説明

画像処理装置、画像処理方法、及び液体吐出装置

【課題】液体吐出装置用の画像処理装置であって、液体を吐出するノズルが高密度に配置されている場合にノズル毎の補正処理を適正に行うことのできる画像処理装置等を提供する。
【解決手段】画像データに従って複数のノズルから被吐出媒体に液体を吐出する液体吐出装置用の画像処理装置が、予め定められた補正値に従って前記画像データを補正し、前記各ノズルからのインク吐出量を調整する補正処理を実行し、前記補正値は、2以上の所定数の前記ノズル毎に、1つの値が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置用の画像処理装置等に関し、特に、液体を吐出するノズルが高密度に配置されている場合にノズル毎の補正処理を適正に行うことのできる画像処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンターなどの液体吐出装置が使用されている。当該インクジェットプリンターでは、色材である各色のインクがヘッドに備えられる複数のノズルから用紙などの印刷媒体に噴射されて印刷が実行される。
【0003】
このようなインクジェットプリンターでは、上記各ノズルの特性(インク吐出量、インク吐出方向等)に起因して、濃度ムラなど印刷物に不具合が発生することが知られている。
【0004】
このようなノズル特性による不具合を解消するため、従来、印刷用の画像データに対して補正処理を行うことが提案されている。
【0005】
当該補正処理に関して、例えば、下記特許文献1では、テストパターンを用いて各ノズルに対応する印字エリアの濃度特性を測定し着弾位置誤差に起因する濃度ムラを補正することが示されています。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−264069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、プリンターの高解像度化が進み、インクを吐出するノズルの数が飛躍的に増大してノズルが高密度化することになった。この結果、上述した各ノズルに関する補正処理を行うために必要な各ノズルの特性把握において、出力したテストパターン上で隣接するノズルから着弾したドットが重なり易くなり、ノズル毎の出力結果を正確に把握することが難しくなった。これにより、その特性に基づいて生成される補正の情報(補正値)は不正確になる虞がある。また、人の視覚能力を考えれば、細かすぎる単位での補正処理は意味がない。さらに、上記補正の情報(補正値)のデータ量は、ノズル数の増大に伴って大容量化し、プリンターやその制御装置におけるデータ記憶容量を圧迫することになる。
【0008】
また、これらの課題に対応する際には、被印刷媒体(用紙)の種類やノズルの配置部位など印刷結果に影響を及ぼす各状況が考慮されるべきである。特に、ヘッドが固定であるラインヘッド式のインクジェットプリンターであって、当該ラインヘッドが複数のユニットに分割され、それらのユニットが用紙の幅方向にオーバーラップ部を有するプリンターでは、そのオーバーラップ部による印刷処理の挙動が他の部分よりも複雑であるため、当該部分に配置されるノズルについては特別な扱いが望まれる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、液体吐出装置用の画像処理装置であって、液体を吐出するノズルが高密度に配置されている場合にノズル毎の補正処理を適正に行うことのできる画像処理装置、等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、液体吐出装置に接続可能であり、画像データに従って複数のノズルから被吐出媒体に液体を吐出する前記液体吐出装置用の画像処理装置が、予め定められた補正値に従って前記画像データを補正し、前記各ノズルからのインク吐出量を調整する補正処理を実行する制御部を備え、前記補正値は、2以上の所定数の前記ノズル毎に、1つの値が設定される、ことである。
【0011】
更に、上記発明において、好ましい態様は、前記補正値として設定される1つの値は、前記所定数の各ノズルにおける補正値を平均化した値である、ことを特徴とする。
【0012】
更に、上記発明において、その好ましい態様は、前記被吐出媒体の種類毎に前記補正値が設定され、前記補正値が設定される前記ノズルの所定数は、当該被吐出媒体の種類毎に異なる、ことを特徴とする。
【0013】
更にまた、上記発明において、好ましい態様は、同じ前記液体の量を吐出した際に形成されるドットの面積が大きい前記被吐出媒体の種類ほど、前記補正値が設定されるノズルの所定数は大きい、ことを特徴とする。
【0014】
