説明

画像処理装置、画像形成装置およびプログラム

【課題】線幅が一定ドット数以下の細線を含む画像データを印刷する場合に細線のエッジ部を滑らかに印刷する。
【解決手段】エッジ検出部41は、エッジ検出フィルタを用いて、注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する。エッジ検出部42は、パターンマッチングにより注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する。線幅検出部50は、エッジ検出部42により検出されたエッジ部の画素について線幅を検出する。階調補正部43は、エッジ部の画素に対して、例えば600線でのスクリーン処理を行うための階調補正を行なうことによりスムージング処理を行う。パターン変更部44は、エッジ部の画素周辺の画素の配列パターンを変更することによりスムージング処理を行う。検出された線幅が2ドット以下の場合、選択部46は、パターン変更部44により配列パターンの変更が行われた画素データを優先して選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像形成装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、中間調文字/線画データに対してはエッジ検出フィルタ方式によるエッジ検出処理を行い、濃度値が100%の文字/線画データに対してはパターンマッチングによるエッジ検出処理を行って、スムージング処理を行う技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、電子写真方式における線太り対策として、パターンマッチングにより検出したエッジ部分を細線化したパターンに置き換えるようにした画像処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−23446号公報
【特許文献2】特開平7−334672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、線幅が一定ドット数以下の細線を含む画像データを印刷する場合に、本構成を有しない場合と比較して、細線のエッジ部を滑らかに印刷することが可能な画像処理装置、画像形成装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[画像処理装置]
請求項1に係る本発明は、入力された画像データに対して、注目画素周辺の画素の画素値に対して予め設定された演算を行うことにより、該注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する第1のエッジ検出手段と、
注目画素周辺の画素の配列パターンと予め設定された画素配列パターンとが一致するか否かを判定することにより、該注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する第2のエッジ検出手段と、
前記第2のエッジ検出手段により検出されたエッジ部の画素について、該エッジ部の幅であるエッジ幅を検出するエッジ幅検出手段と、
前記第1のエッジ検出手段により検出されたエッジ部の画素に対して、非エッジ部よりも高い線数でのスクリーン処理を行うための階調補正を行なう階調補正手段と、
前記階調補正手段により階調補正が行なわれた後の画素データに対して、非エッジ部より高い線数でのスクリーン処理を行うスクリーン処理手段と、
前記第2のエッジ検出手段により検出されたエッジ部の画素および該画素周辺の画素の配列パターンを、エッジ部を滑らかにするための画素配列パターンに変更するパターン変更手段と、
前記エッジ幅検出手段により検出されたエッジ幅が予め設定された値よりも狭い場合、前記スクリーン処理手段によって非エッジ部より高い線数でのスクリーン処理が行われた画素データよりも前記パターン変更手段により配列パターンの変更が行われた画素データを優先して選択する選択手段とを有する画像処理装置である。
【0007】
請求項2に係る本発明は、前記選択手段が、前記エッジ幅検出手段により検出されたエッジ幅が予め設定された値よりも広い場合、前記パターン変更手段により配列パターンの変更が行われた画素データよりも前記スクリーン処理手段によって非エッジ部より高い線数でのスクリーン処理が行われた画素データを優先して選択する請求項1記載の画像処理装置である。
【0008】
請求項3に係る本発明は、前記エッジ幅検出手段が、前記画像データを構成する画素のうちの1つを順次注目画素として選択し、該注目画素とほぼ同一の画素値の画素が前記注目画素から左右方向または上下方向に連続する画素の数をエッジ幅として検出する請求項1または2記載の画像処理装置である。
