説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】人物の顔を含む画像の色が適正である場合に不要なホワイトバランス補正処理を実行しないように設定する技術の提供。
【解決手段】実行順序が予め決められた複数の種類の画像処理を含む複合自動画像処理であって、ホワイトバランス補正処理と肌色補正処理とを実行する場合には前記ホワイトバランス補正処理が先に実行される複合自動画像処理を、人物の顔を含む画像を示す画像データに基づいて実行するにあたり、前記画像データに基づいて、被写体の色と比較して画像の色が特定の色に偏っている色かぶりの程度に応じて変化する特徴量を抽出し、前記特徴量に基づいて、前記色かぶりが発生しているか否かを判定し、前記色かぶりが発生していないと判定された場合、前記複合自動画像処理において前記ホワイトバランス補正処理を実行せずに前記肌色補正処理を実行するように前記複合自動画像処理にて実行される画像処理を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の種類の画像処理を含む複合自動画像処理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複合的な自動画像処理を行う場合に、画像処理を実行すべきか否かを判定し、実行すべきと判定された画像処理を実行するように設定する技術が開発されている。すなわち、被写体の画像の色等が不適切である場合には画像処理によって補正を行うべきであるが、適切である場合に画像処理を行うと当該画像処理によって不適切な色を生成してしまうため、画像処理の実行前に予め実行可否を判定する。例えば、特許文献1に開示された技術においては、画像の良し悪しを示す出来レベルに応じて色補正レベルを決定しており、当該出来レベルは、ホワイトバランスの良し悪し等によって決められる。例えば、色分布が均一である場合にはホワイトバランスが適正であるとみなして出来レベルを向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−209857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、人物の顔を含む画像の色が適正である場合に不要なホワイトバランス補正処理を実行してしまう場合があった。例えば、特許文献1に開示された技術においては、色分布が均一である場合にホワイトバランス補正処理を実行しないように設定することができるが、ホワイトバランス補正処理を実行すべきでない状態は色分布が均一である場合に限られない。すなわち、人物の顔を屋外で撮影した場合などにおいては多数の色によって画像が表現され、色分布が均一とならない場合も多くの場面で発生する。しかし、特許文献1においては、このような場合にホワイトバランス補正処理を実行すべきか否かを適正に判断することが出来ない。
本発明は前記課題にかんがみてなされたもので、人物の顔を含む画像の色が適正である場合に不要なホワイトバランス補正処理を実行しないように設定する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明において、ホワイトバランス補正処理と肌色補正処理とを実行する場合にはホワイトバランス補正処理が先に実行されるように複合自動画像処理における画像処理の実行順序が予め決められている。そして、画像の特徴量に基づいて色かぶりが発生していないと判定された場合、複合自動画像処理においてホワイトバランス補正処理を実行せずに肌色補正処理を実行するように複合自動画像処理にて実行される画像処理を設定する。すなわち、色かぶりが発生していない場合には、ホワイトバランス補正処理を行わずに肌色補正処理を実行することで、人物の顔を含む画像の色が適正である場合に不要なホワイトバランス補正処理を実行することなく肌色補正処理を実行するように構成している。
【0006】
ここで、複合自動画像処理は、予め複数の種類の画像処理を実行するとともに、実行する場合の実行順序が規定されている処理であり、少なくともホワイトバランス補正処理と肌色補正処理とを実行可能であるとともに、両補正処理を実行する場合にはホワイトバランス補正処理を肌色補正処理よりも先に実行するように設定されている処理である。すなわち、ホワイトバランス補正処理は、画像内の評価対象領域に含まれる被写体が適正な色のバランス(例えば、太陽光が光源である場合の色のバランス)と比較して、特定の色成分の強度が強くなっている場合に、色のバランスを適正な色に近づける処理であり、評価対象領域の全体について色のバランスが評価される。
【0007】
一方、肌色補正処理は、人物の顔の色が、予め決められた色の範囲(例えば、肌色の記憶色からの色差が所定値以下となる範囲)外である場合に、人物の顔の色を当該予め決められた色の範囲に近づける処理であり、人物の顔の色が評価される。さらに、ホワイトバランス補正処理と肌色補正処理との双方においては評価対象領域の画素の全てを補正対象とするため、肌色補正処理のように一部の領域(人物の顔の領域)の画素を評価して補正量を決める処理は、ホワイトバランス補正処理のように評価対象領域の画素を評価して補正量を決める処理と比較して、色のバランスに与える影響が大きいことが多い。そこで、ここではホワイトバランス補正処理を肌色補正処理よりも先に実行することとしている。
【0008】
しかし、このように、ホワイトバランス補正処理を先に実行するように構成した場合であっても、ホワイトバランス補正処理によって色のバランスが不適正になると、肌色補正処理も適正に実行されず、複合自動画像処理において実行すべき各種の画像処理に影響を与える。そこで、色かぶりが発生していない場合、すなわち、色バランスが適正である可能性が高い場合に、ホワイトバランス補正処理を行わずに肌色補正処理を実行することで、不要なホワイトバランス補正処理を実行することなく肌色補正処理を実行することが可能になり、不適切な色に補正されることを防止することができる。
【0009】
特徴量抽出手段は、被写体の色と比較して画像の色が特定の色に偏っている色かぶりの程度に応じて変化する特徴量を抽出することができればよい。色かぶりにおいて偏っている特定の色は何色であっても良い。特徴量は、色かぶりの程度に応じて変化する量であれば良い。すなわち、色かぶりの発生を直接的、あるいは間接的に示す各種の量を特徴量として抽出可能である。後者としては、例えば、色かぶりが発生する状況や発生する可能性が高い状況である場合にその量が特定の特徴を示すような特徴量が挙げられる。
【0010】
