説明

画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラム

【課題】画像品質の低下を抑制しつつ画像の転送サイズを削減し、外部装置での画像処理の適用が可能となる画像処理システムを提供する。
【解決手段】入力されたカラー画像データをネットワークを介して外部装置に送信し、外部装置で実施した画像処理結果を受信するシステムにおいて、外部装置にて行われる画像処理に応じて、処理のために必要となるカラー成分信号、例えば輝度信号とか色差信号を選択してこれを送信するとともに、送信しないカラー成分信号、例えば色差信号とか輝度信号は保持しておき、外部装置で画像処理されたカラー成分信号と保持していたカラー成分信号をもとに画像処理結果の信号とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データを外部装置に送信し、前記外部装置から画像処理後のデータを受信する画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像処理装置等の端末装置が取得した画像データに対して画像処理を行う際、その画像処理の一部、もしくはすべてをネットワークを介して情報処理装置である画像処理サーバが担うようにしたシステムが知られている。
【0003】
例えば画像処理依頼元であるホストコンピュータやファクシミリ、スキャナがネットワーク上の画像処理サーバに画像データを送信し、画像処理を依頼する。そして画像処理サーバは画像処理済みの画像データを要求元であるホストコンピュータやプリンタ等に送信するものがある。(例えば、特許文献1参照)
また、ネットワーク上に複数存在する画像処理サーバに対し、画像処理の処理内容に応じて送信先を判断し、画像データを送信・処理させるものもある。他にもカメラ機能付き携帯電話から画像処理サーバに画像データを送信することで、画像加工を行う画像加工サービスもある。
【0004】
近年では、入力された情報データに対して特定の情報処理をネットワーク経由で実行する形態はクラウドコンピューティングとして普及しつつある。クラウドコンピューティングにおいては、端末装置に画像処理機能を有しない場合であっても、画像処理サーバに特定の画像処理の実行を依頼することで、所望の画像処理を実行可能となる。これにより、端末本体が低コストになり、一方で高機能な付加価値を提供する環境が構築可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−276323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で上記のように画像データをネットワークを介して画像処理サーバに送信し画像処理を実行する際に、問題となるのが画像データの転送時間、及びネットワークへの負荷である。
【0007】
ここで画像データが印刷されることを想定した場合、一般的にそのサイズは大きなものとなる。例えば、A4原稿を600dpiでスキャンした画像データの場合、そのサイズは90MB相当である。従って、ある端末装置から画像処理サーバに画像データを送る場合、高速なネットワークを使用してもある程度の時間を要してしまう。更に、複数の端末装置から画像データが画像処理サーバに送信された場合、ネットワークの負荷が増大し、結果転送速度が実質的に低下し画像データの転送にさらに時間がかかることになる。
【0008】
従来上記のような画像サイズの問題に対しては、画像データに対して画像圧縮を適用することや、解像度を下げる等の方法が取られてきた。しかしながら、画像を圧縮した際、画像の品質と画像のサイズにはトレードオフがあることが分かっており、画像サイズを下げた場合の画質劣化を回避することが難しい。
【0009】
また、より高度な圧縮技術を適用することも考えられているが、圧縮時間も考慮に入れた場合、端末装置側にもその圧縮技術に対応した専用のハードウェアモジュールが必要となる。しかしながら、特定の画像処理を画像処理サーバに担うように設定された端末装置において、上記のような専用のハードウェアモジュールの実装はコスト的に負荷が大きいものとなる。
【0010】
なお特許文献1においては、画像データを領域ごとに分割して転送することは記載されているものの、画像データのそのもののサイズに関して言及はされていない。
