説明

画像処理装置、画像処理装置の制御方法及び画像処理装置の制御プログラム

【課題】ハードウェアの動作実行中におけるレジスタ値の変更を容易且つ迅速に認識可能とすること。
【解決手段】省電力状態への遷移が可能な画像処理装置であって、省電力状態において発生した処理の命令の情報を記憶媒体に記憶させると共に記憶媒体に記憶された処理の命令の情報に基づいて処理の実行を制御するデータ処理部201と、省電力状態への遷移及び省電力状態からの復帰を制御する省エネ処理部203と、画像処理装置の動作状態を識別する状態監視部204と、複数種類の処理の優先度を示す情報を、画像処理装置の動作状態に応じて記憶している優先度テーブル206とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理装置の制御方法及び画像処理装置の制御プログラムに関し、特に、複数の処理がまとめて実行される際の処理順序の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の電子化が推進される傾向にあり、電子化された情報の出力に用いられるプリンタやファクシミリ及び書類の電子化に用いるスキャナ等の画像処理装置は欠かせない機器となっている。このような画像処理装置は、撮像機能、画像形成機能及び通信機能等を備えることにより、プリンタ、ファクシミリ、スキャナ、複写機として利用可能な複合機として構成されることが多い。
【0003】
このような画像処理装置は、例えば、ファクシミリ装置のように原稿画像を読み取りつつ送信する直接送信機能や、読み取った原稿画像をメモリに蓄積した後、その画像情報を読み出しつつ送信するメモリ送信機能、蓄積した画像情報を指定された時刻になってから送信する時刻指定送信機能等、様々な機能が搭載されて多機能化が進んでいる。
【0004】
また、様々な機能を組み合わせて用いる場合に、夫々の機能についての優先順位が設定されたテーブルに基づいて各機能を実行する順序を判断することにより、組み合わせ機能の設定を管理する方法が既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各機能の優先度や、実行の要否は、装置の動作状況やタイミングに応じて変化することが考えられる。しかしながら、特許文献1に開示された方法においては、設定された優先度のテーブルに従って一律に判断されるため、装置の動作状況により優先するべき機能が後回しにされたり、実行するべき機能がキャンセルされたりする可能性がある。
【0006】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、装置の動作状況に応じた組み合わせ機能の設定管理を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、装置の一部への電力供給を停止した省電力状態への遷移が可能な画像処理装置であって、前記省電力状態において、前記画像処理装置が実行するべきものとして発生した処理の命令の情報を記憶媒体に記憶させる処理命令格納部と、前記省電力状態への遷移及び前記省電力状態からの復帰を制御する省電力制御部と、前記画像処理装置の動作状態を識別する動作状態識別部と、前記記憶媒体に記憶された処理の命令の情報に基づいて処理の実行を制御する処理実行制御部と、前記画像処理装置が実行するべき複数種類の処理の優先度を示す情報を、前記画像処理装置の動作状態に応じて記憶している処理優先度情報記憶部とを含み、前記省電力制御部は、前記画像処理装置を前記省電力状態から復帰させるように制御すると、前記識別された動作状態に応じた前記優先度の情報に従った順序で、前記処理の命令の情報が記憶されている処理を前記処理実行制御部に実行させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の態様は、装置の一部への電力供給を停止した省電力状態への遷移が可能な画像処理装置の制御方法であって、前記省電力状態において、前記画像処理装置が実行するべきものとして発生した処理の命令の情報を記憶媒体に記憶させ、前記画像処理装置を前記省電力状態から復帰させるように制御した際に、前記画像処理装置の動作状態を識別し、前記画像処理装置が実行するべき複数種類の処理の優先度を示す情報が、前記画像処理装置の動作状態に応じて記憶されている処理優先度情報に基づき、前記識別された動作状態に応じた前記優先度の情報に従った順序で、前記処理の命令の情報が記憶されている処理を前記処理実行制御部に実行させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の更に他の態様は、装置の一部への電力供給を停止した省電力状態への遷移が可能な画像処理装置の制御プログラムであって、前記省電力状態において、前記画像処理装置が実行するべきものとして発生した処理の命令の情報を記憶媒体に記憶させるステップと、前記画像処理装置