画像処理装置及び画像読み取り装置
【課題】画像を読み取っている最中に、たとえ記憶部のオーバーフローが発生したとしても、再読み取り前の画像データと、再読み取り後の画像データとを精度よくつなげることができ、これにより、画像の筋やずれを効果的に防止できる画像処理装置及びそれを備えた画像読み取り装置を提供する。
【解決手段】記憶部531と、画像読み取り部52から出力された画像データを記憶部531に順次書き込むと共に該記憶部531から画像データを順次読み出す制御部532とを備えた画像処理装置53において、制御部532は、記憶部531のオーバーフローを検出し、記憶部531のオーバーフローを検出すると、該オーバーフロー検出時の画像データ位置を検出し、オーバーフロー検出時の画像データ位置を基準にして、一部の画像データを重複して取得するように画像読み取り部52にて画像を読み直す。
【解決手段】記憶部531と、画像読み取り部52から出力された画像データを記憶部531に順次書き込むと共に該記憶部531から画像データを順次読み出す制御部532とを備えた画像処理装置53において、制御部532は、記憶部531のオーバーフローを検出し、記憶部531のオーバーフローを検出すると、該オーバーフロー検出時の画像データ位置を検出し、オーバーフロー検出時の画像データ位置を基準にして、一部の画像データを重複して取得するように画像読み取り部52にて画像を読み直す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びそれを備えた画像読み取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像読み取り装置においては、一般的に、画像読み取り部にて読み取った画像に基づく画像データを一旦記憶部に記憶した後、当該画像読み取り装置に接続された外部の画像受信装置に送信するようになっている。即ち、画像読み取り部から出力された画像データを記憶部に順次書き込むと共に該記憶部から画像データを順次読み出して外部の画像受信装置に順次送信するようになっている。
【0003】
かかる画像読み取り装置では、画像を読み取っているときに、記憶部から読み出された画像データが、外部の画像受信装置に円滑に送信されないと、記憶部が画像データで満杯になり、記憶部のオーバーフローが発生することがある。このオーバーフローは、例えば、記憶部から読み出された画像データを通信する通信接続手段の通信速度が記憶部への書き込み速度よりも遅い場合や、外部の画像受信装置が他の作業を行っている状態(ビジー状態)の場合等に発生する。
【0004】
このように、画像を読み取っている最中に、記憶部のオーバーフローが発生した場合においては、記憶部への画像データの書き込みを中断し、再度読み直すことで、全ての画像データを取得する手法が従来から知られている。例えば、下記特許文献1には、記憶部のオーバーフローが検出されると、記憶部への画像データの書き込みを中断し、再度の読み取り時に、一致時点の画像データから記憶部への書き込みを再開することが記載されている。
【0005】
これについて図6乃至図11を参照しながら説明すると、図6は、従来の画像読み取り装置50’及びそれに接続された外部の画像受信装置70を示す斜視図である。また、図7は、従来の画像読み取り装置50’に備えられる画像読み取り部52及び画像処理装置53’の概略ブロック図である。なお、ここでは、外部の画像受信装置70として、パーソナルコンピュータを例にとって説明する。
【0006】
パーソナルコンピュータ70は、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等の通信接続手段60を介して画像読み取り装置50’と接続される。パーソナルコンピュータ70は、画像読み取り装置50’に対して該画像読み取り装置50’の原稿載置台51に載置された原稿ORの読み取り指示を行うようになっている。
【0007】
画像読み取り装置50’は、ここではスキャナであり、光学的に読み取った原稿画像の光信号を電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Devices)等の撮像素子521を含む画像読み取り部52と、画像処理装置53’とを備え、原稿載置台51に置かれた原稿ORを読み取るようになっている。画像読み取り部52は、撮像素子521で読み取った電気信号を画像データとしてデジタル信号に変換するようになっている。画像処理装置53’は、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等の記憶部531及び制御部532’とを備えている。
【0008】
記憶部531は、画像読み取り部52で読み取った画像データを一時的に記憶するようになっている。制御部532’は、画像読み取り部52にて原稿画像を読み取り、該画像読み取り部52から出力された画像データを記憶部531に順次書き込みながら、記憶部531への書き込み順に該記憶部531から画像データを順次読み出すように構成されている。
【0009】
また、画像読み取り装置50’は、通信接続手段60を介して外部のパーソナルコンピュータ70と通信を行って、記憶部531から読み出された画像データをパーソナルコンピュータ70に送信するようになっている。このとき、例えば、A4サイズの原稿を読み取り、該原稿から読み取った画像に基づく画像データ(例えばデータ量約100MB/600dpi)をパーソナルコンピュータ70へ送信する際に、通信接続手段60を使用したデータ転送速度が記憶部532への書き込み速度より遅いことが原因で、記憶部531のオーバーフローが発生することがある。
【0010】
図8は、従来の画像読み取り装置50’における画像読み取り部52の画像の読み取り状態及び画像データの記憶部531への書き込み状態の時間的変化を示す図である。
【0011】
図8に示すように、画像読み取り装置50’では、まず、原稿載置台51に載置された原稿ORを画像読み取り部52で読み取り、画像データ1を記憶部531に書き込んでいる最中に、あるNライン目(例えば100ライン目)で記憶部531のオーバーフローが検出されると、読み取り中のオーバーフロー検出時の画像データ位置を検出する(図8のα’参照)。
【0012】
次いで、画像データ位置を確認後、画像読み取り部52を数ライン分、副走査方向において画像を読み取る正方向とは逆方向の逆走査方向に移動(スキャンバック)させる。
【0013】
このスキャンバック中に記憶部531から画像データ1を順次読み出し、通信接続手段60を介して外部のパーソナルコンピュータ70と通信を行って、読み出した画像データ1をパーソナルコンピュータ70に送信する。このとき、画像データ1が読み出された記憶部531上のメモリアドレスにおける画像データはクリアされる。これを継続することで、記憶部531に十分な空き領域が確保される(図8のβ’参照)。
【0014】
記憶部531において十分な空き領域を確保した後に、画像読み取り部52の読み取り走査を再開し、画像読み取り部52を副走査方向において正方向に移動させて再読み取り(再スキャン)させる。このとき、オーバーフロー検出時の画像データ位置を基準にして、Nライン目(例えば100ライン目)の次の(N+1)ライン目(例えば101ライン目)から画像データ2を読み取り、記憶部531に書き込む。
