説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】 オブジェクトを重ね描きする同一開始位置に重複するエッジを削除し、高速にオブジェクトの描画処理を行える装置及び方法を提供する。
【解決手段】 オブジェクトを描画処理する画像処理装置において、オブジェクトを重ね描きする同一開始位置に閾値以上、エッジが重複するか否かを判定する。そして、エッジが重複すると判定された場合に、当該重複するエッジを削除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子文書を直接受け取って画像処理を行う画像処理装置及び画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のアプリケーションソフトやOSの多様化により、印刷描画命令が複雑化し、印刷装置の描画処理、画像処理の負荷が増大してきている。複雑な描画命令を高速に処理するために、スキャンラインレンダリングによる描画方法が用いられている。
【0003】
このスキャンラインレンダリングは、各オブジェクトの輪郭を抽出し、各オブジェクト間のエッジの重なりを排除し、重なりを排除したエッジ列に対してソート処理を行う技術である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、スキャンラインレンダリングにおいて、描画オブジェクトが同一箇所に重複しているデータや近い領域に対して密集して描画されているデータの場合、ソート処理に負荷がかかり、非常に処理時間がかかってしまう。この重複オブジェクトの対策として、文字オブジェクトの重なりを除去する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−177657号公報
【特許文献2】特開2011−002977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この文字オブジェクトの重なりを除去する技術では、文字データが連続して描画された場合、レンダリング中にエッジの重なりを検知し、下位にある不要なデータを削除するという対策が行われている。
【0007】
しかしながら、グラフィックやラインのようなオブジェクトは、1つのオブジェクトで2つ以上のエッジの組み合わせで構成されているため削除が難しい。また、グラフィックオブジェクトが重なっている場合、1つのエッジのみで判断できず、エッジの組み合わせ毎に判定及び削除する必要があり、その判定及び削除が困難であった。
【0008】
本発明は、オブジェクトを重ね描きする同一開始位置に重複するエッジを削除し、高速にオブジェクトの描画処理を行える装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、オブジェクトを描画処理する画像処理装置であって、
前記オブジェクトを重ね描きする同一開始位置に閾値以上、エッジが重複するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記エッジが重複すると判定された場合に、当該重複するエッジを削除する削除手段と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オブジェクトを重ね描きする同一開始位置に重複するエッジを削除し、高速にオブジェクトの描画処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置を含む印刷システムの構成を示す図。
【図2】画像形成装置のソフトウェアの構成例を示す図。
【図3】(a)は最適な対象データの印字結果、(b)は重ね描きパターン1、(c)は重ね描きパターン2、の一例を示す図。
【図4】(a)は重ね描きオブジェクト、(b)は重ね描きオブジェクトの中間データ、を示す図。
【図5】組み合わせエッジを削除する処理を示すフローチャート。
【図6】組み合わせエッジ削除の効果を説明するための模式図。
【図7】第2の実施形態における削除処理を示すフローチャート。
【図8】(a)はオブジェクトレベルでの削除、(b)は単一エッジでの削除、を示す模式図、(c)は先行レンダリングを行う場合の模式図。
【図9】レンダリング中にエッジを削除する処理を示すフローチャート。
【図10】(a)はレンダリング中にエッジを削除する処理を示す図、(b)はレンダリング処理を実施した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら発明を実施するための形態について詳細に説明する。本実施形態では、画像形成装置のようなデジタル複合機(MFP)を例に挙げて説明するが、本発明は単機能プリンタ(SFP)やレーザビームプリンタ(LBP)、他のプリント方式のプリンタに適用してもよいことは言うまでもない。
