説明

画像処理装置、画像表示装置及びプロジェクター

【課題】フレームバッファーを用いた画像処理を効率的に行うことが可能な画像処理装置、画像表示装置及びプロジェクターを提供する。
【解決手段】制御部51は、画像処理装置30の動作状況(負荷状況)に応じて圧縮処理部61の圧縮率を設定する。つまり、制御部51は、画像処理装置30が比較的高負荷で、フレームバッファー40の帯域が不足しやすい状況であるほど圧縮率を高めて、転送データ量を削減する。一方、制御部51は、画像処理装置30が比較的低負荷で、フレームバッファー40の帯域に余裕がある状況であるほど、圧縮率を下げて画像の劣化を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像信号に画像処理を施す画像処理装置、画像表示装置及びプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置等に備わる画像処理用のLSIは、DRAM等で構成される記憶装置である外部のフレームバッファー(フレームメモリー)に接続されており、このフレームバッファーに画像信号を記憶しつつ様々な画像処理を行う。画像表示装置の高機能化等に伴ってフレームバッファーを使用する処理がさらに増えてくると、フレームバッファーの帯域(データの転送能力)が不足してしまうことから、近年では、フレームバッファーに転送すべきデータ量を削減するために、フレームバッファーに書き込む前に画像信号を圧縮する技術が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−183328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画像信号を圧縮すると、圧縮率が高いほど画質が劣化してしまう。このため、画質を優先する場合には、圧縮率をさほど高くできないため、使用環境や動作状況等によっては、フレームバッファーの帯域を十分に確保できなくなる恐れがある。一方、帯域を確保するために、バス幅を拡張したり、クロック周波数を高めたりすれば、必要なDRAMの個数が増えたり、高価なDRAMが必要となったりするため、装置の価格が上昇してしまう。このように、従来の構成の画像処理用LSIでは、フレームバッファーを用いた画像処理を効率的に行うことが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る画像処理装置は、入力される画像信号に画像処理を施して出力する画像処理装置であって、当該画像処理装置の外部にあり、当該画像処理装置に接続される記憶装置との間で、処理中の画像信号の入出力を行うインターフェイス部と、前記インターフェイス部から前記記憶装置に出力する画像信号を圧縮するとともに、前記記憶装置から前記インターフェイス部に入力された画像信号を伸張する圧縮伸張処理部と、前記圧縮伸張処理部で前記画像信号を圧縮する際の圧縮率を設定する圧縮率設定部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この画像処理装置によれば、記憶装置との間で入出力される画像信号を圧縮するとともに、圧縮する際の圧縮率を設定可能になっているため、使用環境や動作状況に応じた適切な圧縮率に設定することが可能となり、記憶装置を用いた画像処理を効率的に行うことが可能となる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係る画像処理装置において、前記圧縮伸張処理部は、異なる圧縮率で前記画像信号を圧縮可能な複数の圧縮回路を備え、前記圧縮率設定部は、前記複数の圧縮回路に含まれる1の圧縮回路で圧縮された画像信号を選択することが望ましい。
【0009】
この画像処理装置によれば、複数の圧縮回路で圧縮された画像信号の中から1つを選択するため、圧縮率の設定を簡単な構成で実現することが可能となる。
【0010】
[適用例3]上記適用例に係る画像処理装置において、前記圧縮率設定部は、前記画像処理の負荷状況に応じて前記圧縮率を変更することが望ましい。
【0011】
この画像処理装置によれば、画像処理の負荷状況に応じて圧縮率を設定するため、負荷状況に応じた適切な圧縮率で圧縮を行うことが可能となる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に係る画像処理装置において、異なる画像処理を行う複数の画像処理部を含んでおり、前記複数の画像処理部のそれぞれが前記圧縮伸張処理部を有していることが望ましい。
