説明

画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラム

【課題】画像の色かぶりを補正したときに、却って画像を破綻させていた。
【解決手段】入力した画像データを補正する画像処理装置であって、補正後の画像データの最大輝度値を特定の制限に基づいて決定する最大輝度値決定手段と、上記決定した最大輝度値に基づいて、上記画像データの各要素色に対する補正量を決定する補正量決定手段と、上記決定した各要素色の補正量に基づいて、上記入力した画像データの各要素色の階調値を補正する補正手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力した画像データを補正する処理を実行可能な画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像データを構成する要素色(例えば、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B))のカラーバランスを補正する処理が行なわれている。例えば、画像中のRGBそれぞれの頻度分布(ヒストグラム)のうち、Bの分布だけ低階調域に狭く集中しており、他のRやGの分布がBよりも広く存在している場合は、画像全体がオレンジがかった状態、いわゆるオレンジかぶりの状態となる。このような色かぶりは、各要素色のヒストグラムの最大値の位置が不揃いであるときに発生しやすい。そこで従来では、画像中の各要素色の最大値を、要素色の階調値が取り得る階調範囲の最大値(例えば、0〜255の階調範囲である場合は最大階調値255)に一律に引き上げる補正を行うことにより、上記不揃いを無くして色かぶりの発生を抑制していた。
【0003】
また、補正前の画像データの輝度分布に応じて求めた拡大率を用いて、画像データのRGBをそれぞれコントラスト補正して、RGBそれぞれの分布範囲を拡大する技術が知られている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003‐115998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように画像中の各要素色の最大値を、最大階調値に一律に引き上げる場合、次のような問題があった。つまり、補正対象の画像が夕暮れの画像など元々暗い画像である場合、各要素色の最大値を全て最大階調化すると、画像のコントラスト幅が大きくなり過ぎる。その結果、画像の元の雰囲気が大きく損なわれたり、濃度変化が歯抜けの状態となって階調性の乏しい画像となったりしてしまう。
また上記文献のようにRGBをそれぞれコントラスト補正した場合でも、補正前のRGBの最大値が各々ずれている場合には、補正後においてもRGBの分布は互いにずれたままであり、カラーバランスの是正という意味では不十分であった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、補正対象となる画像に応じて最適なカラーバランスの補正を実行して色かぶりを修正することが可能な画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明にかかる画像処理装置は、入力した画像データを補正する。ここで最大輝度値決定手段は、補正後の画像データの最大輝度値を特定の制限に基づいて決定する。補正量決定手段は、上記決定した最大輝度値に基づいて、上記画像データの各要素色に対する補正量を決定する。補正手段は、上記決定した各要素色の補正量に基づいて、上記入力した画像データの各要素色の階調値を補正する。
つまり本発明によれば、画像データの各要素色に対する補正量を、ある程度その値が制限された最大輝度値に応じて決定する。そのため、補正前の各要素色の最大値を一律に最大階調値に引き上げたときのような、元画像にとっては時に強すぎる補正がなされることが防止され、元画像の各要素色のバランスを整える最適な補正を行うことができる。
【0007】
ここで最大輝度値決定手段は、補正前の画像データの最大輝度値に応じて、上記補正後の画像データの最大輝度値を決定する。かかる構成とすれば、補正前の画像データの明るさを無視した一律的な補正がなされるのを防止できる。
より具体的には、最大輝度値決定手段は、補正前の画像データの輝度値を入力して上記補正後の画像データの輝度値を出力する関数を用いて、補正前の画像データの最大輝度値を補正後の画像データの最大輝度値に変換する。当該関数は、輝度値が取り得る階調範囲の最大階調値から所定階調分低い値である基準値よりも低い入力値については当該最大階調値よりも低い出力値に変換する。かかる構成によれば、補正前の画像データの最大輝度値が基準値より低い場合には、補正後の最大輝度値が上記最大階調値より低い値に設定される。その結果、各要素色に対する補正量も、補正前の各要素色の最大値を一律に最大階調化するときと比較してそれぞれ控えめな上げ幅となり、元画像の明るさの程度を考慮した補正が実行される。
