説明

画像処理装置、画像処理方法及びプログラム

【課題】
情報特定の容易性と情報の安全性を保ちつつ使用済み用紙などを再利用できる画像処理装置を提供する。
【解決手段】
本複合機1の制御部100は、印刷可能エリア指定手段としての新規印刷情報生成部101と、蓄積されている複数のパターンの中から使用されるパターンを決定する重ね書きパターン決定部102と、用紙制御手段としての給紙制御部103と、第1のセンサ71と第2のセンサ72より得られた個々のセンサ信号から既印刷面の判定を行う既印刷面判定部104と、個々のセンサの既印刷面判定から印刷モードを決定する印刷モード決定部105と、重ね書き印刷用のデータを生成する重ね書き印刷情報生成部106と、印刷制御手段、印刷禁止手段及び透過用紙印刷禁止手段としての印刷制御部107とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の両面印刷が可能な画像処理装置、画像処理方法およびその方法を実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コピー機などの画像処理装置は、環境問題への配慮等から両面印刷機能が標準装備されているものが多く、また、用紙節約のために一度印刷処理された使用済み用紙の裏紙等を使用する機会も増えてきている。
しかし、用紙の中には、例えば、マテリアル用紙などの特殊な用紙がある。また、そうでなくとも、印刷済みの面(既印刷面)を未印刷面と間違って給紙段に装填したり、或いは汚れやキズのある用紙が混在する場合がある。そのような場合、両面印刷してはならないが、気付かずに両面印刷すると用紙を無駄にすることになる。
【0003】
この問題に対しては、既に画像印刷面のある用紙の裏紙等の使用のための様々な工夫がなされている。例えば、用紙の種類や状態を確認して、使用済み用紙を検出して自動的に排紙する画像処理装置が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、印刷する用紙の印刷対象エリア中に印刷済みエリアを検知したときに、印刷禁止や印刷用紙の排出、印刷対象面の印刷済みエリアを登録パターンで置き換える処理などを行う画像処理装置が知られている(特許文献2参照)。
【0005】
更に、裏紙が混在または裏紙のなかに表裏逆の裏紙が混在していた場合に、裏紙だけまたは表裏逆の裏紙だけを分離して、それらに対しては印刷を行わないようにし、状況によっては表裏逆の裏紙を反転給紙し白紙面に印刷する画像処理装置も知られている(特許文献3参照)。
【0006】
上記特許文献1から3に記載された画像処理装置においては、裏紙に印刷済み領域がある場合は、そのままの状態で排出や印刷停止などの処理が行われる。また、上記特許文献2に記載された画像処理装置では、印刷面と同一面中に印刷済み領域があり、その印刷済み領域とこれから印刷する印刷対象領域が重複しなければ、その印刷済み領域を未印刷領域と区別する為に、パターンで置き換えることも行われている。
【0007】
上記特許文献1から3に記載された画像処理装置においては、裏紙を用いたときに表面や未印刷部分に新規に印刷することができ、裏紙を用いたときの印刷ミスの低減などにより用紙節約の効果は実現できる。
しかし、裏紙を使用した資料を配布した際に、どちらの側にその資料の情報が印刷されているのか容易に分からないという問題がある。また、さらに重要なことは、印刷済みの面に対しては処理せずにそのまま出力すると、印刷された情報が特定され易く、情報機密の安全性の面から問題があることである。例えば、機密情報、重要情報が印刷された用紙を誤って裏紙として使用してしまったために、重要情報が閲覧の許可されない人にまでも流布するという事態が発生する。
【0008】
これを回避するために、既印刷面に黒ベタ塗り等により均一に上書きすることにより難読化することが考えられる。しかし、同一パターンで均一に上書きしても、用紙への光の当て具合や光で透かして見る方法などにより、一旦難読化された対象領域の情報でも特定することは可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、画像処理装置において既に印刷された情報の安全性を確保しつつ、印刷済み用紙を再利用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の発明は、用紙への両面印刷が可能な画像処理装置であって、供給される用紙の既印刷面を特定する既印刷面特定手段と、前記既印刷面特定手段により特定された用紙の印刷可能な表面に印刷を行う印刷手段と、前記既印刷面特定手段により特定された用紙の既印刷面に、複数の上書きパターンの印刷を行う難読化印刷手段と、を備えたことを特徴とする画像処理装置である。
