説明

画像処理装置

【課題】高いコントラストを備える減色画像を得ることができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】
原稿の画像の色を減色して記録媒体に印刷するカラーコピー機能を備えた画像処理装置であって、原稿を読み取って画像データを生成する画像生成手段と、画像データに含まれる特定の色相と、当該特定の色相の補色となる色相とを決定する色相決定手段と、特定の色相と補色となる色相とに基づいて、画像データを減色する減色手段と、減色手段によって減色された画像データを記録媒体に印刷する印刷手段と、を備え、減色手段は、補色となる色相(B)から所定の範囲の色相(C)である画像データを補色となる色相に置き換え、所定の範囲の色相(C)以外の色相(D)である画像データを特定の色相(A)に置き換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関し、詳しくは、原稿の画像の色を減色して出力する機能を備えた画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、原稿の色を減色する機能を備える画像処理装置が発明されている。特許文献1に記載の画像処理装置は、パーソナルコンピュータであり、スキャナで読み込んだ原稿の色を減色し、減色した原稿の画像をプリンタで記録紙に印刷することができる。この画像処理装置では、モニタに表示された原稿の画像をクリックすることなどによって保存する色相を指定し、指定した色相以外の画素をモノクロとすることによって減色を実現している。なお、この画像処理装置では、指定した色相から所定の範囲に含まれる色相を保存し、この範囲外の色相の画素をモノクロとすることもできる。
【特許文献1】特開2004−7370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の画像処理装置は、特許文献1に記載の画像処理装置のように、指定した色相、又は、指定した色相から所定の範囲に含まれる色相のみを保存していた。したがって、特に、色相の分布の広い原稿の画像を減色した場合には、減色された画像の色相コントラストが低いという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、高い色相コントラストを備える減色画像を得ることができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の画像処理装置は、原稿の画像の色を減色して出力する機能を備えた画像処理装置であって、原稿を読み取って画像データを生成する画像生成手段と、前記画像データに含まれる特定の色相と、当該特定の色相の補色となる色相とを決定する色相決定手段と、前記特定の色相と前記補色となる色相とを保存して、前記画像データを減色する減色手段と、前記減色手段によって減色された前記画像データを出力する出力手段と、を備えることを特徴としている。
【0006】
この構成によれば、原稿の画像の色を減色して出力する機能を備えた画像処理装置であって、画像生成手段により、原稿が読み取られて画像データが生成される。そして、色相決定手段により、画像データに含まれる特定の色相と、当該特定の色相の補色となる色相とが決定され、減色手段により、特定の色相と補色となる色相とを保存して、画像データが減色される。また、出力手段により、減色手段によって減色された画像データが出力される。出力手段は、例えば、減色された画像データを記録紙に印刷出力したり、ファイルとして出力したりする。このように、特定の色相と、当該特定の色相の補色となる色相を保存して減色をするので、高い色相コントラストを備えた減色画像を得ることができる。
【0007】
請求項2に記載の画像処理装置は、請求項1に記載の画像処理装置であって、前記減色手段は、前記補色となる色相から所定の範囲の色相である前記画像データを前記補色となる色相に置き換え、前記所定の範囲の色相以外の色相である前記画像データを前記特定の色相に置き換えることを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、減色手段により、補色となる色相から所定の範囲の色相である画像データが当該補色となる色相に置き換えられ、所定の範囲の色相以外の色相である画像データが特定の色相に置き換えられる。したがって、補色となる色相から所定の範囲の色相である画素が当該補色となる色相となり、所定の範囲の色相以外の色相である画素が特定の色相となった減色画像を得ることができる。
【0009】
