説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】搬送される媒体と読取装置との距離が変化しても、安定した媒体判別が可能な画像処理装置を提供すること。
【解決手段】表面に印刷画像を有する媒体10を搬送する媒体搬送路11と、前記媒体10の表面に光Hを照射し、その反射光Tから印刷画像情報を取得して前記媒体10を判別する画像処理装置であって、正当な印刷画像情報152を予め記憶する記憶部15と、前記反射光Tを取得する複数の光学センサを有する。複数の光学センサは媒体搬送路11内における媒体10の厚さ方向の異なる位置に焦点を有する。その複数の光学センサSEN1〜SEN3からそれぞれ取得した前記印刷画像情報151a〜151cの中から合焦な一の印刷画像情報と、前記記憶部15に記憶している前記印刷画像情報152と比較して、その媒体10を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類の真偽を判別するための画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行等の金融機関において紙幣の金種や真偽を判別することは重要な項目の一つである。このような目的のために現金自動預け払い機(ATM)に投入された紙幣の真偽、金種の判別にあたっては、投入された紙幣の外形サイズやその厚さ情報以外に印刷パターンにより金種、真偽、正損などの判定が光学的手段により確認されている。
【0003】
このような機器において、紙幣(媒体)をスムーズに機器内を搬送させるためには、紙幣の厚みの数倍以上の寸法を確保した媒体搬送間隙(1〜3mm)が必要となる。その際、紙幣がこの媒体搬送間隙を上下に自由に動くことになるため、光学読取時に照度の均一性が確保できないことがある。そこで例えば、印刷パターン読取装置において、光源から発せられた光を導光体内を経てから媒体に向けて出射させ、かつ、長手方向に直交する導光体の断面における光出射面の辺の長さを導光体の受光素子方向への厚みよりも長くし、導光体からの光の出射角を大きくすることで光強度の高い部分を広くして、紙幣が媒体搬送間隙を上下に自由に動いても、安定して読み取りができるようにした技術がある(特許文献1参照)。
【0004】
また例えば、電子機器に係わる焦点検出機能として、焦点が合っている詳細な画像ほどその圧縮画像データ量、コントラストが高いことに着目し、撮像位置を変えて連続撮影された複数の画像の圧縮画像データ量、若しくはコントラストを比較することにより焦点が合った画像を選択する技術がある(特許文献2参照)。この技術では、初めに検出された合焦点で露光処理し生成された画像信号を画像処理して圧縮化を行い、次いで検出された合焦点から所定の値だけ近距離側、遠距離側に変更した焦点で同様の撮影処理を行い圧縮化する。これらの圧縮画像データのデータ量を比較して、データ量が最大のものを選択するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−46726号公報
【特許文献2】特開2003−153068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、導光体からの光の出射角を大きくすることや焦点深度の広い光学系が必要となる可能性があり、部品及び機器の大型化が懸念される。
【0007】
また、特許文献2記載の技術はデジタルカメラであって、複数のレンズ位置における撮影処理に関するもので、複数の圧縮画像データを比較することを開示するものであるが、同時並行動作ではなく、媒体の搬送動作中に画像取得できるものではない。
