説明

画像処理装置

【課題】操作手段を操作してジョブを設定する利用者の利便性が向上する画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像を処理するジョブを設定するための操作手段と、操作手段により設定されたジョブを受け付ける受付手段と、受付手段により受け付けられたジョブを実行する実行手段と、操作手段により新たなジョブが設定されたときに実行手段が別のジョブを実行中の場合に、実行手段が新たなジョブを実行可能になるまでに処理する処理量を把握する把握手段と、を備え、受付手段は、操作手段により新たなジョブが設定されたときに実行手段が別のジョブを実行中の場合は、当該新たなジョブを受け付けるか否かを、把握手段により把握された処理量に基づいて決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端末装置などの外部機器からインタフェース部を介してプリントジョブを受け付ける画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この画像形成装置では、他のプリントジョブの処理中に新規のプリントジョブを受け付けることができる(例えば、特許文献1参照)。
また、押しボタンや表示装置などで構成される操作部やパーソナルコンピュータ(PC)などが接続されるインタフェース部などを備え、利用者が操作部やPCを操作して設定したプリントジョブを受け付け、受け付けた順に処理する画像形成装置も一般に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−277665公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、利用者が設定したプリントジョブを受け付けた順に処理する画像形成装置では、利用者は画像形成装置の操作部でプリントジョブを設定したとき、設定したジョブが直ぐに実行されるものと予想し、設定したジョブの処理が終了するまで画像形成装置の前で待つことがある。
【0005】
この場合、処理中の他のプリントジョブが長時間を要するものである場合には、利用者は画像形成装置の前で長時間待たされることになる。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、操作手段を操作してジョブを設定する利用者の利便性が向上する画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、画像処理装置であって、画像を処理するジョブを設定するための操作手段と、前記操作手段により設定されたジョブを受け付ける受付手段と、前記受付手段により受け付けられたジョブを実行する実行手段と、前記操作手段により新たなジョブが設定されたときに前記実行手段が別のジョブを実行中の場合に、前記実行手段が新たなジョブを実行可能になるまでに処理する処理量を把握する把握手段と、を備え、前記受付手段は、前記操作手段により新たなジョブが設定されたときに前記実行手段が別のジョブを実行中の場合は、当該新たなジョブを受け付けるか否かを、前記把握手段により把握された処理量に基づいて決定する。
この発明によると、例えば処理量が所定量より多い場合は新たなジョブを受け付けないと決定するようにすると、利用者はジョブが受け付けられなければ「実行手段が新たなジョブを実行可能になるまでに処理する処理量」が多いことを知ることができる。
あるいは逆に、処理量が所定量より多い場合は新たなジョブを受け付けると決定するようにしても、利用者はジョブが受け付けられれば処理量が多いことを知ることができる。
利用者は、処理量が多い場合は自身が設定した新たなジョブが直ぐには実行されないことが判るので、操作手段の前で長時間待たなくてよい。
よってこの発明によると、操作手段を操作してジョブを設定する利用者の利便性が向上する。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の画像処理装置であって、前記受付手段は、前記処理量が所定量未満である場合は前記新たなジョブを受け付けると決定し、前記所定量以上の場合は受け付けないと決定する。
この発明によると、利用者は新たなジョブが受け付けられなければ前記処理量が多いことを知ることができる。
【0008】
第3の発明は、第1又は第2の発明の画像処理装置であって、前記把握手段は、前記処理量として、前記新たなジョブが設定されてから前記別のジョブが終了するまでに前記実行手段が処理する処理量を把握する。
別のジョブが終了するまで新たなジョブを実行できない場合には、上記処理量として、新たなジョブが設定されてから別のジョブが終了するまでに実行手段が処理する処理量を把握することにより、新たなジョブを受け付けるか否かを適切に判定できる。
【0009】
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明の画像処理装置であって、画像の処理方法が互いに異なる複数の前記実行手段と、前記別のジョブを実行中の第1の前記実行手段と前記新たなジョブを実行する第2の前記実行手段とが共通するか否かを判定する判定手段とを備え、前記受付手段は、前記判定手段により共通しないと判定された場合は前記処理量によらず前記新たなジョブを受け付ける。
別のジョブと新たなジョブとで実行手段が共通しない場合は前記処理量によらず新たなジョブを受け付けるようにすると、別のジョブと新たなジョブとを並行して実行することが可能になり、効率よくジョブを実行できる。
【0010】
第5の発明は、第4の発明の画像処理装置であって、複数の前記実行手段は、画像の入力及び出力の少なくとも一方を行う複数の入出力手段と、これらを互いに異なる組み合わせで制御して画像の入力及び出力を行わせる複数の制御手段とからなり、前記把握手段は、前記判定手段により、前記第1の実行手段が画像の入力に用いる前記入出力手段が、前記第2の実行手段が画像の入力に用いる前記入出力手段又は画像の出力に用いる前記入出力手段のいずれかと共通し、前記第1の実行手段が画像の出力に用いる前記入出力手段が、前記第2の実行手段が画像の入力に用いる前記入出力手段及び画像の出力に用いる前記入出力手段のいずれとも共通しないと判定された場合は、前記処理量として、前記第1の実行手段が画像の入力を終了するまでに処理する処理量を把握する。
この発明によると、第1の実行手段が画像の出力を終了するまでに処理する処理量を把握する場合に比べ、新たなジョブの実行をより早いタイミングで開始できる。
【0011】
第6の発明は、第5の発明の画像処理装置であって、前記受付手段により前記新たなジョブが受け付けられた場合に、前記判定手段により前記第1の実行手段が画像の出力に用いる前記入出力手段と前記第2の実行手段が画像の入力に用いる前記入出力手段とが共通しないと判定された場合は、前記第2の実行手段は、画像の入力を、前記第1の実行手段による画像の出力と並行して実行する、画像処理装置。
