説明

画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラム

【課題】隣接する複数のオブジェクトの属性が異なる場合、オブジェクトの境界部を適切な濃度で明瞭化する。
【解決手段】プリンタードライバー12は、画像処理の対象となる注目画素の属性情報が、注目画素と隣り合う隣接画素の属性情報と異なる場合、属性情報の組み合わせに応じて設定されるルールに基づき、注目画素にエッジ処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
1枚の画像中に文字とグラフィックや写真を含むような複数のオブジェクトから成る画像を印刷する場合、異なるオブジェクトが隣接する境界領域ではエッジがギザギザしたジャギー状になり、一方のオブジェクトが文字画像である場合には、文字としての美観を損ねることがあった。
このような問題に対して、複数のオブジェクトの境界領域のエッジをドットとして描画することでエッジ部を強調するエッジ処理技術が画像編集ソフト等で広く用いられている。例えば、図5に示すように、1つの画像内で文字属性のオブジェクトとグラフィック属性のオブジェクトが隣接する場合、境界領域部分にエッジ処理を施すことで、2つのオブジェクトの輪郭を明瞭化できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のエッジ処理では、2つのオブジェクトの境界部には両方のオブジェクトに対してドットが描画されるため、オブジェクトの境界部の濃度が濃くなるという問題を有した。
そこで本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、複数オブジェクトの境界部において適切な濃度でオブジェクトの境界を明瞭化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0005】
[適用例1]
本適用例にかかる画像処理装置は、画像処理の対象となる第1画素の属性情報が、前記第1画素と隣り合う第2画素の属性情報と異なる場合、前記属性情報の組み合わせに応じて設定されるルールに基づき、前記第1画素にエッジ処理を施すことを特徴とする。
【0006】
このような構成によれば、第1画素の属性と第2画素の属性との関係を適切に設定することで、境界部が濃くなることを回避し、境界をエッジとして明瞭に描画できる。
【0007】
[適用例2]
上記適用例にかかる画像処理装置において、前記第1画素の属性情報と前記第2画素の属性情報との属性の境界を判定する属性境界判定部と、前記第1画素に前記エッジ処理を施すか否かを設定されているルールに基づき判定する境界処理判定部と、前記境界処理判定部が前記エッジ処理を施すと判定した場合に前記エッジ処理を施すエッジ処理部と、を備えることが好ましい。
【0008】
このような構成によれば、第1画素の属性が変化する境界である場合、第1画素の属性と、第1画素と隣り合う第2画素の属性に応じたルールに基づいて、第1画素を属性の境界を示すエッジとして描画することを決定し、描画を決定した場合、第1画素がドットとして描画されるため、効率的に属性が変化する境界部が濃くなることを回避し、境界をエッジとして明瞭に描画できる。
【0009】
[適用例3]
上記適用例にかかる画像処理装置において、前記エッジ処理が、前記属性情報の種類毎に設定された優先順位に従う前記ルールに基づき施されることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、属性における優先順位を示したルールに従い、第1画素を属性の境界を示すエッジとして描画することを決定するため、優先順位に応じてエッジが描画できる。
【0011】
[適用例4]
上記適用例にかかる画像処理装置において、前記第1画素の属性情報が文字属性である場合、前記第2画素の属性情報の種類にかかわらず前記第1画素にエッジ処理を施すことが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、第1画素の属性が文字属性の場合、第1画素はエッジとして描画される。
【0013】
[適用例5]
上記適用例にかかる画像処理装置において、前記優先順位は変更可能であっても良い。
【0014】
[適用例6]
本適用例にかかる画像処理方法は、画像処理の対象となる第1画素の属性情報が、前記第1画素と隣り合う第2画素の属性情報と異なる場合、前記属性情報の組み合わせに応じて設定されるルールに基づき、前記第1画素にエッジ処理を施すことを特徴とする。
【0015】
