画像処理装置
【課題】ウィンドウ内で複数の異なる性質を有する領域の有無を判定できる画像処理装置を得る。
【解決手段】局所領域を設定する局所領域設定部2と、局所領域のコヒーレンスを算出する局所領域コヒーレンス算出部3と、局所領域を複数のサブウィンドウに分割するサブウィンドウ設定部7と、コヒーレンスの理論平均値を算出する理論平均値算出部4と、コヒーレンスの理論標準偏差を算出する理論標準偏差算出部5と、閾値を算出する閾値算出処理部6と、各サブウィンドウのコヒーレンスを算出するサブウィンドウコヒーレンス算出部8と、各サブウィンドウのコヒーレンスの平均値を算出する平均処理部9と、閾値及び前記サブウィンドウのコヒーレンスの平均値の閾値処理に基づき、局所領域が一様な領域であるのか、局所領域内に異なる性質を有する領域の境界が含まれるのかを判定する境界領域判定処理部10とを設けた。
【解決手段】局所領域を設定する局所領域設定部2と、局所領域のコヒーレンスを算出する局所領域コヒーレンス算出部3と、局所領域を複数のサブウィンドウに分割するサブウィンドウ設定部7と、コヒーレンスの理論平均値を算出する理論平均値算出部4と、コヒーレンスの理論標準偏差を算出する理論標準偏差算出部5と、閾値を算出する閾値算出処理部6と、各サブウィンドウのコヒーレンスを算出するサブウィンドウコヒーレンス算出部8と、各サブウィンドウのコヒーレンスの平均値を算出する平均処理部9と、閾値及び前記サブウィンドウのコヒーレンスの平均値の閾値処理に基づき、局所領域が一様な領域であるのか、局所領域内に異なる性質を有する領域の境界が含まれるのかを判定する境界領域判定処理部10とを設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2枚のレーダ画像間の複素相関であるコヒーレンスを注目画素とその近傍画素により構成される局所領域(ウィンドウ)内における複数の異なる性質(コヒーレンス)を有する領域の有無を判定する画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
取得時間の異なる2枚の合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)画像から、2枚のSAR画像取得時間の間に地表面に生じた変化を抽出するための技術の1つにCCD(Coherent Change Detection)がある。このCCDでは、SAR画像の輝度情報に加えて位相情報をも利用した変化抽出を実施するため、輝度変化では現れないような微小な変化に対しても感度が高いという特長がある。
【0003】
CCDでは、2枚のSAR画像間の複素相関値(コヒーレンス)を指標として変化抽出を実施する。この2枚の画像間の複素相関であるコヒーレンスをウィンドウの空間平均処理により算出する(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
このコヒーレンスの値域は0から1であり、2回の観測の間に変化のないウィンドウにおいては1に近い値を示し、変化のあるウィンドウにおいては0に近い値を示す。本性質を利用して、CCDではコヒーレンスの低いウィンドウを抽出することで変化領域を抽出する。
【0005】
また、変化のないウィンドウのコヒーレンスとコヒーレンスを推定するために用いたウィンドウサイズから算出される確率密度関数から、使用者が予め設定した誤警報確率を満足する閾値を算出し、各画素のコヒーレンスの値を閾値処理することで変化領域を抽出する変化抽出処理(例えば、非特許文献2参照)などがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Touzi. R, Lopes. A, Bruniquel. J, and Vachon. P.W, “Coherence estimation for SAR imagery,” IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing, vol.37, pp.135 -- 149, 1999.