【0015】
しかしながら、このような再読み取りを実行する際に、再読み取り前の画像データ1と、再読み取り後の画像データ2とが精度よくつながらず、画像に筋が生じたり、絵がずれたりするなど、不自然に仕上がってしまうという不都合を招く。
【0016】
図9は、従来の画像読み取り装置50’における再読み取り前の画像データ1及び再読み取り後の画像データ2を示す図である。図10は、従来の画像読み取り装置50’において、図9に示す画像データ1,2に基づき形成された画像状態を示す図であって、図10(a)は、そのトッドパターンを示しており、図10(b)は、その出力画像を示している。また、図11は、理想的に形成された画像状態を示す図であって、図11(a)は、そのトッドパターンを示しており、図11(b)は、その出力画像を示している。
【0017】
図9に示すように、Nライン目と(N+1)ライン目との間が画像データのつなぎ目となる。この画像データのつなぎ目において、理想的には図11に示すようにトッドパターン及び出力画像(ここでは直線画像)が形成されるべきところ、図10のトッドパターン及び出力画像に示すように、画像にずれが発生し、不自然な画像に仕上がってしまうことがある。
【特許文献1】特開平9−252391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本発明は、画像を読み取っている最中に、たとえ記憶部のオーバーフローが発生したとしても、再読み取り前の画像データと、再読み取り後の画像データとを精度よくつなげることができ、これにより、画像の筋やずれを効果的に防止できる画像処理装置及びそれを備えた画像読み取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、前記課題を解決するために、次の画像処理装置及び画像読み取り装置を提供する。
(1)画像処理装置
画像読み取り部から出力された画像データを一時的に記憶する記憶部と、前記画像読み取り部にて画像を読み取り、該画像読み取り部から出力された画像データを前記記憶部に順次書き込むと共に該記憶部から画像データを順次読み出す制御部とを備えた画像処理装置であって、前記制御部は、前記記憶部のオーバーフローを検出するオーバーフロー検出手段と、前記オーバーフロー検出手段にて前記記憶部のオーバーフローを検出すると、該オーバーフロー検出時の画像データ位置を検出する画像データ位置検出手段と、前記画像データ位置検出手段にて検出したオーバーフロー検出時の画像データ位置を基準にして、一部の画像データを重複して取得するように前記画像読み取り部にて画像を読み直す重複読み取り手段とを備えるように構成されていることを特徴とする画像処理装置。
(2)画像読み取り装置
画像読み取り部と、前記本発明に係る画像処理装置とを備えていることを特徴とする画像読み取り装置。
【0020】
本発明に係る画像処理装置及び画像読み取り装置によれば、前記制御部は、前記オーバーフロー検出手段と、前記画像データ位置検出手段と、前記画像データ位置検出手段にて検出したオーバーフロー検出時の画像データ位置を基準にして、一部の画像データを重複して取得するように前記画像読み取り部にて画像を読み直す前記重複読み取り手段とを備えるように構成されているので、画像を読み取っている最中に、たとえ前記記憶部のオーバーフローが発生したとしても、再読み取り前の画像データと、再読み取り後の画像データとを精度よくつなげることができ、これにより、画像の筋やずれを効果的に防止することができる。
【0021】
本発明に係る画像処理装置において、前記制御部は、前記重複読み取り手段にて取得した重複部分の画像データに対して補間処理を行う画像処理手段をさらに備えるように構成されていることが好ましい。こうすることで、自然な画像に仕上げることが可能となる。この場合、前記画像処理手段は、重複部分の画像データにおける重複した画素に対して重み付けによる処理を実行する態様を例示できる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によると、画像を読み取っている最中に、たとえ記憶部のオーバーフローが発生したとしても、再読み取り前の画像データと、再読み取り後の画像データとを精度よくつなげることができ、これにより、画像の筋やずれを効果的に防止できる画像処理装置及びそれを備えた画像読み取り装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0024】
本発明の実施形態に係る画像処理装置を備えた本発明の実施形態に係る画像読み取り装置について、以下に詳しく説明する。
【0025】
本発明の実施形態に係る画像読み取り装置は、ここではスキャナとされている。この画像読み取り装置は、通信接続手段を介して外部の画像受信装置に接続されている。外部の画像受信装置は、ここではパーソナルコンピュータとされている。
【0026】
パーソナルコンピュータと本発明の実施形態に係る画像読み取り装置との接続関係は、図6に示すパーソナルコンピュータ70と従来の画像読み取り装置50’との接続関係と同じである。従って、以下の説明においては、図6に示す従来の画像読み取り装置50’は、本発明の実施形態に係る画像読み取り装置50と読み替えるものとする。また、従来の構成と同じ構成については同一符号を付して説明する。
【0027】
パーソナルコンピュータ70は、通信接続手段(例えばUSBケーブル)60を介して画像読み取り装置50と接続される。パーソナルコンピュータ70は、画像読み取り装置50に対して該画像読み取り装置50の原稿載置台51に置かれた原稿ORの読み取り指示を行うようになっている。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る画像読み取り装置50の電気的構成の主要部を概略的に示すブロック図である。
【0029】
画像読み取り装置50は、光学的に読み取った画像の光信号を電気信号に変換する撮像素子(例えばCCD)521を含む画像読み取り部52と、画像処理装置53とを備え、原稿載置台51に置かれた原稿ORの読み取るようになっている。
【0030】
画像読み取り部52は、主走査方向(原稿の幅方向)の画像を読み取りつつ主走査方向に直交する副走査方向の画像を読み取り、その読み取った画像を示す画像データを出力するものであり、原稿載置台51である原稿台ガラスを備えている。原稿台ガラス51は、ここでは、原稿読み取り領域とシェーディング補正に用いる白色板(図示せず)の領域とを有している。原稿台ガラス51上に載置かれた原稿ORは、原稿台ガラス51との載置面とは反対側の面を覆う圧板により原稿台ガラス51上で動かないように固定される。
【0031】
