説明

画像処理装置、画像処理方法、及びコンピュータプログラム

【課題】被写体のそれぞれに合うようにガンマ曲線を変更できるようにする。
【解決手段】入力した画像を4つの第1の分割領域に分割し、4つの第1の分割領域の画像のそれぞれについて個別にガンマ補正カーブの再変更の有無を判断する。例えば、第1の分割領域の画像のガンマ補正カーブ501を変更する場合には、変更後のガンマ補正カーブ502の入力輝度変化範囲R1と、当該第1の分割領域の境界部分輝度分布701との重なりの有無を判断する。重なりLがある場合には、その重なりLがなくなるように、ガンマ補正カーブ502をガンマ補正カーブ702に再変更する。そして、この再変更後のガンマ補正カーブ702を第1の分割領域の画像のガンマ補正カーブとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に、入力した画像に対してガンマ補正処理を行うために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像を最適なコントラストにするための手法として、ガンマ制御がある。ガンマ制御を行うに際し、入力された1フレームの画像の画面全体に、同一の入出力特性(ガンマ曲線)を持ったガンマをかけるようにする技術がある(特許文献1を参照)。
【0003】
ガンマ曲線は、撮影された映像をモニタで見た場合に、肉眼で見たときと同じ階調に見えるようにするための階調の入出力特性である。撮影された画像は、映像処理信号IC(以下、DSPと称す)に入力される。DSPは、ガンマ曲線を用いて、画像のコントラストを調整する。例えば、モニタ出力レベルが85%の人物の顔と、モニタ出力レベルが30%の山と、モニタ出力レベルが95%の人物の顔とを含む画像を撮像するとする。尚、例えば、256階調(0〜255)の画像のモニタ出力レベルは、その最大値(255)を100%とし、その最小値(0)を0%とするものである。
【0004】
前述したモニタ出力レベルの画像に対し、露出補正にて、人物の顔の明るさを適正にしようとすると、山の部分まで暗くなる。特に、ビデオカメラのガンマ曲線の入力が小さい領域は、大きい領域よりも傾きが急峻である。このため、入力の変化に対する出力の変化がより敏感になり、山が真っ暗に表示されることになる。そこで、山の階調性を保ったまま、人物の顔のレベルを変化させる手法として、ガンマ曲線を変更することが考えられている。具体的には、ある入力レベル(ニーポイント)以上のガンマ曲線を変更することにより、山が真っ暗に表示されることを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−143357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来の技術では、変更されたガンマ曲線を画面全体に適応させてしまうため、以下のような問題点があった。すなわち、例えば、前述したようなモニタ出力レベルの画像を撮像する場合、ある入力レベル以上のガンマ曲線を変更することにより、出力レベルが95%で適正であった雲の出力レベルが下がる。そうすると、見た目とは異なる暗い雨雲のような雲の画像が表示されてしまう。
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、被写体のそれぞれに合うようにガンマ曲線を変更できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像処理装置は、入力された画像を、複数の第1の分割領域に分割する第1の分割手段と、前記第1の分割領域の画像のそれぞれを、複数の第2の分割領域に分割する第2の分割手段と、前記第1の分割領域の画像の輝度値に基づいて、当該第1の分割領域の画像に対する階調の入出力特性を表すガンマ曲線の一部の領域を変更する変更手段と、前記変更手段により変更された、前記ガンマ曲線の入力の領域に対応する輝度範囲を取得する第1の輝度範囲取得手段と、前記第1の分割領域に含まれる前記第2の分割領域であって、当該第1の分割領域とは異なる他の第1の分割領域との境界に位置する前記第2の分割領域の輝度範囲を取得する第2の輝度範囲取得手段と、前記第1の輝度範囲取得手段により取得された輝度範囲と、前記第2の輝度範囲取得手段により取得された輝度範囲との少なくとも一部が相互に重なるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により輝度範囲が重なると判定されると、当該輝度範囲の重なりがなくなるように、前記ガンマ曲線の一部の領域を再変更する再変更手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、入力された画像を、複数の第1の分割領域に分割して、複数の第1の分割領域の画像のそれぞれに対するガンマ曲線を設定するに際し、第1の分割領域の画像のそれぞれを、複数の第2の分割領域に分割する。