更に、上記発明において、好ましい態様は、前記液体吐出装置が、前記ノズルを備え移動する前記被吐出媒体に対して固定位置で前記液体を吐出する複数のヘッドユニットを備え、当該ヘッドユニット間に、前記被吐出媒体の移動と交わる方向について前記ノズルの位置が重なるオーバーヘッド部がある場合に、前記オーバーヘッド部における、前記補正値が設定されるノズルの所定数は、他の部分と異なる、ことを特徴とする。
【0015】
更にまた、上記発明において、好ましい態様は、前記オーバーヘッド部における所定数は、他の部分よりも小さい、ことを特徴とする。
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、液体吐出装置に接続可能であり、画像データに従って複数のノズルから被吐出媒体に液体を吐出する前記液体吐出装置用の画像処理を実行するための画像処理方法において、予め定められた補正値に従って前記画像データを補正し、前記各ノズルからのインク吐出量を調整する補正処理を実行し、前記補正値は、2以上の所定数の前記ノズル毎に、1つの値が設定される、ことである。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明の更に別の側面は、画像処理装置に接続可能であり、前記画像処理装置から受信した画像データに従って複数のノズルから被吐出媒体に液体を吐出する液体吐出装置が、予め定められた補正値に従って前記画像データを補正し、前記各ノズルからのインク吐出量を調整する補正処理を実行する制御部を備え、前記補正値は、2以上の所定数の前記ノズル毎に、1つの値が設定される、ことである。
【0018】
更に、上記発明において、一つの態様は、前記被吐出媒体を搬送する搬送部と、前記ノズルを有し、前記搬送部により移動する前記被吐出媒体に対して固定位置で前記液体を吐出する複数のヘッドユニットと、を備え、当該ヘッドユニット間に、前記被吐出媒体の移動と交わる方向について前記ノズルの位置が重なるオーバーヘッド部を有し、前記制御部は、前記オーバーヘッド部における、前記補正値が設定されるノズルの所定数を、他の部分と異なるように設定する、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した画像処理装置の実施の形態例に係る構成図である。
【図2】プリンター2のヘッド部の概略配置を例示した図である。
【図3】補正テーブル128を例示した図である。
【図4】ドライバー12によって行われる処理の手順を例示したフローチャートである。
【図5】補正テーブル128の生成におけるテストパターンの印刷結果を例示した図である。
【図6】印刷されたテストパターンのドットの状況を例示した図である。
【図7】濃度階調値と実測濃度値の関係を説明する図である。
【図8】補正テーブル128の生成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
【0022】
図1は、本発明を適用した画像処理装置の実施の形態例に係る構成図である。図1に示すドライバー12が本発明を適用した画像処理装置であり、プリンター2で用いるインク色の色空間への色変換処理後に、プリンター2が備える各ノズルの特性を補正する処理を実行するが、隣接する2以上の複数ノズル毎に一つの補正値が設定された補正情報(補正テーブル128)に基づいて当該補正処理を実行する。また、印刷する用紙(被吐出媒体)の種類に応じて一つの補正値が設定されるノズル数を変えると共に、上述したオーバーラップ部においても当該ノズル数を他の部分と異なる値とする。こららの特徴により、本実施の形態例における画像処理装置では、ノズルが高密度に配置されるプリンターの場合における上記補正処理を、適正に、また、使用するデータ記憶容量を抑えて実行することができる。
【0023】
図1は、本実施の形態例における装置構成を機能的に示している。ホストコンピューター1(画像処理装置)は、プリンター2に対して印刷指示を行うプリンター2のホスト装置であり、例えば、パーソナルコンピューターで構成される。従って、ホストコンピューター1は、図示していないが、CPU(画像処理装置の制御部)、RAM、ROM、HDD、ディスプレイ、操作装置等で構成されている。
【0024】
アプリケーション11は、印刷要求元であり、例えば、文章作成アプリケーション、図形作成アプリケーションなど、様々な機能を有するアプリケーションが存在し得る。当該アプリケーション11は、処理内容を指示するプログラム、当該プログラムに従って処理を実行する上記CPU、及び上記RAM等で構成され、印刷要求時には印刷内容を表す画像データを出力する。
【0025】