色かぶり判定手段は、特徴量に基づいて色かぶりが発生しているか否かを判定することができればよい。すなわち、特徴量は、画像に応じて変化するパラメータ値で表現されるため、当該パラメータ値が所定の範囲である場合に色かぶりが発生しているあるいは色かぶりが発生している可能性が高いとみなすことができるように、当該所定の範囲を予め決めておく。そして、特徴量が当該範囲内であるか否かに基づいて色かぶりが発生しているか否かを判定すればよい。
【0011】
実行対象設定手段は、色かぶりの発生に応じて複合自動画像処理において実行すべき画像処理と実行しない画像処理とを設定する機能を備えていれば良く、色かぶりが発生していないと判定された場合、当該機能によって、複合自動画像処理においてホワイトバランス補正処理を実行せずに肌色補正処理を実行するように設定する。むろん、色かぶりが発生していると判定された場合、ホワイトバランス補正処理を実行するように設定しても良いし、さらに他の条件を加味してホワイトバランス補正処理を実行するか否かを決定しても良い。
【0012】
さらに、被写体の色と比較して画像の色が特定の色に偏っている色かぶりの程度に応じて変化する特徴量としては、各種の特徴量を想定可能であり、例えば、画像データが示す画像の評価対象領域において彩度値が第1基準値以下である画素の評価対象領域に占める割合と、評価対象領域に含まれる評価対象領域に含まれる背景の画像が人物の顔の画像よりも高輝度である場合の輝度差と、背景の画像の輝度値とが挙げられる。
【0013】
すなわち、屋外には、雲、コンクリート、アスファルト等の無彩色の物体が多く存在し、屋内においては屋外よりも無彩色の物体が存在する可能性が低いため、画像内の彩度値を解析すると、画像が屋外で撮影されたことを特定することができる。そして、屋外の撮影では被写体の色のバランスと比較して特定の色が偏るような色かぶりが発生する可能性は低い。そこで、評価対象領域の画素の彩度値を特定し、彩度値が第1基準値以下である画素の評価対象領域に占める割合を特定すれば、当該割合が、画像が屋外で撮影されたことを特定するための特徴量となり、当該割合を色かぶりの程度に応じて変化する特徴量とみなすことができる。そして、屋外で撮影された画像における当該割合を予め統計的に特定しておけば、屋外で撮影された画像であるとみなすことが可能な範囲を当該割合について設定することができる。
【0014】
また、逆光の画像においては、被写体の色のバランスと比較して特定の色が偏るような色かぶりが発生する可能性は低い。そして、逆光の画像においては、背景の画像が人物の顔の画像よりも高輝度であるとともに、当該輝度差が大きい。そこで、背景の画像が人物の顔の画像よりも高輝度である場合における人物の顔の画像と背景の画像との輝度差を特定すれば、当該輝度差が、逆光の画像であることを特定するための特徴量となり、当該輝度差を色かぶりの程度に応じて変化する特徴量とみなすことができる。そして、逆光の画像における当該輝度差を予め統計的に特定しておけば、逆光の画像であるとみなすことが可能な範囲を当該輝度差について設定することができる。
【0015】
さらに、逆光の画像においては、背景の画像の輝度値が大きい。そこで、背景の画像の輝度値を特定すれば、当該輝度値が、逆光の画像であることを特定するための特徴量となり、当該輝度値を色かぶりの程度に応じて変化する特徴量とみなすことができる。そして、逆光の画像における当該輝度値を予め統計的に特定しておけば、逆光の画像であるとみなすことが可能な範囲を当該輝度値について設定することができる。
【0016】
以上のように、割合について屋外で撮影された画像であるとみなすことが可能な範囲を特定しておき、輝度差について逆光の画像であるとみなすことが可能な範囲を特定しておき、輝度値について逆光の画像であるとみなすことが可能な範囲を特定しておけば、割合が屋外で撮影された画像に対応した範囲であり、輝度差が逆光の画像に対応した範囲であり、輝度値が逆光の画像に対応した範囲である場合に色かぶりが発生していないと判定することができる。
【0017】
さらに、画像データが示す画像の評価対象領域において彩度値が第1基準値以下である画素の評価対象領域に占める割合と、人物の顔の画像の彩度値とを特徴量として取得する構成としても良い。評価対象領域において彩度値が第1基準値以下である画素の評価対象領域に占める割合については、上述のように、屋外で撮影された画像における当該割合を予め統計的に特定しておけば、屋外で撮影された画像であるとみなすことが可能な範囲を当該割合について設定することができる。
【0018】
さらに、人物の顔の色が適正である場合、人物の顔を構成する画素の彩度値が特定の範囲内になる。そこで、人物の顔の画像の彩度値を特定すれば、当該彩度値が、人物の顔の肌色が適正であることを特定するための特徴量となり、当該彩度値を色かぶりの程度に応じて変化する特徴量とみなすことができる。そして、人物の顔の画像における当該彩度値を予め統計的に特定しておけば、人物の顔の肌色が適正であるとみなすことが可能な範囲を当該彩度値について設定することができる。
【0019】
以上のように、割合について屋外で撮影された画像であるとみなすことが可能な範囲を特定しておき、彩度値について人物の顔の肌色が適正であるとみなすことが可能な範囲を特定しておけば、割合が屋外で撮影された画像に対応した範囲であり、彩度値が人物の顔の肌色に対応した範囲である場合に色かぶりが発生していないと判定することができる。
【0020】
さらに、屋内の撮影では被写体の色のバランスと比較して特定の色が偏るような色かぶりが発生する可能性が高い。そこで、評価対象領域の画素の彩度値を特定し、彩度値が第1基準値以下である画素の評価対象領域に占める割合を特定すれば、当該割合が、画像が屋内で撮影されたことを特定するための特徴量となり、当該割合を色かぶりの程度に応じて変化する特徴量とみなすことができる。そして、屋内で撮影された画像における当該割合を予め統計的に特定しておけば、屋内で撮影された画像であるとみなすことが可能な範囲を当該割合について設定することができる。
【0021】
そこで、当該割合が屋内で撮影された画像に対応した範囲である場合に色かぶりが発生していると判定し、色かぶりが発生していると判定された場合、複合自動画像処理においてホワイトバランス補正処理と肌色補正処理を実行するように複合自動画像処理にて実行される画像処理を設定するように構成してもよい。
【0022】