を前記省電力状態から復帰させるように制御した際に、前記画像処理装置の動作状態を識別するステップと、前記画像処理装置が実行するべき複数種類の処理の優先度を示す情報が、前記画像処理装置の動作状態に応じて記憶されている処理優先度情報に基づき、前記識別された動作状態に応じた前記優先度の情報に従った順序で、前記処理の命令の情報が記憶されている処理を前記処理実行制御部に実行させるステップとを前記画像処理装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置の動作状況に応じた組み合わせ機能の設定管理を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像処理装置の機能構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像処理装置の主制御部の機能構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るタイマリストテーブルの内容を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る優先度テーブルの内容を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るタイマ処理履歴テーブルの内容を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係る画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係る優先度に応じた処理の並び替え態様を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係る優先度に応じた処理の並び替え態様を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係るジョブ実行動作の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、プリンタ、スキャナ、複写機等の機能を含む複合機(MFP:Multi Function Peripheral)としての画像処理装置において、プールされた複数の処理を有るタイミングで順次実行する際の制御について説明する。本実施形態に係る画像処理装置は、装置各部への電源供給を停止することにより消費電力が削減された状態である省エネモードへの遷移が可能であり、そのような状態の変化に応じた装置制御が本実施形態に係る要旨の1つである。
【0013】
図1は、本実施形態に係る画像処理装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る画像処理装置1は、一般的なサーバやPC(Personal Computer)等の情報処理端末と同様の構成に加えて、画像形成出力に係るエンジンを有する。即ち、本実施形態に係る画像処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、エンジン40、HDD(Hard Disk Drive)50及びI/F60がバス90を介して接続されている。また、I/F60にはLCD(Liquid Crystal Display)70及び操作部80が接続されている。
【0014】
CPU10は演算装置であり、画像処理装置1全体の動作を制御する。RAM20は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM30は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。
【0015】
エンジン40は、画像形成出力を実行するためのプリントエンジンや、原稿を読み取るためのスキャナユニットである。この他、エンジン40としては、プリントエンジンが画像形成出力を実行するための画像情報を生成するハードウェアアクセラレータが含まれる。
【0016】
HDD50は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納されている。I/F60は、バス90と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD70は、ユーザが画像処理装置1の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部80は、キーボードやマウス等、ユーザが画像処理装置1に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
【0017】
このようなハードウェア構成において、ROM30やHDD50若しくは図示しない光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAM20に読み出され、CPU10がそれらのプログラムに従って演算を行うことによりソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係る画像処理装置1の機能を実現する機能ブロックが構成される。