この発明によると、効率よくジョブを実行できる。
【0012】
第7の発明は、第2の発明の画像処理装置であって、前記処理量が前記所定量以上の場合に、利用者が認証情報を入力するための認証情報入力手段と、前記認証情報を認証する認証手段とを備え、前記受付手段は、前記認証手段による認証に成功した場合は前記処理量によらず前記新たなジョブを受け付ける。
このように、認証情報が与えられている利用者については処理量によらず新たなジョブを受け付けてもよい。
【0013】
第8の発明は、第7の発明の画像処理装置であって、前記認証情報入力手段は、前記実行手段が前記新たなジョブを実行可能になると利用者に前記認証情報の入力を要求し、前記実行手段は、前記新たなジョブを実行可能になった後、前記認証情報入力手段により認証情報が入力されると、前記新たなジョブを実行する。
認証情報が与えられている利用者が新たなジョブを設定した後に画像処理装置を離れると、離れている間に当該新たなジョブが実行され、処理結果を他の利用者に閲覧されてしまう虞がある。
この発明によると、新たなジョブを実行可能になった後、認証情報が入力されると当該新たなジョブを実行するので、認証情報を入力した利用者は実行手段が新たなジョブを実行可能になる頃を見計らって画像処理装置に戻り、認証情報を入力することにより、処理結果が他の利用者に閲覧される可能性を低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、操作手段を操作してジョブを設定する利用者の利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置の模式図。
【図2】実行手段が共通する組み合わせを示す表。
【図3】画像処理装置の処理を説明するためのタイミングチャート。
【図4】画像処理装置の処理を説明するためのタイミングチャート。
【図5】画像処理装置の処理を説明するためのタイミングチャート。
【図6】操作手段の模式図。
【図7】画像処理装置の処理を説明するためのタイミングチャート。
【図8】画像処理装置の処理の流れを示すフローチャート。
【図9】画像処理装置の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<一実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図9によって説明する。
(1)画像処理装置の構成
図1は、スキャナ機能、プリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能などを備える複合機1(画像処理装置の一例)の模式図である。
複合機1の筐体11(図1では一部のみを図示)は概ね箱形に形成されており、上部に第1プラテンガラス12と第2プラテンガラス13とが並設されている。
【0017】
原稿カバー15は第1プラテンガラス12を覆う閉姿勢と第1プラテンガラス12を開放する開姿勢とに回動可能に筐体11に連結されている。原稿カバー15は、ADF16(Auto Document Feeder)、画像が形成されている原稿が積載される原稿トレイ17、排紙トレイ18などを備えている。
ADF16は、搬送路19、一対の搬送ローラ20、一対の排紙ローラ21などの各種のローラ、これらを駆動する図示しないステッピングモータなどを有しており、原稿トレイ17に載置されている原稿を一枚ずつ搬送して第2プラテンガラス13上を通過させる。
【0018】
読取部25(実行手段の一例)はCIS(Contact Image Sensor)方式で原稿を読み取るように構成されており、複数の受光素子が紙面垂直方向に直線状に配列されているリニアイメージセンサ28、RGB3色の発光ダイオードなどで構成される光源29、原稿で反射された反射光をリニアイメージセンサ28の各受光素子に結像させるロッドレンズアレイ30、これらが搭載されるキャリッジ31、及びキャリッジ31を搬送する図示しない搬送機構などを備えている。なお、読取部25は縮小光学系を用いて原稿を読み取るものであってもよい。
【0019】
読取部25は、第1プラテンガラス12に載置されている原稿を読み取るときはキャリッジ31を第1プラテンガラス12の盤面に平行な副走査方向(図中のA方向)に一定速度で搬送しながら読み取り、ADF16によって搬送される原稿を読み取るときはキャリッジ31を第2プラテンガラス13の直下に停止させて読み取る。
【0020】
イメージセンサ制御部35(制御手段の一例)はASICとして構成されており、フレキシブルフラットケーブル34を介して読取部25に接続されている。イメージセンサ制御部35は読取部25を制御するとともに、読取部25から出力される画像データにゲイン調整、A/D変換などの処理を行う。
画像処理部36はASICとして構成されており、イメージセンサ制御部35から出力された画像データにガンマ補正、シェーディング補正、ノイズ除去、カラーバランス調整、拡大/縮小、色空間変換などの各種の処理を施す。
【0021】
CPU37(受付手段、実行手段、把握手段、判定手段、制御手段、認証情報入力手段、認証手段の一例)は、ROM38に記憶されている各種のプログラムを実行することにより複合機1の各部を制御する。
ROM38は、CPU37が実行する各種のプログラムなどを記憶している。
RAM39は、CPU37が各種の処理を実行するための主記憶装置として用いられる。
【0022】
ファクシミリ送受信部40(実行手段の一例)は、電話回線を介して電話交換機に接続され、所定のファクシミリ通信手順に従って画像データを送受信する。
印刷部41(実行手段の一例)は、画像データに基づいて紙などの被記録媒体にレーザー方式、インクジェット方式などで画像を形成する。
操作部42(操作手段、認証情報入力手段の一例)は、複数のボタン42A(図6参照)やLCD(Liquid Crystal Display)42B(図6参照)などで構成されており、利用者は例えばLCD42Bに表示される画面を参照しつつボタン42Aを操作することにより「画像を処理するジョブ」の設定などの各種の操作を行うことができる。
【0023】
インタフェース部43(実行手段の一例)は、複数のUSBインタフェース43A、LANなどの電気通信回線に接続されるネットワークインタフェース43Bなどで構成されている。各USBインタフェース43Aには、USBメモリやUSBハードディスクなどの着脱可能な外部記憶装置が接続される他、USBケーブルを介してパーソナルコンピュータ(PC)などが接続される。
【0024】
なお、インタフェース部43はUSB(Universal Serial Bus)以外の方法で外部記憶装置が接続されるように構成されてもよい。また、PCをインタフェース部43に接続する方法はUSBに限られるものではなく、接続方法は適宜選択可能である。
