説明

画像処理装置および画像形成装置

【課題】 視認できなくすべき文字列を漏れなくマスク処理する。
【解決手段】 マスク文字列登録処理部31は、文字列変換テーブル21を参照して、ユーザーにより指定された指定文字列に対応する別表現文字列を特定し、その指定文字列および特定した別表現文字列をマスク文字列として登録する。そして、マスク文字列検出処理部32は、登録されているマスク文字列に一致する文字列を画像内で検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
守秘の観点などから、印刷物において特定の文字列を視認できなくするようにする技術がある。特に、印刷済みの原稿に存在する、視認できなくすべき文字列をプリンターで塗り潰す技術がある(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−098778号公報
【特許文献2】特開平6−290251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術では、印刷済みの面全体がベタ画像で塗り潰されるため、トナーなどの色材の消費量が多く好ましくない。特許文献2記載の技術では、予め指定されている守秘項目記載領域に対してマスク処理が行われる。このため、特許文献2記載の技術によれば、色材消費量は少なくなる。
【0005】
上述の特許文献2記載の技術では、マスク処理をする領域が予め決められている。このため、指定されていない領域に、視認できなくすべき文字列があっても、マスク処理されない。
【0006】
このため、マスク処理の対象となる文字列(以下、マスク文字列という)として、予め所定のキー文字列を登録しておき、印刷されている文面内に出現するキー文字列に対してのみマスク処理を行うことが考えられる。
【0007】
しかしながら、このようにすると、あるキー文字列と同一の意味を有する別表現の文字列がマスク文字列として登録されていない場合、結果的に、視認できなくすべき文字列が印刷物に残ってしまう。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、視認できなくすべき文字列を漏れなくマスク処理することができる画像処理装置および画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明では以下のようにした。
【0010】
本発明に係る画像処理装置は、キー文字列とキー文字列に関連付けられた別表現文字列とを含む文字列変換テーブルを記憶する記憶装置と、文字列変換テーブルを参照して、ユーザーにより指定された指定文字列に対応する別表現文字列を特定し、その指定文字列および特定した別表現文字列をマスク文字列として登録するマスク文字列登録処理部と、登録されているマスク文字列に一致する文字列を画像内で検出するマスク文字列検出処理部とを備える。
【0011】
これにより、文字列変換テーブルにおける別表現文字列がマスク文字列として登録されるため、視認できなくすべき文字列を漏れなくマスク処理することができる。
【0012】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置に加え、次のようにしてもよい。この場合、画像処理装置は、原稿から原稿画像を読み取るスキャナーをさらに備える。そして、マスク文字列検出処理部は、原稿画像内で、登録されているマスク文字列に一致する文字列を検出する。
【0013】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、画像処理装置は、プリンターと、プリンターで印字処理を行う印字処理部とをさらに備える。そして、印字処理部は、原稿において、検出された文字列を塗り潰す。
【0014】
これにより、原稿上に既に印刷されている文字列がマスク処理される。
【0015】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、画像処理装置は、プリンターと、プリンターで印字処理を行う印字処理部と、画像処理部とをさらに備える。そして、マスク文字列検出処理部は、印刷データにおいて、登録されているマスク文字列に一致する文字列を検出し、画像処理部は、検出された文字列が不可視になるように印刷データを編集し、印字処理部は、編集後の印刷データに基づいてプリンターで印字処理を行う。
【0016】
これにより、印刷すべき画像内の文字列がマスク処理される。
【0017】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、画像処理装置は、表示装置と、入力装置とをさらに備える。そして、マスク文字列登録処理部は、ユーザーにより指定された指定文字列に対応する別表現文字列のリストを表示装置に表示させ、リストのうち、入力装置に対するユーザー操作でそのリストから選択された別表現文字列をマスク文字列として登録する。
【0018】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、キー文字列は、複数文字で表現可能な1文字の漢字を含み、別表現文字列は、漢字を表現する複数文字を含む。
