ステップ403で、機器設定の示す内容が補正指示として変換される。
【0039】
次に、図9を用いて、機器設定と処理履歴とを統合する処理(図4のステップS403)と、処理履歴に基づいて補正指示を更新する処理(図4のステップS404)の詳細を説明する。図9のテーブル301は図8の機器設定802から作成したテーブルである。テーブル302は統合部216が受付装置201から取得した補正指示と処理履歴とを示す。テーブル303はテーブル302とテーブル301に基づいて統合部216が更新した補正指示と処理履歴とを示す。
【0040】
図8の機器設定802では、「美肌補正」、「ノイズ除去(ノイズ補正)」、「シーン補正」が「実施」の設定、「ノイズ補正」および「シーン補正」が「必須」の設定として、更に赤目補正が「スキップ」の設定として夫々保持されている。なお、「シャープネス」に関して設定はない。この機器設定802について、「実施」、「必須」の設定にある処理を補正指示、「スキップ」の設定にある処理を処理履歴として統合部216が変換したものが機器設定テーブル301である。ここでは「ノイズ除去」、「赤目補正」、「逆光補正」が「補正指示」の項目に、「美肌補正」が「処理履歴」の項目に設定されている。
【0041】
まず、統合部216はテーブル301、302ではノイズ除去が「補正指示」の項目にあるためテーブル303の「補正指示」にノイズ除去を追加する。一方、美肌補正はテーブル301では「補正指示」の項目にあるが、テーブル302では「処理履歴」の項目にあるため、テーブル303の処理履歴に追加する。同様に、シーン補正はテーブル301の「補正指示」の項目にあり、テーブル302には「補正指示」、「処理履歴」どちらの項目にもないのでテーブル303の「補正指示」の項目に追加する。なお、美肌補正に「必須」のフラグがある場合には、テーブル302の「処理履歴」の項目に美肌補正があっても、テーブル303の「補正指示」の項目に美肌補正を追加する。
【0042】
テーブル302において赤目補正は「補正指示」の項目にあるので、テーブル303の「処理履歴」の項目に赤目補正を加え、印刷装置213の画像処理部217による赤目補正がスキップされるようにする。
【0043】
また、テーブル302の「補正指示」の項目には逆光補正が有るが、印刷装置213の機器設定802には逆光補正の項目がない。これは、印刷装置213の画像処理部217に逆光補正の機能が備わっていないことを示している。
【0044】
また、統合部216は統合処理において、エラー履歴を引き起こした補正指示を処理履歴に追加することで、一度エラーを引き起こした補正指示を削除しスキップさせることが可能である。統合部216によってエラーを引き起こした補正指示を処理履歴に追加してスキップさせる場合は、予め統合設定801で「補正エラー発生時に統合する」の設定にチェックする。
【0045】
ここで、印刷制御部214によるエラー発生時の処理の概略を図6に示すフローチャートを用いて説明する。まず、UI部215で印刷制御部214に設定された統合設定801に基づいてステップS601において、統合部216による補正指示の統合処理を実施するか否かを判断する。なお、統合設定801において「補正エラー発生時に統合する」と「常に統合する」とは同時にチェック可能である。一方で、「統合しない」にチェックした場合は、「補正エラー発生時に統合する」もしくは「常に統合する」はチェックできない。
【0046】
ステップS601において補正指示を統合すると判断した場合はステップS602に遷移し、統合部216に統合処理を実行させて更新した補正指示を取得する。ステップS603では、画像処理部217を呼び出してステップS602で更新した補正指示の示す処理を行い、ステップS604で補正処理が成功したか判断する。補正処理が成功したら、ステップS605で印刷部を呼び出し、処理の完了した画像を印刷して終了する。
【0047】
ステップS604で補正処理にエラーが有った場合には、ステップS606に遷移し、統合設定801の設定が「補正エラー発生時に統合する」であるか否かを判断する。
【0048】
統合設定801の設定が「補正エラー発生時に統合する」でない場合、ステップS607に遷移してUI部215へエラーを通知し、処理を終了する。一方で、統合設定801の設定が「補正エラー発生時に統合する」である場合、ステップS608に遷移して、統合フラグをONにしてS601に遷移する。統合フラグをONにすることで、ステップS601からステップS602に遷移して統合処理を実施し、エラーを引き起こした補正指示は統合部216によって処理履歴に追加され画像処理部217による処理はスキップされる。
【0049】
[処理の分割]
解読部206(又は解読部218)は、検出処理と補正処理の関係を示す分割リストを参照して、自身で実行する処理を特定する。そのため、解読部206(又は解読部218)は、補正指示の示す処理を複数の処理に分割するための分割リストを有している。図10は分割リストの一部(赤目補正の分割リスト1001)と赤目補正と美肌補正、ノイズ補正を分割した際の対応関係1002とを示している。
