説明

画像処理装置、画像処理方法

【課題】波長帯の異なる領域を抽出するための閾値を自動的に決定する。
【解決手段】高空から撮影した地理画像データにおける画素において、第1の波長帯の分光輝度値と、記第1の波長帯とは異なる第2の波長帯の分光輝度値と、に基づいて画素を識別するための正規化指標値を演算する正規化指標演算部と、各画素における前記正規化指標値と出現頻度との関係を求め、クラス内分散とクラス間分散の比である分離度が最大となる正規化指標値を判別分析法により求め、前記画素を識別するための閾値として決定する閾値決定部と、前記閾値と対応する正規化指標値に基づいて、前記第1及び第2の波長帯により区別される画像データの領域を抽出する領域抽出部と、を有することを特徴とする画像処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理技術に関し、特に、高空から撮影した衛星画像等の画像に対して水域と陸域を自動的に分離する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
目視で水底が見える程度の浅い水深を衛星画像から解析する手法が研究されている。近年、衛星画像は、位置精度、空間分解能、スペクトル分解能等が高性能になり、解析結果として得られる水深の精度も向上している。水深を推定する手法を適用する際に、衛星画像において水域のみを抽出する必要がある。水域の抽出のためには、水域と陸域とを分離する境界線(海岸線)の情報が必要である。水域と陸域を分離する情報が得られれば、同時に陸域の抽出も可能となる。
【0003】
従来、陸域と水域とを分離するために境界線を手作業で入力することや、水域もしくは陸域を強調する画像処理を行った指標画像に対して閾値を設定することで水域の抽出を行ってきた。尚、下記特許文献1では、入力画像に対して所定の固定しきい値で2値化を行うために、RGB画像におけるバンドを固定閾値によって水域と陸域とに分離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許公開2005−148906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水域抽出のために、固定閾値を手作業で決定する方法を用いると、作業者によって判断基準が異なるために、結果が作業者に依存するという問題がある。加えて、手作業による閾値決定を行うため、対象地域の面積や海岸線の複雑さに比例して処理時間が増大するという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、波長帯の異なる領域を抽出するための閾値を自動的に決定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、衛星画像から水分指標画像とヒストグラムを作成し、ヒストグラムに対して判別分析法により水域と陸域を分離する閾値を自動決定する。
【0008】
本発明の一観点によれば、高空から撮影した地理画像データにおける画素において、第1の波長帯の分光輝度値と、前記第1の波長帯とは異なる第2の波長帯の分光輝度値と、に基づいて画素を識別するための正規化(水)指標値を演算する正規化(水)指標演算部と、各画素における前記正規化(水)指標値と出現頻度との関係を求め、クラス内分散とクラス間分散の比である分離度が最大となる正規化(水)指標値を判別分析法により求め、前記画素を識別するための2値化のため閾値として決定する閾値決定部と、前記閾値と対応する正規化(水)指標値に基づいて、前記第1及び第2の波長帯により区別される画像データの領域を抽出する領域抽出部と、を有することを特徴とする画像処理装置が提供される。
【0009】
上記装置により、波長帯の異なる領域を抽出するための閾値を自動的に決定することができる。
【0010】
さらに、前記第1及び第2の波長帯により区別される画像データの領域内に存在する波長の異なる微小領域を、当該画像データの領域内の分光輝度値を有する画素とする微小領域除去部を有することが好ましい。
【0011】
前記閾値決定部は、前記各画素における前記正規化(水)指標値と出現頻度との関係を正規化(水)指標値ヒストグラムとして求め、前記クラス内分散と前記クラス間分散とのヒストグラムのうち、頻度が最大となる走査起点となる前記正規化(水)指標値が負であるときには、走査方向を正方向とし、走査起点となる前記正規化(水)指標値が正であるときには、走査方向を負方向とすることが好ましい。これにより、起点が−1と+1よりもゼロに近くなり、−1や+1を起点とする一般的な判別分析法よりも走査する範囲が狭くなるため、効率的である。