【0025】
読取部25は、画像の入力を行う入出力手段の一例である。
USBメモリが接続されているUSBインタフェース43A、USBケーブルが接続されているUSBインタフェース43A、及びネットワークインタフェース43Bは、画像の入力及び出力を行う入出力手段の一例である。
印刷部41、及びファクシミリ送受信部40は、画像の出力を行う入出力手段の一例である。なお、ファクシミリ送受信部40はファクシミリ受信することにより画像を入力することもできるが、本実施形態ではファクシミリ送信にのみ用いるので画像を出力する入出力手段としている。
【0026】
(2)画像を処理するジョブ
本実施形態において「画像を処理するジョブ」とは、画像を入力する入出力手段により画像を入力し、画像を出力する入出力手段によりその画像を出力する処理に関する一連の動作を定義した情報をいう。
本実施形態では、「画像を処理するジョブ」として、コピージョブ、PC印刷ジョブ、FAX送信ジョブ、PCスキャンジョブ、ネットワークスキャンジョブ、ダイレクト印刷ジョブ、及びスキャンtoUSBジョブを例に説明する。
【0027】
コピージョブは、読取部25で原稿を読み取って画像データを生成し、生成した画像データを印刷部41により被記録媒体に印刷するジョブである。
PC印刷ジョブは、USBケーブルを介してUSBインタフェース43Aに接続されているPCから送信される画像データを、印刷部41により被記録媒体に印刷するジョブである。PC印刷ジョブは他のジョブと異なり複合機1の操作部42ではなくPC側で設定される。
【0028】
FAX送信ジョブは、読取部25で原稿を読み取って画像データを生成し、生成した画像データをファクシミリ送受信部40によりファクシミリ送信するジョブである。
PCスキャンジョブは、読取部25により原稿を読み取って画像データを生成し、生成した画像データを、USBケーブルを介してUSBインタフェース43Aに接続されているPCに送信するジョブである。
【0029】
ネットワークスキャンジョブは、読取部25により原稿を読み取って画像データを生成し、生成した画像データを、電気通信回線を介してネットワークインタフェース43Bに接続されている外部のサーバなどに送信するジョブである。
【0030】
ダイレクト印刷ジョブは、USBインタフェース43Aに接続されている外部記憶装置から画像データを読み込み、読み込んだ画像データを印刷部41により被記録媒体に印刷するジョブである。以降の説明では外部記憶装置としてUSBメモリを例に説明する。
スキャンtoUSBジョブは、読取部25により原稿を読み取って画像データを生成し、生成した画像データを、USBインタフェース43Aに接続されているUSBメモリに記憶するジョブである。
【0031】
(3)実行手段
各種類のジョブはそれぞれ互いに異なる実行手段によって実行される。
一つの実行手段は、画像の入力に用いる入出力手段(以下、単に「入力手段」という)と、画像の出力に用いる入出力手段(以下、単に「出力手段」という)と、それらを制御して画像の入力及び出力を行わせるCPU37(制御手段の一例)とで構成される。CPU37は入出力手段を互いに異なる組み合わせで制御することにより、複数の制御手段として機能する。これにより複数の実行手段が構成される。
【0032】
(4)ジョブの衝突
利用者は、いずれかの実行手段がジョブ(以下「別のジョブ」という)を実行中のときでも、当該別のジョブを実行中の実行手段を含むいずれかの実行手段によって実行される新たなジョブを設定することができる。
この場合、別のジョブと新たなジョブとで実行手段が共通する可能性がある。本実施形態において実行手段が共通するとは、以下のような場合をいう。
【0033】
1)別のジョブを実行する実行手段と新たなジョブを実行する実行手段とで入力手段及び出力手段が共通する場合。
2)別のジョブを実行する実行手段と新たなジョブを実行する実行手段とで入力手段は共通せず、出力手段が共通する場合。
3)別のジョブを実行する実行手段の出力手段と、新たなジョブを実行する実行手段の入力手段とが共通する場合。
4)別のジョブを実行する実行手段の入力手段と、新たなジョブを実行する実行手段の出力手段とが共通する場合。
【0034】
実行手段が共通すると、共通する実行手段が別のジョブを実行中であることにより、新たなジョブを設定したタイミングによっては新たなジョブの実行が開始されるまでに実行待ちが発生する場合がある、あるいは新たなジョブの実行途中で実行待ちが発生する場合がある。本実施形態では別のジョブを実行中であることにより新たなジョブの実行待ちが発生することをジョブの衝突という。
【0035】
図2は、実行手段が共通する組み合わせを示す表である。図中において編み掛けされている組み合わせは、本実施形態では実行手段が共通しないとしている組み合わせである。図中の丸印は共通することを示し、バツ印は共通しないことを示している。
【0036】
例えば、入力手段及び出力手段が共に共通しない場合は、実行手段は共通しない。
この他、本実施形態では入力手段が共通して出力手段が共通しない場合であって、その共通する入力手段が読取部25である場合は、実行手段は共通しないとしている。以下、その理由について説明する。
【0037】
例えば、別のジョブがADF16の原稿トレイ17に載置されている原稿を読み取るジョブである場合、一般にADF16が動作中のときに第1プラテンガラス12に原稿を載置して読み取る新たなジョブが設定されることはない。従ってこの場合は別のジョブと新たなジョブとで読取部25が競合することはない。
【0038】
また、別のジョブが第1プラテンガラス12に載置されている原稿を読み取るジョブである場合は、ADF16の原稿トレイ17に原稿を載置して読み取る新たなジョブを設定できるが、第1プラテンガラス12に載置されている1枚の原稿の読み取りは比較的短時間に終了するので、競合したとしても僅かな時間である。
以上の理由により、共通する入力手段が読取部25である場合は、実行手段は共通しないとしている。
【0039】
この他、PC印刷ジョブはPC側で設定されるので、PC印刷ジョブが新たなジョブである場合には利用者は複合機1の前で待つことはない。そのため本実施形態ではPC印刷ジョブについては別のジョブとして設定される場合のみを説明し、PC印刷ジョブが新たなジョブとして設定される場合を除外している。
【0040】
図中の「USB Ca」はUSBケーブルが接続されているUSBインタフェース43Aを示しており、「USBメモリ」はUSBメモリが接続されているUSBインタフェース43Aを示している。また、「ネットワーク」はネットワークインタフェース43Bを示している。「ファクシミリ」はファクシミリ送受信部40を示している。
【0041】
図中の注1)は、PC印刷ジョブの入力手段(USB Ca)とPCスキャンジョブの出力手段(USB Ca)とが共通であることを示している。
