説明

画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム

【課題】撮影画像を絵画調画像に変換する場合、撮影画像としての適度なリアリティと絵画としての趣との双方を備えた画像の生成を可能とする。
【解決手段】撮影画像である元画像データを絵画変換し、第1の絵画調画像データを生成する。元画像データを第1の絵画調画像データに確保した画調に応じた透過率で第1の絵画調画像データに透過合成し、第2の絵画調画像データを生成する。第1の絵画調画像データへの透過合成に先立ち、元画像データにおいて顔検出を行う。顔が検出できた場合には、元画像データにおける顔領域の透過率を顔領域以外の背景領域の透過率よりも低めに設定して元画像データを第1の絵画調画像データに透過合成する。第2の絵画調画像データとして、第1の絵画調画像データに比べて細部のつぶれが目立たず、かつ無用な刷毛目や色調が現れる度合が減少した画像データが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば写真撮影により得られた撮影画像を、絵画調等の視覚的特徴を備えた画像に変換するための画像処理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1には、写真撮影により得られた撮影画像を絵画調(油絵調や水彩画調等)の画像に変換する際、顔認識技術を用いて撮影画像内に存在する人物の種別(年齢、性別、人種等)を特定し、前記撮影画像を、特定した人物の種別に対応付けられている種類の絵画調を備えた画像に変換する(絵画変換する)画像処理技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−139329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の画像処理技術では、人物の種別に応じて画調を変えたとしても、景色や建物等は比較的美しく変換されるが、画像内の細部、特に人物部分は不自然になってしまうことがある。すなわち絵画変換を行うと、人物の顔部分につぶれが生じたり、無用な刷毛目や色調が現れたりしてリアリティが失われる。言い換えると絵画的にデフォルメされ過ぎるという課題があった。
【0005】
本発明は、撮影画像を絵画調画像に変換する場合、撮影画像としての適度なリアリティと絵画としての趣との双方を備えた画像の生成を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明においては、撮影画像を、人工的な特徴を備えた第1の変換画像に変換する変換手段と、前記撮影画像を、所定の透過率で前記変換手段による変換後の第1の変換画像に透過合成することにより第2の変換画像を生成する透過合成手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撮影画像を絵画調画像に変換する場合、撮影画像としての適度なリアリティと絵画としての趣との双方を備えた画像の生成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】画像サービスサイトを含むネットワークを示すブロック図である。
【図2】画像サービスサイトを実現するサーバーの概略構成を示すブロック図である。
【図3】透過率テーブルを示す概念図である。
【図4】サーバーの制御部による画像変換処理を示すフローチャートである。
【図5】画像変換処理の要部を示す説明図である。
【図6】人物の顔が存在する元画像と、第1の絵画調画像、第2の絵画調画像の一例を示す図である。
【図7】人物の顔が存在しない元画像と、第1の絵画調画像の例を示す図である。
【図8】第2の絵画調画像の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、SNS機能を持った画像サービスサイト10を含むネットワークを示すブロック図である。画像サービスサイト10は、ユーザーからアップロードされた画像データ(主としてデジタルカメラにより撮影された写真の画像データ)の保存や、アップロードされた画像データの絵画調画像への変換、アップロードされた画像や、変換後の絵画調画像の閲覧、ダウンロード等のサービスを行うサイトである。
【0010】
画像サービスサイト10には、インターネット500を介して、任意のユーザーが使用する複数の端末1−1、1−2、1−3・・・が接続される。端末1−1、1−2、1−3・・・は、通信機能、及び画像データにより表される画像の表示機能を備えた任意の装置であり、例えば通常のパーソナルコンピュータや、携帯電話端末である。
