説明

画像処理装置、画像処理方法及びプログラム

【課題】温度変動に伴う内蔵濃度計の誤差の発生の影響なく、安定した濃度出力を得ることができる画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】診断画像データをフィルム上に画像形成する露光手段と、フィルムの現像手段と、現像後のフィルム濃度測定手段と、診断画像データとフィルム濃度との濃度補正手段とを備え、濃度測定手段における測定値を、テスト画像の濃度測定結果と外部の濃度測定手段の測定結果とに基づいて校正処理する画像処理装置において、濃度測定手段の状態変化に起因する測定値の変動を示す特性変化テーブルの記憶手段と、校正処理時の濃度測定手段の状態変化検出手段と、状態変化検出手段の検出結果と記憶された特性変化テーブルとに基づいて、校正処理された測定結果を修正する修正手段とを備え、濃度補正手段は、修正手段により修正された値に基づいて露光手段及び/又は現像手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関し、詳しくは、診断画像データを元にプリントを得る場合に安定した濃度出力を得ることができる画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装置内に濃度計を有する画像処理装置としては、例えば、特許文献1のように濃度計を内蔵するデジタルレーザーイメージングシステム(以下、イメージャともいう)が知られている。かかるイメージャの内蔵濃度計は、イメージャの階調特性や仕上がりフィルム濃度を制御するために用いられる。例えば、予め定めた露光信号で複数のステップウェッジをフィルムに露光し、当該潜像が形成されたフィルムを現像可視化し、この各ステップウェッジの仕上がり濃度を濃度計で測定し、この測定結果に基づき、仕上がりフィルムの階調特性が所望状態となるように、入力された診断画像データに対する露光量を定めるLUT(ルックアップテーブル)を作成するいわゆるキャリブレーション処理や、次にプリントするフィルムの濃度が最適となるようにフィードバック補正量を決定する(FB補正処理)ことにより濃度を制御する際にフィルム上の所定箇所に記録されたパッチ濃度を測定するために内蔵濃度計は使用されている。
【0003】
一方、病院内に複数のイメージャがある場合、これらにより得られるプリントの濃度が許容範囲内か否かを確認するために、各イメージャの内蔵濃度計とは別途の外部の標準濃度計に基づいて各イメージャの濃度を管理する形態がとられるのが一般的である。すなわち、この外部の標準濃度計で仕上がりフィルムの濃度階調を測定し、個々の装置毎に内蔵濃度計により測定された濃度に基づいて制御された結果の濃度階調が許容範囲か否かが確認される。
【0004】
このとき、濃度階調が許容範囲でない場合は、内蔵濃度計と外部の標準濃度計との読み値の差異を校正する必要がある。具体的には、プリントしたフィルムを一度外部の標準濃度計で測定し、当該読み値と内蔵濃度計の読み値とを比較し、この差異を校正するよう、内蔵濃度計による測定値に補正を加えることが一般的に行われている。これは、濃度は一定であるにも係わらず、外部の標準濃度計の読み値と所定のイメージャの内蔵濃度計との読み値が異なった状態のまま放置しておいた場合、例えばパッチ濃度制御(パッチフィードバック)方式(以下、FB補正という)において露光・現像されたフィルムの濃度が装置毎に異なることになり、管理上の問題が生じ易いために行われる。
【0005】
ここで、FB補正とは、フィルムの所定箇所に5×10mm程度の矩形状エリア(パッチ領域)を予め定めた光量で露光し、このエリアの仕上がり濃度を測定し、当該測定した濃度値と本来得られるはずの濃度である目標濃度値との差分をもとに、次に露光・現像するフィルムの濃度を適正濃度にすべく露光条件及び/又は現像条件を可変することにより濃度制御を行うことである。
【0006】
前記矩形状エリアの濃度を標準濃度計で測定した上でFB補正を行う場合は、目標濃度値が2.0であるときは、測定した濃度(例えば1.9)に基づいて目標濃度値との差分(2.0−1.9=0.1)を補正する(濃度を+0.1とする)ようにすれば、実効のある濃度制御ができる。しかし、前記矩形状エリアの濃度を内蔵濃度計で測定した上でFB補正を行う場合、標準濃度計での測定結果が1.9であるにも係わらず、内蔵濃度計の誤差等に起因して測定結果が2.0であるとされると、目標濃度値を2.0とした場合は濃度の補正が行われず、実効のある濃度制御が行われないこととなる。
【0007】
また、内蔵濃度計を有するイメージャは、近年、特許文献2に見られるように熱現像方式を採用したものが増加している。熱現像方式のイメージャでは、加熱しながら搬送することでフィルムが現像可視化されるので、この熱現像部の下流側に位置する内蔵濃度計は、高温のフィルムからの熱影響を受けやすいものとなる。更に、近年要望されている小型化された装置の場合、加熱手段からの熱影響も直接的に受けることになる。従って、内蔵濃度計の熱安定性は、広範囲の温度下で要求される。この温度特性が満足されないと仕上がりフィルムの濃度が影響を受けることとなる。