さらに、本発明のように、色かぶりが発生していないと判定された場合に複合自動画像処理においてホワイトバランス補正処理を実行しないように設定する手法は、方法やプログラムとしても適用可能である。また、以上のような装置、方法、プログラムは、単独の装置として実現される場合もあれば、複合的な機能を有する装置において共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態にかかる画像処理装置のブロック図である。
【図2】印刷制御処理のフローチャートである。
【図3】印刷制御処理のフローチャートである。
【図4】特徴量の特定を説明するための図である。
【図5】(5A)(5B)(5C)はホワイトバランス補正処理前のヒストグラム、(5D)(5E)(5F)はホワイトバランス補正処理の変換関数、(5G)(5H)(5I)はホワイトバランス補正処理後のヒストグラムを示す図である。
【図6】(6A)(6B)(6C)は肌色補正処理前のヒストグラム、(6D)(6E)(6F)は肌色補正処理の変換関数、(6G)(6H)(6I)は肌色補正処理後のヒストグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)画像処理装置の構成:
(2)印刷制御処理:
(2−1)顔検出処理:
(2−2)屋外撮影を示す特徴量を取得:
(2−3)逆光を示す特徴量を取得:
(2−4)適正な肌色であることを示す特徴量を取得:
(2−5)ホワイトバランス補正処理:
(2−6)肌色補正処理:
(3)他の実施形態:
【0025】
(1)画像処理装置の構成:
図1は、本発明にかかる画像処理装置として機能するコンピューター10の構成を示すブロック図である。コンピューター10は、RAM,ROM,CPU等を備える制御部20とHDD30とを備えており、ROMやHDD30等に記録されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとしてプリンタードライバー21を実行可能である。当該プリンタードライバー21は、図示しないインターフェースを介してコンピューター10と接続された印刷装置40を制御するためにコンピューター10にインストールされるドライバープログラムである。
【0026】
なお、本実施形態においては、プリンタードライバー21がインストールされることに伴って、色変換テーブル30cがHDD30に記録される。印刷装置40は、ROM,RAM,CPU等を備える制御部41eと、印刷ヘッド41a、駆動電圧生成部41b、キャリッジドライバー41c、モータードライバー41d等からなる印刷機構を備えており、制御部41eが各部を制御して印刷媒体上にインクを印刷することが可能である。
【0027】
本実施形態にかかる印刷装置40は、CMYK(C:シアン、M:マゼンタ、Y:イエロー、K:ブラック)のインクを印刷ヘッド41aから吐出することが可能なインクジェットプリンターである。印刷装置40は、印刷媒体の搬送経路に沿って設置された図示しない搬送ローラーを備えており、当該搬送ローラーに接続された図示しないモーターの回転駆動力によって搬送ローラーを回転させ、印刷媒体を印刷ヘッド41aと図示しないプラテンの間の印刷領域に搬送し、さらに、印刷後の印刷媒体を搬送して印刷装置40から排出させることが可能である。モータードライバー41dは、当該モーターに対して印加する電圧を生成する回路を備えており、制御部41eが出力する制御信号に応じて、制御部41eが指示したタイミングおよび回転駆動力でモーターを回転させるための電圧を生成し、モーターに対して印加する。
【0028】
印刷ヘッド41aには、複数のノズルが形成されており、各ノズルからインク滴を吐出することができる。本実施形態においては、複数のノズルが一方向に並ぶノズル列が印刷ヘッド41aに複数列形成されており、本実施形態においては、CMYKの各色に対応したノズル列が形成されている。各ノズルは図示しないインクタンクに連結されたインク室の開口部であり、インク室の壁面はピエゾ素子の伸縮に応じて移動可能に構成されている。当該ピエゾ素子が伸縮すると、インク室の壁面の変動に連動してインク室の容積が変動し、インク室内のインクがノズルから吐出される。
【0029】
複数のノズルに対応する複数のピエゾ素子には、駆動電圧生成部41bが接続されている。当該駆動電圧生成部41bは、所定の波形の周期的な電圧を生成する回路を備えており、当該電圧がピエゾ素子に印加されることにより、当該ピエゾ素子が駆動してインク滴を吐出する。制御部41eは、制御信号を出力することにより、駆動電圧生成部41bが生成した電圧波形を選択して任意のノズルのピエゾ素子に対して印加させることができる。
【0030】
さらに、本実施形態において印刷ヘッド41aは、図示しないキャリッジによって所定方向に往復動可能に構成されている。すなわち、キャリッジは、キャリッジドライバー41cの制御によって、所定方向に印刷ヘッド41aを移動させることが可能である。また、所定方向に対して垂直な方向に移動可能な範囲の端部まで印刷ヘッド41aが達した場合、制御部41eは、モータードライバー41dに対して制御信号を出力し、印刷ヘッド41aの移動方向に対して垂直な方向に印刷媒体を単位距離だけ搬送する。
【0031】
さらに、制御部41eは、所定方向に印刷ヘッド41aが単位距離だけ移動する度に、駆動電圧生成部41bに対して制御信号を出力して所定の電圧波形を選択してピエゾ素子に当該電圧波形を印加してノズルからインクを吐出させる。この結果、制御部41eは、印刷媒体にCMYKインクを記録して画像を印刷することができる。本明細書においては、所定方向に印刷ヘッド41aを移動させる動作を主走査と呼ぶ。また、主走査の方向に垂直な方向に印刷媒体を搬送する動作を副走査と呼ぶ。
【0032】
印刷装置40は、制御部20がプリンタードライバー21を実行することによって印刷を実行することが可能である。プリンタードライバー21は、印刷対象とされた画像を示す画像データ30aに基づいて画像を印刷するが、当該画像を印刷する際に複数の画像処理を自動で実行する。すなわち、複数の種類の画像処理を実行する順序が予め決められており、制御部20は、プリンタードライバー21の処理により、各画像処理の実行の可否を判断し、実行すべきとされた画像処理について決められた順序に従って画像処理を実行する。
【0033】
本実施形態においては、顔検出処理、ホワイトバランス補正処理、肌色補正処理、色変換処理、ハーフトーン処理、並べ替え処理をこの順序で実行するように予め決められている。すなわち、本実施形態における複合自動画像処理は、顔検出処理、ホワイトバランス補正処理、肌色補正処理、色変換処理、ハーフトーン処理、並べ替え処理によって構成される。顔検出処理、ホワイトバランス補正処理、肌色補正処理については後述する。