【0012】
前記閾値決定部は、直前に抽出した無視するべき微小領域を除外した前記正規化(水)指標値ヒストグラムを作成し、前記正規化(水)指標値ヒストグラムに判別分析法を適用して閾値を決定する処理を繰り返して閾値を決定するようにしても良い。これにより、衛星画像を利用する処理において、判別分析法による結果に影響を与える要素を考慮し、より妥当な水分指標値の閾値を自動的に決定することができる。
【0013】
本発明の他の観点によれば、高空から撮影した地理画像データにおける画素において、第1の波長帯の分光輝度値と、前記第1の波長帯とは異なる第2の波長帯の分光輝度値と、に基づいて画素を識別するための正規化(水)指標値を演算する正規化(水)指標演算ステップと、各画素における前記正規化(水)指標値と出現頻度との関係を求め、クラス内分散とクラス間分散の比である分離度が最大となる正規化(水)指標値を判別分析法により求め、前記画素を識別するための2値化のための閾値として決定する閾値決定ステップと、前記閾値と対応する正規化(水)指標値に基づいて、前記第1及び第2の波長帯により区別される画像データの領域を抽出する領域抽出ステップと、を有することを特徴とする画像処理方法が提供される。
【0014】
本発明は、上記の画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであっても良く、当該プログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体であっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、波長帯の異なる領域の境界線を画定するための2値化を行うための閾値を、自動的かつ精度良く決定することが可能となるため、作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態による画像解析装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】水域と陸域とを含む衛星画像の一例を示す図である。
【図3】図2の画像に対するNDWIのヒストグラム図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態例による水域抽出処理のうち、微小水域を考慮しない水域抽出処理の流れを示すフローチャート図である。
【図5】水域抽出処理後の衛星画像の一例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態例による水域抽出処理であって、図1の衛星画像に対し、無視するべき微小水域を含むNDWIのヒストグラムと無視するべき微小水域を含まないNDWIヒストグラムを比較して示した図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態例による水域抽出処理のうち、微小水域を考慮した水域抽出処理の流れを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態による画像処理装置について、水域と陸域とを含む衛星画像(地理画像)の処理を例にして説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態による画像処理装置の一構成例を示す機能ブロック図である。図1に示す画像処理装置は、処理装置10と、記憶装置20と、入出力装置30と、を有している。処理装置(CPU)10は、画像処理部40を有しており、画像処理部40は、NDWI(正規化水指標: Normalized Difference Water Index)演算部100と、閾値決定部200と、水域抽出部300と、微小領域除去部400と、を有している。記憶装置20は、衛星画像データを受け取り、衛星画像データ記憶部21と、NDWI演算式記憶部22と、閾値記憶部23と、水域データ記憶部24と、を有している。さらに、CPU10に処理を実行させるためのプログラムを記憶しているのが一般的である。入出力装置30は、入力装置31と、表示装置32と、プリンタ33と、を有している。その他、通信インターフェイスなどを有しているのが一般的である。
【0019】
