説明

画像処理装置

【課題】二値化画像の部分的な出っ張り領域を、曲線状に切断することができる画像処理技術を提供することを目的とする。
【解決手段】画像処理装置は、断層像を閾値処理して得られた二値化画像からその一部の部分領域を切断する切断手段を備えた画像処理装置において、前記二値化画像の輪郭線上に、少なくとも一つの画素点を含む第一点列と、該第一点列から所定画素数隔てて少なくとも二つの画素点を含む第二点列とを前記輪郭線上に沿って順次移動させる点列設定手段と、この点列設定手段によって設定される第一及び第二点列の位置情報に基づいて、それらの第一及び第二点列を結ぶ曲線を算出する曲線算出手段と、この曲線算出手段によって算出された曲線及び前記輪郭線により囲まれた複数の部分領域を前記切断手段により切断する手段と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に係り、特に、二値化画像の部分的な出っ張り領域を曲線状に削除する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二値化画像の部分的な出っ張り領域を削除する画像処理技術が開示されている。特許文献1の画像処理技術は、図7(a)のように、複数の画素点からなるx軸に平行な点列a1、a2、a3、a4、a5を設定し、a1=a5=0 ならa2=a3=a4=0とする。また、複数の画素点からなるy軸に平行な点列b1、b2、b3、b4を設定し、b1=b4=0ならb2=b3=0とする。これにより、点列a1、a2、a3、a4、a5及び点列b1、b2、b3、b4を切断または削除し、二値化画像の部分的な出っ張り領域を削除していた。
【特許文献1】特開2002-325761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の画像処理技術により二値化画像の部分的な出っ張り領域を削除すると、図7(b)に示すように、切断個所が直線状になるという問題があった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、二値化画像の部分的な出っ張り領域を、曲線状に切断することができる画像処理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置は、断層像を閾値処理して得られた二値化画像からその一部の部分領域を切断する切断手段を備えた画像処理装置において、前記二値化画像の輪郭線上に、少なくとも一つの画素点を含む第一点列と、該第一点列から所定画素数隔てて少なくとも二つの画素点を含む第二点列とを前記輪郭線上に沿って順次移動させる点列設定手段と、この点列設定手段によって設定される第一及び第二点列の位置情報に基づいて、それらの第一及び第二点列を結ぶ曲線を算出する曲線算出手段と、この曲線算出手段によって算出された曲線及び前記輪郭線により囲まれた複数の部分領域を前記切断手段により切断する手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
これにより、二値化画像の所定領域に含まれる不要な部分領域を、曲線状に削除することができる。
【0007】
また、前記切断手段によって切断される部分領域毎に面積を算出し、その算出された面積のうちの最大となる第1の部分領域と、その第1の部分領域でない第2の部分領域と、を判別する領域判別手段と、この領域判別手段によって判別された第2の部分領域を削除する削除手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、前記曲線算出手段によって算出された曲線の重心を算出する重心算出手段と、この重心算出手段によって算出された重心と前記曲線算出手段によって算出された曲線を構成する各画素点とを結ぶ直線を設定する直線設定手段と、この直線設定手段によって設定された直線を延長し、その延長された線分と重なりかつ、前記重心算出手段によって算出された重心の反対側に位置する部分領域を所定の範囲で削除する削除手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、二値化画像の部分的な出っ張り領域を、曲線状に切断することができる画像処理技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面に従って本発明に係る画像処理装置及び方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0011】