【0008】
上記最大輝度値決定手段は、補正前の画像データの輝度分布の特徴量に応じて上記基準値を変更するとしてもよい。特徴量とは、当該輝度分布の特徴を表す指標値であれば種々の値を採用でき、例えば、輝度分布の平均値やメジアン等の略中央値が考えられる。
そして上記基準値を変更するということは、上記関数によって最大階調値よりも低い値に変換される入力値の範囲が変るということであり、見方を変えれば、同じ入力値であっても、基準値の変更前と変更後では上記関数による変換結果(補正後の画像データの最大輝度値)が異なるということである。かかる構成とすれば、輝度分布の最大値は互いに等しいが、輝度分布の形は大きく異なる補正前の画像データがそれぞれ存在する場合に、両者に対してそれぞれ異なった、補正後の最大輝度値を設定できる。従って、元画像の特徴により適した程度にて各要素色を補正することができる。
【0009】
上記補正量決定手段は、上記決定した最大輝度値と補正前の画像データの要素色毎の最大値との各差に応じて、各要素色に対する補正量を決定する。かかる構成とすれば、補正前の画像データの要素色毎の最大値が不揃いな値であっても、それらの値を略一致させる補正量を得ることができる。
より具体的には、上記補正量決定手段は、補正前の画像データの要素色の階調値を補正する補正規則であって、上記各差またはこの各差に所定係数を乗算した各値を補正前の要素色毎の最大値に対する補正量とする補正規則を生成し、上記補正手段は、当該補正規則を用いて補正を行う。かかる補正規則を用いて上記入力した画像データの各要素色の階調値を補正すれば、補正後の要素色毎の分布はそれらの最大値の位置が略一致した状態となる。その結果、要素色間のバランスが取れて色かぶりが無く、かつ、元画像の雰囲気を損なわない最適な補正が施された画像が得られる。
【0010】
なおこれまでは、画像処理装置というカテゴリーで本発明にかかる技術的思想を説明したが、上記の画像処理装置が備える各手段にそれぞれ対応した処理工程を備える画像処理方法の発明や、画像処理装置が備える各手段にそれぞれ対応した機能をコンピュータに実行させる画像処理プログラムの発明をも把握可能であることは言うまでも無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下の順序に従って、本発明の実施形態を説明する。
(1)画像処理装置などの概略構成
(2)画像の補正処理
(3)変形例
(4)まとめ
【0012】
(1)画像処理装置などの概略構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる画像処理装置と、その周辺機器の概略構成をブロック図により示している。同図においては、画像処理の中心的な役割を果たす画像処理装置としてのコンピュータ20を示している。コンピュータ20は、CPU21、ROM22、RAM23、ハードディスク(HD)24などを備える。コンピュータ20には、各種の画像入力装置としてのスキャナ11、デジタルスチルカメラ12や、各種の画像出力装置としてのプリンタ31、ディスプレイ32が適宜接続される。
【0013】
コンピュータ20においては、CPU21がRAM23をワークエリアとして使用しながら、ROM22やHD24等の所定の記憶媒体に保存されている各種プログラムを実行する。本実施形態では、CPU21はHD24に記憶されているアプリケーション(APL)25を読み出して実行する。実行されるAPL25は、概略、画像データ取得部25a、ヒストグラム生成部25b、補正後ハイライト値決定部25c、補正規則生成部25d、補正部25eといった各機能ブロックを構成する。
【0014】
画像データ取得部25aは、上記画像入力装置から出力される画像データや、HD24に予め保存されている画像データを、入力画像データとして取得する。
ヒストグラム生成部25bは、入力画像データを構成する各画素が有する成分値に基づいて、各種ヒストグラムを生成するとともに、各ヒストグラムから特徴量24aを抽出し、HD24に保存する。
補正後ハイライト値決定部25cは、補正後の入力画像データの最大輝度値(補正後ハイライト値)を、特定の制限の下で決定する。
【0015】
補正規則生成部25dは、補正量決定部25d1と関数生成部25d2とからなる。補正量決定部25d1は、補正後ハイライト値と各ヒストグラムの最大値(特徴量24aの一種)とに基づいて、入力画像データの各要素色に対する補正量を決定する。関数生成部25d2は、上記決定した補正量に基づいて、入力画像データの各要素色の階調値をそれぞれ補正するための補正関数(補正規則)24cを生成する。
補正部25eは、画像データ取得部25aから入力画像データを受け取るとともに、上記生成された補正関数24cを用いて、入力画像データを画素毎かつ要素色毎に補正し、各画素を補正し終えた画像データを出力する。