【0009】
請求項4に係る本発明は、前記階調補正手段が、細線化処理が指定された場合、エッジ部の画素の画素値を減少させるような階調補正を行なう請求項1から3のいずれか1項記載の画像処理装置である。
【0010】
請求項5に係る本発明は、前記パターン変更手段が、細線化処理が指定された場合、エッジ部の画素および該画素周辺の画素の配列パターンを、エッジ部を滑らかにするとともに細線化を行うための画素配列パターンに変更する請求項1から4のいずれか1項記載の画像処理装置である。
【0011】
[画像形成装置]
請求項6に係る本発明は、入力された画像データに対して、注目画素周辺の画素の画素値に対して予め設定された演算を行うことにより、該注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する第1のエッジ検出手段と、
注目画素周辺の画素の配列パターンと予め設定された画素配列パターンとが一致するか否かを判定することにより、該注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する第2のエッジ検出手段と、
前記第2のエッジ検出手段により検出されたエッジ部の画素について、該エッジ部の幅であるエッジ幅を検出するエッジ幅検出手段と、
前記第1のエッジ検出手段により検出されたエッジ部の画素に対して、非エッジ部よりも高い線数でのスクリーン処理を行うための階調補正を行なう階調補正手段と、
前記階調補正手段により階調補正が行なわれた後の画素データに対して、非エッジ部より高い線数でのスクリーン処理を行うスクリーン処理手段と、
前記第2のエッジ検出手段により検出されたエッジ部の画素および該画素周辺の画素の配列パターンを、エッジ部を滑らかにするための画素配列パターンに変更するパターン変更手段と、
前記エッジ幅検出手段により検出されたエッジ幅が予め設定された値よりも狭い場合、前記スクリーン処理手段によって非エッジ部より高い線数でのスクリーン処理が行われた画素データよりも前記パターン変更手段により配列パターンの変更が行われた画素データを優先して選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された画素データに基づいて画像を出力する画像出力手段とを有する画像形成装置である。
【0012】
[プログラム]
請求項7に係る本発明は、入力された画像データに対して、注目画素周辺の画素の画素値に対して予め設定された演算を行うことにより、該注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する第1のエッジ検出ステップと、
注目画素周辺の画素の配列パターンと予め設定された画素配列パターンとが一致するか否かを判定することにより、該注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する第2のエッジ検出ステップと、
前記第2のエッジ検出ステップにおいて検出されたエッジ部の画素について、該エッジ部の幅であるエッジ幅を検出するエッジ幅検出ステップと、
前記第1のエッジ検出ステップにおいて検出されたエッジ部の画素に対して、非エッジ部よりも高い線数でのスクリーン処理を行うための階調補正を行なうステップと、
階調補正が行なわれた後の画素データに対して、非エッジ部より高い線数でのスクリーン処理を行うステップと、
前記第2のエッジ検出ステップにおいて検出されたエッジ部の画素および該画素周辺の画素の配列パターンを、エッジ部を滑らかにするための画素配列パターンに変更するステップと、
前記エッジ幅検出ステップにおいて検出されたエッジ幅が予め設定された値よりも狭い場合、非エッジ部より高い線数でのスクリーン処理が行われた画素データよりも配列パターンの変更が行われた画素データを優先して選択するステップとをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明によれば、線幅が一定ドット数以下の細線を含む画像データを印刷する場合に、本構成を有しない場合と比較して、細線のエッジ部を滑らかに印刷することが可能な画像処理装置を提供することができる。
【0014】
請求項2に係る本発明によれば、請求項1に係る発明により得られる効果に加えて、予め用意する配列パターンの数を多くしなくてすむことが可能な画像処理装置を提供することができる。
【0015】
請求項3に係る本発明によれば、請求項1または2に係る発明により得られる効果に加えて、エッジ幅の検出を容易に実行可能な画像処理装置を提供することができる。
【0016】