【0018】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る画像処理装置1の機能構成について説明する。図2は、本実施形態に係る画像処理装置1の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係る画像処理装置1は、コントローラ100、ADF(Auto Documennt Feeder:原稿自動搬送装置)110、スキャナユニット120、排紙トレイ130、ディスプレイパネル140、給紙テーブル150、プリントエンジン160、排紙トレイ170及びネットワークI/F180を有する。
【0019】
また、コントローラ100は、主制御部101、エンジン制御部102、入出力制御部103、画像処理部104及び操作表示制御部105を有する。図2に示すように、本実施形態に係る画像処理装置1は、スキャナユニット120、プリントエンジン160を有する複合機として構成されている。尚、図2においては、電気的接続を実線の矢印で示しており、用紙の流れを破線の矢印で示している。
【0020】
ディスプレイパネル140は、画像処理装置1の状態を視覚的に表示する出力インタフェースであると共に、タッチパネルとしてユーザが画像処理装置1を直接操作し若しくは画像処理装置1に対して情報を入力する際の入力インタフェース(操作部)でもある。ネットワークI/F180は、画像処理装置1がネットワークを介して他の機器と通信するためのインタフェースであり、Ethernet(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)インタフェースが用いられる。
【0021】
スキャナユニット120は原稿を読み取るための撮像装置であり、プリントエンジン160は、用紙に対して画像形成出力を実行するためのプロッタエンジンであり、いずれもエンジン40によって実現される。
【0022】
コントローラ100は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、ROM30や不揮発性メモリ並びにHDD50や光学ディスク等の不揮発性記録媒体に格納されたファームウェア等の制御プログラムが、RAM20等の揮発性メモリ(以下、メモリ)にロードされ、CPU10がそれらのプログラムに従って演算を行うことにより構成されるソフトウェア制御部と、エンジン40として実現されるハードウェアアクセラレータ等によってコントローラ100が構成される。コントローラ100は、画像処理装置1全体を制御する制御部として機能する。
【0023】
主制御部101は、コントローラ100に含まれる各部を制御する役割を担い、コントローラ100の各部に命令を与える。主制御部101が担う役割のうち、省エネモードへの遷移や省エネモードからの復帰に際する処理が、本実施形態の要旨に係る処理である。これについては後に詳述する。
【0024】
エンジン制御部102は、プリントエンジン160やスキャナユニット120等を制御若しくは駆動する駆動手段としての役割を担う。入出力制御部103は、ネットワークI/F180を介して入力される信号や命令を主制御部101に入力する。また、主制御部101は、入出力制御部103を制御し、ネットワークI/F180を介して他の機器にアクセスする。
【0025】
画像処理部104は、主制御部101の制御に従い、入力された印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成する。この描画情報とは、画像形成部であるプリントエンジン160が画像形成動作において形成すべき画像を描画するための情報である。また、印刷ジョブに含まれる印刷情報とは、PC等の情報処理装置にインストールされたプリンタドライバによって画像処理装置1が認識可能な形式に変換された情報であり、本実施形態においては、PDL(Page Description Language)によって記述された情報である。
【0026】
画像処理部104は、CPU10がプログラムに従って演算を行うことにより構成されるソフトウェアによっても実現される他、上述したようなハードウェアアクセラレータによっても実現される。操作表示制御部105は、ディスプレイパネル140に情報表示を行い若しくはディスプレイパネル140を介して入力された情報を主制御部101に通知する。
【0027】
画像処理装置1がプリンタとして動作する場合は、まず、入出力制御部103がネットワークI/F180を介して印刷ジョブを受信する。入出力制御部103は、受信した印刷ジョブを主制御部101に転送する。主制御部101は、印刷ジョブを受信すると、画像処理部104を制御して、印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成させる。