請求項3に記載の画像処理装置は、請求項1に記載の画像処理装置であって、前記減色手段は、前記特定の色相から所定の第1範囲の色相である前記画像データを前記特定の色相に置き換え、前記補色となる色相から所定の第2範囲の色相である前記画像データを前記補色となる色相に置き換え、前記第1範囲及び前記第2範囲の色相以外の色相である画像データの彩度をゼロにすることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、減色手段により、特定の色相から第1範囲の色相である画像データが当該特定の色相に置き換えられ、補色となる色相から所定の第2範囲の色相である画像データが当該補色となる色相に置き換えられ、さらに、第1範囲及び第2範囲の色相以外の色相である画像データの彩度がゼロにされる。したがって、特定の色相から第1範囲の色相である画素が当該特定の色相となり、補色となる色相から所定の第2範囲の色相である画素が当該補色となる色相となり、さらに、第1範囲及び第2範囲の色相以外の色相である画素の彩度がゼロとなった減色画像を得ることができる。このような減色方法によれば、モノクロの部分に比べて色相を有する部分が少なくなるので、色相を有する原稿のポイントとなる部分を目立たせることができ、また、トナーなどの色材の消費量を削減することができる。
【0011】
請求項4に記載の画像処理装置は、請求項1乃至3のいずれか1に記載の画像処理装置であって、前記色相決定手段は、画像データに含まれる色相のうち最も彩度が高い色相を前記特定の色相とすることを特徴としている。
【0012】
この構成によれば、色相決定手段により、画像データに含まれる色相のうち最も彩度が高い色相が特定の色相とされる。したがって、最も彩度が高い色相と補色となる色相とを保存した減色画像を得ることができる。原稿画像でポイントとなる部分は、鮮やかな色で記録されている可能性が高いので、このように、最も彩度が高い色相と補色となる色相とを保存することにより、原稿中の重要な部分の色彩を残すことができる。この減色の方法は、色数が少なく、色彩を有する部分の面積が全体に対して比較的少ない原稿に適している。
【0013】
請求項5に記載の画像処理装置は、請求項4に記載の画像処理装置であって、前記減色手段は、前記補色となる色相の彩度が所定の閾値以上である場合に、前記特定の色相と前記補色となる色相とを保存して減色を行い、前記補色となる色相の彩度が前記所定の閾値よりも低い場合に、前記特定の色相を保存して減色を行うことを特徴としている。
【0014】
この構成によれば、減色手段により、補色となる色相の彩度が所定の閾値以上である場合に、特定の色相と補色となる色相とを保存して減色が行われ、補色となる色相の彩度が所定の閾値よりも低い場合に、特定の色相を保存して減色が行われる。このように、補色となる色相の彩度が所定の閾値以上であり補色となる色相を保存することによって、高い色相コントラストを維持するという効果が得られる場合にのみ補色となる色相を保存し、補色となる色相の彩度が所定の閾値よりも低く、高い色相コントラストを維持することができない場合には、補色となる色相を保存しないので、トナーを節約することができる。
【0015】
請求項6に記載の画像処理装置は、請求項4に記載の画像処理装置であって、前記減色手段は、前記特定の色相の彩度に対する前記補色となる色相の彩度の割合が所定の値以上である場合に、前記特定の色相と前記補色となる色相とを保存して減色を行い、前記割合が前記所定の値よりも低い場合に、前記特定の色相を保存して減色を行うことを特徴としている。
【0016】
この構成によれば、減色手段により、特定の色相の彩度に対する補色となる色相の彩度の割合が所定の値以上である場合に、特定の色相と補色となる色相とを保存して減色が行われ、割合が所定の値よりも低い場合に、特定の色相を保存して減色が行われる。このように、特定の色相の彩度に対する補色となる色相の彩度の割合が所定の値以上であり補色となる色相を保存することによって、高い色相コントラストを維持することができる場合にのみ補色となる色相を保存し、特定の色相の彩度に対する補色となる色相の彩度の割合が所定の値よりも低く、高い色相コントラストを維持することができない場合には、補色となる色相を保存しないので、トナーを節約することができる。
【0017】
請求項7に記載の画像処理装置は、請求項1乃至3のいずれか1に記載の画像処理装置であって、前記色相決定手段は、前記画像データに含まれる色相のうち最も出現頻度が高い色相を前記特定の色相とすることを特徴としている。
【0018】
この構成によれば、色相決定手段により、画像データに含まれる色相のうち最も出現震度が高い色相が特定の色相とされる。したがって、最も出現頻度が高い色相と補色となる色相とを保存した減色画像を得ることができる。色数が多くて色彩を有する部分の面積が全体に対して比較的多く、色彩を有する部分に占める割合が大きい色が全体の印象を決定しているような原稿の場合に、このように、最も出現頻度が高い色相と補色となる色相とを保存することにより、画像全体のイメージをあまり損なうことなく減色することができる。
【0019】
請求項8に記載の画像処理装置は、請求項7に記載の画像処理装置であって、前記減色手段は、前記補色となる色相の出現頻度が所定の閾値以上である場合に、前記特定の色相と前記補色となる色相とを保存して減色を行い、前記補色となる色相の出現頻度が前記所定の閾値よりも低い場合に、前記特定の色相を保存して減色を行うことを特徴としている。