本願の他の発明は、用紙への両面印刷が可能な画像処理方法であって、供給される用紙の既印刷面を特定する既印刷面特定工程と、前記既印刷面特定工程において特定された用紙の印刷可能な表面に新規印刷を行う印刷工程と、前記既印刷面特定工程において特定された用紙の既印刷面の既存印刷画像に、複数の上書きパターンの印刷を行う難読化印刷工程と、を備えたことを特徴とする画像処理方法である。
本願の他の発明は、コンピュータを、供給される用紙の既印刷面を特定するための既印刷面特定手段と、前記既印刷面特定手段により特定された用紙の印刷可能な面に印刷を行うための印刷制御手段、及び、前記既印刷面特定手段により特定された用紙の既印刷面の既存印刷画像に、複数の上書きパターンの印刷を行うための難読化印刷制御手段、として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、既存の画像印刷面に印刷された重要情報を隠匿しつつ印刷済み用紙などを再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の画像処理装置の一例である複合機の内部構成を概略的に示す側面図である。
【図2】第1のセンサと第2のセンサの組み合わせで生成される4つのパターンに対応してどのような処理を行うかを示した疑似プログラム例である。
【図3】複合機の構成の概略を示す機能ブロック図である。
【図4】重ね書きパターンの一例を示す図である。
【図5】重ね書き印刷用のデータ(文字)の一例を示す図である。
【図6】既存印刷画像(文字)の一例を示す図である。
【図7】既存印刷画像に重ね書き印刷用のデータを印刷した一例である。
【図8】重ね書きパターン(図形)の例を示す図である。
【図9】重ね書き印刷用のデータ(図形)の例を示す図である。
【図10】用紙の既印刷面上の既存印刷画像(図形)の例を示す図である。
【図11】既存印刷画像に重ね書き印刷用のデータを印刷した例(図形)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の画像処理装置の一例である複合機の内部構成を概略的に示す側面図である。
図1に示すように、複合機1は、ファクシミリ機能、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能等の機能を兼ね備えており、本体部2と、本体部2の図中左方に配設されたスタックトレイ3と、本体部2の上部に配設された原稿読取部5と、原稿読取部5の上方に配設された原稿給送部6とを有している。
【0014】
また、複合機1のフロント部には、操作部47が設けられている。操作部47には、ユーザーが印刷実行指示を入力するためのスタートキー471と、印刷部数等を入力するためのテンキー472と、各種複写動作の操作ガイド情報等を表示し、これら各種設定入力用にタッチパネル機能を有する液晶ディスプレイ等からなる表示部473と、表示部473で設定された設定内容等をリセットするリセットキー474と、実行中の印刷(画像形成)動作を停止させるためのストップキー475と、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能を切り換えるための機能切換キー477が備えられている。
【0015】
原稿読取部5は、CCD(Charge Coupled Device)センサ及び露光ランプ等からなるスキャナ部51と、ガラス等の透明部材により構成された原稿台52、及び原稿読取スリット53とを備えている。スキャナ部51は、図示しない駆動部によって移動可能に構成され、原稿台52に載置された原稿を読み取るときは、原稿台52に対向する位置で原稿面に沿って移動し、原稿画像を走査しつつ取得した画像データを後述する制御部へ出力する。また、原稿給送部6により給送された原稿を読み取るときは、原稿読取スリット53と対向する位置に移動し、原稿読取スリット53を介して原稿給送部6による原稿の搬送動作と同期して原稿の画像を取得し、その画像データを上記制御部へ出力する。