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、画像品質の低下を抑制しつつ画像の転送サイズを削減し外部装置での画像処理の適用が可能となる画像処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の画像処理装置は、画像データを画像処理に応じた色空間に変換する変換手段と、前記変換された後の色空間をもつ画像データを構成する成分信号のうち、第一の成分信号をネットワークを介して外部装置に送信する送信手段と、前記変換された後の色空間をもつ画像データを構成する成分信号のうち、前記第一の成分信号とは異なる第二の成分信号を記憶する記憶手段と、前記外部装置において前記第一の成分信号に対して画像処理された信号を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信した画像処理後の第一の成分信号と前記記憶手段によって記憶された前記第二の成分信号とを合成する合成手段とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、画像処理装置から外部装置へ画像データを送信する時に、送信する画像の容量を削減でき、かつ、画像送信による画質の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る画像処理システムの一実施形態の構成を示すブロック図である
【図2】本実施の形態におけるMFPの機能構成を示すブロック図である
【図3】本実施の形態における画像処理装置の構成を示すシステムブロック図である
【図4】本実施の形態における画像処理の概要を示すブロック図である
【図5】本実施の形態における外部装置で実施される画像処理の概要を示す図である
【図6】本実施の形態における画像処理の実施フローを示す図である
【図7】本実施の形態における画像処理が機能拡張された例を示す図である
【図8】本発明に係る画像処理システムの一実施形態の構成を示すブロック図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
実施例1では本発明の実施の形態として以下に情報処理装置をマルチファンクションプリンタ(MFP)に適用する場合を説明する。なお本発明はこれに限られるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲で他の情報処理装置に適用が可能である。
【0017】
図1は、本発明に係る画像処理システムの一実施形態の構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示されるように本実施の形態に係る画像処理システムは、ネットワーク101と、このネットワーク101にそれぞれ接続されたMFP102、画像処理サーバ103、ホストコンピュータ104を備えている。なお画像処理サーバ103は複数の画像処理サーバからなるクラウドとして置き換えても良い。
【0019】
図2は本実施の形態におけるMFPの機能構成を示すブロック図である。MFPは画像入力装置201、画像処理装置202、及び画像出力装置203を備えて構成される。
【0020】
以下、図2を用いて、スキャナ204等の画像入力装置201から入力されるビットマップ画像について印刷を行う処理について説明する。
【0021】
スキャナ204は、画像処理装置202に接続されており、紙やフィルムに印刷された画像を光学的に走査し、その反射光や透過光の強度を測り、アナログ−デジタル変換することでビットマップ画像を読み込む。ここで取得されるビットマップ画像は一般的にRGB色空間の画像(RGB画像)となる。
【0022】
上記スキャナ204より取得されたビットマップ画像は、画像処理装置202に送信される。画像処理装置202は、描画コマンド処理部205、入力画像処理部206、記憶装置207、及び出力画像処理部208を備えて構成される。
【0023】
画像出力装置203は、画像処理装置202に接続されており、プリンタエンジン209を備える。プリンタエンジン209は、予め定められた画像フォーマットで生成された画像データを画像処理装置202から受信し、紙面に印刷する。通常、プリンタエンジンにおいて安定した中間調表現を可能とするためには2、4、16階調などの低階調出力を行う必要がある。また、一般的にプリンタエンジンへの入力は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色の記録剤に対応した画像データとなる。従って、プリンタエンジンに入力される画像データのフォーマットは、2〜16階調程度の低階調なCMYK色空間の画像(CMYK画像)となる。
【0024】
スキャナ204より送信されたビットマップ画像について、入力画像処理部206および出力画像処理部208はプリンタエンジンに入力可能な画像データフォーマットに変換する。すなわち、RGB画像であるビットマップ画像に対してルックアップテーブル等を利用してRGBからCMYKに色変換を行う色変換処理をする。またビットマップ画像が多階調画像である場合、出力画像処理部208はディザ法等を用いてより低階調な画像へ変換する疑似中間調処理を行う。
【0025】
一方、上記のような画像データの生成過程において、出力画像の品質向上や目的に応じて、入力画像処理部206や、出力画像処理部208は入力された画像データに対して特定の画像処理を行う。更に本実施の形態においては、必要に応じて外部装置である画像処理サーバ103に画像データを送信し、画像処理サーバ103で画像処理を行う。