【0008】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、搬送される媒体と読取装置との距離が変動しても、安定した媒体判別が可能な画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に関する画像処理装置は、表面に画像を有する媒体を搬送する媒体搬送路と、該媒体搬送路を搬送される前記媒体の表面に光を照射し、その反射光から画像情報を取得して前記媒体を判別する画像処理装置であって、正当な画像情報を予め記憶する記憶部と、前記反射光を取得し、前記媒体搬送路内における媒体の厚さ方向の異なる位置に焦点を有する複数の光学センサを設け、その複数の光学センサからそれぞれ取得した前記画像情報の中から選択される一の画像情報と、前記記憶部に記憶している正当な前記画像情報とを比較して、その媒体を判別する判別手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、媒体搬送間隙内に焦点位置の異なる複数の光学センサを配し、それらの各センサ取得情報の中から、一の光学センサを特定し、その光学センサが取得した印刷画像情報を選択し、正当な印刷画像情報と比較するので、媒体の判別性能を向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に関する画像処理装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明に関する画像処理装置の要部構成を示す斜視図である。
【図3】本発明に関する画像処理装置の状態説明図である。
【図4】本発明に関する媒体例を示す平面図である。
【図5】本発明に関する画像処理部のブロック図である。
【図6】本発明に関する画像選択から比較判別までの概念を示す説明図である。
【図7】本発明に関する画像読取の動作フローチャートである。
【図8】本発明に関する画像処理動作フローチャートである。
【図9】本発明に関する高周波数成分を示すグラフである。
【図10】本発明に関する光学センサと合焦レベルの関係を示す説明図である。
【図11】第1の実施の形態に関する画像処理装置の変形例を示す状態説明図である。
【図12】第1の実施の形態に関する画像処理装置の変形例の光学センサと合焦レベルの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。なお、各図はこの発明が理解できる程度に各構成要素の形状、大きさ、及び配置関係等を概略的に示したものに過ぎない。従って、この発明の構成は、図示の構成例に限定するものではない。
【0013】
<第1の実施の形態>
図1は本発明に関する画像処理装置の概略構成を示す説明図であり、図2は本発明に関する画像処理装置の要部構成を示す斜視図である。1は本実施の形態における画像処理装置であり、現金自動預け払い機(ATM)や両替機、自動販売機、ゲーム機等の装置に配設され、媒体10の真偽を判別するために利用される。なお、媒体10は、紙幣以外の金銭的価値を有する媒体(小切手、ギフト券、トラベラーズチェック、証券、施設利用券など)であってもよい。ここでは、媒体は紙幣である場合について説明する(以後、紙幣10とし、図示では「千円券」とする)。
【0014】
11は媒体搬送路であって、搬送ガイドアッパ11aと搬送ガイドロワ11bとの間に形成される媒体搬送間隙G(1〜3mm)を有している。なお、媒体搬送路11には、紙幣10を安全に搬送するための所定間隔で配置した図示しない搬送ローラや搬送監視のための位置検出手段が配置されている。更に、搬送ローラを所定の速度で回転させる図示しないモータや駆動回路及び制御回路により構成される。
【0015】
LED1及びLED2は、媒体搬送路11を搬送される紙幣10の幅方向に対して、略平行かつ直線状に並び、紙幣10に光を照射するためのLED(Light Emitting
Diode)からなる光源である。本実施の形態では、図2に示すように、照射光H1及びH2として搬送する紙幣10に向けて光を照射する。なお、本実施の形態では2個配置しているがこれに限定されるものではない。この光源LED1及びLED2はLED駆動回路12に接続され点灯制御される。
【0016】
LED駆動回路12は光源LED1及びLED2に所定の電力を供給することで、所定の光量を有する照射光H1及びH2を発生させるものである。なお常時、作動して光源LED1及びLED2を発光させても良いが、光量の出力が安定できる時間が確保できれば、紙幣10の搬送制御に伴って作動しても良い。
【0017】