請求項4に係る本発明によれば、請求項1から3のいずれか1項に係る発明により得られる効果に加えて、第1のエッジ検出手段により検出されたエッジ部の細線化を行うことが可能な画像処理装置を提供することができる。
【0017】
請求項5に係る本発明によれば、請求項1から4のいずれか1項に係る発明により得られる効果に加えて、第2のエッジ検出手段により検出されたエッジ部の細線化を行うことが可能な画像処理装置を提供することができる。
【0018】
請求項6に係る本発明によれば、線幅が一定ドット数以下の細線を含む画像データを印刷する場合に、本構成を有しない場合と比較して、細線のエッジ部を滑らかに印刷することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0019】
請求項7に係る本発明によれば、線幅が一定ドット数以下の細線を含む画像データを印刷する場合に、本構成を有しない場合と比較して、細線のエッジ部を滑らかに印刷することが可能なプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態の画像処理装置のシステム構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態における画像処理装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態における画像処理装置10の機能構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示した画像処理装置521の構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示したエッジ検出部41におけるエッジ検出処理の詳細を説明するための図である。
【図6】階調補正部43における細線化処理が行われる前の画像データの一例を示す図である。
【図7】図6に示した画像データに基づいて、印刷用紙上に画像を出力した場合の理論的な断面を示す図である。
【図8】図6に示した画像データに基づいて、印刷用紙上に画像を出力した場合の実際の様子を示す図である。
【図9】階調補正部43において細線化処理が行なわれた画像データの一例を示す図である。
【図10】図9に示した画像データに基づいて、印刷用紙上に画像を出力した場合の理論的な断面を示す図である。
【図11】図9に示した画像データに基づいて、印刷用紙上に画像を出力した場合の実際の様子を示す図である。
【図12】エッジ検出部42において設定されているマッチングパターン(配列パターン)の一例を示す図である。
【図13】図12に示すマッチングパターンにより検出された画像データの一例を示す図である。
【図14】エッジ部を滑らかにするためのスムージング処理を行うための置き換えパターンの一例を示す図である。
【図15】エッジ部を滑らかにするためのスムージング処理と細線化を行うための置き換えパターンの一例を示す図である。
【図16】線幅検出処理において用いられる5×5画素の判定ウィンドウを示す図である。
【図17】1、2ドットポジ細線を判定するための条件を示す表である。
【図18】選択部46における選択制御の設定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施形態の画像形成システムの構成を示すブロック図である。
【0023】
本発明の一実施形態の画像形成システムは、図1に示されるように、ネットワーク30により相互に接続された画像形成装置10、および端末装置20により構成される。端末装置20は、印刷データを生成して、ネットワーク30経由にて生成した印刷データを画像形成装置10に対して送信する。画像形成装置10は、端末装置20から送信された印刷データを受け付けて、印刷データに応じた画像を用紙上に出力する。なお、画像形成装置10は、印刷(プリント)機能、スキャン機能、複写(コピー)機能、ファクシミリ機能等の複数の機能を有するいわゆる複合機と呼ばれる装置である。
【0024】
次に、本実施形態の画像形成システムにおける画像形成装置10のハードウェア構成を図2に示す。
【0025】
画像形成装置10は、図2に示されるように、CPU11、メモリ12、ハードディスクドライブ(HDD)等の記憶装置13、ネットワーク30を介して外部の装置等との間でデータの送信及び受信を行う通信インタフェース(IF)14、タッチパネル又は液晶ディスプレイ並びにキーボードを含むユーザインタフェース(UI)装置15、スキャナ16、プリントエンジン17を有する。これらの構成要素は、制御バス18を介して互いに接続されている。
【0026】