【0016】
コンピュータ20では、APL25はオペレーティングシステム26に組み込まれて実行され、オペレーティングシステム26には、プリンタドライバ27およびディスプレイドライバ28も組み込まれている。ディスプレイドライバ28はディスプレイ32への画像表示を制御するドライバであり、APL25の補正部25eから出力された補正後の画像データに基づいて、画像をディスプレイ32に表示させることが可能である。また、プリンタドライバ27は、APL25の補正部25eから出力された補正後の画像データに対して、インク色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)表色系への色変換処理やハーフトーン処理やラスタライズ処理などを実行して印刷データを生成するとともに、この印刷データをプリンタ31に出力することにより、プリンタ31に印刷データに基づく画像の印刷を実行させることが可能である。
【0017】
なお、本実施形態で説明するコンピュータ20が実行する処理は、その全て或いは一部を、上記画像入力装置の側で実行するとしてもよいし、上記画像出力装置の側で実行するとしてもよい。例えば、補正部25eの機能については、プリンタ31やディスプレイ32の側に備えさせ、プリンタ31やディスプレイ32が、上記APL25から受け渡された補正関数24cに基づいて画像データを補正し、補正後の画像データに基づいて印刷処理や画像表示処理を行なうとしてもよい。この場合、コンピュータ20とプリンタ31、ディスプレイ32とによって画像処理システムが構築されると言える。
【0018】
(2)画像の補正処理
上述した基本的構成を用いて実行する画像補正処理についてさらに詳しく説明する。
図2は、コンピュータ20がAPL25に従って実行する画像処理の一部(ヒストグラム生成部25bによる処理以降の内容)をフローチャートにより示している。
ステップS(以下、ステップの記載を省略する)100では、コンピュータ20は、入力画像データの要素色毎のヒストグラムおよび輝度のヒストグラムを生成するとともに、各ヒストグラムの最大値等の特徴量を抽出する。本実施形態では、画像データ取得部25aから受け渡される入力画像データは、要素色R,G,Bを複数階調(例えば、0〜255の256階調)で表現して各画素の色を規定したドットマトリクス状のデータであり、sRGB規格に従った表色系を採用している。むろん、YCbCr表色系を採用したJPEG画像データやCMYK表色系を採用した画像データ等、種々のデータを採用可能である。
【0019】
図3(a)〜(c)、図4は、S100において生成したRGBそれぞれのヒストグラムと、輝度のヒストグラムとを例示している。各ヒストグラムは、縦軸に画素数、横軸に階調値を規定した頻度分布である。ヒストグラムは、入力画像データを構成する全画素を対象として集計してもよいし、所定の抽出率に従って抽出した画素のみを対象として集計してもよい。RGBそれぞれのヒストグラムについては、RGBの階調値に応じて画素数を集計していけばよいが、輝度のヒストグラム(輝度分布)の集計に際しては、各画素の輝度Yを求める必要がある。
【0020】
画素の輝度Yの求め方については種々考えられる。例えば、sRGB表色系と国際照明委員会(CIE)で規定されたL***表色系との変換関係を予め規定したテーブル(プロファイルとも言う)を参照して、画素毎のRGB値をL***値に変換し、これによって得られたL*成分値を当該画素の輝度Yとしてもよい。あるいは、次式(1)
Y=0.30R+0.59G+0.11B …(1)
といった、公知のRGBの重み付け積算によって画素の輝度Yを求めても良い。
本実施形態では処理の簡易化のため、式(1)によって画素の輝度Yを求め、各画素の輝度Yを階調値毎に集計して輝度のヒストグラムを生成する。
【0021】
RGBそれぞれのヒストグラムおよび輝度のヒストグラムを求めたら、コンピュータ20は、各ヒストグラムの特徴量を抽出し、HD24に特徴量24aとして保存する。本実施形態では、特徴量24aとして少なくとも各ヒストグラムの最大値(Rmax,Gmax,Bmax,Ymax)を保存する。ヒストグラムの最大値を求める場合、単純に分布の最も高階調側の階調値を最大値としてもよいが、最も高階調側の階調値からある分布割合(例えば、ヒストグラムの集計に用いた画像数の0.5%分)だけ分布の内側に入った位置を最大値としてもよい。このようにヒストグラムの上端を所定割合だけカットした後の最大値を用いれば、高階調側でノイズなどに起因して生じている白点を除去することができる。また、最大値(Rmax,Gmax,Bmax,Ymax)以外にも、輝度のヒストグラムの略中央値(平均値YavやメジアンYmed等)を求め、この略中央値を特徴量24aの一種として保存してもよい。