【0016】
原稿給送部6は、原稿を載置するための原稿載置部61と、画像読み取り済みの原稿を排出するための原稿排出部62と、原稿載置部61に載置された原稿を1枚ずつ繰り出して原稿読取スリット53に対向する位置へ搬送し、原稿排出部62へ排出するための給紙ローラ(図示せず)、搬送ローラ(図示せず)等からなる原稿搬送機構63を備える。
【0017】
原稿搬送機構63は、さらに原稿を表裏反転させて原稿読取スリット53と対向する位置へ再搬送する用紙反転機構(図略)を備え、原稿読取スリット53を介してスキャナ部51から原稿の両面画像の読み取りを可能にしている。
【0018】
また、原稿給送部6は、その前面側が上方に移動可能となるように本体部2に対して回動自在に設けられている。原稿給送部6の前面側を上方に移動させて原稿台52上面を開放することにより、原稿台52の上面に読取原稿、例えば見開き状態にされた書籍等を操作者が載置できるようになっている。
【0019】
本体部2は、複数の給紙カセット461と、給紙カセット461から記録紙(用紙)Pを1枚ずつ繰り出して記録部40へ搬送する給紙ローラ462と、給紙カセット461から搬送されてきた記録紙Pに画像を形成する記録部40とを備えている。
【0020】
記録部40は、スキャナ部51で取得された画像データに基づきレーザ光等を出力して感光体ドラム43を露光する光学ユニット42と、感光体ドラム43上にトナー像を形成する現像部44と、感光体ドラム43上のトナー像を記録紙Pに転写する転写部41と、トナー像が転写された記録紙Pを加熱してトナー像を記録紙Pに定着させる定着部45と、記録部40内の用紙搬送路中に設けられ、記録紙Pをスタックトレイ3又は排出トレイ48まで搬送する搬送ローラ463,464等とを備えている。
【0021】
また、記録紙Pの両面に画像を形成する場合は、記録部40で記録紙の一方の面に画像を形成した後、この記録紙Pを排出トレイ48側の搬送ローラ463にニップ(挟持)された状態とする。この状態で搬送ローラ463を反転させて記録紙Pをスイッチバックさせ、記録紙Pを用紙搬送路Lに送って記録部40の上流域に再度搬送し、記録部40により他方の面に画像を形成した後、記録紙Pをスタックトレイ3又は排出トレイ48に排出する。
【0022】
第1のセンサ71、第2のセンサ72は、既印刷面(用紙の既に画像が印刷された面)検知手段として、記録紙Pを挟むように対向して配置されており,第1及び第2のセンサ71,72の設置位置は、例えば給紙カセット461と、給紙スタック461’とからの用紙搬送路の合流位置よりも下流側である。
本実施形態の処理は、第1のセンサ71と第2のセンサ72の既印刷面検知信号を用いて行われる。
即ち、例えば、第1と第2のセンサ71、72の一方が既印刷面を検知したときは、裏紙使用のモードで動作し、両方のセンサが既印刷面を検知しないときは普通紙のモードで動作し、両方のセンサが裏紙を検知したときは印刷不可能モードで動作して、例えばスタックトレイ3に両面が既印刷面と判定された用紙を排出する。
【0023】
図2は、上記第1のセンサ71と第2のセンサ72の組み合わせで生成される4つのパターンに対して、どのような処理を行うかを示した疑似プログラム例である。
図2に示すように、第1のセンサ71と第2のセンサ72により以下の4種の既印刷面判定パターンのいずれかに判定された用紙は、それぞれの動作モードで処理を行う。
【0024】
(1)両面ともに既印刷面として判定されたときの動作モード
当該用紙は、両方共に既印刷面と判定されたため、新規に印刷することは出来ない。そのため、以下の二通りの動作モードが考えられる。
(i)第1の動作モードとしては、両面共に既印刷面判定された用紙はそのまま排出される。両面共に既印刷面として判定された用紙の排出先としてはスタックトレイ3もしくは排出部48があるが、スタックトレイ3に排出する方が排出部48に排出するよりも新規に印刷することが出来ないことの判断がし易い。
(ii)第2の動作モードとしては、両面共に既印刷面と判定された用紙は、両面共に既存印刷画像にパターンを上書して排出される。本動作モードでは、両面ともに上書きされているので、どちらの排出部に排出しても容易に新規に印刷することが出来ないことの判断が容易である。