ドライバー12は、ホストコンピューター1のCPUで実行されるプリンター2用のドライバーであり、上記アプリケーション11から出力された画像データに画像処理を施してプリンター2用の画像データ(印刷データ)とし、当該印刷データをプリンター2に送信して、アプリケーション11から要求を受けた印刷について印刷指示を行う部分である。
【0026】
当該ドライバー12は、処理内容を指示するドライバープログラム、当該プログラムに従って処理を実行する上記CPU、処理に使用される各種データ及び上記RAM等で構成され、その具体的な機能構成及び処理内容は後述する。また、このドライバープログラムは、CD等の記憶媒体からホストコンピューター1に複写される、または、インターネット等のネットワークを介してホストコンピューター1にダウンロードされる、ことにより、ホストコンピューター1の上記HDDに格納される。
【0027】
プリンター2(液体吐出装置)は、上記ホストコンピューター1の印刷指示に従って印刷処理を実行する、例えば、ラインヘッドのインクジェットプリンターである。プリンター2には、図1に示されるように、コントローラー13と印刷実行部14が備えられる。
【0028】
コントローラー13(液体吐出装置の制御部)は、上記印刷指示による印刷データを受信して、当該印刷データに従った印刷処理を印刷実行部14に実行させる部分である。具体的には、処理内容を記述したプログラム、当該プログラムに従って処理を実行するCPU、RAM、プログラムを格納するROM、ASIC等で構成される。
【0029】
印刷実行部14は、上記コントローラー13の指示に従って実際に用紙などの印刷媒体に印刷処理を実行する部分である。ここには、印刷媒体に対して色材であるインク(液体)を吐出する複数のノズルを備えたラインヘッド、印刷媒体を所定の速度で搬送する搬送装置などが備えられる。ここでは、一例として、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)4色のインクを用いるものとする。また、ラインヘッドは、一例として、複数のヘッドユニットに分割されており、それらが千鳥状に配置される構成である。
【0030】
図2は、本プリンター2のヘッド部の概略配置を例示した図である。ここでは、ヘッド141は、3つのヘッドユニット141a、141b、141cに分割されており、被印刷媒体である用紙143の搬送方向(図中の矢印a)に対して、図2に示すように、千鳥状に配置されている。
【0031】
各ヘッドユニットには、それぞれ、4つのノズル列141が備えられ、各ノズル列141は複数の(ここでは、一例として360の)ノズルで構成される。また、これらノズル列142は、各ノズルユニットにおいて、左から順番に、CMYKのインクをそれぞれ吐出するように構成される。すなわち、左端のノズル列142ではノズルからC色のインクが吐出され、その右隣のノズル列142ではノズルからM色のインクが吐出され、さらに右隣のノズル列142ではノズルからY色のインクが吐出され、右端のノズル列142ではノズルからK色のインクが吐出される。
【0032】
従って、各色毎に、この例では1080のノズルが備えられる。そして、図2に示されるように、隣り合うヘッドユニットは、用紙143の幅方向に一部が重なり合うように配置され、図2にbで示すオーバーラップ部では、各色で、用紙143の幅方向の同じ位置に対して、2つのノズルが配置される(2つのノズルでインクを吐出できる)ようになっている。
【0033】
印刷時には、搬送方向に移動する用紙143に対して、固定のヘッドユニットに備えられる、このような配置の各ノズルから各色のインクが吐出される。
【0034】
次に、図1の下部に示すドライバー12の機能構成について説明する。ラスタライズ部121は、上記アプリケーション11から出力された画像データに対してラスタライズの処理を施し、例えば、RGB(レッド、グリーン、ブルー)の色空間で表現されたビットマップデータを生成する部分である。
【0035】
色変換部122は、色変換テーブル127に従って、上記ビットマップデータを色材の色であるCMYKの色空間で表現されたデータに変換する部分である。色変換テーブル127は、予め用意されたLUT(ルックアップテーブル)であり、RGBの各濃度階調値に対して、対応するCMYKの各濃度階調値が収められたテーブルである。当該色変換テーブル127は、印刷媒体の種類(用紙の種類)によって、同じ濃度階調値でも実際に印刷される色が変わってくるので、各用紙種類に対してそれぞれ設計され、上記HDD等に格納されている。例えば、普通紙とファイン用紙についてそれぞれLUTが格納される。
【0036】