【0013】
この画像処理装置によれば、異なる画像処理を行う複数の画像処理部のそれぞれが圧縮伸張処理部を有しているため、圧縮や伸張の制御、及び記憶装置の入出力の制御が容易になる。
【0014】
[適用例5]上記適用例に係る画像処理装置において、前記複数の画像処理部が有する前記圧縮伸張処理部は、それぞれの圧縮率を個別に設定可能であることが望ましい。
【0015】
この画像処理装置によれば、複数の圧縮伸張処理部の圧縮率を個別に設定できるため、画像処理部毎の処理状況等に応じて適切な圧縮率で圧縮を行うことが可能となる。
【0016】
[適用例6]上記適用例に係る画像処理装置において、前記画像信号のフレームレートを変換するフレームレート変換処理部をさらに備え、前記圧縮伸張処理部は、前記フレームレート変換処理部から前記記憶装置に出力される画像信号の圧縮、及び前記記憶装置から前記フレームレート変換処理部に入力される画像信号の伸張を行うことが望ましい。
【0017】
この画像処理装置によれば、圧縮伸張処理部は、フレームレート変換処理部が処理する画像信号の圧縮及び伸張を行うため、負荷が高くなりやすいフレームレート変換処理を行う際の帯域不足を抑制することが可能となる。
【0018】
[適用例7]上記適用例に係る画像処理装置において、前記画像信号に基づく画像を投写する場合に生じる台形歪を補正するキーストーン補正処理部をさらに備え、前記圧縮伸張処理部は、前記キーストーン補正処理部から前記記憶装置に出力される画像信号の圧縮、及び前記記憶装置から前記キーストーン補正処理部に入力される画像信号の伸張を行うことが望ましい。
【0019】
この画像処理装置によれば、圧縮伸張処理部は、キーストーン補正処理部が処理する画像信号の圧縮及び伸張を行うため、負荷が高くなりやすいキーストーン補正処理を行う際の帯域不足を抑制することが可能となる。
【0020】
[適用例8]本適用例に係る画像表示装置は、上記適用例の画像処理装置と、前記記憶装置と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
この画像表示装置によれば、上記適用例に係る画像処理装置と同様の効果を得ることができる。
【0022】
[適用例9]本適用例に係るプロジェクターは、上記適用例の画像処理装置と、前記記憶装置と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
このプロジェクターによれば、上記適用例に係る画像処理装置と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】プロジェクターの概略構成を示すブロック図。
【図2】画像処理装置の詳細な構成を示すブロック図。
【図3】画像処理部の内部構成を示すブロック図。
【図4】変形例に係る画像処理部の内部構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施形態の画像処理装置について、図面を参照して説明する。
本実施形態の画像処理装置は、画像表示装置としてのプロジェクターの内部に搭載されている。プロジェクターは、外部の画像供給装置から供給される画像信号に基づく画像をスクリーンや壁面等に投写して表示する。
【0026】
図1は、プロジェクターの概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、プロジェクター1は、画像投写部10、画像信号入力部20、画像処理装置30、記憶装置としてのフレームバッファー40、入力操作部50を備えている。
【0027】
画像投写部10は、照明光学系11、色光分離光学系12、光変調装置としての3つの液晶ライトバルブ13R,13G,13B、色光合成光学系14、投写光学系としての投写レンズ15、液晶駆動部16等を備えて構成されている。画像投写部10は、表示部に相当するものであり、照明光学系11から射出された光を変調して投写し、投写面Sに画像を表示する。
【0028】
