説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】画像信号のノイズを低減することができる画像処理装置を実現する。
【解決手段】実施形態によれば、画像処理装置は、対象画素に対する複数の周辺画素それぞれの類似度を算出し、算出された類似度それぞれに対応する重み係数を用いて対象画素の値と複数の周辺画素の値との加重平均を算出し、加重平均に基づいて対象画素の値を修正する。類似度算出手段は、対象画素を含む画素ブロックの画素ベクトルと複数の基底ベクトルそれぞれとの複数の第1の内積を示す第3のベクトル、第1の周辺画素を含む第2の画素ブロックの画素ベクトルと基底ベクトルそれぞれとの複数の第2の内積とを算出し、複数の第1の内積を示す第3のベクトルと複数の第2の内積を示す第4のベクトルとの間の差の大きさに基づいて、対象画素と第1の周辺画素との類似度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像信号を処理するための画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビジョン(TV)、セットトップボックス、ビデオレコーダといった様々な画像処理装置が開発されている。これら画像処理装置の多くは、映像コンテンツの高画質化を実現するため高画質化機能を有している。
【0003】
高画質化機能の一つとして、ノイズ除去機能がある。ノイズ除去機能は画像信号内のノイズを低減する機能である。最近では、対象画素の近傍の幾つかの周辺画素の値を用いて対象画素の値を修正するというノイズ除去技術も開発され始めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−178302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、アナログ放送信号、アナログビデオ信号のような画像信号は比較的多くのノイズを含む場合がある。もし周辺画素自体が比較的多くのノイズ成分を含むならば、対象画素のノイズを低減できなくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、画像信号のノイズを低減することができる画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、画像処理装置は、画像信号に対するノイズリダクション処理を実行するように構成されている。前記画像処理装置は、類似度算出手段と修正手段とを具備する。前記類似度算出手段は、前記画像信号内の対象画素に対する前記対象画素の近傍の複数の周辺画素それぞれの類似度を算出する。前記修正手段は、前記算出された類似度それぞれに対応する重み係数を用いて前記対象画素の値と前記複数の周辺画素の値との加重平均を算出し、前記加重平均に基づいて前記対象画素の値を修正する。前記類似度算出手段は、前記対象画素を含む第1の画素ブロック内の画素それぞれの値を示す第1の画素ベクトルと複数の基底ベクトルそれぞれとの複数の第1の内積を算出し、前記複数の周辺画素内の第1の周辺画素を含む第2の画素ブロック内の画素それぞれの値を示す第2の画素ベクトルと前記複数の基底ベクトルそれぞれとの複数の第2の内積を算出し、前記複数の第1の内積を示す第3のベクトルと前記複数の第2の内積を示す第4のベクトルとの間の差の大きさに基づいて、前記対象画素に対する前記第1の周辺画素の類似度を算出するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態の画像処理装置内のノイズリダクション処理部によって実行される類似度算出処理の概要を示す図。
【図3】図2の類似度算出処理の手順を示す図。
【図4】同実施形態の画像処理装置内に設けられる類似度算出部の構成を示すブロック図。
【図5】同実施形態の画像処理装置において用いられる複数の基底パターンを示す図。
【図6】図5の複数の基底パターンを用いて実行されるベクトル変換処理を示す図。
【図7】同実施形態の画像処理装置によって表示されるモード設定画面を示す図。