CPU11は、メモリ12または記憶装置13に格納された制御プログラムに基づいて所定の処理を実行して、画像形成装置10の動作を制御する。なお、本実施形態では、CPU11は、メモリ12または記憶装置13内に格納された制御プログラムを読み出して実行するものとして説明したが、当該プログラムをCD−ROM等の記憶媒体に格納してCPU11に提供することも可能である。
【0027】
図3は、上記の制御プログラムが実行されることにより実現される画像形成装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0028】
本実施形態の画像形成装置10は、図3に示されるように、コントローラ51と、プリントエンジン制御部52と、プリントエンジン17とを備えている。
【0029】
また、コントローラ51は、PDL(Page Description Language:ページ記述言語)解釈部511と、描画部512と、レンダリング部513とを有している。
【0030】
さらに、プリントエンジン制御部52は、画像処理装置521と、変調部522とを有している。
【0031】
PDL解釈部511は、端末装置20からのPDLデータを受け取り、このPDLデータにより記述されている描画オブジェクトを解釈する。
【0032】
描画部512は、PDL解釈部511により解釈された描画オブジェクト毎に描画処理を行って、中間コードを生成したり、PDLにおいて指定された色信号(RGB)からプリンタエンジン17で使用される色信号(YMCK)への変換を行う等の処理を行う。
【0033】
レンダリング部513は、描画部512において生成され中間データに基づいて、プリンタエンジン17において印刷可能なYMCK毎のビットマップデータを生成するレンダリング処理を行う。
【0034】
画像処理部521は、コントローラ51において生成されたビットマップデータ(画像データ)に対して、エッジ部のスムージング処理、細線化処理、スクリーン処理等の各種画像処理を行う。
【0035】
変調部522は、画像処理部521においてスクリーン処理が行われた後の画像データに基づいて変調処理を行うことにより、画像データを印刷するためのパルス信号を生成する。
【0036】
プリントエンジン17では、変調部522により生成されたパルス信号に基づいてレーザの制御が行われることにより、画像処理部521により画像処理が行なわれた後の画像データに基づく画像が印刷用紙上に出力される。
【0037】
次に、図3に示した画像処理装置521の詳細を図4のブロック図を参照して説明する。
画像処理装置521は、図4に示されるように、エッジ検出部41、42と、階調補正部43と、パターン変更部44と、スクリーン処理部45と、選択部46とを備えている。また、エッジ検出部42内には、線幅検出部50が設けられている。
【0038】
エッジ検出部41(エッジ検出フィルタ)は、入力された画像データに対して、注目画素周辺の画素の画素値に対して予め設定された演算を行うことにより、その注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する。
【0039】
エッジ検出部(パターンマッチング)42は、注目画素周辺の画素の配列パターンと予め設定された画素配列パターンとが一致するか否かを判定することにより、その注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する。
【0040】
線幅(エッジ幅)検出部50は、エッジ検出部42により検出されたエッジ部の画素について、そのエッジ部の幅である線幅(エッジ幅)を検出する。なお、線幅検出部50は、画像データを構成する画素のうちの1つを順次注目画素として選択し、その注目画素とほぼ同一の画素値の画素が注目画素から左右方向または上下方向に連続する画素の数を線幅として検出する。
【0041】
エッジ検出部41、42におけるエッジ検出結果、および線幅検出部50による線幅検出結果は選択部46へと転送される。
【0042】
なお、エッジ検出部41、42におけるエッジ検出処理、線幅検出部50による線幅検出処理の詳細については後述する。
【0043】
階調補正部43は、エッジ検出部41により検出されたエッジ部の画素に対して、非エッジ部よりも高い線数、例えば600線でのスクリーン処理を行うための階調補正を行なうことによりスムージング処理を行う。ここで、線数とは、スクリーン処理における網点の配列密度を示している。また、階調補正部43は、細線化処理が指定された場合、エッジ部の画素の画素値を減少させるような階調補正を行なう。この階調補正部43における細線化処理についても後述する。
【0044】
