説明

画像処理装置

【課題】 元画像データに一又は一連の画像処理を施して目標画像データを生成する際、以前に前記元画像データに対して一又は一連の画像処理を施すことで生成された画像データを有効に活用することで前記目標画像データを生成する時間を短縮化する画像処理装置を提供する。
【解決手段】 画像処理指示手段3は、処理内容入力手段2より元画像データに対する目標処理内容が入力されると、記憶手段5に格納されている処理後画像データの生成手順を参照することで処理対象候補画像データ検索するとともに、検索された場合には、当該処理対象候補画像データから目標画像データを生成するのに要する時間と、元画像データから目標画像データを生成するのに要する時間との比較を行い、所要時間が短い生成方法に基づいて目標画像データを生成する指示を画像処理手段4に与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに対して画像処理を施す画像処理装置に関し、特に過去の画像処理において生成された画像データを利用して短時間で目標画像データを生成可能な画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやデジタルカメラ機能付き携帯電話等の普及、及びその高画素化に伴い大容量の画像データを取り扱う機会が非常に増大している。そして、これらの画像データに対し、回転処理、或いは倍率調整処理等の画像処理を施す場合が多々ある。このため、画像データの大容量化に伴って、上記画像処理に要する処理時間が増大する現状においては、当該画像処理に要する時間を短縮化することが求められている。
【0003】
このような背景の下、画像データに対して回転処理と、拡大処理或いは縮小処理(以下において、拡大処理と縮小処理を合わせて「拡縮処理」と称する)とを併せて行う場合に、当該処理に要する時間の短縮化を図ることを目的とした画像処理装置が従来より提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−320047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の画像処理装置は、画像処理対象となる画像データに対して施す画像処理内容が縮小処理と回転処理の場合には、縮小処理を先行して実行し、その後回転処理を実行する。縮小処理が先に実行されることにより、回転処理を行う際に処理対象となる画像データのデータ数が少なくなる為、処理時間の短縮化を図ることができる。又、画像処理対象となる画像データに対して施す画像処理内容が拡大処理と回転処理の場合には、回転処理を先行して実行し、その後拡大処理を実行する。回転処理を先に実行することによって、拡大処理をした後に回転処理を行う場合に比べて、回転処理対象となる画像データのデータ数を少なくすることができ、処理時間の短縮化を図ることができる。
【0006】
しかしながら、上記従来技術の方法では、同じ元画像データに対して再度画像処理を行う場合、これまでに実行した画像処理には関係なく、改めて元画像データに対して回転処理或いは拡縮処理を行う必要がある。このため、例えば回転処理と縮小処理、もしくは回転処理と拡大処理を行った出力結果を視覚的に確認して、所望する画像と異なっているために微細な修正を行う処理を行いたい場合、再び元画像から処理し直す必要があり、所望の画像を得るために多くの時間を要する。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑み、元画像データに一又は一連の画像処理を施して目標画像データを生成する際、以前に前記元画像データに対して一又は一連の画像処理を施すことで生成された画像データを有効に活用することで前記目標画像データを生成する時間を短縮化する画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る画像処理装置は、画像データに対して画像処理を施す画像処理装置であって、画像データを含む情報を格納する記憶手段と、実行処理対象である一の画像データを前記記憶手段より読み出して、実行処理内容である一又は一連の画像処理を施すとともに、個々の画像処理によって生成される処理後画像データ、及び当該処理後画像データの生成手順を前記記憶手段に保存する画像処理手段と、前記記憶手段に格納される元画像データから目標画像データを生成するために、前記元画像データに対して施す一又は一連の画像処理からなる目標処理内容を含む処理内容データの入力を受け付ける処理内容入力手段と、前記処理内容入力手段から入力される前記処理内容データに基づいて、前記実行処理対象、及び前記実行処理内容を前記画像処理手段に対して指定する画像処理指示手段と、を備え、前記画像処理指示手段が、前記処理内容入力手段から前記処理内容データが与えられると、前記処理内容データで指定される前記元画像データに対して前記目標処理内容とは異なる一又は一連の画像処理を施すことで生成された前記記憶手段に保存されている前記処理後画像データの中から、前記実行処理対象の候補となる処理対象候補画像データを検索し、前記処理対象候補画像データが検索された場合には、前記処理対象候補画像データに対して前記目標処理内容とは異なる一又は一連の必要な画像処理を施すことで前記目標画像データを生成するのに要する時間が、前記元画像データに対して前記目標処理内容を施すことで前記目標画像データを生成するのに要する時間より短時間である場合には、前記処理対象候補画像データを前記実行処理対象として前記画像処理手段に指定するとともに、前記一又は一連の必要な画像処理を前記実行処理内容として前記画像処理手段に指定することを第1の特徴とする。