まず、図6に基づいて、本実施の形態に係る画像処理装置を用いた画像処理システムのハードウェア構成について説明する。
【0012】
図6に示すように、本実施の形態に係る画像処理装置1は、病院等に設置されたLAN2に接続され、LAN2に接続されたX線CT装置3等の画像撮影装置から取得した画像データに基づいて画像処理を行うものである。図6には、画像撮影装置としてX線CT装置3のみが記載されているが、その他の画像撮影装置、例えばMRI装置、PET装置等を用いてもよい。
【0013】
画像処理装置1は、画像処理装置1の制御を行う中央演算装置(CPU)61と、制御プログラム等を格納する主メモリ62と、画像処理プログラムや画像データを格納する磁気ディスク63と、各種パラメータの入力を行うキーボード64と、マウス65やトラックボール等のポインティングデバイス及びコントローラ66と、CRT装置や液晶ディスプレイ装置からなる表示装置67と、これらの表示装置67に表示する表示用データを一時的に記録する表示用メモリ68と、上記各構成要素を互いに接続する共通バス69とを備える。画像処理装置1は、記憶媒体として主メモリ62と磁気ディスク63とを備えるが、その他の記憶装置、例えば、FDD、CD−RWドライブ、MOドライブ、ZIPドライブ等を備えてもよい。また、画像処理装置1は、LAN2を経由してX線CT装置3から画像データを取得する他、上記の記憶装置に格納された画像データを読み出すことにより取得してもよい。
【0014】
画像処理装置1は、X線CT装置3が撮影した画像データに基づいて二値化処理を行い、二値化画像を生成する。そして、二値化画像に含まれる不要な出っ張り領域を削除する領域削除処理を行う。
【0015】
以下、図1及び図2に基づいて、第一の実施の形態に係る領域削除処理について説明する。図1は、第一の実施の形態に係る画像処理方法であって、二つの点列を用いた領域削除例を示す模式図である。図2は、第一の実施の形態に係る画像処理方法を示すフローチャートである。
【0016】
図1は、X線CT装置3を用いて被検体の腰部を断層撮影して得た画像データに基づいて二値化処理を行った結果生成した二値化画像10を示す。二値化画像10は、値「1」が格納された大腰筋領域11と、値「0」が格納された大腰筋領域以外の背景領域12とにより構成される。大腰筋領域11には、大腰筋領域11を抽出する際に、大腰筋の周りの臓器領域、例えば肝臓領域や腎臓領域の影響を受けた結果生成された不要な出っ張り領域13が含まれる。表示領域14は、出っ張り領域13を含む画面表示領域の一例を示す。また表示領域15は、不要な出っ張り領域を含まない画面表示領域の一例を示す。
【0017】
一般に、大腰筋は、足の上げ下ろしに利用する筋肉であり、この大腰筋の発達程度、すなわち、断層面積の大きさは、つまずき易さの判断資料に用いることができる。そこで、健康診断等において大腰筋の状態を調べたり、大腰筋を鍛えるリハビリ運動の成果を測ったりする際に、画像データから大腰筋領域のみを抽出する必要がある。本実施の形態に係る画像処理技術は、上記した不要な出っ張り領域を削除して、大腰筋領域のみを抽出するのに有用である。
【0018】
次に図2のステップ順に、図1の大腰筋領域11に含まれる出っ張り領域13の削除処理の手順について説明する。
【0019】
(ステップS200)
まず、画像処理の対象となる二値化画像10のうち、大腰筋領域11の輪郭線を、所定の輪郭線抽出処理、例えばエッジ抽出フィルタ処理等を用いて抽出する。そして、出っ張り領域13の削除処理を開始する。
【0020】
(ステップS210)
図1の表示領域14に示すように、三つの画素点P1、P2、P3からなる第一点列及び、同じく三つの画素点Q1、Q2、Q3からなる第二点列を、輪郭線上の初期位置(例えば左上)に設定する。P1、P2、P3及びQ1、Q2、Q3は数画素ずつ離れ、P3とQ1の間は、輪郭線に沿った数え方で一定の画素数(0も含む)だけ離す。P1、P2、P3及びQ1、Q2、Q3は、大腰筋領域11(値「1」が格納されている)の輪郭線上にある。なお、値が「0」の背景領域12の縁上にあっても、原理的な変更にはならない。また、P1、P2、P3は、数画素ずつ離れるとしたが、連続する三点にしてもよい。同様に、Q1、Q2、Q3も、連続する三点にしても良い。
【0021】
(ステップS220)
第一点列と第二点列との間を結ぶ曲線を、非線形補間演算、例えばスプライン補間演算により求める。具体的には、P3とQ1の間の画素座標を、P1、P2、P3及びQ1、Q2、Q3の位置情報を基にして、非線形補間演算により求める。表示領域14において、太線により描かれた曲線が、非線形補間演算により算出した曲線である。