画像処理サーバ103における画像処理の詳細な説明に関しては後述する。
【0026】
ここで生成された画像データは、プリンタエンジン209に転送され紙面に画像が出力される。以上説明した処理によりスキャナ204等の画像入力装置201から入力される画像データを印刷する処理が完了する。
【0027】
次にホストコンピュータ104から伝送された描画コマンドを受信し印刷を行う処理について説明する。ホストコンピュータ104上で動作するアプリケーションは、ページレイアウト文書やワードプロセッサ文書、グラフィック文書などを作成する。これらアプリケーションで作成されたデジタル文書データは図示しないプリンタドライバに送信され、デジタル文書に基づいた描画コマンドが生成される。なお、プリンタドライバに送信されるデジタル文書データは、ホストコンピュータ104で作成されたものに限られず、他のコンピュータのアプリケーション又はスキャナにより作成され、ホストコンピュータ104に保存されているものであっても良い。ここで生成される描画コマンドとしては、PDL(Page Description Language)と呼ばれるページ画像データを作成するためのページ記述言語が一般的である。描画コマンドには通常、イメージやグラフィックス、テキスト等のデータの描画命令が含まれている。また適用される画像処理に関しての設定命令も含まれる。
【0028】
上記生成された描画コマンドは、ネットワーク101等で接続された画像処理装置202に伝送される。
【0029】
描画コマンド処理部205は、ホストコンピュータ104より送信された描画コマンドに対して解析処理を行い、描画オブジェクトを生成し、更にラスタライズ処理を行うことによりビットマップ画像を生成する。次に、生成されたビットマップ画像は出力画像処理部208においてプリンタエンジンが受信可能な画像フォーマット、すなわち低階調のCMYK画像に変換される。
【0030】
一方、上記のようなホストコンピュータから入力された画像データの生成過程においても、出力画像の品質向上や目的に応じて、入力画像処理部206や、出力画像処理部208は入力された画像データに対して特定の画像処理を行う。更に本実施の形態においては、必要に応じて外部装置である画像処理サーバ103に画像データを送信し、画像処理サーバ103で画像処理を行う。
【0031】
画像処理サーバ103における画像処理の詳細な説明に関しては後述する。
【0032】
このように生成された画像データは、画像出力装置203に送信される。画像出力装置203は、受信した画像データをプリンタエンジン209により紙面に出力する。以上説明した処理によりホストコンピュータ104からの描画コマンドを画像として印刷する処理が完了する。
【0033】
図3は本実施の形態における画像処理装置202の基本的な構成を示すシステムブロック図である。画像処理装置202は、CPU301、ROM302、RAM303、外部記憶装置304、表示部305、操作部306、エンジンインターフェース307、ネットワークインターフェース308、外部インターフェース309、及びシステムバス310を備える。
【0034】
上記構成を詳述すると、CPU301は、装置全体の制御及び演算処理等を行う中央処理装置であり、ROM302に格納されたプログラムに基づき後述に示す各処理を実行する。ROM302は、読み出し専用メモリである。ROM302は、システム起動プログラム、プリンタエンジンの制御を行うプログラム、文字データ及び文字コード情報等のデータの記憶領域である。RAM303は、ランダムアクセスメモリである。
【0035】
RAM303には、ダウンロードにより追加登録されたフォントデータが記憶され、様々な処理毎にプログラムやデータがロードされる。さらに、RAM303に各種プログラムが展開され、実行される。また、RAM303は、受信した画像データのデータ記憶領域として利用することも可能である。外部記憶装置304は、例えばハードディスク等から構成されている。外部記憶装置304は、データをスプールしたり、プログラムや各情報ファイル・画像データを格納したり、作業用の領域として利用されたりする。表示部305は、例えば液晶等による表示を行うものである。
【0036】
表示部305は、装置の設定状態や、現在の装置内部の処理、エラー状態などの表示に使用される。操作部306は、設定の変更やリセットを行うために使用される。操作部306は、表示部305とともに後述のように画像処理のための設定選択処理時の操作画面の表示も可能である。
【0037】
エンジンインターフェース307は、実際にプリンタエンジン209を制御するコマンド等を入出力するインターフェースである。ネットワークインターフェース308は、画像処理装置202をネットワークに接続するためのインターフェースである。画像処理装置202は、ネットワーク101及びネットワークインターフェース308を介して、画像処理サーバ103やホストコンピュータ104と画像データの送受信をする。外部インターフェース309は、パラレル(またはシリアル)などのインターフェースを介して画像入力装置であるスキャナ204等と接続される。システムバス310は上述の構成要素間のデータ通路となる。