【0034】
色変換処理は、画像データ30aで利用されるRGB(R:レッド、G:グリーン、B:ブルー)の各色をインク色であるCMYKに変換するための処理であり、制御部20が色変換テーブル30cを参照することによって実行される。すなわち、色変換テーブル30cは、RGB色空間の入力階調値(0〜255)とCMYK色空間の出力階調値(0〜255)とを複数の代表点について対応づけたデータとして定義されており、補間演算処理によって任意のRGB階調値をCMYK階調値に変換することができる。ハーフトーン処理は、CMYK階調値に基づいて、画素毎のインク滴の吐出の有無を示すデータを生成する処理であり、並べ替え処理は、各主走査においてインクが印刷され得る画素が早い順序に並ぶように画素の順序を並べ替える処理である。
【0035】
本実施形態において、制御部20は、ホワイトバランス補正処理や肌色補正処理の実行の可否を決定して複合自動画像処理を行う。このために、プリンタードライバー21は、特徴量抽出部21aと、色かぶり判定部21bと、実行対象設定部21cと、複合自動画像処理部21dとを備えており、図2,図3に示すフローチャートに従って印刷制御処理を実行することによって複合自動画像処理を実行する。
【0036】
(2)印刷制御処理:
(2−1)顔検出処理:
コンピューター10には、図示しないインターフェースを介してディスプレイ、キーボード、マウス等のユーザーI/F部42が接続されており、制御部20は、当該ユーザーI/F部42による利用者の指示によって印刷制御処理を開始する。印刷制御処理が開始されると、制御部20は、特徴量抽出部21aの処理により、顔検出処理を実行し(ステップS100)、顔検出処理によって顔が検出されたか否かを判定する(ステップS105)。すなわち、顔検出処理は、印刷対象の画像を示す画像データ30aに基づいて人物の顔を検出する処理であり、制御部20は、人物の顔の特徴として予め決められた特徴を有する部分を検出する処理を行う。そして当該処理によって、人物の顔の特徴として予め決められた特徴を有する部分が検出された場合に、人物の顔が検出されたと判定する。なお、本実施形態において人物の顔が検出されると、人物の顔において髪を除いた矩形の部分が肌色部分として特定される。例えば、図4に示す画像Ioのように人物が撮影された画像においては、人物の顔が検出されるとともに、顔の中央および下部に相当する矩形の部分Pが肌色部分として特定される。
【0037】
ステップS105において、人物の顔が検出されたと判定されない場合、制御部20は、ステップS110〜S205をスキップする。当該ステップS110〜S205は、ホワイトバランス補正処理および肌色補正処理に関するフローチャートであり、当該ステップS110〜S205をスキップすることにより、複合自動画像処理においてホワイトバランス補正処理および肌色補正処理を実行しないことになる。
【0038】
(2−2)屋外撮影を示す特徴量を取得:
一方、ステップS105において、人物の顔が検出されたと判定された場合、制御部20は、特徴量抽出部21aの処理により、顔の肌色部分におけるRGBそれぞれの平均値を取得する(ステップS110)。すなわち、ステップS100にて特定された肌色部分の画像データに基づいて、各画素の階調値をRGBの色毎に平均化し平均値を取得する。例えば、図4に示す画像Ioにおいては、肌色部分PにおけるRGB毎の平均値Ra,Ga,Baが特定される。
【0039】
次に、制御部20は、特徴量抽出部21aの処理により、肌色部分の輝度値を取得する(ステップS115)。すなわち、制御部20は、ステップS110にて取得した、肌色部分におけるRGBそれぞれの平均値を所定の輝度算出式に代入し、肌色部分の輝度値とする。なお、輝度算出式は例えば、Y=0.29891×Ra+0.58661×Ga+0.11448×Baにて与えられる(Yは輝度値、Ra,Ga,BaのそれぞれはRGB各色の平均値)。例えば、図4に示す画像Ioにおいては、肌色部分Pにおける輝度値Yfが特定される。
【0040】
次に、制御部20は、特徴量抽出部21aの処理により、第1基準値以下の彩度値の画素を特定する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、画像データ30aが示す画像の全画素について、画素毎のRGB階調値を所定の彩度算出式に代入して各画素の彩度値を算出する。そして、制御部20は、閾値データ30bを参照してHDD30に記録された第1基準値を特定し、彩度値と第1基準値とを比較して第1基準値以下の彩度値の画素を特定する。なお、彩度算出式は例えば、S=255×(max(R,G,B)−min(R,G,B))/max(R,G,B)にて与えられる。ここで、max(R,G,B)は、各画素のRGB階調値の中で最大の階調値、min(R,G,B)は、各画素のRGB階調値の中で最小の階調値である。また、第1基準値は人間の目が無彩色と認識する彩度値の範囲を特定するための閾値である。
【0041】
次に、制御部20は、特徴量抽出部21aの処理により、第1基準値以下の彩度値の画素の割合を取得する(ステップS125)。すなわち、制御部20は、(第1基準値以下の彩度値の画素数/全画素数)を第1基準値以下の彩度値の画素の割合として取得する。
【0042】
次に、制御部20は、色かぶり判定部21bの処理により、第1基準値以下の彩度値の画素の割合が第2基準値以上であるか否かを判定する(ステップS130)。ここで、第2基準値は、屋外で撮影された画像での割合として予め決められた範囲を規定するための閾値である。すなわち、屋外で撮影された色かぶりしていない画像において、第1基準値以下の彩度値の画素が全体に占める割合を特定し、第1基準値以下の彩度値の画素の割合が第2基準値以上である場合にその画像が所定の確率以上で屋外にて撮影された色かぶりしていない画像となるように第2基準値が予め特定され、閾値データ30bとして予めHDD30に記録されている。従って、ステップS125にて特定された割合が第2基準値以上であるか否かを判定すれば、処理対象となっている画像が屋外で撮影された色かぶりしていない画像であるか否かを判定することが可能になる。
【0043】