【0022】
S110では、コンピュータ20は、補正の度合いに特定の制限を設けた輝度補正関数を生成する。ここでは、輝度補正関数を生成するための基準値24bをHD24等の所定の記憶媒体から取得し、基準値24bに応じた所定の傾きを持つ関数を生成する。なお、基準値24bをHD24に保存しておく場合、ユーザが予めインターネット等のネットワークを介して所定のサーバから基準値24bをHD24にダウンロードしておく。また、ROM22等の画像処理装置内の記憶媒体に保存しておく場合には、画像処理装置の工場出荷段階において予め基準値24bを記録しておく。むろん、基準値24bの保存場所は上記以外にも考えられ、コンピュータ20がアクセス可能な外部記録媒体であったり、上記画像入力装置や画像出力装置内の記憶媒体に保存されていてもよい。
【0023】
図5は、輝度補正関数の一例を示している。
同図に示すように輝度補正関数Fは、横軸(入力側)および縦軸(出力側)をいずれも0〜255の階調とした、傾きが「255/基準値」の一次関数である。つまり、基準値24aをYsとした場合、輝度補正関数Fは、式(2)
Yout=255(Yin/Ys) …(2)
と表される。Yinは入力値、Youtは出力値である。基準値Ysの値は限定されないが、例えば239程度を既定値とすることができる。式(2)では、Yin>Ysの場合、Yout=255とする。ただし本実施形態では、Yin<Ysである場合を想定して説明を行なう。
【0024】
S120では、コンピュータ20は、上記輝度のヒストグラムの最大値Ymax(補正前の画像データの最大輝度値)をHD24から読み出すとともに、当該Ymaxを輝度補正関数Fへの入力とすることにより出力Ymax´を取得する。このYmax´が、補正後ハイライト値である。すなわち本実施形態では、補正前の値が基準値Ysよりも低い場合には、最大階調値255には引き上げないという制限の下、入力画像データの最大輝度値Ymaxをその値に応じて高階調化させる補正をし、補正後ハイライト値Ymax´を決定している。
【0025】
ここで、入力画像データの明るさを単純に引き上げる補正をするのであれば、図5の2点鎖線F´で示したように、補正前の画像データの最大輝度値Ymaxを最大階調値255に引き上げるような式(3)
Yout=255(Yin/Ymax) …(3)
を生成し、この式(3)によって補正後の画像データの最大輝度値を決定すればよい。しかし、このように目一杯輝度を引き上げると、図3、4のヒストグラムで示したような全体的に暗い画像(ヒストグラムの分布が低階調側に偏っている画像)である場合、補正後の画像は補正前の画像に比べてコントラストが強すぎる結果となり、元の雰囲気から逸脱した異常な画像となる。そこで本実施形態では、Ymaxがある程度低い場合には、これをいたずらに最大階調化せず、Ymaxのレベルに応じて高階調化させる補正を行っている。
【0026】
S130では、コンピュータ20は、補正後ハイライト値Ymax´と、RGBそれぞれのヒストグラムの最大値Rmax,Gmax,Bmaxとの差分に基づいて、RGBそれぞれに対する補正量ΔR、ΔG、ΔBを決定する。補正量は式(4)〜(6)にて決定する。
ΔR=α(Ymax´−Rmax) …(4)
ΔG=α(Ymax´−Gmax) …(5)
ΔB=α(Ymax´−Bmax) …(6)
【0027】
補正量ΔR、ΔG、ΔBは、それぞれ最大値Rmax,Gmax,Bmaxに対する補正量となる。αは、補正後ハイライト値Ymax´と最大値Rmax,Gmax,Bmaxとの各差分に乗算される所定の係数である。ただしαの存在は必須ではなく、α=1であってもよい。
S140では、コンピュータ20は上記決定した補正量ΔR、ΔG、ΔBに基づいて、RGBそれぞれを補正するための補正関数を生成する。この場合まず、最大値Rmax,Gmax,Bmaxの補正後の値であるRmax´,Gmax´,Bmax´を式(7)〜(9)によって求める。
Rmax´=Rmax+ΔR …(7)
Gmax´=Gmax+ΔG …(8)
Bmax´=Bmax+ΔB …(9)
【0028】
次に、RGB毎の補正関数を式(10)〜(12)によって定義する。
Rout=Rmax´(Rin/Rmax) …(10)
Gout=Gmax´(Gin/Gmax) …(11)
Bout=Bmax´(Bin/Bmax) …(12)
Rin、Bin、Ginは、補正前のRGBの階調値、Rout、Gout、Boutは補正後のRGBの階調値を意味する。コンピュータ20は上記式(10)〜(12)を、補正関数24cとしてHD24に記録する。
【0029】
S150では、コンピュータ20は、補正関数24cをHD24から読み出し、この補正関数24cを用いて、上記入力画像データの全画素を順次対象として、RGBそれぞれの階調値を補正する。かかる補正の結果、入力画像データの全画素のRGBが、上記式(10)〜(12)のいずれかによって補正される。