【0038】
なお後述するフローチャートで示す処理手順は、ROM302、RAM303、又は外部記憶装置304のいずれかの記憶装置に記憶され、CPU301により実行される。
【0039】
以下、MFP102及び画像処理サーバ103で実行される画像処理の詳細な説明を行う。
【0040】
本実施例において、画像データに対して特定の画像処理を行う際、MFP102で実装されていない画像処理機能に対しては画像処理サーバ103を利用することで実現している。
【0041】
その際課題となる画像データの転送量に関してであるが、本実施例では対象となる画像処理に応じて色変換処理を行い、処理に必要な色信号のみを画像処理サーバに送信することで解決をする。
【0042】
図4は本実施の形態における画像処理の概要を示すブロック図である。
【0043】
ここで図4に示された機能部のうち外部画像処理部405を除いた構成は画像処理装置202に含まれる。401は画像入力部であり、先述のスキャナ204や描画コマンド処理部205等、画像データの入力部となる。以下取得した画像データに対して、画像処理サーバで色相彩度調整処理を行う例を説明する。
【0044】
402は画像処理判断部であり、操作部306を介した画像処理の設定や、ホストコンピュータ104からの描画コマンドの指定により取得した画像データに適用する画像処理に関しての判断処理を行う。すなわち画像処理判断部402は適用される画像処理の実行をMFPの内部で処理を実行するのか、外部装置である画像処理サーバで処理を実行するのかの判断処理を行う。本判断処理の詳細は後述する。
【0045】
例として説明する画像処理は色相彩度調整処理であり、本処理は外部装置である画像処理サーバで処理されるものとなる。なお色相彩度調整処理は、画像の色相、及び彩度を調整するものであり、その際に必要な成分信号はCIELab色空間のa*、b*信号となる。
【0046】
色変換処理部403は取得した画像データに対してRGB画像をCIELab色空間の画像データに変換する。色変換処理部403における色空間の変換は、ハードウェアで行うと高速に変換を行うことができる。なお本色変換処理に関しては公知技術であるため、詳細な説明は割愛するが行列変換及び1次元LUTを使うことで簡易に処理を行うことが可能である。
【0047】
送信部404は、色変換処理部403において色変換された画像データのうち画像処理サーバ上で画像処理を行うために必要な成分信号、及びその設定パラメータを、ネットワーク101を介して画像処理サーバ103(外部装置)に送信する。なお、色変換された画像データは画素毎に信号値を有しており、画素毎の成分信号を画像処理サーバに送信する。色相彩度調整を行う場合は、CIELab色空間の成分信号のうち、色度成分であるa*、b*の成分が必要となる。従って、a*、b*の成分信号と、それとともに色相彩度をどのように調整するかの調整パラメータを送ることになる。なお送信しない明度成分であるL*信号に関してはMFP102本体内で保持しておくことになる。
【0048】
405は外部画像処理部であり、外部装置である画像処理サーバ103で画素毎に画像処理を実行する。本例では色相彩度調整処理が行われる。なお色相彩度調整は入力の色信号[a*,b*]をそれぞれ[a_i,b_i]、出力の色信号[a*,b*]をそれぞれ[a_o,b_o]とした場合、それぞれ以下の式で表わされる。
【0049】
【数1】

【0050】
ここでθは色相の調整値、sは彩度の調整値を示したものであり、調整パラメータとして画像処理サーバに送信されたものになる。
【0051】
なお、図5(a)は横軸をa*、縦軸をb*とした際の、色相彩度調整処理の概念図を示したものである。図5(a)で示されるように、色相彩度調整処理はa*、及びb*の成分信号のみで処理可能であることが分かる。
【0052】
画像処理サーバ103はこのように処理した成分信号を送信してきたMFP102に返送する。受信部406は画像処理サーバ103で処理された画像処理後の成分信号を受信し、合成処理部407は受信した成分信号と本体内で保持されていた成分信号の合成処理を行う。本実施例では、画像処理サーバで処理済みのa*、b*の成分信号と本体で保持されていたL*の成分信号を合成することとなる。合成は画像データの画素毎に行われ、処理済みのa*b*の成分信号の画素の位置情報と保持していたL*の成分信号の位置情報を用いて、対応する画素位置で合成が行われる。合成された画像データはCIELab色空間からRGB空間に変換される。合成処理部407における色空間の変換は、ハードウェアで行うと高速に変換を行うことができる。
【0053】