【0028】
画像処理部104によって描画情報が生成されると、エンジン制御部102は、生成された描画情報に基づき、給紙テーブル150から搬送される用紙に対して画像形成を実行する。即ち、プリントエンジン160が画像形成部として機能する。プリントエンジン160の具体的態様としては、インクジェット方式による画像形成機構や電子写真方式による画像形成機構等を用いることが可能である。プリントエンジン160によって画像形成が施された文書は排紙トレイ170に排紙される。
【0029】
画像処理装置1がスキャナとして動作する場合は、ユーザによるディスプレイパネル140の操作若しくはネットワークI/F180を介して外部のクライアント用の情報処理端末等から入力されるスキャン実行指示に応じて、操作表示制御部105若しくは入出力制御部103が主制御部101にスキャン実行信号を転送する。主制御部101は、受信したスキャン実行信号に基づき、エンジン制御部102を制御する。
【0030】
エンジン制御部102は、ADF110を駆動し、ADF110にセットされた撮像対象原稿をスキャナユニット120に搬送する。また、エンジン制御部102は、スキャナユニット120を駆動し、ADF110から搬送される原稿を撮像する。また、ADF110に原稿がセットされておらず、スキャナユニット120に直接原稿がセットされた場合、スキャナユニット120は、エンジン制御部102の制御に従い、セットされた原稿を撮像する。即ち、スキャナユニット120が撮像部として動作する。
【0031】
撮像動作においては、スキャナユニット120に含まれるCCD等の撮像素子が原稿を光学的に走査し、光学情報に基づいて生成された撮像情報が生成される。エンジン制御部102は、スキャナユニット120が生成した撮像情報を画像処理部104に転送する。画像処理部104は、主制御部101の制御に従い、エンジン制御部102から受信した撮像情報に基づき画像情報を生成する。画像処理部104が生成した画像情報はHDD40等の画像処理装置1に装着された記憶媒体に保存される。
【0032】
画像処理部104によって生成された画像情報は、ユーザの指示に応じてそのままHDD40等に格納され若しくは入出力制御部103及びネットワークI/F180を介して外部の装置に送信される。即ち、スキャナユニット120及びエンジン制御部102が画像入力部として機能する。
【0033】
また、画像処理装置1が複写機として動作する場合は、エンジン制御部102がスキャナユニット120から受信した撮像情報若しくは画像処理部104が生成した画像情報に基づき、画像処理部104が描画情報を生成する。その描画情報に基づいてプリンタ動作の場合と同様に、エンジン制御部102がプリントエンジン160を駆動する。
【0034】
次に、本実施形態に係る主制御部101に含まれる機能の構成について、図3を参照して説明する。図3に示すように、本実施形態に係る主制御部101は、データ処理部201、タイマ処理部202、省エネ処理部203、状態監視部204、タイマリストテーブル205、優先度テーブル206及びタイマ処理履歴テーブル207を含む。
【0035】
データ処理部201は、主制御部101におけるデータ処理を制御する。タイマ処理部202は、タイマのカウントやカウント値に基づく処理を制御する。省エネ処理部203は、省エネモードへの遷移や省エネモードからの復帰並びに省エネモードからの復帰時における動作を制御する省電力制御部である。状態監視部204は、省エネモード、通常モード、エラー待機モード等、画像処理装置1の状態を監視すると共に、省エネモードへの遷移や省エネモードからの復帰の要因を監視する動作状態識別部である。
【0036】
本実施形態に係る画像処理装置1は、上述したように、省エネモードへの遷移が可能である。ここで、省エネモードへの遷移及び省エネモードからの復帰の制御態様として、設定された期間処理が発生しなかった場合に省エネモードへ遷移し、省エネモードにおいて印刷ジョブ等を受信することにより処理が発生したら省エネモードから復帰する態様が主に用いられている。
【0037】
しかしながら、このような態様の場合、装置に送信される印刷ジョブの頻度によっては、短期間の間に省エネモードへの遷移及び省エネモードからの復帰が繰り返され、省電力効果が得られない場合がある。特に、入力された印刷ジョブを即座に実行する必要がない場合、このような制御態様は非効率である。
【0038】
これに対して、本実施形態に係る画像処理装置1においては、省エネモードの間に受け付けた処理要求のコマンドを記憶媒体に格納しておき、予め定められたタイミングにおいてまとめて実行することにより、短期間の間に省エネモードへの遷移及び省エネモードからの復帰が繰り返されるようなことを回避する。タイマリストテーブル205は、このような制御を実現するために、画像処理装置1が実行する夫々の処理内容毎に、上記予め定められたタイミングを定めるための情報が関連付けられたテーブルである。