そして、第1の分割領域に対するガンマ曲線を変更した場合に、変更したガンマ曲線の入力の領域に対応する輝度範囲と、当該第1の分割領域の他の第1の分割領域との境界にある第2の分割領域の画像の輝度範囲とに重なりがあるか否かを判定する。この判定の結果、輝度範囲に重なりがある場合、その重なりがなくなるようにガンマ曲線を再変更する。したがって、第1の分割領域に分割した画像を再び1枚の画像に合成しても、それらの境界付近に生じる輝度段差を低減しつつ、第1の分割領域の画像(被写体)に応じたガンマ曲線を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】撮像装置の処理を説明するフローチャートである。
【図3】第1の分割領域を示す図である。
【図4】第2の分割領域を示す図である。
【図5】ガンマ補正カーブを示す図である。
【図6】第2の分割領域の個数と、ニーポイントとの関係を示す図である。
【図7】ガンマ補正カーブと、境界部分輝度分布との第1の関係を示す図である。
【図8】ガンマ補正カーブと、境界部分輝度分布との第2の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、撮像装置の構成の一例を示すブロック図である。具体的に図1(A)は、撮像装置の全体の構成の一例を示す図であり、図1(B)は、撮像装置のDSPの詳細な構成の一例を示す図である。このように本実施形態では、画像処理装置が撮像装置である場合を例に挙げて説明する。
【0011】
撮像レンズ110は、被写体の結像用のレンズである。絞り機構120は、入射される光の量を制御する。駆動モータ130は、絞り機構120を駆動する。絞り機構駆動装置140は、絞り駆動モータ130を駆動する。絞り位置検出装置150は、絞り機構120の位置を検出する。センサ200は、入射した光を光電変換する撮像素子を有する。センサ駆動装置210は、センサ200を制御する。センサ駆動装置210は、例えば、光電変換された信号を読み出すと共に、信号の蓄積時間を制御(いわゆる電子シャッタとしての機能を実行)する。また、センサ駆動装置210は、センサ200から出力された電荷を、加算して読み出すのか、非加算で読み出すのか、それとも間引いて読み出すのかを制御する。
【0012】
サンプルホールド装置220は、センサ200で光電変換された信号をサンプリングする。A/D変換器240は、アナログ信号をディジタル信号に変換するアナログ−ディジタル変換器である。第1の画像分割装置250は、A/D変換器240から出力された画像を複数(ここでは4つ)の第1の分割領域に分割する。DSP260a〜260dは、信号処理装置であり、それぞれ、第1の分割領域の画像に対して、ガンマ補正を行った後、色分離・色差マトリクス等の処理を施す。その後、DSP260a〜260dは、処理した画像信号に同期信号を加えて標準テレビジョン信号を生成する。
【0013】
画像合成装置270は、DSP260で信号処理が施された「複数(ここでは4つ)の第1の分割領域の画像」を合成し、1枚の画像にする。記録媒体280は、画像合成装置270で得られた「動画像や静止画像」を記録する。液晶パネル290は、画像合成装置270で得られた「動画像や静止画像」を表示する。マイクロコンピュータ300は、撮像装置を統括的に制御する。マイクロコンピュータ300は、例えば、絞り機構駆動装置140、センサ駆動装置210、及びDSP260等に処理命令を出す。
【0014】
次に、DSP260の構成(機能)について説明する。尚、DSP260a〜260dは、全て同じ構成(機能)を有する。
第2の画像分割装置261は、第1の画像分割装置250により分割された第1の分割領域の画像のそれぞれを、メッシュ状の複数の第2の分割領域に分割する。輝度値取得装置262は、第2の画像分割装置261により分割された第2の分割領域の画像のそれぞれの輝度値を取得する。入出力輝度変換装置263は、ガンマ補正カーブ(ガンマ曲線)を用いて、第1の画像分割装置250から出力された「第1の分割領域の画像信号」のそれぞれに対してガンマ補正処理を個別に施す。そして、入出力輝度変換装置263は、ガンマ補正処理を施した「第1の分割領域の画像信号」を、画像合成装置270に出力する。人物検出装置264は、第1の画像分割装置250から出力された「第1の分割領域の画像」から人物を検出する。人物の検出は、例えば、第1の分割領域の画像の特徴量を検出することにより行うことができる。
【0015】