図中の注2)は、ダイレクト印刷ジョブの入力手段(USBメモリ)とスキャンtoUSBジョブの出力手段(USBメモリ)とが共通であることを示している。
【0042】
以下、上述した1)〜4)の場合について、具体的に説明する。
(4−1)別のジョブを実行する実行手段と新たなジョブを実行する実行手段とで入力手段及び出力手段が共通する場合。
別のジョブと新たなジョブとが同種のジョブである場合は、別のジョブを実行する実行手段と新たなジョブを実行する実行手段とで入力手段が共通し、且つ出力手段も共通する。ここでは同種のジョブとしてコピージョブを例に説明する。
【0043】
例えば、別のコピージョブ(以下「別のコピージョブ1」という)が第1プラテンガラス12に載置されている原稿をコピーするコピージョブであるとする。この場合、別のコピージョブ1の実行中に、ADF16の原稿トレイ17に別の原稿を載置可能である。このため、他の利用者は別のコピージョブ1の実行中にADF16の原稿トレイ17に原稿を載置して新たなコピージョブ(以下「新たなコピージョブ2」という)を設定することができる。
【0044】
例えば別のコピージョブ1は第1プラテンガラス12に載置されている1枚の原稿を100枚コピーするコピージョブであり、今現在、原稿の読み取りを終了し、印刷部41により印刷中であるとする。そして、100枚中30枚を印刷したときに、他の利用者が新たなコピージョブ2を設定したとする。
この場合、別のコピージョブ1による読み取りは終了しているので、新たなコピージョブ2による読み取りは直ぐに開始できるが、新たなコピージョブ2による印刷は、別のコピージョブ1を実行する印刷部41による残り70枚分の印刷が終了するまで実行が開始されず、新たなコピージョブ2を設定した利用者は複合機の前で待たされることになる。
【0045】
(4−2)別のジョブを実行する実行手段と新たなジョブを実行する実行手段とで入力手段は共通せず、出力手段が共通する場合。
別のジョブの種類と新たなジョブの種類とが異なる場合は、別のジョブを実行する実行手段と新たなジョブを実行する実行手段とで入力手段は共通せず、出力手段が共通する場合がある。例えば別のジョブがPC印刷ジョブであり、新たなジョブがコピージョブである場合は、入力手段は共通せず、出力手段が共通する。
【0046】
例えば、別のPC印刷ジョブは1つの画像データを100枚分印刷するジョブであるとする。そして、100枚中30枚を印刷したときに、他の利用者が新たなコピージョブを設定したとする。
この場合、新たなコピージョブによる印刷は、別のPC印刷ジョブを実行する印刷部41による残り70枚分の印刷が終了するまで実行が開始されず、新たなコピージョブを設定した利用者は複合機の前で待たされることになる。
【0047】
(4−3)別のジョブを実行する実行手段の出力手段が、新たなジョブを実行する実行手段の入力手段と共通する場合。
別のジョブの種類と新たなジョブの種類とが異なる場合は、別のジョブを実行する実行手段の出力手段が、新たなジョブを実行する実行手段の入力手段と共通する場合がある。例えば別のジョブがスキャンtoUSBジョブであり、新たなジョブがダイレクト印刷ジョブである場合は、別のジョブの出力手段(USBメモリ)と新たなジョブの入力手段(USBメモリ)とが共通することになる。
【0048】
例えば、別のスキャンtoUSBジョブは100枚の原稿を読み取って原稿毎の画像データを第1のUSBメモリに書き込むジョブであるとする。そして、100枚中30枚分の原稿を読み取って画像データを書き込んだときに、他の利用者が別のUSBポートに第2のUSBメモリを接続して新たなダイレクト印刷ジョブを設定したとする。
【0049】
この場合、同時に一方のUSBメモリへのアクセスしかできないとすると、新たなダイレクト印刷ジョブによる第2のUSBメモリからの読み込みは、別のスキャンtoUSBジョブを実行する読取部25による残り70枚分の原稿の読み取りとUSBインタフェース43Aによる第1のUSBメモリへの残り70枚分の画像データの書き込みとが終了するまで実行が開始されない。このため、新たなダイレクト印刷ジョブを設定した利用者は複合機の前で待たされることになる。
【0050】
(4−4)別のジョブを実行する実行手段の入力手段が、新たなジョブを実行する実行手段の出力手段と共通する場合。
上述した例とは逆に、別のジョブがダイレクト印刷ジョブであり、新たなジョブがスキャンtoUSBジョブである場合は、別のジョブの入力手段(USBメモリ)と新たなジョブの出力手段(USBメモリ)とが共通することになる。
【0051】
例えば、別のダイレクト印刷ジョブは100枚分の画像データを第2のUSBメモリから1画像データずつ読み込んで印刷するジョブであるとする。そして、100枚中30枚分の画像データを読み込んで印刷したときに、他の利用者が別のUSBポートに第1のUSBメモリを接続して新たなスキャンtoUSBジョブを設定したとする。
【0052】
この場合、新たなスキャンtoUSBジョブによる第1のUSBメモリへの書き込みは、別のダイレクト印刷ジョブを実行するUSBインタフェース43Aによる第2のUSBメモリからの残り70枚分の画像データの読み込みと印刷部41による残り69枚分の画像データの印刷とが終了するまで実行が開始されない。このため、新たなスキャンtoUSBジョブを設定した利用者は複合機の前で待たされることになる。
【0053】
ここで印刷部41の印刷枚数が69枚であるのは、最後の一枚分の画像データを印刷しているときUSBインタフェース43Aは別のダイレクト印刷ジョブによる第2のUSBメモリからの画像データの読み込みを終了しているからである。第2のUSBメモリからの画像データの読み込みが終了していれば、新たなスキャンtoUSBジョブによる第1のUSBメモリへの画像データの書き込みを開始できるので、最後の一枚分の画像データについては印刷が終了するのを待たなくてよい。
【0054】
(5)複合機1の処理概要
上述したように、ジョブが衝突すると新たなジョブの実行待ちにより利用者は複合機の前で待たされることになる。
そこで、本実施形態では、新たなジョブが設定されたときに実行手段が別のジョブを実行中の場合は、新たなジョブを受け付けるか否かを、実行手段が新たなジョブを実行可能になるまでに処理する処理量に基づいて決定する。
【0055】
ここで「実行手段が新たなジョブを実行可能になるまで」とは、新たなジョブを別のジョブと衝突することなく実行できるようになるまでのことをいい、上述した1)〜3)の場合には別のジョブの出力手段が当該別のジョブの実行を終了するまで、言い換えると別のジョブの実行が終了するまでである。
上述した4)の場合には、別のジョブの入力手段が当該別のジョブの実行を終了するまでである。この場合は別のジョブの実行が終了する前に新たなジョブを実行可能になる。
【0056】