このような方法によれば、第1画素の属性と第2画素の属性との関係を適切に設定することで、境界部が濃くなることを回避し、境界をエッジとして明瞭に描画できる。
【0016】
[適用例7]
本適用例にかかる画像処理プログラムは、画像処理の対象となる第1画素の属性情報が、前記第1画素と隣り合う第2画素の属性情報と異なる場合、前記属性情報の組み合わせに応じて設定されるルールに基づき、前記第1画素にエッジ処理を施す機能をコンピューターに実行させることを特徴とする。
【0017】
このような機能によれば、第1画素の属性と第2画素の属性との関係を適切に設定することで、境界部が濃くなることを回避し、境界をエッジとして明瞭に描画できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置を含む印刷システムの構成を示す図。
【図2】エッジ処理ルールの一例を示す図。
【図3】エッジ処理の一例を示す図。
【図4】エッジ画素処理部の処理の流れを示すフローチャート。
【図5】従来のエッジ処理を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る画像処理装置を含む印刷システム10の構成を示す図である。印刷システム10はホストコンピューター1とホストベースプリンター2を備え、これらは通信可能に接続されている。
ホストコンピューター1は、ホストベースプリンター2に対して印刷要求を行うホスト装置である。このホストコンピューター1は、CPU11、プリンタードライバー12、I/F17および記憶装置18を備える。
プリンタードライバー12は、ユーザー操作等により発生する印刷要求に基づいて、印刷対象の画像に対して所定の画像処理を施すことにより、画像データと制御コマンドを含む印刷データを生成し、生成した画像データと制御コマンドをホストベースプリンター2に送信する。
【0021】
また、プリンタードライバー12は、画像データを生成する際、印刷対象の画像において異なる属性の境界エッジを処理するエッジ画素処理部13を備える。このエッジ画素処理部13は、属性境界判定部14、境界処理判定部15およびエッジ処理部16を備える。尚、本実施形態では、エッジ画素処理部13は画像処理装置として機能する。
属性境界判定部14は、印刷対象の画像における注目画素(第1画素)が属性境界であるか否かを判定する。本実施形態では、印刷対象の画像は複数のオブジェクトで構成されることを想定し、各オブジェクトは属性情報として、文字属性(テキスト属性)、線画属性、グラフィック属性および写真属性(イメージ属性)の何れかである。
【0022】
属性境界判定部14は、注目画素が属するオブジェクトの属性と、印刷対象の画像内で注目画素と上下左右の何れかの方向で隣り合う隣接画素(第2画素)の属性を調べ、注目画素は属性が変化する属性境界であるか、否かを判定する。
境界処理判定部15は、属性境界である注目画素の属性と隣接画素の属性に基づいて、エッジ処理を行うか、否かを判定する。本実施形態では、図2に示すエッジ処理ルールに基づいて判定する。
このエッジ処理ルールでは、例えば、注目画素が属性境界であり、その注目画素の属性が文字属性である場合、隣接画素の属性が線画属性、グラフィック属性および写真属性の何れであっても、注目画素に対してエッジ処理を施すことを示している。また、例えば、注目画素が属性境界であり、その注目画素の属性がグラフィック属性である場合、隣接画素の属性が写真属性であるの場合のみ、注目画素に対してエッジ処理を施すことを示している。
【0023】
ところで、このエッジ処理ルールには、文字属性が他の属性よりも優先する優先順位が設定されている。即ち、優先順位は、写真属性、グラフィック属性、線画属性および文字属性の順に高くなる。この結果、注目画素の属性と異なる複数の属性と隣接する場合、例えば、注目画素と隣接する一方の属性が文字属性であり、他方の属性が写真属性である場合、文字属性の優先順位が高いため、文字属性と隣接する場合のルールが注目画素に対して適用される。
尚、エッジ処理ルールは図2に限定されるものではなく、例えば、ユーザーが文字優先か、またはグラフィックや写真の画像優先かを選択し、選択した結果に基づいてエッジ処理ルールを決定しても良い。また、ユーザーが所望の優先順位を設定しても良い。
エッジ処理部16は、属性境界となる注目画素をドットとして描画することで、属性境界をシャープに表現する。例えば、図3のエッジ処理例に示すように、印刷対象の入力画像は、文字属性とグラフィック属性のオブジェクトが隣接し、画素Pは文字属性の端部である。
【0024】