図2は、処理対象の衛星画像501であり、水域502と陸域503、水域と陸域の境界である海岸線504が表示されている。この画像501から水域502を抽出する。
【0020】
図3は、対象画像を変換して得られる水分指標ヒストグラムの一例を示す図である。本明細書において取り扱う水分指標は、例えば、一般的にNDWIと呼ばれる指標である。NDWIは、衛星画像等の各画素中に付与された複数の波長帯バンドの値をエネルギーの単位とする分光放射輝度値に変換した値より、下記の(1)式に基づいて得られる値である。
【0021】
NDWI=(短波長帯の分光放射輝度値 - 長波長帯の分光放射輝度値)/(短波長帯の分光放射輝度値 + 長波長帯の分光放射輝度値) (1)
【0022】
ここで、波長とは光学センサにより観測された、地表が反射する太陽光の波長である。人間の目は、可視光の波長帯を感じることができ、可視光の波長範囲内において短い波長の光を青い光と認識し、可視光の波長範囲内において長い波長の光を赤い光と認識する。光学センサを備えた人工衛星(光学衛星と称する。)は、光学センサによって観測可能な波長が異なるが、多くの光学衛星が搭載するセンサは光の3原色に近い、Blue(青)、Green(緑)、Red(赤)の波長帯と近赤外線であるNIRの4バンドを観測するセンサである。また、分光放射輝度値への計算式は、撮影するセンサによって異なる。
【0023】
具体的なNDWIの計算をする場合は、例えば、米国のDigitalGlboe社が運用している8バンドセンサを搭載するWorldView-2衛星が撮影した画像は短波長帯にCoastalバンドの分光放射輝度値、長波長帯にNIR2バンドの分光放射輝度値を代入する。同様に、米国のDigitalGlobe社が運用するQuickBirdや、米国のGeoEye社が運用するGeoEye-1やIKONOSなどの4バンドセンサを搭載する衛星が撮影した画像は、短波長帯にBlueバンドの分光放射輝度値、長波長帯にNIRバンドの分光放射輝度値を代入する。
【0024】
NDWIは、その値が大きいほど地表水分量が多いとされ、閾値を設定して陸域と水域とを分離するために利用される。また、数式(1)からNDWIは、−1〜+1までの値をとる。
【0025】
陸域と水域とが映っている画像の場合、画像の例えば全画素からNDWIを計算し、NDWIの出現頻度(画素数に対応)を集計したヒストグラムは大きく2つの山を形成する(601)。NDWIの負数範囲にある山(602)には陸域の画素が集中し、もう一方の正数範囲の高い山(603)には水域の画素が集中する。このとき、水域と陸域とを分離する最適なNDWIの閾値は、2つの山の谷間(604で示す破線)となる。
【0026】
図4は、本実施の形態による水域抽出処理の流れを示すフローチャート図である。まず、画像処理部40のうちのNDWI演算部100が、入出力装置30により入力され、例えば衛星画像データ記憶部21に記憶された画像データ(対象画像)を分光放射輝度値に変換し、さらに、NDWI演算式記憶部22に記憶された演算式(1)によりNDWI画像(画素毎のNDWI値)を演算により求める(ステップS1)。尚、ここで扱う画像の値は符号付き浮動小数とする。次に、図2のような水域と陸域との両者が映る画像におけるNDWI値は、図3のように出現頻度が正の領域と負の領域とに大きく偏る性質があり、ヒストグラム上に2つの山を形成する。このとき2つの領域を分離する最適なNDWI値は2つの山の谷間である。この谷間、すなわちNDWIの閾値を判別分析法により決定する。
【0027】
閾値決定部200は、判別分析法により、閾値を決定する(ステップS2)。
判別分析法は、大津の二値化とも呼ばれる。これは、2つの正規分布の山(クラス)を形成するヒストグラムを仮定し、クラス内分散とクラス間分散の比である分離度が最大となる閾値を求める方法である。このときの閾値は2つのヒストグラムの山の間にある谷となる。
【0028】
一般的な判別分析法は、指標の最小値から最大値、または逆方向を走査する手法である。ここではヒストグラムの範囲が−1から+1までであることと、ほぼ正と負の範囲に山が一つずつあるという性質を利用し、効率的な走査の起点と方向とを決定する。より具体的には、まず走査の起点となるNDWIは最も頻度の高いNDWI(図3では、603)とし、ヒストグラム生成時に特定する。この起点は、ヒストグラムにある2つの山の高い方の頂上を指すNDWIである。次に、起点となるNDWIが負であるときには、走査方向を正方向とする。逆に起点となるNDWIが正であるときには、走査方向を負方向とする。これにより、起点が−1と+1よりもゼロに近くなり、−1や+1を起点とする一般的な判別分析法よりも走査する範囲が狭くなるため、効率的である。
