説明

画像処理装置および画像処理装置の制御方法

【課題】装置間で共有している環境センサから同じ環境条件を取得することで、各装置においてキャリブレーションを実行するタイミングが同じになってしまう問題が起きていた。
【解決手段】検知した環境条件情報を他の画像処理装置へ送信する環境検知装置から、該他の画像処理装置へ送信された環境条件情報を取得する取得手段とキャリブレーションの実行タイミングを調整する補正間隔調整値を保持し、前記環境条件情報からキャリブレーションが必要と判断された場合に、前記保持された補正間隔調整値を用いて前記キャリブレーションを実行するタイミングを調整し、該調整されたイミングで前記キャリブレーションを行い、出力する画像の色味を補正するキャリブレーション手段とを備えることを特徴とする画像処理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置および画像処理装置の制御方法に関し、特に複数の画像処理装置が接続された画像処理システムにおいて、複数の画像処理装置から出力される出力画像の色味を安定化させるキャリブレーションの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来プリンタや複写機などの画像処理装置では、長期間に渡って使用するうちに出力画像の色味や濃度などの画像出力特性が変化する場合があることが知られている。
【0003】
例えば連続的に印刷を行い、印刷出力した枚数が多くなると徐々に画像出力特性が変化することがある。また画像処理装置が設置された環境(例えば温度・湿度など)の条件が変化すると、同様に画像出力特性が変化することもある。
【0004】
ここで電子写真方式により画像形成を行う画像処理装置の場合、電子写真プロセスにはレーザ露光、感光体上の潜像形成、トナーによる現像、紙などの出力媒体へのトナー像の転写、及び熱による定着といった過程が含まれる。これらのプロセス過程は装置周囲の温度や湿度、もしくは構成部品の経時変化などの影響を受けやすく、最終的に出力媒体上に定着されるトナー量が変化する結果、出力画像の色味や濃度等の変化が生じることになる。
【0005】
上記のような画像出力特性の変動による出力画像の不具合を解消するために、出力画像の色味を安定化させるキャリブレーション処理に関する技術が提案されている。電子写真方式の画像処理装置におけるキャリブレーション処理の一例としては次のようなものがあげられる。
【0006】
まず、装置内で所定濃度レベルの中間調処理されたパッチパターンをトナー像として中間転写体に複数点形成し、装置内に設けられたセンサによってそれらのパッチの濃度測定を行う。次に、その測定結果に基づいて入力濃度レベルに対する中間調処理の濃度特性を算出し、印刷データにおける入力濃度レベルが所定の標準濃度値になるように濃度補正テーブルを生成する。その後、印刷データの入力濃度レベルをこの濃度補正テーブルによって補正する。これにより、出力画像の色味や濃度を、常に入力濃度レベルに応じて一定範囲内に維持することができる。このようなキャリブレーション処理は、例えば特許文献1に記載されている。
【0007】
上記キャリブレーション処理は、多くの場合プリンタや複写機などの画像処理装置において自動的に行なわれるものである。例えば、画像処理装置に設けられた温度センサや湿度センサが検出する温度・湿度などの環境条件に所定値以上の変化があると、自動的にキャリブレーションを行う。これにより環境条件の変動によって画像出力特性が変化することを未然に防止する。また、連続して印刷される用紙の枚数が所定数以上になると、自動的にキャリブレーションを行うものも知られている。
【0008】
一方、キャリブレーション処理の技術的課題として、キャリブレーション処理実行中に出力処理ができないということがあげられる。すなわち、ユーザによる印刷処理実行の際にキャリブレーション処理が実行されていると、キャリブレーション処理にある程度時間がかかり、ユーザが出力物を得るまで時間がかかってしまう。そして自動的にキャリブレーション処理を行う画像処理装置の場合には、通常、キャリブレーションを行うタイミングは環境条件や印刷所定枚数より装置ごとに個々に決定されている。
【0009】
ここで、複数の画像処理装置が接続された画像処理システムを想定する。このような画像処理システムにおいては、装置間でのキャリブレーション処理開始タイミングの調整がなされない場合、複数の画像処理装置のキャリブレーション処理の実行タイミングが重なることがありうる。これにより、ユーザにとって、ネットワークで接続された画像処理装置の利便性が低下することになる。すなわち、複数の画像処理装置が接続された画像処理システムにおいては、ある画像処理装置がキャリブレーション処理を実行中であったり、あるいは故障中であるような場合には、他の画像処理装置で代替印刷が可能である。しかしながら、キャリブレーション処理の実行タイミングが重なってしまうと他の画像処理装置で代替印刷をすることができず、複数接続されている利便性が低下することになる。
【0010】
上記のような画像処理システムにおける問題に対して、システム内に管理サーバを導入することにより、ネットワークで接続された画像処理装置におけるキャリブレーション実行のタイミングを制御し、利便性の低下を防ぐ提案がなされている。(例えば特許文献2および特許文献3参照)。特許文献2の技術では、ネットワーク上の画像処理装置からキャリブレーション要求があった場合、管理サーバがネットワーク接続された装置のキャリブレーションの状況を確認し、キャリブレーション中の装置の台数をカウントする。そして、もしその時にキャリブレーション中の装置が所定の台数以下であるなら、キャリブレーションの許可を与えることでキャリブレーションの実行タイミングを制御する。また特許文献3の技術では、管理サーバがキャリブレーション実行のスケジューリングを行うことで、キャリブレーションの実行タイミングを制御している。このように管理サーバを用いている理由は、個々の画像処理装置のキャリブレーション実行のタイミングが各装置間で相関が無いからである。そのため、管理サーバなしで、キャリブレーション実行のタイミングの調整を行うことは困難だからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−238341号公報