【0050】
分割リストは、各補正指示の示す補正処理を複数に分割した処理の夫々と、処理順と、分割した処理の属性(補正か検出)、分割した処理が省略可能か否かを示すフラグとを有する。
【0051】
例えば、赤目補正は分割リスト1001に示すように「色置換」、「黒目領域抽出」、「顔領域抽出」、「肌色領域抽出」の4つに分割でき、また美肌補正は「肌色領域抽出」、「ノイズ(ゴミ、ホコリ)抽出」「中間値フィルタによる補正(不図示)」の3つの処理に分割できるとする。解読部206(又は解読部218)が取得した補正指示に「赤目補正」がある場合、解読部206(又は解読部218)は印刷ジョブから赤目補正の処理履歴を探した後に「黒目領域抽出」⇒「顔領域抽出」⇒「肌色領域抽出」の順に処理の履歴を探索する。履歴に合致するものがあれば、その履歴に関するパラメータを取得し、細分化した処理の中で未処理のものを補正指示として更新部207(又は更新部219)。
【0052】
そして、細分化リストの処理の属性を参照してどの処理を自身の画像処理部205(又は画像処理部217)に実行させるかを特定する。省略可能なフラグのある処理は処理履歴やパラメータが無ければスキップするようにしてもよい。例えば、赤目補正において、顔領域や肌色領域が分かっていれば黒目領域を探索する領域を前もって絞り込むことができるので処理を高速にできるが、必ずしも必須ではない。
【0053】
以上のような分割リストを用いることで、複数の補正処理について部分的に共通化できる検出処理を識別することもできる。例えば、対応関係1002の最上段は赤目補正の分割リストの検出処理と補正処理の関係を示し(矢印は処理順序)、肌色抽出処理は赤目補正と美肌補正に利用できる事を示し、ノイズ抽出は美肌補正とノイズ補正に利用できることを示す。従って各補正処理について分割リストを保持しておけば各補正処理に用いる検出処理を部分的に共通化し、さらに効率良く分散処理ができるようになる。なお、統合部216に分割リストを保持させ統合部216で同様の処理を行うようにしてもよい。
【0054】
[印刷装置]
以下に、印刷装置の詳細な構成を説明する。図1は、記録媒体としてロールシート(搬送方向において印刷単位よりも長い長さを有する連続した連続シート)を用いたプリンタ100の概略構成図であり、内部構成が分かるように部分的に断面を表示している。プリンタ100は、搬送系としてロールシート部101、搬送部102、搬送用エンコーダ103、回転ローラ104、カッタ部110、シート巻取り部113、仕分け部114を備える。また、印刷系としてヘッド部105、印刷ヘッド106、スキャナ部107、制御部108、インクタンク109、裏面印刷部111、乾燥部112、さらに操作系として操作部115を備える。
【0055】
制御部108は、コントローラやユーザーインターフェース、各種I/Oインターフェースを備えた制御部を内蔵し、装置全体の各種制御を司る。また、制御部108は前述した印刷制御部214や画像処理部217を有している。ページを印刷した後に連続して印刷可能な状態でビットマップデータが転送されて来ない場合はロールシートが無駄に消費される(白紙が出力され続ける)ために、制御部108がロールシートの搬送系を停止させる。
【0056】
ロールシート部101は上段シートカセット101aと下段シートカセット101bの2基のカセットを備える。使用者はロールシート(以下、シート)を容器に装着してプリンタのカセットに正面から挿入して装着する。ロールシート部によって上段シートカセット101a、下段シートカセット101bから引き出されたシートは夫々図中a方向、b方向に搬送される。ロールシート部101からのシートは図中c方向に進行して搬送部102に到達する。搬送部102は複数の回転ローラ104を有し、シートを図中d方向(水平方向)に搬送する。ロールシートの種類に応じて2基以上のカセットを用意してもよい。
【0057】
ヘッド部105は搬送されているシートの片面に対向するように配置され、印刷データに基づいて搬送されているシートに印刷ヘッド106のノズルからインクを吐出することでシート上に画像を形成する。本実施形態の構成では7種類までのインクを用いた印刷まで可能な様に印刷ヘッド106がd方向に沿って7個配置されている。インクタンク109は各色のインクを独立して貯蔵する。ノズルからインクを吐出する方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。また、印刷ヘッド106の吐出タイミングは搬送用エンコーダ103の出力信号によって決定される。
【0058】
スキャナ部107は、シート上の印刷画像や特殊パターン(マーカー)を読取って印刷が正常に行われているかの確認や、装置の状態の確認を行う。