【0019】
これにより、例えば、「林」が「木木」と表現されている場合なども、適切にマスク処理される。
【0020】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、別表現文字列は、キー文字列が全角である場合、キー文字列を半角へ変換した文字列であり、キー文字列が半角である場合、キー文字列を全角へ変換した文字列である。
【0021】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、キー文字列は、姓を示す文字列であり、別表現文字列は、姓を含むフルネームを示す文字列である。
【0022】
また、本発明に係る画像処理装置は、別字体のある漢字を含むキー文字列とキー文字列に関連付けられその漢字の別字体である漢字に置き換えた別表現文字列とを含む文字列変換テーブルを記憶する記憶装置と、文字列変換テーブルを参照して、ユーザーにより指定された指定文字列におけるキー文字列を別表現文字列で置き換えて、指定文字列に対応する別表現文字列を生成し、その指定文字列および生成した別表現文字列をマスク文字列として登録するマスク文字列登録処理部と、登録されているマスク文字列に一致する文字列を画像内で検出するマスク文字列検出処理部とを備える。
【0023】
また、本発明に係る画像処理装置は、キー文字列とキー文字列に関連付けられた別表現文字列とを含む文字列変換テーブルを記憶する記憶装置と、文字列変換テーブルを参照して、ユーザーにより指定された指定文字列に対応する別表現文字列を特定し、その指定文字列および特定した別表現文字列をマスク文字列として登録するマスク文字列登録処理部と、マスク文字列に別字体のある漢字が含まれている場合、その漢字の別字体である漢字に置き換えた文字列をマスク文字列に追加し、マスク文字列に一致する文字列を画像内で検出するマスク文字列検出処理部とを備える。
【0024】
本発明に係る画像形成装置は、上記の画像処理装置のいずれかを備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、視認できなくすべき文字列を漏れなくマスク処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1における文字列変換テーブルの一例を示す図である。
【図3】図3は、マスク文字列登録時の、図1に示す画像処理装置の動作について説明するフローチャートである。
【図4】図4は、印刷時の、図1に示す画像処理装置の動作について説明するフローチャートである。
【図5】図5は、実施の形態3におけるマスク文字列の検索について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0028】
実施の形態1.
【0029】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。なお、図1に示す画像処理装置1は、プリンター機能、スキャナー機能などを有する複合機といった画像形成装置である。
【0030】
この画像処理装置1は、プリンター11、スキャナー12、記憶装置13、操作パネル14、および演算処理装置15を備える。
【0031】
プリンター11は、印刷データに基づいて文書画像を印刷する内部装置である。スキャナー12は、文書から文書画像を光学的に読み取り、文書画像の画像データを生成する内部装置である。なお、プリンター11は、コピージョブまたは印刷ジョブにおいて、印刷データに基づく印刷を行う画像出力部である。印刷データは、PDL(Page Description Language)データ、画像データなどである。
【0032】
また、記憶装置13は、各種データを格納可能な装置である。記憶装置13としては、不揮発性メモリ、ハードディスクドライブなどの不揮発性の大容量記憶媒体が使用される。記憶装置13には、文字変換テーブル21、およびマスク文字列テーブル22が記憶される。なお、文字変換テーブル21は、予め記憶されており、マスク文字列テーブル22は、ユーザー操作に従って生成され記憶される。
【0033】
文字変換テーブル21は、キー文字列と、キー文字列に関連付けられた別表現文字列とを含む。キー文字列、および別表現文字列は、1または複数の文字からなる文字列である。
【0034】
図2は、図1における文字列変換テーブル21の一例を示す図である。図2に示す文字列変換テーブル21では、キー文字列として、「京セラミタ」、「山田」、および「林」が登録されている。
【0035】
この実施の形態では、あるキー文字列は、複数文字で表現可能な1文字の漢字を含み、そのキー文字列に対応する別表現文字列は、漢字を表現する複数文字を含む。
【0036】
また、この実施の形態では、あるキー文字列に対応する別表現文字列は、そのキー文字列が全角である場合、そのキー文字列を半角へ変換した文字列であり、そのキー文字列が半角である場合、そのキー文字列を全角へ変換した文字列である。