【0008】
このような内蔵濃度計として、構成する部品が温度特性の良好な部品を選択すれば熱影響に対する誤差が抑えられるが、このような温度特性の良好な部品を用いると部品コストが大幅に上昇してしまう問題がある。また、濃度計周辺部の温度が所定温度範囲内に維持されるように冷却ファンを設ける等して内蔵濃度計に対する熱影響を抑える方法も考えられるが、そのための装置コストや装置スペースを必要とする上、この方法では熱影響が多少低減するものの現実的には熱影響を避けられないという問題があった。
【特許文献1】特開平6−233134号公報
【特許文献2】特表平10−500497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、かかる問題点を検討した結果、温度変化に伴う内蔵濃度計の測定値を特定して特性変化テーブルとすることにより、内蔵濃度計を校正した時点以降、装置個々の内蔵濃度計の特性変化テーブルに基づき、濃度計の測定値に補正を加えることで、頻繁に内蔵濃度計の校正を必要とすることなく、安定した濃度を維持することができることを見出し、本発明に至った。
【0010】
そこで本発明の課題は、温度変動に伴う内蔵濃度計の誤差の発生の影響なく、安定した濃度出力を得ることができる画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の各発明により解決される。
【0012】
請求項1記載の発明は、診断画像データを元にフィルム上に露光して潜像として画像形成する露光手段と、当該露光されたフィルムを現像可視化する現像手段と、現像されたフィルムの濃度を測定する濃度測定手段と、前記濃度測定手段における測定値に基づき、診断画像データとフィルム濃度との適正関係を維持すべく前記露光手段及び/又は前記現像手段を制御する濃度補正手段とを備え、前記濃度測定手段における測定値を、テスト画像を前記濃度測定手段により測定した結果と前記濃度測定手段とは異なる外部の濃度測定手段により測定した結果とに基づいて校正処理するようにした画像処理装置において、前記濃度測定手段の状態変化に起因する測定値の変動を示す特性変化テーブルを記憶する記憶手段と、前記校正処理の実施後、前記診断画像データに基づくフィルムの濃度測定時と、当該校正処理時の前記濃度測定手段の状態変化を検出する状態変化検出手段と、前記状態変化検出手段の検出結果と前記記憶された特性変化テーブルとに基づいて、前記濃度測定手段における校正処理された測定結果を修正する修正手段とを備え、前記濃度補正手段は、前記修正手段により修正された値に基づいて前記露光手段及び/又は前記現像手段を制御するようにしたことを特徴とする画像処理装置である。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記濃度補正手段は、診断画像データと露光値との関係を定めるキャリブレーションLUTを作成し、当該LUTに基づき潜像を露光することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置である。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記濃度補正手段は、パッチフィードバック方式により、次の診断画像データに基づくプリントの露光・現像を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置である。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記現像手段は、フィルムを加熱することにより現像可視化する熱現像方式であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の画像処理装置である。
【0016】
請求項5記載の発明は、前記濃度測定手段の状態変化は、当該濃度測定手段の温度変化であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理装置である。
【0017】
請求項6記載の発明は、前記濃度測定手段の状態変化は、当該濃度測定手段が通電された時点を起算点とする時間変化であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理装置である。
【0018】
請求項7記載の発明は、前記修正手段は、前記時間変化をフィルム処理履歴に応じて補正することを特徴とする請求項6記載の画像処理装置である。
【0019】