【非特許文献2】MarkPreiss,D. G. & Stacy. N.“A Change Detection Technique for Repeat Pass interferometric SAR,”lEEE Geoscience and Remote Sensing Symposium Proceedings,2003.IGARSS'03.,2003,2,21-25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の画像処理装置では、コヒーレンスの推定処理や変化抽出処理において、注目画素とその近傍画素により構成された、大きさが固定であるウィンドウ内のコヒーレンスが一様であるのか、複数の異なる性質を有する領域が混在するウィンドウであるのかわからないという問題点があった。例えば、ウィンドウの空間平均処理によるコヒーレンスの推定を精度良く実施するためには、ウィンドウ内のコヒーレンスが一様である必要がある。このため、ウィンドウを大きく設定した場合には、複数の異なるコヒーレンスを有する領域が混在している可能性がありコヒーレンスの推定精度が低下する。
【0008】
また、本来一様な領域においては、コヒーレンスの推定を同時に処理することが可能であり、このような領域においてはウィンドウを大きく設定することが望ましいが、前述の理由によりウィンドウを大きく設定することが出来ず、コヒーレンスの推定処理にかかる時間が増加するという問題点があった。
【0009】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、ウィンドウ内における複数の異なる性質を有する領域の有無を判定することができる画像処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像処理装置は、異なる時間に観測された、同一の領域の2枚のレーダ画像を格納する画像格納部と、2枚のレーダ画像における注目画素とその近傍画素で構成される局所領域を設定する局所領域設定部と、2枚のレーダ画像間の前記局所領域のコヒーレンスを算出する局所領域コヒーレンス算出部と、前記局所領域を所定の画素数及び形状の複数のサブウィンドウに分割するサブウィンドウ設定部と、前記局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの理論平均値を算出する理論平均値算出部と、前記局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの理論標準偏差又は理論分散を算出する理論標準偏差算出部と、前記理論平均値及び前記理論標準偏差又は理論分散に基づき、所定の閾値を算出する閾値算出処理部と、各サブウィンドウのコヒーレンスを算出するサブウィンドウコヒーレンス算出部と、前記各サブウィンドウのコヒーレンスの平均値を算出する平均処理部と、前記所定の閾値及び前記サブウィンドウのコヒーレンスの平均値の閾値処理に基づき、前記局所領域が一様な領域であるのか、前記局所領域内に異なる性質を有する領域の境界が含まれるのかを判定する境界領域判定処理部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る画像処理装置によれば、ウィンドウ内における複数の異なる性質を有する領域の有無を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る画像処理装置の局所領域(ウィンドウ)を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る画像処理装置のサブウィンドウを示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る画像処理装置のコヒーレンスと確率密度分布の関係を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の局所領域から選択したサブウィンドウを示す図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の新たな局所領域を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の2つの異なるコヒーレンスを有する領域が混在する局所領域を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る画像処理装置のサブウィンドウの組み合わせを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の画像処理装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0014】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る画像処理装置について図1から図3までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示す図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0015】
図1において、この発明の実施の形態1に係る画像処理装置は、画像格納部1と、局所領域設定部2と、局所領域コヒーレンス算出部3と、理論平均値算出部4と、理論標準偏差算出部5と、閾値算出処理部6と、サブウィンドウ設定部7と、サブウィンドウコヒーレンス算出部8と、平均処理部9と、境界領域判定処理部10と、出力格納部11とが設けられている。なお、画像格納部1と出力格納部11はメモリなどが該当し、その他の各部は計算機などが該当する。