【0009】
本発明に係る画像処理装置の上記第1の特徴構成によれば、画像処理指示手段が記憶手段から過去に元画像データに対して画像処理が施されることで生成された処理対象候補画像データを検索し、当該処理対象候補画像データから目標画像データを生成する方が、元画像データから目標画像データを生成するより時間が短縮化される場合には、処理対象候補画像データに画像処理を施して目標画像データが生成されるため、処理対象候補画像データが記憶手段に保存されている場合であっても再び元画像データに対して画像処理を施すことで目標画像データを生成していた従来構成の画像処理装置より処理時間の短縮化を図ることができる。
【0010】
又、画像処理手段によって画像処理が施されることで生成された処理後画像データは、その生成手順とともに記憶手段に保存されるため、画像処理指示手段は、記憶手段に格納された処理後画像データの生成手順を参照することで、処理対象候補画像データを容易に検索することができる。
【0011】
尚、画像処理指示手段は、元画像データから目標画像データを生成するのに要する時間、及び処理後画像データから目標画像データを生成するのに要する時間を算出するためのプログラム、又はデータテーブルを内部に備えるものとして構わない。
【0012】
又、本発明に係る画像処理装置は、上記第1の特徴構成に加えて、前記画像処理指示手段が、前記処理対象候補画像データが検索されない場合には、前記元画像データを前記実行処理対象として前記画像処理手段に指定するとともに、前記目標処理内容を前記実行処理内容として前記画像処理手段に指定することを第2の特徴とする。
【0013】
本発明に係る画像処理装置の上記第2の特徴構成によれば、記憶手段から処理対象候補画像データが検索されなければ、記憶手段に保存されている他の画像データから目標画像データを生成する可能性を考慮することなく直ちに元画像データに目標処理内容を施すことで目標画像データを生成する決定を行うため、判断プロセスが簡素化され、判断に要する時間を短縮化できる。
【0014】
又、本発明に係る画像処理装置は、上記第1又は第2の特徴構成に加えて、前記処理対象候補画像データが、前記元画像データから縮小処理を経ずに生成された前記処理後画像データ、又は、前記元画像データから縮小処理を経て生成されており前記目標画像データの生成までに拡大処理を必要としない前記処理後画像データであることを第3の特徴とする。
【0015】
本発明に係る画像処理装置の上記第3の特徴構成によれば、元画像データから目標画像データを生成する場合より、処理対象候補画像データから目標画像データを生成する場合の方が所要時間を短縮できる場合には、処理対象候補画像データから目標画像データを生成する旨の指示を画像処理手段に与えることで、元データから生成した目標画像データの画質に対して生成後の画質を劣化させることなく短時間処理を実現することが可能となる。
【0016】
又、本発明に係る画像処理装置は、上記第1〜第3の何れか一の特徴構成に加えて、前記画像処理指示手段が、前記目標画像データを生成するために必要な画像処理数が少ないほど短時間で処理が可能であると判断し、同一の画像処理内では、処理対象となる画像データの画素数が少ないほど短時間で処理が可能であると判断することを第4の特徴とする。
【0017】
本発明に係る画像処理装置の上記第4の特徴構成によれば、目標画像データを生成するのに要する時間を実際に算出することなく、簡易な演算によって所要時間の比較が行うことができる。このため、所要時間の比較を行うのに要する時間を短縮化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の構成によれば、記憶手段から過去に元画像データに対して画像処理が施されることで生成された処理対象候補画像データを検索し、当該処理対象候補画像データから目標画像データを生成する方が、元画像データから目標画像データを生成する場合より時間が短縮化される場合には、この処理対象候補画像データから目標画像データが生成されるため、処理対象候補画像データが記憶手段に保存されている場合であっても再び元画像データに対して画像処理を施すことで目標画像データを生成していた従来構成の画像処理装置より処理時間の短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<第1の実施形態>