【0039】
図4は、本実施形態に係るタイマリストテーブル205の内容を示す図である。図4に示すように、本実施形態に係るタイマリストテーブル205は、夫々の処理を識別する“ID”及び“処理名”、夫々の処理を登録したモジュールを示す“登録モジュール”及び省エネ復帰の間隔を示す“設定時間”が関連付けられたテーブルである。換言すると、タイマリストテーブル205は、画像処理装置1が実行する処理の種類毎に、その処理を実行するために省エネモードから復帰するタイミングを設定するための処理別省電力復帰タイミング情報である。
【0040】
図4において、例えば、“リモート印刷”は、ネットワークを介して登録された処理であり、30000[ms]毎に省エネ復帰して、記憶媒体にプールされたコマンド、即ち印刷ジョブに基づいて印刷処理を実行することを示す。また、“主走査メンテナンス”は、エンジン40によって登録された処理であり、60000[ms]毎に省エネ復帰して、主走査方向の位置合わせなどのメンテナンスを実行することを示す。
【0041】
優先度テーブル206は、上述したように設定されたタイミングにおいてまとめて処理を実行する際の夫々の処理の実行優先度や、同時に実行することが不可能な処理の組み合わせ等が記述されたテーブルである。図5に示すように、本実施形態に係る優先度テーブルにおいては、夫々の処理を識別する“ID”及び“処理名”、夫々の処理の“優先度”が関連付けられている。即ち、優先度テーブル206が、処理優先度情報記憶部として機能する。
【0042】
更に、図5に示すように、本実施形態に係る優先度テーブルにおいては、夫々の処理について、“最低経過時間”及び“同時実行不可機能”の情報が関連付けられている。“最低経過時間”は、夫々の処理について、最後に実行されてから次に実行されるまでに最低限経過するべき期間を示す。換言すると、“最低経過時間”は、同一の処理を実行する際に、最低限空けるべき期間を示す情報である。
【0043】
例えば、“主走査メンテナンス”等のメンテナンス機能は頻繁に実行する必要はない。これに対して、予めスケジューリングされた処理と、外部からのコマンドによって実行される処理とが短いスパンで発生すると、無駄な処理となってしまう。処理を実行する際に、上記“最低経過時間”に基づいて処理の実行有無を判断することにより、このような無駄な処理を回避することができる。
【0044】
“同時実行不可機能”は、夫々の処理について、同時に実行することが不可能な機能が指定された情報である。即ち、優先度テーブル206は、画像処理装置1が実行する処理のうち、まとめて実行することが不可能な処理の組み合わせの情報を含む。
【0045】
尚、図5に示すような“優先度”、“最低経過時間”及び“同時実行不可機能”は、一律に決定されるものではなく、画像処理装置1の動作状況に対応して設定される。例えば、タイマリストテーブルに登録された“設定時間”に基づいて省エネモードから復帰した場合、ユーザの操作に基づいて省エネモードから復帰した場合、エラーによる動作不能状態からエラーが改善されて復帰した場合、それぞれの場合において異なる設定が求められることが考えられる。
【0046】
そのため、本実施形態に係る画像処理装置1の優先度テーブル206は、図5に示すようなテーブルを複数種類保持している。この複数種類のテーブルは、上述したような様々な場合に対応して設けられており、各処理の優先度を判断する際には、その時の画像処理装置1の状態に応じたテーブルが参照される。これが、本実施形態に係る要旨の1つである。
【0047】
タイマ処理履歴テーブル207は、上述した“最低経過時間”の判断において、夫々の処理が最後に実行されてからの経過時間を判断するための情報であり、画像処理装置1において実行された処理の動作履歴が蓄積されるテーブルである。図6に示すように、本実施形態に係るタイマ処理履歴テーブル207は、実行された処理を識別する“ID”及び“処理名”、夫々の処理の登録元を示す“登録モジュール”、夫々の処理が実行されたタイミングを示す“実行時刻”の情報が関連付けられたテーブルである。このような構成により、本実施形態に係る画像処理装置1の要旨に係る機能が実現される。
【0048】
次に、本実施形態に係る画像処理装置1の動作について説明する。図7は、本実施形態に係る画像処理装置1の通常の動作であり、上述したタイマリストテーブルに設定された情報に基づく処理の実行態様を示すフローチャートである。図7に示すように、本実施形態に係る画像処理装置1においては、まず、タイマ処理部202が、夫々の処理を定期的に実行するための復帰時間、即ち図4に示す“設定時間”を、タイマリストテーブル205から取得する(S701)。
【0049】