【0011】
図2は、画像サービスサイト10を実現するとともに本発明が適用されたサーバー11の概略構成を示すブロック図である。サーバー11は、主として制御部12と、通信処理部13、表示用バッファ14、管理データ記憶部15、絵画変換部16、画像記憶部17、プログラム記憶部18から構成される。
【0012】
通信処理部13は、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)に基づいてサーバー11と端末1−1、1−2、1−3・・・との間における、画像データを含む各種のデータの送受信を制御する。
【0013】
管理データ記憶部15は、画像サービスサイト10を利用するユーザー(以下、単にユーザーという。)に関する種々の情報や、それらのユーザーによってアップロードされた画像データ等からなる各種の管理データを記憶する。管理データ記憶部15は、例えばハードディスク装置により構成される。
【0014】
絵画変換部16は、ユーザーからアップロードされた画像データや、画像記憶部17に記憶されている画像データを絵画調画像の画像データ(以下、絵画調画像データという。)に変換する絵画変換処理を行うための画像処理回路、及びメモリ等から構成される。
【0015】
ここで、絵画変換処理とは、写真等の画像を構成する各画素を所定のパラメータ(絵画変換パラメータ)に従って変換し、(a)油絵調、(b)水彩画調、(c)パステル調、(d)色鉛筆画調、(e)クレヨン画調、(f)イラスト画調、(g)点描画調、(h)エアブラシ、(i)シルクスクリーン調、(i)刺繍絵調、(k)コラージュ(糊付け)調等、いわゆる絵画調に変換する画像処理である。
【0016】
絵画変換処理は、原理的にはエフェクト処理の一種であり、基本的にはフォトレタッチソフト等で知られている各種エフェクト処理のパラメータを調整・組み合わせて絵画調に見えるように変換するプログラムが組んであるものである。
【0017】
エフェクト処理としては、例えば以下のような処理がある。
(a)解像度処理・・・画像にテクスチャをマッピングし、特殊な質感を与えるテクスチャ処理、画像を輪郭部・細かい模様などのテクスチャ部・平坦部に分類し、それぞれに適宜処理を施すことで、質感と解像感を高める。
(b)HSV処理・・・色を色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Value)の3要素に分類して調整する。
(c)RGB処理・・・画像のR(赤)G(緑)B(青)各色の度合いを調整する。
(d)RGB交換処理・・・画像のR(赤)G(緑)B(青)各色の値をR→G→Bの方向に交換する。
(e)エッジ抽出処理・・・ラプラシアンフィルタと呼ばれるフィルタをかけてエッジを抽出する。
(f)中間濃度抽出処理・・・メディアンフィルタと呼ばれるフィルタをかけて中間濃度を抽出する。
(g)濃度抽出処理・・・隣接する画素のRGBのヒストグラムを抽出し、それぞれ最小/中間/最大の濃度を抽出した場合の処理を行う。
(h)イコライズ処理・・・画像の一番暗い部分を黒、一番明るい部分を白とし、間のヒストグラムを適宜分布させ、コントラスト修正を行ったり、画像のヒストグラムを引き伸ばしたりする。
(i)ガンマ補正処理・・・明るい部分と暗い部分を維持して中間的な明るさを調節する。
(j)シャドー処理・・・画像の暗い領域を明るくしたり、明るい領域を暗くしたりする。
(k)ソラリゼーション処理・・・各ピクセルのRGB値が、しきい値以上の明るさの時に、そのRGB値を反転する
(l)ノイズ付加処理・・・ランダムにドットを描画し、ノイズを発生させ、ノイズの量や色を調整する。
(m)HDR(High Dynamic Range)処理・・・通常の写真では表現できない広いダイナミックレンジの写真を、トーンマッピングにより狭いダイナミックレンジ幅内に入れ込むことで露出過多の白飛びや露出不足の黒つぶれを補正して表現力を増大する。このHDR処理では、撮影画像(写真)を人の脳が受けた記憶や印象に近づけ、芸術的な表現を加味した新しい写真表現を実現した画像を得ることができる。
【0018】
画像記憶部17は、ユーザーからアップロードされた画像データや、前述した絵画調画像データを記憶する。画像記憶部17は、例えば大容量のハードディスク装置によって構成される画像データベースである。
【0019】