以下において、本発明に係る画像処理装置(以下、適宜「本発明装置」と呼称する)の第1の実施形態(以下、適宜「本実施形態」と呼称する)について図1及び図2を参照して説明する。まず、図1を参照して本発明装置の全体構成を説明した後、後述する画像処理指示手段によって行われる詳細な判断プロセスについての説明を行う。
【0020】
図1は、本発明装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示される本発明装置1は、処理内容入力手段2、画像処理指示手段3、画像処理手段4、記憶手段5、及び出力手段6を備えて構成される。
【0021】
処理内容入力手段2は、本発明装置の利用者が処理対象となる一の画像データに対して行いたい処理内容(以下において、「目標処理内容」と称する)の入力を受け付ける入力用インターフェースである。処理対象となる一の画像データ(以下において、「元画像データ」と称する)を、後述する出力手段6の表示内容を視覚的に確認しながら選択するとともに、当該選択された画像データに対して施したい画像処理内容を入力可能に構成される。ここで、処理内容としては、拡大処理又は縮小処理、回転処理、及びこれらの一連の組み合わせの処理が入力可能である。このとき、利用者は、拡大処理又は縮小処理(以下において、これらをまとめて「拡縮処理」と称する)においては指定倍率を併せて入力し、回転処理においては指定回転角度を併せて入力するものとする。この処理内容入力手段2からの入力内容は、画像処理指示手段3に与えられる。
【0022】
尚、このとき、処理内容入力手段2によって入力された目標処理内容は、特定の画像データ(例えば出力手段6に表示されている画像データ)に対して施す処理内容であり、この被処理画像に関するデータ(ここでは上記「元画像データ」に相当する)についても併せて画像処理指示手段3に与えられるものとする。この被処理画像に関するデータは、処理内容入力手段2から目標処理内容とともに画像処理指示手段3に対して与えられるものとして構わない。以下では、目標処理内容と被処理画像に関するデータとを併せて、「処理内容データ」と記載する。
【0023】
画像処理指示手段3は、コンピュータのハードウェア、及びハードウェア上に実装されたアプリケーションソフトウェアで構成されており、処理内容入力手段2から処理内容デーたが与えられると、記憶手段5に格納されている利用可能な画像データ(以下において、「処理対象候補画像データ」と称する)を検索するとともに、検索された場合には、元画像データに対して目標処理内容を施して所望の画像データ(以下において、「目標画像データ」と称する)を生成するのに要する時間と、当該処理対象候補画像データを用いて目標画像データを生成するのに要する時間とを比較する。このとき、元画像データから目標画像データを生成する方が短時間で生成される場合には、元画像データに対して目標処理内容を施す旨の指示を画像処理手段4に与え、逆に、処理対象候補画像データに対して一又は一連の必要な画像処理を施すことで目標画像データを生成する方が短時間で生成される場合には、当該処理対象候補画像データに対して、この必要な画像処理を施す旨の指示を画像処理手段4に与える。
【0024】
又、画像処理指示手段3が、記憶手段5から処理対象候補画像データを検索できなかった場合には、元画像データに対して目標処理内容を施す旨の指示を画像処理手段4に与えるものとする。
【0025】
尚、記憶手段5から処理対象候補画像データを検索する検索方法、及び、画像処理に要する時間の比較方法についての説明は後述する。
【0026】
又、以下において、画像処理指示手段3から指定される画像処理の対象となる画像を「実行処理対象」と記載し、当該実行処理対象に対して施す画像処理の内容を「実行処理内容」と記載するものとする。例えば、画像処理指示手段3が元画像データに対して目標処理内容を施す旨の指示を画像処理手段4に与える場合、「実行処理対象として元画像データを指定し、実行処理内容として目標処理内容を指定する」と記載することとする。
【0027】
画像処理手段4は、コンピュータのハードウェア、及びハードウェア上に実装されたアプリケーションソフトウェアで構成されており、画像処理指示手段3から指定された実行処理対象に該当する画像データを記憶手段5から読み出すとともに、当該画像データに対して、当該画像処理指示手段3から指定された実行処理内容に該当する画像処理を施し、処理後に生成される画像データ(以下において、「処理後画像データ」と称する)を記憶手段5に保存する。
【0028】
画像処理手段4は、実行処理対象に対して指定された回転角度の回転処理を施す回転処理手段4a、及び、実行処理対象に対して指定された倍率の拡縮処理を施す拡縮処理手段4b、の機能的手段を備える構成である。例えば、画像処理指示手段3より、実行処理対象として「画像データda」が指定され、実行処理内容として「50%縮小、上下反転」なる処理内容が指定される場合、画像処理手段4は、記憶手段5より画像データdaを読み出すとともに、拡縮処理手段4bが当該画像データdaに対して50%縮小処理を施すことで処理後画像データda1を生成し、更に、この画像データda1に対して回転処理手段4aが上下反転処理を施すことで処理後画像データda2を生成する。このとき、実行処理対象に対して実行処理内容が施されることで最終的に生成される処理後画像データda2に加えて、中間的なデータとして生成された処理後画像データda1についても、併せて記憶手段5に保存するものとする。更に、この画像データda1、及びda2の生成手順が併せて記憶手段5に保存されるものとする。