また、当該色変換テーブル127では、RGB色空間(第一色空間)の各色について、それらの濃度階調値が、一例として、8ビット(256階調)で表現され、各色それぞれ0〜255の値を有する。また、CMYK色空間(第二色空間)の各色についても、同様に、各色0〜255の値を持てるように設計されている。事前に生成された各色変換テーブル127は、上述したドライバープログラムと同様にして上記HDD等に格納される。
【0037】
次に、ノズル特性補正部123は、補正テーブル128に従って、上記色変換後のビットマップデータを補正する部分である。ここでは、上述したノズル特性に対する補正処理、すなわち、上記ラインヘッドに備えられる各ノズルの特性によって現れる印刷上の不具合を抑えるための補正処理が実行される。当該補正処理により、各ノズルから吐出されるインク量が適正に補正されることになる。
【0038】
補正テーブル128は、各ノズルについて、補正前の濃度階調値に補正後の濃度階調値を対応付けたテーブルであり、予め用意されて上記HDD等に収められている。格納方法は、上述したドライバープログラムと同様である。
【0039】
図3は、補正テーブル128を例示した図である。図3に示すテーブルでは、1ノズル列142(1色)分について示され、縦欄に各ノズルを示すノズル番号(ここでは、ノズル#0−#1079)があり、その右側に、上述した補正後の濃度階調値が収められている。
【0040】
図3の128Aに示されるように、このテーブルでは、3つのノズル毎に一つの補正値(補正後の濃度階調値)が与えられている。すなわち、3つのノズルに共通の補正値が設定されている。
【0041】
例えば、128Aのテーブルにおいて、「ノズル#0,1,2」の3つのノズルでは、入力される階調値が「200」であった場合には、その値を「190」に補正すべきことが設定され、上記色変換後のビットマップデータにおいて、これらノズルでインクを吐出する画素について、その値が「200」であれば、上記ノズル特性補正部123により、「190」に補正されることになる。
【0042】
また、図3に示されるように、補正テーブル128は、被印刷媒体の種類(用紙種類)毎に複数用意される(128A、B、C、D、・・・)。ここでは、例えば、補正テーブル128Aは普通紙用のものであり、補正テーブル128Bはファイン紙用のものである。上述のように、普通紙用のテーブルでは3つのノズル毎に補正値が設定されるが、図3の下部に示すように、ファイン紙用のテーブルでは、2つのノズル毎に補正値が設定される。例えば、「ノズル#0,1」の2つのノズルには、入力階調値「200」に対して「189」の補正値が設定されている。
【0043】
このように、本画像処理装置の補正テーブル128では、複数のノズル毎に補正値が設定されると共に、用紙種類によって、その補正値が設定されるノズルの数が異なっている。そして、吐出されたインクの滲みが少ない(同じインク量で形成されるドットの面積が小さい)用紙ほど、その数を小さくしている。従って、上述のように、滲みの少ないファイン紙では2ノズル毎に補正値が設定され、それよりも滲みの多い普通紙では3ノズル毎に補正値が設定される。
【0044】
さらに、本実施の形態例では、上述のとおり、千鳥状に配列された3つのヘッドユニットを備え、ヘッドユニット間で用紙143の幅方向にオーバーラップ部を有し、当該方向の同じ位置に2組のノズルが備えられることになるので、言い換えれば、同じラスターに同色2つのノズルが存在し他の部分とは状況が異なるので、それらオーバーラップ部のノズルについては異なる扱いをしている。
【0045】
具体的には、ここでは、他の部分のように補正値を複数ノズルでまとめることなく、1ラスター(同じ位置にある2ノズル)毎に補正値を設定している。言い換えれば、他の部分では用紙143の幅方向(用紙143の搬送方向に直行する方向)に連続して並んだ複数のノズル毎に補正値が設定されるが、オーバーラップ部では当該方向には1つのノズル毎に補正値が設定される。
【0046】
図3に示す例では、図3のbで指し示す部分のように、オーバーラップ部の補正値が補正テーブル128に収められている。ここに示す例では、ヘッドユニット141aの下部に位置するノズル#350のノズルとヘッドユニット141bの上部に位置するノズル#360のノズルが同じラスター上に(用紙143の幅方向同じ位置に)存在し、同じ補正値が与えられる。そして、用紙143の幅方向に隣接するノズル(例えば、ノズル#349、#351)とは補正値の設定が一緒にされていない。オーバーラップ部に位置する他のノズルについても同様に補正値が収められる。なお、ここに示す例では、10ノズル分がオーバーラップしている。
【0047】
なお、これら補正テーブル128の生成方法については後述する。また、他の3色についても、同様の補正テーブル128が用意されて格納されている。
【0048】