パターン変更部44は、エッジ検出部42により検出されたエッジ部の画素およびこの画素周辺の画素の配列パターンを、エッジ部を滑らかにするための画素配列パターンに変更することによりスムージング処理を行う。また、パターン変更部44は、細線化処理が指定された場合、エッジ部の画素およびこの画素周辺の画素の配列パターンを、エッジ部を滑らかにするとともに細線化を行うための画素配列パターンに変更する。このパターン変更部44におけるパターン変更処理についても後述する。
【0045】
スクリーン処理部45は、階調補正部43により階調補正が行なわれた後の画素データに対して、非エッジ部より高い線数、例えば600線でのスクリーン処理を施し、擬似中間調画像を生成する。スクリーン処理部45は、エッジ検出部41、42のいずれにおいてもエッジ部ではないと判定された画素については、200線でのスクリーン処理を行う。
【0046】
選択部46は、エッジ幅検出部50により検出されたエッジ幅が2ドットよりも狭い場合、スクリーン処理部45によって600線でのスクリーン処理が行われた画素データよりもパターン変更部44により配列パターンの変更が行われた画素データを優先して選択する。
【0047】
また、選択部46は、エッジ幅検出部50により検出されたエッジ幅が3ドット以上の場合、パターン変更部44により配列パターンの変更が行われた画素データよりもスクリーン処理部45によって600線でのスクリーン処理が行われた画素データを優先して選択する。
【0048】
なお、本実施形態では、エッジ検出処理とスクリーン処理はプリントエンジン制御部52において行われているが、負荷分散を行うためにレンダリング部513においてエッジ検出処理とスクリーン処理を行うようにしてもよい。
【0049】
次に、本実施形態の画像形成装置10の動作を図面を参照して詳細に説明する。
【0050】
先ず、図4に示したエッジ検出部41におけるエッジ検出処理の詳細を図5を参照して説明する。
【0051】
この図5に示したエッジ検出処理は、3×3のエッジ検出ウィンドウを用いた濃度差分判定による検出方法である。この濃度差分判定方法では、画素P5を注目画素とし、この注目画素P5の周囲の8つの画素P1〜P4、P6〜P9の画素値に基づいて注目画素P5がエッジ部の画素であるのか非エッジ部の画素であるのかを判定する。
【0052】
具体的には、8つの画素P1〜P4、P6〜P9の画素値を、それぞれP1〜P4、P6〜P9として表現した場合、図5に示すような式によりSH、SV、SR、SLの値を算出し、これらの値の最大値(Max(SH、SV、SR、SL))がエッジ閾値以上の場合には注目画素はエッジ部の画素、エッジ閾値未満の場合には注目画素は非エッジ部の画素であると判定する。なお、このエッジ閾値は、各画素の画素値が0〜255で表現される場合、例えば240という値が設定される。
【0053】
次に、階調補正部43において行なわれる細線化処理について図6〜図11を参照して説明する。
【0054】
先ず、細線化処理が行われる前の画像データを図6に示す。この図6では、各画素の濃度値を%で表示している。つまり、この図6において“100”と記載されている画素は、濃度値が100%であることを意味する。
【0055】
そして、このような画像データに基づいて、細線化処理を行わずに印刷用紙上に画像を出力した場合の様子を図7、図8に示す。図7は、図6に示した画像データに基づく理論的な画像の断面を示す図である。図7中の矢印は印刷用紙に対して正面方向から画像を見た場合の方向を示している。この図7に示すようにトナーが印刷用紙上に定着すれば画像データに忠実な画像を得ることができる。しかし、実際にはトナーを印刷用紙上に定着した場合、図8に示すようにエッジ部が拡がってしまう事態が発生する。
【0056】
そのため、階調補正部43では、図6に示した画像データの細線化処理を行って図9に示すような画像データに変更する。つまり、階調補正部43では、エッジ部における濃度値が100%の画素の濃度値を減少させるような細線化処理を行う。この図9に示した例では、100%の濃度値を40%に減少させている。
【0057】
そして、この図9に示した画像データに基づいて、印刷用紙上に画像を出力した場合の様子を図10、図11に示す。図10は、図9に示した画像データに基づく理論的な画像の断面を示す図である。この図10を参照すると、エッジ部の画素の濃度値が他の部分よりも低くなっているのが分かる。そして、このような画像データに基づいて実際の印刷用紙上に画像を出力した場合の様子を図11に示す。図11でもエッジ部が多少拡がっているが、図8と比較すると、元の画像データにおいて出力しようとした画像に近い結果が得られていることが分かる。
【0058】