SEN1〜SEN3は、光源LED1及びLED2からの照射光H1及びH2が紙幣10の表面で反射した反射光T1〜T3をそれぞれ受光する光学センサである。更に、光源LED1及びLED2、光学センサSEN1〜SEN3は図2に示すように、紙幣10の幅と略同一域を覆うアレイ状である。なお、画像情報として取得すべき範囲が限定されていれば、当該範囲のみを覆うものでも良いが、現金自動預け払い機(ATM)に投入された紙幣10は向き(上下左右)が不規則なので、紙幣10の横幅全域を覆うように構成している。なお、SEN1〜SEN3は後述するように、媒体搬送路11に対して紙幣10の厚さ方向に異なる距離に配置される。
【0018】
図3は本発明に関する画像処理装置の状態説明図である。図1では媒体搬送間隙Gにおいて紙幣10の厚さ方向のほぼ中央を紙幣10が搬送される場合を図示しているが、図3(a)では媒体搬送間隙Gにおいて紙幣10の厚さ方向の下端面側、即ち、搬送ガイドロワ11b側に沿って搬送される場合を示す。また図3(b)では媒体搬送間隙Gにおいて紙幣10の厚さ方向上端面側、即ち、搬送ガイドアッパ11a側に沿って搬送される場合を示す。
【0019】
L1〜L3は、各光学センサSEN1〜SEN3の焦点位置(距離)を図示したものである。光学センサSEN1の焦点位置L1は、図3(a)に示すように、光学センサSEN1の直下位置に設けられ、紙幣10が搬送ガイドロワ11bに沿って搬送される場合を想定して設定されている。即ち、光学センサSEN1は、紙幣10が搬送される媒体搬送間隙Gにおける紙幣10の厚さ方向の最も遠距離(下端面)に焦点(ピント)が合っている。
【0020】
また、光学センサSEN2の焦点位置L2は図1に示したように、光学センサSEN2の直下位置に設けられ、紙幣10が媒体搬送間隙Gの略中央に沿って搬送される場合を想定して設定される。即ち、光学センサSEN2は、紙幣10が搬送される媒体搬送間隙Gにおける紙幣10の厚さ方向の中央位置に焦点(ピント)が合っている。
【0021】
また、光学センサSEN3の焦点位置L3は図3(b)に示すように、光学センサSEN3の直下位置に設けられ、紙幣10が搬送ガイドアッパ11a側に沿って搬送される場合を想定して設定してある。即ち、光学センサSEN3は、紙幣10が搬送される媒体搬送間隙Gにおける紙幣10の厚さ方向の上端面に焦点(ピント)が合っている。
【0022】
即ち、複数個の光学センサSEN1〜SEN3は、媒体搬送路11の媒体搬送間隙G内における紙幣10の厚さ方向の異なる位置に焦点を有することになる。なお、本実施の形態の説明において各光学センサSEN1〜SEN3は同じ焦点距離を有するものを採用し、部品や駆動回路の共通化によるコスト低減を図る。従って、複数個の光学センサSEN1〜SEN3は、媒体搬送路11に対して紙幣10の厚さ方向に異なる距離になるように、例えば図示のように傾斜して配置されることになる。
【0023】
Pはプリント配線基板であり、光学センサSEN1〜SEN3を所定の間隔で配置し、図示しないフレームに固定されるものである。複数個の光学センサSEN1〜SEN3が、媒体搬送路11に対して紙幣10の厚さ方向に異なる位置に配置されるため、プリント配線基板Pは、媒体搬送路11に対して傾斜して設けられ、なお、プリント配線基板Pと光学センサSEN1〜SEN3、更には光源LED1及びLED2を一体化した光学モジュールとしても良いことは言うまでもない。
【0024】
図1に戻り、13はA/Dコンバータであり、光学センサSEN1〜SEN3がそれぞれ受光し、発生したアナログ電気信号をデジタルデータにそれぞれ変換するものである。なお、光学センサSEN1〜SEN3が受光し、発生したアナログ電気信号は図示しない増幅回路により増幅される。14はMPU(Microprocessor Unit)であり、少なくとも図1に係わる画像処理全体を制御する。
【0025】
15は記憶部としてのメモリであり、MPU14に接続され、光学センサSEN1〜SEN3により検出された画像情報としての印刷画像データを一時的に格納する。更に、検出パターン判別に用いられる媒体の種別毎の、例えば紙幣10の金種毎の後述する標準パターンデータ163が正当な印刷画像情報として予め格納されている。
【0026】