「実行手段が新たなジョブを実行可能になるまでに処理する処理量」は、上述した1)〜3)の場合には、新たなジョブが設定されたときに別のジョブの入力手段が当該別のジョブの実行を終了しているか否かによって異なる。
別のジョブの入力手段が当該別のジョブの実行を終了していない場合は、その入力手段が当該別のジョブについて処理する残りの処理量と、別のジョブの出力手段が当該別のジョブについて処理する残りの処理量(別のジョブの出力手段が当該別のジョブの実行を開始していない場合は、その出力手段がこれから当該別のジョブについて処理する全処理量)との合計である。
一方、別のジョブの入力手段が当該別のジョブの実行を終了している場合は、別のジョブの出力手段が当該別のジョブについて処理する残りの処理量である。
【0057】
上述した4)の場合には、別のジョブの入力手段が当該別のジョブについて処理する残りの処理量である。ただし、入力手段と出力手段とが並行して当該別のジョブを実行する場合は、入力手段が当該別のジョブの実行を終了するまでに出力手段が処理する処理量との合計である。
【0058】
以下、上述した1)の場合を例に、複合機1の処理をより具体的に説明する。以下の説明では同種のジョブとしてコピージョブを例に説明する。
図3は、複合機1の処理を説明するためのタイミングチャートである。図示する例では別のコピージョブ1は第1プラテンガラス12に載置されている1枚の原稿を100枚分コピーするコピージョブであり、今現在、読取部25による読み取り中であり、原稿を長辺方向に1/3まで読み取り済みであるとする。そして、新たなコピージョブ2はADF16に載置されている原稿をコピーするコピージョブであるとする。
【0059】
複合機1は、新たなコピージョブ2が設定されると、「実行手段が新たなジョブを実行可能になるまでに処理する処理量」を把握する。すなわち、複合機1は、読取部25が別のコピージョブ1について処理する残りの処理量と、印刷部41がこれから別のコピージョブ1について処理する全処理量との合計を把握する。
本実施形態では、読取部25の処理量を、原稿の副走査方向の幅によって把握するものとする。従って、読取部25が処理する残りの処理量は、読み取り中の原稿の未だ読み取られていない領域の副走査方向の幅、すなわち原稿の長辺方向に2/3の幅として把握される。なお、読取部25の処理量は原稿の面積によって把握されてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、印刷部41の処理量を、印刷するデータ量によって把握するものとする。図示する例では印刷部41は別のコピージョブ1の実行を開始していないので、印刷部41が処理する残りの処理量は、読取部25が原稿を読み取って生成する画像データのデータ量×100として把握される
【0061】
前述したように、本実施形態では新たなコピージョブ2を受け付けるか否かを、把握した処理量に基づいて決定するが、把握した処理量から直接決定するのではなく、別のコピージョブ1による印刷が終了するまでの残り時間を処理量から推定し、推定した残り時間(以下「推定時間」という)に基づいて決定する。
例えば、読取部25が原稿の残り2/3を読み取るのに要する時間を読取条件などから推定するとともに、原稿を読み取って生成された画像データを印刷部41が1枚印刷するのに要する標準的な時間を100倍することによって印刷に要する時間を推定し、それらの時間の合計を推定時間とする。
【0062】
ところで、原稿の読み取りと印刷とを並行して実行できる場合は、原稿の読み取りが終了するのを待たずに印刷を開始できる。原稿の読み取りが終了するのを待たずに印刷を開始できる場合は、印刷を開始してから原稿の読み取りが終了するまでの時間分だけ推定時間を短縮することができる。つまり、本実施形態では、入力手段と出力手段とが一つのジョブを並行して実行している場合は、その並行して実行している間に入力手段が処理する処理量を除外した処理量に基づいて、新たなコピージョブ2を受け付けるか否かを決定する。
【0063】
複合機1は、推定時間が所定時間(所定量の一例)未満のときは新たなコピージョブ2を受け付けると決定し、所定時間以上のときは受け付けないと決定する。この所定時間を1分とすると、図示する例では推定時間が30秒であり、1分未満であるので、新たなコピージョブ2を受け付けると決定する。なお、所定時間を1分とするかは適宜選択可能な設計事項である。
【0064】
ところで、推定時間は30秒であるが、読取部25がコピージョブ1による読み取りを終了するのはそれよりも前の時点である。複合機1は読取部25による原稿の読み取りと印刷部41による印刷とを並行して実行可能であり、複合機1はコピージョブ1による読み取りが終了すると、コピージョブ1による印刷が終了するのを待つことなくコピージョブ2による読み取りを開始する。
【0065】
図4は、複合機1の処理を説明するための別のタイミングチャートである。図示する例では別のコピージョブ1はADF16の原稿トレイ17に載置されている1枚の原稿を100枚分コピーするコピージョブであり、今現在、読取部25による読み取りを終了しており、印刷部41により100枚中30枚まで印刷が終了しているとする。
【0066】
新たなコピージョブ2は第1プラテンガラスに載置されている原稿を読み取るコピージョブであるとする。
「実行手段が新たなジョブを実行可能になるまでに処理する処理量」は、別のコピージョブ1の出力手段(印刷部41)が処理する残りの処理量として把握される。すなわち、画像データのデータ量×70として把握される。
図示する例では推定時間は30秒であり、1分未満であるので、新たなコピージョブ2を受け付けると決定する。新たなコピージョブ2を受け付けたとき、コピージョブ1による読み取りは既に終了しているので、複合機1は直ちにコピージョブ2による読み取りを開始する。
【0067】
図5は、複合機1の処理を説明するための別のタイミングチャートである。図示する例では新たなコピージョブ2が設定されたときに複合機1が別のコピージョブ1による印刷を実行中であり、推定時間が1分30秒である。推定時間が1分以上であるので、複合機1はコピージョブ2を受け付けないと決定する。
コピージョブ2を受け付けない場合は、複合機1はコピージョブを受け付けない旨を利用者に報知する。本実施形態では操作部42のLCD42Bにその旨のメッセージを表示することによって報知する。
【0068】
図6は、操作部42を示す模式図である。図示するように複合機1はLCD42Bに「前の印刷に時間がかかります。ジョブを受け付けません。」というメッセージを表示する。これにより、利用者はコピーが受け付けられなかったことを知ることができる。なお、利用者へのコピージョブを受け付けない旨の報知は音声案内などの他の方法で行ってもよい。
【0069】
図7は、複合機1の処理を説明するための別のタイミングチャートである。図示する例では新たなコピージョブ2が設定されたときに複合機1が別のコピージョブ1による読み取りを実行中である。図示する例では推定時間が1分30秒である。