【図8】同実施形態の画像処理装置によって実行されるノイズリダクション処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、一実施形態に係る画像処理装置の構成について説明する。この画像処理装置は、例えば、テレビジョン(TV)1として実現される。このTV1は、テレビジョン放送信号を受信し、この受信されたテレビジョン放送信号内の画像信号(放送番組の映像信号)に対応する画像をディスプレイに表示する。また、TV1は、テレビジョン放送信号のみならず、外部映像機器から出力される画像信号に対応する画像をディスプレイに表示することもできる。
【0010】
TV1は、図1に示されているように、チューナ2、入力信号セレクタデ4、コントローラ6、ノイズリダクション処理部8、出力信号セレクタ10、表示パネル12、リモコン信号受信部、等を備えている。
【0011】
テレビジョン放送信号は、アンテナ100、入力端子101を介してチューナ2に供給される。このチューナ2は、テレビジョン放送信号によって放送される映像コンテンツデータ(放送番組データ)を受信する受信部である。より詳しくは、チューナ2は、テレビジョン放送信号を受信し、受信したテレビジョン放送信号から画像信号(映像信号)を生成する。テレビジョン放送信号はたとえばアナログ放送信号である。チューナ2は、コントローラ6によって指定されるチャンネルのテレビジョン放送信号を受信し、その受信した放送信号を復調する。チューナ2から出力される画像信号(映像信号)はデジタル信号であってもよい。チューナ2から出力される映像信号は入力信号セレクタ4に供給される。
【0012】
入力端子102および103の各々は外部映像機器からの画像信号(映像信号)を入力するための入力端子である。入力端子102および103にそれぞれ入力される画像信号も入力信号セレクタ4に供給される。
【0013】
入力信号セレクタ4は、コントローラ6の制御の下、3種類の入力画像信号から1つの画像信号を選択し、そして選択した画像信号をノイズリダクション処理部8に供給する。このノイズリダクション処理部8は、画像信号に対して各種画像処理を施す映像処理部の一部として実現されている。ノイズリダクション処理は、画像信号のノイズを低減する処理である。ノイズリダクション処理では、画像信号内の各対象画素の値が必要に応じて修正される。この場合、対象画素の値とこの対象画素の近傍の幾つかの周辺画素の値との加重平均が算出され、この加重平均を用いて、当該対象画素の値が修正される。ある周辺画素に対応する重み付け値は、対象画素に対するその周辺画素の類似度に基づいて決定される。対象画素に対する類似度が高い周辺画素ほど大きな重み付け値が適用され、対象画素に対する類似度が低い周辺画素ほど小さな重み付け値が適用される。これにより、画像信号のテクスチャに合わせて適応的に各対象画素に対するノイズリダクション処理を行うことができる。
【0014】
出力信号セレクタ10は、コントローラ6の制御の下、ノイズリダクション処理が施された画像信号およびノイズリダクション処理が施されない画像信号のいずれか一方の画像信号を選択する。選択された画像信号は必要に応じて他の各種画像処理が施された後に、表示パネル12に供給される。表示パネル12は画像信号に対応する画像を表示するディスプレイである。表示パネル12は液晶ディスプレイのようなフラットパネルディスプレイであってもよい。
【0015】
コントローラ6はデジタル1内の各コンポーネントの動作を制御する。コントローラ6はマイクロコンピュータのようなプロセッサであってもよい。コントローラ6は、モード設定部32を備えている。モード設定部32は、複数の周辺画素を用いて対象画素の値を修正するという上述のノイズリダクション処理を必要に応じてON/OFFするように構成されている。より詳しくは、モード設定部32は、TV1をノイズリダクション処理が施された画像信号が出力される第1モードまたはノイズリダクション処理が施されない画像信号が出力される第2モードのいずれか一方のモードに設定する。TV1が第1モードに設定された場合、ON/OFF制御部33は、ノイズリダクション処理が施された画像信号を出力信号セレクタ10に選択させる。一方、TV1が第2モードに設定された場合、ON/OFF制御部33は、ノイズリダクション処理が施された画像信号を出力信号セレクタ10に選択させる。
【0016】