【特許文献2】特開2006−163052号公報
【特許文献3】特開2006−074394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで低価格化が進む画像処理装置においては、キャリブレーション処理に使用される温度センサや湿度センサなどの制御装置を個々の装置に設けることはコストアップの要因となっている。従って温度センサ・湿度センサといった環境センサを外部に持たせる、または、別用途に用いられている環境センサを流用し、複数の画像処理装置で環境センサを共有することで画像処理装置の制御に利用する画像処理システムが有望視されている。
【0013】
特に近距離無線規格の1つであるZigBee(登録商標)といった省電力無線モジュールの実用化に伴い、環境センサもネットワークの一構成要素となり、より簡易に環境センサを共有することが可能になっている。
【0014】
しかし、このような環境下、画像処理装置が環境条件に所定値以上の変化がある際に自動的にキャリブレーションを実行するよう設定されていると、環境センサを共有している複数の画像処理装置でのキャリブレーションの実行タイミングが同じになってしまう。つまり、共有している環境センサから同じ環境条件を取得することになるのでキャリブレーションを実行するタイミングが同じになってしまう。結果、ネットワークで接続された画像処理装置の利便性が低下することになる。
【0015】
従来のように個々の画像処理装置に環境センサが取り付けられていた場合には、それぞれの環境条件取得タイミングや、環境センサの精度の差異がある。よって、環境条件に起因して、同時にキャリブレーションが実行される可能性はあまり高くない。
【0016】
また特許文献2または3の技術では、同時にキャリブレーションが発生することを回避するためにどちらもタイミングを制御する管理サーバを必要としている。しかしながら、管理サーバによるキャリブレーション制御は複雑な処理を必要とし、低価格化が進む簡易な画像処理システムでの実現は難しい。
【0017】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、複数の画像処理装置が接続された画像処理システムにおいて、同時にキャリブレーション処理が発生することを簡易に回避する画像処理システムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本願発明における画像処理装置は、検知した環境条件情報を他の画像処理装置へ送信する環境検知装置から、該他の画像処理装置へ送信された環境条件情報を取得する取得手段と、キャリブレーションの実行タイミングを調整する補正間隔調整値を保持する保持手段と、前記取得手段にて取得した前記環境条件情報からキャリブレーションが必要かを判断する判断手段と、前記判断手段においてキャリブレーションが必要と判断された場合に、前記保持手段にて保持された補正間隔調整値を用いて前記キャリブレーションを実行するタイミングを調整する調整手段と、前記調整手段で調整されたタイミングで前記キャリブレーションを行い、出力する画像の色味を補正するキャリブレーション手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の画像処理装置間で共通となる情報をもとにキャリブレーション処理を実行する場合において、装置間でのキャリブレーションの実行タイミングを個々の装置において調整するように制御することができる。これにより簡易に同時にキャリブレーション処理の発生タイミングが発生することを回避できる画像処理システムにおける画像処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】画像処理装置が複数ネットワークに接続された画像処理システムを示す図である。
【図2】本発明の実施形態における複写機(画像処理装置)のハードウェア構成の構成例を示す図である。
【図3】画像処理システムのデータ処理の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態における画像処理部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態におけるキャリブレーション処理部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図6】濃度補正テーブル作成処理の手順を示したフロー図である。
【図7】キャリブレーション処理時の濃度測定処理の例を示した図である。
【図8】濃度補正テーブルについての説明図である。
【図9】実施形態1におけるキャリブレーション処理の実行タイミングの制御フローを示した図である。
【図10】優先度及び補正間隔調整値の概念を示した図である。
【図11】実施形態3におけるキャリブレーション処理の実行タイミングの制御フローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0022】
<実施形態1>
図1は、画像処理装置であるプリンタや複写機が複数ネットワークに接続された本実施形態のシステムを示す図である。
【0023】