請求項8記載の発明は、診断画像データを元にフィルム上に露光して潜像として画像形成する露光手段と、当該露光されたフィルムを現像可視化する現像手段と、現像されたフィルムの濃度を測定する濃度測定手段とを備え、前記濃度測定手段における測定値に基づき、診断画像データとフィルム濃度との適正関係を維持すべく前記露光手段及び/又は前記現像手段を制御すると共に、前記測定値を、テスト画像を前記濃度測定手段により測定した結果と前記濃度測定手段とは異なる外部の濃度測定手段により測定した結果とに基づいて校正処理するようにした画像処理方法において、前記濃度測定手段の状態変化に起因する測定値の変動を示す特性変化テーブルを予め記憶し、前記校正処理の実施後、前記診断画像データに基づくフィルムの濃度測定時と、当該校正処理時の前記濃度測定手段の状態変化を検出すると共に、前記特性変化テーブルに基づいて、前記濃度測定手段における校正処理された測定結果を修正処理し、当該修正処理された値に基づいて前記露光手段及び/又は前記現像手段を制御することを特徴とする画像処理方法である。
【0020】
請求項9記載の発明は、前記濃度補正手段は、診断画像データと露光値との関係を定めるキャリブレーションLUTを作成し、当該LUTに基づき潜像を露光することを特徴とする請求項8記載の画像処理方法である。
【0021】
請求項10記載の発明は、前記濃度補正手段は、パッチフィードバック方式により、次の診断画像データに基づくプリントの露光・現像を制御することを特徴とする請求項8又は9記載の画像処理方法である。
【0022】
請求項11記載の発明は、前記現像手段は、フィルムを加熱することにより現像可視化する熱現像方式であることを特徴とする請求項8、9又は10記載の画像処理方法である。
【0023】
請求項12記載の発明は、前記濃度測定手段の状態変化は、当該濃度測定手段の温度変化であることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の画像処理方法である。
【0024】
請求項13記載の発明は、前記濃度測定手段の状態変化は、当該濃度測定手段が通電された時点を起算点とする時間変化であることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の画像処理方法である。
【0025】
請求項14記載の発明は、前記修正手段は、前記時間変化をフィルム処理履歴に応じて補正することを特徴とする請求項13記載の画像処理方法である。
【0026】
請求項15記載の発明は、請求項8〜14のいずれかに記載の画像処理方法を実行するプログラムであって、画像処理装置内に格納されることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、温度変動に伴う内蔵濃度計の誤差の発生による影響なく、安定した濃度出力を得ることができる画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。
【0029】
本発明の画像処理装置、画像処理方法及びプログラムは、フィルムに露光形成した潜像を加熱することによって現像を行う、いわゆる熱現像方式による画像処理装置に適用することが本発明の効果を発揮する上で好ましいので、かかる熱現像方式の画像処理装置を例に挙げて説明する。
【0030】
図1は本発明に係る画像処理装置の内部構成の一例を示す図であり、図2は、画像処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。ここでは画像処理装置として診断画像をプリントするための医療用レーザーイメージャを例示している。
【0031】
図1に示すように、画像処理装置100は、シート状のフィルムを所定枚数でパッケージした包装体を装填する第1及び第2の装填部11、12と、フィルムを1枚づつ露光・現像のために搬送し供給するサプライ部90とを有する供給部110と、供給部110から給送されたフィルムを診断画像データに応じて露光して潜像を形成する露光部120と、露光部120において潜像が形成されたフィルムを熱現像することにより診断画像を可視化する現像部130と、現像されたフィルムの濃度を測定し濃度情報を得る濃度計200とを備える。
【0032】
供給部110の第1及び第2の装填部11、12からフィルムが1枚づつサプライ部90、搬送ローラ対39、41、141により、図1の矢印方向(1)から矢印方向(2)で示されるように露光部120付近に向けて搬送されるようになっている。
【0033】
露光部120に搬送されたフィルムは、露光部120により露光されて診断画像データに基づく潜像が形成される。診断画像データは、例えばX線撮影装置やMRI撮影装置などの画像撮影装置により撮影されることによって得られる。露光部120における露光量は、図2に示す制御部300が該露光部120を制御することにより診断画像データに基づいて決定され、これにより濃度が調整される。
【0034】
なお、この制御部300は、濃度計200における測定結果に基づき、診断画像データとフィルム濃度との適正関係を維持すべく、次のフィルムを露光・現像する際に露光部120及び/又は現像部130を制御する。すなわち、制御部300は、後述するように濃度計200で測定したパッチ領域の測定値に基づいていわゆるFB(フィードバック)補正処理を行う。このとき、本発明では、後述するように濃度計200での測定結果が修正されるようになっているので、濃度計200として標準的な温度特性を有する濃度計を用いることができ、装置全体のコストを削減することができる効果がある。