【0059】
スキャナ部107から搬送されたシートはe方向に搬送され、シートに裁断が必要ならばカッタ部110が所定の印刷単位の長さ毎に切断する。印刷単位は予め印刷モードや使用者の指定もしくは印刷する画像サイズに応じて決定されている。例えば、両面印刷モードで片面の印刷しか完了していない場合はシートを切断しない。また、L版写真では搬送方向の長さは135mm、A4サイズでは搬送方向の長さは297mmとなるようにシートを切断する。
【0060】
カッタ部110で切断されたシートは図中f方向に搬送され、裏面印刷部111がシートの印刷面と反対の裏面に印刷画像毎の情報(例えば、オーダー管理用番号等)を印刷する。
【0061】
乾燥部112は、インクが付与されたシートを短時間で乾燥させるためにシートを温風で加熱する。仕分け部114は複数のトレーを有し(本実施形態では22段)し、搬送されてくるシートをセンサで確認しながら設定されたトレーに仕分けして積載していく。仕分け部114は、例えば印刷単位の長さに応じて積載するトレーを分別する。また、積載中や積載完了等の状態表示を用いて行う(例えば、LEDで表示)。仕分け部114の詳細については後述する。
【0062】
シート巻取り部113は、両面印刷モードの場合に片面の印刷が完了したシートを巻取り、片面の印刷が完了した後、巻き取ったシートを、図中k方向に搬送して裏面の印刷を行わせる。
【0063】
操作部115は、また、ユーザーからの指示を受け付けて、プリンタの設定を変更したり、状態を確認したりする。例えば、出力した印刷物がどのトレーに積載されているか、プリンタ100の印刷モードとその状態(レディ、印刷中、完了など)、メンテナンス情報(インク残量、紙の残量、最近のヘッドクリーニングからの時間等)をユーザーに通知する。
【0064】
なお、以上の説明ではインクジェット方式の画像処理装置について説明したが、本発明はインク以外にもトナーを用いた印刷方式にも適用できることは勿論、種々の印刷方式に適用できる。例えば、サーマルプリンタ(昇華型、熱転写型など)、ドットインパクトプリンタ、LEDプリンタ、レーザープリンタなどが挙げられる。
【0065】
以上説明したように、本実施例によれば、重複して処理をすることを低減させシステムの処理効率を向上させることができる。
【0066】
また、符号化による画像品質の劣化と装置間のトラフィック量の増加とを抑制しつつ、効率的に画像補正処理の負荷を分散させ、システムの処理効率を向上させることができる。
【0067】
(実施例2)
なお、図7は本発明の実施例2に係る印刷システムの概略構成を示す。なお、実施例1と機能的に変わらない構成については同一符号を付すとともにその説明を省略する。実施例2の印刷システムでは受付装置201と印刷装置213の間に画像処理サーバー208がある。画像処理サーバー208はクラウドコンピューティング可能な形態であることが好ましい。
【0068】
画像処理サーバー208は辞書データベース701(辞書格納手段、以降、辞書DBと称す)を備えており、受付装置201よりも難易度の高い認識処理が可能であることが多い。例えば、辞書DB701は、人以外の犬や猫などの動物の全体や顔を検出するための辞書を有している。これによって被写体が動物などであっても、検出した対象のエッジやコントラストを強調する画像補正が可能になる。他にも画像処理サーバー208は、辞書DB701が有する辞書を参照することによって高精度の検出処理が可能である。
【0069】
従って、画像処理サーバー208の解読部211は受付装置201で検出処理を実行していても、辞書を参照することが好ましい検出処理は画像処理部210で実施する。
【0070】
また、画像処理サーバー208と印刷装置213との間のネットワークが、受付装置201と画像処理サーバー208との間のネットワークよりもデータ転送速度の面で優れている場合は、画像処理サーバー208で補正処理を行っても、補正後の画像を圧縮せずにそのまま印刷装置213に送信するようにする。さらに、画像処理サーバー208では辞書DB701を用いた高度な認識処理が必要な補正処理を優先的に行うようにする。
【0071】
なお、画像処理サーバー208は図1で示したプリンタ100を含む複数の印刷装置に関する情報を格納する機器データベース702(以下、機器DB702)を有している。この機器DB702を用いることで、受付装置201からの印刷ジョブに含まれる補正指示で出力先の印刷装置213に機能が搭載されておらず処理できないものについては、画像処理サーバー208で実行する。また、受付装置201からの印刷ジョブに含まれる補正指示を処理できる印刷装置213を選択して出力するようにしてもよい。
【0072】
補正処理の種類によっては処理に用いるパラメータに高い精度が必要な場合がある。その際は、受付装置201で検出処理を実行済みであっても、印刷装置213で再び検出処理を行うようにしてもよい。
【0073】