原稿台ガラス51に置かれた原稿ORや白色板の画像情報は、撮像素子521により読み取られる。即ち、原稿照明ランプを含む光源ユニット(図示せず)が原稿ORや白色板に対して光を照射しながら副走査方向における正方向に移動して原稿ORや白色板の画像を走査する。前記原稿照明ランプから光照射された原稿ORや白色板からの反射光は、ミラー類及びレンズを含む光学系を介して撮像素子521に結像され、ここで原稿画像が読み取られて電気的な信号に変換される。前記原稿照明ランプとしては、蛍光灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDアレーなどの発光部が直線状に配置された形状のものを例示できる。なお、ここでは、原稿固定方式による画像読み取りについて説明したが、自動原稿送り装置によって自動的に原稿ORを搬送しながら原稿画像を読み取る原稿移動方式によって画像を読み取ることもできる。
【0032】
次に、画像読み取り装置50による画像の読み取り制御について説明する。この画像読み取り装置50は、画像読み取り部52及び画像処理装置53に加えて、通信部54を備えている。
【0033】
通信部54は、通信接続手段60を介して接続されたパーソナルコンピュータ70との間で通信制御を行う通信制御手段である。通信部54は、記憶部531に記憶された画像データをパーソナルコンピュータ70に送信するようになっている。
【0034】
画像読み取り部52は、さらに、光源ユニット駆動用モータ55と、光源ユニット駆動用モータ55を駆動制御するドライバ56とを備えている。光源ユニット駆動用モータ55は、原稿画像を読み取る場合に、前記光源ユニットを適宜の速度で副走査方向における正方向又は逆方向に移動させるためのモータであり、制御部532の制御により、ドライバ56によって適宜駆動制御されるようになっている。そして、画像読み取り部52は、撮像素子521で読み取った電気信号を画像データとしてデジタル信号に変換するようになっている。
【0035】
画像処理装置53は、記憶部531及び制御部532を備えている。記憶部531は、ここではSDRAMからなり、画像読み取り部52で読み取った画像データを一時的に記憶するようになっている。
【0036】
制御部532は、画像読み取り装置全体の動作制御を管理する部分であり、図示は省略しているがCPU、ROM、RAM等によって構成されている。そして、制御部532は、画像読み取り部52にて原稿画像を読み取り、該画像読み取り部52から出力された画像データを記憶部531に順次書き込みながら、記憶部531への書き込み順に該記憶部531から画像データを順次読み出すように構成されている。
【0037】
この制御部532は、読み取り手段と、画像記憶手段と、オーバーフロー検出手段と、画像データ位置検出手段とを備えるように構成されている。
【0038】
前記読み取り手段は、画像読み取り部52を制御して原稿画像を画像データとして読み取るものである。前記画像記憶手段は、画像読み取り部52から出力された画像データを記憶部531に順次書き込むと共に該記憶部531への書き込み順に該記憶部531から画像データを順次読み出すものである。前記オーバーフロー検出手段は、記憶部531のオーバーフローを検出するものである。前記画像データ位置検出手段は、前記オーバーフロー検出手段にて記憶部531のオーバーフローを検出したときに該オーバーフロー検出時の画像データ位置を検出するものである。なお、前記オーバーフロー検出手段及び前記画像データ位置検出手段は、従来公知の手法と同様の手法で検出を行うことができる。
【0039】
そして、前記読み取り手段は、記憶部531のオーバーフローが発生して画像の再読み取りを行う際の読み取り開始時において、再読み取り前の読み取り終了直前の画像部分を読み直す重複読み取り手段を含んでいる。即ち、前記重複読み取り手段は、前記画像データ位置検出手段にて検出したオーバーフロー検出時の画像データ位置を基準にして、一部の画像データを重複して取得するように画像を画像読み取り部52にて読み直すようになっている。
【0040】
この重複読み取り手段について、前記画像記憶手段、前記オーバーフロー検出手段及び前記画像データ位置検出手段と共に、図2乃至図5を参照しながら以下に詳述する。
【0041】
図2は、本発明の実施形態に係る画像読み取り装置50における画像読み取り部52の画像の読み取り状態及び画像データの記憶部531への書き込み状態の時間的変化を示す図である。
【0042】
図2に示すように、画像読み取り装置50では、まず、原稿載置台51に載置された原稿(例えばA4サイズの原稿)ORを画像読み取り部52にて副走査方向に一定の走査速度v(例えば176mm/s)で読み取り、画像データ1を記憶部531に書き込む。この画像データのデータ量は、おおよそ100MB/600dpiとされる。こうして、画像データ1を記憶部531に書き込んでいる最中に、あるNライン目(例えば100ライン)目で記憶部531のオーバーフローが検出された場合に、読み取り中のオーバーフロー検出時の画像データ位置を検出する(図2のα参照)。
【0043】
次いで、画像データ位置αを確認後、画像読み取り部52を数ライン分、副走査方向において画像を読み取る正方向とは逆方向の逆走査方向に移動(スキャンバック)させる(図2のγ参照)。
【0044】
このスキャンバック中に記憶部531から画像データ1を順次読み出し、通信接続手段60を介して外部のパーソナルコンピュータ70と通信を行って、読み出した画像データ1をパーソナルコンピュータ70に送信する。このとき、画像データ1が読み出された記憶部531上のメモリアドレスにおける画像データはクリアされる。これを継続することで、記憶部531に十分な空き領域が確保される(図2のβ参照)。
【0045】
記憶部531において十分な空き領域を確保した後に、画像読み取り部52の読み取り走査を再開し、画像読み取り部52を副走査方向において正方向に移動させて再読み取り(再スキャン)させる。このとき、オーバーフロー検出時の画像データ位置を基準にして、Nライン目(例えば100ライン目)から所定のnライン(例えば3ライン)手前の(N−n)ライン目(例えば97ライン目)の次の(N−n+1)ライン目(例えば98ライン目)から画像データ2を読み取り、記憶部531に書き込む。ここで、Nは画像データ位置αでのライン位置であり、nは重複させるべきライン数である。
【0046】
図3は、本発明の実施形態に係る画像読み取り装置50における再読み取り前の画像データ1及び再読み取り後の画像データ2を示す図である。
【0047】
図3に示すように、(N−n+1)ライン目(例えば98ライン目)〜Nライン目(例えば100ライン目)のnライン(例えば3ライン)が重複部となり、この重複部が画像データのつなぎ目となる。
【0048】
このように、本発明の実施形態に係る画像処理装置53及び画像読み取り装置50によれば、画像を読み取っている最中に、記憶部531のオーバーフローが発生したとしても、再読み取りで一部の画像データを重複して取得するので、再読み取り前の画像データ1と、再読み取り後の画像データ2とを精度よくつなげることができ、これにより、画像のつなぎ目で発生することがある筋やずれを低減することができる。
【0049】
本実施の形態においては、制御部532は、前記重複読み取り手段にて取得した重複部分(重複ライン)の画像データに対して補間処理を行う画像処理手段をさらに備えるように構成されていてもよい。
【0050】
図4は、重複した画像データのつなぎ目部分(重複ライン)を補間処理で平均化した状態を示す図であって、図4(a)は、そのトッドパターンを示しており、図4(b)は、その出力画像を示している。