次に、マイクロコンピュータ300の構成(機能)について説明する。
評価値算出装置301は、輝度値取得装置262から出力された輝度値に、第2の分割領域ごとに設定される重み付け係数を掛けて加重平均し、適正な露出かどうかを判断する指標を算出する。
露出制御装置302は、評価値算出装置301で算出された指標に基づいて、適正な露出であるかどうかを判断し、判断した結果に基づいて、絞り、電子シャッタ、及びゲインの動作命令を出力する。
【0016】
入出力特性変化量算出装置303は、輝度値取得装置262から出力された輝度値を元に、入出力特性であるガンマ補正カーブの変化量を算出し、ガンマ補正カーブを変換させる命令を出力する。入力輝度値変化範囲取得装置304は、入出力特性変化量算出装置303により算出された「ガンマ補正カーブの変化量」に基づいて、ガンマ補正カーブの入力階調のどの範囲を変化させるのかを特定し、特定した範囲を輝度の範囲に換算する。以下の説明では、この輝度の範囲を必要に応じて入力輝度変化範囲と称する。
【0017】
入力輝度分布取得装置305は、第1の分割領域の「当該第1の分割領域と異なる他の第1の分割領域との境界に接する部分」に位置する第2の分割領域の画像の(ガンマ補正処理が施される前の)輝度の分布を取得する。この分布は、輝度値とその輝度値を有する第2の分割領域の個数との関係を示すものである。以下の説明では、この分布を必要に応じて境界部分輝度分布と称する。
比較装置306は、入力輝度値変化範囲取得装置304で取得された入力輝度変化範囲と、入力輝度分布取得装置305で取得された境界部分輝度分布の輝度範囲とを比較し、これらの少なくとも一部が相互に重なっているか否かを判定する。
入出力特性変化量算出装置303は、比較装置306により、入力輝度変化範囲と、境界部分輝度分布の輝度範囲とが重なっていると判定された場合、これらが重ならないように、ガンマ補正カーブの変化量を算出し直す。
【0018】
次に、ガンマ補正カーブを設定する際の撮像装置の処理の一例の詳細を説明する。
図2は、ガンマ補正カーブを設定する際の撮像装置の処理の一例を説明するフローチャートである。
第1の画像分割装置250は、A/D変換器240から出力された画像を4つの第1の分割領域に分割する第1の分割処理を行う(ステップS201)。
図3は、第1の分割領域の一例を示す図である。
第1の画像分割装置250に入力された画像は、図3の破線(境界線)を境界として、4つの第1の分割領域に分割される。4つの第1の分割領域310a、310b、310c、310dに分割された画像は、それぞれDSP260a、260b、260c、260dに入力される。本実施形態では、1つのDSP260に入力される「第1の分割領域の画像」の数は1つである。本実施形態では、第1の分割領域310a〜310dの画像の数は4枚であるので、DSP260a〜260dの数は4つである。
【0019】
ただし、第1の画像分割装置250で第1の分割領域分割される画像の数は、4より少なくても多くてもよい。その場合、DSP260の数が、分割される画像の数分だけ存在する。また、分割される画像の数が、DSP260の個数を上回る場合には、時分割処理を行うことにより、1つのDSP260が複数の画像に対する処理を行うようにしてもよい。
DSP260a〜260dに入力された第1の分割領域310a〜310dの画像は、第2の画像分割装置261、入出力輝度変換装置263、及び人物検出装置264にそれぞれ入力される。
第2の画像分割装置261は、第1の分割領域310の画像を更に細かい第2の分割領域に分割する第2の分割処理を行う(ステップS202)。図4は、第2の分割領域の一例を示す図である。具体的に図4(A)は、第2の分割領域を示す図である。図4(B)は、ガンマ補正カーブを変更する対象となる第1の分割領域310a、301bの「当該第1の分割領域とは異なる他の第1の分割領域との境界(図4に示す破線)」に位置する第2の分割領域を太枠で示す図である。
【0020】
図4(A)に示すように、本実施形態では、第1の分割領域は、更に細かい第2の分割領域に分割される。図4に示す例では、各第1の分割領域は、横16×縦8の128個の矩形の第2の分割領域に分割される。
輝度値取得装置262は、各第2の分割領域の画像の輝度値を取得する(ステップS203)。このように、第2の分割領域への分割は、輝度値を第2の分割領域毎に取得するためのものである。本実施形態では、1個の第1の分割領域が、128個の第2の分割領域に分割される。したがって、1つのDSP260で取得される輝度値の個数は128個である。この輝度値取得装置262により取得された輝度値は、マイクロコンピュータ300内にある、入出力特性変化量算出装置303に入力される。