【0020】
この構成によれば、減色手段により、補色となる色相の出現頻度が所定の閾値以上である場合に、特定の色相と補色となる色相とを保存して減色が行われ、補色となる色相の出現頻度が所定の閾値よりも低い場合に、特定の色相を保存して減色が行われる。このように、補色となる色相の画像データにおける出現頻度が所定の閾値以上であり補色となる色相を保存することによって、高い色相コントラストを維持するという効果が得られる場合にのみ補色となる色相を保存し、補色となる色相の画像データにおける出現頻度が所定の閾値よりも低く、高い色相コントラストを維持することができない場合には、補色となる色相を保存しないので、トナーを節約することができる。
【0021】
請求項9に記載の画像処理装置は、請求項7に記載の画像処理装置であって、前記減色手段は、前記特定の色相の出現頻度に対する前記補色となる色相の出現頻度の割合が所定の値以上である場合に、前記特定の色相と前記補色となる色相とを保存して減色を行い、前記割合が前記所定の値よりも低い場合に、前記特定の色相を保存して減色を行うことを特徴としている。
【0022】
この構成によれば、減色手段により、特定の色相の画像データにおける出現頻度に対する補色となる色相の画像データにおける出現頻度の割合が所定の値以上である場合に、特定の色相と補色となる色相とを保存して減色が行われ、当該割合が所定の値よりも低い場合に、特定の色相を保存して減色が行われる。このように、特定の色相の出現頻度に対する補色となる色相の出現頻度の割合が所定の値以上であり補色となる色相を保存することによって、高い色相コントラストを維持することができる場合にのみ補色となる色相を保存し、特定の色相の出現頻度に対する補色となる色相の出現頻度の割合が所定の値よりも低く、高い色相コントラストを維持することができない場合には、補色となる色相を保存しないので、トナーを節約することができる。
【0023】
請求項10に記載の画像処理装置は、請求項1乃至3のいずれか1に記載の画像処理装置であって、外部からの入力操作を受け付ける入力受付手段を備え、前記色相決定手段は、前記入力受付手段が受け付けた入力操作に基づいて前記特定の色相を決定し、当該決定した特定の色相に基づいて前記補色となる色相を決定することを特徴としている。
【0024】
この構成によれば、外部からの入力操作を受け付ける入力受付手段を備え、色決定手段により、入力受付手段が受け付けた入力操作に基づいて特定の色相が決定され、当該決定した特定の色相に基づいて補色となる色相が決定される。したがって、ユーザが行う入力操作を入力受付手段が受け付けることによって、ユーザの所望の色相を特定の色相とし、当該特定の色相と当該特定の色相に基づいて決定された補色となる色相を保存した減色画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る画像処理装置の一例としてのインターネットファクシミリ装置1について説明する。インターネットファクシミリ装置1は、ファクシミリ機能、インターネットファクシミリ機能、電子メール機能、スキャン機能、コピー機能、プリント機能、通話機能などを備えた、いわゆるファクシミリ複合機と呼ばれるものである。インターネットファクシミリ装置1は、オフィスなどに設置され、公衆交換電話網(PSTN:Public Switched Telephone Networks)及びLAN(Local Area Network)に接続される。
【0026】
図1は、インターネットファクシミリ装置1の構成例を示したブロック図である。このインターネットファクシミリ装置1は、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、操作部105、表示部106、原稿読取部107、画像処理部108、コーデック(CODEC:Coder and Decoder)109、画像メモリ110、プリンタ111、FAX通信部112、及び、LAN−I/F(Local Area Network Interface)113を備えており、各部101乃至113は、バス(bus)114によって通信可能に接続されている。
【0027】
CPU101は、ROM102に格納されている制御プログラムに従って、インターネットファクシミリ装置1の各部の動作を制御する。ROM102は、CPU101によりこのインターネットファクシミリ装置1の各部の動作を制御するための前記制御プログラムなどを格納する。RAM103は、インターネットファクシミリ装置1の動作に用いる設定情報などの各種データなどを、読み出し及び書き込みが可能な状態で記憶するものであり、CPU101のワークエリアとしても機能する。HDD104は、ファクシミリ機能で送受信した画像データの蓄積などを行うためのものである。
【0028】