【0025】
(2)両面ともに既印刷面として判定されないときの動作モード
通常の印刷として記録部40にて新規印刷がなされる。
【0026】
(3)第1のセンサ71側が既印刷面として判定されたときの動作モード
記録部40内の用紙搬送路中の、感光体ドラム43上にトナー像を形成する現像部44と、感光体ドラム43上のトナー像を記録紙Pに転写する転写部41と、トナー像が転写された記録紙Pを加熱してトナー像を記録紙Pに定着させる定着部45とを用いて、通常の印刷を行う新規印刷動作を行い、その後上書きする。
即ち、搬送ローラ463を反転させ記録紙Pをスイッチバックさせることにより用紙の反対側を記録部40に送り、既印刷面を印刷側に反転させる。反転された用紙中の既存印刷画像に対し幾つかの既存パターンを上書きすることにより、この既存印刷画像の難読化を行う。その際、第1のセンサ71の性能によっては,既印刷面中の既存印刷画像領域を計算して求め、前記既存印刷画像領域中のみを既存パターンで上書きすることも可能である。
【0027】
(4)第2のセンサ72側が既印刷面として判定されたときの動作モード
この場合は、記録部40の印刷側の面は既に画像が印刷されている既印刷面である。そのため、記録部40内の用紙搬送路中の、現像部44と、転写部41と、定着部45とを用いて、この既存印刷画像に幾つかの既存パターンを上書きすることにより、この既存印刷画像の難読化を行う。その際、第2のセンサ72の性能によっては、既印刷面中の既存印刷画像領域を計算して求め前記既存印刷画像領域中のみを既存パターンで上書きすることも可能である。
次に、搬送ローラ463を反転させ記録紙Pをスイッチバックさせることにより未印刷面を印刷側に反転させる。次に、反転された用紙を記録部40に送り通常の印刷、即ち新規印刷動作を行う。
【0028】
第1のセンサ71と第2のセンサ72には、例えばCIS(Contact Image Sensor)センサ、CCDセンサを用いることができる。第1のセンサ71と第2のセンサ72は、用紙を給紙カセット461から取り出してから印刷を行うまでに、個々の用紙を読み取り、既印刷面を逐次判定する。用紙の既印刷面方向(既印刷面の向く方向)が動的に変わるので、用紙の面に応じて、既印刷面に印刷するパターン印刷と通常の印刷を切り替える必要がある。これらの第1及び第2のセンサ71、72を用いることにより、表裏が混在していても、既印刷面とその反対側の未印刷面を特定して、ミスなく通常(新規)印刷を行うことができる。
【0029】
図3は、複合機1の構成の概略を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、複合機1には、全体の動作制御を行う制御部100が備えられ、この制御部100に、上記スキャナ部51、記録部40、搬送ローラ等46、給紙ローラ等462、操作部47、表示部473、第1のセンサ71、第2のセンサ72、RAM80、ROM90が接続されている。
【0030】
制御部100は、印刷可能エリア指定手段としての新規印刷情報生成部101と、重ね書きパターン決定部102と、用紙制御手段としての給紙制御部103と、第1のセンサ71と第2のセンサ72より得られた個々のセンサ信号から既印刷面の判定を行う既印刷面判定部104と、個々のセンサの既印刷面判定から印刷モードを決定する印刷モード決定部105と、重ね書き印刷用のデータを生成する重ね書き印刷情報生成部106と、印刷制御手段、印刷禁止手段及び透過用紙印刷禁止手段としての印刷制御部107とから構成されている。なお、各部101〜107は、例えばROM90に記憶しているプログラムを、制御部100に読み込んで実行することによって実現されるものである。
【0031】
新規印刷情報生成部101は、新規に印刷される印刷情報をプリンタ言語から生成するものであり、コピー動作の際にはスキャンされた画像データを操作部47の指示により画像加工、例えば、縮小・拡大処理や2ページを1ページ印刷データに加工する。生成された新規印刷情報は、RAM80の記憶領域に一時的に記憶される。
ここで、上記新規印刷情報生成部101と、重ね書きパターン決定部102と、重ね書き印刷情報生成部106と、印刷制御部107は本発明の難読化印刷手段を構成する。