【0021】
入出力特性変化量算出装置303は、第1の分割領域の画像の輝度値(本実施形態では、当該第1の分割領域に含まれる第2の分割領域の画像の輝度値に基づいて、最適なガンマ補正カーブを算出する(ステップS204)。入出力特性変化量算出装置303は、第1の分割領域310の画像毎にガンマ補正カーブを個別に算出する。このガンマ補正カーブの算出方法について以下に2つの例を挙げて説明する。図5は、ガンマ補正カーブの一例を示す図である。具体的に図5(A)は、変更前のガンマ補正カーブを示す。図5(B)は、変更前のガンマ補正カーブと変更後のガンマ補正カーブを示す図である。図5(C)は、ある被写体の画像を、2つのガンマ補正カーブに適用すると、異なる出力が得られることを説明する図である。図5において、横軸のDSP入力は、DSP260に入力される第1の分割領域310の画像の階調を表し、縦軸のDSP出力は、DSP260から出力される第1の分割領域310の画像の階調を表す。
【0022】
ガンマ補正カーブを算出する一つ目の方法を説明する。
人物検出装置264により、人物の顔が検出され、輝度値取得装置262により、人物の顔の輝度値が取得されたとする。そして、人物の顔の適正出力明るさが70%であるとする。入出力特性変化量算出装置303は、図5(A)に示すガンマ補正カーブ501のニーポイントを変更することにより、ガンマ補正カーブを、図5(B)に示すガンマ補正カーブ502に変更し、明るすぎた顔の明るさが適正な顔の明るさになるようにする。
【0023】
次に、ガンマ補正カーブを算出する二つ目の方法を説明する。この方法は、例えば、人物検出装置264により、人物の顔が検出されなかった場合に使用される方法である。図6は、輝度値が閾値以上の第2の分割領域の個数と、ニーポイントとの関係の一例を示す図である。
図6の横軸は、DSP260に入力された第1の分割領域に含まれる第2の分割領域のうち、輝度値が閾値以上の第2の分割領域の個数である。図6の縦軸は、ガンマ補正カーブを変更するためのニーポイントである。図6の縦軸のレンジは、図5の横軸(DSP入力)に相当する。
【0024】
入出力特性変化量算出装置303は、第2の分割領域の画像の輝度値が閾値(ここでは閾値を「150」とする)以上である第2の分割領域の数を計数する。入出力特性変化量算出装置303は、計数した第2の分割領域の数が30個以下であれば、計数した第2の分割領域の数に関わらず、ガンマ補正カーブを変更しない。計数した第2の分割領域の数が30個より多く90個以下であれば、入出力特性変化量算出装置303は、計数した第2の分割領域の数に応じて、ニーポイントを、「255」未満「100」以上の範囲の何れかの値にする。計数した第2の分割領域の数が90個より多ければ、入出力特性変化量算出装置303は、計数した第2の分割領域の数に関わらず、ニーポイントを「100」にする。このようにしてガンマ補正カーブ501のニーポイントを変更することにより、ガンマ補正カーブ501は、例えば、ガンマ補正カーブ502、503に変化される。このように、本実施形態では、計数した第2の分割領域の数が30個より多く90個以下である場合には、計数した第2の分割領域の数が多いほどニーポイントが小さくなるようにする。すなわち、高輝度な被写体の面積が大きければ大きい程、高輝度の被写体の明るさが抑えられるように、ガンマ補正カーブが変更される仕組みとなっている。
【0025】
入出力特性変化量算出装置303は、以上のようなガンマ補正カーブの算出(変更)を、4つのDSP260a〜260dの出力(第1の分割領域310a〜310dの画像)のそれぞれに対して行う。すると、輝度が最大輝度の85%となる人物の顔が存在している第1の分割領域310aの画像に係るガンマ補正カーブは、例えば、図5(B)に示すガンマ補正カーブ502となる。また、輝度が最大輝度の95%となる雲が存在している第2の分割領域310bの画像に係るガンマ補正カーブは、例えば、図5(B)に示すガンマ補正カーブ503となる。尚、ガンマ補正カーブの変更は、必ずしも、第1の分割領域310a〜310dの画像の全てについて行わなくてもよい。
【0026】
ここで、隣り合う2つの第1の分割領域の画像のガンマ補正カーブが異なると、それらの画像の境界部分で輝度の差が生じる原因となってしまう。例えば、図5(C)に示すように、その他の被写体の輝度が、ガンマ補正カーブの入力輝度変化範囲内にあり、その被写体が、第1の分割領域310a、310bの画像の境界に存在するとする。そうすると、その境界を境に、その被写体の輝度が異なってしまって、輝度段差が見えてしまう。一方の第1の分割領域の画像は、ガンマ補正カーブ501を用いてガンマ補正処理がなされた画像となるのに対して、他方の第1の分割領域の画像は、ガンマ補正カーブ502を用いてガンマ補正処理がなされた画像となるからである。