ここで、注目画素が画素Pの場合、この画素Pの右側で隣接する画素Qはグラフィック属性であるため、図2のエッジ処理ルールに基づき、画素Pに対してエッジ処理が施される。この結果、画素Pがドットとして描画される。同様の処理を他の画素に対しても逐次施すことにより、画素Pの上方に連なり、文字属性の端部となる他の画素もドットとして描画される。
他方で、グラフィック属性の画素Qが注目画素の場合、この画素Qの左側で隣接する画素Pは文字属性であるため、図2のエッジ処理ルールに基づき、画素Qに対してはエッジ処理が施されない。同様の処理を他の画素に対しても逐次施すことにより、画素Qの上方に連なり、グラフィック属性の端部となる他の画素に対してもエッジ処理が施されない。
尚、グラフィック属性の画素において、画像の一部としてドットが既に描画されている場合、エッジ処理が施されない場合であっても、付加されているドットが除去されるものではない。
【0025】
CPU11は、プリンタードライバー12において行われる各種処理を制御する機能を有する。また、I/F17は、ホストコンピューター1から印刷要求としての印刷データを送信する機能を有する。また、記憶装置18は、RAM、ROMおよびハードディスク等を想定し、各処理後のデータや印刷データを記憶する機能を有する。
【0026】
ホストベースプリンター2は、コントローラー21およびエンジン22等で構成される。本実施形態では、ホストベースプリンター2としてレーザープリンターを想定する。
コントローラー21は、I/F23と、CPU24と、ROM25と、RAM26と、エンジンI/F27とを備え、ホストコンピューター1からの印刷要求に基づいてエンジン22に印刷指示を出す機能を有する。
【0027】
I/F23は、ホストコンピューター1から送信される印刷データを受信する機能を有する。CPU24は、コントローラー21において行われる各種処理を制御する機能を有するが、ホストコンピューター1から印刷データを受信した場合には、受信した印刷データに含まれる画像データに所定の画像処理を施してエンジン22へ出力するためのビットマップデータを生成し、印刷データに含まれる制御コマンドを解釈してエンジン22に対して適切な印刷処理を指示する機能を有する。
【0028】
ROM25は、CPU24が実行する各処理のプログラム等を格納するメモリーである。また、RAM26は、受信した印刷データや各処理後の画像データを格納するメモリーである。
【0029】
エンジンI/F27は、エンジン22で印刷を実行する際に、所定のタイミングで前述したRAM26に格納されている画像データを読み出し、それらに所定の処理を施した画像をエンジン22側に引き渡す、コントローラー21とエンジン22側とのインターフェースを司る機能を有する。
【0030】
エンジンI/F27は、図示していないが、データを一時的に格納するメモリー、解凍部等を備える。RAM26から読み出される画像データは圧縮されているため、エンジンI/F27はデータの解凍を実行する。尚、本実施形態では、エンジンI/F27はASICで構成されている。
エンジン22は、エンジンI/F27から引き渡された画像を用紙等の印刷媒体に印刷する機能を有する。本実施形態では、レーザー方式で印刷するレーザープリンターを想定したが、これに限定されるものではなく、インクジェット方式で印刷するインクジェットプリンターも想定できる。
【0031】
図4は、エッジ画素処理部13が行う処理(画像処理プログラム、画像処理方法)の流れを示すフローチャートである。この処理が開始されると、エッジ画素処理部13は、印刷する画像データの中から注目画素を設定する(ステップS100)。
次に、エッジ画素処理部13は、注目画素の属性情報を取得し(ステップS102)、更に、注目画素と隣接する隣接画素の属性情報を取得する(ステップS104)。
次に、エッジ画素処理部13は、注目画素の属性と隣接画素の属性が同一であるか否かを調べ、注目画素は属性境界か、否かを判定する(ステップS106)。
ここで、注目画素は属性境界でないと判定した場合(ステップS106でNo)、ステップS114に進む。
【0032】
他方で、注目画素は属性境界であると判定した場合(ステップS106でYes)、エッジ画素処理部13は、注目画素の属性と隣接画素の属性を図2に示すエッジ処理ルールに適用し、エッジ処理の実行を判定する(ステップS108)。
ここで、エッジ処理を実行すると判定した場合(ステップS110でYes)、エッジ画素処理部13は、注目画素に対してエッジ処理を実行し(ステップS112)、ステップS114に進む。
【0033】