【0022】
(ステップS230)
曲線により領域を切断する。曲線と大腰筋領域11の輪郭線とに囲まれた部分領域に切断処理する。表示領域14の曲線は、出っ張り領域13を横切るので、曲線を基準として、出っ張り領域13と、出っ張り領域13を除く大腰筋領域11とに切断することができる。
【0023】
(ステップS240)
処理が大腰筋領域11の輪郭線上を一周したかどうか判定する。具体的には、第一点列及び第二点列を構成する各画素点P1、P2、P3、Q1、Q2、Q3が、ステップS210の初期位置と同じか否かを判定する。初期位置と異なれば、一周していないと判定してステップS250へ進む。初期位置と同じであれば、一周したと判定してステップS260へ進む。
【0024】
(ステップS250)
第一点列及び第二点列を構成する各画素点を、数(1を含む)画素進め、ステップS220に進む。
【0025】
(ステップS260)
面積が最大の部分領域のみを残す。ステップS230で領域切断をした結果できた各部分領域の面積を算出する。そして、面積が最大の部分領域の値は「1」を格納する。面積が最大ではない部分領域に含まれる画素点の値は、「1」から「0」に変更する。そして、領域削除処理を終了する。
【0026】
上記の実施の形態では、第一点列及び第二点列を構成する画素点の個数は、一定の状態で領域を一周するが、表示領域15に示すように、出っ張りの少ない箇所では、第一点列及び第二点列を構成する画素点の個数を変えてもよい。
【0027】
次に図3及び図4に基づいて第二の実施の形態に係る領域削除処理及び方法について説明する。図3は、第二の実施の形態に係る領域削除処理を示す模式図である。図4は、第二の実施の形態に係る領域削除方法を示すフローチャートである。以下、図4のステップ順に、図3の大腰筋領域11に含まれる出っ張り領域17の削除処理の手順について説明する。
【0028】
(ステップS400)
ステップS200と同様、画像処理の対象となる図3の二値化画像10のうち、大腰筋領域11の輪郭線を、所定の輪郭線抽出処理、例えばエッジ抽出フィルタ処理等を用いて抽出する。そして、出っ張り領域17の削除処理を開始する。
【0029】
(ステップS410)
図3の表示領域16に示すように、二つの画素点P1、P2からなる第一点列及び、同じく二つの画素点Q1、Q2からなる第二点列を、輪郭線上の初期位置(例えば左上)に設定する。第一点列と第二点列とは、所定の画素数(0を含む)離して設定する。
【0030】
(ステップS420)
ステップS220と同様、第一点列と第二点列との間を結ぶ曲線を、非線形補間演算、例えばスプライン補間演算により求める。表示領域16において、太線により描かれた曲線が、非線形補間演算により算出された曲線である。
【0031】
(ステップS430)
曲線の重心を算出する。重心は、曲線を構成する各画素点のX座標及びY座標の各平均値を求めることにより算出する。
【0032】
(ステップS440)
ステップS430で算出した重心と、曲線を構成する各画素点と、を結ぶ直線を設定する。その直線上において、直線と曲線との交点を基準として、重心とは反対側にあり、かつ所定距離Lの範囲内の領域を削除する。例えば、重心から曲線上の画素点R1を通る直線を引き、R1を基準として重心とは反対側にあり、かつ所定距離L内にある領域(太線)の画素点を削除する(値0を格納する)。他の点P1、P2、・・・、Q1、Q2についても同様である。なお、ステップS440において設定する直線には、重心を始点とし、輪郭線方向に延びる半直線も含む。所定距離Lは、大腰筋領域Sの関数とし、Sの値に応じて長さを調節してもよい。
【0033】
(ステップS450)
処理が大腰筋領域11の輪郭線上を一周したかどうか判定する。具体的には、第一点列及び第二点列を構成する各画素点P1、P2、Q1、Q2、が、ステップS410の初期位置と同じか否かを判定する。初期位置と異なれば、一周していないと判定してステップS460へ進む。初期位置と同じであれば、一周したと判定して処理を終了する。
【0034】
(ステップS460)
第一点列及び第二点列を構成する各画素点を、数(1を含む)画素進め、ステップS420に進む。
【0035】
次に、図5に基づき、第一の実施の形態及び第二の実施の形態に係る領域切断処理を行う画像処理装置の画面表示例を説明する。
【0036】
表示装置67の画面には、第一点列及び第二点列を構成する画素点の数を選択できるように、異なる画素数(2個、3個、4個)からなる点列ボックス50、51、52が表示される。画素数が少ない点列は、画像処理のスピードがより速く、画素数が多い点列は、より滑らかな曲線により領域削除処理を行うことができる。