【0013】
<印刷システム概要>
まず、本発明に係る電子部品としてのコントローラ部が搭載された画像形成装置を含む印刷システムの構成を、図1を用いて説明する。図1に示すように、画像形成装置100は、ローカルエリアネットワーク(LAN)190を介してホストコンピュータ(第一のホストコンピュータ191、第二のホストコンピュータ192)に接続される。ここでは、LAN190を介して接続されているが、インターネットなどの他の通信ネットワークを介して接続されてもよい。
【0014】
画像形成装置100は、リーダー装置(リーダー部)120、プリンタ装置(プリンタ部)130、操作部150、画像記憶部160、これらの構成要素を制御する制御装置(コントローラ部)110によって構成されている。制御装置110には、CPU112、ROM114、RAM116等が含まれ、CPU112がROM114又は他の記憶媒体に格納されたプログラムに従って、画像形成装置100全体を統括制御する。尚、RAM116は、CPU112が処理を実行時に、作業領域としても用いられる。
【0015】
リーダー装置120では、画像データの読み取りを行う。一方、プリンタ装置130では、プリンタエンジンを用いて画像データの出力を行う。操作部150は、画像データの入出力操作を行うキーボード、画像データや各種機能の表示/設定などを行う液晶パネルを備える。画像記憶部160には電子文書や画像データなどのデータが一時的に格納され又は保存される。
【0016】
ホストコンピュータ191は、LAN190を介して電子文書を画像形成装置100へ送信する。画像形成装置100では、制御装置110のCPU112が受信した電子文書の解釈及び出力画像データの生成処理を行い、プリンタ装置130が紙などの印刷媒体に出力する。ここでは、LAN190を介して電子文書が入力される例を説明したが、画像形成装置100に接続されたUSBメモリなどの可搬メディアや画像記憶部160に保存された電子文書が入力されてもよい。
【0017】
次に、画像形成装置100の制御装置110にて実行されるソフトウェアの構成例を、図2を用いて説明する。ジョブ制御部200は、印刷ジョブの入力から出力を関数コールやメッセージ通信などによって実行及び制御する。PDL解釈部202は、画像形成装置100に搭載されるページ記述言語(PDL)の種類(PostScript、PCL、XPSなど)の数だけ存在する。PDL解釈部202は、ジョブ制御部200の制御に従ってPDL受信バッファ201に格納されたPDLデータを読み込み、PDLデータを解釈する解釈処理を実行する。
【0018】
中間データ生成部203は、ジョブ制御部200による制御とPDL解釈部202から渡された描画情報とに従って、中間データであるディスプレイリスト(DL)を生成してフレームバッファ204に格納する。イメージデータ生成部205は、フレームバッファ204からDLをロードし、DLに基づいてレンダリングした結果であるイメージデータ206を出力する処理を行う。
【0019】
[第1の実施形態]
ここで、第1の実施形態における組み合わせエッジの消去方法を説明する。図3に示す(a)は、最適な対象データの印字結果の一例を示す図である。この例では、印字結果はグラフィック、ライン属性から構成されるチェックボックスと“振込み”の文字とで構成されている。これらのオブジェクトは印字結果からはわからないが、大量のオブジェクトが同一箇所に重なって描かれているものである。
【0020】
このように、同一箇所に対して重複して描画を行うと、イメージデータ生成部205がスキャンラインレンダリングモデルの場合、同一箇所に大量のエッジデータが配置されるため、ソート処理等に非常に時間がかかる。この問題を解決するために重複エッジを消去する処理を説明する。
【0021】
図3に示す(b)は、図3の(a)の対象データを重ね描きする順番におけるパターンの一例である。この場合、1つのオブジェクトがそれぞれ連続して繰り返されて描画命令が発行される。また同様に、図3に示す(c)も、図3の(a)の対象データを重ね描きする順番におけるパターンの一例である。この場合、1から5の順でオブジェクトが周期性を持って繰り返されて描画命令が発行される。
【0022】
つまり、図3の(b)のパターンの場合、同じ描画命令が連続しているため、前の描画命令と比較するだけで重複オブジェクトの検知が図3の(c)のパターンに対して比較的容易であり、消去も可能である。図3の(c)のパターンの場合、描画命令が連続せず、ある程度の周期性をもって同一の描画命令が発行されるため、重複オブジェクトの検知が図3の(b)に対して難しく、消去もできていない。