図1に示す本実施形態の画像処理システムは、ホストコンピュータ102、複写機A(104)、複写機B(105)、およびプリンタ106がネットワーク100を介し接続されて構成される。複写機A(104)、複写機B(105)、及びプリンタ106のいずれもが、ホストコンピュータ102により使用可能なように接続されている。なお両複写機A、Bは相互に同様の機能を有する。ホストコンピュータ102は、色情報、文字、図形、写真、及びコピー枚数等の印刷処理を行う印刷情報を複写機A(104)、複写機B(105)、及びプリンタ106へ送出することができる。また環境センサ103は、ネットワーク101を介して複写機A(104)、複写機B(105)、及びプリンタ106に、温度や湿度等の環境条件情報を送信することが可能な環境検知装置である。本実施形態において画像処理装置は、複写機A(104)、複写機B(105)及びプリンタ106のいずれにも相当する。なお、環境条件情報とは、環境センサ103が取得する、環境センサ103が設置されている環境における温度または湿度などを示す情報のことである。また、環境条件情報は、単に温度や湿度を示すだけではなく、前回の環境条件情報の送信時からの差分を示す情報であってもよい。
【0024】
また、この環境センサ103は、複写機A(104)、複写機(105)、プリンタ106を制御するためだけに用いられる専用のセンサではなくてもよい。つまり、複写機やプリンタ以外の他の装置の制御をするために、環境条件情報を検知して、他の装置に送信していてもよい。温度や湿度を検知し、周囲の装置に送信できるものであればよい。
【0025】
ここでネットワーク100としては、一般にイーサネット(登録商標)と呼ばれるシステムを使用することができる。これにより10Base−Tなどの物理的なケーブルを用いてTCP/IP等のプロトコルにより接続される各ユニット相互の情報授受やデータ転送を行う。なお、ネットワーク100を構成する通信は、ネットワークケーブルを用いた有線に限られるものではなく、無線を用いても同様なシステムを構成できる。
またネットワーク101としては、近距離無線通信としてZigBee(登録商標)と呼ばれるシステムを使用することができる。ZigBee(登録商標)はIEEE802.15.4に準拠した通信規格であり、消費電力が少なくセンサネットワークを構築するには最適とされている。もちろん、ネットワーク101はZigBee(登録商標)で構築されるものと限られるわけではなく、他の無線通信方式で構築されてもよく、あるいは、有線を用いたネットワークで構築されても良い。また、環境センサ103が、制御機器を介して、もしくはネットワーク101ではなく直接ネットワーク100に接続してすることで同様なシステムも構築できる。すなわち、本実施形態では2つの異なるネットワークを用いる例を説明するが、単一のネットワークにおいても本実施形態を適用することが可能である。
【0026】
なお、環境センサを共有するということは、その環境センサによって検知される環境条件におかれた画像処理装置間のみに、当該環境センサの出力結果が有効となるよう制御することを意味する。すなわち、ネットワーク100に接続されるすべての画像処理装置が当該環境センサからの環境条件情報を受信すると、異なる設置環境にある画像処理装置までもが当該環境センサの出力結果に応じて制御されてしまうことになる。このため、本実施形態はZigBee(登録商標)によるセンサネットワークにより同一の環境内にある画像処理装置のみが環境センサの出力結果(すなわち、環境条件情報)を識別できることを想定している。これはZigBee(登録商標)によるネットワークの有効通信距離が約40mであり、大きく環境が異なる位置にあるデバイスは制御できないことを利用する。なお、有線でのネットワークを想定した場合も、各画像処理装置の設置されている環境とそのネットワークアドレスなどを関連付けておき、マルチキャスト送信等により同一環境にあると識別される画像処理装置へ環境条件情報を送信することも可能である。
【0027】
図2は、本実施形態における複写機200のハードウェア構成の構成例を示したものである。複写機200は、各種の処理を実行するCPU 201と、以下で説明する各種フローチャートを実行するためのプログラムおよびテーブルが格納されているROM203と、一時的な記憶領域を提供するRAM 202とを含む。また、複写機200は、ハードディスクやフラッシュメモリ等の2次記憶装置204と、ボタンや液晶等の表示装置を含むユーザーインターフェース(以下、UI)205を含む。また、複写機200は、ネットワークインターフェース(以下ネットワークI/F)206を含み、該ネットワークI/F 206を介して、ホストコンピュータからの印刷情報を受信し、環境センサからの環境条件情報を受信する。また、複写機200は、原稿読み取り装置であるスキャナ207、及びプリンタエンジン208を含む。
【0028】
図3は、図1に示した画像処理システムのデータ処理の構成を示すブロック図である。
【0029】
複写機A(104)は画像処理部301及びキャリブレーション処理部302を備え、これらはバスを介して互いに接続される。また、画像処理部301は、ネットワークI/F・A(303)を介してネットワーク100と、キャリブレーション処理部302はネットワークI/F・B(304)を介してネットワーク101とそれぞれ接続されている。また画像処理部301には、原稿を読み取ることにより画像信号を取得するスキャナ306と、画像処理部301から送出された画像信号に基づいて実際の画像形成を行うプリンタエンジン305が接続されている。
【0030】
ホストコンピュータ102からの印刷情報はネットワーク100を介し、ネットワークI/F・A(303)より取得され画像処理部301で処理される。一方、環境センサ103からの環境条件情報はネットワーク101を介し、ネットワークI/F・B(304)より取得される。キャリブレーション処理部302は取得された環境条件情報をもとにキャリブレーション実行のタイミングを調整する。