【0029】
即ち、上記の例で言えば、処理後画像データda1は画像データdaに対して50%縮小処理が施されることで生成された画像データであり、処理後画像データda2は画像データda1に対して上下反転処理が施されることで生成された画像データである旨の情報が記憶手段5に保存されることとなる。このとき、処理後画像データda2においては、処理後画像データdaに対して50%縮小処理と上下反転処理が施されることで生成された画像データである旨の情報が保存されるものとしても構わない。
【0030】
記憶手段5は、情報の消去或いは追記が可能な不揮発性メモリで構成されており、画像データ入力手段(不図示)より入力される画像データ、画像処理手段4より入力される処理後画像データ及びその生成手順が格納される。
【0031】
出力手段6は、例えば液晶ディスプレイで構成されており、記憶手段5から読み出された画像データ(或いは処理後画像データ)を視覚的に確認可能に構成される。
【0032】
このように構成される本発明装置1において、利用者が元画像データD0から目標画像データDZを生成すべく目標処理内容f1を処理内容入力手段2より入力した場合の、画像処理指示手段3、及び画像処理手段4の処理手順について、図2を参照して以下に説明する。
【0033】
図2は、画像処理指示手段3が実行処理内容、及び実行処理対象を決定して画像処理手段4に対して指定する判断プロセスを説明するための模式的ブロック図である。図2では、上記目標処理内容f1を「50%縮小、上下反転」なる処理であるものとして表記している。
【0034】
画像処理指示手段3は、元画像データD0に対して目標処理内容f1を施す指示が処理内容入力手段2より与えられると、まず、元画像データD0に対して一又は一連の画像処理が施されることで生成された処理対象候補画像データを検索する。上述したように、画像処理手段4によって所定の処理が施された画像データは、処理後画像データとして記憶手段5に格納されるとともに、その処理後画像データの生成手順が併せて記憶されるため、画像処理指示手段3は、記憶手段5に格納されている処理後画像データの生成手順を参照することによって、元画像データD0から生成された処理後画像データ(即ち、処理対象候補画像データ)の存否を検索することができる。
【0035】
このとき、記憶手段5が、処理後画像データを含む画像データが格納される第1領域と、生成手順が格納される第2領域とに分けられており、生成手順が記載される第2領域には当該生成手順によって生成された処理後画像データの第1領域におけるアドレスが対応付けられて記録され、このアドレスを参照することで該当する処理後画像データを指定することが可能に構成されるものとしても構わない。
【0036】
画像処理指示手段3は、記憶手段5に格納される処理後画像データの生成手順を参照して処理対象候補画像データを検索する。そして、処理対象候補画像データが検索されなかった場合には、元画像データD0に対して入力された目標処理内容f1を施す指示を画像処理手段4に与える。即ち、画像処理指示手段3は、実行処理対象として元画像データD0を指定し、実行処理内容として目標処理内容f1を指定する。
【0037】
一方、画像処理指示手段3によって記憶手段5より処理対象候補画像データが検索された場合は、当該処理対象候補画像データから目標画像データDZを生成するのに要する時間と、元画像データD0から目標画像データDZを生成するのに要する時間との比較を行う。
【0038】
図2に示されるように、処理対象候補画像データとして画像データDaが検索された場合について下記に説明を行う。このとき、まず、元画像データD0に対して目標処理内容f1を施すことで目標画像データDZを生成するのに要する処理時間t1を算出する。このとき、目標処理内容f1には、縮小処理と回転処理が含まれているため、回転処理によって座標変換を行う対象となる画素数を減少して計算時間を短縮化することを狙いとして、縮小処理を施した後に回転処理を施すことを想定し、まず元画像データD0に対して50%縮小処理(処理f1a)を施すのに要する時間t1aを算出した後、当該処理f1aが施されることで生成される処理後画像データD1に対して上下反転処理(処理f1b)を施すのに要する時間t1bを算出し、この算出された時間t1aと時間t1bの合計によって時間t1を算出する。
【0039】