Sは通過検知センサであり、媒体搬送間隙Gに対して、発光素子と受光素子を互いに対向して設けたものである。紙幣10が矢印A方向から媒体搬送路11に取り込まれ、この通過検知センサSの光軸位置に到達すると、紙幣10により光軸が遮断されることになり、受光素子の出力が変化する。この変化量を二値化してON/OFF信号として検出する。
【0027】
図中の距離Bは、媒体搬送路11の矢印A方向において、通過検知センサSの光軸位置から光学センサSEN1の直下位置までの距離である。距離Cは媒体搬送路11の矢印A方向において、光学センサSEN1の直下位置から光学センサSEN2の直下位置までの距離である。距離Dは同じく光学センサSEN2の直下位置から光学センサSEN3の直下位置までの距離である。
【0028】
以上により、光源LED1及びLED2からの照射光H1及びH2が、紙幣10の表面で反射した反射光T1,T2,T3として受光され、アナログ電気信号として光学センサSEN1〜SEN3が出力する。このアナログ電気信号はライン単位で所定の搬送タイミング毎にサンプリングされ、それぞれ増幅された後、A/Dコンバータ13によりデジタル信号に変換される。MPU14はこの変換されたデジタル信号を検出パターンデータとして、後述する比較画像の選択処理を行う。その後、メモリ15に格納している媒体毎の標準パターンデータ163と比較することで、正当な紙幣10であるかどうかの判定結果を出力する。
【0029】
図4は本発明に関する媒体例を示す平面図である。紙幣10は、その表面に画像を有し、特に、その真偽を判別するための特徴部として比較画像域101を有している。この比較画像域101は、矢印A方向に搬送される紙幣10の先端102より距離Eだけ離れた上辺101aから開始し、距離Wが終るまでの区間に設定されている。即ち、比較画像域101は、上辺101aが所定の幅を有し、長さが距離Wの方形である。この比較画像域101に紙幣10の額面を示す「千円」が印刷されていることとして説明する。
【0030】
次に本発明における画像読取処理について説明する。図5は本発明に関する画像処理部のブロック図である。A/Dコンバータ13はA/D変換回路131a、131b、131cからなる。A/D変換回路131a〜131cは光学センサSEN1〜SEN3からのアナログ電気信号を同時にかつほぼ並行してデジタル信号に変換できるよう構成されている。また、メモリ15においても同様に画像メモリ151a、151b、151cからなる。画像メモリ151a〜151cはA/D変換回路131a〜131cからのデジタル信号を格納する。152は媒体毎の標準パターンデータ163を格納している標準画像メモリである。
【0031】
光学センサSEN1〜SEN3は、前述のように焦点位置が異なるように配置されている結果、光学センサSEN1〜SEN3に対応する画像メモリ151a〜151cに格納する画像情報の合焦レベルは異なる。画像メモリ151a〜151cの内、最も合焦レベルの高い画像情報を格納する画像メモリ151a〜151cと標準画像メモリ152とが比較される。
【0032】
MPU14は合焦検出回路141a、141b、141c、合焦判定回路142及び媒体判別回路143を有する。合焦検出回路141a〜141cは光学センサSEN1〜SEN3からの印刷画像信号の合焦レベルを検出し、合焦判定回路142に出力する。例えば、光学センサSEN1〜SEN3からの印刷画像信号を帯域通過フィルタ(BPF:Band Pass Filter)を通過させ、所定周波数成分(例えば、中心周波数1MHz)から検出する。
【0033】
合焦判定回路142は、得られた合焦レベルに基づいて最も焦点(ピント)の合っている光学センサSEN1〜SEN3からの画像情報としての印刷画像データを選択する。例えば、帯域通過フィルタBPFを用いて高周波数成分を取り出したとき、所定レベルを「レベル1」とすると、焦点が合っていない状態では「レベル1未満」になり、焦点が合っている状態では「レベル1以上」になる。そこで「レベル1以上」となる印刷画像データを生成した光学センサSEN1〜SEN3を特定する。
【0034】