【0023】
このような描画パターンの場合、描画命令を解釈するPDL解釈部202では重複オブジェクトを検知できない。従って、重複オブジェクトデータに関しては、中間データ生成部203におけるエッジソート処理の中で重複データを検知して消去する。
【0024】
次に、重ね描きオブジェクトとその中間データ(ディスプレイリスト)の構成の一例を説明する。図4に示す(a)は、重ね描きオブジェクトを簡易化した模式図である。描画オブジェクトは、描画命令が発行された順にZ方向に並べられ、X及びYの配置座標位置を有している。
【0025】
図4に示す(b)は、中間データ生成部203において図4の(a)のオブジェクトを中間データであるDL化したデータを示す図である。中間データ(DL)は、外郭情報を示すエッジ、合成処理や高さを示すレベル、塗り情報を示すフィルで構成され、それぞれがリンクされた状態になってレンダリングが可能となる。
【0026】
エッジデータは生成後、X及びY方向へのソート処理が行われる。ソートされたエッジ群はエッジリストとしてメモリ上に展開される。また、エッジデータは開始点の他に向きと開始点からの変位量により示す点列群情報をセグメントとして持つ。このように、中間データ(DL)をソートした状態で保持することで、レンダリング処理の高速化が可能となる。また、このソートされた状態を利用し、同一箇所のエッジを可能としている。
【0027】
ここで、組み合わせエッジを削除する処理を、図5に示すフローチャートを用いて説明する。画像形成装置100のCPU112がホストコンピュータ191、192から受信したPDLデータをRAM116へ書き込む。そして、ジョブ制御部200がそのPDLデータを受信し、PDL解釈部202へジョブ開始を通知する。PDL解釈部202は、S501において、受信したデータをロードし、描画命令を解釈する。
【0028】
次に、S502において、中間データ生成部203がディスプレイリストを生成する。そして、S503において、新規エッジを生成し、エッジリストへ挿入する。S504において、エッジデータ群をX及びY方向へのソート処理を行い、リスト化する。
【0029】
次に、S505において、エッジリスト上のデータを対象として、X及びY方向の座標位置として、同一開始位置にエッジがあるかどうかを判定する。ここで、同一開始位置にエッジが存在しない場合は重複するオブジェクトが存在しないため、中間データ生成処理を継続する。
【0030】
一方、S505で判定した結果、同一開始位置にエッジが存在する場合は重複するオブジェクトが存在するため、S506へ処理を進め、判定処理を継続する。このS506では、新規のエッジのレベル情報を参照し、それが背面を必要とするものであるかどうかを判定する。判定した結果、ROP演算におけるMERGEPENなど背面を必要とするものである場合は背面のオブジェクトを削除すると描画結果が意図したものでなくなるため、背面のオブジェクトを消去することができない。従って、重複するオブジェクトが存在したとしても消去できないため、中間データ生成処理を継続する。尚、この問題に関しては、更に後述する。
【0031】
S506で判定した結果、ROP演算におけるCOPYPENなど背面を必要としないものである場合は背面のオブジェクトを削除することが可能であるため、S507へ処理を進める。S507では、エッジのセグメントデータをロードする。そして、S508において、エッジのセグメントデータが新規エッジと開始点が一致したエッジとで一致しているか比較する。その結果、セグメントデータが一致していない場合は重複するオブジェクトが存在しないため、中間データ生成処理を継続する。
【0032】
一方、S508で比較した結果、セグメントデータが一致した場合は重複するオブジェクトが存在するため、S509へ処理を進める。このS509では、レベル情報からペアエッジを参照する。そして、S510において、ペアエッジも開始点とセグメントが一致しているかどうかを判定する。ペアエッジとは、エッジ生成前の描画命令オブジェクトを構成するエッジ群であり、矩形の場合は、2つのエッジから構成されるため、ペアエッジと呼んでいる。図4の(b)に示す一番左のエッジと、左から四番目エッジがペアエッジであり、これらはレベルが一致するため、レベル情報から検出が可能である。
【0033】
S510で判定した結果、ペアエッジ同士も開始点とセグメントが一致していない場合は重複するオブジェクトの領域が一致していないため、消去できず、中間データ生成処理を継続する。
【0034】
一方、S510で判定した結果、ペアエッジ同士も開始点とセグメントが一致する場合は重複するオブジェクトが存在するため、S511へ処理を進め、下位レベルにあるほうのペアエッジを削除する。そして、S512において、同一箇所にある下位レベルにあるほうのエッジを削除し、一連の組み合わせエッジを削除する処理を終了する。