【0016】
つぎに、この実施の形態1に係る画像処理装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図2は、この発明の実施の形態1に係る画像処理装置の局所領域(ウィンドウ)を示す図である。また、図3は、この発明の実施の形態1に係る画像処理装置のサブウィンドウを示す図である。
【0018】
画像格納部1は、取得時間の異なる2回の観測により得られた、同一の領域の2枚のレーダ画像を格納している。つまり、同一領域を異なる取得時間で観測(撮像)した2枚のSAR画像が格納されている。なお、この実施の形態1ではレーダ画像としてSAR画像を例として説明するが、レーダ画像であれば良く、SAR画像に限定されない。画像格納部1に格納されている2枚のSAR画像の位置合わせ(レジストレーション)は、精度良く行われており、注目画素の座標は2枚のSAR画像間で同一である。
【0019】
局所領域設定部2は、2枚のSAR画像中の注目画素とその近傍画素で構成される局所領域(ウィンドウ)を設定する。この局所領域設定部2では、画像格納部1に格納されている2枚のSAR画像を取得した後、2枚のSAR画像において本発明による処理の対象となる注目画素の座標を(m,n)とした場合に、図2に示すように、注目画素(m,n)とその近傍画素で構成される局所領域に含まれる画素を抽出する。なお、図2においては、局所領域の大きさが縦横9×9画素の正方形の範囲としているが、局所領域の大きさや形状はこれに限られるものではない。
【0020】
局所領域コヒーレンス算出部3は、局所領域設定部3において設定した局所領域における2枚のSAR画像間のコヒーレンスを算出する。この局所領域コヒーレンス算出部3は、局所領域設定部2によって抽出された局所領域に含まれる画素を用いて2枚のSAR画像間のコヒーレンスを算出する。このコヒーレンスδL(m,n)は、次の式(1)で表されるものである。
【0021】
【数1】
【0022】
ここで、Z1(i)は1枚目のレーダ画像の位置(i)が持つデータ値を示し、Z2(i)は2枚目のレーダ画像の位置(i)が持つデータ値を示す。また、*は複素共役を示す。さらに、Lは局所領域設定部2で設定した局所領域に含まれる画素数であり、iは局所領域に含まれる画素のインデックスを表す。
【0023】
式(1)で表されるコヒーレンスは、2枚のSAR画像が同一の軌道で取得されるという条件の下、地表面に変化がない場合には1に近い値をとり、地表面に変化が生じた場合には1より小さい値をとる。
【0024】
理論平均値算出部4は、局所領域設定部2で設定した局所領域の全体的なコヒーレンスの値を真のコヒーレンスとし、サブウィンドウ設定部7でコヒーレンスを推定した場合に得られるコヒーレンスの平均値の理論値を算出する。この理論平均値算出部4は、局所領域コヒーレンス算出部3で算出した2枚のSAR画像間の局所領域におけるコヒーレンスの値と、サブウィンドウ設定部7で設定する各サブウィンドウ内に含まれる画素数を用いて、サブウィンドウ内に含まれる各画素を用いて推定して得られる各サブウィンドウのコヒーレンスの平均値を理論的に算出する。この理論的なコヒーレンスの平均値は、非特許文献1によれば次の式(2)で表される。
【0025】
【数2】
【0026】
ここで、δLは局所領域に含まれる全ての画素から算出したコヒーレンス、δSはサブウィンドウで推定した場合に得られるコヒーレンスである。また、Mは各サブウィンドウ内の画素数である。さらに、Fは一般超幾何関数、Γはガンマ関数、E(x)はxの期待値を表す。
【0027】
本式に局所領域コヒーレンス算出部3で得られた局所領域全体のコヒーレンスとサブウィンドウの画素サイズを入力することで、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの平均値を得ることが出来る。ここでは、コヒーレンスの平均値の理論値を算出する式として式(2)を用いたが、平均値を表す理論式であれば本式に限定するものではない。また、式(2)に示した理論的なコヒーレンスの平均値を、例えば、画素数に応じて複数個、予め計算しておき、データベースとして保有しておけば理論値を計算する必要はない。
【0028】
理論標準偏差算出部5は、局所領域設定部2で設定した局所領域の全体的なコヒーレンスの値を真のコヒーレンスとし、サブウィンドウ設定部7でコヒーレンスを推定した場合に得られるコヒーレンスの標準偏差の理論値を算出する。この理論標準偏差算出部5は、局所領域コヒーレンス算出部3で算出した局所領域全体のコヒーレンスの値と、サブウィンドウ設定部7で設定したサブウィンドウ内に含まれる画素数を用いて、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの標準偏差の理論値σ(δS)を算出する。理論的なコヒーレンスの標準偏差は、非特許文献1に記載されているような次の式(3)で表現されている。
【0029】
【数3】
【0030】
ここでは、コヒーレンスの標準偏差(または標準偏差の2乗である分散)の理論値を算出する式として式(3)を用いたが、理論的な標準偏差を表す式であれば、本式に限定するものではない。また、前述の理論平均値算出部4と同様に、理論的な標準偏差を、例えば、画素数に応じて複数個、予め計算しておき、データベースに格納しておけば標準偏差を計算する必要はなくなる。
【0031】