媒体判別回路143は、合焦判定回路142から出力された情報(例えば、ピントが合っている光学センサSEN1〜SEN3の番号)に基づいて、当該光学センサSEN1〜SEN3に対応する画像メモリ151a〜151cの印刷画像データを比較用の比較画像パターンとして選択する。そして、標準画像メモリ152に格納されている標準パターンデータ163と比較し、紙幣10の真偽を判別するものである。なお、標準パターンデータ163としては金種毎や表裏別に複数が用意されているが、それらの複数の標準パターンデータの中から比較判別する標準パターンデータ163の抽出は、紙幣10の外形サイズ等により事前に選択されることとする。
【0035】
また、図6は本発明の画像選択から比較判別までの概念を示す説明図である。なお、ピンボケ画像は印刷画像パターン161aと161cとし、画像に斜線を加えて図示する。光学センサSEN1から得られ画像メモリ151aに格納された印刷画像データは印刷画像パターン161aとして示し、光学センサSEN2から得られ画像メモリ151bに格納された印刷画像データは印刷画像パターン161bとして示し、光学センサSEN3から得られ画像メモリ151cに格納された印刷画像データは印刷画像パターン161cとして示す。
【0036】
一方、ほぼ並行して光学センサSEN1〜SEN3からのアナログ電気信号は合焦検出回路141a〜141cにより合焦レベルが検出され、合焦判定回路142により最も焦点が合っている光学センサSEN1〜SEN3が判定される。ここでは、光学センサSEN2が最も焦点が合っている判定とする。そこで最も焦点が合っている光学センサSEN2からの印刷画像パターン161bが比較画像パターン162として選択される。これが標準画像メモリ152に格納されている標準パターンデータ163と比較され、正当な紙幣10であるかが判別される。
【0037】
図7は本発明の画像読取動作を示すフローチャートであり、図8は本発明の画像処理動作を示すフローチャートである。なお、フローチャートにおけるSは動作ステップを意味するものである。以下に説明する画像処理装置の全体の動作は、図示しない記憶装置に格納されたソフトウエア(取引処理プログラム)に基づいて制御部によって制御され、MPU14は主に画像読取から判別までの制御を行うこととし、判別結果、例えば偽物と判別された場合の後処理などは、全体を制御するソフトウエアに従って図示しない制御部が制御する。
【0038】
S1: 画像処理装置1内に取り込まれた紙幣10は、図示しない搬送ローラ等によりその表裏が挟持され、矢印A方向から媒体搬送間隙G内に送り込まれてくる。
S2: 搬送が継続されると、制御部は、紙幣10の先端102が通過検知センサSの光軸を遮断(ON)するかどうか判断する。
【0039】
S3:通過検知センサSがONすると、制御部は搬送量の計測を開始する。具体的には、搬送モータの回転量により行われるが、周知技術なのでその説明は省略する。図1に示すように、通過検知センサSがONしてから所定距離Bだけ搬送されると、紙幣10の先端102が光学センサSEN1の直下位置まで到達したことになる。
【0040】
S4:制御部は、搬送量が距離Bと距離Eの和になったかどうかチェックする。図4に示す距離Eが搬送されると、紙幣10の比較画像域101の上辺101aが光学センサSEN1の直下位置まで到達したことになる。この距離Eは予め定められるので、搬送モータの回転量制御により容易に制御できる。
【0041】
S5: ここまで紙幣10が搬送されると、制御部はMPU14を制御し、画像読取処理が開始する。まず、MPU14は、光学センサSEN1からのアナログ電気信号をA/D変換131aでデジタルデータに変換し、所定のタイミングにより順次ライン毎に取得変換されるデジタルデータを画像メモリ151aに取り込む。ほぼ並行して、光学センサSEN1からのアナログ電気信号は合焦検出回路141aにより合焦レベルが検出される。合焦検出と合焦判定については後述する。
【0042】
S6:更に紙幣10が所定距離C搬送されると、紙幣10の比較画像域101の上辺101aが光学センサSEN2の直下位置に到達する。
S7:MPU14はセンサSEN2からのアナログ電気信号もA/D変換131bでデジタルデータに変換し、順次ライン毎に取得変換されるデジタルデータをメモリ15に取り込む処理を開始する。ほぼ並行して、光学センサSEN2からのアナログ電気信号も合焦検出回路141bにより合焦レベルが検出される。