408の出力画像処理部にてプリンタエンジンが受信可能な画像フォーマットに変換される。出力画像処理部では、プリンタ用の画像処理が行われる。生成された画像データは、画像出力部409に転送され紙面に画像が出力される。
【0054】
適用される画像処理について画像処理判断部402において、外部装置である画像処理サーバで実行されるものではなく、MFP本体の内部で実行されるものと判断された場合、内部画像処理部410で処理が実施されることになる。
【0055】
本実施例によれば、CIELab色空間のa*、b*の2成分の信号をサーバに送信するため、CIELab色空間のL*、a*、b*の3成分の信号をサーバに送信する場合に比べて、送信する画像サイズが2/3のサイズになる。本実施例によれば、サーバへ画像を送信する際に従来から用いられている画像圧縮技術を用いる必要がないため、画像送信時に画質劣化が起こらず、かつ、送信する画像の容量を少なくすることができる。
【0056】
表1に本発明の実施形態において、外部装置である画像処理サーバ013において適用可能な画像処理の例を示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表において、2色印刷処理とは指定した特定の色及び黒色の2色で印刷する処理である。スキャナ204から取得された画像データに適用した場合は2色コピーとして、ホストコンピュータ104よりPDLとして入力された画像データに対して適用した場合は、2色プリントとなる。
【0059】
本実施例において2色印刷を実施するにはCIELab色空間の成分信号のうち、a*、b*の成分が必要となる。従ってRGB画像をCIELab色空間に変換後、a*、b*の成分信号を画像処理サーバ103に送信し画像処理を実施する。この際、設定パラメータとして色情報を保持する特定色の指定データをともに送信する。
【0060】
画像処理サーバに送られたa*、b*の成分信号は図5(b)に示すように、指定された特定色以外の色相に関して彩度圧縮処理が行われる。彩度圧縮後の成分信号を送信元であるMFP102に返送することで2色印刷処理が実施される。
【0061】
表において、カラーユニバーサルデザイン処理は色覚障害を持つ人に対して、見やすい色に変換する処理となる。スキャナから取得された画像データに適用した場合は、原本が色の区別が困難なカラー画像であっても、色の区別がつきやすいカラー画像へコピーすることが可能である。
【0062】
本実施例においては、カラーユニバーサルデザイン処理を実施するにはCIELab色空間の成分信号のうち、a*、b*の成分が必要となる。従ってRGB画像をCIELab色空間に変換後、a*、b*の成分信号を画像処理サーバ103に送信し画像処理を実施する。
【0063】
色覚障害を持つ人にとって色の区別が困難な色は混同色線と呼ばれ、それをa*b*平面上に示したものを図5(c)に示す。
【0064】
画像処理サーバ103に送られたa*、b*の成分信号より画像データの解析を行い、対象となる画像データ内で混同しやすい領域を認識する。認識された領域の成分信号に対し、混同色線の法線方向に色を変換することで色の区別がつきやすいカラー画像へ変換が可能になる。
【0065】
また表においてシャープネス処理の例も示している。シャープネス処理はMFP102本体でも実施されることの多い処理であるが、一方で、より低周波側の周波数領域に対してシャープネス処理を行う必要がある場合、より大きなフィルタを適用する必要がある。このような大きなフィルタの適用は、より多くのメモリを必要とするため、端末本体のコスト上昇につながる。従って、適用する周波数の領域に応じて内部画像処理と外部画像処理を判断し、切り替えて処理をすることになる。
【0066】
本実施例においては、シャープネス処理を実施するにはCIELab色空間の成分信号のうち、L*の成分が必要となる。従ってRGB画像をCIELab色空間に変換後、明度信号であるL*の成分信号を画像処理サーバに送信し、画像処理を実施する。また設定パラメータとしてシャープネスの強弱パラメータをともに送ることとなる。なお、CIELab色空間の成分信号のうち、色成分であるa*、b*の成分信号は本体内に保持されることになる。
【0067】
画像処理サーバに送られたL*の成分信号に対しシャープネスの設定に応じたフィルタ処理が行われる。フィルタ処理後の成分信号を送信元であるMFP102に返送し、本体内に保持されたa*、b*の成分信号と合成されることでシャープネス処理は実行される。
【0068】
本実施例によれば、画像処理の種類に応じて画像サーバに送信される成分信号の種類が決定される。これにより、画像処理に必要な成分信号のみが画像サーバに送信されるため、画像処理に不要な成分信号を画像サーバに送信することを防ぐことができる。
【0069】