照明光学系11は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等、光源装置としての光源ランプ11aを含んで構成されている。照明光学系11から射出された光は、色光分離光学系12によって光の3原色である赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色光成分に分離された後、それぞれ液晶ライトバルブ13R,13G,13Bに入射する。
【0029】
液晶ライトバルブ13R,13G,13Bは、一対の透明基板間に液晶が封入された液晶パネル等によって構成される。液晶ライトバルブ13R,13G,13Bは、複数の画素(図示せず)がマトリクス状に配列された矩形状の画素領域13aを備えており、液晶に対して画素毎に駆動電圧を印加可能になっている。液晶駆動部16が、入力される画像信号に応じた駆動電圧を各画素に印加すると、各画素は、画像信号に応じた光透過率に設定される。このため、色光分離光学系12で分離された各色光は、この液晶ライトバルブ13R,13G,13Bの画素領域13aを透過することによって変調され、画像信号に応じた階調を有する画像光が色光毎に形成される。形成された各色の画像光は、色光合成光学系14によって画素毎に合成されてカラーの画像光となった後、投写レンズ15によって投写面Sに拡大投写される。
【0030】
画像信号入力部20には、ビデオ再生装置やパーソナルコンピューター等、図示しない外部の画像供給装置から各種形式の画像信号が入力される。画像信号入力部20は、入力された画像信号をデジタルの画像信号に変換し、画像処理装置30に出力する。なお、画像信号入力部20から出力される画像信号には、RGB別の階調を画素毎に表したデータ(画素値)が含まれている。
【0031】
画像処理装置30は、画像信号入力部20から入力される画像信号に対し、リサイズ等の各種画像処理を施し、処理後の画像信号を液晶駆動部16に出力する。画像処理装置30は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)を備えて構成されるフレームバッファー40に接続されており、処理中の画像信号をフレームバッファー40に一時的に記憶させながら各種画像処理を行う。
【0032】
入力操作部50は、ユーザーの入力操作を受け付けるものであり、プロジェクター1に対して各種指示を行うための複数の操作キーを備えている。ユーザーが入力操作部50の各種操作キーを操作すると、入力操作部50は、この入力操作を受け付けて、ユーザーの操作内容に応じた操作信号を画像処理装置30に出力する。なお、入力操作部50として、遠隔操作が可能なリモコン(図示せず)を用いた構成としてもよい。この場合、リモコンは、ユーザーの操作内容に応じた赤外線の操作信号を発信し、図示しない受信部がこれを受信して画像処理装置30に伝達する。
【0033】
図2は、画像処理装置30の詳細な構成を示すブロック図である。
図2に示すように、画像処理装置30は、制御部51と、入力信号判定部52と、リサイズ処理部53と、OSD処理部54と、キーストーン補正処理部55と、フレームレート変換処理部56と、オーバードライブ処理部57、インターフェイス部58とを備えて構成されている。なお、リサイズ処理部53と、OSD処理部54と、キーストーン補正処理部55と、フレームレート変換処理部56と、オーバードライブ処理部57とは、画像信号に画像処理を施す画像処理部に相当するものであり、これ以降、これらをまとめて「画像処理部53〜57」とも表記する。
【0034】
制御部51は、CPU(Central Processing Unit)と、制御プログラムや設定データ等が記憶されるメモリーとを備え、メモリーに記憶されている制御プログラムに従ってCPUが動作することにより画像処理装置30の動作を統括制御する。つまり、制御部51は、コンピューターとして機能する。
【0035】
入力信号判定部52は、画像信号入力部20から入力される画像信号の解像度(画素数)及びフレームレートを判定し、判定結果を制御部51に出力する。
【0036】
リサイズ処理部53は、制御部51の指示に基づいて、画像信号入力部20から入力される画像信号に対して、その解像度を、液晶ライトバルブ13R,13G,13Bの解像度に合わせるためのリサイズ処理を行う。具体的には、制御部51は、入力信号判定部52が判定した画像信号の解像度に応じて、リサイズ処理部53にリサイズ処理を行わせる。そして、リサイズ処理部53は、入力された画像信号の解像度が液晶ライトバルブ13R,13G,13Bの解像度よりも高い場合には、画像信号から画素値を間引く処理を行い、入力された画像信号の解像度が液晶ライトバルブ13R,13G,13Bの解像度よりも低い場合には、画像信号に画素値を補間する処理を行う。リサイズ処理部53は、処理後の画像信号をOSD処理部54に出力する。