その後、画像処理装置1は、省エネ処理部203の制御により省エネモードに遷移する(S702)。これにより、タイマ処理部202は、タイマリストテーブル205から取得した“設定時間”についてのカウントを開始する。タイマ処理部202のカウント値が、“設定時間”に達すると(S703/YES)、省エネ処理部203はタイマ処理部202からの信号に基づいて省エネモードからの復帰制御を行う(S704)。
【0050】
画像処理装置1が省エネモードから復帰すると、タイマ処理部202は、カウント値が“設定時間”に到達した処理をデータ処理部201に通知する。これにより、データ処理部201が、コントローラ100の各部や専用のアプリケーションを制御して、通知された処理を実行する(S705)。実行するべき処理の実行が完了すると、省エネ処理部203はすぐに画像処理装置1を省エネモードに遷移させるように制御し(S706)、以降S703からの処理を繰り返す。
【0051】
このように、本実施形態に係る画像処理装置1においては、予め定められたタイミングにおいて処理を実行する際にのみ省エネモードを解除して処理を実行するため、省電力効果を高めることができる。
【0052】
次に、本実施形態に係る画像処理装置1の動作のうち、エラーによる動作不能状態からエラーが改善されて動作可能な状態に復帰した場合の動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。図8に示すように、画像処理装置1において何らかの不具合が発生すると、画像処理装置1は主制御部101の制御によりエラー待機状態へと遷移する(S801)。
【0053】
エラー待機状態とは、状態監視部204によって画像処理装置1に何らかの不具合が発生した場合に、省エネ処理部203が状態監視部204からのエラー通知に従って画像処理装置1を遷移させる状態であり、具体的には、省エネモードと同様に、画像処理装置1の各部への電力供給を停止した状態である。即ち、画像処理装置1がエラー状態であれば、エラー内容に応じた動作が不能となるため、装置各部への電力供給を停止して消費電力の低減を図るものである。
【0054】
上記何らかの不具合とは、例えば、給紙トレイの紙が無くなった状態や、装置内における用紙の搬送経路において用紙が詰まったジャム状態等である。このエラー待機状態において、印刷ジョブの受信のような外部からの入力や、タイマ処理部202のカウント値がタイマリストテーブル205に登録された“設定時間”に到達すること等によりジョブが発生すると(S802/YES)、データ処理部201は、発生したジョブのコマンド情報を記憶媒体に記憶させて保持する(S803)。ここでは、データ処理部201が、処理命令格納部として機能する。
【0055】
主制御部101は、画像処理装置1に発生しているエラーが改善するまでS802、S803の処理を繰り返す(S804/NO)。エラーが改善して通常動作状態に遷移すると(S804)、省エネ処理部203は、優先度テーブル206に含まれるテーブルのうちエラー復帰後のテーブルを参照し、S803の処理によって保持されたジョブの順番を並び替えて実行する(S805)。
【0056】
画像処理装置1がエラーから復帰した状態であることは、状態監視部204によって認識されている。省エネ処理部203は、状態監視部204から取得した情報に基づき、画像処理装置1がエラー復帰後の状態であることを認識し、優先度テーブル206から、エラー復帰後の優先度テーブルを取得する。このような処理により、本実施形態に係るエラー復帰時の処理が完了する。
【0057】
図9は、S805における処理の並び替えの例を示す図である。エラー復帰後のテーブルにおいては、エラー待機中における装置各部の劣化や、ユーザによるエラー対応による装置各部の状態変化に対応し、再度のエラーの発生を防ぐため、“給紙メンテナンス”や“主走査メンテナンス”等のメンテナンス系の処理の優先度が高く設定されている。
【0058】
次に、本実施形態に係る画像処理装置1の動作のうち、省エネモードから復帰した場合の動作について、図10のフローチャートを参照して説明する。図10に示すように、画像処理装置1は、省エネ処理部203の制御に従って省エネモードに遷移する(S1001)。省エネモードにおいてジョブを受信すると(S1002/YES)、データ処理部201は、受信したジョブのコマンド情報を記憶媒体に記憶させる(S1003)。
【0059】
主制御部101は、図7のS704の処理や、ユーザによる操作に応じて省エネモードから復帰するまで、S1002、S1003の処理を繰り返す(S1004/NO)。その後、画像処理装置1が省エネモードから復帰すると(S1004/YES)、省エネ処理部203は、優先度テーブル206に含まれるテーブルのうち省エネ復帰後のテーブルを参照し、S1003の処理によって保持されたジョブの順番を並び替えて実行する(S1005)。
【0060】