他方で、エッジ処理を実行しないと判定した場合(ステップS110でNo)、ステップS114に進む。
ステップS114では、エッジ画素処理部13は、全ての画素を対象としたか、否かを判定する(ステップS114)。ここで、対象とすべき画素が残っている場合(ステップS114でNo)、次の注目画素を設定すべくステップS100に戻る。他方で、全ての画素を対象とした場合(ステップS114でYes)、一連の処理を終了する。
以上の処理により、印刷画像において異なる属性を持つオブジェクトが隣接する場合、何れか一方のエッジにドットが描画されるため、境界領域の濃度が濃くなることなくエッジを明瞭化できる。また、文字属性に対して優先的にドットを描画する優先順位が設定されているため、画像内での文字画像はシャープに印刷され、文字の美観が向上する。
【0034】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明したが、具体的な構成は、この実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、エッジ画素処理部13は、プリンタードライバー12に具備された様態には限定されず、ホストベースプリンター2のようなプリンター装置に具備された様態も想定できる。
また、以上のような手法を実施する装置は、単独の装置によって実現される場合もあれば、複数の装置を組み合わせることによって実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。
【符号の説明】
【0035】
1…ホストコンピューター、2…ホストベースプリンター、10…印刷システム、11…CPU、12…プリンタードライバー、13…エッジ画素処理部、14…属性境界判定部、15…境界処理判定部、16…エッジ処理部、17…I/F、18…記憶装置、21…コントローラー、22…エンジン、23…I/F、24…CPU、25…ROM、26…RAM、27…エンジンI/F。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理の対象となる第1画素の属性情報が、前記第1画素と隣り合う第2画素の属性情報と異なる場合、前記属性情報の組み合わせに応じて設定されるルールに基づき、前記第1画素にエッジ処理を施すことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記第1画素の属性情報と前記第2画素の属性情報との属性の境界を判定する属性境界判定部と、
前記第1画素に前記エッジ処理を施すか否かを設定されているルールに基づき判定する境界処理判定部と、
前記境界処理判定部が前記エッジ処理を施すと判定した場合に前記エッジ処理を施すエッジ処理部と、を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理装置において、
前記エッジ処理が、前記属性情報の種類毎に設定された優先順位に従う前記ルールに基づき施されることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置において、
前記第1画素の属性情報が文字属性である場合、前記第2画素の属性情報の種類にかかわらず前記第1画素にエッジ処理を施すことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置において、
前記優先順位は変更可能であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
画像処理の対象となる第1画素の属性情報が、前記第1画素と隣り合う第2画素の属性情報と異なる場合、前記属性情報の組み合わせに応じて設定されるルールに基づき、前記第1画素にエッジ処理を施すことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
画像処理の対象となる第1画素の属性情報が、前記第1画素と隣り合う第2画素の属性情報と異なる場合、前記属性情報の組み合わせに応じて設定されるルールに基づき、前記第1画素にエッジ処理を施す機能をコンピューターに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−110491(P2013−110491A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252349(P2011−252349)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】