表示用バッファ14は、サーバー11が、画像記憶部17に記憶されている画像データ等をユーザーに閲覧させる際、閲覧用の1又は多数の画像データからなる表示用のデータを記憶するメモリである。
【0020】
制御部12は、サーバー11の全体的な動作、すなわち画像サービスサイト10の運営に要する各種の動作を制御する。また、制御部12は、絵画変換部16と協同して後述するアート変換処理を行う。制御部12は、CPU及びその周辺回路や、作業用の外部メモリ、高機能のグラフィックアクセラレータ等から構成される。
【0021】
プログラム記憶部18は、制御部12に上記の各種処理を行わせるためのプログラム、及び種々のデータを更新可能に記憶するハードディスク装置等の記憶装置である。プログラム記憶部18に記憶されている種々のデータには、図3に示した透過率テーブル100を示すデータも含まれる。
【0022】
透過率テーブル100は、制御部12が後述する画像変換処理を行う際に使用されるデータであって、図3に示したように、絵画変換部16において変換可能な画調(油絵調、水彩画調、パステル調等)の種類に対応する透過率を示すものである。また、各画調には透過率として、全体、及び背景用の第1の透過率na1%,nb1%,nc1%,nd1%,・・・と、顔用の第2の透過率na2%,nb2%,nc2%,nd2%,・・・との2種類である。
【0023】
ここで、透過率テーブル100に示される画調毎の透過率は、後述するように元画像を、各々の画調に変換した後の絵画調画像に重ねて合成するときの元画像の透明度、言い換えると、合成後の画像において絵画調画像が顕在化する度合を示すものである。
【0024】
また、具体的な透過率は経験則に基づいて予め決められたものであり、基本的には、元画像を絵画調画像に変換したとき元画像の細部に生じる変化が小さな画調の透過率に比べ、元画像の細部に生じる変化が大きな画調の透過率が相対的に低くなっている。例えば油絵調と水彩画調とを比較すると、油絵調の透過率が相対的に低めに調整されており、水彩画調の透過率が相対的に高めに調整されている。さらに、各々の画調に対応する全体、及び背景用の第1の透過率と顔用の第2の透過率とは、第1の透過率に比べて第2の透過率が相対的に低めに調整されている。
【0025】
以下、サーバー11が、例えばユーザーによりアップロードされた画像や、画像記憶部17に記憶されている画像をユーザーの指示に従い絵画調画像へ変換する際の制御部12の動作について説明する。
【0026】
サーバー11においては、絵画調画像へ変換すべき処理対象の画像(以下、元画像という。)がユーザーによって指定されると、制御部12が図4のフローチャートに示した画像変換処理を実行する。なお、図5は、画像変換処理の要部を示す説明図である。
【0027】
制御部12は、ユーザーによって元画像が指定されることにより処理を開始し、直ちに前処理を行う(ステップS1)。この前処理は、元画像に対して画素単位での画像処理を可能とするために、JPEG形式等の画像データをビットマップ形式の画像データに変換する処理である。
【0028】
次に、制御部12は、ユーザーに、変換したい画調を選択させる(ステップS2)。ユーザーに選択させる画調としては、前述した油絵調、水彩画調、パステル調、色鉛筆画調、HDR等である。
【0029】
次に、制御部12は、ステップS1の前処理で変換した元画像の画像データ(以下、元画像データという)を絵画変換部16へ送り、絵画変換部16に、ユーザーに選択された画調への絵画変換処理を行わせる(ステップS3)。
【0030】
すなわち、制御部12は、絵画変換部16に、選択された画調に応じた画調変換アルゴリズムによる絵画変換処理を行わせることによって、図5に示したように元画像データG1を第1の絵画調画像データG2に変換する。また、制御部12は、絵画変換部16により変換された絵画調画像データG2を表示用バッファ14に確保されている作業領域に保存する。なお、以下の説明においては、ステップS3の処理による変換後の絵画調画像を第1の絵画調画像という。
【0031】
引き続き、制御部12は、絵画変換部16による絵画変換処理とは別に、図5に示したように元画像を対象として画像内に存在する任意の人物の顔を検出する顔検出処理を行う(ステップS4)。顔検出処理は、例えば二値化や輪郭抽出、パターンマッチング等の画像認識技術を用いて、一定範囲の位置関係にある目や鼻や口が存在する人物の顔に相当する特定領域(以下、顔領域という。)を探索する公知の技術を適用した処理である。
【0032】