図4に示す画像Ioは、人物の背景に雲Cを含む画像である。色かぶりしていない画像において、雲は無彩色あるいは低彩度の色によって表現される。また、コンクリートやアスファルトなど、無彩色あるいは低彩度の色によって表現される物体は屋内と比較して屋外に多く存在する。そして、屋外で撮影された画像は、高い確率で一定面積以上の部分が無彩色あるいは低彩度の色によって表現される物体に占められている。図4の画像Ioにおいても、一定以上の面積が雲に占められている。従って、画像Ioに含まれる画素の彩度値を特定し、第1基準値以下の彩度値の画素の割合Dが第2基準値Th2以上であれば、画像Ioが屋外で撮影された色かぶりしていない画像である可能性が高いとみなすことができる。
【0044】
一方、屋内の撮影では被写体の色のバランスと比較して特定の色が偏るような色かぶりが発生する可能性が、屋外の撮影よりも高い。そこで、ステップS130にて割合が第2基準値以上であると判定されない場合、処理対象の画像が屋内で撮影されたとみなし、制御部20は、実行対象設定部21cの処理によりステップS135〜S155をスキップするように設定する。この場合、制御部20は、複合自動画像処理部21dの処理により、ステップS160以降にてホワイトバランス補正処理を実行し、その後、ステップS200以降にて肌色補正処理を実行する。すなわち、割合が第2基準値以上でない場合、複合自動画像処理においてホワイトバランス補正処理を実行するように設定される。
【0045】
(2−3)逆光を示す特徴量を取得:
屋外の撮影では被写体の色のバランスと比較して特定の色が偏るような色かぶりが発生する可能性が屋内での撮影より相対的に低いが、本実施形態においてはステップS130にて割合が第2基準値以上であると判定された場合、さらに、色かぶりであるか否かの判定を続ける。
【0046】
具体的には、制御部20は、特徴量抽出部21aの処理により、背景の輝度値を取得する(ステップS135)。ここでは、主要被写体以外の像が含まれる可能性が高い部分を背景とみなし、画像を分割するとともに中央部分よりも周辺部分が大きくなるように重み付けを行って分割領域毎の輝度を重みづけ加算することによって背景の輝度値を取得する。例えば、図4に示すように、画像Ioの4辺に平行な線で構成される一点鎖線で示す分割線Ldにより、人物の顔を含む中央領域と人物の顔を含まない背景領域とに画像Ioを分割する。そして、制御部20は、背景領域Rにおける画素のRGB階調値に基づいて上述の輝度算出式によって背景領域Rにおける輝度値Yrを取得する。
【0047】
次に、制御部20は、特徴量抽出部21aの処理により、背景と顔の肌色部分との輝度差を取得する(ステップS140)。本実施形態においては、背景の輝度値から肌色部分の輝度値を減じた値が特定される。例えば、図4に示す例においては、(背景の輝度値Yr)−(ステップS115にて取得された輝度値Yf)が輝度差ΔYとして特定される。
【0048】
次に、制御部20は、色かぶり判定部21bの処理により、輝度差ΔYが第3基準値Th3より大きく、背景の輝度値Yrが第4基準値Th4以上であるか否かを判定する(ステップS145)。すなわち、屋外において背景が人物の顔よりも明るい逆光画像が撮影された場合、被写体の色のバランスと比較して特定の色が偏るような色かぶりが発生する可能性は低い。そして、逆光画像においては、背景の画像が人物の顔の画像よりも高輝度であるとともに、当該輝度差が大きい。
【0049】
そこで、本実施形態においては、背景の画像が人物の顔の画像よりも高輝度である逆光画像が複数個サンプルとして収集され、各画像において人物の顔の画像と背景の画像との輝度差が特定され、任意の画像における輝度差を解析した場合に所定の確率以上で逆光画像となるように輝度差の範囲が特定され、当該輝度差の範囲を示す第3基準値Th3が閾値データ30bとして予めHDD30に記録されている。なお、本実施形態において、第3基準値Th3は正の数である。従って、輝度差ΔYが第3基準値Th3よりも大きい場合には、背景の輝度の方が人物の顔の輝度よりも大きくなる。
【0050】
さらに、逆光の画像においては、背景の画像の輝度値が大きい。そこで、本実施形態においては、上述の複数個のサンプルにおいて背景の画像の輝度値が特定され、任意の画像における背景の画像の輝度値を解析した場合に所定の確率以上で逆光画像となるように背景の画像の輝度値の範囲が特定され、当該輝度値の範囲を示す第4基準値Th4が閾値データ30bとして予めHDD30に記録されている。従って、輝度差ΔYが第3基準値Th3より大きく、背景の輝度値Yrが第4基準値Th4以上であるか否かを判定すれば、処理対象となっている画像が逆光画像であるか否かを判定することが可能になる。
【0051】
例えば、図4に示す画像Ioは、人物の像にハッチングを付することによって画像Ioが逆光画像であることを示している。このような逆光画像においては、人物の顔の肌色領域Pよりも背景領域Rの方が明るく(背景領域Rの輝度値Yr)−(肌色部分Pの輝度値Yf)によって特定される輝度差ΔYが第3基準値Th3よりも大きくなる。また、屋外で撮影された逆光画像である画像Ioにおいては高輝度領域である背景領域Rの輝度値Yrが第4基準値Th4以上となる。
【0052】
そこで、ステップS145にて、輝度差ΔYが第3基準値より大きく、背景の輝度値Yrが第4基準値以上であると判定された場合、処理対象の画像が逆光画像であるとみなし、制御部20は、実行対象設定部21cの処理によりステップS150〜S190をスキップするように設定する。この場合、制御部20は、複合自動画像処理部21dの処理により、ステップS160〜S190におけるホワイトバランス補正処理を実行せず、ステップS200以降にて肌色補正処理を実行する。すなわち、輝度差ΔYが第3基準値Th3より大きくかつ背景の輝度値Yrが第4基準値Th4以上である場合、複合自動画像処理においてホワイトバランス補正処理を実行しないように設定される。
【0053】
(2−4)適正な肌色であることを示す特徴量を取得:
一方、ステップS145にて、輝度差ΔYが第3基準値より大きく、背景の輝度値Yrが第4基準値以上であると判定されない場合、すなわち、「輝度差ΔYが第3基準値以下である」、「背景の輝度値Yrが第4基準値より小さい」の少なくとも一方を満たす場合、処理対象の画像が逆光画像でないとみなし、制御部20は、さらに、色かぶりであるか否かの判定を続ける。この場合、制御部20は、特徴量抽出部21aの処理により、顔の肌色部分の彩度値Sfを取得する(ステップS150)。すなわち、上述の彩度算出式のR,G,Bのそれぞれに、ステップS110にて特定された肌色部分のRGB階調値の平均値Ra,Ga,Baを代入することによって肌色部分の彩度値Sfを取得する。
【0054】