【0035】
露光部120において診断画像データに基づく潜像が形成されたフィルムは、搬送ローラ対142により、図1の矢印方向(2)から矢印方向(3)で示されるように現像部130付近に向けて搬送される。
【0036】
現像部130に搬送されたフィルムは、現像部130により加熱されることで現像される。図1に示すように、現像部130はフィルムを外周に保持しつつ加熱可能なドラム14と、ドラム14との間でフィルムを挟んで保持する複数のロール16とを有する。ドラム14は、ヒータ(図示省略)を内部に備え、フィルムを所定の最低熱現像温度(例えば110℃前後)以上の温度に所定の熱現像時間維持することでフィルムを熱現像する。これによって、上述の露光部120でフィルムに形成された潜像を可視画像として形成する。また、ドラム14のヒータは、露光部120と同様に制御部300により制御され、温度を変えたりすることにより現像温度を変えて濃度調整を行うことができるようになっている。
【0037】
現像部130の左側方には、複数の搬送ローラ対144及び濃度計200を内部に備えるとともに加熱されたフィルムを冷却するための冷却搬送部150が設けられている。冷却搬送部150は、加熱ドラム14から離れたフィルムを図1の矢印(3)に示すように左斜め下方に搬送しつつ冷却する。
【0038】
そして、搬送ローラ対144が冷却されたフィルムを搬送する過程で、濃度計200がフィルムの濃度を測定する。フィルムには、FB補正を行うために、予めフィルムの所定箇所に、予め定められた光量で所定の画像を露光・現像した5×10mm程度の矩形状エリア(パッチ領域)が設けられており、濃度計200はこの矩形状エリアの濃度を測定するようになっている。
【0039】
その後、複数の搬送ローラ対144は、フィルムを図1の矢印(4)のように更に搬送し、上部から取り出せるように、画像処理装置100の右上方部に設けられた排出トレイ160に排出する。
【0040】
本発明において濃度計200は、露光・現像されたフィルムの濃度を測定可能な構成で画像処理装置100内に設けられていればよく、例えば、発光部200aと受光部200bとを備え、現像後のフィルムが発光部200aと受光部200bとの間を上述のように搬送され、通過する際に、発光部200aから照射された光をフィルムを通して受光部200bで受け、その受光量の減衰の程度に基づいて濃度を測定する構成の濃度計を用いることができる。
【0041】
画像処理装置100には、図2に示すように、液晶パネル等の表示部400及び各種入力を受け付ける入力部500を備えている。本発明における画像処理装置100は、濃度計200における測定値を校正するため、濃度計200における測定値を表示部400により表示しつつ、外部濃度計による読み値の入力を入力部500により受け付けて、当該入力に基づいて濃度計200の測定値を校正する校正処理を行うことができるようになっている。このような校正処理は、画像処理装置100において、診断用画像とは別にテスト画像をプリントした結果に基づいて行われる。
【0042】
かかる校正処理の際の処理流れについて図3に基づいて説明する。
【0043】
まず、露光部120において、フィルムにテスト画像として所定のテストパターン(複数のウェッジパターン)を露光し(S51)、当該露光されたテストパターンを現像部130により現像する(S52)。ウェッジパターンとは、所定の濃度で露光・現像された矩形の画像のことである。次いで、フィルム上に形成されたウェッジパターンを画像処理装置100内に設けられた濃度計200によって測定する(S53)。
【0044】
ステップS53までの処理が行われると、搬送ローラ対144により搬送されてウェッジパターンが形成されたフィルムが画像処理装置100から排出される(S54)。
【0045】
次いで、排出されたフィルムに形成されたウェッジパターンを、画像処理装置100外の標準とする外部濃度計(図示せず)により測定する(S55)。この測定は画像処理装置100のメンテナンス時にサービスマン等により定期的に行われるようにすることができる。この外部濃度計によって得られた測定値は、サービスマン等が上記入力部500を用いて入力することで、画像処理装置100に受け付けられる。同時に、これらの情報は表示部400に表示される。
【0046】
制御部300では、サービスマン等によって外部濃度計による測定値の入力がなされると、上記ステップS53で測定した画像処理装置100内部の濃度計200による測定値と上記ステップS55で入力された外部濃度計の測定値とを比較して、ステップS53で測定した内部の濃度計200の測定値が、入力された外部濃度計の測定値と一致するように、濃度計200における測定値を校正するための校正値を求め、これを記憶部600の所定の領域に記憶しておく(S56)。