【0031】
なお図3において複写機B(105)は先述のように複写機A(104)と同様の機能を持っている。またプリンタ106も画像処理部311にスキャナが接続されていないことを除き、やはり複写機A(104)と同様の機能を持つものとなる。
【0032】
環境センサ103は環境条件取得部321を保持しており、環境条件取得部321が温度または湿度といった環境条件を示す情報を環境条件情報として取得する。取得された環境条件情報はネットワークI/F322よりネットワーク101を介して、それぞれ複写機A(104)、複写機B(105)、及びプリンタ106に送信される。なお、環境条件情報の送信タイミングは、予め設定された値分の温度または湿度の変動があった場合にその都度送信してもよいし、一定の間隔でそのときの環境条件を送信してもよい。送信タイミングは予めユーザによって設定される。環境センサ103は、画像処理装置に対して同一の環境条件情報を一斉に通知することになる。
【0033】
図4は、複写機A(104)及び複写機B(105)が有する画像処理部301の詳細な構成例を示すブロック図である。
【0034】
図4において、オブジェクト生成部401は、ホストコンピュータ102からネットワークI/F・A(303)を介して入力される文字、図形、画像等の印刷情報(ページ記述言語)を中間情報(以下「オブジェクト」という)に変換する。
【0035】
レンダリング部402は、変換された1ページ分のオブジェクトに基づくレンダリング処理を行い、描画対象となるビットマップに変換する。イメージバッファ403はレンダリング部402により生成されたビットマップを格納する。一方、複写機A(104)及び複写機B(105)においてはスキャナ306より原稿を読み取ることにより取得したビットマップもまたイメージバッファ403に格納する。
【0036】
イメージバッファ403に格納されたビットマップに対し、濃度レベル補正処理部404はキャリブレーション処理部302で作成された濃度補正テーブル406を用いて濃度レベルの補正を行う。濃度レベル補正処理部404での処理に関しては後述する。ディザ処理部405は濃度レベル補正されたビットマップに対し、濃度レベルをプリンタエンジン305の出力階調数に合わせるために疑似中間調処理を行う。疑似中間調処理により生成されたビットマップはプリンタエンジン305にデータ送信され、電子写真プロセスを経て出力媒体上にトナーが定着されることで印刷処理が完了する。
【0037】
なおプリンタ106においてもその画像処理部311は、基本的に複写機の画像処理部301の構成と同様である。すなわち、スキャナ306により取得されたビットマップに対する処理を除けば、ホストコンピュータ102からの印刷情報に対する印刷処理も、濃度レベル補正処理も同様のものとなる。
【0038】
図5はキャリブレーション処理部302の詳細な構成例を示すブロック図である。
補正タイミング制御部502は、状態保持部504に保持された画像形成装置(複写機A(104)及び複写機B(105))の状態情報及び環境条件情報取得部503に取得された環境条件情報を元にキャリブレーション処理の実行タイミングを制御する。状態情報とは、キャリブレーション処理実行に関連する装置本体固有の状態を示す情報のことであり、例えば、前回のキャリブレーション処理を実行してからの出力印刷枚数、経過時間等のことである。状態保持部504はこのような状態情報を保持する。また状態保持部504は、環境条件情報を用いてキャリブレーション処理を実行する際に利用される補正間隔調整値も保持している。補正間隔調整値とは、キャリブレーション処理を実行するタイミングを調整するために用いられる各画像形成装置に固有の調整値である。補正間隔調整値の設定に関しては後述する。一方、環境条件情報取得部503は環境センサ103からネットワークI/F・B(304)を介して環境条件情報を取得する。ここでの環境条件情報は前述のとおり主に温度・湿度等を示す。
【0039】
補正タイミング制御部502によりキャリブレーション処理の実行が決定された場合、濃度補正テーブル作成部501は中間転写体上にパッチパターンを形成する。次に濃度測定部505がプリンタエンジンに設けられたセンサを用いることでその濃度値を測定することで、濃度補正テーブル406を作成または更新しキャリブレーション処理は終了する。
【0040】
図6はキャリブレーション処理時における濃度補正テーブル406の作成処理の手順を示した図である。以下、フローチャートで示す処理はROM203に記憶され、RAM202に一時的に読み出されたプログラムをCPU201が実行することで実現される。また図7はキャリブレーション処理時の濃度測定部505による濃度測定処理の様子を示した図である。以下、両図を用いて、本実施形態の画像処理装置における濃度補正テーブル作成部501の処理動作を説明する。
【0041】
図7の701は、Y、M、C、K各色に関して、濃度レベル0−255から任意の数点における中間調濃度レベルのパッチパターンの一例を示している。このパッチパターン701は実際に中間転写体702に印刷され、印刷されたパッチパターン701は濃度測定部505がセンサ703を用いることで濃度が測定される。図7の説明例では、パッチパターン701はYMCK各色の濃度レベル30H,60H,90H(Hは16進数を表す)としている。
【0042】
濃度補正テーブルの作成は、まず中間転写体702にパッチパターン701を形成し(ステップS601)、次にセンサ703でパッチパターン701の濃度を測定する(ステップS602)。
【0043】
次に濃度補正テーブル作成部501が、形成したパッチパターン701の濃度レベル値およびステップS602で測定したセンサ測定濃度値を取得する(ステップS603)。取得された各濃度レベルのセンサ測定濃度値を用いて、濃度補正テーブル作成部501が入力濃度レベルに対する濃度特性が規定の濃度特性となるような濃度補正テーブルを作成することで(ステップS604)、処理を終了する。