【0037】
また、この実施の形態では、あるキー文字列は、姓を示す文字列であり、そのキー文字列に対応する別表現文字列は、姓を含むフルネームを示す文字列である。
【0038】
マスク文字列テーブル22は、マスク処理に適用するマスク文字列を保持する。マスク文字列テーブル22に登録されるマスク文字列は、(a)入力装置14bに対するユーザー操作に従って入力された文字列、および(b)文字列変換テーブル21においてその文字列に関連付けられている別表現文字列である。
【0039】
また、操作パネル14は、画像処理装置1の筐体表面に配置され、ユーザーに対して各種情報を表示する表示装置14aと、ユーザー操作を検出する入力装置14bとを有する。表示装置14aとしては例えば液晶ディスプレイが使用される。入力装置14bとしては、キースイッチ、タッチパネルなどが使用される。
【0040】
また、演算処理装置15は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するコンピューターであり、ROM、記憶装置13、図示せぬ別の記憶装置などからRAMへプログラムをロードし、そのプログラムをCPUで実行することにより、各種処理部を実現する。この実施の形態では、演算処理装置15において、マスク文字列登録処理部31、マスク文字列検出処理部32、画像処理部33、および印字処理部34が実現される。
【0041】
マスク文字列登録処理部31は、文字列変換テーブル21を参照して、ユーザーにより指定された指定文字列に対応する別表現文字列を特定し、その指定文字列および特定した別表現文字列をマスク文字列としてマスク文字列テーブル22に登録する。
【0042】
この実施の形態では、マスク文字列登録処理部31は、ユーザーにより指定された指定文字列をマスク文字列として登録するとともに、その文字列に対応する別表現文字列のリストを表示装置14aに表示させ、そのリストのうち、入力装置14bに対するユーザー操作でそのリストから選択された別表現文字列をマスク文字列として登録する。
【0043】
マスク文字列検出処理部32は、登録されているマスク文字列に一致する文字列を画像内で検出する。
【0044】
この実施の形態では、マスク文字列検出処理部32は、スキャナー12で読みとされた原稿画像内で、登録されているマスク文字列に一致する文字列を検出する。
【0045】
また、この実施の形態では、マスク文字列検出処理部32は、印刷データにおいて、登録されているマスク文字列に一致する文字列を検出する。
【0046】
画像処理部33は、印刷データにより印刷されるマスク文字列が不可視になるように、その印刷データを編集する。例えば、画像処理部33は、マスク文字列を、空白にするか、特定の意味のない文字列や記号や図形に置き換える。
【0047】
印字処理部34は、プリンター11を制御して、印刷データに基づく印刷を実行する。印字処理部34は、スキャナー12により原稿画像を読み取られた原稿において、マスク文字列検出処理部32により検出された文字列を塗り潰す。
【0048】
次に、上記画像処理装置1の動作について説明する。
【0049】
ここで、マスク文字列登録時の動作と、印刷時の動作について説明する。
【0050】
(1)マスク文字列登録時の動作
【0051】
図3は、マスク文字列登録時の、図1に示す画像処理装置1の動作について説明するフローチャートである。
【0052】
まず、マスク文字列登録処理部31は、入力画面を表示装置14aに表示させる。ユーザーは、入力装置14bを操作して、その入力画面にマスク文字列を入力する。マスク文字列登録処理部31は、入力装置14bで、そのマスク文字列を受け付ける(ステップS1)。
【0053】
マスク文字列登録処理部31は、マスク文字列を受け付けると、文字列変換テーブル21を参照して、そのマスク文字列に対応する1または複数の別表現文字列が存在するか否かを判定する(ステップS2)。つまり、入力されたマスク文字列の全部または一部に一致するキー文字列がマスク文字列テーブル22に存在するか否かが判定される。
【0054】
別表現文字列が存在する場合、マスク文字列登録処理部31は、その1または複数の別表現文字列のリストを表示装置14aに表示させる(ステップS3)。
【0055】
ユーザーは、入力装置14bを操作して、そのリストから、マスク文字列として登録する1または複数の別表現文字列を選択する。
【0056】
マスク文字列登録処理部31は、そのユーザー操作による別表現文字列の選択を受け付け、選択された別表現文字列を特定する(ステップS4)。そして、マスク文字列登録処理部31は、ユーザーにより入力されたマスク文字列と、ユーザーにより選択された別表現文字列とをマスク文字列テーブル22として記憶装置13に記憶する(ステップS5)。なお、入力されたマスク文字列の一部がキー文字列に一致する場合、その一部を別表現文字列で置き換えた文字列がマスク文字列としてマスク文字列テーブル22に登録される。
【0057】