【0047】
次いで、制御部300は、後において画像処理装置100内部の濃度計200の状態変化を知るための元となるこの校正処理を実施した時点での濃度計200の状態を検出する。
【0048】
ここで、濃度計200の状態変化とは、校正処理を実施した時点での濃度計200の温度と実際に診断画像データに基づいてプリントされた画像の濃度測定を実施した時点での濃度計200の温度とをそれぞれ測定し、その温度差を状態変化として検出する態様(温度の態様)と、画像処理装置100の電源が投入されることにより濃度計200が通電された時点を起算点とし、校正処理を実施した時点までの時間と濃度計200で実際に診断画像データに基づいてプリントされた画像の濃度測定を実施した時点までの時間とをそれぞれ測定し、その時間差を状態変化として検出する態様(時間の態様)とがある。ここでは、状態変化として温度の態様により検出結果を得る場合の例で説明する。
【0049】
この校正処理を実施した時点での濃度計200の温度は、制御部300の制御によって画像処理装置100内に設けられている温度計700(図2に示す)により測定される。ここで、濃度計200の温度とは、濃度計200そのものの温度に限らず、濃度計200と熱的に同一の系となる雰囲気の温度のことをいう。測定された温度データは、記憶部600の所定の領域に記憶される(S57)。
【0050】
次に、診断画像をプリントする際のFB補正処理の処理流れについて、図4を用いて説明する。
【0051】
まず、制御部300は、与えられた診断画像データに基づいて露光部120を制御することで、フィルム上に露光を行い(S1)、当該露光された潜像を現像部130により現像する(S2)。次いで、フィルム上に形成された診断画像を画像処理装置100内に設けられた濃度計200によって測定する(S3)。この測定値は、前述した校正処理によって求められた校正値に基づいて校正される。そして、この校正された測定値は、一時的に記憶部600の所定の領域に記憶される。
【0052】
ここで、制御部300は、この時点での画像処理装置100内部の濃度計200の状態、すなわち温度を温度計700によって検出し、この温度データを記憶部600の所定の領域に記憶する(S4)。
【0053】
次いで、修正処理を行う(S5)。この修正処理について図5を参照して説明する。
【0054】
この修正処理において制御部300は、まず、記憶部600に記憶されている2つの温度データ、すなわち、校正処理を実施した時点での濃度計200の温度データと診断画像データに基づいてプリントされた診断画像の濃度を測定した時点での濃度計200の温度データとを読み出し、それらの温度データに基づいて濃度計200の状態変化(温度差)を検出して取得する(S10)。
【0055】
次いで、制御部300は、濃度計200の温度変化に起因する測定値の変動を示す特性変化テーブルを取得する(S20)。特性変化テーブルは、例えば図6に示すような関係を示すテーブルを用いることができる。図6において、特性変化テーブルは、校正処理を実施した時点での濃度計200の温度と、診断画像データに基づいてプリントされた診断画像の濃度を測定した時点での濃度計200の温度との関係を示す関係式又は当該両値の関係を示す対応付けをしたテーブルとして表される。所定濃度とは、予め決められた濃度のことである。
【0056】
かかる特性変化テーブルは、記憶部600等のように制御部300によりアクセス可能なROM等の適宜の記憶手段に記憶された状態で画像処理装置100内に設けられていてもよいし、設置時等に制御部300が読み出し可能となるようにサービスマン等から画像処理装置100に提供されるようにしてもよい。後者の場合は、例えば画像処理装置100にデータの受け取りが可能なインターフェースを設けておき、特性変化テーブルのデータを記憶した適宜の記憶メディアからインターフェースを介して制御部300が記憶部600に取り込むように制御することで行うことができる。
【0057】
次いで、上記ステップS10において取得された状態変化の検出結果に基づいて、上記ステップS20で取得された特性変化テーブル上で対応する濃度値の変化分を修正値として特定する(S30)。この修正値の特定は、具体的には、例えば上記ステップS10で取得した状態変化の検出結果が「40℃」→「45℃」であり、上記ステップS20で取得された特性変化テーブルにおいて、それぞれ「40℃」に対応する濃度値が「1.2」であり、「45℃」に対応する濃度値が「1.3」であるとした場合、修正値である測定濃度の変化分は、1.3−1.2を計算することにより「+0.1」であると特定される。
【0058】
このようにして修正値が特定されると、濃度計200で測定した測定値を記憶部600から読み出し(S40)、当該測定値を修正する(S50)。この測定値の修正は、具体的には、読み出した測定値が「1.9」である場合は、測定値である「1.9」から修正値である「+0.1」を減算することによって「1.8」であるとする。この修正された測定値は、濃度計200による最終的な測定結果とされる。