また、ステップS4の顔検出処理で検出する顔領域は、頭髪部分を除く顔の輪郭によって囲まれる領域である。なお、顔検出処理に際して必要とするパターンデータ等の各種データはプログラム記憶部18に記憶されている。
【0033】
次に、制御部12は顔検出処理の結果に応じて以下の処理を実行する。まず、元画像において任意の人物の顔が検出できなかった場合(ステップS5:NO)の処理について説明する。図7(a)は、顔検出処理において人物の顔が検出できなかった場合における元画像G11、図7(b)は、ステップS3の処理による絵画変換処理後の第1の絵画調画像G2の例を示した図である。なお、図6(a)、図6(b)の各画像には、図5に示した対応する各画像データ(元画像データ、第1の絵画調画像データ)と同様の符号を付してある。
【0034】
人物の顔が検出できなかった場合、制御部12は、直ちに確認表示を行う(ステップS10)。ステップS10の処理は、表示用バッファ14の作業領域に記憶した、元画像データG1の変換後の画像データを確認用の画素数、例えば800×600画素にリサイズし、ユーザーの端末1へ送り、端末1の画面上に変換後の画像を表示させるための処理である。つまり人物の顔が検出できなかったときのステップS10の処理は、図7(b)に示したような第1の絵画調画像G2をユーザーの端末1に画面表示に表示させる処理である。
【0035】
次に、ステップS4の顔検出処理で元画像において任意の人物の顔が検出できた場合(ステップS5:YES)の処理について説明する。図6(a)は、人物の顔が検出できた場合における元画像G1、図6(b)は、図6(a)に対応する絵画変換処理後の第1の絵画調画像G2の例を示した図である。なお、図6(a)〜(c)の各画像には、図5に示した対応する各画像データ(元画像データ、第1の絵画調画像データ、第2の絵画調画像データ)と同様の符号を付してある。
【0036】
人物の顔が検出できた場合、制御部12は、まず、図3に示した透過率テーブル100を参照して、後述する処理で元画像G11を第1の絵画調画像G12を合成するときの透過率を、ユーザーに選択されかつ第1の絵画調画像G12において表現されている画調に応じ、画像内の背景領域と顔領域とに分けて個別に決定する(ステップS8)。なお、画像内の顔領域は、先に述べたように人物の頭髪部分を除く顔の輪郭によって囲まれる領域である。
【0037】
ステップS8の処理に際して際制御部12が決定する背景領域の透過率は、先に説明した背景用の第1の透過率na1%,nb1%,nc1%,nd1%,・・・のうちでユーザーに選択された画調に対応する透過率である。また、顔領域の透過率は、先に説明した顔領域用の第2の透過率na2%,nb2%,nc2%,nd2%,・・・のうちでユーザーに選択された画調に対応する透過率である。
【0038】
つまりステップS6の処理において制御部12は、顔領域、及び背景領域の双方の透過率として、例えばユーザーに選択された画調が油絵調であったときには、ユーザーに選択された画調が水彩画であったときよりも低い透過率を決定する。同時にステップS6の処理において制御部12は、顔領域の透過率として、背景領域の透過率に比べて相対的に低めに調整されている透過率を決定する。
【0039】
しかる後、制御部12は、元画像データにおける背景領域と顔領域とを異なる透過率で第1の絵画調画像データに合成することによって、図5に示したように第2の絵画調画像データG3を生成し、生成した第2の絵画調画像データG3を表示用バッファ14の作業領域に記憶する(ステップS7)。
【0040】
ステップS7の合成処理は、より具体的には、新たに生成する第2の絵画調画像データG3における各画素の色成分毎の画素値を、元画像データG1の画素値と第1の絵画調画像データG2の画素値とを所定の比率で反映させた画素値とするとともに、元画像データの画素値の比率を先に決定した透過率に対応する比率とする変換処理である。つまり元画像をαブレンド(2つの画像を係数αにより合成する処理)により第1の絵画調画像に透過合成する処理である。
【0041】
図6(c)は、ステップS7の処理で生成される第2の絵画調画像G3の例を示した図である。係る第2の絵画調画像G3は、第1の絵画調画像G2(b)に元画像G11を透過合成したものである。そのため、第1の絵画調画像G2において細部につぶれが生じたり、無用な刷毛目や色調が現れたりしている場合であっても、細部のつぶれが目立たず、かつ無用な刷毛目や色調が現れる度合が減少したものとなる。
【0042】