【0044】
図8は上記濃度補正テーブルについて説明する説明図である。
【0045】
図8(a)の実線801は図6のステップS601からステップS603で説明した濃度補正用パッチパターン701を印刷し、センサ703で測定した測定値より得られた入力濃度レベルに対する濃度特性である。図8(a)の破線802は予め定められた規定の濃度特性であり、ここでは入力濃度レベルに対する濃度特性の関係がリニアである特性を有したものを例としている。図8(b)の実線803は実際に作成される濃度補正テーブルであり、これを使用することにより図8(a)の実線801で示す濃度特性を図8の破線804で示すような規定の濃度特性に補正することができる。なお、図6の処理では濃度補正テーブルを作成する処理について説明したが、既に濃度補正テーブルが設定されている場合には、濃度補正テーブルを更新する処理を行うことも可能である。濃度補正テーブルを更新する処理についても、図6で示す処理の流れを適用することができる。
【0046】
次に補正タイミング制御部502によるキャリブレーション処理の実行タイミングの制御処理を説明する。
【0047】
本実施形態のキャリブレーション処理の実行タイミングは個々の画像処理装置において自動的に判断される。この際の実行タイミングを判断する条件は、以下の2点を含めることができる。まず1つは、前回のキャリブレーション処理実行からの出力印刷枚数や経過時間といった状態保持部504に保持されている装置本体固有の情報(状態情報)に基づく条件である。例えば、前回のキャリブレーションを実行してから、出力印刷が行われ、予め設定された値以上に出力印刷枚数が変化したタイミングでキャリブレーションが実行される。この装置本体固有の情報(状態情報)に基づくキャリブレーション補正の実行タイミングのことを本体補正タイミングと称する。
【0048】
もう1つは、環境センサから環境条件情報取得部503が取得した環境条件情報といった、複数の装置間で共有される情報に基づく条件である。複数の装置間で共有される情報は、言い換えれば、複数の装置間で共通して用いられる情報とも言える。従来のように個々の装置に環境センサが設けられている場合、環境条件情報も装置本体固有の情報とみなすことができる。しかしながら、本実施形態では複数の画像処理装置間において環境センサが共有されているので、環境条件情報は複数の画像処理装置による共有の情報となる。なお、このように複数の装置間で共有の情報(すなわち、環境条件情報)に基づくキャリブレーション補正の実行タイミングのことを外部補正タイミングと称する。
【0049】
補正タイミング制御部502では、装置本体固有の情報である状態情報を取得する(状態情報取得処理)。そして取得した状態情報に基づいて、すなわち前回のキャリブレーション処理からある特定の経過時間が経った場合や、ある特定の枚数を印刷した場合、本体補正タイミングとして補正が必要と判断する。また、複数の装置間で共有されている環境条件情報が所定値以上の変動を示す場合は外部補正タイミングとして補正を必要と判断する。すなわち、補正タイミング制御部502は、本体補正タイミングの場合と外部補正タイミングの場合とでそれぞれ補正が必要と判断する。
【0050】
しかしながら外部補正タイミングを条件(契機)としてキャリブレーション処理を実行した場合、複数の装置間で共有される情報に基づく外部補正タイミングを条件とすると、複数の装置で同時にキャリブレーション処理が発生する。
【0051】
本実施形態では、このような共有される情報をもとにキャリブレーション処理が実行される場合には、予め装置ごとに固有に設定されている補正間隔調整値を元にキャリブレーション処理の実行のタイミングをずらす。これにより環境センサの情報を共有する複数の画像処理装置において同時にキャリブレーション処理が発生することを回避することができる。
【0052】
補正間隔調整値を用いたタイミングの調整としては、例えば、各装置間で同時にキャリブレーション処理が発生しないよう、補正間隔調整値を用いて補正タイミングを調整する処理が挙げられる。一例としては、補正間隔調整値を用いて装置本体における本体補正タイミングを調整する処理が挙げられる。
【0053】
ここで補正間隔調整値は装置ごとに決められた値となる。また装置ごとに異なる値となることが望ましい。したがって、例えばハッシュ関数を用いて乱数を発生させることでそれぞれの装置で異なる補正間隔調整値を設定することが可能である。ハッシュ関数による補正間隔調整値の設定には、ハッシュキーとしてネットワークI/F206のMACアドレスを用いれば良い。なお、単に乱数を発生させるだけではキャリブレーション実行までに時間を要してしまい、環境変動に対応するためにキャリブレーションを行うという趣旨に反してしまうことが考えられる。そこで、外部補正タイミングによる補正要求からキャリブレーション実行までの最大許容時間を設定することで適切な補正間隔調整値を乱数として決定することができる。例えば、外部補正タイミングから最大15分キャリブレーション実行をしなくても良いとした場合、補正間隔調整値は0〜15分の間のランダムな数値で設定される。
【0054】
一方、補正間隔調整値は装置の使用頻度や機能を元に設定しても良い。例えば、頻繁に使用される装置に対しては、直ちに装置が使用されることが想定されるので、補正間隔調整値を短く設定してもよい。また、環境センサからの距離を元に設定しても良い。例えば、環境センサの距離が離れている装置においては、環境センサに敏感に反応しないように補正間隔調整値を長く設定してもよい。これらの設定はUI205を介してユーザが任意に決定することができる。
【0055】