上述の実施形態では、受付装置201では検出処理以外の画像補正処理を行わないようにした。しかし、受付装置201が印刷装置213の印刷解像度を示す情報を取得できる場合であって、画像入力部202で入力した画像の解像度が印刷解像度に対して高精彩過ぎる場合には、画像処理部205によって画像の縮小変換を行ってもよい。
【0074】
また、解読部が処理履歴を探索せず、印刷ジョブの有する画像データと機器設定とに基づいて処理する特殊モードを印刷装置213に加えてもよい。例えば、ユーザーの印刷要求がA4の安価なコピー用紙に通常印刷を要求する場合などは、印刷ジョブから画像データに加える処理が少なく処理履歴を探索する必要性が小さいことが分かるので特殊モードで印刷を実施するようにすればよい。
【0075】
また、UI部203から受け付けた補正指示を受付処理制御部204がXMLに変換し、それ以降、補正指示と処理履歴はXMLによって記述し管理してもよい。
【0076】
上述の実施形態では、印刷システムの画像処理部205はUI部からの補正指示の示す処理について検出処理だけを実行する例を記載したが、印刷要求が発行される前であれば、一般的なPCやデジタルカメラ、フォトプリンタの様に画像補正を行ってもよい。
【0077】
なお、上述の説明では、印刷装置213で統合する構成しか開示していないが、統合部を受付装置201、画像処理サーバー208に設けて夫々の装置で統合処理を行ってもよい。さらに、各装置で機器設定を登録できるようにしてもよい。
【0078】
なお、上述の説明では、図9のように補正指示と処理履歴をテーブルにして統合処理を説明したが、これは理解を容易にするためのもので、補正指示と処理履歴をテーブル形式で保存する必要はなく、また統合処理の際にテーブル形式に変換する必要もない。
【0079】
なお、上述の説明では、画像データに補正指示や処理履歴、パラメータなどの情報を「添付する」と表現しているが、画像データのフォーマットのメタデータ部分に挿入してもよいし、画像データの前後に連続してもよいし、単に画像データを含むPDL(page description language)データに付加されているだけでもよい。
【0080】
また、機器設定802の内容に応じて、統合設定801を「常に統合しない」の設定に変更して、統合部216の処理を省略するようにしてもよい。例えば、機器設定802で、設定されている処理が無ければ、統合処理をしなくても結果は変わらないので、統合処理を行わずに、受付装置201(又は画像処理サーバー208)からの補正指示をそのまま画像処理部217に処理させて処理を簡略化してもよい。他に、機器設定802で「通常」の設定になっている処理しかない場合にも統合処理を省略してもよい。
【0081】
なお、統合設定801が「常に統合しない」の設定である場合には印刷装置213の取得した補正指示を無効にし、機器設定から補正指示を新たに作成するように統合するようにしてもよい。
【0082】
また、上述の説明では、説明の簡略化のため処理履歴と補正指示を明確に分けたが、処理履歴は補正指示の示す各命令に含まれるフラグであってもよい。例えば、補正指示がXML記述である場合、補正指示に含まれる命令を示すタグに実行済みであるか否かを示すフラグを関連付ければよい。
【0083】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施例の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像と当該画像に対する補正指示とを受け付ける受付手段と、
前記画像から、前記画像について実行された画像処理の履歴を取得する取得手段と、
前記履歴に基づいて前記補正指示を更新する更新手段と、
前記更新手段の更新した補正指示の示す処理を前記画像に実行する画像処理手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記取得手段は前記履歴の有る画像処理によって前記画像から抽出したパラメータを取得し、前記画像処理手段は前記パラメータに基づいて前記補正指示の示す処理を前記画像に実行することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記更新手段は、前記補正指示の示す処理のうち前記画像処理手段で実行した処理に関する指示を削除することで前記補正指示を更新することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記受付手段は機器設定を入力するための操作手段を有し、
前記操作手段で入力された機器設定と前記履歴とに基づいて前記補正指示を更新する統合手段とを更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像処理手段で処理した画像を印刷する印刷手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像処理手段は前記受付手段の受け付けた補正指示を検出処理と補正処理とに分割し、前記検出処理を前記画像に対して実行し前記補正処理に用いるパラメータを取得し、