画像処理装置1が省エネモードから復帰した状態であることは、状態監視部204によって認識されている。省エネ処理部203は、状態監視部204から取得した情報に基づき、画像処理装置1が省エネモードから復帰した後の状態であることを認識し、優先度テーブル206から、省エネ復帰後の優先度テーブルを取得する。このような処理により、本実施形態に係る省エネ復帰時の処理が完了する。
【0061】
図11は、S1005における処理の並び替えの例を示す図である。省エネ復帰後のテーブルにおいては、ユーザによって要求された処理を優先して処理することによりユーザの利便性を高めるため、“リモート印刷要求”や“メンテナンス要求”等の優先度が高く設定されている。
【0062】
次に、図8のS805及び図10のS1005における、処理の優先度の判断や共存が不可能な処理の判断等の動作について、図12のフローチャートを参照して説明する。図12に示すように、省エネ処理部203は、優先度テーブル206から、省エネ復帰時やエラー復帰時等の画像処理装置1の状態に応じたテーブルを取得し、取得した優先度テーブルに基づき、記憶媒体に保持されて実行待ちとなっている処理を、優先度が高い順に選択する(S1201)。S1201において選択された処理を、以降、判断対象処理とする。
【0063】
1つの処理を選択すると、省エネ処理部203は、図12に示す動作を開始してから、判断対象処理と同一の処理が既に実行されたか否かを確認する(S1202)。そして、同一の処理が実行されていた場合(S1202/NO)、省エネ処理部203は、判断対象処理をキャンセルする(S1205)。この処理により、例えば、予めスケジュールによってメンテナンス処理が予約されていた場合において、ユーザによって同一のメンテナンス処理が要求されたような場合に、重複した処理をキャンセルして効率的な装置運用を行うことができる。
【0064】
同一の処理が実行されていなければ(S1202/YES)、次に、省エネ処理部203は、図12に示す動作を開始した後に既に実行された処理、即ち、判断対象処理よりも優先度が高い処理の中に、判断対象処理と共存が不可能な処理があるか否か確認する(S1203)。S1203において、省エネ処理部203は、図5に示す優先度テーブルにおいて、“処理名”が判断対象処理である行の“同時実行不可機能”を確認し、既に実行された処理が登録されていないか否か確認する。
【0065】
S1203の確認の結果、共存不可能な処理があった場合(S1203/NO)、省エネ処理部203は、判断対象処理をキャンセルする(S1205)。この処理により、共存不可能な処理が実行されてしまい、装置に不具合が発生することを回避することができる。共存不可能な処理がなければ(S1203/YES)、省エネ処理部203は、データ処理部201に処理の許可を通知し、これによりデータ処理部201が判断対象処理の実行を制御する(S1204)。ここでは、データ処理部201が処理実行制御部として機能する。
【0066】
省エネ処理部203は、記憶媒体に保持されている全ての処理がS1201において選択されるまでS1201からの処理を繰り返し(S1206/NO)、記憶媒体に保持されている全ての処理が判断対象処理として選択されると(S1206/YES)、処理を終了する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係る画像処理装置1によれば、複数の処理をまとめて実行する際、処理の順序を決定するための優先度テーブルを画像処理装置1の動作状態に応じて選択して使い分ける。そのため、画像処理装置1の動作状態に応じた優先度で処理を実行することができる。これにより、優先するべき機能が後回しにされたり、実行するべき機能がキャンセルされたりするようなことを防ぐことができる。
【0068】
尚、上記実施形態においては、画像処理装置1の動作状態の例として、省エネ復帰時及びエラー復帰時を例として説明した。しかしながら、これは一例であり、画像処理装置1の様々な動作状態について、優先度テーブルを生成することが好ましい。
【符号の説明】
【0069】
1 画像処理装置
10 CPU
11 ドライバ
12 アプリケーション
20 RAM
30 ROM
40 エンジン
50 HDD
60 I/F
70 LCD
80 操作部
90 バス
100 コントローラ
101 主制御部
102 エンジン制御部
103 入出力制御部
104 画像処理部
105 操作表示制御部
110 ADF
120 スキャナユニット
130 排紙トレイ
140 ディスプレイパネル
150 給紙テーブル
160 プリントエンジン
170 排紙トレイ
180 ネットワークI/F
201 データ処理部
202 タイマ処理部
203 省エネ処理部
204 状態監視部
205 タイマリストテーブル
206 優先度テーブル
207 タイマ処理履歴テーブル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【特許文献1】特開2003−8796号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の一部への電力供給を停止した省電力状態への遷移が可能な画像処理装置であって、