【0043】
S8:続けて、紙幣10が所定距離D搬送されると、紙幣10の比較画像域101の上辺101aが光学センサSEN3の直下位置に到達する。
S9:同様にMPU14は光学センサSEN3からのアナログ電気信号もA/D変換131cでデジタルデータに変換し、順次ライン毎に取得変換されるデジタルデータをメモリ15に取り込む処理を開始する。ほぼ並行して、光学センサSEN3からのアナログ電気信号も合焦検出回路141cにより合焦レベルが検出される。
【0044】
S10: デジタルデータが上記メモリ15に取り込まれ、比較画像域101の距離Wだけ搬送されると、比較画像域101の全域が走査されたことになる。
S11: 光学センサSEN1〜SEN3からのアナログ電気信号がA/Dコンバータ13でデジタルデータに変換され、デジタルデータとしてメモリ15に取り込めたので、読取処理終了とする。そして、後述するように合焦判定回路142により、合焦検出回路141a〜141cが検出した合焦レベルが比較され、どの光学センサSEN1〜SEN3が合焦しているか判定される。なお、制御部は、続けて紙幣10の搬送を停止することなく継続させ、次処理部への引き渡しを行う。
【0045】
S12: MPU14は、合焦判定回路142が判定した光学センサSEN1〜SEN3が特定されると、これに対応する画像メモリ151a〜151cを特定する。そして、MPU14は、媒体判別回路143を制御することにより、特定された画像メモリ151a〜151cに格納している印刷画像データと、標準画像メモリ152に格納している標準パターンデータ163とを画像比較を行う。これにより、紙幣10の真偽判定を行うことができる。
【0046】
このように、紙幣10の搬送を中断することなく、紙幣10の表面までの焦点位置の異なる光学センサSEN1〜SEN3から連続的に複数の合焦データと印刷画像データを取得する。この時の紙幣10の搬送状態としては媒体搬送間隙Gの上端面側であっても下端面側であっても印刷画像データは取得できている。
【0047】
次に標準パターンデータ163と比較すべき比較画像パターン162の選択処理について説明する。図8は本発明に関する合焦処理の動作を示すフローチャートである。なお、以下の動作は前記ステップS5〜S11と並行して処理される。
【0048】
S21:MPU14は、光学センサSEN1が出力したアナログ電気信号を合焦検出回路141aにより、その合焦レベルを検出する。例えば、図示しない帯域通過フィルタBPFを用いて高周波数成分として取り出す。図9は本発明に関する合焦検出を説明するグラフである。同図に示すように所定の周波数(h1)において、光学センサSEN1〜SEN3からのそれぞれの高周波数成分F1〜F3が現れる。高周波数成分F2は合焦レベル1以上あるが、高周波数成分F1とF3は合焦レベル1以下となることを示す。
【0049】
S22:続けて、光学センサ毎に区別して合焦レベルがメモリ15の図示しない記憶領域に格納される。図9に示す例は、高周波数成分F2が合焦レベル1以上となるので、その光学センサ(例えば、光学センサSEN2)が焦点(ピント)が合っていることになる。
【0050】
S23:MPU14は、上記ステップS21,S22の処理について、光学センサSEN2及び光学センサSEN3についても実行する。図10は本発明に関する光学センサと合焦レベルの関係を示す説明図である。メモリ15には、光学センサ番号、走査ライン番号、そしてレベル判定コード(例えば、レベル1以上は「1」、レベル1未満は「0」)として格納する。図10はこれらの情報の関係を示したものである。
【0051】
S24:MPU14は、ステップS23で画像判定された情報、例えば図10(a)に示すような結果から、レベル判定コードにより、レベル1以上となる光学センサSEN1〜SEN3を特定し、比較すべき対象、即ち比較画像パターン162として決定する。例えば、図10(a)では光学センサSEN2が合焦レベル1以上(太枠で囲んだ部分)なので、比較すべき比較画像パターン162は光学センサSEN2が取得したものが選択されることになる。
【0052】
S25:MPU14は、標準画像メモリ152の中から標準パターンデータ163を読み出して、比較画像パターン162と比較する。