ところで、仮に新たなコピージョブ2を無条件に受け付けるようにしたとすると、別のコピージョブ1が長時間を要するものである場合には、新たなコピージョブ2を設定した利用者は複合機の前で長時間待たされることになり、待ち切れずに途中で複合機1から離れてしまう可能性がある。利用者が複合機1を離れると、離れている間に新たなコピージョブ2が実行され、印刷結果を他の利用者に閲覧されてしまう虞がある。推定時間が長い場合(1分以上の場合)は新たなコピージョブ2を受け付けないようにすると、そのようなことが起き難くなるので、セキュリティの面からも望ましい。
【0070】
ただし、推定時間が長い場合でも、印刷結果を他の利用者に閲覧されてしまう虞がないのであれば、利用者によっては新たなコピージョブ2が受け付けられた方が利便性がよいと考える場合もある。例えば、新たなコピージョブ2が受け付けられず、それにより利用者が複合機1から一端離れている間に、他の利用者に先に新たなコピージョブ2を設定されてしまうこともあるからである。
【0071】
そこで、複合機1は、推定時間が1分を超えていても、新たなコピージョブ2を設定した利用者がセキュリティ機能を利用可能な場合には、例外的に新たなコピージョブ2を受け付ける。
具体的には、複合機1は、前述したコピージョブを受け付けない旨のメッセージを表示する前に、LCD42BにユーザID及びパスワードを入力するように促すメッセージを表示する。ユーザID及びパスワードは認証情報の一例である。
【0072】
利用者がユーザID及びパスワードを入力した場合は、複合機1は入力されたユーザID及びパスワードに対してセキュリティ機能の利用が許可されているか否かを判定する。複合機1は、セキュリティ機能の利用が許可されていれば、新たなコピージョブ2を受け付ける。このとき、複合機1は入力されたユーザID及びパスワードを新たなコピージョブ2に対応付けて記憶する。
【0073】
一方、利用者がユーザID及びパスワードを入力しない場合、又は入力されたユーザID及びパスワードに対してセキュリティ機能の利用が許可されていない場合は、新たなコピージョブ2を受け付けず、コピージョブを受け付けない旨のメッセージを表示する。
複合機1は、セキュリティ機能の利用が許可されていることにより新たなコピージョブ2を受け付けた場合は、別のコピージョブ1による印刷が終了した時点で直ちに新たなコピージョブ2による印刷を開始するのではなく、新たなコピージョブ2に対応するユーザID及びパスワードが入力されるまで待機し、入力されると印刷を開始する。
【0074】
このようにすると、他の利用者に先に新たなコピージョブ2を設定されてしまうことを防止できるとともに、新たなコピージョブ2を設定した利用者が複合機1から離れている間に印刷結果を他の利用者に閲覧されてしまうことを防止できる。
【0075】
(6)複合機の処理
複合機1は、操作部42により新たなジョブが設定されると、別のジョブを実行中でなければ新たなジョブを受け付けて直ちに実行を開始する。
また、複合機1は、操作部42により新たなジョブが設定されたときに別のジョブを実行中の場合は、別のジョブを実行中の実行手段(第1の実行手段という)と新たなジョブを実行する実行手段(第2の実行手段という)とが共通するか否かを判定し、共通しないと判定した場合(図2に編み掛けで示す組み合わせの場合)は、「実行手段が新たなジョブを実行可能になるまでに処理する処理量」によらず、新たなジョブを受け付けて直ちに実行を開始する。
【0076】
一方、複合機1は、第1の実行手段と第2の実行手段とが共通すると判定した場合は、新たなジョブを受け付けるか否かを処理量に基づいて決定する。
以下、第1の実行手段と第2の実行手段とが共通すると判定した後の複合機1の処理について説明する。
【0077】
(6−1)全体処理
図8は、第1の実行手段と第2の実行手段とが共通すると判定した後の複合機の全体処理の流れを示すフローチャートである。ここでは別のジョブ及び新たなジョブがいずれもコピージョブである場合を例に説明する。
【0078】
S101では、CPU37は、新たなコピージョブを実行可能になるまでの推定時間Tを求める。
S102では、CPU37は推定時間Tが1分未満であるか否かを判定する。CPU37は、推定時間Tが1分未満であるときは新たなコピージョブを受け付けると決定してS103に進み、推定時間Tが1分以上であるときはS107に進む。
S103では、CPU37は新たなコピージョブを受け付ける。具体的には例えば、CPU37は新たなコピージョブをジョブの実行リストに追加する。
【0079】
S104では、CPU37は読取部25が別のコピージョブによる読み取りを終了していれば直ちに新たなコピージョブによる原稿の読み取りを実行し、終了していなければ終了するのを待って新たなコピージョブによる原稿の読み取りを実行する。
S105では、CPU37は別のコピージョブの印刷が終了したか否かを一定時間間隔で判定し、別のコピージョブの印刷が終了するとS106に進む。
【0080】
S106では、CPU37は新たなコピージョブによる印刷を実行する。
S107では、CPU37はLCD42Bに認証情報(ユーザID及びパスワード)の入力を促すメッセージを表示する。
S108では、CPU37は認証情報が入力されたか否かを判定する。CPU37は認証情報が入力されないか又は入力された認証情報の認証に失敗した場合はS109に進み、認証情報が入力されてその認証に成功した場合はS110に進む。
【0081】
S109では、CPU37はS108で認証情報の入力を促してから所定の待機時間が経過したか否かを判定する。CPU37は、S108で認証情報の入力を促した後、一定時間待機し、その間に認証情報が入力されなければ、認証情報は入力されなかったとする。この一定時間が待機時間である。CPU37は待機時間が経過していない場合はS108に戻り、経過した場合はS111に進む。
【0082】
S110では、認証情報を入力した利用者がセキュリティ機能の利用が許可されているか否かを入力された認証情報に基づいて判定する。CPU37はセキュリティ機能の利用が許可されていない利用者である場合はS111に進み、許可されている利用者である場合はS112に進む。
【0083】
S111では、CPU37はコピージョブを受け付けないと決定し、前述したコピーを受け付けない旨のメッセージを表示して処理を終了する。
S112では、CPU37は新たなコピージョブを受け付け、「セキュリティ機能動作時のコピー処理」を実行する。
【0084】
(6−2)セキュリティ機能動作時のコピー処理
S201では、CPU37は読取部25が別のコピージョブによる読み取りを終了するのを待って新たなコピージョブによる原稿の読み取りを実行する。
S202では、CPU37はS201で原稿を読み取って生成した画像データをRAM39に記憶する。