次に、制御部20は、色かぶり判定部21bの処理により、彩度値Sfが第5基準値Th5以下であるか否かを判定する。すなわち、色かぶりしていない画像において人物の肌色の彩度値は予め決められた所定範囲に含まれ、この場合の肌色の彩度は低い。そこで、本実施形態においては、人の顔の肌色部分が適正な肌色である場合の彩度値が特定され、任意の画像における肌色部分の彩度値を解析した場合に所定の確率以上で肌色部分が適正な肌色となるように彩度値の範囲が特定され、当該彩度値の範囲を示す第5基準値Th5が閾値データ30bとして予めHDD30に記録されている。従って、彩度値Sfが第5基準値Th5以下であるか否かを判定すれば、処理対象となっている画像が肌色部分が適正な肌色であるか否かを判定することが可能になる。例えば、図4に示す画像Io'のように逆光画像ではない画像において肌色部分が適正な肌色であれば、肌色部分の彩度値Sfは第5基準値Th5以下となる。
【0055】
そこで、ステップS155にて、彩度値Sfが第5基準値Th5以下であると判定された場合、処理対象の画像が適正な肌色であるとみなし、制御部20は、実行対象設定部21cの処理によりステップS160〜S190をスキップするように設定する。この場合、制御部20は、複合自動画像処理部21dの処理により、ステップS160〜S190におけるホワイトバランス補正処理を実行せず、ステップS200以降にて肌色補正処理を実行する。すなわち、彩度値Sfが第5基準値Th5以下である場合、複合自動画像処理においてホワイトバランス補正処理を実行しないように設定される。
【0056】
(2−5)ホワイトバランス補正処理:
一方、ステップS155にて、彩度値Sfが第5基準値Th5より大きいと判定された場合、処理対象の画像において色かぶりが発生している可能性があるとみなし、制御部20は、実行対象設定部21cの処理によりステップS160〜S190にてホワイトバランス補正処理を実行するように設定する。
【0057】
具体的には、制御部20は、複合自動画像処理部21dの処理により、RGB値のヒストグラムを作成する(ステップS160)。すなわち、画像データ30aが示す画像を構成する画素のそれぞれについてRGBの色毎に同一の階調値の出現回数を特定しヒストグラムとする。図5A,5B,5Cは、RGBそれぞれの色成分のヒストグラムの例を示す図であり、それぞれにおいて、横軸を階調値(0〜255)、縦軸をヒストグラムとして示している。なお、HrはR成分のヒストグラム、HgはG成分のヒストグラム、HbはB成分のヒストグラムである。
【0058】
次に、制御部20は、複合自動画像処理部21dの処理により、階調値の最大値をRGBの色毎に取得する(ステップS165)。例えば、図5A,5B,5Cに示すように、R階調値の最大値Rmax、G階調値の最大値Gmax、B階調値の最大値Bmaxのそれぞれを取得する。
【0059】
次に、制御部20は、複合自動画像処理部21dの処理により、階調値の最大値に基づいてRGBの色毎にホワイトバランスの変換関数を作成する(ステップS170)。本実施形態において制御部20は、RGBの全色において最大値が一致するように階調値を補正するホワイトバランスの変換関数を作成する。すなわち、制御部20は、RGB各色の階調値の最大値の中で最も大きい値および色を特定し、他の色の階調値の最大値が当該最も大きい色に一致するようにホワイトバランスの変換関数を作成する。
【0060】
例えば、図5A,5B,5Cに示す例において、RGB各色の階調値の最大値Rmax,Gmax,Bmaxの中で、最も大きい値はRmaxである。従って、この例においては、G階調値の最大値GmaxおよびB階調値の最大値Bmaxを最も大きい値Rmaxに一致させるように階調値を変換するホワイトバランスの変換関数を作成する。図5D,5E,5Fのそれぞれは、このようにして作成されたRGBそれぞれのホワイトバランスの変換関数の例を示す図である。この例において、横軸はホワイトバランスの変換関数適用前の階調値、縦軸はホワイトバランスの変換関数適用後の階調値を示しており、階調値を線形関数によって変換するためのホワイトバランスの変換関数を実線で示している。
【0061】
すなわち、本例において、R成分はホワイトバランスの変換関数による変換前後で変化がないため傾き1の直線によってホワイトバランスの変換関数が示されている。一方、G成分については図5Eに示されており、G階調値の最大値GmaxをG'max(=Rmax)に変換するためのホワイトバランスの変換関数が、傾きが1より大きい実線の直線によって示されている。B成分については図5Fに示されており、B階調値の最大値BmaxをB'max(=Rmax)に変換するためのホワイトバランスの変換関数が、傾きが1より大きい実線の直線によって示されている。なお、図5E,5Fに示す破線の直線は、変換前後で階調値を変化させない場合のホワイトバランスの変換関数である。
【0062】
次に、制御部20は、複合自動画像処理部21dの処理により、画像全体のRGB各色のそれぞれをホワイトバランスの変換関数に基づいて変換する(ステップS175)。図5G,5H,5Iにおいては、それぞれ、図5Aに示すヒストグラムの画像に図5Dに示すホワイトバランスの変換関数を適用し、図5Bに示すヒストグラムの画像に図5Eに示すホワイトバランスの変換関数を適用し、図5Cに示すヒストグラムの画像に図5Fに示すホワイトバランスの変換関数を適用した場合に得られるヒストグラムH'r,H'g,H'bを模式的に示している。これらの図5G,5H,5Iに示すように、本例においてR成分の階調値は変化せず、G成分およびB成分の階調値は値が大きくなるようにシフトする。この結果、RGB各色のバランスが均衡し、色かぶりを抑制することができる。
【0063】
以上のようなステップS160〜S175は、ステップS130の判定によって屋外で撮影されたとみなされ、かつ、ステップS145の判定によって逆光画像であるとみなされた場合にはスキップされる。また、ステップS130の判定によって屋外で撮影されたとみなされ、かつ、ステップS155の判定によって顔の肌色部分が適正な肌色であるとみなされた場合にもステップS160〜S175はスキップされる。すなわち、色かぶりが発生していないとみなされた場合にはスキップされる。従って、無用なホワイトバランス補正処理を実行することを防止することができる。さらに、色かぶりが発生していないにもかかわらずホワイトバランス補正処理を実行することにより、後の肌色補正処理等に悪影響を与えることを防止することができる。
【0064】