【0030】
図6(a)〜(c)は、補正後の入力画像データにおけるRGB毎のヒストグラムを例示している。同図に示すように、RGBの各ヒストグラムはいずれも最大値Rmax´、Gmax´、Bmax´が最大階調値255までは到達していないものの補正前の最大値Rmax、Gmax、Bmaxより高階調化されている。同図では、上記αの値を1に設定した場合の補正結果を示している。この場合、Rmax´=Gmax´=Bmax´=Ymax´となり、補正後のRGBの各分布範囲は互いに一致した状態、つまり色かぶりの無い状態となる。むろんコンピュータ20はαの値を調整することにより、RGBの各補正の度合いを変更することができる。αの値が1でない場合も、その値に応じて、補正後のRGBの各分布の最大値の位置を略揃えることができる。またコンピュータ20は、αの値をユーザによる外部操作に応じて変更してもよい。
【0031】
(3)変形例
上述したように本実施形態では、補正後ハイライト値Ymax´は、補正前の入力画像データの最大輝度値Ymaxに応じて決定される。しかし、補正対象となる入力画像データによっては、最大輝度値Ymaxの位置は同じでも画像全体の明るさの傾向が互いに大きく異なるものが存在する。このような異なる各入力画像データに対しては、同じ補正後ハイライト値Ymax´を設定するよりも、異なる補正後ハイライト値Ymax´を設定した方がより適切な補正結果が得られると推測される。
【0032】
そこで変形例として、コンピュータ20は、補正対象とする入力画像データの明るさの傾向に応じて上記基準値Ysの値を変更するとしてもよい。基準値Ysの値を変更するということは上記式(2)から明らかなように、輝度補正関数Fの傾きを変えるということであり、結果的に、補正対象とする入力画像データの明るさの傾向に応じて、S120で決定される補正後ハイライト値Ymax´の値が変ることになる。具体的には、コンピュータ20は、上記S100で取得した輝度のヒストグラムの略中央値に応じて基準値Ysの値を変更する。略中央値は、輝度のヒストグラムの山の頂点の位置をおよそ示していると言え、その値が低ければ画像全体が暗いものであり、その値が高ければ画像全体が明るいものであると判断できる。
【0033】
図7は、異なる入力画像データ(第一の画像データと第二の画像データ)の輝度のヒストグラムの例を示している。両ヒストグラムにおいては、最大値Ymax1,Ymax2の位置は等しいものの、第一の画像データのヒストグラムの山は低階調側に大きく偏っており、一方、第二の画像データのヒストグラムの山は低下階調側と高階調側に略均等に広がっている。この二つの画像を比較した場合、第一の画像データの方は元々暗い画像であるため、第一の画像データに対して、第二の画像データにするのと同程度にその明るさを上昇させる補正は施さない方が適切と言える。そこで一例として、コンピュータ20は、上記略中央値が所定のしきい値よりも低い場合には、基準値Ysの値を高階調側に補正する。ここで言う所定のしきい値は、例えば、入力画像データの輝度のヒストグラムの最小値と最大値との中間の階調値などとすることができる。
【0034】
基準値Ysの値を上記既定値よりも高階調側に補正すると、輝度補正関数は図8に示したF”のように、上記図5の輝度補正関数Fよりも傾きが緩いものとなり、同じYmaxに応じて決定されるYmax´も、上記図5の輝度補正関数Fに従って決定したものより低い値となる。このように、補正対象とする入力画像データの明るさの傾向に応じて基準値Ysの値を変更すれば、補正後ハイライト値Ymax´の値も変り、その結果、入力画像データのRGBに対する補正の度合いも変ることになる。上記第一の画像データのように暗い画像については、上記第二の画像データのRGBに施される補正よりも上昇幅を抑えた補正がRGBそれぞれに対して施されることになる。なお図8では比較を容易とするために、上記図5で示した輝度補正関数Fや補正前の基準値Ysの位置も示している。
【0035】
(4)まとめ
このように本発明では、入力画像データの各要素色RGBをそれぞれ補正して画像のカラーバランスを整えるに際し、まず補正後の画像データの最大輝度値Ymax´のレベルを、補正前の画像データの最大輝度値Ymaxおよび所定の傾きを持った輝度補正関数Fに従って決定する。そして、この決定したYmax´と入力画像データの各要素色の最大値Rmax、Gmax、Bmaxとの差をそれぞれ求め、このRGB毎の差に基づいて、RGBの最大値を略一致させる補正を実現する補正関数を生成し、この生成した補正関数によって入力画像データの各画素の要素色RGBを補正するとした。そのため、従来のように補正前のRGBの各最大値のレベルにかかわらず、各最大値をRGBが取り得る最大階調値に一律に引き上げてしまうことが無くなり、入力画像が元々持っている明るさの程度に応じた最適な補正をRGB毎に施して、色かぶりを効果的に抑えることが可能となった。特に、元々暗い画像についてコントラストを大きくし過ぎる補正をして、元の雰囲気から逸脱した異常な画像としてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態にかかる画像処理装置などを示したブロック図。