ユーザは、リモートコントローラを操作することにより、上述のノイズリダクション処理のON/OFFを指示することができる。換言すれば、モード設定部32は、リモコン信号受信部14によってリモートコントローラから受信される遠隔制御信号に基づいて、TV1を第1モードまたは第2モードのいずれか一方のモードに設定する。
【0017】
モード設定部32は、信号レベル判定部31によって判定される入力画像信号の信号レベルに応じて、上述のノイズリダクション処理を自動的にON/OFFすることもできる。信号レベル判定部31は、画像信号の信号レベルが閾値よりも低いか否かを判定し、この判定結果をモード設定部32に供給する。チューナ2によって受信される放送信号が入力画像信号として選択される場合においては、信号レベル判定部31は、チューナ2によって受信される放送信号の信号レベル、たとえば受信される放送信号の電界強度レベル、が閾値よりも低いか否かを判定する。チューナ2によって受信される放送信号はアナログ放送信号である。このため、放送信号の電界強度レベルが低い場合には、放送信号によって伝搬される画像信号に多くのノイズが含まれている可能性がある。放送信号の電界強度レベルが閾値よりも低い場合には、モード設定部32は、ノイズリダクション処理を自動的にONする。一方、放送信号の電界強度レベルが閾値以上である場合には、モード設定部32は、ノイズリダクション処理を自動的にOFFしてもよい。放送信号の電界強度レベルとしては、ブランキング期間中の電界強度レベルを用いてもよい。また、電界強度レベルを用いる代わりに、放送信号のペデスタルレベルを検出し、この検出されたペデスタルレベルが所定の閾値よりも低いか否かを判定してもよい。
【0018】
入力端子102がアナログ映像信号を入力するための端子である場合には、信号レベル判定部31は、外部映像機器から入力端子102に供給されるアナログ映像信号の信号レベルが閾値よりも低いか否かも判定する。
【0019】
ノイズリダクション処理部8は、バッファ21、類似度算出部22、および加重平均化部23を備える。バッファ21は入力画像信号内の画素群を一時的に格納するメモリである。対象画素(処理対象画素ともいう)のノイズリダクション処理に必要な複数の画素それぞれの値がバッファ21に格納される。対象画素の値および対象画素の近傍に存在する複数の周辺画素それぞれの値は、類似度算出部22および加重平均化部23の双方に供給される。また、対象画素の値は類似度算出部22および加重平均化部23に供給されるだけでなく、出力信号セレクタ10にも供給される。
【0020】
類似度算出部22は、対象画素に対する複数の周辺画素それぞれの類似度を算出する。複数の周辺画素は対象画素の近傍の画素である。加重平均化部23は、算出された類似度それぞれに対応する重み係数を用いて対象画素の値と複数の周辺画素の値との加重平均を算出し、この加重平均に基づいて対象画素の値を修正する。修正された対象画素の値は出力信号セレクタ10に供給される。なお、画像信号がRGB信号である場合には、2画素間の類似度の算出および加重平均の算出は、R,G,Bそれぞれについて別個に行ってもよい。
【0021】
本実施形態では、対象画素と任意の一つの周辺画素(第1の周辺画素)との間の類似度の算出においては、それら2つの画素のみならず、対象画素を含む第1の画素ブロックと、第1の周辺画素を含む第2の画素ブロックとが用いられる。
【0022】
以下、図2および図3を参照して、類似度算出処理の手順を説明する。
図2は、対象画素(処理対象画素)に対する複数の周辺画素それぞれの類似度の例を示している。図2では、対象画素を中心とする5×5画素の領域が類似度算出範囲として設定されている。この類似度算出範囲に属する画素毎に、対象画素に対する類似度が求められる。図2の右側は、対象画素を含む25画素それぞれの対象画素に対する類似度を示している。算出された類似度それぞれに対応する重み係数を用いて、対象画素の値と複数の周辺画素の値との加重平均、つまり25画素の値の加重平均、が算出される。そして、算出された加重平均に基づいて対象画素の値が修正される。この場合、算出された加重平均の値を対象画素の修正後の値として用いてもよい。
【0023】
図3は、ある2つの画素間の類似度算出処理の例を示している。図2では、対象画素を中心とする3×3画素の領域が対象画素を含む第1の画素ブロックとして設定されている。さらに、類似度算出対象画素を中心とする3×3画素の領域が、類似度算出対象画素を含む第2の画素ブロックとして設定されている。