【0035】
ここで、上述の図5に示す処理を図4に示す(b)のディスプレイリストに対して実施した場合を説明する。番号6のエッジが新規にエッジリストに登録された際に、この時点で既に1〜5は既にエッジリストに登録済みの状態であるとする。番号6のエッジと開始点が一致するエッジ(番号4のエッジ)を最初に検知する。
【0036】
番号6のエッジのレベルはCOPYPENであるため、背面オブジェクトの消去が可能である。そして、番号6のエッジと番号4のエッジとはセグメントデータも一致する。番号6のエッジのペアエッジはレベルが同じLv=3の番号5のエッジであり、番号4のエッジのペアエッジはレベルが同じLv=2の番号3のエッジである。ここで、番号5のエッジと番号3のエッジとは、エッジリストを参照すると開始点のX座標位置が一致しないため、消去することができない。よって、消去不可能と判定される。
【0037】
一方、番号4のエッジと番号2のエッジは、ペアエッジも含めて同一であるため、消去可能であり、下位にある番号2のエッジ及びそのペアエッジである番号1のエッジを消去する。
【0038】
図6は、第1の実施形態における組み合わせエッジ削除の効果を説明するための模式図である。従来のスキャンラインレンダリング処理を実施した場合、図3の(a)のような重ね描きオブジェクトにおいて、各オブジェクトが879個づつ重なっている。そのため、イメージデータ生成処理に時間がかかり、イメージデータ生成部205をハードウェア化した構成においても、2分以上かかっている。
【0039】
これに対して、第1の実施形態では、中間データ(DL)生成時間は重複エッジデータの検出及び消去が必要となるため、15秒程度、時間がかかるようになる。しかし、重複エッジデータが削除された状態でレンダリングを行うため、イメージデータ生成処理は、2分以上かかっていたものが4秒まで、大幅に短縮される。
【0040】
第1の実施形態によれば、不要な重複エッジを消去することで描画オブジェクトの数を削減することでき、グラフィックやラインといったオブジェクトが重なったデータを高速に描画処理することが可能となる。
【0041】
[第2の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明に係る第2の実施形態を詳細に説明する。第2の実施形態では、重複するオブジェクトに対して組み合わせエッジの削除とオブジェクトレベルの削除とを行うものである。尚、第2の実施形態における画像形成装置のハードウェア及びソフトウェアの構成は、第1の実施形態と同様であり、その説明は省略する。
【0042】
図7は、第2の実施形態における削除処理を示すフローチャートである。画像形成装置100のCPU112がホストコンピュータ191、192から受信したPDLデータをRAM116へ書き込む。そして、ジョブ制御部200がそのPDLデータを受信し、PDL解釈部202へジョブ開始を通知する。PDL解釈部202は、S701において、受信したデータをロードする。
【0043】
次に、S702において、受信したPDLデータの解釈を行い、オブジェクトレベルでそのPDLデータの描画命令に重複データが連続しているか検知可能かを判定する。判定した結果、オブジェクトレベルで重複データの検知が可能と判定した場合は、S708へ処理を進め、同一箇所に閾値以上の描画命令が連続しているかどうかを判定する。判定の結果、同一箇所に閾値以上の描画命令が連続していると判定した場合は、S709へ処理を進め、オブジェクトレベルの削除を行う。このオブジェクトレベルの削除は、同一箇所に配置された重複オブジェクトを描画命令単位で削除していく。尚、詳細は、図8に示す(a)を用いて更に後述する。
【0044】
一方、S708での結果、同一箇所に閾値以上の描画命令が連続していないと判定した場合は重複オブジェクトの削除の必要性がないため、そのまま処理を終了する。この閾値は、レンダリング処理におけるキャッシュ可能なエッジ数やレベル数によって決定される値である。
【0045】
また、上述のS702で判定した結果、オブジェクトレベルで重複データの検知が可能と判定されなかった場合はS703へ処理を進め、ディスプレイリストのエッジ生成処理を行う。そして、S704において、生成したエッジデータをX及びY方向にソート処理を行う。次に、S705において、エッジソートされた状態を利用して、同一箇所に閾値以上のエッジが存在するかどうかを判定する。判定した結果、同一箇所に閾値以上のエッジが存在しないと判定した場合は重複オブジェクトの削除の必要性がないため、そのまま処理を終了する。