【0037】
OSD処理部54は、制御部51の指示に基づいて、画像信号に基づく画像(入力画像)上に、メニュー画像やメッセージ画像等のOSD(On Screen Display)画像を重畳して表示するための処理を行う。制御部51は、入力操作部50に対するユーザーの入力操作に応じてOSD処理部54にメニュー画像を表示させる。また、制御部51は、プロジェクター1に異常が生じた場合等には、OSD処理部54にメッセージ画像を表示させる。OSD処理部54は、図示しないOSDメモリーを備えており、OSD画像を形成するための図形やフォント等を表すOSD画像情報を記憶している。制御部51が、OSD画像の重畳表示を指示すると、OSD処理部54は、必要なOSD画像情報をOSDメモリーから読み出し、入力画像上の所定の位置にOSD画像が重畳されるように、リサイズ処理部53から入力される画像信号にこのOSD画像情報を合成する。OSD画像情報が合成された画像信号は、キーストーン補正処理部55に出力される。なお、制御部51からOSD画像を重畳する旨の指示がない場合には、OSD処理部54は、リサイズ処理部53から入力される画像信号を、そのままキーストーン補正処理部55に出力する。
【0038】
キーストーン補正処理部55は、制御部51の指示に基づいて、投写面Sに対して斜め方向から画像を投写する場合に生じる台形歪を補正するためのキーストーン補正処理を行う。具体的には、キーストーン補正処理部55は、液晶ライトバルブ13R,13G,13Bの画素領域13a内に、台形歪を相殺可能な形状の画像形成領域(図示せず)を設定する。そして、この画像形成領域内に入力画像が形成されるように、OSD処理部54から入力される画像信号を補正するとともに、画像形成領域の外側の画素については、黒色の画素値、つまり、光透過率が最小となる画素値に設定する。キーストーン補正処理部55は、補正後の画像信号をフレームレート変換処理部56に出力する。制御部51は、入力操作部50に対するユーザーの入力操作に応じて補正の有無や補正の程度等を決定する。或いは、プロジェクター1の傾き等を検出する検出手段を備えるようにして、検出手段の検出結果に応じて補正の有無や補正の程度等を決定するようにしてもよい。なお、制御部51から台形歪を補正する旨の指示がない場合には、キーストーン補正処理部55は、OSD処理部54から入力される画像信号を、そのままフレームレート変換処理部56に出力する。この場合には、画素領域13aの全域が画像形成領域となり、画素領域13aの全域で入力画像が形成される。
【0039】
フレームレート変換処理部56は、制御部51の指示に基づいて、画像信号入力部20から入力された画像信号のフレームレートを、液晶ライトバルブ13R,13G,13Bで表示を行うための所定のフレームレート(例えば、60Hz)に変換する処理を行う。具体的には、制御部51は、入力信号判定部52が判定した画像信号のフレームレートに応じて、フレームレート変換処理部56にフレームレート変換処理を行わせる。そして、フレームレート変換処理部56は、入力された画像信号のフレームレートが所定のフレームレートよりも低い場合には、フレームを補間する処理を行い、入力された画像信号のフレームレートが所定のフレームレートよりも高い場合には、フレームを間引く処理を行う。フレームレート変換処理部56は、処理後の画像信号をオーバードライブ処理部57に出力する。なお、制御部51からフレームレートを変換する旨の指示がない場合には、フレームレート変換処理部56は、キーストーン補正処理部55から入力される画像信号を、そのままオーバードライブ処理部57に出力する。
【0040】
オーバードライブ処理部57は、制御部51の指示に基づいて、液晶ライトバルブ13R,13G,13Bの中間階調における応答を高速にするためのオーバードライブ処理を施す。具体的には、オーバードライブ処理部57は、中間階調に設定される画素に通常よりも大きな電圧が印加されるように画素値を調整し、調整後の画像信号を画像投写部10の液晶駆動部16に出力する。このオーバードライブ処理により、動きの早い映像(動画像)を表示した際の残像を低減することが可能となる。