上記難読化印刷手段は、片面に画像印刷されている用紙の既印刷面を特定した後、既印刷面に対して、RAM80などの記憶装置に保持されている複数の印刷パターンの印刷制御を行う。印刷方法としては、各パターンを数回に分けて印刷する方法を使用してもよいし、複数のパターンを合成してその合成画像を用紙の既印刷面に印刷してもよい。
なお、RAM80などの記憶装置に保持されている複数の印刷パターンとして、文字や図形などのパターンがあるが、それらは文字パターン保持部と図形パターン保持部などとして夫々に分けて保持されており、印刷する際は、印刷制御部107により、夫々の保持部から呼び出して印刷処理が行われる。
【0032】
図4は、上記難読化印刷手段で既存印刷画像に重ね書きするパターンの一例を示す図である。
重ね書きパターン決定部102は、図4に示すような重ね書きパターンから、既印刷面上の既存印刷画像に上書き印刷されるべきデータを決定するもので、重ね書きパターンを数種選択する。パターンの選択には、例えば、操作部47と表示部473のGUI(Graphical User Interface)等を用いて、予め登録しておいたパターンの組を選択することで決定することができる。選択された重ね書きパターンは、RAM80の上記新規印刷情報とは異なる記憶領域に一時的に記憶される。
【0033】
給紙制御部103は、給紙カセット461の出口に設置された給紙ローラ等462、又は給紙スタック261’の出口に設置された給紙ローラ462’で記録紙Pを順に給紙するためのもので、上記給紙ローラ等462の動作を制御する。
【0034】
既印刷面判定部104は、第1のセンサ71と第2のセンサ72より得られた個々のセンサ信号から既印刷面の判定を行うもので、個々のセンサの情報から既印刷面を個々に判定する。この用紙の既印刷面を検知する第1のセンサ71と第2のセンサ72と、第1のセンサ71と第2のセンサ72で検知されたセンサ信号(既印刷面検知信号)に基づき既印刷面判定を行う上記既印刷面判定部104は、本発明の既印刷面特定手段を構成する。
【0035】
印刷モード決定部105は、個々のセンサ71、72の既印刷面判定から印刷モードを決定する。個々のセンサの既印刷面判定パターンの組み合わせにより、4つの動作モードを決定し、各モードの動作概要は上記図2に示したプログラムの例で説明した通りである。
【0036】
<文字を重ね書きパターンに適用した例>
図5は、重ね書き印刷用のデータ(文字)の一例を示す図である。
重ね書き印刷情報生成部106は、図5に示すような重ね書き印刷用のデータを生成する。生成された重ね書き印刷用データは、RAM80の上記新規印刷情報と上記重ね書きパターンとは異なる記憶領域に一時的に記憶される。この重ね書き印刷用のデータを、印刷制御部107を用いて既存印刷画像上に重ね書き印刷する。
【0037】
印刷制御部107は、記録部40による印刷処理をはじめ、搬送ローラ43等による記録紙Pの搬送、反転、排紙などを制御するものである。なお、複合機1は、図示しないインターフェイスを介してパーソナルコンピュータ(PC)等と接続され、これらとの間でデータの送受信を行うこともできる。
【0038】
図6は、既存印刷画像(文字)の一例を示す図であり、図7は、既存印刷画像に重ね書き印刷用のデータを印刷した一例である。
具体的に、図6に示すような既存印刷画像が裏紙に存在した場合、この既存印刷画像に対し、印刷制御部107がRAM80中に保存されている図4に示した重ね書き印刷用データを読み出して印刷することで、図7に示すような出力を得ることができる。この一連の処理により、既存印刷画像に対して難読化を行うことができる。
【0039】
第1のセンサ71と第2のセンサ72が単純な既印刷面判定センサである場合、例えば、読取り面に非白領域が存在したときに既印刷面と判定するようなセンサ装置を用いたときは、上記図7に示した文字パターンを重ね書き用に用いることや、図形印刷が既印刷面に印刷されていることを考慮して、以下図8に示す図形用の重ね書き印刷用のデータと上記図7に示した文字用の重ね書き印刷用のデータを組み合わせて生成した文字図形用の重ね書き印刷用のデータを用いてもよい。
単純な既印刷面判定センサとして、判定対象面に光を照射しその光の反射具合を検知するものや、映像として読み取るような非接触式のセンサを用いてもよいし、印刷面の非白部の紙の厚さや白部とトナーが蓄積されている非白部との境目を接触式に求める接触式のセンサを用いてもよい。