次に、制御部20は、特徴量抽出部21aの処理により、顔の肌色部分におけるRGBそれぞれの平均値を取得し(ステップS180)、肌色部分の輝度値を取得する(ステップS190)。これらの処理は、上述のステップS110およびステップS115と同様であるが、処理対象となる画像データはステップS175におけるホワイトバランス補正処理後のデータである。すなわち、肌色部分におけるRGBそれぞれの平均値と肌色部分の輝度値は後の処理によって使用され、ホワイトバランス補正処理が行われた場合、その値がステップS110,S115によって取得された値と異なる値となるべきであるため、再度これらの値を取得する。
【0065】
(2−6)肌色補正処理:
次に、制御部20は、肌色部分のRGBそれぞれの平均値および肌色部分の輝度値に基づいてRGBの色毎に肌色の変換関数を作成する(ステップS200)。なお、肌色部分のRGBそれぞれの平均値および肌色部分の輝度値は、ステップS110,S115にて特定された値あるいはステップS180,S190にて特定された値である。すなわち、ホワイトバランス補正処理が行われた場合、後者の値が利用される。本実施形態においては、処理対象となる画像の肌色部分の色と予め設定された理想的な肌色との差分の大きさに応じて大きさが変動する補正量を特定し、予め設定された基準階調値を当該補正量によって補正するような変換関数を作成して肌色の変換関数とする。
【0066】
例えば、図6A,6B,6Cに示すようなヒストグラムの画像(図5G,5H,5Iと同一)において、RGBの色毎の補正量ΔR,ΔG,ΔBは下記の式によって算出される。
ΔR=K×((Rd−Ra)+(Yd−Yf))
ΔG=K×((Gd−Ga)+(Yd−Yf))
ΔB=K×((Bd−Ba)+(Yd−Yf))
ここで、Kは補正量の大きさを決めるために予め定義された重みづけ係数、Rd,Gd,Bdは理想的な肌色におけるRGBそれぞれの階調値、Ra,Ga,Baは上述の肌色部分におけるRGBそれぞれの平均値、Ydは理想的な肌色における輝度値、Yfは上述の肌色部分における輝度値である。
【0067】
また、図6D,6E,6Fに示す例においてRGBそれぞれの基準階調値はRs,Gs,Bs(例えば64)であり、当該基準階調値Rs,Gs,Bsにおける階調値が変換関数による変換後にRs+ΔR,Gs+ΔG,Bs+ΔBとなるように変換関数が作成される。当該変換関数は、例えば、変換関数が多次関数であると予め定義し、階調値0および255においては入力階調値と出力階調値とが等値であり、基準階調値Rs,Gs,Bsに対応する出力階調値がRs+ΔR,Gs+ΔG,Bs+ΔBとなるように多次関数の係数を特定することによって特定可能である。図6D,6E,6Fにおいては、このようにして作成された変換関数を実線の曲線によって示している。
【0068】
次に、制御部20は、複合自動画像処理部21dの処理により、画像全体のRGB各色のそれぞれを肌色の変換関数に基づいて変換する(ステップS205)。例えば、図6D,6E,6Fに示す例において、R成分については図6Dに示すように入力階調値よりも出力階調値が大きくなるように変換し、G成分については図6Eに示すように入力階調値よりも出力階調値が大きくなるように変換し、B成分については図6Fに示すように入力階調値よりも出力階調値が小さくなるように変換する。
【0069】
図6G,6H,6Iにおいては、それぞれ、図6Aに示すヒストグラムの画像に図6Dに示す肌色の変換関数を適用し、図6Bに示すヒストグラムの画像に図6Eに示す肌色の変換関数を適用し、図6Cに示すヒストグラムの画像に図6Fに示す肌色の変換関数を適用した場合に得られるヒストグラムH''r,H''g,H''bを模式的に示している。これらの図6G,6H,6Iに示すように、肌色の変換関数をRGBそれぞれの階調値に適用すると、RGBそれぞれの階調値が肌色の理想値との差分に応じた補正量で補正され、肌色が理想の肌色に近づくように補正を行うことができる。
【0070】
次に、制御部20は、複合自動画像処理部21dの処理により、色変換処理を行う(ステップS210)。すなわち、制御部20は、色変換テーブル30cに基づいて処理対象の画像データが示すRGB階調値をCMYK階調値に変換する。なお、ステップS205が実行された場合、処理対象の画像データは肌色の変換関数による変換後のデータであり、ステップS105にて顔が検出されたと判定されない場合、処理対象の画像データは画像データ30aである。
【0071】
次に、制御部20は、複合自動画像処理部21dの処理により、ハーフトーン処理を実行する(ステップS215)。すなわち、制御部20は、上述のステップS210で得られたCMYK階調値に基づいて、画素毎にインク滴の吐出の有無を示すデータを生成する。次に、制御部20は、複合自動画像処理部21dの処理により、ハーフトーン処理後のデータを並べ替える並べ替え処理を行う(ステップS220)。すなわち、制御部20は、各主走査においてインクが印刷され得る画素が早い順序に並ぶように画素の順序を並べ替える。そして、制御部20は、並べ替え後の順序で画素毎のデータが印刷装置40に転送されるように印刷データを生成し、当該印刷データを印刷装置40に対して転送する。この結果、印刷装置40においては、複合自動画像処理後の画像データに基づいて印刷を実行することになる。
【0072】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、色かぶりが発生していないと判定された場合に複合自動画像処理においてホワイトバランス補正処理を実行しないように設定する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、画像処理装置はコンピューターではなく印刷装置やデジタルスチルカメラ等の機器に組み込まれていても良い。また、印刷装置40で使用するインクの数は4色に限定されず6色等であっても良い。
【0073】
さらに、ステップS135〜S145における逆光画像であることに基づく判定と、ステップS150〜S155における適正な肌色であることに基づく判定とは順序が逆であっても良いし、いずれか一方が判定される構成であっても良い。
【0074】
さらに、上述の実施形態においては、画像全体を評価対象として第1基準値と比較されるべき彩度値や背景等を定義していたが、画像の一部(例えば、フレーム画像を除いた部分)を評価対象として第1基準値と比較されるべき彩度値や背景等を定義しても良い。また、背景の定義は上述のような定義に限定されず、画像から人物の像を除外した部分を背景とする構成や、予め決められた典型的な背景色(例えば、空や木々の緑)の部分を背景とみなす構成等を採用可能である。