【0027】
この輝度の段差を無くすため、入力輝度値変化範囲取得装置304は、第1の分割領域310の画像のガンマ補正カーブの入力輝度変化範囲を導出する第1の輝度範囲取得処理を行う(ステップS205)。
図7は、ガンマ補正カーブと、境界部分輝度分布との関係の第1の例を示す図である。図7は、第1の分割領域310aの画像についての図である。前述したように、入力輝度変化範囲とは、ガンマ補正カーブの入力階調の変化範囲に対応する輝度の範囲である。また、境界部分輝度分布とは、第1の分割領域の「当該第1の分割領域とは異なる他の第1の分割領域との境界に接する部分」に位置する第2の分割領域の入力画像の輝度値と、当該第2の分割領域の数との関係を示すものである。
【0028】
図7に示す入力輝度変化範囲R1は、第1の分割領域310aの画像に対して算出されたガンマ補正カーブ502の入力輝度変化範囲を示す。図7に示すように、ニーポイントよりも大きな輝度の範囲が入力輝度変化範囲となる。
次に、入力輝度分布取得装置305は、境界部分輝度分布を導出する第2の輝度範囲取得処理を行う(ステップS206)。ここでいう境界部分輝度分布とは、第1の分割領域の「当該第1の分割領域とは異なる他の第1の分割領域との境界に接する部分」に位置する第2の分割領域の入力画像の輝度値と、当該第2の分割領域の数と関係である。図7に示す境界部分輝度分布701は、第1の分割領域310aの「第1の分割領域310b〜310dとの境界に接する部分」に位置する第2の分割領域(第1の分割領域310aの画像内の太枠)についての境界部分輝度分布である。
【0029】
比較装置306は、入力輝度値変化範囲取得装置304により導出された入力輝度変化範囲と、入力輝度分布取得装置305により導出された境界部分輝度分布とを入力する。比較装置306は、入力輝度変化範囲と、境界部分輝度分布の輝度範囲に重なる部分があるか否かを判定する(ステップS207)。図7では、入力輝度変化範囲R1と境界部分輝度分布701には、重なりLがあることを示している。
【0030】
この判定の結果、重なりLがあると判定されると、入出力特性変化量算出装置303は、その重なりLがなくなる方向に、前回算出したガンマ補正カーブ502に対し、ニーポイントを再変更する(ステップS208)。そして、入出力特性変化量算出装置303は、変更したニーポイントに基づいて、ガンマ補正カーブ501を再変更する(ステップS204)。そして、重なりLがなくなるまで、ステップS204〜S208の処理が繰り返し行われる。
【0031】
尚、ステップS208では、例えば、ガンマ補正回路(DSP260(入出力輝度変換装置263))の入出力の分解能を最小単位として、予め設定された値ずつ、ニーポイントを再変更することができる。例えば、重なりLが閾値よりも大きいときには、3LSBずつニーポイントを変更し、重なりLが閾値以下のときには、1LSBずつニーポイントを変更することができる。
また、ここでは、重なりLがなくなるまで、ステップS204〜S208の処理が繰り返し行われるようにした。しかしながら、ステップS208の1回の処理で、重なりLをなくすことができれば、ステップS208の処理の後、以下のステップS209に直ちに進むようにしてもよい。
【0032】
以上のようにして重なりLがなくなると、ガンマ補正カーブは、例えば、図7に示すガンマ補正カーブ702のようになる。この例では、境界部分輝度分布701の輝度範囲の最大値をニーポイントとしてガンマ補正カーブ702を求めるようにしている。このようにすれば、入力輝度変化範囲を可及的に大きくすることができるので好ましいが、重なりLを減らすようにガンマ補正カーブを再変更していれば、必ずしもこのようにする必要はない。
以上のステップS204〜S208の処理を、第1の分割領域の画像の全てについて個別に行う(ステップS209)。図3に示す例では、第1の分割領域310aの画像に加えて、第1の分割領域310b〜310dの画像についても、以上のステップS204〜S208の処理を行う。ステップS204〜S208の処理は、必ずしも、第1の分割領域310の画像の全てについて行う必要はなく、ガンマ補正カーブ501の変更が必要な第1の分割領域310の画像(の全て)についてのみ行うようにしてもよい。
【0033】
図8は、ガンマ補正カーブと、境界部分輝度分布との関係の第2の例を示す図である。図8は、第1の分割領域310bの画像についての図である。
図8に示すように、入出力特性変化量算出装置303は、ガンマ補正カーブ501をガンマ補正カーブ503に変更する(ステップS204)。次に、入力輝度値変化範囲取得装置304は、ガンマ補正カーブ503の入力輝度変化範囲R2を導出する(ステップS205)。