【0024】
第1の画素ブロックは、あらかじめ決められた複数(N個)の基底ベクトルを用いてN次元のベクトルAに変換される。N個の基底ベクトルは画像をN個の空間周波数成分に分解するための基底である。N個の基底ベクトルを用いた変換は一種の直交変換に相当する。この変換では、第1の画素ブロック内の9画素それぞれ値を示す第1の画素ベクトルが各基底ベクトルに射影される。この射影のための演算では、第1の画素ベクトルと各基底ベクトルとの内積が算出される。算出されるベクトルAは、第1の画素ブロックの周波数特性を示す。つまり、算出されるベクトルAは、第1の画素ブロックが有するN個の空間周波数成分それぞれの値を示す。
【0025】
第2の画素ブロックも、同じN個の基底ベクトルを用いて、別のN次元のベクトルBに変換される。この変換では、第2の画素ブロック内の画素それぞれの値を示す第2の画素ベクトルを各基底ベクトルに射影する演算が実行される。この演算では、第2の画素ベクトルと各基底ベクトルとの内積が算出される。ベクトルBは第2の画素ブロックの周波数特性、つまり第2の画素ブロックが有するN個の空間周波数成分それぞれの値を示す。
【0026】
そして、これら2つのN次元ベクトルA,B間の差の大きに基づいて、対象画素と類似度算出対象画素との間の類似度が算出される。たとえば、ベクトルA,B間の距離の近さが、それら対象画素と類似度算出対象画素との間の類似度として算出される。
【0027】
次に、図4を参照して、類似度算出部22の構成を説明する。
類似度算出部22は、変換部41、および絶対差分和(SAD)算出部42を備える。変換部41は第1の画素ブロックaとN個の基底ベクトルe,e,…en−1それぞれとのN個の内積を算出し、これによって第1の画素ブロックaをN次元のベクトルAに変換する。ベクトルAは算出されたN個の内積を要素として含む。
【0028】
さらに、変換部41は、第2の画素ブロックbとN個の基底ベクトルe,e,…en−1それぞれとのN個の内積を算出し、これによって第2の画素ブロックbをN次元のベクトルBに変換する。ベクトルBは算出されたN個の内積を要素として含む。
【0029】
絶対差分和(SAD)算出部42は、ベクトルAとベクトルBとの間の絶対差分和(SAD)を算出する。ベクトルAとベクトルBとの間のSADは、それらベクトル間の差の大きさを示す。
【0030】
次に、図5を参照して、基底ベクトルe,e,…en−1の例について説明する。
本実施形態では、低周波成分(DC成分)から高周波成分までに至る範囲内に定義し得る全ての基底ベクトルのうち、自然画像の特性にあった幾つかの基底ベクトルが上述のN個の基底ベクトルとして予め選択されている。たとえば、全ての基底ベクトルから高周波成分側の幾つかの基底ベクトルを除いた残りの周波数成分それぞれに対応する基底ベクトルを、上述のN個の基底ベクトルとして用いてもよい。
【0031】
3×3の画素ブロックを周波数領域に変換する場合には、低周波成分(DC成分)から高周波成分までの至る範囲内に9個の基底パターンを定義することができる。本実施形態では、これら9個の基底パターンから高周波成分側の幾つかの基底パターンを除いた残りの基底パターン、たとえば低周波側の6つの基底パターンe,e,e,e,e,eが、上述のN個の基底ベクトルe,e,…en−1として用いられる。
【0032】
自然画像の周波数成分は低周波側に偏っている。このため、画像に含まれる高周波成分はノイズである可能性が高い。したがって、低周波側の基底ベクトルe,e,e,e,e,eのみを用いた変換により、ノイズによる影響を低減することができる。なぜなら、ベクトルA,Bのどちらも、基底ベクトルe,e,e,e,e,eに対応する複数の周波数成分以外の他の高周波数成分に関する値を含まないからである。したがって、ノイズのような特定の高周波成分を除外した状態で画素間の類似度を精度よく求めることができる。
【0033】