【図2】画像処理の内容を示したフローチャート。
【図3】RGBそれぞれのヒストグラムを示した図。
【図4】輝度のヒストグラムを示した図。
【図5】輝度補正関数の一例を示した図。
【図6】補正後の画像データのRGBそれぞれのヒストグラムを示した図。
【図7】輝度のヒストグラムの例を示した図。
【図8】輝度補正関数の一例を示した図。
【符号の説明】
【0037】
20…コンピュータ、21…CPU、22…ROM、23…RAM、24…ハードディスク、24a…特徴量、24b…基準値、24c…補正関数、25…APL、25a…画像データ取得部、25b…ヒストグラム生成部、25c…補正後ハイライト値決定部、25d…補正規則生成部、25d1…補正量決定部、25d2…関数生成部、25e…補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した画像データを補正する画像処理装置であって、
補正後の画像データの最大輝度値を特定の制限に基づいて決定する最大輝度値決定手段と、
上記決定した最大輝度値に基づいて、上記画像データの各要素色に対する補正量を決定する補正量決定手段と、
上記決定した各要素色の補正量に基づいて、上記入力した画像データの各要素色の階調値を補正する補正手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
上記最大輝度値決定手段は、補正前の画像データの最大輝度値に応じて、上記補正後の画像データの最大輝度値を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
上記最大輝度値決定手段は、補正前の画像データの輝度値を入力して上記補正後の画像データの輝度値を出力する関数であって、輝度値が取り得る階調範囲の最大階調値から所定階調分低い値である基準値よりも低い入力値については当該最大階調値よりも低い出力値に変換する関数を用いて、補正前の画像データの最大輝度値を変換した結果を、上記補正後の画像データの最大輝度値とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
上記最大輝度値決定手段は、補正前の画像データの輝度分布の特徴量に応じて上記基準値を変更することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
上記補正量決定手段は、上記決定した最大輝度値と補正前の画像データの要素色毎の最大値との各差に応じて、各要素色に対する補正量を決定することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
上記補正量決定手段は、補正前の画像データの要素色の階調値を補正する補正規則であって、上記各差またはこの各差に所定係数を乗算した各値を補正前の要素色毎の最大値に対する補正量とする補正規則を生成し、上記補正手段は、当該補正規則を用いて補正を行うことを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
入力した画像データを補正する画像処理方法であって、
補正後の画像データの最大輝度値を特定の制限に基づいて決定する最大輝度値決定工程と、
上記決定した最大輝度値に基づいて、上記画像データの各要素色に対する補正量を決定する補正量決定工程と、
上記決定した各要素色の補正量に基づいて、上記入力した画像データの各要素色の階調値を補正する補正工程とを備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
入力した画像データを補正する処理をコンピュータに実行させる画像処理プログラムであって、
補正後の画像データの最大輝度値を特定の制限に基づいて決定する最大輝度値決定機能と、
上記決定した最大輝度値に基づいて、上記画像データの各要素色に対する補正量を決定する補正量決定機能と、
上記決定した各要素色の補正量に基づいて、上記入力した画像データの各要素色の階調値を補正する補正機能とを実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−244798(P2008−244798A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82043(P2007−82043)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】