【0046】
一方、S705で、同一箇所に閾値以上のエッジが存在すると判定した場合はS706へ処理を進める。このS706では、対象としているエッジデータが参照しているフィルデータがイメージデータ又はグリフデータであるかどうかを判定する。ここで、イメージデータ又はグリフデータであると判定した場合はS710へ処理を進め、単一エッジの削除を選択し、処理を行う。ここで、単一エッジの削除は、重複オブジェクトが単一エッジのみで構成されるため、その1つのエッジを削除していく。詳細は、図8に示す(b)を用いて更に後述する。
【0047】
一方、S706で判定した結果、イメージデータ又はグリフデータではないと判定した場合はS707へ処理を進め、背面を必要とするROP指定であるかどうかを判定する。ここで、背面を必要とするROP指定ではないと判定した場合はS711へ処理を進め、第1の実施形態で説明した組み合わせエッジの削除を行う。
【0048】
また、S707で背面を必要とするROP指定であると判定した場合は、下位オブジェクトを消去できないため、S712へ処理を進め、先行レンダリングを利用する。詳細は、図8に示す(c)を用いて更に後述する。
【0049】
図8は、第2の実施形態における、オブジェクト削除、単一エッジ削除、先行フォールバックを示す模式図である。図8の(a)は、オブジェクトレベルの削除を示す模式図である。1の□を示すオブジェクトが描画命令として879回連続している場合、描画命令単位で前後参照することによって重複判定が可能であり、途中のオブジェクトから削除を実施する。
【0050】
図8の(b)は、単一エッジでの削除を示す模式図である。ここで、文字データは2値のイメージデータでエッジを表現するビットマップエッジで構成され、単一エッジのみで構成される。このようなエッジは、グラフィックやラインのようなupとdownの方向を持つベクタエッジと異なり、単一エッジで構成されるため、1つのエッジを検知、削除すればよい。
【0051】
図8の(c)は、先行レンダリングを行う場合の模式図である。例えば、αブレンドの指定が在る場合やROP演算で背面の値を参照する必要がある場合、複数のオブジェクトが重複していても削除することができない。よって、レンダリング処理が遅くなる閾値(この例では550としている)を超えた時点で、ディスプレイリストをクローズし、先行してレンダリング処理を開始する。
【0052】
このように、第2の実施形態によれば、レンダリングを2回に分けて処理することで、レンダリング処理に対する高速化を図ることができる。
【0053】
[第3の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明に係る第3の実施形態を詳細に説明する。第3の実施形態では、レンダリング処理においてエッジデータを削除する場合を説明する。尚、第3の実施形態における画像形成装置のハードウェア及びソフトウェアの構成は、第1の実施形態と同様であり、その説明は省略する。
【0054】
図9は、レンダリング中にエッジを削除する処理を示すフローチャートである。第1の実施形態では、中間データ(ディスプレイリスト)生成中に、組み合わせエッジ削除処理を行っている。図9に示す例では、中間データ(ディスプレイリスト)生成中に、組み合わせエッジ削除処理をエッジの重複検知ができずに行えなかった場合、その後処理であるレンダリング処理にて実施する。
【0055】
画像形成装置100におけるイメージデータ生成部205は、中間データ生成部203によって生成されたディスプレイリストをロードし、S901において、レンダリングを開始する。次に、S902において、エッジデータをロードし、S903において、同一開始位置に閾値以上のエッジが存在するかどうかを判定する。判定の結果、同一開始位置に閾値以上のエッジが存在しないと判定した場合は重複エッジを消去する必要がないのでそのまま処理を終了する。
【0056】
一方、S903において、同一開始位置に閾値以上のエッジが存在すると判定した場合は、S904へ処理を進め、新規エッジのレベルが背面を必要とするものであるかどうかを判定する。判定の結果、新規エッジのレベルが背面を必要とすると判定した場合は重複エッジを消去することができないので、そのまま処理を終了する。
【0057】
また、S904において、新規エッジのレベルが背面を必要としないと判定した場合、S905へ処理を進め、エッジデータが組み合わせで構成されているかどうかを判定する。ここで、エッジデータが組み合わせで構成されていない場合はS912へ処理を進め、フィルデータが一致しているかどうかを判定する。判定の結果、フィルデータが一致していると判定した場合は単一データだけで構成されるエッジのため、S911へ処理を進め、エッジデータを削除する。