【0075】
さらに、肌色部分は矩形であったが、肌色部分として抽出される部分の形状は矩形に限定されず、他の形状であっても良い。さらに、複合自動画像処理においては、上述の画像処理以外の処理、例えば、明るさ補正や逆光補正を行っても良い。
【0076】
さらに、各種の特徴量を特定する際に参照される画素は対象となる画素の全てであっても良いし一部であっても良い。例えば、肌色部分の平均値を算出する際に参照される画素は肌色部分の全画素であっても良いし、一部の画素(例えば、一定の抽出率でサンプリングした画素)であっても良い。
【0077】
さらに、肌色部分が複数箇所存在しても良い。例えば、人物の顔が複数個検出された場合、肌色部分が複数箇所になる。この場合、肌色部分における平均値は、複数箇所にわたる平均値であっても良いし、複数箇所毎の平均値からさらに全箇所にわたる平均値を算出しても良い。
【0078】
さらに、彩度値を第1基準値と比較する場合に、比較対象となる画素を限定しても良い。例えば、非常に暗い画素(明度が所定の閾値以下の画素)は彩度算出式の分母が小さくなり、誤差による影響が大きくなるため除外する構成としても良い。また、非常に暗い画素や非常に明るい画素は彩度方向の色域が狭いため、非常に暗い画素や非常に明るい画素は除外する構成としても良い。
【0079】
さらに、ホワイトバランス補正処理において、RGBそれぞれの階調値の最大値を特定する場合、階調値が大きい画素から順に所定数だけ画素を除外し、残りの画素において階調値の最大値を特定してもよい。この構成によれば、ノイズによる影響を抑制することができる。
【0080】
さらに、ホワイトバランスの変換関数や肌色の変換関数は上述の例に限定されず、各種の直線や曲線によって定義することができる。
【符号の説明】
【0081】
10…コンピューター、20…制御部、21…プリンタードライバー、21a…特徴量抽出部、21b…判定部、21c…実行対象設定部、21d…複合自動画像処理部、30a…画像データ、30b…閾値データ、30c…色変換テーブル、40…印刷装置、41a…印刷ヘッド、41b…駆動電圧生成部、41c…キャリッジドライバー、41d…モータードライバー、41e…制御部、42…ユーザーI/F部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実行順序が予め決められた複数の種類の画像処理を含む複合自動画像処理であって、ホワイトバランス補正処理と肌色補正処理とを実行する場合には前記ホワイトバランス補正処理が先に実行される複合自動画像処理を、人物の顔を含む画像を示す画像データに基づいて実行する画像処理装置であって、
被写体の色と比較して画像の色が特定の色に偏っている色かぶりの程度に応じて変化する特徴量を、前記画像データに基づいて抽出する特徴量抽出手段と、
前記特徴量に基づいて、前記色かぶりが発生しているか否かを判定する色かぶり判定手段と、
前記色かぶりが発生していないと判定された場合、前記複合自動画像処理において前記ホワイトバランス補正処理を実行せずに前記肌色補正処理を実行するように前記複合自動画像処理にて実行される画像処理を設定する実行対象設定手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記特徴量抽出手段は、
前記画像データが示す画像の評価対象領域において彩度値が第1基準値以下である画素が前記評価対象領域に占める割合と、前記評価対象領域に含まれる背景の画像が前記人物の顔の画像よりも高輝度である場合の輝度差と、前記背景の画像の輝度値とを前記特徴量として取得し、
前記色かぶり判定手段は、
前記割合が屋外で撮影された画像での割合として予め決められた範囲に含まれ、
前記輝度差が逆光の画像での輝度差として予め決められた範囲に含まれ、
前記輝度値が逆光の画像での輝度値として予め決められた範囲に含まれる
場合に色かぶりが発生していないと判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記特徴量抽出手段は、
前記画像データが示す画像の評価対象領域において彩度値が第1基準値以下である画素が前記評価対象領域に占める割合と、前記人物の顔の画像の彩度値とを前記特徴量として取得し、
前記色かぶり判定手段は、
前記割合が屋外で撮影された画像での割合として予め決められた範囲に含まれ、
前記彩度値が前記人物の顔の肌色での彩度値として予め決められた範囲に含まれる
場合に色かぶりが発生していないと判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記特徴量抽出手段は、
前記画像データが示す画像の評価対象領域において彩度値が第1基準値以下である画素が前記評価対象領域に占める割合を前記特徴量として取得し、
前記色かぶり判定手段は、前記割合が屋内で撮影された画像での割合として予め決められた範囲に含まれる場合に色かぶりが発生していると判定し、
実行対象設定手段は、色かぶりが発生していると判定された場合、前記複合自動画像処理において前記ホワイトバランス補正処理と前記肌色補正処理を実行するように前記複合自動画像処理にて実行される画像処理を設定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
実行順序が予め決められた複数の種類の画像処理を含む複合自動画像処理であって、ホワイトバランス補正処理と肌色補正処理とを実行する場合には前記ホワイトバランス補正処理が先に実行される複合自動画像処理を、人物の顔を含む画像を示す画像データに基づいて実行する画像処理方法であって、
被写体の色と比較して画像の色が特定の色に偏っている色かぶりの程度に応じて変化する特徴量を、前記画像データに基づいて抽出する特徴量抽出工程と、
前記特徴量に基づいて、前記色かぶりが発生しているか否かを判定する色かぶり判定工程と、
前記色かぶりが発生していないと判定された場合、前記複合自動画像処理において前記ホワイトバランス補正処理を実行せずに前記肌色補正処理を実行するように前記複合自動画像処理にて実行される画像処理を設定する実行対象設定工程と、
を含むことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−242987(P2012−242987A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111092(P2011−111092)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】