【0041】
インターフェイス部58は、フレームバッファー40に接続されており、各画像処理部53〜57とフレームバッファー40との間で、処理中の画像信号の入出力を行う。即ちインターフェイス部58は、各画像処理部53〜57から出力された処理中の画像信号をフレームバッファー40に書き込むとともに、フレームバッファー40から画像信号を読み出して各画像処理部53〜57に出力する。
【0042】
各画像処理部53〜57は、圧縮伸張処理部60を備えており、画像信号をフレームバッファー40に書き込む際には、転送するデータ量を削減するために、画像信号を圧縮伸張処理部60で圧縮してインターフェイス部58に出力する。つまり、フレームバッファー40には、圧縮伸張処理部60で圧縮された画像信号が記憶される。また、画像処理部53〜57がフレームバッファー40から画像信号を読み出す際には、圧縮された状態の画像信号がインターフェイス部58によって圧縮伸張処理部60に入力され、圧縮伸張処理部60で圧縮を元に戻す処理(伸張)が行われる。
【0043】
図3は、画像処理部53〜57の内部構成を示すブロック図である。
図3に示すように、各画像処理部53〜57は、各種画像処理を実行する画像処理部本体59と、圧縮伸張処理部60とを備えて構成され、圧縮伸張処理部60は、圧縮処理部61と、伸張処理部62とを含んでいる。
【0044】
圧縮処理部61は、画像処理部本体59から入力される画像信号を圧縮してインターフェイス部58に出力するものであり、3つの圧縮回路63a,63b,63cと、選択回路64とを含んで構成されている。
【0045】
各圧縮回路63a〜63cは、それぞれ異なる圧縮率で画像信号を圧縮する。なお、本明細書では、圧縮前のデータ量に対する圧縮後のデータ量の比を圧縮率とし、その数値が小さいほど「圧縮率が高い」と表現するものとする。本実施形態において、3つの圧縮回路63a〜63cは、それぞれ約50%、約70%、約90%の圧縮率で画像信号を圧縮可能に構成されている。つまり、3つの圧縮回路63a〜63cの中では、圧縮回路63aの圧縮率が最も高く、圧縮回路63cの圧縮率が最も低い。各圧縮回路63a〜63cは、それぞれ対応する圧縮率で画像信号を圧縮し、圧縮後の画像信号を選択回路64に出力する。選択回路64には、各圧縮回路63a〜63cで圧縮された画像信号とともに、圧縮されていない画像信号も入力される。そして、選択回路64は、入力される4つの画像信号の中から、制御部51の指示に基づく1つの画像信号を選択してインターフェイス部58に出力する。なお、圧縮されていない画像信号は、仮想の圧縮回路63dによって圧縮率100%で圧縮されているとみなすことが可能である。このため、本実施形態では、50%、70%、90%、100%の4つの圧縮率の中から制御部51が1つを指定し、指定された圧縮率を選択回路64が選択することによって圧縮率の設定が行われる。そして、設定された圧縮率で圧縮された画像信号がインターフェイス部58を介してフレームバッファー40に記憶される。
【0046】
各圧縮回路63a〜63cは、ハードウェアでデータ圧縮を行う回路構成を有しており、例えば、隣接する画素間での画素値の差分を符号化するDPCM(Differential Pulse Code Modulation)符号化アルゴリズムを用いた圧縮を行う。また、この圧縮は、非可逆圧縮であり、圧縮率が高いほど画像の細部の情報が失われて画像が劣化する。なお、圧縮のアルゴリズムは上記に限定されず、様々なアルゴリズムを採用することが可能であり、例えば、画素値の下位ビットを削除して、階調を減らすだけの圧縮であってもよい。
【0047】
伸張処理部62は、インターフェイス部58から入力される圧縮された画像信号を伸張して画像処理部本体59に出力するものであり、3つの伸張回路65a,65b,65cと、選択回路66とを含んで構成されている。
【0048】