図9は本実施形態における補正タイミング制御部502によるキャリブレーション処理の実行タイミングの制御フローを示したものである。以下、フローチャートで示す処理はROM203に記憶され、RAM202に一時的に読み出されたプログラムをCPU201が実行することで実現される。
【0056】
まず補正が必要である条件が満たされた場合(S901)、その補正要求が、本体補正タイミングによるものなのか、外部補正タイミングによるものなのかを判断する(S902)。ここで、本体補正タイミングによるもの(S902にてYes)と判断された場合、すなわち状態保持部504に保持されている経過時間や出力印刷枚数がキャリブレーション処理実行の条件を満たした場合、キャリブレーション処理を行う(S903)。キャリブレーション処理を行うことにより濃度補正テーブルを更新する。一方、本体補正タイミングではなく、外部補正タイミングによるもの(S902でNo)と判断された場合には次の処理をする。すなわちS904へ進む。そこで、状態保持部504に保持されている、個々の装置ごとの補正間隔調整値に基づいて本体で保持する状態情報による補正のタイミング(すなわち、本体補正タイミング)を調整する。例えば補正間隔調整値が5分であった場合、外部補正タイミングによる補正条件を満たした時点から、5分後に本体補正タイミングでの補正が発生するように状態保持部504の情報の調整を行う。そして5分後、今度は本体補正タイミングとして補正条件が満たされキャリブレーション処理が実行することで濃度補正テーブルは更新されることになる。本体補正タイミングでの補正が発生するように制御している理由は、外部補正タイミングによる補正でも本体補正タイミングによる補正でも、いずれにせよ同じキャリブレーション処理が実行されることに相違ないからである。すなわち、本体補正タイミングを考慮せずに、補正間隔が調整された外部補正タイミングのみで補正制御をすると、外部補正タイミングに続いて本体補正タイミングで連続してキャリブレーション処理が行われてしまう可能性がある。この場合には、直前に外部補正タイミングでキャリブレーションを行っているので、その時点からの枚数や経過時間を集計するべきである。そこで、本体補正タイミングで補正が発生するように制御することで、連続した無駄なキャリブレーション処理を行わずに済むという効果がある。なお、状態保持部504の情報の調整では、例えば5分後にキャリブレーションを行う指示を含めるとともに、その指示によるキャリブレーション実行がされた場合に状態保持部504に保持されている経過時間や出力印刷枚数をクリアすることになる。
【0057】
なお、本体補正タイミングによるキャリブレーション処理実行直後に外部補正タイミングによる補正要求が発生する場合が考えられる。この場合は別途、キャリブレーション処理実行からある程度の経過時間以内は、外部補正タイミングによる補正要求が発生しても本体補正タイミングは調整しない等対応することができる。本体補正タイミングによるキャリブレーションによって既に環境変動に対応している可能性があるからである。これにより不要なキャリブレーション処理を避けて利便性を向上させることができる。
【0058】
一方、外部補正タイミングによるキャリブレーション処理実行直後には、上述したように状態保持部に保持されている情報はクリアされているため、本体補正タイミングによる補正要求は発生しない。
【0059】
このように実行されたキャリブレーション処理により濃度補正テーブルは作成され、これを用いて濃度レベル補正処理を行うことで出力画像の色味や濃度の変動を回避することができる。
【0060】
複数の装置間で共有している情報がキャリブレーション処理の条件のような場合、通常では共有している画像処理装置間でキャリブレーション処理の要求が同時に発生してしまう。これに対して、本実施形態では共有する情報が同じであることを積極的に利用する。すなわち、同時に発生する補正要求から各装置においてそれぞれ予め決められた間隔でタイミングをずらすことで、複数台の画像処理装置におけるキャリブレーション処理の同時実行を回避する。
【0061】
以上のように本実施形態によれば、共有の環境センサにより取得される環境条件情報のような複数の機器間で共通となる情報をもとにキャリブレーションを実行する場合には、個々の装置間でキャリブレーションの実行タイミングを調整する処理をする。これにより簡易にシステム内の画像処理装置で同時にキャリブレーションが実行されることにより、システム内でユーザが使用可能な画像処理装置が減少することを回避する画像処理システムを提供することが可能となる。
【0062】
<実施形態2>
実施形態1では、共有の環境センサにより取得される環境条件情報をもとにキャリブレーションを実行する場合には、同時に発生する補正要求に対してそれぞれ予め決められた間隔で実行タイミングを調整する。これにより複数台の画像処理装置におけるキャリブレーション処理の同時実施を回避する例について説明した。
【0063】
しかしながら、装置ごとに設定された補正間隔が乱数である場合、より先にキャリブレーションを実行するべき装置が後にタイミングをずらされてしまうことが想定される。また補正間隔をユーザが設定する際も、ユーザにとって手間がかかるケースがある。特に装置の台数が増減する場合には、その都度最適な補正間隔を設定することは容易ではない。
【0064】
本実施形態では、それぞれの装置の状態保持部で保持されている装置本体固有の情報に応じて優先度を設ける。そして共有された環境センサにより取得された環境条件情報をもとにキャリブレーションを実行する場合には、各装置で優先度に応じた補正間隔調整値による実行タイミング調整を行う。これにより、複数台の装置が同時にキャリブレーション処理を実行することを回避する。
【0065】