【0037】
画像処理装置の操作者は、画面に表示されている点列ボックス50,51,52の中から、所望する画素数からなる点列ボックスをマウス65でクリックすることにより選択する。選択された点列ボックスは、大腰筋領域11の輪郭線上に表示される。図5においては、第一点列53a及び第二点列53bは、2つの画素点からなる点列により構成されているが、第一点列53aと第二点列53bとは、異なる画素数からなる点列により構成されても良い。例えば、第一点列53aを二つの画素点からなる点列とし、第二点列53bを三つの画素点からなる点列としてもよい。
【0038】
また、第一点列53a及び第二点列53bをマウス65でドラッグすることにより、第一点列53a及び第二点列53bの間の距離を調整したり、初期位置を設定したりすることができる。領域切除を行いたい出っ張り領域の幅の広狭に合わせて、第一点列53a及び第二点列53bの間の距離の広狭を調節してもよい。
【0039】
さらに、第一点列53a及び第二点列53bは、領域切断処理前の二値化画像10上に仮に設定し、仮演算することもできる。
【0040】
本実施の形態では、大腰筋領域に基づいて領域切断処理を行ったが、その他の被検体の部位の断層像に基づいて生成した二値化画像についても、同様の処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、第一の実施の形態に係る画像処理方法を示す模式図である。
【図2】図2は、第一の実施の形態に係る画像処理方法を示すフローチャートである。
【図3】図3は、第二の実施の形態に係る画像処理方法を示す模式図である。
【図4】図4は、第二の実施の形態に係る画像処理方法を示すフローチャートである。
【図5】図5は、画面表示の一例を示す模式図である。
【図6】図6は、本発明に係る画像処理装置のハードウェア構成を示す概略構成図である。
【図7】従来の画像処理方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0042】
1…画像処理装置、2…LAN、3…X線CT装置、61…CPU、62…主メモリ、63…磁気ディスク、64…キーボード、65…マウス、66…コントローラ、67…表示装置、68…表示メモリ、69…共通バス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
断層像を閾値処理して得られた二値化画像からその一部の部分領域を切断する切断手段を備えた画像処理装置において、
前記二値化画像の輪郭線上に、少なくとも一つの画素点を含む第一点列と、該第一点列から所定画素数隔てて少なくとも二つの画素点を含む第二点列とを前記輪郭線上に沿って順次移動させる点列設定手段と、
この点列設定手段によって設定される第一及び第二点列の位置情報に基づいて、それらの第一及び第二点列を結ぶ曲線を算出する曲線算出手段と、
この曲線算出手段によって算出された曲線及び前記輪郭線により囲まれた複数の部分領域を前記切断手段により切断する手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記切断手段によって切断される部分領域毎に面積を算出し、その算出された面積のうちの最大となる第1の部分領域と、その第1の部分領域でない第2の部分領域と、を判別する領域判別手段と、
この領域判別手段によって判別された第2の部分領域を削除する削除手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記曲線算出手段によって算出された曲線の重心を算出する重心算出手段と、
この重心算出手段によって算出された重心と前記曲線算出手段によって算出された曲線を構成する各画素点とを結ぶ直線を設定する直線設定手段と、
この直線設定手段によって設定された直線を延長し、その延長された線分と重なりかつ、前記重心算出手段によって算出された重心の反対側に位置する部分領域を所定の範囲で削除する削除手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−68383(P2006−68383A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257336(P2004−257336)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】