次に、ドット分解部124は、上記補正後のビットマップデータを、ドット発生量テーブル129に従って、ドットの発生率で表現したデータに変換する部分である。ここでは、一例として、各ノズルで打つことのできるドットが小ドット(S)、中ドット(M)、大ドット(L)の3サイズあり、処理前の濃度階調値(0−255)が、これら3つのドットの発生率のデータに変換される。各ドットの発生率は、例えば、0−4096の値で示すことができる。
【0049】
ドット発生量テーブル129は、CMYKの各濃度階調値(0−255)に対して、上記3つのドットの発生率を対応付けたテーブルであり、用紙種類毎に予め用意され、上記HDD等に格納されている。格納方法は、上述したドライバープログラムと同様である。
【0050】
次に、ハーフトーン処理部125は、いわゆるハーフトーン処理を実行し、上記ドット発生率に変換されたデータを、各ドットの有無を表すデータに変換する部分である。処理手法は、従前のディザ法や誤差拡散法などを用いることができる。
【0051】
次に、印刷データ変換部126は、上記ハーフトーン処理後のデータをプリンター2用のコマンドで表現された上記印刷データに変換する部分である。
【0052】
以上説明したような構成を有する本実施の形態例にけるドライバー12では、以下のように画像処理が実行される。図4は、ドライバー12によって行われる処理の手順を例示したフローチャートである。以下、図4に基づいて画像処理の具体的な内容について説明する。
【0053】
まず、上述したようにアプリケーション11が印刷要求を出すと、その画像データがドライバー12に受信される(ステップS1)。受信される画像データは、この段階では、通常、テキスト、グラフィックス、イメージなどのオブジェクトの単位で表現されたデータ形式になっているので、ラスタライズ部121がラスタライズ処理を実行し、その画像データをビットマップデータに変換する(ステップS2)。具体的には、各画素がRGB各色の濃度階調値(0−255)を有するデータに変換する。ラスタライズには従前の手法を用いることができる。
【0054】
次に、生成されたビットマップデータが色変換部122に渡され、上述した色変換テーブル127を用いた色変換処理が実行される(ステップS3)。具体的には、ホストコンピューター1のユーザーが上記操作装置を用いて選択した、あるいは、デフォルト値として決まっている用紙種類を示す情報に従って、その用紙修理に相応した上記色変換テーブル127を選択し、各画素の(R,G,B)で表現されるデータを(C,M,Y,K)で表現されるデータに順次変換する。そして、各画素がCMYK各色の濃度階調値で表現されるビットマップデータが生成される。
【0055】
このようにして生成されたCMYK色空間の画像データに対して、すなわち、プリンター2で使用されるインク色の濃度階調値で表現された画像データに対して、上述したノズル特性に係る補正処理を実行する(ステップS4)。まず、ノズル特性補正部123は、上記用紙種類を示す情報に従って、その用紙種類に相応した補正テーブル128を選択する。その後、各画素の各色のデータ(濃度階調値)について、それぞれ、どのノズルで打たれるかを決定し、決定されたノズルに対応する補正後の濃度階調値を上記選択した補正テーブル128から抽出して、データをその抽出した値に変更する、という処理を実行する。従って、(C,M,Y,K)で表現されたデータが補正されて(C’,M’,Y’,K’)で表現されたデータに変換される。すなわち、各ノズルの特性が反映された適正な画像データが生成される。
【0056】
なお、上記どのノズルで打つかの決定は、ドライバー12が備える、その処理を実行する部分(図1に図示せず)の処理結果を利用して行う。
【0057】
次に、上記補正後のデータに対して、各ドットへの分解処理を実行する(ステップS5)。当該処理は、上述したようにドット分解部124がドット発生量テーブル129を用いて行う。具体的には、上記用紙種類を示す情報に従って、その用紙種類に相応したドット発生量テーブル129を選択し、選択したテーブルを参照して、画素毎に(C’,M’,Y’,K’)の濃度階調値を、上記各ドット毎の発生量のデータ(S,M,L)に変換していく。
【0058】
その後、当該変換されたデータは、ハーフトーン処理部125に渡され、ここでハーフトーン処理が実行される(ステップS6)。そして、画像データは、小、中、大ドットの有無を表すデータに変換される。
【0059】
ハーフトーン処理されたデータは、印刷データ変換部126によってプリンター2用の印刷データに変換され(ステップS7)、プリンター2へ送信される(ステップS8)。その後、送信された印刷データは、コントローラー13で受信されて、当該印刷データに従った印刷処理が実行されることになる。すなわち、印刷データに従って各ノズルからインクが吐出されて、印刷媒体上に小、中、大ドットが形成される。