【0034】
次に、入力輝度分布取得装置305は、第1の分割領域310bの画像についての境界部分輝度分布801を導出する(ステップS206)。図8に示す境界部分輝度分布801は、第1の分割領域310bの「第1の分割領域310a、310c、310dとの境界に接する部分」に位置する第2の分割領域(第1の分割領域310bの画像内の太枠)についての境界部分輝度分布である。
【0035】
次に、比較装置306は、入力輝度変化範囲R2と、境界部分輝度分布801に重なる部分があるか否かを判定する(ステップS207)。図8に示すように、入力輝度変化範囲R2と、境界部分輝度分布801は重ならない。よって、ニーポイントの再変更は行われず、第1の分割領域310bの画像に対するガンマ補正カーブは、ガンマ補正カーブ503となる(図8の最下段を参照)。
【0036】
以上のようにして、第1の分割領域310a〜310dの画像の全てに対するガンマ補正カーブが決定すると、入出力輝度変換装置263は、自身が処理を担当する第1の分割領域310の画像についてのガンマ補正カーブを入力して次の処理を行う。すなわち、入出力輝度変換装置263は、液晶パネル290やその他のテレビモニタ等で表示されたときに階調性が自然となるように、決定したガンマ補正カーブを用いてガンマ補正処理を施す。そして、ガンマ補正処理が施された第1の分割領域の画像が、DSP260a〜260dから画像合成装置270に出力される。
【0037】
以上のように本実施形態では、入力した画像を4つの第1の分割領域に分割し、4つの第1の分割領域310a〜310dの画像のそれぞれについて個別にガンマ補正カーブの再変更の有無を判断する。例えば、第1の分割領域310aの画像のガンマ補正カーブ501を変更する場合には、変更後のガンマ補正カーブ502の入力輝度変化範囲R1と、当該第1の分割領域の境界部分輝度分布701との重なりの有無を判断する。重なりLがある場合には、その重なりLがなくなるように、ガンマ補正カーブ502をガンマ補正カーブ702に再変更する。そして、この再変更後のガンマ補正カーブ702を第1の分割領域310aの画像のガンマ補正カーブとする。
したがって、第1の分割領域310a〜310dに分割を行った画像を再び1枚の画像に合成しても、それらの境界付近に生じる輝度段差を低減しつつ、第1の分割領域310a〜310dの画像(被写体)ごとに最適なガンマ補正カーブを適用することができる。よって、全体として最適な明るさ、コントラストを有する画像を出力することができる。
【0038】
本実施形態では、画像を4分割する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、画像を更に多くの第1の分割領域に分割すれば、より細かいエリア毎に最適なガンマ補正カーブを設定することができる。したがって、第1の分割領域の境界に輝度段差をより一層低減することができ、より最適な明るさ、コントラストを有する画像を出力することができる。
【0039】
尚、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0040】
(その他の実施例)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、まず、以上の実施形態の機能を実現するソフトウェア(コンピュータプログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給する。そして、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)が当該コンピュータプログラムを読み出して実行する。
【符号の説明】
【0041】
250 第1の画像分割装置、260 DSP、300 マイクロコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像を、複数の第1の分割領域に分割する第1の分割手段と、
前記第1の分割領域の画像のそれぞれを、複数の第2の分割領域に分割する第2の分割手段と、
前記第1の分割領域の画像の輝度値に基づいて、当該第1の分割領域の画像に対する階調の入出力特性を表すガンマ曲線の一部の領域を変更する変更手段と、
前記変更手段により変更された、前記ガンマ曲線の入力の領域に対応する輝度範囲を取得する第1の輝度範囲取得手段と、
前記第1の分割領域に含まれる前記第2の分割領域であって、当該第1の分割領域とは異なる他の第1の分割領域との境界に位置する前記第2の分割領域の輝度範囲を取得する第2の輝度範囲取得手段と、