【0040】
<図形を重ね書きパターンに適用した例>
次に、図形を用いた重ね書きパターンを適用した例について説明する。図形に対する重ね書きパターンの適用は、上記文字を用いた重ね書きパターン印刷と処理は同じであるが、適用されるべき重ね書きパターンが文字とは異なる。
【0041】
図8は、重ね書きパターン(図形)の例を示した図であり、図9は、重ね書き印刷用のデータ(図形)の例を示す図である。
上記文字を用いた重ね書きパターン印刷の処理の例と同様に、図形パターンのときに重ね書きパターン決定部102は、図8に示すような重ね書きパターンから、既印刷面上の既存印刷画像に上書き印刷されるべきデータを決定し、重ね書きパターンを数種選択する。これらパターンの選択には、例えば、操作部47と表示部473のGUI等を用いて、予め登録しておいたパターンの組を選択することで決定することができる。選択された重ね書きパターンは、RAM80の新規の印刷情報とは異なる記憶領域に一時的に記憶される。
【0042】
重ね書き印刷情報生成部106は、図9に示すような重ね書き印刷用データを生成する。生成された重ね書き印刷用データは、RAM80の新規印刷情報と上記重ね書きパターン決定部102により選択された重ね書きパターンとは異なる記憶領域に一時的に記憶される。この重ね書き印刷用のデータ(図9)を、印刷制御部107によって既存印刷画像上に重ね書き印刷を行う。
【0043】
図10は、用紙の既印刷面上の既存印刷画像(図形)の例を示す図であり、図11は、図10の既存印刷画像に図9の重ね書き印刷用のデータを印刷した例(図形)を示した図である。
例えば、用紙の既印刷面に図10に示すような既存印刷画像があった場合に、この既存印刷画像に対して、印刷制御部107がRAM80中に保存されている図9に示すような重ね書き印刷用データを読み出して印刷することで、図11に示すような出力を取得することができる。これらの一連の処理により、既存印刷画像に対して難読化を行うことができる。
【0044】
なお、本実施形態では、用紙の既印刷面の既存印刷画像に上書きするパターンとして、文字及び図形を例に採って説明を行ったが、具体的には、さらに、(1)既印刷面特定手段により特定された用紙の既印刷面の印刷中に出現する頻度が高い文字や文章を複数用いたもの、(2)文書や単語、数値を組み合わせた1つ以上の文字パターン、(3)前記既印刷面特定手段により特定された用紙の既印刷面の印刷中に出現する頻度が高い図形を1つ以上用いた図形パターンを用いることができる。
【0045】
ここで、出現頻度が高い文字や図形のパターンを用いる場合は、それらの文字や図形を登録する文字登録部及び図形登録部が必要となる。この文字登録部及び図形登録部は、例えば、複合機1に備え付けられた表示装置を用いて文字や図形パターンをインタラクティブに設定する方式を用いてもよいし、登録する文字や図形パターンを予め印刷しておき、その印刷された文字や図形パターンを含む用紙をスキャナを用いてスキャンして、電子データとして読み込み、文字や図形パターンとして上記のRAM80などの文字や図形パターン保持部に保持する方式を用いてもよい。この場合に、複合機1は、スキャナを用いた読込み部が必要となる。
また、インタラクティブに文字パターン群をモード設定などで変化させるときには、モードを選ぶモード設定部が必要となる。
【0046】
また、文書や単語、数値を組み合わせた1つ以上の文字パターンを用いる場合は、各パターンの印刷毎にランダムに数値を変化させたり、文字を変化させたりすることが考えられるが、その際に複合機1には、ランダムにパターンを選択する乱数発生部が必要となる。
【0047】
また、上記難読化印刷手段に用いられている文字や図形などのパターンは、過去に印刷された画像をパターンとしてRAM80などの記憶装置に複数蓄積しておき、それらの蓄積画像パターンを合成パターンとして用紙の既印刷面に印刷することができる。この場合は、印刷対象としてラスタライズされたデータを保持する印刷データ保持部を加えることで構成可能となる。このとき、印刷データを複数ミックスしたデータを保持することが考えられるが、データをミックスするに当たり、例えば、排他的論理和などの論理式を用いた演算を行うミックスデータ生成部が必要となる。
【0048】