例えば、文字列変換テーブル21が図2に示すものである場合、ユーザーが、マスク文字列として、「林」を入力したときには、別表現文字列のリストとして、「木木」、「林一郎」、「林 一郎」、「はやしいちろう」、「はやし いちろう」、「Hayashi Ichiro」、「Ichiro Hayashi」が表示される。このとき、例えば、ユーザーが、「木木」、「林一郎」および「林 一郎」を選択すると、マスク文字列テーブル22には、「木木」、「林一郎」および「林 一郎」が登録される。
【0058】
(2)印刷時の動作
【0059】
図4は、印刷時の、図1に示す画像処理装置1の動作について説明するフローチャートである。
【0060】
まず、マスク文字列検出処理部32は、スキャナー12で、印刷用紙の裏面をスキャンさせる(ステップS11)。なお、スキャナー12を用紙搬送系に設け印刷用紙の裏面をスキャンさせるようにしてもよいし、スキャナー12で裏面をスキャンした後にユーザーが印刷用紙を用紙トレイなどにセットするようにしてもよい。
【0061】
マスク文字列検出処理部32は、スキャナー12のスキャン結果から、印刷用紙の裏面が印刷済みか否かを判定する(ステップS12)。
【0062】
印刷用紙の裏面が印刷済みである場合、マスク文字列検出処理部32は、スキャナー12により生成された裏面の画像データにおいて、マスク文字列テーブル22に登録されているマスク文字列を検索する(ステップS13)。なお、画像データにおけるマスク文字列の検索には、公知の文字認識技術が使用される。
【0063】
マスク文字列検出処理部32は、マスク文字列を発見すると、その文字列の位置およびサイズを特定し、その文字列を覆うマスク画像(例えば、ベタ塗りの矩形)の画像データを生成する。そして、印字処理部34は、そのマスク画像の画像データに基づき、マスク画像を印刷用紙の裏面に印字し、発見されたマスク文字列をマスク画像で塗り潰す(ステップS14)。
【0064】
一方、印刷用紙の裏面が印刷済みではない(つまり、白紙である)場合、ステップS13,S14の処理をスキップする。
【0065】
次に、マスク文字列検出処理部32は、印刷データにおいて、マスク文字列テーブル22に登録されているマスク文字列を検索する(ステップS15)。なお、印刷データのうちテキスト以外の画像部分におけるマスク文字列の検索には、公知の文字認識技術が使用される。
【0066】
マスク文字列検出処理部32によりマスク文字列が発見されると、画像処理部33は、その文字列が不可視となるように、印刷データを編集する(ステップS16)。そして、印字処理部34は、編集後の印刷データに基づき、印刷すべき画像を印刷用紙の表(おもて)面に印字する(ステップS17)。
【0067】
以上のように、上記実施の形態1によれば、マスク文字列登録処理部31は、文字列変換テーブル21を参照して、ユーザーにより指定された指定文字列に対応する別表現文字列を特定し、その指定文字列および特定した別表現文字列をマスク文字列として登録する。そして、マスク文字列検出処理部32は、登録されているマスク文字列に一致する文字列を画像内で検出する。
【0068】
これにより、文字列変換テーブル21における別表現文字列がマスク文字列として自動的に登録されるため、ユーザーによるマスク文字列の登録負荷が軽減され、マスク文字列の登録漏れが発生する可能性が低くなる。
【0069】
実施の形態2.
【0070】
本発明の実施の形態2に係る画像処理装置は、マスク文字列の登録時に、別表現文字列として、マスク文字列内に含まれている別字体のある漢字を別字体に置き換えた文字列をマスク文字列としてマスク文字列テーブル22に登録する。
【0071】
なお、実施の形態2に係る画像処理装置の構成は実施の形態1のものと同様であり、実施の形態2に係る画像処理装置のマスク文字列登録以外の動作も実施の形態1のものと同様であるので、それらの説明を省略する。ここでは、図3のフローチャートに従って、実施の形態2に係る画像処理装置のマスク文字列登録について説明する。
【0072】
まず、マスク文字列登録処理部31は、入力画面を表示装置14aに表示させる。ユーザーは、入力装置14bを操作して、その入力画面にマスク文字列を入力する。マスク文字列登録処理部31は、入力装置14bで、そのマスク文字列を受け付ける(ステップS1)。
【0073】
マスク文字列登録処理部31は、マスク文字列を受け付けると、文字列変換テーブル21を参照して、そのマスク文字列に対応する1または複数の別表現文字列が存在するか否かを判定する(ステップS2)。つまり、入力されたマスク文字列の全部または一部に一致するキー文字列が文字列変換テーブル21に存在するか否かが判定される。実施の形態2では、文字列変換テーブル21において、キー文字列として、別字体のある漢字が登録され、別表現文字列として、その漢字の別字体である漢字が登録されている。例えば、キー文字列として「斉」が登録され、そのキー文字列に関連付けられる別表現文字列として「斎」、「齊」、および「齋」が登録されている。
【0074】