基底ベクトルe(=1,1,1,1,1,1,1,1,1)はDC成分に対応する基底パターンである。基底ベクトルe(=−1,−1,−1,2,2,2,−1,−1,−1)は一つの横線状の変化パターンを有する基底パターンである。基底ベクトルe(=−1,2,−1,−1,2,−1,−1,2,−1)は一つの縦線状の変化パターンを有する基底パターンである。基底ベクトルe(=−1,−1,2,−1,2,−1,2,−1,−1)は、斜め線状の変化パターンを有する基底パターンである。基底ベクトルe(=2,−1,−1,−1,2,−1,−1,−1,2)も、斜め線状の変化パターンを有する基底パターンである。基底ベクトルe(=−1,1,−1,1,0,1,−1,1,−1)は、格子状の変化パターンを有する基底パターンである。
【0034】
次に、図6を参照して、ベクトルAおよびベクトルBを算出する手順を説明する。
対象画素a5を含む第1の画素ブロックaに対応する第1の画素ベクトルは以下の通りである。
a=a1,a2,a3,a4,a5,a6,a7,a8,a9
類似度算出対象画素b5を含む第2の画素ブロックbに対応する第2の画素ベクトルは以下の通りである。
a=b1,b2,b3,b4,b5,b6,b7,b8,b9
まず、第1の画素ベクトル(=a1,a2,a3,a4,a5,a6,a7,a8,a9)と基底ベクトルe(=1,1,1,1,1,1,1,1,1)との内積(=a・e)が算出される。同様にして、第1の画素ベクトルと基底ベクトルeとの内積(=a・e)、第1の画素ベクトルと基底ベクトルeとの内積(=a・e)、第1の画素ベクトルと基底ベクトルeとの内積(=a・e)、第1の画素ベクトルと基底ベクトルeとの内積(=a・e)、第1の画素ベクトルと基底ベクトルeとの内積(=a・e)が算出される。
【0035】
ベクトルAは、以下のように表される。
A=a・e,a・e,a・e,a・e,a・e,a・e
次に、第2の画素ベクトル(=b1,b2,b3,b4,b5,b6,b7,b8,b9)と基底ベクトルeとの内積(=b・e)が算出される。同様にして、第2の画素ベクトルと基底ベクトルeとの内積(=b・e)、第2の画素ベクトルと基底ベクトルeとの内積(=b・e)、第2の画素ベクトルと基底ベクトルeとの内積(=b・e)、第2の画素ベクトルと基底ベクトルeとの内積(=b・e)、第2の画素ベクトルと基底ベクトルeとの内積(=b・e)が算出される。
【0036】
ベクトルBは、以下のように表される。
B=b・e,b・e,b・e,b・e,b・e,b・e
ベクトルAとベクトルBとの間のSADは、以下の式で求められる。
SAD=|a・e−b・e|+|a・e−b・e|+|a・e−b・e|
+|a・e−b・e|+|a・e−b・e|+|a・e−b・e|
次に、図7を参照して、表示パネル12に表示されるユーザインタフェースについて説明する。
コントローラ6は、ユーザによるリモートコントローラの操作に応じて、画像調整(映像調整)に関する各種設定のためのメニューを表示パネル12に表示する。図7に示されているように、映像調整の設定に関するメニューには「ノイズリダクション」項目が含まれている。ユーザによるリモートコントローラの操作によって「ノイズリダクション」項目が選択されると、コントローラ6は、ユーザにノイズ低減効果のオン/オフを指定させるための設定画面を表示パネル12に表示する。この設定画面には、オンモード、オフモード、およびオートモードそれぞれに対応する項目が表示される。ユーザは、リモートコントローラの操作によって、オンモード、オフモード、オートモードのいずれかを選択することができる。オンモードは上述の第1のモードである。オンモードが選択された場合には、ノイズリダクション処理が施された画像信号が表示パネル12に表示される。オフモードは上述の第2のモードであり、オフモードが選択された場合には、ノイズリダクション処理が施されない画像信号が表示パネル12に表示される。オートモードが選択された場合には、入力画像信号の信号レベルに応じて、ノイズリダクション処理のオンとオフとが自動的に切り替えられる。
【0037】
次に、図8のフローチャートを参照して、TV1によって実行されるノイズリダクション処理の手順について説明する。ノイズリダクション処理は放送番組データのような映像コンテンツデータの再生中に実行される。
【0038】