【0060】
次に、上述した補正テーブル128の生成について説明する。当該補正テーブル128の生成はプリンター2の各個体に対して行われる。以下、1つの用紙種類につき、同じ色のインクを吐出するノズル列について説明する。
【0061】
まず、その装置において実際にテストパターンの印刷処理を実行する。当該印刷処理は、低濃度から高濃度まで、複数の濃度階調値(例えば、0−255を均等に分割した5段階の値)に対して、それぞれ、その色の全ノズルで実行する。図5は、その印刷結果を例示した図である。この図5に示したテストパターンは、上記複数の濃度階調値に相当する濃度(1)から濃度(5)までの印刷結果であり、右に向かって順次濃くなるように印刷されている。また、このテストパターンの縦の長さ(図5のA)は、ヘッド141の印刷可能幅、すなわち、用紙143の幅方向に並ぶその色の全ノズルによる印刷幅に相当している。また、テストパターンの各濃度の幅(図5のB)は、印刷結果の濃度を判定するのに適切な長さ(ドット数、例えば200ドット分)とされている。従って、各濃度((1)−(5))の領域は、その同じ濃度階調値に対して全ノズルからのインク吐出を上記幅(図5のB)分実行した結果として生成されている。
【0062】
その後、当該印刷されたテストパターンの実際の濃度値をスキャナー等を用いて計測する。
【0063】
次に、計測結果が補正テーブルを生成する機能を有するコンピューターに入力され、当該コンピューターで以下のように補正テーブル128が生成される。
【0064】
なお、図6は、印刷されたテストパターンのドットの状況を例示した図である。図6は、図5のC部を拡大したものであり、一例として、濃度(3)の領域における形成されたドット(図中のD)が示されている。また、その左側には、それらのドットのインクを吐出したノズルが示されている。
【0065】
まず、各ノズル(オーバーラップ部については各ラスター)について、上述したテストパターンの各濃度((1)−(5))における実際の濃度値(実測濃度値)が決定される。具体的には、上記各濃度領域の幅(図5及び図6のB)間に吐出された各ドット(例えば、200ドット)の計測された濃度値の平均をその濃度についての実測濃度値として決定する。
【0066】
次に、各ノズル(オーバーラップ部については各ラスター)について、このようにして得られた複数の(ここでは、5点の)実測濃度値とそれらの元になった画像データの濃度階調値との関係から、補間処理により、全濃度階調値に対する実測濃度値を求める。
【0067】
図7は、当該濃度階調値と実測濃度値の関係を説明する図である。図7の上記濃度階調値と上記実測濃度値の関係を示すグラフにおいて、各実線は、それぞれ、各ノズル(オーバーラップ部については各ラスター)の上記補間処理により得られた全濃度階調値に対する実測濃度値を表している。例えば、Bの曲線は、上記テストパターンの各濃度((1)−(5))に対応する濃度階調値に対して得られた実測濃度値が図中の黒丸で表わされ、その間が補間されて得られたものである。他のノズルについても同様に、曲線が求められることになり、ここの例では、(1080−オーバーラップ部)の曲線が生成される。
【0068】
次に、全ノズルの平均実測濃度曲線(図7の破線A)が求められる。すなわち、全濃度階調値に対する全ノズルの平均実測濃度値が求められる。具体的には、上記各濃度((1)−(5))において、上記各ノズルについて求めた実測濃度値の全ノズルの平均値を求め、それらの間を補間処理して求めることができる。
【0069】
その後、各ノズルからの出力結果が、当該求めた平均実測濃度になるように、すなわち、各ノズルからの出力濃度のムラがなくなるように、補正値を生成する。具体的には、ノズル毎(オーバーラップ部についてはラスター毎)に、各濃度階調値について、その濃度階調値に対する平均実測濃度が得られる濃度階調値を補正後の濃度階調値とする処理を実行し、上述した補正テーブル128の基が生成される。図7に示す例では、例えば、実線Bで表わされるノズルの濃度階調値g1については、その濃度階調値に対応する破線Aの実測濃度値になる、実線Bの濃度階調値g2が補正後の濃度階調値として決定される。すなわち、g1をg2に補正することが補正テーブル128の基に収められる。
【0070】
このようにして、各ノズル(オーバーラップ部については各ラスター)について一つの補正値が設定された補正テーブル(補正テーブル128の基)が生成される。かかる補正テーブルは、他の色(他の3色)のノズル列についても、それぞれ、同様に生成される。また、同様にして、他の用紙種類についても、この各ノズル(オーバーラップ部については各ラスター)について一つの補正値が設定された補正テーブルが生成される。