また、本実施形態では、既印刷面判定に、第1のセンサ71と第2のセンサ72の両方を用いたが、低コスト化の為にどちらか一方を用いてもよい。第1のセンサ71と第2のセンサ72の片方のみのセンサを搭載する場合は、前記給紙カセット461もしくは表示部473で裏紙使用を設定し、片方のセンサが既印刷面を検知しなければ、センサが感知しない裏側の面を既存印刷画像のある既印刷面とする。
また、既印刷面判定手段に、第1のセンサ71と第2のセンサ72の両方を用いてなくてもよい。既印刷面の方向を指定する指定手段、例えば、給紙カセット461などに備えられたスイッチを用いて用紙の既印刷面の特定を行う。この場合は、全ての用紙の既印刷面の方向(ここで印刷面の「方向」とは、用紙の既印刷面が向く方向をいう)を合わせて、給紙カセット461に格納する必要がある。ここで、上記指定手段と指定手段の指定信号に基づき既印刷面判定を行う上記既印刷面判定部104は、本発明の既印刷面特定手段を構成する。
【符号の説明】
【0049】
1・・・複合機、2・・・本体部、3・・・スタックトレイ、5・・・原稿読取部、6・・・原稿給送部、40・・・記録部、46、463、464・・・搬送ローラ等、47・・・操作部、51・・・スキャナ部、71・・・第1のセンサ、72・・・第2のセンサ、80・・・RAM、90・・・ROM、100・・・制御部、101・・・新規印刷情報生成部、102・・・重ね書きパターン決定部、103・・・給紙制御部、104・・・既印刷面判定部、105・・・印刷モード決定部、106・・・重ね書き印刷情報生成部、107・・・印刷制御部、462・・・給紙ローラ等、473・・・表示部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2004−279760号公報
【特許文献2】特開2003−112439号公報
【特許文献3】特開平9−213991号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙への両面印刷が可能な画像処理装置であって、
供給される用紙の既印刷面を特定する既印刷面特定手段と、
前記既印刷面特定手段により特定された用紙の印刷可能な表面に印刷を行う印刷手段と、
前記既印刷面特定手段により特定された用紙の既印刷面に、複数の上書きパターンの印刷を行う難読化印刷手段と、を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された画像処理装置において、
前記難読化印刷手段は、複数の文字パターン又は複数の図形パターンを、前記既印刷面特定手段により特定された用紙の既印刷面の既存印刷画像に、互いに重なり合うように印刷することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載された画像処理装置において、
前記複数の文字パターンは、前記既印刷面特定手段により特定された用紙の既印刷面の印刷物中に出現する頻度が高い文字や文章を複数用いることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載された画像処理装置において、
前記複数の文字パターンは、文書や単語、数値を組み合わせた1つ以上の文字パターンであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載された画像処理装置において、
前記複数の図形パターンは、前記既印刷面特定手段により特定された用紙の既印刷面の印刷中に出現する頻度が高い図形を1つ以上用いた図形パターンであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載された画像処理装置において、
過去に印刷された画像をパターンとして蓄積する画像蓄積手段を有し、
前記難読化印刷手段が前記用紙の既印刷面の既存印刷画像に重なるように印刷する複数の印刷パターンは、前記画像蓄積手段により蓄積された複数の画像パターンの合成パターンであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載された画像処理装置において、
前記難読化印刷手段は、前記用紙の既印刷面にドットパターンを印刷することを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載された画像処理装置において、