コントローラ6は、まず、ノイズリダクション(NR)がオンされているか否かを判定する(ステップS11)。ノイズリダクション(NR)がオンであるならば(ステップS11のYES)、ノイズリダクション処理が実行される。ノイズリダクション処理では、画像信号内の各対象画素の値が必要に応じて修正される。この場合、対象画素と対象画素の近傍の幾つかの周辺画素の値との加重平均を用いて、当該対象画素の値が修正される。ある周辺画素に対応する重み付け値は、その周辺画素と対象画素との間の類似度に基づいて決定される。図8においては、対象画素が図6の画素a5であり、類似度算出対象周辺画素(以下、第1の周辺画素という)が図6の画素b5である場合を想定する。
【0039】
ノイズリダクション処理部8は、まず、予め決められたN個の基底ベクトルe,e,…en−1を用いて、対象画素a5を含む画素ブロックaをベクトルA(=a・e,a・e,…,a・en−1)に変換する(ステップS12)。このステップS12では、画素ブロックa内の画素それぞれの値を示す第1の画素ベクトル(a1,a2,a3,a4,a5,a6,a7,a8,a9)と基底ベクトルeとの内積を算出する処理が、N個の基底ベクトルe,e,…en−1それぞれについて繰り返し実行される。これにより、N個の第1の内積(=a・e,a・e,…,a・en−1)が上述のベクトルAとして算出される。
【0040】
次いで、ノイズリダクション処理部8は、上述のN個の基底ベクトルe,e,…en−1を用いて、第1の周辺画素b5を含む画素ブロックbをベクトルB(=b・e,b・e,…,b・en−1)に変換する(ステップS13)。このステップS13では、画素ブロックb内の画素それぞれの値を示す第2の画素ベクトル(b1,b2,b3,b4,b5,b6,b7,b8,b9)と基底ベクトルeとの内積を算出する処理が、N個の基底ベクトルe,e,…en−1それぞれについて繰り返し実行される。これにより、N個の第2の内積(=b・e,b・e,…,b・en−1)が上述のベクトルBとして算出される。
【0041】
次いで、ノイズリダクション処理部8は、ベクトルAとベクトルBとの間のSADを算出し、このSADに基づいて、第1の周辺画素b5の対象画素aに対する類似度を算出する(ステップS14)。
【0042】
ノイズリダクション処理部8は、対象画素aのノイズリダクションのために使用されるべき全ての周辺画素の類似度が算出されたか否かを判定する(ステップS15)。類似度が算出されていない周辺画素が存在するならば(ステップS15のNO)、ノイズリダクション処理部8は、類似度算出対象周辺画素(第1の周辺画素)を別の周辺画素に変更する(ステップS16)。そして、ノイズリダクション処理部8は、ステップS13〜S15の処理を再び実行する。
【0043】
全ての周辺画素に対応する類似度が算出されたならば(ステップS15のYES)、ノイズリダクション処理部8は、全ての周辺画素に対応する類似度それぞれに対応する重み係数を用いて、対象画素aの値と全ての周辺画素の値との加重平均を算出し、そしてこの加重平均に基づいて対象画素aの値を修正する(ステップS17)。ステップS17では、たとえば、対象画素aと全ての周辺画素とを含む25画素それぞれに対応する25タップのローパスフィルタを用いて、25画素の加重平均を示す画素値が得られる。
【0044】
上述のノイズリダクション処理は画像信号内の全ての画素に対して実行される。これにより、各画素の値が修正された画像信号がディスプレイ(表示パネル12)に出力される(ステップS18)。
【0045】
ノイズリダクション(NR)がオフであるならば(ステップS11のNO)、コントローラ6は、ステップS12〜S17の処理をスキップして、ノイズリダクション処理が施されていない画像信号が表示パネル12に出力される(ステップS18)。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、対象画素に対する複数の周辺画素それぞれの類似度が算出される。そして、算出された類似度それぞれに対応する重み係数を用いて、対象画素の値と複数の周辺画素の値との加重平均が算出され、この加重平均に基づいて、対象画素の値が修正される。したがって、個々の対象画素の値を修正する処理を画像信号のテクスチャに合わせて適応的に実行することができ、これにより画像信号のノイズを低減することができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、対象画素と各周辺画素との間の類似度の算出においては、対象画素を含む第1の画素ブロック内の画素それぞれの値を示す第1の画素ベクトルと複数の基底ベクトルそれぞれとの複数の第1の内積が算出される。