尚、画像処理指示手段3は、施す画像処理内容(拡大、縮小、回転)と、画像処理を行う対象となる被処理画像の画素数とから画像処理に要する時間を算出するためのプログラム又はデータテーブルを内部に備えるものとして構わない。即ち、同一の画像処理内容が行われる場合には、被処理画像の画素数が少ないほど要する時間が短いと判断するものとする。例えば、縦480ピクセル×横640ピクセルの大きさの画像D0に50%縮小処理を施すのに要する時間t1aは、縦320ピクセル×横480ピクセルの大きさの画像Daに50%縮小処理を施すのに要する時間t3より長時間となる。又、同一の画像処理内容とは、上記のとおり、拡大、縮小、回転の何れかが同一であることを表しており、倍率や回転角度が異なっても所要時間に対する影響はないものとして構わない。即ち、図2において、縦480ピクセル×横640ピクセルの大きさの画像D0に50%縮小処理(処理f1a)を施すのに要する時間t1aは、縦360ピクセル×横480ピクセルの大きさの画像Daに67%縮小処理(処理f2)を施すのに要する時間t2より長時間となる。
【0040】
図2に示される処理対象候補画像データDaは、元画像データD0に対して75%縮小処理と上下反転処理が施されることで生成された画像データである。即ち、この処理対象候補画像データDaより目標画像データDZを生成するためには、67%縮小処理(処理f2)を施す必要がある。一方、上述したように、元画像データD0から目標画像データDZを生成するために必要な目標処理内容f0は、50%縮小処理(処理f1a)と、上下反転処理(処理f1b)が必要である。即ち、処理対象候補画像データDaより目標画像データDZを生成するのに要する時間t2は、元画像データD0から目標画像データDZを生成するのに要する時間t1より短いと判断され、画像処理指示手段3は、画像処理手段4に対して、実行処理対象として処理対象候補画像データDaを指定し、実行処理内容として67%縮小処理(処理f2)を指定する。
【0041】
画像処理手段4は、画像処理指示手段3より指定された実行処理対象である処理対象候補画像データDaを記憶手段5から読み出すとともに、当該データDaに対して指定された処理f2を施すことで目標画像データDZを生成し、記憶手段5に保存する。このとき、目標画像データDZの生成手順についても併せて保存する。
【0042】
このように構成されることで、過去に元画像データD0から生成された処理後画像データが記憶手段5に保存されている場合であっても、従来構成の画像処理装置では再び元画像データD0に対して画像処理を施すことで目標画像データDZを生成していたが、本発明構成によれば、処理対象候補画像データDaが記憶手段5に保存されている場合であって、更に、元画像データD0に対して画像処理を施す場合より時間が短縮化される場合には、この処理対象候補画像データDaから目標画像データDZが生成されるため、従来構成より処理時間の短縮化を図ることができる。
【0043】
又、処理後画像データが記憶手段5に格納されるとき、併せて当該処理後画像データの生成手順が記憶手段5に保存されるため、この生成手順を参照することで、元画像データD0から生成された画像であるか否かの判別を容易に行うことができ、短時間で処理対象候補画像データの検索が可能である。
【0044】
尚、上記の例では、記憶手段5より処理対象候補画像データDaのみが検索された場合について説明を行ったが、処理対象候補画像データが複数検索された場合には、目標画像データDZを最も短時間で生成可能な一の処理対象候補画像データを選択して、当該処理対象候補画像データから目標画像データDZを生成するのに要する時間と、元画像データD0から目標画像データDZを生成するのに要する時間との比較を行うものとして構わない。
【0045】
又、画像処理に要する時間の比較を行う方法として、目標画像データを生成するまでの画像処理数が多いほど画像処理に要する時間が長いものと判断しても良い。即ち、図2の例では、元画像データD0から目標画像データDZを生成するためには、50%縮小処理(処理f1a)と、上下反転処理(処理f1b)の2処理を要する一方、処理対象候補画像データDaから目標画像データDZを生成するためには67%縮小処理(処理f2)の1処理のみでよいため、この必要処理数を比較することで、処理対象候補画像データDaから目標画像データDZを生成した方が短時間で生成可能であると判断することができる。尚、必要処理数が同数である場合には、上述したように、画像処理内容(拡大、縮小、回転)と、画像処理を行う対象となる被処理画像の画素数とから画像処理に要する時間を算出して比較しても構わないし、必要画像処理内容が同一である場合には、被処理画像の画素数のみを比較することで所要時間の比較を行うものとしても構わない。このようにすることで、実際の所要時間を算出することなく短時間で目標画像データを生成する生成手順を決定することができるため、画像処理指示手段3が行う判断処理に要する時間を短縮化できる。
【0046】
<第2の実施形態>