【0071】
次に、当該生成された各補正テーブルについて、複数ノズルで補正値をまとめる処理を実行する。具体的には、用紙143の幅方向に隣接する、用紙種類毎に定められた数のノズル毎に、それらのノズルついて、各濃度階調値に対して収められている補正値の平均値を求め、その平均値をそれらのノズルについての補正値とする、処理を実行する。そして、それら複数のノズルと、当該平均値から求めた補正値を対応付けてテーブルに格納し、補正テーブル128が生成される。
【0072】
図8は、その生成内容を説明するための図である。図8の(A)は、上述した補正テーブル128の基を例示しており、図に示されるように、各ノズルについて1つの補正値が設定されている。この状態から、上述のように、複数のノズル毎に、ここでは3つのノズル毎に、各濃度階調値において補正値の平均値が求められ、図8の(B)に示されるように最終的な補正テーブル128として収められる。なお、図8では、普通紙用のテーブルについて示されており、図6では、Eで示す3つの隣接するノズル毎に一つの補正値が設定されることになる。
【0073】
このようにして、他の用紙種類についても同様に補正テーブル128が生成される。例えば、ファイン紙であれば、2つの隣接するノズル毎に補正値がまとめられて(平均化されて)補正テーブル128Bが生成される。
【0074】
また、オーバーラップ部の補正値については、この複数のノズルについてまとめる処理を行わずに、上記補正テーブル128の基のままとされる。すなわち、図3に基づいて説明したように、最終的な補正テーブル128において、1ラスターに対して1つの補正値が設定される。
【0075】
以上、補正テーブル128の生成方法について説明したが、補正値をまとめるノズル数は一例であって、適宜、2以上の適正な値が選択され得る。また、オーバーラップ部においても複数ラスターで補正値をまとめてよいが、印刷挙動が他の部分とは異なるため、他の部分と異なるノズル数とすることが好ましい。
【0076】
また、補正テーブル128による、ノズル特性に起因するインク吐出量の補正は、CMYKの濃度階調値で表現された画像データに対して行う方法だけでなく、上記ドット分解後のSMLで表現されたデータに対して行ってもよいし、プリンター2におけるインク吐出に用いられる電圧に対して行ってもよい。これらの場合にも、補正値の単位が異なるだけで、上述した補正テーブル128の生成方法及び保持の仕方は同様である。
【0077】
また、上述の説明においてドライバー12が行う処理は、プリンター2側で、または、ホストコンピューター1とプリンター2に分割して、実行するようにしてもよい。
【0078】
以上説明した通り、本実施の形態例に係る画像処理装置では、プリンター2の各ノズルから吐出されるインク量を調整するための補正情報(補正値)を、隣接する複数のノズル毎に持つので、ノズルが高密度に多数設けられる場合にも、その補正情報のデータ容量を小さく抑えることができる。また、人の視覚による解像能力を超えた範囲で当該補正値の統合を行うことは問題がないので、上記補正値をもつノズル数(一つの補正値が設定されるノズル数)を適切に選択することにより、印刷出力の品質を落とすこともない。また、ノズルが高密度に配置される場合には、補正情報の基となる上述した各ノズルの実測濃度値にドットの重なり等による誤差が含まれるので、各ノズル毎に補正情報を備えても適正な補正ができるとは限らず、このような無駄を省くことができる。
【0079】
また、滲みが大きい用紙種類の場合には、やはり、補正情報を細かく設定しても精度がなく同様に意味がないので、前述したように、滲みが少ない用紙種類よりも補正情報を設定するノズル数を大きくすることにより無駄を省くことができる。従って、用紙種類によって補正情報を設定するノズル数を適切に変更することにより、無駄がなく適切な補正を行うことができる。
【0080】
また、2つのノズルで同じ場所のドットを形成するオーバーラップ部では、印刷結果に影響を及ぼす要因が他の部分より多く、出力濃度のばらつきも大きいので、より正確な補正が望まれ、従って、この部分については、上述の通り、補正情報を設定するノズル数についても他の部分とは異なった扱いがなされる。具体的には、補正情報を設定するノズル数を他の部分より少なくし、よりきめ細かい補正を実行する。オーバーラップ部では、2つのノズルで他の部分の1つのドットを形成するので、1ドットの大きさが他の部分より小さくなり、それによって滲みも少ないので、より細かい補正値の設定をしても相対的に誤差が大きくなることはない。
【0081】
また、プリンターに限らず同様の液体吐出装置に本発明を適用することができる。