S26:比較判別回路143はその比較により紙幣10の真偽の判別結果を出力する。
【0053】
なお、合焦レベルの検出の処理は走査ラインの全てについて行うことは必須事項ではなく、適宜間隔(たとえば、2〜5mm程度)を空けても良い。この場合の光学センサSEN1〜SEN3と合焦レベルの関係は図10(b)のような結果になる。この場合、走査ラインNo.2,3,5,6・・等は合焦レベル検出を行ってないことになるので、メモリ容量の低減ができることになる。
【0054】
また、前記図5における画像処理部の説明において、合焦検出回路141a〜141cと合焦判定回路142を設け、合焦検出回路141a〜141cは光学センサSEN1〜SEN3からの印刷画像信号を直接検出し、合焦判定回路142がこれを判定する構成としたが、これに限らない。即ち、画像メモリ151a〜151cに格納されている印刷画像データから直接合焦の判定をすることとしてもよい。この場合の合焦判定は、デジタル画像処理技術を利用して行うことができる。
【0055】
以上説明したように、前記媒体搬送路11内における媒体の厚さ方向の異なる位置に焦点を有する複数の光学センサSEN1〜SEN3を設けたので、媒体搬送間隙G内に搬送される紙幣10は光学センサSEN1〜SEN3の内のいずれかにピントが合うことになる。従って、その光学センサSEN1〜SEN3からの画像情報としての印刷画像データを使用すれば、安定した媒体判別が可能となる。
【0056】
また、複数の光学センサSEN1〜SEN3から同時に画像情報を取得すると共に、ほぼ並行して合焦レベルの検出から判定を行い、焦点(ピント)の合っている光学センサSEN1〜SEN3を特定し、その光学センサSEN1〜SEN3から取得した比較画像パターン162と標準パターンデータ163と比較するので、安定した媒体判別ができると共に、並行処理による処理速度の向上も可能となる。
【0057】
<変形例>
通常、媒体の中で特に「紙幣」は取り扱われる外部環境から、2つ折りや4つ折り癖、更にはカール癖が存在すること、更には媒体搬送間隙G内の特に光学センサ直下では紙幣10の挟持ができないことから図4に示す比較画像域101が媒体搬送間隙G内で上下方向に湾曲していることが想定される。本変形例はそのような場合を考慮している。
【0058】
図11は、第1の実施の形態に関する画像処理装置の変形例を示す状態説明図である。同図は、媒体搬送間隙G内において、紙幣10と光学センサSEN1〜SEN3までの距離が、搬送途中で変化する場合を示している。このような事態になると前述したように焦点(ピント)の合う光学センサSEN1〜SEN3が画像取得の途中で切り替わることになる。
【0059】
図12はこのような場合の光学センサと合焦レベルの関係を示したものである。図12は第1の実施の形態に関する画像処理装置の変形例の光学センサと合焦レベルの関係を示す説明図である。走査ラインNo.1から搬送途中までは、光学センサSEN3の合焦レベルが良(レベル1)であり、搬送途中から走査ラインNo.nまでは光学センサSEN1の合焦レベルが良(レベル1)となる。
【0060】
このような状況下でMPU14は、前半は光学センサSEN3から取得した印刷画像データを利用し、後半は光学センサSEN1から取得した印刷画像データを取り出して、画像合成処理を施してから標準パターンデータ163と比較するようにする。即ち、図12に示す太枠で囲まれた部分に該当する印刷画像データを取り出して、それを画像合成処理して生成することになる。従って、搬送途中で紙幣10が上下方向に変動しても、判別処理する際に焦点(ピント)の合った部分を利用できるので、判別精度をより向上させることができる。なお、本変形例では前後半として説明したが、これに限定されず合焦レベルが良い(レベル1)部分を抽出してその走査ラインに該当する部分の印刷画像データを切り出して画像合成処理して利用することもできる。
【0061】
以上の実施の形態では、光学センサSEN1〜SEN3を3個として説明したが、これに限定されない。即ち、光学センサSEN1〜SEN3の焦点深度や媒体搬送間隙等、更にはコスト面や判別精度などにより適宜その数量を決定することができる。