以下において、本発明装置の第2の実施形態(以下、適宜「本実施形態」と呼称する)について図3及び図4を参照して説明する。尚、本実施形態は、第1の実施形態と比較して、画像処理指示手段3が、生成後の画質を考慮して実行処理対象、及び実行処理内容を決定する点が異なるのみであり、本発明装置の構成は図1と同様である。又、第1の実施形態と同一の部分については、その説明を省略する。
【0047】
第1の実施形態では、画像処理指示手段3は、元画像データから目標画像データを生成する場合より、処理対象候補画像データから目標画像データを生成する場合の方が所要時間を短縮できる場合には、処理対象候補画像データから目標画像データを生成する旨の指示を画像処理手段4に与える構成であった。
【0048】
しかしながら、第1の実施形態によれば、所要時間は短縮化できたとしても元画像データから生成された目標画像データと比較して生成後の画像データの画質が劣化する場合が考えられる。
【0049】
図3は、本実施形態における画像処理指示手段3の判断プロセスを説明するための概略的ブロック図である。元画像データD0、目標画像データDZは図2と同一である。
【0050】
第1の実施形態と同様、画像処理指示手段3は、元画像データD0に対して目標処理内容f1を施す指示が処理内容入力手段2より与えられると、まず、元画像データD0に対して一又は一連の画像処理が施されることで生成された処理後画像データを検索する。このとき、元画像データD0に対して、25%縮小処理と上下反転処理が施された処理後画像データDbが検索されたとする。
【0051】
この処理後画像データDbから目標画像データDZを生成するためには、2倍拡大処理(処理f3)のみを行えばよく、元画像データD0から目標画像データDZを生成するのに要する画像処理数より少ないため、画像処理に要する時間は短縮化される。しかしながら、画像データは縮小処理が施されることで画素数が減少する一方、拡大処理や回転処理では画素数が減少しないため、処理後画像データDbを2倍拡大することで生成された目標画像データDZb(以下、元画像データD0から生成された目標画像データDZと区別するために、処理後画像データDbから生成された目標画像データをDZbと付すこととする)は、元画像データD0に対して25%縮小処理が施されて生成された処理後画像データDbの画質に依存する。一方、元画像データD0から生成された目標画像データDZは、元画像データD0に対して50%縮小処理が施されて生成された処理後画像データD1の画質に依存する。
【0052】
即ち、処理後画像データD1より画素数が少ない処理後画像データDbに対して2倍拡大処理が施されて生成された画像データDZbは、処理後画像データD1に対して上下反転処理が施されて生成された画像データDZより画質が劣化していることとなる。
【0053】
本実施形態では、このように記憶手段5から元画像データD0に対して一又は一連の画像処理が施されることで生成された処理後画像データが検索された場合であっても、当該処理後画像データから生成された目標画像データDZbが、元画像データD0から生成された目標画像データDZより画質が低くなる場合には、この処理後画像データを処理対象候補画像データとしない判断を行う。即ち、図3の例で、記憶手段5から検索された処理後画像データがデータDbのみであった場合には、処理対象候補画像データが検索されなかったものとして、元画像データD0から目標画像データDZを生成する旨の指示を画像処理手段4に与えるものとする。
【0054】
即ち、元画像データD0から処理後画像データDbを介して目標画像データDZbを生成するまでの過程において生成される最も画素数が少ない画像データの画素数pzbが、元画像データD0から目標処理内容f1に記載の画像処理が施されることで目標画像データDZを生成するまでの過程において生成される最も画素数が少ない画像データの画素数pzより少ない場合には、処理後画像データDbを処理対象候補画像データとしない判断を行い、逆に、pzbがpz以上である場合、言い換えれば、処理後画像データが元画像データから縮小処理を経ずに生成されている第1の条件か、或いは縮小処理を経て生成されており目標画像データの生成までに拡大処理を必要としない第2の条件の何れか一条件を満たす場合には、処理後画像データDbを処理対象候補画像データとして、第1の実施形態と同様に所要時間の比較を行う。
【0055】
例えば、元画像データD0に対して50%縮小処理(処理f4)を施すことで目標画像データDYを生成する旨の入力が処理内容入力手段から与えられたとする(図4参照)。このとき、画像処理指示手段3が、記憶手段5を検索すると、処理後画像データDc及びDdが検索されたとする。処理後画像データDcは、元画像データD0に対して25%縮小処理を施して生成された画像データであり、処理後画像データDdは、元画像データD0に対して1.25倍拡大処理を施して生成された画像データである。尚、処理後画像データDcは、2倍拡大処理(処理f5)が施されることで目標画像データDYcを生成し、処理後画像データDdは、40%縮小処理(処理f6)が施されることで目標画像データDYdを生成する。
【0056】