各伸張回路65a〜65cは、ハードウェアでデータ伸張を行う回路構成を有しており、インターフェイス部58から入力される画像信号をそれぞれ個別に伸張して選択回路66に出力する。伸張回路65a〜65cは、それぞれ圧縮回路63a〜63cに対応付けられており、対応する圧縮回路で圧縮された画像信号を圧縮前と同じ形式に復元可能に構成されている。ただし、上述したように、圧縮回路63a〜63cでの圧縮は非可逆圧縮であるため、画像信号が圧縮前の状態に完全に復元されるわけではなく、劣化した状態で復元される。選択回路66には、各伸張回路65a〜65cで伸張された画像信号とともに、伸張を行わない画像信号も入力される。そして、選択回路66は、入力される4つの画像信号の中から、制御部51の指示に基づく1つの画像信号を選択して画像処理部本体59に出力する。なお、伸張を行わない画像信号は、仮想の圧縮回路63dに対応する仮想の伸張回路65dを経由して選択回路66に出力されるものとする。
【0049】
ここで、制御部51は、圧縮処理部61で選択した画像信号に対応する画像信号を選択する。つまり、圧縮処理部61において圧縮回路63aで圧縮された画像信号を選択した場合には、伸張処理部62では、伸張回路65aで伸張された画像信号を選択し、圧縮回路63bで圧縮された画像信号を選択した場合には、伸張回路65bで伸張された画像信号を選択し、圧縮回路63cで圧縮された画像信号を選択した場合には、伸張回路65cで伸張された画像信号を選択する。また、圧縮処理部61において圧縮されていない画像信号、即ち圧縮回路63dを経由した画像信号を選択した場合には、伸張処理部62では、伸張を行わない画像信号、即ち伸張回路65dを経由した画像信号を選択する。
【0050】
本実施形態の制御部51は、画像処理装置30の動作状況(負荷状況)に応じて圧縮処理部61の圧縮率を設定する。例えば、入力される画像信号の解像度に基づくリサイズ処理部53の負荷状況や、入力される画像信号のフレームレートに基づくフレームレート変換処理部56の負荷状況、或いはキーストーン補正の有無や補正の程度に基づくキーストーン補正処理部55の負荷状況に応じて圧縮率を設定する。つまり、制御部51は、画像処理装置30が比較的高負荷で、フレームバッファー40の帯域(データの転送能力)が不足しやすい状況であるほど圧縮率を高めて、転送データ量を削減する。一方、制御部51は、画像処理装置30が比較的低負荷で、フレームバッファー40の帯域に余裕がある状況であるほど、圧縮率を下げて画像の劣化を抑制する。なお、圧縮処理部61の圧縮率は、すべての画像処理部53〜57で共通の圧縮率としてもよいし、画像処理部53〜57毎に個別に圧縮率を設定できるようにしてもよい。圧縮率が個別に設定できる場合には、画像処理部53〜57毎に、処理状況等に応じて適切な圧縮率で圧縮を行うことが可能となる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の画像処理装置30によれば、以下の効果を得ることができる。
【0052】
(1)本実施形態の画像処理装置30によれば、フレームバッファー40との間で入出力される画像信号を圧縮するとともに、圧縮する際の圧縮率を設定可能になっているため、動作状況(負荷状況)に応じた適切な圧縮率に設定することが可能となり、フレームバッファー40を用いた画像処理を効率的に行うことが可能となる。
【0053】
(2)本実施形態の画像処理装置30によれば、複数の圧縮回路63a〜63dで圧縮された画像信号の中から選択回路64が1つを選択する構成であるため、圧縮率の設定を簡単な構成で実現することが可能となる。
【0054】
(3)本実施形態の画像処理装置30によれば、異なる画像処理を行う複数の画像処理部53〜57のそれぞれが圧縮伸張処理部60を有しているため、圧縮や伸張の制御、及びフレームバッファー40の入出力の制御が容易になる。
【0055】
なお、本実施形態では、制御部51及び選択回路64が圧縮率設定部として機能する。また、インターフェイス部58がインターフェイス部に相当する。
【0056】
(変形例)
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0057】