【0051】
図4に示すように、再読み取り前の画像データ1と、再読み取り後の画像データ2との重複部分(N−n+1)ライン目〜Nライン目を補間処理で平均化することで、画像(ここでは直線画像)のつなぎ目部分を滑らかに目立ち難くして自然な画像に仕上げることが可能となる。
【0052】
この場合、重複した画像データのつなぎ目部分(重複ライン)は、以下に説明するような補間処理(ここでは、重複ラインにおける画素に対する重み付けによる処理)を実行することで平均化することができる。
【0053】
図5は、重複した画像データのつなぎ目部分(重複ライン)における画素に対する重み付け処理を説明するための図である。
【0054】
この補間処理では、重複部分(重複ライン)の(N−n+1)ライン目の画素P11〜P1m,(N−n+2)ライン目の画素P21〜P2m,…,Nライン目の画素Pn1〜Pnm(mは主走査方向の画素数)に対する重み付けは、再読み取り前の画像データ1側画素濃度の比率R1,R2,…,Rnと、再読み取り後の画像データ2側画素濃度の比率S1,S2,…,Snとのそれぞれの和が1になるように、且つ、再読み取り前の画像データ1側の(N−n+1)ライン目から再読み取り後の画像データ2側のNライン目に行くに従って、再読み取り前の画像データ1側の比率R1,R2,…,Rnが低く(例えば一定の割合で低く)なるように(即ち、再読み取り後の画像データ2側の比率S1,S2,…,Snが高く(例えば一定の割合で高く)なるように)設定されている。
【0055】
即ち、重複部分(重複ライン)の(N−n+1)ライン目の画素P11〜P1m,(N−n+2)ライン目の画素P21〜P2m,…,Nライン目の画素Pn1〜Pnmの補間処理による算出画素濃度A11〜A1m,A21〜A2m,…,An1〜Anmは、再読み取り前の画像データ1側画素濃度をA11’〜A1m’,A21’〜A2m’,…,An1’〜Anm’、再読み取り後の画像データ2側画素濃度をA11”〜A1m”,A21”〜A2m”,…,An1”〜Anm”とすると、次の式(1)で表すことができる。
【0056】
【数1】
具体的には、画素単位の平均化処理において、重複させるべきライン数nを3とし、(N−2)ライン目の画素P11〜P1mの補間処理による算出画素濃度A11〜A1m、(N−1)ライン目の画素P21〜P2mの補間処理による算出画素濃度A21〜A2m、Nライン目の画素P31〜P3mの補間処理による算出画素濃度A31〜A3mをそれぞれA,B,Cとし、再読み取り前の画像データ1側の画素濃度A11’〜A1m’,A21’〜A2m’ ,A31’〜A3m’をそれぞれA’,B’,C’、再読み取り後の画像データ2側の画素濃度A11”〜A1m”,A21”〜A2m” ,A31”〜A3m”をそれぞれA”,B”,C”とすると、補間処理による算出画素濃度A〜Cは、それぞれ、次の式(2)〜式(4)のように設定することができる。
【0057】
【数2】
即ち、(N−2)ライン目の画素P11〜P1mについては、再読み取り前の画像データ1側の濃度比率R1を高くすると共に(ここでは75%)、再読み取り後の画像データ2側の濃度比率S1を低くして(ここでは25%)、補間処理による算出画素濃度Aを式(2)のように設定することができる。また、(N−1)ライン目の画素P21〜P2mについては、再読み取り前の画像データ1側の濃度比率R2及び再読み取り後の画像データ2側の濃度比率S2を何れも等しくして(50%)、補間処理による算出画素濃度Bを式(3)のように設定することができる。さらに、Nライン目の画素P31〜P3mについては、再読み取り前の画像データ1側の濃度比率R3を低くすると共に(ここでは25%)、再読み取り後の画像データ2側の濃度比率S3を高くして(ここでは75%)、補間処理による算出画素濃度Cを式(4)のように設定することができる。
【0058】
このようにすることで、画像のつなぎ目が滑らかで自然な画像に仕上げることが可能となり、図11に示すような理想に近い画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る画像読み取り装置の電気的構成の主要部を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像読み取り装置における画像読み取り部の画像の読み取り状態及び画像データの記憶部への書き込み状態の時間的変化を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像読み取り装置における再読み取り前の画像データ及び再読み取り後の画像データを示す図である。
【図4】重複した画像データのつなぎ目部分(重複ライン)を補間処理で平均化した状態を示す図であって、図(a)は、そのトッドパターンを示す図であり、図(b)は、その出力画像を示す図である。
【図5】重複した画像データのつなぎ目部分(重複ライン)における画素に対する重み付け処理を説明するための図である。
【図6】従来の画像読み取り装置及びそれに接続された外部の画像受信装置を示す斜視図である。
【図7】従来の画像読み取り装置に備えられる画像読み取り部及び画像処理装置の概略ブロック図である。
【図8】従来の画像読み取り装置における画像読み取り部の画像の読み取り状態及び画像データの記憶部への書き込み状態の時間的変化を示す図である。
【図9】従来の画像読み取り装置における再読み取り前の画像データ及び再読み取り後の画像データを示す図である。
【図10】従来の画像読み取り装置において、図9に示す画像データに基づき形成された画像状態を示す図であって、図(a)は、そのトッドパターンを示す図であり、図(b)は、その出力画像を示す図である。
【図11】理想的に形成された画像状態を示す図であって、図(a)は、そのトッドパターンを示す図であり、図(b)は、その出力画像を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
50 画像読み取り装置
52 画像読み取り部
53 画像処理装置
531 記憶部
532 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びそれを備えた画像読み取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像読み取り装置においては、一般的に、画像読み取り部にて読み取った画像に基づく画像データを一旦記憶部に記憶した後、当該画像読み取り装置に接続された外部の画像受信装置に送信するようになっている。即ち、画像読み取り部から出力された画像データを記憶部に順次書き込むと共に該記憶部から画像データを順次読み出して外部の画像受信装置に順次送信するようになっている。
【0003】
かかる画像読み取り装置では、画像を読み取っているときに、記憶部から読み出された画像データが、外部の画像受信装置に円滑に送信されないと、記憶部が画像データで満杯になり、記憶部のオーバーフローが発生することがある。このオーバーフローは、例えば、記憶部から読み出された画像データを通信する通信接続手段の通信速度が記憶部への書き込み速度よりも遅い場合や、外部の画像受信装置が他の作業を行っている状態(ビジー状態)の場合等に発生する。