S203では、CPU37は別のコピージョブの印刷が終了したか否かを一定時間間隔で判定し、別のコピージョブの印刷が終了するとS204に進む。
【0085】
S204では、CPU37は「Secure Print」ボタンが押下されたか否かを判定する。CPU37は「Secure Print」ボタンが押下されていない場合はS205に進み、押下された場合はS207に進み、
S205では、CPU37はS201で生成した画像データの保存時間が経過したか否かを判定する。CPU37は、S202で画像データをRAM39に記憶した後、一定時間その画像データを記憶し、その間に「Secure Print」ボタンが押下されなければ、利用者には画像データを印刷する意思がないと判断し、RAM39に記憶している画像データを消去する。この一定時間が保存時間である。CPU37は保存時間が経過していない場合はS204に戻り、経過した場合はS206に進む。
【0086】
S206では、CPU37はRAM39から画像データを消去して処理を終了する。
S207では、CPU37はLCD42Bに認証情報(ユーザID及びパスワード)の入力を促すメッセージを表示する。
S208では、CPU37は認証情報が入力されたか否かを判定する。CPU37は認証情報が入力されないか又は入力された認証情報の認証に失敗した場合はS209に進み、認証情報が入力されてその認証に成功した場合はS211に進む。
【0087】
S209では、CPU37はS204で「Secure Print」ボタンが押下されてから所定の待機時間が経過したか否かを判定する。CPU37は待機時間が経過していない場合はS208に戻り、経過した場合はS210に進む。
S210では、CPU37はS207でLCD42Bに表示したメッセージを消してS204に戻る。
S211では、CPU37は新たなコピージョブによる印刷を実行する。
【0088】
(7)実施形態の効果
以上説明した本発明の一実施形態に係る複合機1によると、「実行手段が新たなジョブを実行可能になるまでに処理する処理量」が所定量より多い場合は新たなジョブを受け付けないと決定する。新たなジョブを設定した利用者は、ジョブが受け付けられないことにより処理量が多いことを知ることができ、それにより自身が設定した新たなジョブが直ぐには実行されないことが判るので、複合機の前で長時間待たなくてよい。
よって複合機1によると、操作部42を操作してジョブを設定する利用者の利便性が向上する。
【0089】
更に、複合機1によると、例えば上述した1)〜3)の場合には「実行手段が新たなジョブを実行可能になるまでに処理する処理量」として、新たなジョブが設定されてから別のジョブが終了するまでに実行手段が処理する処理量を把握する。
別のジョブが終了するまで新たなジョブを実行できない場合は、新たなジョブが設定されてから別のジョブが終了するまでに別のジョブの実行手段が処理する処理量を把握することにより、新たなジョブを受け付けるか否かを適切に判定できる。
【0090】
更に、複合機1によると、別のジョブを実行中の実行手段(第1の実行手段)と新たなジョブを実行する実行手段(第2の実行手段)とが共通しない場合は「実行手段が新たなジョブを実行可能になるまでに処理する処理量」によらず新たなジョブを受け付けるので、別のジョブと新たなジョブとを並行して実行することが可能になり、効率よくジョブを実行できる。
【0091】
更に、複合機1によると、第1の実行手段の入力手段が第2の実行手段の入力手段又は出力手段のいずれかと共通し、第1の実行手段の出力手段が第2の実行手段の入力手段及び出力手段のいずれとも共通しないと判定された場合は、処理量として、第1の実行手段が画像の入力を終了するまでに処理する処理量を把握する。
例えば、別のダイレクト印刷ジョブの入力手段(USBメモリ)は新たなスキャンtoUSBジョブの出力手段(USBメモリ)と共通し、別のダイレクト印刷ジョブの出力手段(印刷部41)は、新たなスキャンtoUSBジョブの入力手段(読取部25)及び出力手段(USBメモリ)のいずれとも共通しない。この場合は、別のダイレクト印刷ジョブによる画像の入力が終了した時点で、新たなスキャンtoUSBジョブの実行が可能になる。
従ってこの場合は、別のダイレクト印刷ジョブがUSBメモリから画像の読み込みを終了するまでに処理する処理量を把握することにより、別のダイレクト印刷ジョブを実行する実行手段(第1の実行手段)が画像の出力を終了するまでに処理する処理量を把握する場合に比べ、新たなスキャンtoUSBジョブの実行をより早いタイミングで開始できる。
【0092】
更に、複合機1によると、第1の実行手段の出力手段と第2の実行手段の入力手段とが共通しない場合は、第2の実行手段は、画像の入力を、第1の実行手段による画像の出力と並行して実行する。
例えば、別のジョブがコピージョブであり、新たなジョブもコピージョブである場合、別のコピージョブを実行する第1の実行手段の出力手段(印刷部41)と新たなコピージョブを実行する第2の実行手段の入力手段(読取部25)とは共通しないので、第2の実行手段は、読取部25による画像の読み取りを、第1の実行手段の出力手段(印刷部41)による画像の印刷と並行して実行する。これにより、効率よくジョブを実行できる。
【0093】
更に、複合機1によると、認証情報が与えられている利用者については処理量によらず新たなジョブを受け付ける。そして、新たなジョブを実行可能になった後、認証情報が入力されると、当該新たなジョブを実行する。認証情報が与えられている利用者が新たなジョブを設定した後に複合機1を離れると、離れている間に当該新たなジョブが実行され、処理結果を他の利用者に閲覧されてしまう虞がある。複合機1によると、新たなジョブを実行可能になった後、認証情報が入力されると当該新たなジョブを実行するので、認証情報が与えられている利用者は実行手段が新たなジョブを実行可能になる頃を見計らって複合機1に戻り、認証情報を入力することにより、処理結果が他の利用者に閲覧される可能性を低減できる。
【0094】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0095】
(1)上記実施形態では処理量が所定量より多い場合は新たなジョブを受け付けないと決定する場合を例に説明したが、これとは逆に、処理量が所定量より多い場合は新たなジョブを受け付けると決定するようにしてもよい。この場合は、利用者はジョブが受け付けられることにより処理量が多いことを知ることができ、それにより自身が設定した新たなジョブが直ぐには実行されないことが判る。
【0096】
(2)上記実施形態では新たなジョブを実行可能になるまでの時間を処理量から推定し、新たなジョブを受け付けるか否かを推定した時間(推定時間)に基づいて決定する場合を例に説明したが、把握した処理量から直接決定してもよい。処理量と推定時間とには相関関係があるので、処理量が多い場合は別のジョブによる処理が終了するまでの時間も長いとして、時間を推定することなく新たなジョブを受け付けないと決定してもよい。