前記第1の輝度範囲取得手段により取得された輝度範囲と、前記第2の輝度範囲取得手段により取得された輝度範囲との少なくとも一部が相互に重なるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により輝度範囲が重なると判定されると、当該輝度範囲の重なりがなくなるように、前記ガンマ曲線の一部の領域を再変更する再変更手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記第1の輝度範囲取得手段により取得された輝度範囲と、前記第2の輝度範囲取得手段により取得された輝度範囲との少なくとも一部が相互に重なるか否かを、前記複数の第1の分割領域のそれぞれについて判定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2の輝度範囲取得手段は、前記変更手段による変更の対象となるガンマ曲線に対応する第1の分割領域に含まれる前記第2の分割領域であって、当該第1の分割領域とは異なる他の第1の分割領域との境界に位置する前記第2の分割領域の輝度範囲を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
入力された画像を、複数の第1の分割領域に分割する第1の分割工程と、
前記第1の分割領域の画像のそれぞれを、複数の第2の分割領域に分割する第2の分割工程と、
前記第1の分割領域の画像の輝度値に基づいて、当該第1の分割領域の画像に対する階調の入出力特性を表すガンマ曲線の一部の領域を変更する変更工程と、
前記変更工程により変更された、前記ガンマ曲線の入力の領域に対応する輝度範囲を取得する第1の輝度範囲取得工程と、
前記第1の分割領域に含まれる前記第2の分割領域であって、当該第1の分割領域とは異なる他の第1の分割領域との境界に位置する前記第2の分割領域の輝度範囲を取得する第2の輝度範囲取得工程と、
前記第1の輝度範囲取得工程により取得された輝度範囲と、前記第2の輝度範囲取得工程により取得された輝度範囲との少なくとも一部が相互に重なるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程により輝度範囲が重なると判定されると、当該輝度範囲の重なりがなくなるように、前記ガンマ曲線の一部の領域を再変更する再変更工程と、を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
前記判定工程は、前記第1の輝度範囲取得工程により取得された輝度範囲と、前記第2の輝度範囲取得工程により取得された輝度範囲との少なくとも一部が相互に重なるか否かを、前記複数の第1の分割領域のそれぞれについて判定することを特徴とする請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記第2の輝度範囲取得工程は、前記変更工程による変更の対象となるガンマ曲線に対応する第1の分割領域に含まれる前記第2の分割領域であって、当該第1の分割領域とは異なる他の第1の分割領域との境界に位置する前記第2の分割領域の輝度範囲を取得することを特徴とする請求項4又は5に記載の画像処理方法。
【請求項7】
入力された画像を、複数の第1の分割領域に分割する第1の分割工程と、
前記第1の分割領域の画像のそれぞれを、複数の第2の分割領域に分割する第2の分割工程と、
前記第1の分割領域の画像の輝度値に基づいて、当該第1の分割領域の画像に対する階調の入出力特性を表すガンマ曲線の一部の領域を変更する変更工程と、
前記変更工程により変更された、前記ガンマ曲線の入力の領域に対応する輝度範囲を取得する第1の輝度範囲取得工程と、
前記第1の分割領域に含まれる前記第2の分割領域であって、当該第1の分割領域とは異なる他の第1の分割領域との境界に位置する前記第2の分割領域の輝度範囲を取得する第2の輝度範囲取得工程と、
前記第1の輝度範囲取得工程により取得された輝度範囲と、前記第2の輝度範囲取得工程により取得された輝度範囲との少なくとも一部が相互に重なるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程により輝度範囲が重なると判定されると、当該輝度範囲の重なりがなくなるように、前記ガンマ曲線の一部の領域を再変更する再変更工程と、をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−17049(P2013−17049A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148501(P2011−148501)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】