しかも、透過合成時における元画像G1の透過率は、背景領域に比べて顔領域が相対的に低めである。したがって、第2の絵画調画像G3においては、背景領域の細部に比べ、顔領域における目、鼻、口、頬、額といった細部のつぶれがより一層目立たず、かつ無用な刷毛目や色調が現れる度合が大きく減少したものとなる。
【0043】
そして、制御部12は、前述した確認表示処理を行う(ステップS10)。つまり図6(c)に示したような第2の絵画調画像G3をユーザーの端末1に画面表示に表示させる。
【0044】
しかる後、制御部12は、ステップS10で確認表示した内容で変換内容を決定するか、または画調の変更するかのいずれかをユーザーに選択させるとともに、決定が選択されなければ(ステップS9:NO)、ステップS2の処理へ戻り、ユーザーに新たな画調を再選択させる。
【0045】
そして、制御部12は、ユーザーから決定指示があれば(ステップS9:YES)、後処理を行う(ステップS10)。ステップS10の後処理は、主として表示用バッファ14に記憶されている第1の絵画調画像データ、又は第2の絵画調画像データを元画像と同様のJPEG形式等の画像データに変換する処理である。これにより、制御部12は、画像変換処理を終了する。なお、ステップS10の後処理を経た画像データは、最終的にはユーザーの端末1へ送られるか、または画像記憶部17に記憶される。
【0046】
以上説明したように本実施形態においては、元画像を絵画調画像に変換する際、元画像が図6(a)に示したような任意の人物の顔が存在するポートレート等の撮影画像であった場合には、元画像G1から生成した第1の絵画調画像G2に、元画像G1を透過合成することにより、第1の絵画調画像G2に比べて細部のつぶれが目立たず、かつ無用な刷毛目や色調が現れる度合が減少した第2の絵画調画像G3を最終的な絵画調画像として生成するようにした(図5参照)。
【0047】
したがって、元画像がポートレート等である場合には、絵画調画像に変換した後においても、特に目、鼻、口、頬、額といった人物の顔の細部のリアリティを維持することができ、撮影画像としての適度なリアリティと絵画としての趣との双方を備えた画像を生成することが出来る。その結果、単なる絵画調画像とは異なり、撮影画像を敢えて絵画調に変換することによって得られる面白みのある画像を得ることができる。
【0048】
しかも、本実施形態においては、元画像G1を第1の絵画調画像G2に透過合成するときには、顔領域の透過率とそれ以外の背景領域との透過率を個別に設定し、顔領域の透過率を背景領域の透過率よりも低くすることにより、目、鼻、口、頬、額といった細部のつぶれがより一層目立たず、かつ無用な刷毛目や色調が現れる度合が大きく減少するようにした。したがって、絵画調画像に絵画としての趣を確保しつつ、よりリアリティのある人物描写を行うことができる。
【0049】
なお、本実施形態においては、元画像がポートレート等の撮影画像であって、元画像において任意の人物の顔が検出できたことを条件として、絵画変換処理を行った後の第1の絵画調画像に元画像を透過合成した。しかし、本発明の実施に際しては、元画像において任意の人物の顔が検出できたか否かに関係なく、第1の絵画調画像に元画像を透過合成しても構わない。図8は、元画像が図7(a)に例示したように人物の顔が存在しない撮影画像であったとき、図7(b)に示した絵画変換処理後の第1の絵画調画像G12に元画像G11を透過合成することにより生成される第2の絵画調画像G13の例を示した図である。
【0050】
また、本実施形態においては、背景領域と異なる透過率で第2の絵画調画像に合成する元画像の顔領域を、頭髪部分を除く顔の輪郭によって囲まれる領域とする場合について説明した。しかし、顔領域は、頭髪部分を含む領域としてもよいし、頭髪部分を含んだ顔部分を囲む矩形又は円形、楕円形等の特定領域としてもよい。
【0051】
さらに、元画像に、顔領域を囲む1又は複数(一重、二重等)の環状領域を設定し、係る環状領域に顔領域と背景領域とは異なる透過率を設定してもよい。その場合には、環状領域の透過率を、顔領域の透過率と背景領域の透過率の中間値とすることにより、顔領域と背景領域との間に明らかなリアリティの違いが生じさせることがなく、より自然な絵画調画像を得ることができる。特に顔部分を囲む特定領域を顔領域とする場合には、係る効果が大きい。なお、環状領域が複数の場合は、環状領域の透過率を段階的に変化させればよい。
【0052】
また、本実施形態においては、元画像がポートレート等の撮影画像であった場合において元画像を第1の絵画調画像に透過合成するときの透過率を、顔領域と背景領域とにおいて異なる透過率とした。しかし、本発明の実施に際しては、元画像がポートレート等の撮影画像においても、領域分けを行うことなく元画像を一定の透過率で第1の絵画調画像に透過合成する構成としてもよい。