別表現文字列が存在する場合(つまり、入力されたマスク文字列に、別字体のある漢字が含まれている場合)、マスク文字列登録処理部31は、入力されたマスク文字列における別字体のある漢字を別字体の漢字に置き換えた別表現文字列のリストを表示装置14aに表示させる(ステップS3)。例えば、マスク文字列として「斉藤」が入力された場合、「斎藤」、「齊藤」、および「齋藤」からなるリストが表示される。
【0075】
ユーザーは、入力装置14bを操作して、そのリストから、マスク文字列として登録する1または複数の別表現文字列を選択する。
【0076】
マスク文字列登録処理部31は、そのユーザー操作による別表現文字列の選択を受け付け、選択された別表現文字列を特定する(ステップS4)。そして、マスク文字列登録処理部31は、ユーザーにより入力されたマスク文字列と、ユーザーにより選択された別表現文字列とをマスク文字列テーブル22として記憶装置13に記憶する(ステップS5)。なお、入力されたマスク文字列の一部がキー文字列に一致する場合、その一部を別表現文字列で置き換えた文字列がマスク文字列としてマスク文字列テーブル22に登録される。
【0077】
以上のように、上記実施の形態2によれば、文字列変換テーブル21は、別字体のある漢字を含むキー文字列とキー文字列に関連付けられその漢字の別字体である漢字に置き換えた別表現文字列とを含み、マスク文字列登録処理部31は、マスク文字列における別字体のある漢字をその別字体の漢字に置き換えた文字列もマスク文字列として登録する。
【0078】
これにより、マスク文字列の登録漏れが発生する可能性が低くなる。
【0079】
実施の形態3.
【0080】
本発明の実施の形態3に係る画像処理装置は、印刷時のマスク文字列の検索時に、マスク文字列内に別字体のある漢字が存在する場合には、その漢字を別字体の漢字に置き換えた文字列をマスク文字列に追加した上で、マスク文字列の検索を行う。
【0081】
なお、実施の形態3に係る画像処理装置の構成は実施の形態1のものと同様であり、実施の形態3に係る画像処理装置の印刷以外の動作も実施の形態1のものと同様であるので、それらの説明を省略する。
【0082】
実施の形態3に係る画像処理装置の印刷時の動作は、ステップS13,S15のマスク文字列検索を除き実施の形態1と同一であるので、ここでは、実施の形態3に係る画像処理装置によるマスク文字列検索について説明する。
【0083】
図5は、実施の形態3におけるマスク文字列の検索について説明するフローチャートである。
【0084】
マスク文字列検出処理部32は、マスク文字列テーブル22に登録されているマスク文字列のうち、別字体のある漢字を含むマスク文字列があるか否かを判定する(ステップS21)。
【0085】
マスク文字列テーブル22に登録されているマスク文字列のうち、別字体のある漢字を含む1または複数のマスク文字列がある場合、マスク文字列検出処理部32は、そのマスク文字列のそれぞれに対して以下の処理を実行する。まず、マスク文字列検出処理部32は、マスク文字列における漢字を別字体に置き換えて得られる文字列がマスク文字列として登録済みであるか否かを判定する(ステップS22)。
【0086】
マスク文字列における漢字を別字体に置き換えて得られる別表現文字列がマスク文字列として登録済みではない場合、マスク文字列検出処理部32は、その別表現文字列のリストを表示装置14aに表示させる(ステップS23)。なお、別字体が複数ある場合には、マスク文字列として登録済みではない別表現文字列のリストが表示される。
【0087】
次に、そのリストから別表現文字列をマスク文字列に追加させるために選択するユーザー操作が入力装置14bにより検出されずに、そのリスト表示を終了させるためのユーザー操作が入力装置14bにより検出された場合、マスク文字列検出処理部32は、ユーザーによる選択操作がなかったと判定し(ステップS24)、その別表現文字列をすべて、検索に使用するマスク文字列として追加する(ステップS25)。
【0088】
一方、そのリストから別表現文字列をマスク文字列に追加させるために選択するユーザー操作が入力装置14bにより検出された後に、そのリスト表示を終了させるためのユーザー操作が入力装置14bにより検出された場合、マスク文字列検出処理部32は、ユーザーによる選択操作があったと判定し(ステップS24)、その選択された別表現文字列のみを、検索に使用するマスク文字列として追加する(ステップS26)。
【0089】
選択された別表現文字列のみをマスク文字列として追加した場合、マスク文字列検出処理部32は、裏面のスキャン(ステップS11)により得られた裏面画像内、あるいはおもて面の印刷画像内において、上述のリストから選択されなかった別表現文字列を検索し、その画像内に、上述のリストから選択されなかった別表現文字列が存在するか否かを判定する(ステップS27)。上述のリストから選択されなかった別表現文字列がその画像内に存在しない場合には、マスク文字列検出処理部32は、マスク文字の追加を完了する。
【0090】