前記省電力状態において、前記画像処理装置が実行するべきものとして発生した処理の命令の情報を記憶媒体に記憶させる処理命令格納部と、
前記省電力状態への遷移及び前記省電力状態からの復帰を制御する省電力制御部と、
前記画像処理装置の動作状態を識別する動作状態識別部と、
前記記憶媒体に記憶された処理の命令の情報に基づいて処理の実行を制御する処理実行制御部と、
前記画像処理装置が実行するべき複数種類の処理の優先度を示す情報を、前記画像処理装置の動作状態に応じて記憶している処理優先度情報記憶部とを含み、
前記省電力制御部は、前記画像処理装置を前記省電力状態から復帰させるように制御すると、前記識別された動作状態に応じた前記優先度の情報に従った順序で、前記処理の命令の情報が記憶されている処理を前記処理実行制御部に実行させることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記優先度情報記憶部は、前記複数種類の処理のうちまとめて実行することが不可能な処理の組み合わせの情報を、前記画像処理装置の動作状態に応じて記憶しており、
前記省電力制御部は、前記まとめて実行することが不可能な処理の組み合わせのうち、前記優先度が高い方を前記処理実行制御に実行させることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理装置が実行するべき複数種類の処理の種類ごとに、処理を実行するために前記省電力状態から復帰するタイミングを設定する処理別省電力復帰タイミング情報が記憶された省電力復帰タイミング記憶部を含み、
前記省電力制御部は、前記処理別省電力復帰タイミング情報に基づいて前記画像処理装置を前記省電力状態から復帰させるように制御すると、前記処理別省電力復帰タイミング情報に定められている種類の処理を前記処理実行制御部に実行させることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記優先度情報記憶部は、同一の処理を実行する際に最低限空けるべき期間を示す情報を、前記画像処理装置の動作状態に応じて記憶しており、
前記省電力制御部は、前記画像処理装置の動作履歴の情報に基づき、前記処理の命令の情報が記憶されている処理のうち、前記最低限空けるべき期間が経過していない処理をキャンセルすることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記省電力制御部は、前記画像処理装置を前記省電力状態から復帰させるように制御した後に同一の処理が実行されている処理をキャンセルすることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
装置の一部への電力供給を停止した省電力状態への遷移が可能な画像処理装置の制御方法であって、
前記省電力状態において、前記画像処理装置が実行するべきものとして発生した処理の命令の情報を記憶媒体に記憶させ、
前記画像処理装置を前記省電力状態から復帰させるように制御した際に、前記画像処理装置の動作状態を識別し、
前記画像処理装置が実行するべき複数種類の処理の優先度を示す情報が、前記画像処理装置の動作状態に応じて記憶されている処理優先度情報に基づき、前記識別された動作状態に応じた前記優先度の情報に従った順序で、前記処理の命令の情報が記憶されている処理を前記処理実行制御部に実行させることを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項7】
装置の一部への電力供給を停止した省電力状態への遷移が可能な画像処理装置の制御プログラムであって、
前記省電力状態において、前記画像処理装置が実行するべきものとして発生した処理の命令の情報を記憶媒体に記憶させるステップと、
前記画像処理装置を前記省電力状態から復帰させるように制御した際に、前記画像処理装置の動作状態を識別するステップと、
前記画像処理装置が実行するべき複数種類の処理の優先度を示す情報が、前記画像処理装置の動作状態に応じて記憶されている処理優先度情報に基づき、前記識別された動作状態に応じた前記優先度の情報に従った順序で、前記処理の命令の情報が記憶されている処理を前記処理実行制御部に実行させるステップとを前記画像処理装置に実行させることを特徴とする画像処理装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−102264(P2013−102264A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243434(P2011−243434)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】