上記実施形態では、制御部51が負荷状況に応じて圧縮率を設定しているが、この態様に限定されない。例えば、図4に示すように、設定内容を記憶する不揮発性のメモリー、又はジャンパースイッチ等によって構成される設定部67を画像処理装置30に備えるようにして、制御部51が、設定部67の設定内容に応じて圧縮率の設定を行うようにしてもよい。このような構成では、予め設定された所定の圧縮率を用いて圧縮処理を行うことになるため、動作状況等に応じて圧縮率を動的に変更することはできないものの、設定部67によって使用環境等に応じた圧縮率に設定することができる。例えば、この画像処理装置30を、高い画質が求められる高価格の製品に搭載する場合には、設定部67にて圧縮率を低く設定して画像の劣化を抑制する一方で、DRAMの個数を増やして帯域を確保するようにすることができる。また、この画像処理装置30を、高価格の製品より画質が低いことが許容される低価格の製品に搭載する場合には、DRAMの個数を減らすとともに、設定部67にて圧縮率を高く設定して帯域の不足を補うようにすることができる。この結果、低価格の製品にも高価格の製品にも同一の画像処理装置30を使用することが可能となり、画像処理装置30の汎用性が高まる。なお、このような構成では、制御部51、設定部67及び選択回路64が圧縮率設定部として機能する。また、メニュー画像等を用いてユーザーが圧縮率を指定できるようにして、指定した圧縮率を設定部67(メモリー)に記憶する態様を採用してもよい。
【0058】
また、設定部67の設定に応じて、圧縮率の選択範囲(選択肢)を切り替えるようにすることもできる。例えば、設定部67を第1の設定にした場合には、制御部51は、50%、70%、90%の圧縮率の中から1つを負荷状況等に応じて指定し、設定部67を第2の設定にした場合には、70%、90%、100%の圧縮率の中から1つを負荷状況等に応じて指定するようにしてもよい。このような構成においては、制御部51は複数の圧縮率(50%、70%、90%及び100%)のいずれかを指定することができるようになっており、設定部67を第1の設定にした場合には、この複数の圧縮率のうち一部の圧縮率(50%、70%及び90%)のいずれかを指定することができる。また設定部67を第1の設定とは異なる第2の設定にした場合には、制御部51は、第1の設定においては指定できない圧縮率(100%)を含む一部の圧縮率(70%、90%及び100%)を指定することができる。逆に設定部67を第1の設定にした場合には、制御部51は、第2の設定においては指定できない圧縮率(50%)を含む一部の圧縮率(50%、70%及び90%)を指定することができることになる。
【0059】
上記実施形態において、すべての画像処理部53〜57が圧縮伸張処理部60を備えている必要はなく、例えば、複数の画像処理部のうち、他の画像処理部よりも処理負荷が高い1以上の画像処理部(例えば、キーストーン補正処理部55やフレームレート変換処理部56等)にのみ圧縮伸張処理部60を備えるようにしてもよい。
【0060】
上記実施形態では、画像処理装置30が、5つの画像処理部53〜57(リサイズ処理部53、OSD処理部54、キーストーン補正処理部55、フレームレート変換処理部56、オーバードライブ処理部57)を備えているが、これらの画像処理部53〜57をすべて備えている必要はない。また、上記以外の画像処理部を備えた構成としてもよい。例えば、鑑賞者の右眼と左眼にそれぞれ異なる映像を視認させることによって鑑賞者に立体像を認識させるための処理を行う画像処理部を備える場合には、この処理によって負荷が高くなりやすいため、画像信号の圧縮率を設定できることの効果が一層高まる。
【0061】
上記実施形態では、3つの液晶ライトバルブ13R,13G,13Bを用いた3板式のプロジェクター1について説明したが、これに限定されない。例えば、1つの液晶ライトバルブでR光、G光、B光を変調可能な単板式のプロジェクター1に適用することも可能である。
【0062】
上記実施形態では、光変調装置として、透過型の液晶ライトバルブ13R,13G,13Bを用いているが、反射型の液晶ライトバルブ等、反射型の光変調装置を用いることも可能である。また、入射した光の射出方向を、画素としてのマイクロミラー毎に制御することにより、光源から射出した光を変調する微小ミラーアレイデバイス等を用いることもできる。
【0063】
上記実施形態では、照明光学系11は、放電型の光源ランプ11aを備えて構成されているが、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)光源等の固体光源や、その他の光源を用いることもできる。
【0064】