【0029】
尚、陸域に対して水域の面積が大きな画像や逆に水域に対して陸域の面積が大きな画像を同様に対象としたとき、NDWIヒストグラムが図3のような明確な谷を形成しないことがある。明確な谷がないヒストグラムに対して判別分析法は期待した閾値を決定しにくい場合がある。しかしながら、NDWIのゼロ付近に目的とした閾値があるヒストグラムの性質を利用することで、谷がわかりにくい場合でも、NDWIのゼロ付近を詳細に見ることで、NDWI閾値を安定して決定することができる。決定した閾値は閾値記憶部23に記憶される。
【0030】
元画像とNDWI画像中の全画素は一意に対応する。水域抽出部300は、対応するNDWIと閾値記憶部23に記憶されたNDWI閾値とを比較し、NDWI閾値より低いNDWIを持つ画素は陸域とみなし、その画素の全バンドを無視する値に代入することで、陸域の画素値を消去する。その結果、画像には水域の情報のみが抽出されることとなる。尚、例として無視する画素には全バンドに−999というとりえない値を代入する(ステップS3)。
【0031】
NDWI閾値による水域抽出した画像501は、水域502と陸域503とに分離され、海岸線504が現れる。水域を水域データ記憶部24に記憶する。
【0032】
しかし、実際の地形では、抽出した水域画像には水田や溜池等、対象とする浅水域ではない無視すべき微小な水域(微小領域)が検出される。そこで、微小領域除去部400は、微小な水域505a・505bに、陸域として無視できる値を代入することで、陸域とみなす。この際、まず、3×3の画素における8連結のラベリング処理アルゴリズムを、水域抽出した画像に対して適用する。一般的に、8連結のラベリング処理とは、2値化された画像に対して適用される。例えば、0と1とで2値化された画像中について1の画素をラベリングするとき、1の画素の周囲8近傍に存在する1の画素を同じグループとする。全ての1の画素について処理した結果、複数のグループが形成され、1の画素は必ず1つのグループに属する。ここでは、全バンドに無視する値が代入された画素とそれ以外の画素との2種類に2値化された画像とみなして処理を行うことで、8連結のラベリング処理を行うとともに、各グループに所属する画素数を集計する。例えば、所属する画素数が最も多いグループの半分以下の所属画素数のグループを無視するべき微小水域とみなし、そのグループに所属する画素の全バンドに−998を代入する(ステップS4)。尚、ステップS4は、任意の処理であり、ステップS3までで処理を終了しても良い。
【0033】
以上の処理により、衛星画像の水域を抽出することができる。水域を、表示装置32、プリンタ33などで出力することができる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施の形態による衛星画像処理技術について説明する。
第1の実施の形態で説明したように、図4に示す処理を行うことで、期待した水域抽出を実現することができるが、閾値を決定する際に用いるNDWIヒストグラム601(図3)には、前述した無視するべき微小な水域が含まれているため、無視するべき微小な水域がNDWIヒストグラムに影響を与えるほど多く存在する場合には、期待した高精度の水域抽出ができない程度にNDWI閾値決定処理に影響を与える可能性がある。本実施の形態では、この点を考慮した処理を行う。図6は、図3に対応する図であり、図7は、図4に対応する図である。
【0035】
まず、NDWI画像生成部100が、入力された画像データ(対象画像)を分光放射輝度値に変換し、さらにNDWI画像を生成する(ステップS11)。そして、マスク画像として対象画像と同じサイズの1バンドのグレースケール画像を作成する。このとき、各画素には初期値を代入しておく、ここでは具体例として−1とする(ステップS12)。さらに、対象画像をコピーして作業用画像を生成する(ステップS13)。
【0036】