【0059】
続いて図4の流れに戻って、以上のステップS10〜S50に示す修正処理により修正された濃度計200の測定値に基づいて、制御部300は診断画像データに基づいて次に露光・現像するフィルムのための濃度を制御する(S6)。この濃度の制御は、制御部300が露光部120、現像部130のいずれか一方又は双方を制御することによって行うことができる。濃度の制御は、前述したように、例えば露光部120における露光量を決定すること、現像部130における現像温度を決定することである。
【0060】
このようにして制御部300によって濃度が制御された後は、次に診断画像データに基づいてプリントすべき画像があるか否かが判断され(S7)、プリントすべき画像がある場合は、上記ステップS6において決定され濃度となるように露光部120及び/又は現像部130が制御された状態で、当該診断画像データに基づく次のプリントを同様に上記ステップS1〜S6の処理に従って作成する。そして、上記ステップS7において次にプリントすべき診断画像がない場合はFB補正処理を終了する。
【0061】
このように本発明によれば、標準となる外部濃度計による測定値に基づいて校正処理された濃度計200による測定値を、濃度計200の状態変化(温度変化)に応じて修正するようにしたので、熱影響を受けやすい濃度計200であっても、かかる濃度計200の測定結果を修正して熱影響による誤差を相殺可能とすることができ、FB補正処理を行う際に正確な濃度制御ができ、FB補正による濃度の制御において画像濃度を一定に保つことができるようになる。
【0062】
以上の説明では、濃度計200の状態変化として、温度差を状態変化として検出する態様(温度の態様)を例に挙げて説明したが、時間差を状態変化として検出する態様(時間の態様)について以下に説明する。
【0063】
時間の態様においては、濃度計200の状態を検出するための手段として、図2に示す温度計700に代えて、画像処理装置100の電源投入時を起算点とした時間を測定するタイマー(図示せず)を設けることにより構成することができる。
【0064】
また、この時間の態様による場合は、図6に示すような特性変化テーブルに代えて、例えば図7に示すような関係を示す特性変化テーブルを用いることができる。図7に示す特性変化テーブルは、濃度計200が通電されてからの経過時間と濃度計200で測定した所定濃度の測定値との関係を示す関係式又は当該両値の関係を示す対応付けをしたテーブルとして表される。所定濃度とは、予め決められた濃度のことである。図7に示すグラフにおいて、濃度計200は、電源投入後、時間が経過するに従い温度が上昇するため測定濃度値が変動し、ある一定の時間が経過すると温度が一定となるため測定濃度の変動がなくなる(飽和する)ことを示している。
【0065】
このような時間の態様による場合にも、図5において示した修正処理は、基本的には上記温度の態様による場合と同様に行われる。
【0066】
具体的には、図8に示すような特性変化テーブルにおいて、校正処理の実施時刻に対し、診断画像データに基づくフィルムの濃度を測定した時刻が(1)の時点である関係にある時、修正値は、(1)の時点の測定値と校正処理実施時の測定値との差分Aであると特定され、濃度計200の校正処理された測定値から上記差分Aに相当する値を更に減算する。
【0067】
また、校正処理の実施時刻に対し、診断画像データに基づくフィルムの濃度を測定した時刻が、測定濃度が飽和状態に達した以降の(2)の時点である関係にある時、修正値は、測定濃度が飽和状態に達した時点の測定値と校正処理実施時の測定値との差分Bであると特定され、濃度計200の校正処理された測定値から上記差分Bに相当する値を更に減算する。
【0068】
更に、校正処理の実施時刻に対し、診断画像データに基づくフィルムの濃度を測定した時刻が、電源投入から校正処理の実施時までの時間よりも早い(3)の時点(例えば前日に校正処理を行い、その後一旦電源オフし、翌日にプリントを開始するような場合)である関係にある時、修正値は、校正処理実施時の測定値と(3)の時点での測定値との差分Cであると特定され、この場合は濃度計200の校正処理された測定値に対して上記差分Cに相当する値を加算する。
【0069】
また、図9に示すように、校正処理を実施した時刻が、電源投入後で濃度計200の測定濃度が飽和状態に達した後であるような場合、診断画像データに基づくフィルムの濃度を測定した時刻が、その後の(4)の時点である関係にある時、測定濃度の変化分は「0」であるので修正値は「0」となる。
【0070】
このような時間の態様においては、修正処理では、タイマーによって得られた時間をフィルム処理履歴に応じて補正する時間補正処理を行うことが好ましい。
【0071】