操作部105は、図示しないが、原稿の読み取り動作の開始を指示するためのスタートキー、ファクシミリ番号、コピー部数などを入力するためのテンキー、文字の入力を行うための文字入力キー、操作対象を指定するためのカーソルキーなどを備えている。表示部106は、各種の設定状態や自装置1の動作状態などを文字や図形などで表示するタッチパネル式の液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)(オペレーションパネル)や、点灯又は消灯で表示するLED(Light Emitting Diode)ランプなどを備えている。操作部105が備える各キーの操作や表示部106が備える液晶表示装置のパネルへのタッチに応じて液晶表示装置の表示が変化し、この液晶表示装置の表示に対応した操作部105の各キーへの操作や液晶表示装置のパネルへのタッチにより各種の入力を行うことができる。
【0029】
原稿読取部107は、原稿の画像を読み取ってRGB表色系の画像データを生成するものであり、図示しないが、例えば、透明な原稿載置板に載置された原稿を読み取るフラット・ベッド・スキャナ(FBS:Flat Bed Scanner)や、原稿トレイに載置された原稿を読み取るべく、その原稿を搬送する自動原稿給送装置(ADF:Automatic Document Feeder)を備えている。
【0030】
画像処理部108は、原稿読取部107から出力された画像データに対して、色調整、減色処理等の処理を行うものである。減色処理については後に詳述する。コーデック109は、画像処理部108等によって処理された画像データを符号化(エンコード)し、また、符号化された画像データを復号(デコード)するものである。コーデック109に入力された画像データは、JPEG、MH、MR、MMR、JBIG方式等に基づいて符号化され、画像メモリ110に記憶される。
【0031】
プリンタ111は、画像メモリ110から読み出され、コーデック109によって復号されたCMYK表色系の画像データを印刷出力するものである。
【0032】
FAX通信部112は、原稿の画像データをファクシミリ(FAX)通信するものであり、図示しないが、モデム(MODEM:MOdulator-DEModulator)及びNCU(Network Control Unit)を備えている。モデムは、例えばITU−T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)の勧告V.34規格又はこれと同様のものに従った送受信データの変調及び復調を行うものである。NCUは、電話回線を制御して電話をかけたり、切ったりする回線網制御装置でありPSTNに接続される。PSTNには、インターネットファクシミリ装置1の他にG3ファクシミリ装置などが通信可能に接続され、インターネットファクシミリ装置1は、G3ファクシミリ装置などとの間で画像データをファクシミリ通信により送信又は受信することが可能である。
【0033】
LAN−I/F113は、インターネットファクシミリ装置1をLANに接続可能にするものである。LANには、クライアントPCなども接続され、インターネットファクシミリ装置1は、クライアントPCなどとの間でデータの通信が可能である。また、インターネットファクシミリ装置1は、LAN及びルータを介して、インターネット上に設けられたその他のインターネットファクシミリ装置などと接続され、その他のインターネットファクシミリ装置などとの間でインターネットファクシミリ通信を行うことができる。ここで、インターネットファクシミリ通信とは、例えば、TIFF(Tagged Image File Format)−S形式のファイル(画像データ)を添付した電子メールをSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)で送受信する通信である。
【0034】
このようなインターネットファクシミリ装置1では、原稿読取部107で読み取った原稿の画像の色を減色してプリンタ111で印刷することができる。減色を行う際には、原稿読取部107で生成した原稿の画像データに基づいて、特定の色相と当該特定色相の補色となる色相を決定し、決定した特定の色相と補色の色相とを保存して減色する。このような減色の処理は、図2に示す画像処理部108に含まれる各部108a乃至108fを構成するそれぞれの専用回路によって実行される。
【0035】
(第1の実施の形態)
以下、図2を参照しつつ、画像処理部108における第1の実施の形態の減色処理について説明する。原稿読取部107で生成されたRGB表色系の画像データは、画像処理部108に入力されると、まず、表色系変換部108aに与えられる。表色系変換部108aでは、RGB表色系の画像データをYCbCr表色系の画像データに変換する。RGB表色系からYCbCr表色系への変換は、周知の通り、式(1)乃至式(3)の演算によって行われる。
Y = 0.299R + 0.587G + 0.114B ・・・(1)