対象画像、NDWI画像、マスク画像、作業用画像は同じサイズであり、各画像中の各画素は一意に対応する。ここでマスク画像において無視すべき微小水域を表す値である998ではない画素に対応するNDWI画像中の画素だけを用いて、閾値決定部200が、NDWIヒストグラムを作成する。マスク画像生成直後、全画素の全バンドは−1であるため、初回は全画素を用いてNDWIヒストグラム605aを作成することになる。陸域と水域とが映っている場合は、NDWIの負数範囲にある山602aには陸域の画素が集中し、もう一方の正数範囲の高い山603aには水域の画素が集中する。最適な水域と陸域とを分離するNDWIの閾値は2つの山の谷間604aとなる。NDWI閾値は図4(ステップS2)と同様に判別分析法により決定する(ステップS14)。
【0037】
作業用画像とNDWI画像中の全画素は一意に対応する。対応するNDWIとNDWI閾値とを比較し、NDWI閾値より低いNDWIを持つ画素は陸域とみなし、対応する作業用画像の画素の全バンドを無視する値に代入し、陸域の画素値を消去する。その結果、画像には水域の情報のみが抽出されることとなる。尚、例として無視する画素には全バンドに−999を代入する(ステップS15)。
【0038】
NDWI閾値による水域抽出した画像501は、水域502と陸域503に分離され、海岸線504が現れる。しかし、抽出した水域画像には水田や溜池等、対象とする浅水域ではない無視すべき微小な水域505a・505bが検出される。そこで、図4(ステップS4)と同様に、微小な水域も陸域として無視する値を代入する。ここでは具体例として、作業用画像に対して無視するべき微小な水域に対応する画素の全バンドに−998を代入する(ステップS16)。
【0039】
ここまで、作業用画像上は、水域の画素値と陸域の画素値を表す−999、無視するべき微小な水域を表す−998によって表現されている。この作業用画像とマスク画像の対応する画素を比較し、一方の画素が水域であり、かつ、他方の画素が水域以外である画素数を集計する。この条件に合った画素数がゼロであったとき、作業用画像上の水域とマスク画像上の水域とが一致する。作業用画像上の水域とマスク画像上の水域とが一致した場合(ステップS17でYes)、処理を終了する(終了)。このときの作業用画像が水域を抽出した結果画像とする。条件に合った画素数がゼロではない場合(ステップS17でNo)、作業用画像をマスク画像とする(ステップS18)。そして再度、対象画像をコピーして作業用画像を生成し(ステップS13に戻り)、同様の処理を繰り返す。
【0040】
ここで、例えば、マスク画像生成(ステップS12)直後のときには、マスク画像上の全画素の全バンドは−1であるため、条件に合った画素数はゼロとならない。従って、作業用画像をマスク画像とし、作業用画像生成(ステップS13)を再度実施する。2回目以降の判別分析法による閾値決定(ステップS14)は、直前に抽出した無視するべき微小な水域を除外したNDWIヒストグラム(601a)を形成する(605aから601aになる)。この無視するべき微小な水域を除外したNDWIヒストグラム(601a)に判別分析法を適用して、無視するべき微小な水域の影響を考慮したNDWI閾値決定する。ここでは、水域のピークが605aから601aに近づき、閾値も、604aから606aに近づく。
【0041】
以後の処理では、前回と同様に閾値適用による水域抽出と作業用画像の更新(ステップS15)、水域から微小水域を除外し、作業用画像を更新する(ステップS16)。そして作業用画像上の水域画素とマスク画像上の水域画素が一致していれば、処理を終了し、一致していなければ、作業用画像をマスク画像として再度処理を繰り返す(ステップS17、S18)。最終的には、微小領域の影響が小さくなり、閾値も604aから606aになる。
【0042】
尚、ステップS17において、作業用画像上の水域画素とマスク画像上の水域画素は完全一致とせず、作業用画像上の水域画素数の数%以下ならば一致したと条件を緩めてもよい。
【0043】
以上の方法を用いることで、水域と陸域の境界線、もしくは、境界線を決定するための閾値を作業者の判断基準に依存せず、一意に決定することが可能となる。また、処理の大部分を計算機により行うことができるため、作業効率の大幅な改善が可能となる。
【0044】
さらに、本発明では有限範囲が±1の水分指標を採用することで、計算機上のヒストグラム処理を簡略化・効率化できる。
【0045】
また、上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0046】