画像処理指示手段3は、元画像データD0から処理f4を経て生成される目標画像データDYの画質と、処理後画像データDc及びDdから夫々必要な処理を経て生成される目標画像データDYc、DYdの画質を比較する。このとき、処理後画像データDcから生成される目標画像データDYcは、元画像データD0に対して25%縮小処理を施して生成された処理後画像データDcに依存するため、元画像データD0に対して50%縮小処理が施されて生成された目標画像データDYより画質が劣化する。これによって、処理後画像データDYcは、処理対象候補画像データとしない判断を行う。一方、処理後画像データDdから生成される目標画像データDYdは、処理後画像データDdの画素数が元画像データD0の画素数に対して減少していないため、目標画像データDYの画質より画質が劣化することはない。従って、処理後画像データDdは処理対象候補画像データと判断される。
【0057】
ここで、第1の実施形態で上述したように、画像処理指示手段3は、同一画像処理(処理f4も処理f6も縮小処理)においては、被処理対象となる画像データの画素数が多いほど所要時間を要するものと判断するため、元画像データD0から処理f4を介して目標画像データDYを生成するのに要する時間t4は、処理対象候補画像データDdから処理f6を介して目標画像データDYdを生成するのに要する時間t6より短いと判断される(処理後画像データDdは元画像データD0に対して1.25倍拡大処理が施されているため、補間処理が施されることで実質的に元画像データD0より画素数が多くなっていると判断される)。これによって、画像処理指示手段3は、画像処理手段4に対して、元画像データD0を実行処理対象とし、処理内容f4を実行処理内容とする指定を行う。
【0058】
このように、画像処理指示手段3が、記憶手段5から元画像データに対して一又は一連の画像処理が施されることで生成された処理後画像データを検索した場合であっても、当該処理後画像データから生成された目標画像データが、元画像データから生成された目標画像データより画質が低くなる場合には、この処理後画像データを処理対象候補画像データとしない判断を行った上で、第1の実施形態と同様に、元画像データから目標画像データを生成する場合より、処理対象候補画像データから目標画像データを生成する場合の方が所要時間を短縮できる場合には処理対象候補画像データから目標画像データを生成する旨の指示を画像処理手段4に与えることで、生成される画像データの画質を劣化させることなく短時間処理を実現することが可能となる。
【0059】
<他の実施形態>
以下に他の実施形態について説明する。
【0060】
〈1〉 上述の各実施形態では、画像処理手段4によって一連の画像処理が施される場合、一連の画像処理が施されることで最終的に生成される処理後画像データのみならず、個々の画像処理によって中間的に生成される処理後画像データについても、生成手順とともに記憶手段5に保存されるものとしたが、記憶手段5の記憶容量が小さい場合には最終的に生成される処理後画像データのみが生成手順とともに保存されるものとしても構わない。又、記憶手段5に保存される処理後画像データは、画像処理手段4によって過去に生成された直近の所定数に限定されるものとしても良く、この場合、古い処理後画像データから順次自動的に消去されるものとしても構わない。特に、直前に生成された処理後画像データのみを記憶する構成とする場合、保存されている処理後画像データが処理対象候補画像データであるか否かの判断に要する時間は短縮化される。逆に、記憶手段5の容量に十分な余裕がある場合には、複数の画像データに対する処理後画像データを記憶手段5に保存可能に構成されるものとして良い。
【0061】
〈2〉 目標画像データを生成するために回転処理を要する場合、出力手段6に処理後の画像データを正しく出力するためには更に縮小処理を要する場合がある。この場合、画像処理指示手段3が、必要な回転処理の回転角度に応じて、必要な縮小処理の倍率を自動算出可能に構成されるものとして構わない。更に、この場合、算出された縮小処理の倍率を利用して、処理対象候補画像データの検索、及び所要時間の比較を行うものとすることができる。
【0062】
例えば図5に示す例のように、目標処理内容として元画像データD0に対して時計回りに45°回転を施す処理f7が処理内容入力手段2より入力されたとする。この場合、元画像データD0に対してそのまま時計回りに45°回転を施す(処理f7x)と、生成される処理後画像データDWxが画面サイズを超過し、出力手段5によって視覚的に確認できない。このため、画像処理指示手段3が、45°回転を施した画像データを出力手段5の画面サイズに収めるのに必要十分な縮小倍率(55%縮小)を自動的に算出し、55%縮小処理(処理f7a)、及び時計回り45°回転処理(処理f7b)を順次施すことで目標画像データDWを生成する旨の目標処理内容に自動的に変換する。このように目標処理内容を自動的に変換した上で、上述の各実施形態と同様に、処理対象候補画像データの検索、及び所要時間の比較を行うものとすることができる。
【0063】