【0082】
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【符号の説明】
【0083】
1 ホストコンピューター、 2 プリンター、 11 アプリケーション、 12 ドライバー、 13 コントローラー、 14 印刷実行部、 121 ラスタライズ部、 122 色変換部、 123 ノズル特性補正部、 124 ドット分解部、 125 ハーフトーン処理部、 126 印刷データ変換部、 127 色変換テーブル、 128 補正テーブル、 129 ドット発生量テーブル、 141 ヘッド、 141a−c ヘッドユニット、 142 ノズル列、 143 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出装置に接続可能であり、画像データに従って複数のノズルから被吐出媒体に液体を吐出する前記液体吐出装置用の画像処理装置であって、
予め定められた補正値に従って前記画像データを補正し、前記各ノズルからのインク吐出量を調整する補正処理を実行する制御部を備え、
前記補正値は、2以上の所定数の前記ノズル毎に、1つの値が設定される
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記補正値として設定される1つの値は、前記所定数の各ノズルにおける補正値を平均化した値である
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1あるいは2において、
前記被吐出媒体の種類毎に前記補正値が設定され、
前記補正値が設定される前記ノズルの所定数は、当該被吐出媒体の種類毎に異なる
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項3において、
同じ前記液体の量を吐出した際に形成されるドットの面積が大きい前記被吐出媒体の種類ほど、前記補正値が設定されるノズルの所定数は大きい
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記液体吐出装置が、前記ノズルを備え移動する前記被吐出媒体に対して固定位置で前記液体を吐出する複数のヘッドユニットを備え、当該ヘッドユニット間に、前記被吐出媒体の移動と交わる方向について前記ノズルの位置が重なるオーバーヘッド部がある場合に、
前記オーバーヘッド部における、前記補正値が設定されるノズルの所定数は、他の部分と異なる
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記オーバーヘッド部における所定数は、他の部分よりも小さい
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
液体吐出装置に接続可能であり、画像データに従って複数のノズルから被吐出媒体に液体を吐出する前記液体吐出装置用の画像処理を実行するための画像処理方法であって、
予め定められた補正値に従って前記画像データを補正し、前記各ノズルからのインク吐出量を調整する補正処理を実行し、
前記補正値は、2以上の所定数の前記ノズル毎に、1つの値が設定される
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
画像処理装置に接続可能であり、前記画像処理装置から受信した画像データに従って複数のノズルから被吐出媒体に液体を吐出する液体吐出装置であって、
予め定められた補正値に従って前記画像データを補正し、前記各ノズルからのインク吐出量を調整する補正処理を実行する制御部を備え、
前記補正値は、2以上の所定数の前記ノズル毎に、1つの値が設定される
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記被吐出媒体を搬送する搬送部と、
前記ノズルを有し、前記搬送部により移動する前記被吐出媒体に対して固定位置で前記液体を吐出する複数のヘッドユニットと、を備え、
当該ヘッドユニット間に、前記被吐出媒体の移動と交わる方向について前記ノズルの位置が重なるオーバーヘッド部を有し、
前記制御部は、前記オーバーヘッド部における、前記補正値が設定されるノズルの所定数を、他の部分と異なるように設定する
ことを特徴とする液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−67058(P2013−67058A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206412(P2011−206412)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】