さらに、上述の複数の周辺画素内の第1の周辺画素を含む第2の画素ブロック内の画素それぞれの値を示す第2の画素ベクトルと上述の複数の基底ベクトルそれぞれとの複数の第2の内積が算出される。そして、複数の第1の内積を示す第3のベクトル(ベクトルA)と複数の第2の内積を示す第4のベクトル(ベクトルB)との間の差の大きさに基づいて、対象画素に対する第1の周辺画素の類似度が算出される。したがって、たとえある周辺画素にノイズが含まれていても、その周辺画素と対象画素との間の類似度の算出結果は、そのノイズに直接的に影響を受けることがない。よって、周辺画素の値と対象画素の値との間の差分値そのものを用いてそれら画素間の類似度を算出するという方法を用いる場合に比べ、本実施形態の処理は、それら画素間の類似度を精度よく算出することを可能にする。この結果、画像信号のノイズを効率よく低減することができる。
【0048】
さらに、ベクトルA,Bのどちらも、上述の複数の基底ベクトルに対応する複数の周波数成分以外の他の周波数成分に関する値は含まない。したがって、ノイズのような特定の高周波成分を除外することができるので、画素間の類似度をより精度よく算出することができる。
【0049】
本実施形態のノイズリダクション処理はノイズ低減効果が高いので、ノイズの少ない画像信号、たとえばデジタル画像等、に対してノイズリダクション処理を適用すると、その画像の尖鋭度が低下される可能性がある。本実施形態では、必要に応じてノイズリダクション処理の実行をON/OFFすることができるので、ノイズの多い画像信号、たとえばアナログ画像信号等、の表示中のみ、ノイズリダクション処理をONすることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、第1の画素ブロックおよび第2の画素ブロックの各々が正方ブロックである場合を例示したが、第1の画素ブロックおよび第2の画素ブロックの各々はたとえば横長の画素ブロックであってもよい。
【0051】
また、本実施形態のノイズリダクション処理はフレーム内処理であるため、写真等の静止画にも適用することができる。
【0052】
また、本実施形態のノイズリダクション処理はコンピュータプログラムによって実行することもできる。したがって、このコンピュータプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を通じて、このコンピュータプログラムをコンピュータにインストールして実行するだけで、本実施形態と同様の効果を容易に実現することができる。コンピュータとしては、プロセッサを含む様々な電子機器を使用することができる。
【0053】
また、本実施形態の画像処理装置はTVに限らず、セットトップボックス、ビデオレコーダ等であってもよい。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1…TV、2…チューナ、6…コントローラ、8…ノイズリダクション処理部、12…表示パネル、21…バッファ、22…類似度算出部、23…加重平均化部、41…変換部、42…SAD算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に対するノイズリダクション処理を実行するように構成された画像処理装置であって、
前記画像信号内の対象画素に対する前記対象画素の近傍の複数の周辺画素それぞれの類似度を算出する類似度算出手段と、
前記算出された類似度それぞれに対応する重み係数を用いて前記対象画素の値と前記複数の周辺画素の値との加重平均を算出し、前記加重平均に基づいて前記対象画素の値を修正する修正手段とを具備し、
前記類似度算出手段は、
前記対象画素を含む第1の画素ブロック内の画素それぞれの値を示す第1の画素ベクトルと複数の基底ベクトルそれぞれとの複数の第1の内積を算出し、
前記複数の周辺画素内の第1の周辺画素を含む第2の画素ブロック内の画素それぞれの値を示す第2の画素ベクトルと前記複数の基底ベクトルそれぞれとの複数の第2の内積を算出し、