Cb = −0.169R − 0.331G + 0.500B ・・・(2)
Cr = 0.500R − 0.419G − 0.081B ・・・(3)
【0036】
YCbCr表色系は、色差系であり、図3に示すように、紙面垂直方向の軸を輝度:Y、横軸を色差1:Cb、縦軸を色差2:Cr、とする直交座標系である。したがって、YCbCr表色系の画像データは、色相のパラメータを備えていない。そこで、次に、保存する色相を決定するために、表色系変換部108aの出力を座標系変換部108bに与えて、直交座標系を極座標系に変換(極座標変換)して色相のパラメータを備える画像データに変換する。座標系変換部108bによる変換処理により、色差系の画像データは、図4に示すような、色相−彩度系の画像データに変換される。なお、図4の紙面垂直方向の軸は明度である。この直交座標系から極座標系への座標系変換は、周知の演算処理によって実現することができる。
【0037】
座標系変換部108bによって色相−彩度系のデータに変換さえた画像データは、特定色決定部108cに与えられる。特定色決定部108cでは、入力された色相−彩度系の画像データに基づいて、保存する色相、つまり、印刷する画像に色を残す色相を決定する。具体的には、図5に示すように、色相−彩度系の座標空間に、入力された画像データの画素をマッピングし、マッピング結果に基づいて彩度が最も高い色相を保存する特定の色相として決定する。図5においては、網掛けで示した部分がマッピングされた画像データの画素である。そして、破線の円で示した範囲が最も高い彩度であり、実線Aで示した色相が最も彩度の高い色相である。そして、保存する特定の色相(実線Aで示した色相)を決定すると、更に、実線Aで示した色相の補色にあたる色相を決定する。図5において、破線Bで示した色相が実線Aで示した色相の補色にあたる。以下、実線Aで示した色相を「特定色相」、破線Bで示した色相を「補色色相」と呼ぶ。特定色決定部108cで決定された特定色相Aと補色色相Bとは、減色部108dに与えられる。
【0038】
減色部108dは、特定色決定部108cから与えられた特定色相Aと補色色相Bとに基づいて、座標系変換部108bから与えられた画像データを減色する。具体的には、図6に示すように、補色色相Bから両側に角度αの範囲(範囲C)の色相の画素をすべて補色色相Bに置き換え、範囲C以外の範囲(範囲D)の色相の画素をすべて特定色相Aに置き換える。そして、実線円で示した彩度が一定の値以下の範囲(範囲E)の画素については、彩度をゼロとしてモノクロとする。
【0039】
なお、減色部108dによる減色の方法としては、図6に示した上述の方法の他に、図7に示す方法とすることもできる。つまり、まず、補色色相Bから両側に角度αの範囲(範囲C)の色相の画素は、図6に示した方法と同様に、すべて補色色相Bに置き換える。そして、特定色相Aから両側に角度βの範囲(範囲F)の色相の画素をすべて特定色相Aに置き換える。更に、特定色相Aに置き換えた範囲Fと補色色相Bに置き換えた範囲Cと以外の範囲、即ち、範囲G及び範囲Hの画素について、彩度をゼロとしてモノクロとする。なお、実線円で示した範囲Eについては、図6に示した方法と同様に、彩度をゼロとする。
【0040】
このようにして減色された画像データは、座標系変換部108eに与えられる。座標系変換部108eでは、画像データをYCbCr表色系に戻すために、極座標系を直行座標系に変換する(極座標逆変換)。この極座標系からから直交座標系への座標系変換は、周知の演算処理によって実現することができる。
【0041】
減色されYCbCr表色系に変換された画像データは、表色系変換部108fに与えられる。表色系変換部108fでは、YCbCr表色系の画像データを、プリンタ111によって記録媒体に印刷するためにCMYK表色系の画像データに変換する。この表色系変換の処理は周知の演算処理によって実現することができる。そして、変換されたCMYK表色系の画像データは、プリンタ111に送られて、コピー用紙やOHPシートなどの記録媒体に印刷される。
【0042】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の減色処理では、画像処理部108の特定色相決定部108cにおける特定色相の決定の方法が第1の実施の形態の減色処理と異なる。第1の実施の形態では、最も彩度が高い色相を保存する特定の色相としたが、第2の実施の形態では、最も出現頻度の高い色相を特定の色相とする。つまり、特定色相決定部108cでは、与えられた画像データに基づいて、図8に示すような、例えば、赤の色相を0°として色相(度数)毎の出現頻度を示すヒストグラムを作成する。そして、このヒストグラムにおいて、最も出現頻度が高い色相を特定の色相とする。この場合、特定の色相から180°離れた色相が補色となる色相となる。