上述のリストから選択されなかった別表現文字列がその画像内に存在する場合、マスク文字列検出処理部32は、警告メッセージを表示装置14bに表示させる(ステップS28)。警告メッセージには、選択されなかった別表現文字列がその画像に含まれていることを示すテキストが含まれている。そして、その警告メッセージが受け付けたユーザーは、必要に応じて、その画像内で検出された別表現文字列の箇所を拡大表示させるための操作を入力装置14bに対して行う。その操作が入力装置14bで検出されると(ステップS29)、マスク文字列検出処理部32は、その箇所を拡大した画像を表示装置14aに表示させる(ステップS30)。
【0091】
そして、その警告メッセージが受け付けたユーザーは、その別表現文字列をマスク文字列として追加したい場合には、その別表現文字列をマスク文字列として追加するための操作を入力装置14bに対して行う。その操作が入力装置14bで検出されると(ステップS31)、マスク文字列検出処理部32は、その別表現文字列をマスク文字列として追加する(ステップS32)。その後、ステップS27に戻り、再度、その画像内に、上述のリストから選択されなかった別表現文字列(ステップS32で追加したものを除く)が存在するか否かを判定する。
【0092】
このようにして、マスク文字列の追加が適宜行われた後(ステップS25,S26,S32)、追加されたマスク文字列、およびマスク文字列テーブル22に登録されているマスク文字列が、裏面画像内、あるいはおもて面の印刷画像内で検索される(ステップS33)。
【0093】
なお、マスク文字列テーブル22に登録されているマスク文字列が、いずれも、別字体のある漢字を含んでいない場合(ステップS21)、および、別字体に置き換えて得られる文字列もすべてマスク文字列テーブル22に登録されている場合(ステップS22)には、マスク文字列が追加されずに、マスク文字列テーブル22に登録されているマスク文字列が、裏面画像内、あるいはおもて面の印刷画像内で検索される(ステップS33)。
【0094】
以上のように、上記実施の形態3によれば、マスク文字列検出処理部33は、マスク文字列に別字体のある漢字が含まれている場合、その漢字の別字体である漢字に置き換えた文字列をマスク文字列に追加し、マスク文字列に一致する文字列を画像内で検出する。
【0095】
これにより、マスク文字における漢字を別字体の漢字に置き換えた文字列の登録漏れがあっても印刷時にマスクされる。
【0096】
なお、上述の各実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0097】
例えば、キー文字列が、複数文字で表現可能な1文字の漢字を含み、別表現文字列が、漢字を表現する複数の文字を含む場合、偏が同一である複数のキー文字列があるときには、(a)マスク文字列テーブル22において、その偏を示す漢字1文字ごとに、旁を示す漢字1文字をまとめて関連付けておき、(b)検索時に、まず、偏の文字を検索し、その偏の文字を発見すると、次の文字がその偏に関連付けられている旁の文字のいずれかであるか否かを判定して、それらの文字がマスク文字列であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0098】
また、上記実施の形態において、キー文字列が、複数文字で表現可能な1文字の漢字を含み、別表現文字列がその複数文字を含む場合について、キー文字列が2文字で表現可能な1文字の漢字を含む例を示しているが、キー文字列が3文字以上で表現可能な1文字の漢字を含み、別表現文字列が、漢字を表現する3文字以上の文字を含むようにしてもよい。
【0099】
また、上記実施の形態において、マスク文字列内にアルファベットがある場合、そのアルファベットが大文字であるときには、そのアルファベットの文字を小文字に変換して得られる文字列もマスク文字列とし、そのアルファベットが小文字であるときには、そのアルファベットの文字を大文字に変換して得られる文字列もマスク文字列として登録するようにしてもよい。
【0100】
また、上記実施の形態において、マスク文字列内にローマ字がある場合、そのローマ字がISO式表記(シ:si、チ:tiなど)であるときには、そのローマ字の表記をヘボン式(シ:shi、チ:chiなど)に変換して得られる文字列もマスク文字列とし、そのローマ字がヘボン式表記であるときには、そのローマ字の表記をISO式に変換して得られる文字列もマスク文字列として登録するようにしてもよい。
【0101】
また、上記実施の形態において、キー文字列が、複数文字で表現可能な1文字の漢字を含み、別表現文字列がその複数文字を含む場合について、偏の文字は、漢字に限らず、カタカナなどでもよい。例えば、人偏(にんべん)は、カタカナの「イ」で表現され、示偏(しめすへん)は、カタカナの「ネ」で表現される。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、例えば、複合機などの画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 画像処理装置
11 プリンター
12 スキャナー
13 記憶装置
14a 表示装置
14b 入力装置
21 文字列変換テーブル
31 マスク文字列登録処理部
32 マスク文字列検出処理部
33 画像処理部