前記複数の第1の内積を示す第3のベクトルと前記複数の第2の内積を示す第4のベクトルとの間の差の大きさに基づいて、前記対象画素に対する前記第1の周辺画素の類似度を算出するように構成されている画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理装置を前記ノイズリダクション処理が施された画像信号が出力される第1モードまたは前記ノイズリダクション処理が施されない画像信号が出力される第2モードのいずれか一方のモードに設定する設定手段をさらに具備する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
リモートコントローラから受信される遠隔制御信号に基づいて、前記画像処理装置を前記ノイズリダクション処理が施された画像信号が出力される第1モードまたは前記ノイズリダクション処理が施されない画像信号が出力される第2モードのいずれか一方のモードに設定する設定手段をさらに具備する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像信号の信号レベルが閾値よりも低いか否かを判定し、前記判定結果に基づいて、前記画像処理装置を前記ノイズリダクション処理が施された画像信号が出力される第1モードまたは前記ノイズリダクション処理が施されない画像信号が出力される第2モードのいずれか一方のモードに設定する設定手段をさらに具備する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
テレビジョン放送信号を受信し前記受信したテレビジョン放送信号から前記画像信号を生成するチューナをさらに具備する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
テレビジョン放送信号を受信し前記受信したテレビジョン放送信号から前記画像信号を生成するチューナと、
前記画像信号の信号レベルが閾値よりも低いか否かを判定し、前記判定結果に基づいて、前記画像処理装置を前記ノイズリダクション処理が施された画像信号が出力される第1モードまたは前記ノイズリダクション処理が施されない画像信号が出力される第2モードのいずれか一方のモードに設定する設定手段とをさらに具備する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記画像信号に対応する画像を表示するディスプレイをさらに具備する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項8】
画像信号を処理する画像処理制御方法であって、
前記画像信号内の対象画素に対する前記対象画素の近傍の複数の周辺画素それぞれの類似度を算出する処理と、前記算出された類似度それぞれに対応する重み係数を用いて前記対象画素の値と前記複数の周辺画素の値との加重平均を算出し、前記加重平均に基づいて前記対象画素の値を修正する処理とを含むノイズリダクション処理を実行し、
前記複数の類似度を算出することは、
前記対象画素を含む第1の画素ブロック内の画素それぞれの値を示す第1の画素ベクトルと複数の基底ベクトルそれぞれとの複数の第1の内積を算出することと、
前記複数の周辺画素内の第1の周辺画素を含む第2の画素ブロック内の画素それぞれの値を示す第2の画素ベクトルと前記複数の基底ベクトルそれぞれとの複数の第2の内積を算出することと、
前記複数の第1の内積を示す第3のベクトルと前記複数の第2の内積を示す第4のベクトルとの間の差の大きさに基づいて、前記対象画素に対する前記第1の周辺画素の類似度を算出することとを具備する画像処理方法。
【請求項9】
前記ノイズリダクション処理が施された画像信号を出力する第1モードまたは前記ノイズリダクション処理が施されない画像信号を出力する第2モードのいずれか一方のモードを選択することをさらに具備する請求項8記載の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−51587(P2013−51587A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189170(P2011−189170)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【特許番号】特許第5060643号(P5060643)
【特許公報発行日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】