前記パラメータを用いる処理を示す補正指示と前記パラメータと前記画像とを他の画像処理装置へ送信する送信手段とを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記検出処理に用いる辞書を格納する辞書格納手段を更に有し、前記画像処理手段は当該辞書格納手段に基づいて前記検出処理を前記画像に実行することで前記パラメータを取得することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記更新手段は前記補正指示をXML(eXtensible Markup Language)記述に更新することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
画像処理装置と印刷装置とを有する印刷システムであって、
前記画像処理装置は、
画像と当該画像についての補正指示とを受け付ける入力手段と、前記補正指示に基づいて検出処理を実行して、前記補正指示に用いるパラメータを前記画像から取得する第1画像処理手段と、前記画像と前記パラメータと前記補正指示とを前記印刷装置に送信する送信手段とを備え、
前記印刷装置は、
前記画像処理装置から前記画像と前記パラメータと前記補正指示とを受信し、前記パラメータに基づいて前記補正指示の示す補正処理を前記画像に実行する第2画像処理手段と、前記第2画像処理手段の処理した画像を印刷する印刷手段とを備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項10】
画像処理装置と印刷装置とを有する印刷システムであって、
前記画像処理装置は、
画像と当該画像についての補正指示とを受け付ける入力手段と、前記補正指示の示す複数の処理のうち少なくとも1つを実行する第1画像処理手段と、
前記第1画像処理手段の実行した処理に基づいて、前記画像についての処理履歴と前記補正指示とを更新する更新手段と、
前記第1画像処理手段が処理を実行した画像と、前記更新手段の更新した処理履歴と補正指示とを前記印刷装置に送信する送信手段とを備え、
前記印刷装置は、
前記画像処理装置から前記画像と前記処理履歴と前記補正指示とを取得し、前記補正指示と前記処理履歴とに基づいて当該画像に処理を実行する第2画像処理手段と、前記第2画像処理手段の処理した画像を印刷する印刷手段とを備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像処理装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
ネットワークで通信可能な画像処理装置と印刷装置とを用いた画像処理方法であって、
画像と当該画像についての補正指示とを受け付ける入力工程と、前記画像処理装置が前記補正指示に基づいて検出処理を実行して、前記補正指示に用いるパラメータを前記画像から取得する第1画像処理工程と、前記画像と前記パラメータと前記補正指示とを前記印刷装置に送信する送信工程と、
前記画像処理装置から前記画像と前記パラメータと前記補正指示とを受信し、前記パラメータに基づいて前記印刷装置が前記補正指示の示す補正処理を前記画像に実行する第2画像処理工程と、前記第2画像処理工程で処理した画像を印刷する印刷工程とを備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
ネットワークで通信可能な画像処理装置と印刷装置とを用いた画像処理方法であって、
画像と当該画像についての補正指示とを受け付ける入力工程と、
前記補正指示の示す複数の処理のうち少なくとも1つを前記画像処理装置が実行する第1画像処理工程と、
前記第1画像処理工程で実行した処理に基づいて、前記画像についての処理履歴と前記補正指示とを更新する更新工程と、
前記第1画像処理工程で処理を実行した画像と、前記更新工程で更新した処理履歴と補正指示とを前記印刷装置に送信する送信工程と、
前記画像処理装置から前記画像と前記処理履歴と前記補正指示とを取得し、前記補正指示と前記処理履歴とに基づいて前記印刷装置が当該画像に処理を実行する第2画像処理工程と、前記第2画像処理工程で処理した画像を印刷する印刷工程とを備えることを特徴とする画像処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−230491(P2011−230491A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105626(P2010−105626)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】