次に、図4に示したエッジ検出部42におけるパターンマッチングの動作およびパターン変更部44におけるパターン変更動作を図12〜図15を参照して説明する。
【0059】
エッジ検出部42では、例えば、図12に示すようなマッチングパターン(配列パターン)が予め設定されている。この図12に示したマッチングパターンでは、注目画素を中心とした7×7画素により構成されており、“0”は白画素を意味し、“1”は黒画素を意味し、“2”についてはどちらの画素でもよいことを意味している。
【0060】
なお、本実施形態では、エッジ検出部42では、入力された画像データを2値画像に変換してエッジ検出、線幅検出を行なうものとして説明する。しかし、エッジ検出部42において画像データの2値化を行わずに多値画像データのままエッジ検出、線幅検出を行うようにしても良い。
【0061】
そして、図12のマッチングパターンにより図13に示すような画像データを検出したものとして説明する。なお、マッチングパターンと画像データとのマッチング処理を行う場合、対応する画素どうしの排他的論理和を演算するようにすれば容易に実現可能である。
【0062】
このようにマッチングパターンと画像データのパターンとの一致が検出されると、パターン変更部44では、検出された画像データの画素パターンを、図14または図15に示すような画素パターンに置き換える。
【0063】
図14に示す置き換えパターンは、エッジ部を滑らかにするためのスムージング処理を行うための置き換えパターンの一例である。また、図15に示す置き換えパターンは、エッジ部を滑らかにするためのスムージング処理と細線化を行うための置き換えパターンの一例である。
【0064】
次に、図4に示した線幅検出部50における線幅(エッジ幅)検出処理を図16、図17を参照して説明する。
【0065】
この線幅検出処理では、図16に示すような5×5画素の判定ウィンドウが用いられる。この5×5画素の判定ウィンドウを用いる理由は、エッジ幅が2ドットまでの細線を検出するためである。つまり、検出しようとする線幅をどの程度にするかにより判定ウィンドウのサイズも変わってくる。本実施形態では、線幅が1ドットまたは2ドットのポジ細線を検出する場合について説明する。
【0066】
線幅検出部50は、図16に示したような5列×5行の判定ウィンドウにおいて、13番目の画素を注目画素として設定し、図17に示すような判定条件が満たされる場合、その注目画素をポジ細線を構成する画素であると判定する。
【0067】
図17(A)は1ドットポジ細線を判定するための条件を示す表であり、図17(B)は2ドットポジ細線を判定するための条件を示す表である。
【0068】
なお、この図17において、説明を簡単にするために、例えば、13番目の画素の画素値を単に“13”として表現し、14番目の画素の画素値を単に“14”として表現している。なお、本実施形態では、エッジ検出部42において画像データは2値化されているものとして説明しているので、各画素の画素値はオンまたはオフのいずれかとなっている。
【0069】
例えば、図17(B)に示すように、注目画素である13番目の画素の画素値と12番目の画素の画素値がともにオンであり(ドット判定)、11番目の画素の画素値と14番目の画素の画素値がともにオフである場合(背景判定)、注目画素である13番目の画素は2ドットポジ細線を構成する画素であると判定される。
【0070】
そして、選択部46では、エッジ検出部41、42におけるエッジ検出結果(エッジ/非エッジ)、線幅検出部50における線幅検出結果に基づいて、例えば図18に示すような設定による選択制御が行われる。
【0071】
具体的には、検出された線幅(エッジ幅)が1ドットまたは2ドットの場合、選択部46は、エッジ検出フィルタ方式によるスムージング方式よりもパターンマッチング方式によるスムージング方式を優先して選択する。つまり、選択部46は、検出された線幅が1ドットまたは2ドットの場合には、エッジ検出部41、42でともにエッジ部が検出された場合でも、パターン変更部44においてパターン変更によりスムージング処理が行われた後の画素値を選択して変調部522に出力する。
【0072】
また、検出された線幅が3ドット以上の場合、選択部46は、パターンマッチング方式によるスムージング方式よりもエッジ検出フィルタ方式によるスムージング方式を優先して選択する。つまり、選択部46は、検出された線幅が3ドット以上の場合には、エッジ検出部41、42でともにエッジ部が検出された場合でも、階調補正部43において階調補正が行なわれ、スクリーン処理部45において600線のスクリーン処理が行われた後の画素値を選択して変調部522に出力する。
【0073】