例えば、NDWI(正規化水指標: Normalized Difference Water Index)に代えて、正規化土壌指標(NDSI)、正規化植生指標(NDVI)を用いることで、陸域の抽出、森林域等の抽出を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、画像処理装置に利用できる。
【符号の説明】
【0048】
10…処理装置、20…記憶装置、30…入出力装置、40…画像処理部、100…NDWI演算部、200…閾値決定部、300…水域抽出部、400…微小領域除去部、21…衛星画像データ記憶部、22…NDWI演算式記憶部、23…閾値記憶部、24…水域データ記憶部、31…入力装置、32…表示装置、33…プリンタ、501…対象衛星画像、502…水域、503…陸域、504…海岸線、505a・505b…微小水域、、601…NDWIヒストグラム、602…陸域を主成分とする範囲、603…水域を主成分とする範囲、604…閾値とするヒストグラムの谷間、601a…微小水域を除外したNDWIヒストグラム、602a…陸域を主成分とする範囲、603a…水域を主成分とする範囲、604a…微小水域を含むときの閾値とするヒストグラムの谷間、605a…微小水域を含むNDWIヒストグラム、606a…微小水域を除外したときの閾値とするヒストグラムの谷間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高空から撮影した地理画像データにおける画素において、第1の波長帯の分光輝度値と、前記第1の波長帯とは異なる第2の波長帯の分光輝度値と、に基づいて画素を識別するための正規化指標値を演算する正規化指標演算部と、
各画素における前記正規化指標値と出現頻度との関係を求め、クラス内分散とクラス間分散の比である分離度が最大となる正規化指標値を判別分析法により求め、前記画素を識別するための2値化のため閾値として決定する閾値決定部と、
前記閾値と対応する正規化指標値に基づいて、前記第1及び第2の波長帯により区別される画像データの領域を抽出する領域抽出部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
さらに、前記第1及び第2の波長帯により区別される画像データの領域内に存在する波長の異なる微小領域を、当該画像データの領域内の分光輝度値を有する画素とする微小領域除去部を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記閾値決定部は、前記各画素における前記正規化指標値と出現頻度との関係を正規化指標値ヒストグラムとして求め、前記クラス内分散と前記クラス間分散とのヒストグラムのうち、頻度が最大となる走査起点となる前記正規化指標値が負であるときには、走査方向を正方向とし、走査起点となる前記正規化指標値が正であるときには、走査方向を負方向とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記閾値決定部は、
直前に抽出した無視するべき微小領域を除外した前記正規化指標値ヒストグラムを作成し、前記正規化指標値ヒストグラムヒストグラムに判別分析法を適用して閾値を決定する処理を繰り返して閾値を決定することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
高空から撮影した地理画像データにおける画素において、第1の波長帯の分光輝度値と、前記第1の波長帯とは異なる第2の波長帯の分光輝度値と、に基づいて画素を識別するための正規化指標値を演算する正規化指標演算ステップと、
各画素における前記正規化指標値と出現頻度との関係を求め、クラス内分散とクラス間分散の比である分離度が最大となる正規化指標値を判別分析法により求め、前記画素を識別するための2値化のための閾値として決定する閾値決定ステップと、
前記閾値と対応する正規化指標値に基づいて、前記第1及び第2の波長帯により区別される画像データの領域を抽出する領域抽出ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−89021(P2013−89021A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228940(P2011−228940)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000233055)株式会社日立ソリューションズ (1,610)
【Fターム(参考)】