【0004】
このように、画像を読み取っている最中に、記憶部のオーバーフローが発生した場合においては、記憶部への画像データの書き込みを中断し、再度読み直すことで、全ての画像データを取得する手法が従来から知られている。例えば、下記特許文献1には、記憶部のオーバーフローが検出されると、記憶部への画像データの書き込みを中断し、再度の読み取り時に、一致時点の画像データから記憶部への書き込みを再開することが記載されている。
【0005】
これについて図6乃至図11を参照しながら説明すると、図6は、従来の画像読み取り装置50’及びそれに接続された外部の画像受信装置70を示す斜視図である。また、図7は、従来の画像読み取り装置50’に備えられる画像読み取り部52及び画像処理装置53’の概略ブロック図である。なお、ここでは、外部の画像受信装置70として、パーソナルコンピュータを例にとって説明する。
【0006】
パーソナルコンピュータ70は、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等の通信接続手段60を介して画像読み取り装置50’と接続される。パーソナルコンピュータ70は、画像読み取り装置50’に対して該画像読み取り装置50’の原稿載置台51に載置された原稿ORの読み取り指示を行うようになっている。
【0007】
画像読み取り装置50’は、ここではスキャナであり、光学的に読み取った原稿画像の光信号を電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Devices)等の撮像素子521を含む画像読み取り部52と、画像処理装置53’とを備え、原稿載置台51に置かれた原稿ORを読み取るようになっている。画像読み取り部52は、撮像素子521で読み取った電気信号を画像データとしてデジタル信号に変換するようになっている。画像処理装置53’は、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等の記憶部531及び制御部532’とを備えている。
【0008】
記憶部531は、画像読み取り部52で読み取った画像データを一時的に記憶するようになっている。制御部532’は、画像読み取り部52にて原稿画像を読み取り、該画像読み取り部52から出力された画像データを記憶部531に順次書き込みながら、記憶部531への書き込み順に該記憶部531から画像データを順次読み出すように構成されている。
【0009】
また、画像読み取り装置50’は、通信接続手段60を介して外部のパーソナルコンピュータ70と通信を行って、記憶部531から読み出された画像データをパーソナルコンピュータ70に送信するようになっている。このとき、例えば、A4サイズの原稿を読み取り、該原稿から読み取った画像に基づく画像データ(例えばデータ量約100MB/600dpi)をパーソナルコンピュータ70へ送信する際に、通信接続手段60を使用したデータ転送速度が記憶部532への書き込み速度より遅いことが原因で、記憶部531のオーバーフローが発生することがある。
【0010】
図8は、従来の画像読み取り装置50’における画像読み取り部52の画像の読み取り状態及び画像データの記憶部531への書き込み状態の時間的変化を示す図である。
【0011】
図8に示すように、画像読み取り装置50’では、まず、原稿載置台51に載置された原稿ORを画像読み取り部52で読み取り、画像データ1を記憶部531に書き込んでいる最中に、あるNライン目(例えば100ライン目)で記憶部531のオーバーフローが検出されると、読み取り中のオーバーフロー検出時の画像データ位置を検出する(図8のα’参照)。
【0012】
次いで、画像データ位置を確認後、画像読み取り部52を数ライン分、副走査方向において画像を読み取る正方向とは逆方向の逆走査方向に移動(スキャンバック)させる。
【0013】
このスキャンバック中に記憶部531から画像データ1を順次読み出し、通信接続手段60を介して外部のパーソナルコンピュータ70と通信を行って、読み出した画像データ1をパーソナルコンピュータ70に送信する。このとき、画像データ1が読み出された記憶部531上のメモリアドレスにおける画像データはクリアされる。これを継続することで、記憶部531に十分な空き領域が確保される(図8のβ’参照)。
【0014】
記憶部531において十分な空き領域を確保した後に、画像読み取り部52の読み取り走査を再開し、画像読み取り部52を副走査方向において正方向に移動させて再読み取り(再スキャン)させる。このとき、オーバーフロー検出時の画像データ位置を基準にして、Nライン目(例えば100ライン目)の次の(N+1)ライン目(例えば101ライン目)から画像データ2を読み取り、記憶部531に書き込む。
【0015】
しかしながら、このような再読み取りを実行する際に、再読み取り前の画像データ1と、再読み取り後の画像データ2とが精度よくつながらず、画像に筋が生じたり、絵がずれたりするなど、不自然に仕上がってしまうという不都合を招く。
【0016】
図9は、従来の画像読み取り装置50’における再読み取り前の画像データ1及び再読み取り後の画像データ2を示す図である。図10は、従来の画像読み取り装置50’において、図9に示す画像データ1,2に基づき形成された画像状態を示す図であって、図10(a)は、そのトッドパターンを示しており、図10(b)は、その出力画像を示している。また、図11は、理想的に形成された画像状態を示す図であって、図11(a)は、そのトッドパターンを示しており、図11(b)は、その出力画像を示している。
【0017】
図9に示すように、Nライン目と(N+1)ライン目との間が画像データのつなぎ目となる。この画像データのつなぎ目において、理想的には図11に示すようにトッドパターン及び出力画像(ここでは直線画像)が形成されるべきところ、図10のトッドパターン及び出力画像に示すように、画像にずれが発生し、不自然な画像に仕上がってしまうことがある。
【特許文献1】特開平9−252391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本発明は、画像を読み取っている最中に、たとえ記憶部のオーバーフローが発生したとしても、再読み取り前の画像データと、再読み取り後の画像データとを精度よくつなげることができ、これにより、画像の筋やずれを効果的に防止できる画像処理装置及びそれを備えた画像読み取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、前記課題を解決するために、次の画像処理装置及び画像読み取り装置を提供する。
(1)画像処理装置
画像読み取り部から出力された画像データを一時的に記憶する記憶部と、前記画像読み取り部にて画像を読み取り、該画像読み取り部から出力された画像データを前記記憶部に順次書き込むと共に該記憶部から画像データを順次読み出す制御部とを備えた画像処理装置であって、前記制御部は、前記記憶部のオーバーフローを検出するオーバーフロー検出手段と、前記オーバーフロー検出手段にて前記記憶部のオーバーフローを検出すると、該オーバーフロー検出時の画像データ位置を検出する画像データ位置検出手段と、前記画像データ位置検出手段にて検出したオーバーフロー検出時の画像データ位置を基準にして、一部の画像データを重複して取得するように前記画像読み取り部にて画像を読み直す重複読み取り手段とを備えるように構成されていることを特徴とする画像処理装置。