なお、図8、図9に示す関係からわかるように、修正値が「0」となる濃度計200の測定値が飽和状態に近い状態での使用が好ましいといえる。この場合、校正処理の実施を濃度計200の測定値が飽和状態となる例えば電源投入後から1時間待ってから行うという方法を採ることもできるが、現実的には診断画像のプリントを長時間待機することは困難である。このとき、診断画像とは異なる複数枚のダミープリントを行い、熱現像されたフィルムを濃度計200を通過させることで、濃度計200の温度を飽和状態に近い状態(準飽和状態)とし、この段階で校正処理を実施し、診断画像のプリントも当該準飽和状態で行うような運用方法を採ることで、実使用上でのFB補正に伴う濃度変動等の問題発生を解消することも可能である(この場合は、サービスマン等も作業を早期に完了でき、翌日にはモーニングスタンバイ等でイメージャを立ち上げ、患者診断時には飽和状態となっているようにすればよい。)。しかし、本発明によれば、修正処理を行うことで、電源投入後から長時間待機する必要も、また、複数枚のダミープリントを行う必要もなく、安定した濃度特性を有する診断画像をプリントすることができるという顕著な効果を発揮する。
【0072】
次に、キャリブレーション処理における濃度計測定値の影響について述べる。
【0073】
キャリブレーションは、熱現像ドラムの交換等のイメージャの画像形成プロセスにかかわる部分をメンテナンスしたり、フィルムロット変更によりフィルム感度が変化した場合等に実施される。この理由は、これらの前後で、入力された診断画像信号に対する仕上がり濃度(階調性を含む)が一定となるようにするためである。
【0074】
このようなキャリブレーションは、濃度計200の測定値に基づいて診断画像データとフィルム濃度との適正関係を維持すべく機能する制御部300によって校正実行後に実行し、図10のAに示す階調特性を維持するよう、入力される診断画像データと露光量との関係をLUTに定める。この後、このLUTに基づいて潜像を露光・現像することにより診断画像をプリント処理し続けることによりフィルムが無くなると、新たなフィルムパッケージ(同一の感度特性)を装填し、この時、再度キャリブレーションを実行すると、連続処理に伴う熱影響で、濃度計200は測定値のみが高めの値に変動している。しかしながら、この時、実際のフィルムは適正な階調特性を有している。従って、この高めに推移した濃度測定値を用いて上記LUTを作成すると、適正な階調特性から乖離した図10のBのようなLUTを作成してしまい、結果として、同一感度特性のフィルム交換前後でも、仕上がり濃度(階調)に差を生じてしまう。医用画像は微妙な階調の変化を読み取って診断を行うので、上記のような差は重要な問題となる。
【0075】
一方、本発明によれば、校正処理時とキャリブレーション処理時の濃度計200の状態変化を加味して修正されるので、LUTは常に図10のAが作成され、好ましい。
【0076】
なお、上記キャリブレーション処理においても、FB補正処理の場合と同様に、校正処理を飽和状態あるいは準飽和状態で行うよう運用すると、実使用上での階調特性変動等の問題発生を解消することも可能である。
【0077】
本発明における画像処理方法は、画像処理装置100内のフラッシュROM等の所定の記憶装置内に予め格納されたソフトウエアプログラム(プログラム)によって制御されることにより実現できる。画像処理装置100内部には、CPUを含んだマイクロコンピュータ(コンピュータ)を備えており、本発明のプログラムは、かかるコンピュータにより処理されることにより以上の機能を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の画像処理装置の一構成例を示す要部正面図
【図2】本発明の画像処理装置の構成を示すブロック図
【図3】校正処理の一例を示すフロー図
【図4】FB補正処理の一例を示すフロー図
【図5】修正処理の一例を示すフロー図
【図6】特性変化テーブルの一例を示す図
【図7】特性変化テーブルの一例を示す図
【図8】特性変化テーブルの一例を示す図
【図9】特性変化テーブルの一例を示す図
【図10】露光量と入力される診断画像信号との関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0079】
100:画像処理装置
110:供給部
120:露光部(露光手段)
130:熱現像部(現像手段)
150:冷却搬送部
200:濃度計(濃度測定手段)
300:制御部
400:表示部
500:入力部
600:記憶部
700:温度計
11:第1の装填部
12:第2の装填部
14:ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断画像データを元にフィルム上に露光して潜像として画像形成する露光手段と、
当該露光されたフィルムを現像可視化する現像手段と、
現像されたフィルムの濃度を測定する濃度測定手段と、
前記濃度測定手段における測定値に基づき、診断画像データとフィルム濃度との適正関係を維持すべく前記露光手段及び/又は前記現像手段を制御する濃度補正手段とを備え、
前記濃度測定手段における測定値を、テスト画像を前記濃度測定手段により測定した結果と前記濃度測定手段とは異なる外部の濃度測定手段により測定した結果とに基づいて校正処理するようにした画像処理装置において、