本実施形態における、システムの構成は実施形態1と同様であるため、詳細な説明は省略する。実施形態1では補正間隔調整値を予め決定された値としていたが、これに対し本実施形態では状態保持部504で保持されている装置本体固有の情報を元に補正の優先度を設定し、これを元に補正間隔調整値を決定する。優先度及び補正間隔調整値の概念を示したものを図10に示す。
【0066】
状態保持部504には、前回のキャリブレーション実行からの経過時間、及び出力印刷枚数が状態情報として保持されている。これらの状態情報に対して、優先度を図10(a)のように設ける。すなわち複数の装置を前回のキャリブレーション実行から、より経過時間が経っていない又は出力印刷枚数が少ないものと、より経過時間が経っている又は出力印刷枚数が多いものと、に分類をする。図10では、前者を優先度Cとし、後者を優先度Aとしている。また、その間を優先度Bとしている。なおそれぞれを分類するタイミングは、外部補正タイミングにより補正が必要と判断された時となる。ここで補正の優先度はAほど高くCほど低いものとし、優先度の高いものほど優先的にキャリブレーションが実行されるものとする。つまり、図10(a)の網掛け部分に該当する装置は優先度A、斜線部分に該当する装置は優先度B、無地部分に該当する装置は優先度Cとなる。外部補正タイミングで優先度が決定されると次に図10(b)に示すように補正間隔調整も一意に決定される。図10(b)で示すテーブルの情報は、予め状態保持部504に保持される。図10(b)において補正間隔は(1)が短く、(3)が長くなるものとする。すなわち優先度の高いものほど、外部補正タイミングによる補正要求から間隔をあけずにキャリブレーションが実行される。補正間隔調整値が決定された後の処理に関しては実施形態1と同様のものとなる。なお優先度の分類は本例では3段階としているがこれに限られるものではなく、より詳細に分類をしても良い。
【0067】
以上のように本実施形態によれば、共有の環境センサにより取得される環境条件情報といった複数の機器間で共通となる情報をもとにキャリブレーションを実行する場合に、装置の状態に応じて優先度を設け、それに応じた補正間隔調整値を設定する。この補正間隔調整値を用いて個々の装置間でキャリブレーションの実行タイミングを調整する。これにより、ユーザによる補正間隔の調整を必要とせず簡易にシステム内の画像処理装置で同時にキャリブレーションが実行される。よって、システム内でユーザが使用可能な画像処理装置が減少することを回避する画像処理システムを提供することが可能となる。また、優先度の分類をより詳細に区切ることによって、複数の装置で同時にキャリブレーションが実行されることを防ぐことができる。
【0068】
<実施形態3>
実施形態2では、装置の状態に応じて優先度を設けそれに応じた補正間隔調整値を設定し、この補正間隔調整値を用いて個々の装置間でキャリブレーションの実行タイミングを調整することで、キャリブレーションの同時実行を回避する例を説明した。
【0069】
しかしながら、複数の装置の状態によっては優先度が同レベルである可能性があり、この場合は補正間隔調整値が同じにものに設定されてしまう場合もありえる。
【0070】
本実施形態では、共有された環境センサにより取得された環境条件情報をもとにキャリブレーションを実行する場合には、それぞれの装置間で状態保持部に保持されている装置本体固有の情報の送受信を行う。そしてそれぞれの装置同士における固有の情報と受信した他の装置の情報とを比較することで優先度を決定し、補正間隔を調整することで複数台のキャリブレーション処理の同時実行を回避する。
【0071】
本実施形態における、システムの構成は実施形態1と同様であるため、詳細な説明は省略する。また本実施形態における優先度の概念も実施形態2と同様であり、前回のキャリブレーション実行からより経過時間が経っているもの又は出力印刷枚数が多いものが優先度が高いものとする。ただし、実施形態2のような分類を行うのではなく、複数の装置間での情報の比較を行うことで、優先度が高いか低いかの決定を行う。本実施形態では、キャリブレーション処理部302が状態保持部504に保持された情報をネットワークI/F(B)304を介してそれぞれの画像処理装置間で送受信し優先度の比較を行う。
【0072】
図11は本実施形態における補正タイミング制御部502によるキャリブレーション処理の実行タイミングの制御フローを示したものである。以下、フローチャートで示す処理はROM203に記憶され、RAM202に一時的に読み出されたプログラムをCPU201が実行することで実現される。
【0073】
まず補正が必要である条件が満たされた場合(S1101)、その補正要求が、本体補正タイミングによるものなのか、外部補正タイミングによるものなのかを判断する(S1102)。ここで、本体補正タイミングによるもの(S1102にてYes)と判断された場合、すなわち状態保持部504が保持する経過時間や印刷枚数がキャリブレーション処理実行の条件を満たした場合、実施形態1と同様にキャリブレーションを行う(S1103)。これにより濃度補正テーブルを更新する。
【0074】
一方、本体補正タイミングではなく、外部補正タイミングによるもの(S1102にてNo)と判断された場合、状態保持部504に保持されている個々の装置固有の状態情報を他の画像処理装置とネットワークI/Fを介して送受信する(S1104)。次に他の画像処理装置から受信した状態情報と装置本体の状態情報を比較することで優先度を決定する(S1105)。具体的には、上述したように経過時間や印刷枚数を示す値を比較する。そして、本体で保持している状態情報による優先度が高かった場合(S1106にてYesと判断された場合)は、キャリブレーション処理を行う(S1103)。なお、S1103はS903と同じ処理であり、実施形態1で説明したように、本体補正タイミングと外部補正タイミングとが重複するような場合には、実施形態1と同様の処理が行われる。一方、他の画像処理装置に対して優先度が低い場合(S1106にてNoと判断された場合)は、優先度に応じて決定される補正間隔調整値に応じて本体補正タイミングを調整する(S1107)。