【0053】
その場合であっても、第2の絵画調画像として、第1の絵画調画像に比べて人物の顔部分のつぶれが目立たず、かつ無用な刷毛目や色調が現れる度合が減少した画像を生成することができ、最終的な絵画調画像には、絵画としての趣を確保しつつ、リアリティのある人物描写を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態においては、主として元画像において任意の人物の顔を検出し、顔が検出できたことを条件として、元画像を第1の絵画調画像に透過合成するものについて説明した。しかし、本発明においては、元画像における検出対象は必ずしも人物の顔でなくともよく、その領域が検出可能な特定の被写体であれば、花や動物(犬や猫等)が検出対象であっても構わない。
【0055】
また、最終的に生成する絵画調画像において元画像に近いリアリティを確保する領域は、必ずしも画像認識処理によって検出可能な顔領域等でなくともよく、ユーザーにより手動で指定された領域であっても構わない。その場合、制御部12には、例えば以下のような処理を行わせればよい。すなわち元画像を第1の絵画調画像に変換した後、ユーザーに、タッチパネルやマウス等の操作によって第1の絵画調画像において任意の領域、つまり元画像に近いリアリティの確保を希望する領域を指定させる。そして、制御部12には、ユーザーにより指定された領域を特定領域として検出した後、当該特定領域の透過率を他の背景領域よりも低い透過率として元画像を第1の絵画調画像に透過合成させる処理を行わせればよい。
【0056】
上記のように元画像に近いリアリティを確保する領域をユーザーにより手動で指定された領域とすれば、最終的に生成する絵画調画像において、ユーザーが必要に応じ、かつ好みに応じた部分について元画像に近いリアリティを確保することができる。
【0057】
また、本実施形態においては、元画像を第1の絵画調画像に透過合成するときの透過率(第1の透過率、第2の透過率)を、ユーザーにより選択された画調の種類毎に決定したが、以下のようにしてもよい。例えばユーザーが画調とともに絵画調画像への変換強度、つまり変換後の絵画調画像における絵画的な特徴の強度を選択できる構成であれば、同じ画調であっても、変換強度に応じて透過率を変えてもよい。
【0058】
また、本実施形態においては、元画像を第1の絵画調画像に透過合成するときの透過率(第1の透過率、第2の透過率)を、経験則に基づいて予め決められた既定値とした。しかし、透過合成時の透過率は、例えば元画像と第1の絵画調画像との間における局所的な変化度合を確認し、確認した変化度合に基づき決定するようにしてもよい。その際には、変化度合が高い場合の透過率を、変化度合が低い場合の透過率に比べて相対的に低くすればよい。
【0059】
また、変化度合に基づいて透過率を決定する場合、透過率は、例えば変化度合と画調毎に予め決めてある調整値とをパラメータとする所定の関数を用いて算出してもよい。なお、上記の局所的な変化度合は、例えば元画像と第1の絵画調画像とを複数ブロックにそれぞれ分割したときのブロック毎の代表色や、代表色の割合、ブロック毎に輪郭抽出を行い抽出される輪郭線のブロック内における密度といった1又は複数の特徴量に基づいて判断すればよい。
【0060】
さらに、元画像を第1の絵画調画像に透過合成するときの透過率(第1の透過率、第2の透過率)は、元画像の特徴によって決めることもできる。すなわち画調の種類にもよるが、元画像が複雑な場合(色々なものが写り込んでいる場合)は絵画変換すると顔が不自然になる可能性が高く、逆に元画像が単純な場合(背景が一色のような場合)は絵画変換しても顔が不自然になる可能性が低い。したがって、例えば透過テーブル100として、元画像の複雑さの度合に応じた透過率を示すものを用意し、元画像が複雑な場合には透過率を相対的に低くし、元画像が単純な場合には透過率を相対的に高くするようにすればよい。
【0061】
また、本実施形態においては、元画像と第1の絵画調画像との合成に際し、元画像側の透過率を画調に応じて決定する場合について説明したが、本発明においては、元画像(撮影画像)を所定の透過率で第1の絵画調画像に透過合成するものであればよい。したがって、元画像と第1の絵画調画像との合成に際しては、第1の絵画調画像側の透過率を画調に応じて決定するようにしてもよい。その場合、透過率テーブル100には、例えば油絵調と水彩画調との透過率として、本実施形態とは逆に、油絵調に相対的に高めの透過率を設定し、水彩画調に相対的に低めの透過率を設定しておけばよい。