【0097】
(3)上記実施形態では推定時間と比較される所定時間(所定量の一例)が一定である場合を例に説明したが、新たなジョブの実行に要する時間に応じて異なる所定時間と比較するようにしてもよい。
例えば、新たなジョブは短時間に終了するジョブである場合、新たなジョブを設定する利用者は例えば50秒という時間でも長く感じることもある。逆に、新たなジョブは長時間を要するものである場合、新たなジョブを設定する利用者は50秒という時間をさほど長く感じない場合もある。
従って、新たなジョブの実行に要する時間と待ち時間との関係について利用者が感じる印象を調べ、その結果に基づいて、新たなジョブの実行に要する時間に応じて所定時間を設定するようにしてもよい。
【0098】
(4)上記実施形態では画像を処理するジョブとして図2に挙げるジョブを例に説明したが、画像を処理するジョブはこれらに限られるものではなく、画像処理装置が備える機能に応じて他のジョブを設定できるようにしてもよい。
【0099】
(5)上記実施形態では画像処理装置として複合機を例に説明したが、画像処理装置は一つの機器として構成されなくてもよく、例えばPCとそのPCに接続されているイメージスキャナやプリンタとによって構成してもよい。
【0100】
(6)上記実施形態では「実行手段が新たなジョブを実行可能になるまでに処理する処理量」として、「別のジョブの実行が終了するまでに処理する処理量」及び「別のジョブの入力手段が当該別のジョブの実行を終了するまでに処理する処理量」を把握する場合を例に説明したが、別のジョブの残り処理量も別のジョブ全体の処理量もさほど変わらない場合には、別のジョブ全体の処理量を把握してもよい。
【符号の説明】
【0101】
1…複合機(画像処理装置)
25…読取部(実行手段、入出力手段)
35…イメージセンサ制御部(制御手段)
CPU37(受付手段、実行手段、把握手段、判定手段、制御手段、認証情報入力手段、認証手段)
40…ファクシミリ送受信部(実行手段、入出力手段)
41…印刷部(実行手段、入出力手段)
42…操作部(操作手段、認証情報入力手段)
43…インタフェース部(実行手段、入出力手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を処理するジョブを設定するための操作手段と、
前記操作手段により設定されたジョブを受け付ける受付手段と、
前記受付手段により受け付けられたジョブを実行する実行手段と、
前記操作手段により新たなジョブが設定されたときに前記実行手段が別のジョブを実行中の場合に、前記実行手段が新たなジョブを実行可能になるまでに処理する処理量を把握する把握手段と、
を備え、
前記受付手段は、前記操作手段により新たなジョブが設定されたときに前記実行手段が別のジョブを実行中の場合は、当該新たなジョブを受け付けるか否かを、前記把握手段により把握された処理量に基づいて決定する、画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記受付手段は、前記処理量が所定量未満である場合は前記新たなジョブを受け付けると決定し、前記所定量以上の場合は受け付けないと決定する、画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記把握手段は、前記処理量として、前記新たなジョブが設定されてから前記別のジョブが終了するまでに前記実行手段が処理する処理量を把握する、画像処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像処理装置であって、
画像の処理方法が互いに異なる複数の前記実行手段と、
前記別のジョブを実行中の第1の前記実行手段と前記新たなジョブを実行する第2の前記実行手段とが共通するか否かを判定する判定手段とを備え、
前記受付手段は、前記判定手段により共通しないと判定された場合は前記処理量によらず前記新たなジョブを受け付ける、画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置であって、
複数の前記実行手段は、画像の入力及び出力の少なくとも一方を行う複数の入出力手段と、これらを互いに異なる組み合わせで制御して画像の入力及び出力を行わせる複数の制御手段とからなり、
前記判定手段は、前記第1の実行手段と前記第2の実行手段とで前記入出力手段が共通するか否かを判定し、
前記把握手段は、前記判定手段により、前記第1の実行手段が画像の入力に用いる前記入出力手段が、前記第2の実行手段が画像の入力に用いる前記入出力手段又は画像の出力に用いる前記入出力手段のいずれかと共通し、前記第1の実行手段が画像の出力に用いる前記入出力手段が、前記第2の実行手段が画像の入力に用いる前記入出力手段及び画像の出力に用いる前記入出力手段のいずれとも共通しないと判定された場合は、前記処理量として、前記第1の実行手段が画像の入力を終了するまでに処理する処理量を把握する、画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置であって、
前記受付手段により前記新たなジョブが受け付けられた場合に、前記判定手段により前記第1の実行手段が画像の出力に用いる前記入出力手段と前記第2の実行手段が画像の入力に用いる前記入出力手段とが共通しないと判定された場合は、前記第2の実行手段は、画像の入力を、前記第1の実行手段による画像の出力と並行して実行する、画像処理装置。
【請求項7】
請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記処理量が前記所定量以上の場合に、利用者が認証情報を入力するための認証情報入力手段と、
前記認証情報を認証する認証手段とを備え、
前記受付手段は、前記認証手段による認証に成功した場合は前記処理量によらず前記新たなジョブを受け付ける、画像処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像処理装置であって、
前記認証情報入力手段は、前記実行手段が前記新たなジョブを実行可能になると利用者に前記認証情報の入力を要求し、
前記実行手段は、前記新たなジョブを実行可能になった後、前記認証情報入力手段により認証情報が入力されると、前記新たなジョブを実行する、画像処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−178166(P2010−178166A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20067(P2009−20067)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】