【0043】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態の減色処理では、特定色相決定部108cにおける、保存する特定の色相の決定の方法が第1及び第2の実施の形態と異なる。つまり、第3の実施の形態の減色処理では、ユーザの操作部105に対する入力操作によって特定の色相を決定する。例えば、コピーモードにおいて、操作部105に対して、保存色を指定した減色コピーを実行する操作を行うと、表示部106の液晶表示装置に、保存する色相(特定の色相)を指定するための画面が表示される。この表示画面には、例えば、赤、黄、緑、青、シアン、マゼンダ、イエローなどの色相の選択項目が表示され、ユーザが選択項目を指でタップすることによって指定する特定の色相を選択する。この場合、指定する色(特定の色相)を、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)のいずれかとすれば、プリンタ111のトナーは、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、及び、ブラック(K)であるので、特定の色相を印刷するために必要なトナーが一色のトナーのみとなり、使用するトナーを節約することができる。
【0044】
以上に説明したように、本発明のインターネットファクシミリ装置1では、原稿の画像の色の減色処理において、彩度や出現頻度に基づいて決定した特定の色相と、当該特定の色相の補色となる色相とを残すことによって減色を行う。したがって、減色した画像に補色が含まれるので、減色したにもかかわらず、高い色相コントラストを備えることが可能となる。
【0045】
なお、本発明の実施の形態は、上述の形態に限らず、発明の思想の範囲内で、種々に変更することができる。例えば、上述の実施の形態では、画像処理部108の減色部108d、座標系変換部108e、及び、表色系変換部108fの機能をそれぞれ別個の回路で処理することとしたが、これらの機能を図9に示すような、3次元ルックアップテーブルを用いて一括して処理するようにしてもよい。この場合、3次元ルックアップテーブルの入力座標となる分割格子点を、座標空間を立方体で分割した格子点ではなく、図10に示すような、扇柱O及び円弧台形柱Eで分割した場合の分割格子点とするとよい。入力データである色相−彩度系の画像データは極座標系であるので、このような格子点とすれば、格子点から離れた点(画素)の補間演算が容易になる。
【0046】
また、座標系変換部108b、特定色相決定部108c、減色部108d、及び、座標系変換部108eを一括したテーブル変換によって実現するようにしてもよい。
【0047】
さらに、第1の実施の形態においては、補色の色相の彩度が所定の閾値以上となる場合には、特定の色相と補色の色相とを保存して減色を行い、補色の色相の彩度が所定の閾値よりも低い場合には、補色の色相を保存せずに、特定の色相を保存して減色を行うようにしてもよい。
【0048】
また、第1の実施の形態においては、特定の色相の彩度に対する補色の色相の彩度の割合が所定の値以上である場合には、特定の色相と補色の色相とを保存して減色を行い、特定の色相の彩度に対する補色の色相の彩度の割合が所定の値よりも低い場合には、補色の色相を保存せずに、特定の色相を保存して減色を行うようにしてもよい。
【0049】
さらに、第2の実施の形態においては、画像データにおける補色の色相の出現頻度が所定の閾値以上となる場合には、特定の色相と補色の色相とを保存して減色を行い、補色の色相の出現頻度が所定の閾値よりも低い場合には、補色の色相を保存せずに、特定の色相を保存して減色を行うようにしてもよい。
【0050】
また、第2の実施の形態においては、画像データにおける特定の色相の出現頻度に対する同画像データにおける補色の色相の彩度の割合が所定の値以上である場合には、特定の色相と補色の色相とを保存して減色を行い、画像データにおける特定の色相の出現頻度に対する同画像データにおける補色の色相の出現頻度の割合が所定の値よりも低い場合には、補色の色相を保存せずに、特定の色相を保存して減色を行うようにしてもよい。
【0051】
さらに、上述の実施の形態では、減色された画像データをプリンタ111で記録紙などに印刷出力することとしたが、これに替えて、減色された画像データを、例えば、JPEG方式に符号化し、さらに、JPEG方式の画像データを含むTIFFファイルとして、インターネットファクシミリ装置1にLANを介して接続されているクライアントPCのフォルダに出力するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、例えば、原稿の画像の色を減色して出力する機能を備えた画像処理装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るインターネットファクシミリ装置1の構成例を示すブロック図である。
【図2】画像処理部108の構成例を示すブロック図である。
【図3】YCbCr表色系(色差系)の直交座標を示す説明図である。
【図4】色相−彩度系の極座標を示す説明図である。