(2)画像読み取り装置
画像読み取り部と、前記本発明に係る画像処理装置とを備えていることを特徴とする画像読み取り装置。
【0020】
本発明に係る画像処理装置及び画像読み取り装置によれば、前記制御部は、前記オーバーフロー検出手段と、前記画像データ位置検出手段と、前記画像データ位置検出手段にて検出したオーバーフロー検出時の画像データ位置を基準にして、一部の画像データを重複して取得するように前記画像読み取り部にて画像を読み直す前記重複読み取り手段とを備えるように構成されているので、画像を読み取っている最中に、たとえ前記記憶部のオーバーフローが発生したとしても、再読み取り前の画像データと、再読み取り後の画像データとを精度よくつなげることができ、これにより、画像の筋やずれを効果的に防止することができる。
【0021】
本発明に係る画像処理装置において、前記制御部は、前記重複読み取り手段にて取得した重複部分の画像データに対して補間処理を行う画像処理手段をさらに備えるように構成されていることが好ましい。こうすることで、自然な画像に仕上げることが可能となる。この場合、前記画像処理手段は、重複部分の画像データにおける重複した画素に対して重み付けによる処理を実行する態様を例示できる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によると、画像を読み取っている最中に、たとえ記憶部のオーバーフローが発生したとしても、再読み取り前の画像データと、再読み取り後の画像データとを精度よくつなげることができ、これにより、画像の筋やずれを効果的に防止できる画像処理装置及びそれを備えた画像読み取り装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0024】
本発明の実施形態に係る画像処理装置を備えた本発明の実施形態に係る画像読み取り装置について、以下に詳しく説明する。
【0025】
本発明の実施形態に係る画像読み取り装置は、ここではスキャナとされている。この画像読み取り装置は、通信接続手段を介して外部の画像受信装置に接続されている。外部の画像受信装置は、ここではパーソナルコンピュータとされている。
【0026】
パーソナルコンピュータと本発明の実施形態に係る画像読み取り装置との接続関係は、図6に示すパーソナルコンピュータ70と従来の画像読み取り装置50’との接続関係と同じである。従って、以下の説明においては、図6に示す従来の画像読み取り装置50’は、本発明の実施形態に係る画像読み取り装置50と読み替えるものとする。また、従来の構成と同じ構成については同一符号を付して説明する。
【0027】
パーソナルコンピュータ70は、通信接続手段(例えばUSBケーブル)60を介して画像読み取り装置50と接続される。パーソナルコンピュータ70は、画像読み取り装置50に対して該画像読み取り装置50の原稿載置台51に置かれた原稿ORの読み取り指示を行うようになっている。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る画像読み取り装置50の電気的構成の主要部を概略的に示すブロック図である。
【0029】
画像読み取り装置50は、光学的に読み取った画像の光信号を電気信号に変換する撮像素子(例えばCCD)521を含む画像読み取り部52と、画像処理装置53とを備え、原稿載置台51に置かれた原稿ORの読み取るようになっている。
【0030】
画像読み取り部52は、主走査方向(原稿の幅方向)の画像を読み取りつつ主走査方向に直交する副走査方向の画像を読み取り、その読み取った画像を示す画像データを出力するものであり、原稿載置台51である原稿台ガラスを備えている。原稿台ガラス51は、ここでは、原稿読み取り領域とシェーディング補正に用いる白色板(図示せず)の領域とを有している。原稿台ガラス51上に載置かれた原稿ORは、原稿台ガラス51との載置面とは反対側の面を覆う圧板により原稿台ガラス51上で動かないように固定される。
【0031】
原稿台ガラス51に置かれた原稿ORや白色板の画像情報は、撮像素子521により読み取られる。即ち、原稿照明ランプを含む光源ユニット(図示せず)が原稿ORや白色板に対して光を照射しながら副走査方向における正方向に移動して原稿ORや白色板の画像を走査する。前記原稿照明ランプから光照射された原稿ORや白色板からの反射光は、ミラー類及びレンズを含む光学系を介して撮像素子521に結像され、ここで原稿画像が読み取られて電気的な信号に変換される。前記原稿照明ランプとしては、蛍光灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDアレーなどの発光部が直線状に配置された形状のものを例示できる。なお、ここでは、原稿固定方式による画像読み取りについて説明したが、自動原稿送り装置によって自動的に原稿ORを搬送しながら原稿画像を読み取る原稿移動方式によって画像を読み取ることもできる。
【0032】
次に、画像読み取り装置50による画像の読み取り制御について説明する。この画像読み取り装置50は、画像読み取り部52及び画像処理装置53に加えて、通信部54を備えている。
【0033】
通信部54は、通信接続手段60を介して接続されたパーソナルコンピュータ70との間で通信制御を行う通信制御手段である。通信部54は、記憶部531に記憶された画像データをパーソナルコンピュータ70に送信するようになっている。
【0034】
画像読み取り部52は、さらに、光源ユニット駆動用モータ55と、光源ユニット駆動用モータ55を駆動制御するドライバ56とを備えている。光源ユニット駆動用モータ55は、原稿画像を読み取る場合に、前記光源ユニットを適宜の速度で副走査方向における正方向又は逆方向に移動させるためのモータであり、制御部532の制御により、ドライバ56によって適宜駆動制御されるようになっている。そして、画像読み取り部52は、撮像素子521で読み取った電気信号を画像データとしてデジタル信号に変換するようになっている。
【0035】
画像処理装置53は、記憶部531及び制御部532を備えている。記憶部531は、ここではSDRAMからなり、画像読み取り部52で読み取った画像データを一時的に記憶するようになっている。
【0036】
制御部532は、画像読み取り装置全体の動作制御を管理する部分であり、図示は省略しているがCPU、ROM、RAM等によって構成されている。そして、制御部532は、画像読み取り部52にて原稿画像を読み取り、該画像読み取り部52から出力された画像データを記憶部531に順次書き込みながら、記憶部531への書き込み順に該記憶部531から画像データを順次読み出すように構成されている。
【0037】
この制御部532は、読み取り手段と、画像記憶手段と、オーバーフロー検出手段と、画像データ位置検出手段とを備えるように構成されている。
【0038】