前記濃度測定手段の状態変化に起因する測定値の変動を示す特性変化テーブルを記憶する記憶手段と、
前記校正処理の実施後、前記診断画像データに基づくフィルムの濃度測定時と、当該校正処理時の前記濃度測定手段の状態変化を検出する状態変化検出手段と、
前記状態変化検出手段の検出結果と前記記憶された特性変化テーブルとに基づいて、前記濃度測定手段における校正処理された測定結果を修正する修正手段とを備え、
前記濃度補正手段は、前記修正手段により修正された値に基づいて前記露光手段及び/又は前記現像手段を制御するようにしたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記濃度補正手段は、診断画像データと露光値との関係を定めるキャリブレーションLUTを作成し、当該LUTに基づき潜像を露光することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記濃度補正手段は、パッチフィードバック方式により、次の診断画像データに基づくプリントの露光・現像を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記現像手段は、フィルムを加熱することにより現像可視化する熱現像方式であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記濃度測定手段の状態変化は、当該濃度測定手段の温度変化であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記濃度測定手段の状態変化は、当該濃度測定手段が通電された時点を起算点とする時間変化であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記修正手段は、前記時間変化をフィルム処理履歴に応じて補正することを特徴とする請求項6記載の画像処理装置。
【請求項8】
診断画像データを元にフィルム上に露光して潜像として画像形成する露光手段と、
当該露光されたフィルムを現像可視化する現像手段と、
現像されたフィルムの濃度を測定する濃度測定手段とを備え、
前記濃度測定手段における測定値に基づき、診断画像データとフィルム濃度との適正関係を維持すべく前記露光手段及び/又は前記現像手段を制御すると共に、前記測定値を、テスト画像を前記濃度測定手段により測定した結果と前記濃度測定手段とは異なる外部の濃度測定手段により測定した結果とに基づいて校正処理するようにした画像処理方法において、
前記濃度測定手段の状態変化に起因する測定値の変動を示す特性変化テーブルを予め記憶し、
前記校正処理の実施後、前記診断画像データに基づくフィルムの濃度測定時と、当該校正処理時の前記濃度測定手段の状態変化を検出すると共に、
前記特性変化テーブルに基づいて、前記濃度測定手段における校正処理された測定結果を修正処理し、当該修正処理された値に基づいて前記露光手段及び/又は前記現像手段を制御することを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
前記濃度補正手段は、診断画像データと露光値との関係を定めるキャリブレーションLUTを作成し、当該LUTに基づき潜像を露光することを特徴とする請求項8記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記濃度補正手段は、パッチフィードバック方式により、次の診断画像データに基づくプリントの露光・現像を制御することを特徴とする請求項8又は9記載の画像処理方法。
【請求項11】
前記現像手段は、フィルムを加熱することにより現像可視化する熱現像方式であることを特徴とする請求項8、9又は10記載の画像処理方法。
【請求項12】
前記濃度測定手段の状態変化は、当該濃度測定手段の温度変化であることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項13】
前記濃度測定手段の状態変化は、当該濃度測定手段が通電された時点を起算点とする時間変化であることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項14】
前記修正手段は、前記時間変化をフィルム処理履歴に応じて補正することを特徴とする請求項13記載の画像処理方法。
【請求項15】
請求項8〜14のいずれかに記載の画像処理方法を実行するプログラムであって、画像処理装置内に格納されることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−3455(P2006−3455A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177502(P2004−177502)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】