【0062】
以上説明したように、前記媒体搬送路11内における媒体の厚さ方向の異なる位置に焦点を有する複数の光学センサSEN1〜SEN3を設け、複数の印刷画像データを切り出して画像合成処理したので、媒体搬送間隙G内に湾曲して搬送される紙幣10は光学センサSEN1〜SEN3の内のいずれかにピントが合うことになる。従って、その光学センサSEN1〜SEN3からの印刷画像データを画像合成処理して使用すれば、安定した媒体判別が可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1 画像処理装置
10 紙幣
11 媒体搬送路
11a 搬送ガイドアッパ
11b 搬送ガイドロワ
13 A/Dコンバータ
14 MPU
15 メモリ
141 合焦検出回路
142 合焦判定回路
143 媒体判別回路
161a,161b,161c 印刷画像パターン
163 標準パターンデータ
LED1,LED2 光源
SEN1,SEN2,SEN3 光学センサ
G 媒体搬送間隙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に画像を有する媒体を搬送する媒体搬送路と、該媒体搬送路を搬送される前記媒体の表面に光を照射し、その反射光から画像情報を取得して前記媒体を判別する画像処理装置であって、
正当な画像情報を予め記憶する記憶部と、
前記反射光を取得し、前記媒体搬送路内における媒体の厚さ方向の異なる位置に焦点を有する複数の光学センサを設け、
その複数の光学センサからそれぞれ取得した前記画像情報の中から選択される一の画像情報と、前記記憶部に記憶している正当な前記画像情報とを比較して、その媒体を判別する判別手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像情報の中から選択される一の画像情報は、
前記複数個の光学センサがそれぞれ出力する画像情報を合焦検出し、該検出した合焦レベルが所定レベル以上となった光学センサを特定し、該特定された光学センサから取得した画像情報であることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像情報の中から選択される一の画像情報は、
前記特定された光学センサから取得した複数の画像情報を画像合成処理して生成される請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記複数の光学センサは同一焦点距離のものとし、その取付位置を異ならせることにより、その焦点位置を異ならせる構成とすることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一記載の画像処理装置。
【請求項5】
表面に画像を有する媒体を媒体搬送路に搬送し、該媒体搬送路を搬送される前記媒体の表面に光を照射し、その反射光から画像情報を取得して前記媒体を判別する画像処理方法であって、
前記媒体搬送路内における媒体の厚さ方向の異なる位置に焦点を有し、かつ媒体搬送方向に所定の間隔をもって配置される複数の光学センサから順次出力を行い、
前記複数の光学センサがそれぞれ出力する画像情報をそれぞれ合焦検出し、検出した合焦レベルが所定レベル以上となった光学センサを特定し、
該特定された前記光学センサが取得した前記画像情報を正当な画像情報と比較することを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
前記光学センサから取得した前記画像情報は、
前記特定された光学センサから取得した複数の画像情報を画像合成処理して生成されることを特徴とする請求項5記載の画像処理方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−113420(P2011−113420A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270882(P2009−270882)
【出願日】平成21年11月28日(2009.11.28)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】