〈3〉 上述の各実施形態では、画像処理の内容として、拡大処理又は縮小処理、回転処理、及びこれらの一連の組み合わせの処理を想定したが、これらの画像処理に限られず、色塗り処理、モザイク処理、その他の画像処理を含むものとしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明装置の概略構成を示すブロック図
【図2】画像処理指示手段が実行処理内容、及び実行処理対象を決定して画像処理手段に対して指定する判断プロセスを説明するための模式的ブロック図
【図3】第2の実施形態における画像処理指示手段の判断プロセスを説明するための概略的ブロック図
【図4】第2の実施形態における画像処理指示手段の判断プロセスを説明するための別の概略的ブロック図
【図5】他の実施形態における画像処理指示手段の判断プロセスを説明するための概略的ブロック図
【符号の説明】
【0065】
1: 本発明装置
2: 処理内容入力手段
3: 画像処理指示手段
4: 画像処理手段
4a: 回転処理手段
4b: 拡縮処理手段
5: 記憶手段
6: 出力手段
da: 画像データ
da1、da2、D1、Da、Db、Dc、Dd: 処理後画像データ
f1、f4、f7: 目標処理内容
f1a、f1b、f2、f3、f4、f5、f6、f7a、f7b、f7x: 画像処理内容
D0: 元画像データ
DZ、DZb、DY、DYc、DYd、DW、DWx: 目標画像データ
t1、t1a、t1b、t2、t3、t4、t6: 所要時間
pz、pzb: 画素数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに対して画像処理を施す画像処理装置であって、
画像データを含む情報を格納する記憶手段と、
実行処理対象である一の画像データを前記記憶手段より読み出して、実行処理内容である一又は一連の画像処理を施すとともに、個々の画像処理によって生成される処理後画像データ、及び当該処理後画像データの生成手順を前記記憶手段に保存する画像処理手段と、
前記記憶手段に格納される元画像データから目標画像データを生成するために、前記元画像データに対して施す一又は一連の画像処理からなる目標処理内容を含む処理内容データの入力を受け付ける処理内容入力手段と、
前記処理内容入力手段から入力される前記処理内容データに基づいて、前記実行処理対象、及び前記実行処理内容を前記画像処理手段に対して指定する画像処理指示手段と、を備え、
前記画像処理指示手段が、
前記処理内容入力手段から前記処理内容データが与えられると、前記処理内容データで指定される前記元画像データに対して前記目標処理内容とは異なる一又は一連の画像処理を施すことで生成された前記記憶手段に保存されている前記処理後画像データの中から、前記実行処理対象の候補となる処理対象候補画像データを検索し、
前記処理対象候補画像データが検索された場合には、前記処理対象候補画像データに対して前記目標処理内容とは異なる一又は一連の必要な画像処理を施すことで前記目標画像データを生成するのに要する時間が、前記元画像データに対して前記目標処理内容を施すことで前記目標画像データを生成するのに要する時間より短時間である場合には、前記処理対象候補画像データを前記実行処理対象として前記画像処理手段に指定するとともに、前記一又は一連の必要な画像処理を前記実行処理内容として前記画像処理手段に指定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理指示手段が、
前記処理対象候補画像データが検索されない場合には、前記元画像データを前記実行処理対象として前記画像処理手段に指定するとともに、前記目標処理内容を前記実行処理内容として前記画像処理手段に指定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記処理対象候補画像データが、前記元画像データから縮小処理を経ずに生成された前記処理後画像データ、又は、前記元画像データから縮小処理を経て生成されており前記目標画像データの生成までに拡大処理を必要としない前記処理後画像データであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理指示手段が、
前記目標画像データを生成するために必要な画像処理数が少ないほど短時間で処理が可能であると判断し、
同一の画像処理内では、処理対象となる画像データの画素数が少ないほど短時間で処理が可能であると判断することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の画像処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−295143(P2007−295143A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118705(P2006−118705)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】