上記実施形態では、画像処理装置30がプロジェクター1に搭載された例を示したが、この態様に限定されない。例えば、画像処理装置30を、プロジェクター1以外の画像表示装置(例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等)に搭載するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…プロジェクター、10…画像投写部、11…照明光学系、11a…光源ランプ、12…色光分離光学系、13R,13G,13B…液晶ライトバルブ、13a…画素領域、14…色光合成光学系、15…投写レンズ、16…液晶駆動部、20…画像信号入力部、30…画像処理装置、40…フレームバッファー、50…入力操作部、51…制御部、52…入力信号判定部、53…リサイズ処理部、54…OSD処理部、55…キーストーン補正処理部、56…フレームレート変換処理部、57…オーバードライブ処理部、58…インターフェイス部、59…画像処理部本体、60…圧縮伸張処理部、61…圧縮処理部、62…伸張処理部、63a,63b,63c,63d…圧縮回路、64…選択回路、65a,65b,65c,65d…伸張回路、66…選択回路、67…設定部、S…投写面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される画像信号に画像処理を施して出力する画像処理装置であって、
当該画像処理装置の外部にあり、当該画像処理装置に接続される記憶装置との間で、処理中の画像信号の入出力を行うインターフェイス部と、
前記インターフェイス部から前記記憶装置に出力する画像信号を圧縮するとともに、前記記憶装置から前記インターフェイス部に入力された画像信号を伸張する圧縮伸張処理部と、
前記圧縮伸張処理部で前記画像信号を圧縮する際の圧縮率を設定する圧縮率設定部と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記圧縮伸張処理部は、異なる圧縮率で前記画像信号を圧縮可能な複数の圧縮回路を備え、
前記圧縮率設定部は、前記複数の圧縮回路に含まれる1の圧縮回路で圧縮された画像信号を選択することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像処理装置であって、
前記圧縮率設定部は、前記画像処理の負荷状況に応じて前記圧縮率を変更することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像処理装置であって、
異なる画像処理を行う複数の画像処理部を含んでおり、
前記複数の画像処理部のそれぞれが前記圧縮伸張処理部を有していることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置であって、
前記複数の画像処理部が有する前記圧縮伸張処理部は、それぞれの圧縮率を個別に設定可能であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像処理装置であって、
前記画像信号のフレームレートを変換するフレームレート変換処理部をさらに備え、
前記圧縮伸張処理部は、前記フレームレート変換処理部から前記記憶装置に出力される画像信号の圧縮、及び前記記憶装置から前記フレームレート変換処理部に入力される画像信号の伸張を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像処理装置であって、
前記画像信号に基づく画像を投写する場合に生じる台形歪を補正するキーストーン補正処理部をさらに備え、
前記圧縮伸張処理部は、前記キーストーン補正処理部から前記記憶装置に出力される画像信号の圧縮、及び前記記憶装置から前記キーストーン補正処理部に入力される画像信号の伸張を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
前記記憶装置と、
を備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
前記記憶装置と、
を備えたことを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−17014(P2013−17014A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148006(P2011−148006)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】