【0058】
一方、ステップS905において、エッジデータが組み合わせで構成されている場合はS906へ処理を進め、開始点が一致した両エッジのセグメントデータをロードする。そして、S907において、セグメントデータが一致しているかどうかを判定する。ここで、セグメントデータが一致していないと判定された場合はエッジデータを消去することができないため、一連の処理を終了する。
【0059】
また、S907の判定において、セグメントデータが一致していると判定された場合はS910へ処理を進め、ペアエッジデータを削除する。そして、S911において、エッジデータを削除し、一連のレンダリング中にエッジを削除する処理を終了する。
【0060】
図10に示す(a)は、レンダリング中にエッジを削除する処理の例示であり、左側のグレーのグラフィックデータ及び右側のグレーのグラフィックデータは同一オブジェクトがそれぞれ3つずつ重複して描画されているものである。図10に示す(b)は、図10の(a)を、イメージデータ生成部205にてレンダリング処理を実施した模式図である。このように、スキャンランレンダリングは、Y方向に沿って同一スキャンラインごとにエッジをロードし、ピクセル描画を行う処理である。
【0061】
まず、グレーオブジェクトの左側のエッジをロードする。この際、3つのエッジが重複しているため、下位2つのエッジ及びその右側にある2つのペアエッジを削除する(破線矢印)。次に、スキャンライン上の処理を右に進め、エッジを検出する。次に、エッジの存在する箇所には、既に2つのエッジが消去されているため、4つのエッジが重複して存在する。この4つのエッジのうち、更に2つは消去可能なため、これらも第3の実施形態によりペアエッジを含めて消去する。
【0062】
第3の実施形態によれば、レンダリング処理において重複エッジを消去することにより高速な画像処理が可能となる。
【0063】
[他の実施形態]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトを描画処理する画像処理装置であって、
前記オブジェクトを重ね描きする同一開始位置に閾値以上、エッジが重複するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記エッジが重複すると判定された場合に、当該重複するエッジを削除する削除手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記重複するエッジは、単一エッジ又は組み合わせエッジの何れかであることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記判定手段は、更に描画命令により前記オブジェクトを重ね描きする同一開始位置に閾値以上、前記描画命令が連続しているか否かを判定し、
前記削除手段は、前記描画命令が連続していると判定された場合に、当該連続する描画命令を削除することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記削除手段は、レンダリング処理で前記重複するエッジを削除することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
ディスプレイリストを生成する際にエッジをソートする時に、エッジが重複するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記エッジが重複すると判定された場合に、当該重複するエッジを削除する削除手段と、
生成されたディスプレイリストに基づきイメージデータを生成する生成手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
オブジェクトを描画処理する画像処理装置にて実行される画像処理方法であって、
判定手段が、前記オブジェクトを重ね描きする同一開始位置に閾値以上、エッジが重複するか否かを判定する判定工程と、
削除手段が、前記判定工程において前記エッジが重複すると判定された場合に、当該重複するエッジを削除する削除工程と、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
コンピュータを請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−4032(P2013−4032A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137739(P2011−137739)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】