前記読み取り手段は、画像読み取り部52を制御して原稿画像を画像データとして読み取るものである。前記画像記憶手段は、画像読み取り部52から出力された画像データを記憶部531に順次書き込むと共に該記憶部531への書き込み順に該記憶部531から画像データを順次読み出すものである。前記オーバーフロー検出手段は、記憶部531のオーバーフローを検出するものである。前記画像データ位置検出手段は、前記オーバーフロー検出手段にて記憶部531のオーバーフローを検出したときに該オーバーフロー検出時の画像データ位置を検出するものである。なお、前記オーバーフロー検出手段及び前記画像データ位置検出手段は、従来公知の手法と同様の手法で検出を行うことができる。
【0039】
そして、前記読み取り手段は、記憶部531のオーバーフローが発生して画像の再読み取りを行う際の読み取り開始時において、再読み取り前の読み取り終了直前の画像部分を読み直す重複読み取り手段を含んでいる。即ち、前記重複読み取り手段は、前記画像データ位置検出手段にて検出したオーバーフロー検出時の画像データ位置を基準にして、一部の画像データを重複して取得するように画像を画像読み取り部52にて読み直すようになっている。
【0040】
この重複読み取り手段について、前記画像記憶手段、前記オーバーフロー検出手段及び前記画像データ位置検出手段と共に、図2乃至図5を参照しながら以下に詳述する。
【0041】
図2は、本発明の実施形態に係る画像読み取り装置50における画像読み取り部52の画像の読み取り状態及び画像データの記憶部531への書き込み状態の時間的変化を示す図である。
【0042】
図2に示すように、画像読み取り装置50では、まず、原稿載置台51に載置された原稿(例えばA4サイズの原稿)ORを画像読み取り部52にて副走査方向に一定の走査速度v(例えば176mm/s)で読み取り、画像データ1を記憶部531に書き込む。この画像データのデータ量は、おおよそ100MB/600dpiとされる。こうして、画像データ1を記憶部531に書き込んでいる最中に、あるNライン目(例えば100ライン)目で記憶部531のオーバーフローが検出された場合に、読み取り中のオーバーフロー検出時の画像データ位置を検出する(図2のα参照)。
【0043】
次いで、画像データ位置αを確認後、画像読み取り部52を数ライン分、副走査方向において画像を読み取る正方向とは逆方向の逆走査方向に移動(スキャンバック)させる(図2のγ参照)。
【0044】
このスキャンバック中に記憶部531から画像データ1を順次読み出し、通信接続手段60を介して外部のパーソナルコンピュータ70と通信を行って、読み出した画像データ1をパーソナルコンピュータ70に送信する。このとき、画像データ1が読み出された記憶部531上のメモリアドレスにおける画像データはクリアされる。これを継続することで、記憶部531に十分な空き領域が確保される(図2のβ参照)。
【0045】
記憶部531において十分な空き領域を確保した後に、画像読み取り部52の読み取り走査を再開し、画像読み取り部52を副走査方向において正方向に移動させて再読み取り(再スキャン)させる。このとき、オーバーフロー検出時の画像データ位置を基準にして、Nライン目(例えば100ライン目)から所定のnライン(例えば3ライン)手前の(N−n)ライン目(例えば97ライン目)の次の(N−n+1)ライン目(例えば98ライン目)から画像データ2を読み取り、記憶部531に書き込む。ここで、Nは画像データ位置αでのライン位置であり、nは重複させるべきライン数である。
【0046】
図3は、本発明の実施形態に係る画像読み取り装置50における再読み取り前の画像データ1及び再読み取り後の画像データ2を示す図である。
【0047】
図3に示すように、(N−n+1)ライン目(例えば98ライン目)〜Nライン目(例えば100ライン目)のnライン(例えば3ライン)が重複部となり、この重複部が画像データのつなぎ目となる。
【0048】
このように、本発明の実施形態に係る画像処理装置53及び画像読み取り装置50によれば、画像を読み取っている最中に、記憶部531のオーバーフローが発生したとしても、再読み取りで一部の画像データを重複して取得するので、再読み取り前の画像データ1と、再読み取り後の画像データ2とを精度よくつなげることができ、これにより、画像のつなぎ目で発生することがある筋やずれを低減することができる。
【0049】
本実施の形態においては、制御部532は、前記重複読み取り手段にて取得した重複部分(重複ライン)の画像データに対して補間処理を行う画像処理手段をさらに備えるように構成されていてもよい。
【0050】
図4は、重複した画像データのつなぎ目部分(重複ライン)を補間処理で平均化した状態を示す図であって、図4(a)は、そのトッドパターンを示しており、図4(b)は、その出力画像を示している。
【0051】
図4に示すように、再読み取り前の画像データ1と、再読み取り後の画像データ2との重複部分(N−n+1)ライン目〜Nライン目を補間処理で平均化することで、画像(ここでは直線画像)のつなぎ目部分を滑らかに目立ち難くして自然な画像に仕上げることが可能となる。
【0052】
この場合、重複した画像データのつなぎ目部分(重複ライン)は、以下に説明するような補間処理(ここでは、重複ラインにおける画素に対する重み付けによる処理)を実行することで平均化することができる。
【0053】
図5は、重複した画像データのつなぎ目部分(重複ライン)における画素に対する重み付け処理を説明するための図である。
【0054】
この補間処理では、重複部分(重複ライン)の(N−n+1)ライン目の画素P11〜P1m,(N−n+2)ライン目の画素P21〜P2m,…,Nライン目の画素Pn1〜Pnm(mは主走査方向の画素数)に対する重み付けは、再読み取り前の画像データ1側画素濃度の比率R1,R2,…,Rnと、再読み取り後の画像データ2側画素濃度の比率S1,S2,…,Snとのそれぞれの和が1になるように、且つ、再読み取り前の画像データ1側の(N−n+1)ライン目から再読み取り後の画像データ2側のNライン目に行くに従って、再読み取り前の画像データ1側の比率R1,R2,…,Rnが低く(例えば一定の割合で低く)なるように(即ち、再読み取り後の画像データ2側の比率S1,S2,…,Snが高く(例えば一定の割合で高く)なるように)設定されている。
【0055】
即ち、重複部分(重複ライン)の(N−n+1)ライン目の画素P11〜P1m,(N−n+2)ライン目の画素P21〜P2m,…,Nライン目の画素Pn1〜Pnmの補間処理による算出画素濃度A11〜A1m,A21〜A2m,…,An1〜Anmは、再読み取り前の画像データ1側画素濃度をA11’〜A1m’,A21’〜A2m’,…,An1’〜Anm’、再読み取り後の画像データ2側画素濃度をA11”〜A1m”,A21”〜A2m”,…,An1”〜Anm”とすると、次の式(1)で表すことができる。
【0056】
【数1】
具体的には、画素単位の平均化処理において、重複させるべきライン数nを3とし、(N−2)ライン目の画素P11〜P1mの補間処理による算出画素濃度A11〜A1m、(N−1)ライン目の画素P21〜P2mの補間処理による算出画素濃度A21〜A2m、Nライン目の画素P31〜P3mの補間処理による算出画素濃度A31〜A3mをそれぞれA,B,Cとし、再読み取り前の画像データ1側の画素濃度A11’〜A1m’,A21’〜A2m’ ,A31’〜A3m’をそれぞれA’,B’,C’、再読み取り後の画像データ2側の画素濃度A11”〜A1m”,A21”〜A2m” ,A31”〜A3m”をそれぞれA”,B”,C”とすると、補間処理による算出画素濃度A〜Cは、それぞれ、次の式(2)〜式(4)のように設定することができる。