【0062】
また、本実施形態においては、元画像データを第1の絵画調画像データに変換する絵画変換処理を行う絵画変換部16を備えた構成について説明したが、言うまでもなく、本発明の実施に際しては、絵画変換部16に代えて、制御部12に絵画変換処理を行わせる構成を採用することもできる。
【0063】
また、本実施形態においては、主として撮影画像を絵画調画像に変換する場合について説明したが、本発明は、撮影画像を絵画調以外の任意の人工的な特徴を備えた画像に変換する場合にも適用することができる。
【0064】
また、ここでは画像サービスサイト10を実現するサーバー11に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、元画像を絵画調画像と初めとする人工的な所定の特徴を備えた種々の画像に変換することができる画像処理機能を備えたものであれば、任意の装置に適用することができる。任意の装置としては、例えばデジタルカメラや、デジタルカメラにより撮影された撮影画像を鑑賞用として表示することを主たる目的とするデジタルフォトフレーム、汎用的なパーソナルコンピュータ等が含まれる。
【0065】
以上、本発明のいくつかの実施形態、及びその変形例について説明したが、これらは本発明の作用効果が得られる範囲内であれば適宜変更が可能であり、変更後の実施形態も特許請求の範囲に記載された発明、及びその発明と均等の発明の範囲に含まれる。
以下に、本出願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[請求項1]
撮影画像を、人工的な特徴を備えた第1の変換画像に変換する変換手段と、前記撮影画像を、所定の透過率で前記変換手段による変換後の第1の変換画像に透過合成することにより第2の変換画像を生成する透過合成手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
[請求項2]
前記所定の透過率を前記変換手段による前記撮影画像の変換内容に応じて決定する決定手段を備え、前記透過合成手段は、前記撮影画像を前記決定手段により決定された透過率で前記第1の変換画像に透過合成することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
[請求項3]
前記撮影画像から特定の被写体に相当する被写体領域を検出する検出手段を備え、前記決定手段は、前記透過合成手段が撮影画像を前記第1の変換画像に透過合成する際の透過率として、前記撮影画像の前記検出手段により検出された被写体領域における透過率と、前記撮影画像の前記被写体領域を除く背景領域における透過率とを個別に決定することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
[請求項4]
前記決定手段は、前記撮影画像の前記検出手段により検出された被写体領域における透過率として、前記撮影画像の前記被写体領域を除く背景領域における透過率よりも低い透過率を決定することを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
[請求項5]
前記検出手段は、前記被写体領域として任意の人物の顔に相当する領域を検出することを特徴とする請求項3又は4記載の画像処理装置。
[請求項6]
前記第1の変換画像は特定の画調を有する絵画調画像であり、前記変換手段は前記撮影画像を前記絵画調画像に変換することを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の画像処理装置。
[請求項7]
前記決定手段は、前記透過合成手段が撮影画像を前記第1の変換画像に透過合成する際の透過率を、前記変換手段による変換後の絵画調画像に確保される画調の種類に応じて決定することを特徴とする請求項6記載の画像処理装置。
[請求項8]
前記撮影画像から特定の被写体に相当する被写体領域を検出する検出手段を備え、前記透過合成手段は、前記検出手段により前記撮影画像から特定の被写体に相当する被写体領域が検出されたことを条件として前記撮影画像を前記第1の変換画像に透過合成することを特徴とする請求項1、2、6、7いずれか記載の画像処理装置。
[請求項9]
撮影画像を、人工的な特徴を備えた第1の変換画像に変換する工程と、前記撮影画像を、所定の透過率で前記変換手段による変換後の第1の変換画像に透過合成することにより第2の変換画像を生成する工程とを含むことを特徴とする画像処理方法。