【0075】
画像処理システム内に複数の画像処理装置が存在する場合、実施形態3では優先度の比較の際(S1106)にシステム内で装置本体より優先度の高い装置の数をカウントしておく。この数をSとする。そして画像処理システム全体で共通の補正間隔調整基準値を設けることで、装置本体の補正間隔調整値は
補正間隔調整値=補正間隔調整基準値×S
と決定することができる。また、補正間隔調整基準値は、1台のキャリブレーションにかかる時間を元に予め決定しておけばよい。
【0076】
以上のように本実施形態によれば、共有の環境センサにより取得される環境条件情報のような複数の機器間の共通となる情報をもとにキャリブレーションを実行する場合に、装置の状態を装置間で比較し、優先度を設けることで補正間隔調整値を設定する。その上で個々の装置間でキャリブレーションの実行タイミングを調整することで、ユーザによる補正間隔の調整を必要とせず簡易にシステム内の画像処理装置で同時にキャリブレーションが実行される。これにより、システム内でユーザが使用可能な画像処理装置が減少することを回避する画像処理システムを提供することができる。また、装置間で状態情報を比較して優先度を設けているので、外部補正タイミングによるキャリブレーションがシステム内の装置において同時に実行されることを防止できる。
【0077】
なお、以上で説明した各実施形態においては、環境センサ103が各画像処理装置と独立して設置されている例について説明した。しかしながら、例えば環境センサが内蔵されている画像処理装置が本画像処理システムに接続されている場合には、その画像処理装置に備わっている環境センサが取得した情報を、他の画像処理装置に対して送信してもよい。
【0078】
<その他の実施例>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知した環境条件情報を他の画像処理装置へ送信する環境検知装置から、該他の画像処理装置へ送信された環境条件情報を取得する取得手段と、
キャリブレーションの実行タイミングを調整する補正間隔調整値を保持する保持手段と、
前記取得手段にて取得した前記環境条件情報からキャリブレーションが必要かを判断する判断手段と、
前記判断手段においてキャリブレーションが必要と判断された場合に、前記保持手段にて保持された補正間隔調整値を用いて前記キャリブレーションを実行するタイミングを調整する調整手段と、
前記調整手段で調整されたタイミングで前記キャリブレーションを行い、出力する画像の色味を補正するキャリブレーション手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記保持手段に保持される補正間隔調整値は、使用頻度及び/又は前記環境検知装置からの距離に関する情報を用いて決定されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記調整手段は、乱数により前記他の画像処理装置間で互いに異なった値を発生させて前記補正間隔調整値として用いることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記調整手段は、ユーザにより任意に設定された値を前記補正間隔調整値として用いることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
キャリブレーションの実行に関連する装置本体固有の状態を示す状態情報を取得する状態情報取得手段をさらに備え、
前記調整手段は、前記状態情報により決定された優先度を設け、該優先度の高い装置ほど、前記補正間隔調整値を小さくし、前記判断手段によりキャリブレーションが必要と判断された場合、間隔をあけずにキャリブレーションを実行することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
キャリブレーションの実行に関連する装置本体固有の状態を示す状態情報を取得する状態情報取得手段をさらに備え、
前記調整手段は、前記状態情報を前記他の画像処理装置と比較することにより決定された優先度を前記補正間隔調整値として用いることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
検知した環境条件情報を他の画像処理装置へ送信する環境検知装置から、該他の画像処理装置へ送信された環境条件情報を取得する取得ステップと、
キャリブレーションの実行タイミングを調整する補正間隔調整値を格納する格納ステップと、
前記取得ステップにて取得した前記環境条件情報からキャリブレーションが必要かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップにおいてキャリブレーションが必要と判断された場合に、前記格納ステップにて格納された補正間隔調整値を用いて前記キャリブレーションを実行するタイミングを調整する調整ステップと、
前記調整ステップで調整されたタイミングで前記キャリブレーションを行い、出力する画像の色味を補正するキャリブレーションステップと、
を備えることを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の画像処理装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−76441(P2012−76441A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226540(P2010−226540)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】