34 印字処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キー文字列と前記キー文字列に関連付けられた別表現文字列とを含む文字列変換テーブルを記憶する記憶装置と、
前記文字列変換テーブルを参照して、ユーザーにより指定された指定文字列に対応する前記別表現文字列を特定し、前記指定文字列および特定した前記別表現文字列をマスク文字列として登録するマスク文字列登録処理部と、
前記登録されているマスク文字列に一致する文字列を画像内で検出するマスク文字列検出処理部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
原稿から原稿画像を読み取るスキャナーをさらに備え、
前記マスク文字列検出処理部は、前記原稿画像内で、前記登録されているマスク文字列に一致する文字列を検出すること、
を特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
プリンターと、
前記プリンターで印字処理を行う印字処理部とをさらに備え、
前記印字処理部は、前記原稿において、検出された文字列を塗り潰すこと、
を特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
プリンターと、
前記プリンターで印字処理を行う印字処理部と、
画像処理部とをさらに備え、
前記マスク文字列検出処理部は、印刷データにおいて、前記登録されているマスク文字列に一致する文字列を検出し、
前記画像処理部は、検出された文字列が不可視になるように前記印刷データを編集し、
前記印字処理部は、編集後の前記印刷データに基づいて前記プリンターで印字処理を行うこと、
を特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
表示装置と、入力装置とをさらに備え、
前記マスク文字列登録処理部は、ユーザーにより指定された指定文字列に対応する前記別表現文字列のリストを前記表示装置に表示させ、前記リストのうち、前記入力装置に対するユーザー操作で前記リストから選択された前記別表現文字列をマスク文字列として登録すること、
を特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記キー文字列は、複数文字で表現可能な1文字の漢字を含み、
前記別表現文字列は、前記漢字を表現する前記複数文字を含むこと、
を特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記別表現文字列は、前記キー文字列が全角である場合、前記キー文字列を半角へ変換した文字列であり、前記キー文字列が半角である場合、前記キー文字列を全角へ変換した文字列であることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記キー文字列は、姓を示す文字列であり、
前記別表現文字列は、前記姓を含むフルネームを示す文字列であること、
を特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項9】
別字体のある漢字を含むキー文字列と前記キー文字列に関連付けられ前記漢字の別字体である漢字に置き換えた別表現文字列とを含む文字列変換テーブルを記憶する記憶装置と、
前記文字列変換テーブルを参照して、ユーザーにより指定された指定文字列における前記キー文字列を前記別表現文字列で置き換えて、前記指定文字列に対応する前記別表現文字列を生成し、前記指定文字列および生成した前記別表現文字列をマスク文字列として登録するマスク文字列登録処理部と、
前記登録されているマスク文字列に一致する文字列を画像内で検出するマスク文字列検出処理部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
キー文字列と前記キー文字列に関連付けられた別表現文字列とを含む文字列変換テーブルを記憶する記憶装置と、
前記文字列変換テーブルを参照して、ユーザーにより指定された指定文字列に対応する前記別表現文字列を特定し、前記指定文字列および特定した前記別表現文字列をマスク文字列として登録するマスク文字列登録処理部と、
前記マスク文字列に別字体のある漢字が含まれている場合、前記漢字の別字体である漢字に置き換えた文字列をマスク文字列に追加し、前記マスク文字列に一致する文字列を画像内で検出するマスク文字列検出処理部と、
を備える画像処理装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のうちのいずれか1項記載の画像処理装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−95263(P2012−95263A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87203(P2011−87203)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】