[請求項10]
コンピュータに、撮影画像を、人工的な特徴を備えた第1の変換画像に変換する手順と、前記撮影画像を、所定の透過率で前記変換手段による変換後の第1の変換画像に透過合成することにより第2の変換画像を生成する手順とを実行させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0066】
11 サーバー
12 制御部
14 表示用バッファ
16 絵画変換部
17 画像記憶部
18 プログラム記憶部
100 透過率テーブル
G1,G11 元画像
G2,G12 第1の絵画調画像
G3,G13 第2の絵画調画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影画像を、人工的な特徴を備えた第1の変換画像に変換する変換手段と、
前記撮影画像を、所定の透過率で前記変換手段による変換後の第1の変換画像に透過合成することにより第2の変換画像を生成する透過合成手段と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記所定の透過率を前記変換手段による前記撮影画像の変換内容に応じて決定する決定手段を備え、
前記透過合成手段は、前記撮影画像を前記決定手段により決定された透過率で前記第1の変換画像に透過合成する
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記撮影画像から特定の被写体に相当する被写体領域を検出する検出手段を備え、
前記決定手段は、前記透過合成手段が撮影画像を前記第1の変換画像に透過合成する際の透過率として、前記撮影画像の前記検出手段により検出された被写体領域における透過率と、前記撮影画像の前記被写体領域を除く背景領域における透過率とを個別に決定する
ことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記撮影画像の前記検出手段により検出された被写体領域における透過率として、前記撮影画像の前記被写体領域を除く背景領域における透過率よりも低い透過率を決定することを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記被写体領域として任意の人物の顔に相当する領域を検出することを特徴とする請求項3又は4記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1の変換画像は特定の画調を有する絵画調画像であり、前記変換手段は前記撮影画像を前記絵画調画像に変換することを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記決定手段は、前記透過合成手段が撮影画像を前記第1の変換画像に透過合成する際の透過率を、前記変換手段による変換後の絵画調画像に確保される画調の種類に応じて決定することを特徴とする請求項6記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記撮影画像から特定の被写体に相当する被写体領域を検出する検出手段を備え、
前記透過合成手段は、前記検出手段により前記撮影画像から特定の被写体に相当する被写体領域が検出されたことを条件として前記撮影画像を前記第1の変換画像に透過合成することを特徴とする請求項1、2、6、7いずれか記載の画像処理装置。
【請求項9】
撮影画像を、人工的な特徴を備えた第1の変換画像に変換する工程と、
前記撮影画像を、所定の透過率で前記変換手段による変換後の第1の変換画像に透過合成することにより第2の変換画像を生成する工程と
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
コンピュータに、
撮影画像を、人工的な特徴を備えた第1の変換画像に変換する手順と、
前記撮影画像を、所定の透過率で前記変換手段による変換後の第1の変換画像に透過合成することにより第2の変換画像を生成する手順と
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−98681(P2013−98681A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238386(P2011−238386)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】