【図5】彩度に基づく特定色相の決定方法を説明する説明図である。
【図6】特定色相と補色色相とに基づく減色の方法を説明する説明図である。
【図7】特定色相と補色色相とに基づく減色の方法を説明する説明図である。
【図8】色相の出現頻度に基づく特定色相の決定方法を説明する説明図である。
【図9】3次元ルックアップテーブルの一例を示す説明図である。
【図10】3次元ルックアップテーブルの分割格子点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 インターネットファクシミリ装置(画像処理装置)
101 CPU
103 RAM
105 操作部
106 表示部
108 画像処理部
108a 表色系変換部
108b 座標系変換部
108c 特定色相決定部
108d 減色部
108e 座標系変換部
108f 表色系変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像の色を減色して出力する機能を備えた画像処理装置であって、
原稿を読み取って画像データを生成する画像生成手段と、
前記画像データに含まれる特定の色相と、当該特定の色相の補色となる色相とを決定する色相決定手段と、
前記特定の色相と前記補色となる色相とを保存して、前記画像データを減色する減色手段と、
前記減色手段によって減色された前記画像データを出力する出力手段と、を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記減色手段は、前記補色となる色相から所定の範囲の色相である前記画像データを前記補色となる色相に置き換え、前記所定の範囲の色相以外の色相である前記画像データを前記特定の色相に置き換えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記減色手段は、前記特定の色相から所定の第1範囲の色相である前記画像データを前記特定の色相に置き換え、前記補色となる色相から所定の第2範囲の色相である前記画像データを前記補色となる色相に置き換え、前記第1範囲及び前記第2範囲の色相以外の色相である画像データの彩度をゼロにすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記色相決定手段は、前記画像データに含まれる色相のうち最も彩度が高い色相を前記特定の色相とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記減色手段は、前記補色となる色相の彩度が所定の閾値以上である場合に、前記特定の色相と前記補色となる色相とを保存して減色を行い、前記補色となる色相の彩度が前記所定の閾値よりも低い場合に、前記特定の色相を保存して減色を行うことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記減色手段は、前記特定の色相の彩度に対する前記補色となる色相の彩度の割合が所定の値以上である場合に、前記特定の色相と前記補色となる色相とを保存して減色を行い、前記割合が前記所定の値よりも低い場合に、前記特定の色相を保存して減色を行うことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記色相決定手段は、前記画像データに含まれる色相のうち最も出現頻度が高い色相を前記特定の色相とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記減色手段は、前記補色となる色相の出現頻度が所定の閾値以上である場合に、前記特定の色相と前記補色となる色相とを保存して減色を行い、前記補色となる色相の出現頻度が前記所定の閾値よりも低い場合に、前記特定の色相を保存して減色を行うことを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記減色手段は、前記特定の色相の出現頻度に対する前記補色となる色相の出現頻度の割合が所定の値以上である場合に、前記特定の色相と前記補色となる色相とを保存して減色を行い、前記割合が前記所定の値よりも低い場合に、前記特定の色相を保存して減色を行うことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項10】
外部からの入力操作を受け付ける入力受付手段を備え、
前記色相決定手段は、前記入力受付手段が受け付けた入力操作に基づいて前記特定の色相を決定し、当該決定した特定の色相に基づいて前記補色となる色相を決定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−236520(P2008−236520A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74775(P2007−74775)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】