【0057】
【数2】
即ち、(N−2)ライン目の画素P11〜P1mについては、再読み取り前の画像データ1側の濃度比率R1を高くすると共に(ここでは75%)、再読み取り後の画像データ2側の濃度比率S1を低くして(ここでは25%)、補間処理による算出画素濃度Aを式(2)のように設定することができる。また、(N−1)ライン目の画素P21〜P2mについては、再読み取り前の画像データ1側の濃度比率R2及び再読み取り後の画像データ2側の濃度比率S2を何れも等しくして(50%)、補間処理による算出画素濃度Bを式(3)のように設定することができる。さらに、Nライン目の画素P31〜P3mについては、再読み取り前の画像データ1側の濃度比率R3を低くすると共に(ここでは25%)、再読み取り後の画像データ2側の濃度比率S3を高くして(ここでは75%)、補間処理による算出画素濃度Cを式(4)のように設定することができる。
【0058】
このようにすることで、画像のつなぎ目が滑らかで自然な画像に仕上げることが可能となり、図11に示すような理想に近い画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る画像読み取り装置の電気的構成の主要部を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像読み取り装置における画像読み取り部の画像の読み取り状態及び画像データの記憶部への書き込み状態の時間的変化を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像読み取り装置における再読み取り前の画像データ及び再読み取り後の画像データを示す図である。
【図4】重複した画像データのつなぎ目部分(重複ライン)を補間処理で平均化した状態を示す図であって、図(a)は、そのトッドパターンを示す図であり、図(b)は、その出力画像を示す図である。
【図5】重複した画像データのつなぎ目部分(重複ライン)における画素に対する重み付け処理を説明するための図である。
【図6】従来の画像読み取り装置及びそれに接続された外部の画像受信装置を示す斜視図である。
【図7】従来の画像読み取り装置に備えられる画像読み取り部及び画像処理装置の概略ブロック図である。
【図8】従来の画像読み取り装置における画像読み取り部の画像の読み取り状態及び画像データの記憶部への書き込み状態の時間的変化を示す図である。
【図9】従来の画像読み取り装置における再読み取り前の画像データ及び再読み取り後の画像データを示す図である。
【図10】従来の画像読み取り装置において、図9に示す画像データに基づき形成された画像状態を示す図であって、図(a)は、そのトッドパターンを示す図であり、図(b)は、その出力画像を示す図である。
【図11】理想的に形成された画像状態を示す図であって、図(a)は、そのトッドパターンを示す図であり、図(b)は、その出力画像を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
50 画像読み取り装置
52 画像読み取り部
53 画像処理装置
531 記憶部
532 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像読み取り部から出力された画像データを一時的に記憶する記憶部と、前記画像読み取り部にて画像を読み取り、該画像読み取り部から出力された画像データを前記記憶部に順次書き込むと共に該記憶部から画像データを順次読み出す制御部とを備えた画像処理装置であって、
前記制御部は、
前記記憶部のオーバーフローを検出するオーバーフロー検出手段と、
前記オーバーフロー検出手段にて前記記憶部のオーバーフローを検出すると、該オーバーフロー検出時の画像データ位置を検出する画像データ位置検出手段と、
前記画像データ位置検出手段にて検出したオーバーフロー検出時の画像データ位置を基準にして、一部の画像データを重複して取得するように前記画像読み取り部にて画像を読み直す重複読み取り手段と
を備えるように構成されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記制御部は、前記重複読み取り手段にて取得した重複部分の画像データに対して補間処理を行う画像処理手段をさらに備えるように構成されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記画像処理手段は、重複部分の画像データにおける重複した画素に対して重み付けによる処理を実行することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
画像読み取り部と、請求項1から3の何れか一つに記載の画像処理装置とを備えていることを特徴とする画像読み取り装置。
【請求項1】
画像読み取り部から出力された画像データを一時的に記憶する記憶部と、前記画像読み取り部にて画像を読み取り、該画像読み取り部から出力された画像データを前記記憶部に順次書き込むと共に該記憶部から画像データを順次読み出す制御部とを備えた画像処理装置であって、
前記制御部は、
前記記憶部のオーバーフローを検出するオーバーフロー検出手段と、
前記オーバーフロー検出手段にて前記記憶部のオーバーフローを検出すると、該オーバーフロー検出時の画像データ位置を検出する画像データ位置検出手段と、
前記画像データ位置検出手段にて検出したオーバーフロー検出時の画像データ位置を基準にして、一部の画像データを重複して取得するように前記画像読み取り部にて画像を読み直す重複読み取り手段と
を備えるように構成されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記制御部は、前記重複読み取り手段にて取得した重複部分の画像データに対して補間処理を行う画像処理手段をさらに備えるように構成されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記画像処理手段は、重複部分の画像データにおける重複した画素に対して重み付けによる処理を実行することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
画像読み取り部と、請求項1から3の何れか一つに記載の画像処理装置とを備えていることを特徴とする画像読み取り装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−71601(P2009−71601A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238116(P2007−238116)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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