このように検出された線幅が2ドット以下の場合に、パターンマッチング方式によるスムージング方式を優先して選択する理由を以下に説明する。
【0074】
エッジ検出部41において行われるエッジ検出フィルタによるエッジ検出方法は、全方位のエッジ部を検出することができるという利点がある。しかし、その後に行われる階調補正部43によるスムージング処理ではスクリーン処理における線数を変化するというスムージング処理が行われるだけである。また、細線化処理を行う場合には、エッジ部の画素値を減少させるような細線化処理を行うことしかできない。
【0075】
これに対して、エッジ検出部42において行われるパターンマッチング方式によるエッジ検出方法とスムージング処理では、エッジ部であると検出された画素配列パターンを予め用意されていた画素配列パターンに置き換えるため、精度の高いスムージング処理および細線化処理が可能である。しかし、このパターンマッチング方式によるエッジ検出方法では、用意できる画素配列パターンに限りがあるため、検出方向が限られてしまう。また、様々な形状のエッジ部を検出しようとすると多くの画素配列パターンを用意しておかなければならないという問題がある。
【0076】
そのため、本実施形態では、エッジ部の粗さやかすれ等が目立ち易い2ドット以下の細線については精度の高いパターンマッチング方式によるスムージング方式を優先して選択し、エッジ部の粗さやかすれ等が目立ち難い線幅が3ドット以上のエッジ部についてはエッジ検出フィルタ方式によるスムージング方式を優先して選択するようにしているのである。
【0077】
[変形例]
上記実施形態では、細線として検出する線幅を1ドットまたは2ドットの場合を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、細線として検出する線幅を他の値とする場合でも同様に本発明を適用することができるものである。
【符号の説明】
【0078】
10 画像形成装置
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 通信インタフェース(IF)
15 ユーザインタフェース(UI)装置
16 スキャナ
17 プリントエンジン
18 制御バス
20 端末装置
30 ネットワーク
41 エッジ検出部(エッジ検出フィルタ)
42 エッジ検出部(パターンマッチング)
43 エッジ階調補正部
44 パターン変更部
45 スクリーン処理部
46 選択部
50 線幅検出部
51 コントローラ
52 プリントエンジン制御部
511 PDL解釈部
512 描画部
513 レンダリング部
521 画像処理装置
522 変調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像データに対して、注目画素周辺の画素の画素値に対して予め設定された演算を行うことにより、該注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する第1のエッジ検出手段と、
注目画素周辺の画素の配列パターンと予め設定された画素配列パターンとが一致するか否かを判定することにより、該注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する第2のエッジ検出手段と、
前記第2のエッジ検出手段により検出されたエッジ部の画素について、該エッジ部の幅であるエッジ幅を検出するエッジ幅検出手段と、
前記第1のエッジ検出手段により検出されたエッジ部の画素に対して、非エッジ部よりも高い線数でのスクリーン処理を行うための階調補正を行なう階調補正手段と、
前記階調補正手段により階調補正が行なわれた後の画素データに対して、非エッジ部より高い線数でのスクリーン処理を行うスクリーン処理手段と、
前記第2のエッジ検出手段により検出されたエッジ部の画素および該画素周辺の画素の配列パターンを、エッジ部を滑らかにするための画素配列パターンに変更するパターン変更手段と、
前記エッジ幅検出手段により検出されたエッジ幅が予め設定された値よりも狭い場合、前記スクリーン処理手段によって非エッジ部より高い線数でのスクリーン処理が行われた画素データよりも前記パターン変更手段により配列パターンの変更が行われた画素データを優先して選択する選択手段と、
を有する画像処理装置。
【請求項2】