前記既印刷面特定手段は、全ての用紙の既印刷面を同一方向に用紙カートリッジに収納し、既印刷面方向設定部によって前記既印刷面の方向を指定する指定手段を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載された画像処理装置において、
前記既印刷面特定手段は、画像印刷を行う前に、前記用紙の既存印刷画像をセンサで逐次判定するセンサを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
用紙への両面印刷が可能な画像処理方法であって、
供給される用紙の既印刷面を特定する既印刷面特定工程と、
前記既印刷面特定工程において特定された用紙の印刷可能な表面に新規印刷を行う印刷工程と、
前記既印刷面特定工程において特定された用紙の既印刷面の既存印刷画像に、複数の上書きパターンの印刷を行う難読化印刷工程と、を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
請求項10に記載された画像処理方法において、
前記難読化印刷工程は、複数の文字パターン又は複数の図形パターンを、前記既印刷面特定工程により特定された用紙の既印刷面の既存印刷画像に、互いに重なり合うように印刷されることを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
請求項11に記載された画像処理方法において、
前記複数の文字パターンは、前記既印刷面特定工程により特定された用紙の既印刷面の印刷物中に出現する頻度が高い文字や文章を複数用いることを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載された画像処理方法において、
前記複数の文字パターンは、文書や単語、数値を組み合わせた1つ以上の文字パターンであることを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
請求項11ないし13のいずれかに記載された画像処理方法において、
前記複数の図形パターンは、前記既印刷面特定工程により特定された用紙の既印刷面の印刷物中に出現する頻度が高い図形を1つ以上用いた図形パターンであることを特徴とする画像処理方法。
【請求項15】
請求項10ないし14のいずれかに記載された画像処理方法において、
過去に印刷された画像をパターンとして蓄積する画像蓄積工程を有し、
前記既印刷面特定工程により特定された用紙の既印刷面の既存印刷画像に印刷する互いに重なり合う複数の印刷パターンは、前記画像蓄積工程により蓄積された複数の画像パターンの合成パターンであることを特徴とする画像処理方法。
【請求項16】
請求項10ないし15のいずれかに記載された画像処理方法において、
前記既印刷面特定工程により特定された用紙の既印刷面の印刷面に互いに重なり合う複数の印刷パターンを印刷し、更に、ドットパターンを印刷することを特徴とする画像処理方法。
【請求項17】
請求項10ないし16のいずれかに記載された画像処理方法において、
前記既印刷面特定工程は、全ての用紙の既印刷面を同一方向に用紙カートリッジに収納し、既印刷面方向指定手段によって前記既印刷面の方向を指定することを特徴とする画像処理方法。
【請求項18】
請求項10ないし16のいずれかに記載された画像処理方法において、
前記既印刷面特定工程は、画像印刷を行う前に、前記用紙の既印刷面をセンサで逐次判定することを特徴とする画像処理方法。
【請求項19】
コンピュータを、供給される用紙の既印刷面を特定するための既印刷面特定手段と、
前記既印刷面特定手段により特定された用紙の印刷可能な面に印刷を行うための印刷制御手段、及び、
前記既印刷面特定手段により特定された用紙の既印刷面の既存印刷画像に、複数の上書きパターンの印刷を行うための難読化印刷制御手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−183592(P2011−183592A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48966(P2010−48966)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】