なお例に示した表1において、画像処理を行う色空間をCIELabとしてあげているが、もちろん色空間はこれに限られるものではなく、適用する画像処理に応じて、CIELUV色空間やYCbCr色空間等任意のものが利用可能である。またRGB画像のG成分のみに画像処理を適用するような場合には、RGB色空間から色変換処理を行わず、G成分信号のみ外部装置に送信するといった処理も考えられる。
【0070】
図6に本実施の形態における画像処理の実施フローを示す。
【0071】
ここで図6で示される処理のうち、外部画像処理を除く各処理は画像処理装置202においてCPU301により実行される。図6のフローチャートを実行する場合は、まず、ROM302または外部記憶装置304に格納された図6のフローチャートの各処理を実行するためのプログラムをRAM303にロードする。そして、CPU301がロードされたプログラムを実行することで、図6のフローチャートが実行される。
【0072】
まずS601において画像データを取得する。その際、この画像データに対し出力を行う処理のJOB IDも発行する。次に、S602において取得された画像データに対して適用する画像処理を判断し、本処理が外部装置で実施される画像処理であるか本体内部(画像処理装置202)で実施される画像処理であるかを判定する処理を行う(S603)。S603の判定の結果、外部装置で実施される画像処理と判定された場合(S603Yes)、S604においてその処理に必要な色変換処理を行う。次に色変換された画像データについて外部装置において画像処理を行う際にそれぞれの成分信号について分割して処理が可能か否かを判断する(S605)。成分信号を分割して処理可能と判定された場合(S605Yes)、外部装置に送信する成分信号(S606Yes)か、本体に保持される成分信号(S606No)か判断される。外部装置に送信される成分信号(第一の成分信号)は、画像処理に関する設定値、及びJOB IDとともに外部装置に送信され(S607)、外部装置にて画像処理が実施される(S608)。
【0073】
一方、外部装置に送信されない成分信号(第二の成分信号)に関しては、JOB IDとともに本体に保持される(S611)。外部装置によって画像処理を実施された成分信号をJOB IDとともに受信し(S609)、JOB IDとひも付けをすることで(S610)、本体に保持された成分信号と合成を行う(S612)。
【0074】
一方、外部装置において画像処理を行う際、必要に応じて画像データの全成分信号が必要な場合もあり(S605No)、その場合は画像サイズが大きくなるものの、S613において画像データを全て外部装置に送信する。外部装置において画像処理が実施された後(S614)、処理済みの画像データが受信される(S615)。
【0075】
なお、適用する画像処理によっては本体内部(画像処理装置202)で実施されるものもある(S603No)。この場合はS616において本体内部で画像処理が実施されることになる。
【0076】
なお、内部で実施される画像処理、及び外部で実施される画像処理の両処理が選択された場合その処理の順番に応じて処理を行えば良い。すなわち、本体内部で画像処理を適用後、次の処理に合わせて色変換処理を行い、必要な成分信号を外部に送信すれば良い。
【0077】
本実施例におけるS603での外部装置に送信するか否かの判断処理については以下のように行う。すなわち画像処理サーバ103は本サーバが有する画像処理能力を示した画像処理能力情報を保持している。例としては表にあげられたようなリストになる。MFP102は画像処理サーバ103に接続した際、本画像処理能力情報より画像処理サーバ103で実施可能な画像処理機能を把握し、その情報に応じて、適用する画像処理が画像処理サーバ103で実施するか否かを判断することになる。
【0078】
なお適用可能な画像処理の設定に関しては、画像処理サーバ103に接続された時に拡張されてもよい。画像処理サーバ103に接続されることで適用可能な画像処理が拡張される例を図7に示す。
【0079】
例としてネットワークに接続されたMFP102についてMFP本体内で実施可能な画像処理が明度調整処理、コントラスト調整処理のみである場合を示す。MFP102が表1のような画像処理能力情報を持った画像処理サーバ103を接続した場合の操作部306における画像処理の設定は、図7(a)から図7(b)に変化する。すなわち、図7(a)で示されたものが、MFP102本体内部で実施される画像処理であり、図7(b)において追加された画像処理が画像処理サーバ103で実施されるものになる。
【0080】
以上のように本実施の形態によれば、入力された画像データをネットワークを介して外部装置に送信し画像処理を実行する際に、適用する画像処理に応じて必要となる成分信号を選択し送信する。外部装置で処理された成分信号を受信し、本体内に保持された成分信号と合成することで、画像品質を維持したまま画像の転送サイズを削減した外部装置での画像処理の適用が可能となる。
【実施例2】
【0081】