前記選択手段は、前記エッジ幅検出手段により検出されたエッジ幅が予め設定された値よりも広い場合、前記パターン変更手段により配列パターンの変更が行われた画素データよりも前記スクリーン処理手段によって非エッジ部より高い線数でのスクリーン処理が行われた画素データを優先して選択する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記エッジ幅検出手段は、前記画像データを構成する画素のうちの1つを順次注目画素として選択し、該注目画素とほぼ同一の画素値の画素が前記注目画素から左右方向または上下方向に連続する画素の数をエッジ幅として検出する請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記階調補正手段は、細線化処理が指定された場合、エッジ部の画素の画素値を減少させるような階調補正を行なう請求項1から3のいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記パターン変更手段は、細線化処理が指定された場合、エッジ部の画素および該画素周辺の画素の配列パターンを、エッジ部を滑らかにするとともに細線化を行うための画素配列パターンに変更する請求項1から4のいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項6】
入力された画像データに対して、注目画素周辺の画素の画素値に対して予め設定された演算を行うことにより、該注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する第1のエッジ検出手段と、
注目画素周辺の画素の配列パターンと予め設定された画素配列パターンとが一致するか否かを判定することにより、該注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する第2のエッジ検出手段と、
前記第2のエッジ検出手段により検出されたエッジ部の画素について、該エッジ部の幅であるエッジ幅を検出するエッジ幅検出手段と、
前記第1のエッジ検出手段により検出されたエッジ部の画素に対して、非エッジ部よりも高い線数でのスクリーン処理を行うための階調補正を行なう階調補正手段と、
前記階調補正手段により階調補正が行なわれた後の画素データに対して、非エッジ部より高い線数でのスクリーン処理を行うスクリーン処理手段と、
前記第2のエッジ検出手段により検出されたエッジ部の画素および該画素周辺の画素の配列パターンを、エッジ部を滑らかにするための画素配列パターンに変更するパターン変更手段と、
前記エッジ幅検出手段により検出されたエッジ幅が予め設定された値よりも狭い場合、前記スクリーン処理手段によって非エッジ部より高い線数でのスクリーン処理が行われた画素データよりも前記パターン変更手段により配列パターンの変更が行われた画素データを優先して選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された画素データに基づいて画像を出力する画像出力手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項7】
入力された画像データに対して、注目画素周辺の画素の画素値に対して予め設定された演算を行うことにより、該注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する第1のエッジ検出ステップと、
注目画素周辺の画素の配列パターンと予め設定された画素配列パターンとが一致するか否かを判定することにより、該注目画素がエッジ部を構成する画素であるか否かを検出する第2のエッジ検出ステップと、
前記第2のエッジ検出ステップにおいて検出されたエッジ部の画素について、該エッジ部の幅であるエッジ幅を検出するエッジ幅検出ステップと、
前記第1のエッジ検出ステップにおいて検出されたエッジ部の画素に対して、非エッジ部よりも高い線数でのスクリーン処理を行うための階調補正を行なうステップと、
階調補正が行なわれた後の画素データに対して、非エッジ部より高い線数でのスクリーン処理を行うステップと、
前記第2のエッジ検出ステップにおいて検出されたエッジ部の画素および該画素周辺の画素の配列パターンを、エッジ部を滑らかにするための画素配列パターンに変更するステップと、
前記エッジ幅検出ステップにおいて検出されたエッジ幅が予め設定された値よりも狭い場合、非エッジ部より高い線数でのスクリーン処理が行われた画素データよりも配列パターンの変更が行われた画素データを優先して選択するステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−26991(P2013−26991A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162712(P2011−162712)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】