実施例1では、画像入力装置としてスキャナを、画像出力装置としてプリンタエンジンを備えるマルチファンクションプリンタを例に本発明の実施形態を説明した。
【0082】
実施例2では別の情報処理装置として撮影機能付き携帯電話を例に説明をする。
【0083】
図8は、本発明に係る画像処理システムの一実施形態の構成を示すブロック図である。
【0084】
図8に示されるように本実施の形態に係る画像処理システムは、インターネット網801と、このネットワーク101にそれぞれ接続された撮影機能付き携帯電話802、画像処理サーバ803を備えている。
【0085】
ここで撮影機能付き携帯電話802は画像入力装置としてカメラ、画像出力装置としてディスプレイを備えて構成される。
【0086】
実施例2においても処理のフローは実施例1と同様のものとなる。
【0087】
すなわちカメラで撮影した画像についてインターネット網801を介して画像処理サーバ803に送信し画像処理を実行する際に、適用する画像処理に応じて色変換処理を行う。次に必要となる成分信号を選択し画像処理サーバ803に送信する。画像処理サーバ803で処理された成分信号を受信し、本体内に保持された成分信号と合成することで外部装置による画像処理の適用が可能となる。
【0088】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを画像処理に応じた色空間に変換する変換手段と、
前記変換された後の色空間をもつ画像データを構成する成分信号のうち、第一の成分信号をネットワークを介して外部装置に送信する送信手段と、
前記変換された後の色空間をもつ画像データを構成する成分信号のうち、前記第一の成分信号とは異なる第二の成分信号を記憶する記憶手段と、
前記外部装置において前記第一の成分信号に対して画像処理された信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信した画像処理後の第一の成分信号と前記記憶手段によって記憶された前記第二の成分信号とを合成する合成手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第一の成分信号は色度を示す信号であり、前記第二の成分信号は明度を示す信号であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理は色相彩度調整処理であり、前記画像処理に応じた色空間はCIELab色空間であり、前記第一の成分信号はa*、b*信号であり、前記第二の成分信号はL*信号であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理はシャープネス処理であり、前記画像処理に応じた色空間はCIELab色空間であり、前記第一の成分信号はL*信号であり、前記第二の成分信号はa*、b*信号であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
さらに、前記画像処理が前記画像処理装置で実行するのか、前記外部装置で実行するのかを判定する判定手段を有し、
前記判定手段による判定の結果、前記画像処理を前記外部装置で実行すると判定された場合、前記送信手段は、前記第一の成分信号を外部装置に送信することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
さらに、前記合成手段によって前記画像処理後の第一の成分信号と前記第二の成分信号とが合成された画像データに対して、プリンタ用の画像処理を行う処理手段とを有することを特徴とうする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像データを画像処理に応じた色空間に変換する変換ステップと、
前記変換された後の色空間をもつ画像データを構成する成分信号のうち、第一の成分信号をネットワークを介して外部装置に送信する送信ステップと、
前記変換された後の色空間をもつ画像データを構成する成分信号のうち、前記第一の成分信号とは異なる第二の成分信号を記憶する記憶ステップと、
前記外部装置において前記第一の成分信号に対して画像処理された信号を受信する受信ステップと、
前記受信ステップによって受信した画像処理後の第一の成分信号と前記記憶ステップによって記憶された前記第二の成分信号とを合成する合成ステップとを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
コンピュータを請求項1乃至6のいずれか一項に記載された画像処理装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−93722(P2013−93722A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234198(P2011−234198)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】