閾値算出処理部6は、理論平均値算出部4と理論標準偏差算出部5の結果から、局所領域設定部2において設定した局所領域内に異なる性質を有する領域の有無を判定するための閾値を算出する。この閾値算出処理部6は、理論平均値算出部4と理論標準偏差算出部5においてそれぞれ算出した理論的なコヒーレンスの平均値と標準偏差を用いて、局所領域内に異なる性質を有する領域の境界が含まれるかどうかを判定するための閾値を算出する。閾値Cthは、例えば次の式(4)のように設定することで得られる。
【0032】
【数4】
【0033】
ここで、α(>0)は使用者が任意に設定する係数であり、小さい値に設定することで、境界領域判定処理における閾値処理において、局所領域内にある境界の検出性能が向上するが、本来境界が存在しない領域においても境界が存在すると判定される誤検出が多くなる。一方、係数αを大きい値に設定した場合には、誤検出が低下するが検出確率も低下する。係数αは、使用者が入力しても良く、あるいは予め設定した値をメモリ等に格納しておきそれを使用しても良く、その方法は問わない。また、閾値Cthそのものを使用者が入力、または予めメモリ等に格納しておきそれを使用しても構わない。
【0034】
サブウィンドウ設定部7は、局所領域設定部2において設定した局所領域を、任意の大きさ(画素数)及び形状のサブウィンドウに分割設定する。このサブウィンドウ設定部7は、局所領域設定部2で設定した注目画素とその近傍画素で構成される局所領域を任意の大きさかつ形状のサブウィンドウ(領域)に分割する。ウィンドウ(局所領域)を分割した領域がサブウィンドウである。
【0035】
ここで、ウィンドウをN個の矩形のサブウィンドウに分割した場合の概念図を図3に示す。なお、図3では、注目画素とその近傍画素により構成されたL画素のウィンドウを分割数N=9としてサブウィンドウの形状と大きさが全て等しい正方形である状態を想定しているが、分割数Nは9に限定されず、サブウィンドウ内に含まれる画素数が2個以上であれば良い。また、サブウィンドウの形状も正方形である必要はなく、その形状は問わない。ただし、各サブウィンドウの画素数Mは全てのサブウィンドウで同じである必要がある。
【0036】
サブウィンドウコヒーレンス算出部8は、各サブウィンドウのコヒーレンスを算出する。このサブウィンドウコヒーレンス算出部8は、サブウィンドウ設定部7においてウィンドウを分割した各サブウィンドウにおけるコヒーレンスをそれぞれ算出する。各サブウィンドウでの2枚のSAR画像間のコヒーレンスを、δsi(i=1,2,…,N)とするならば、次の式(5)で与えられる。
【0037】
【数5】
【0038】
平均処理部9は、算出した各サブウィンドウのコヒーレンスの平均値を算出する。この平均処理部9は、サブウィンドウコヒーレンス算出部8において算出した各サブウィンドウにおけるコヒーレンスの平均値を算出する。平均値の算出は、次の式(6)で行う。
【0039】
【数6】
【0040】
境界領域判定処理部10は、サブウィンドウのコヒーレンスの平均値と閾値を閾値処理することで、局所領域が一様な領域であるか、複数の異なるコヒーレンスを有する領域が混在する領域であるかを判定する。この境界領域判定処理部10は、閾値算出処理部6及び平均処理部9においてそれぞれ得られた閾値Cthとサブウィンドウのコヒーレンスの平均値を用いて局所領域内に境界領域が含まれるかどうかを判定する。判定は、次の式(7)により表される処理により行われる。
【0041】
【数7】
【0042】
この方式によると、理論的に算出された平均値は、局所領域内における2枚のSAR画像間のコヒーレンスが一様であるという仮定の下で導出されている。従って、各サブウィンドウにおけるコヒーレンスの算出結果の平均値と理論式より算出されたコヒーレンスの平均値は近い値を示す傾向にある。
【0043】
一方、局所領域内に複数の異なるコヒーレンスを有する領域が存在する場合には、理論式における前提条件を満足しないため、各サブウィンドウにおけるコヒーレンスの平均値は、理論値と異なる値を示すことになる。従って、理論値と観測値を比較することで局所領域内に含まれるデータのコヒーレンスが一様であるかどうかを判定することが出来る。
【0044】
最後に、出力格納部11は、境界領域判定結果などの本装置における出力結果を格納する。
【0045】
以上のように、本実施の形態1では、局所領域全体から算出されるコヒーレンスの値から得られる各サブウィンドウで推定されるコヒーレンスの平均値の理論値と観測値を比較することで、設定した局所領域に複数の異なるコヒーレンスを持つ領域の境界が存在するかどうかを判定することが出来る。なお、ここでは理論的に算出される平均値とサブウィンドウで推定されたコヒーレンスの平均値を用いて境界の有無を判定しているが、平均値の代わりに、分散や標準偏差など2枚のSAR画像間の真のコヒーレンスの理論値を計算することが可能であるならば、算出した理論値とサブウィンドウから算出される観測値を比較することが可能である。従って、境界の有無に用いる指標は平気値に限定するものではない。さらに、これらの各特徴量を任意の組み合わせにより組み合わせて評価することも可能である。
【0046】
本実施の形態1により得られた結果において、一様ではない領域と判定された領域においては、コヒーレンスを推定するウィンドウの大きさや形状を変化させることでコヒーレンスの推定精度の低下を防ぐことが可能となる。なお、ウィンドウの大きさや形状の変化については、予め設定した任意の大きさや形状を持つウィンドウによるコヒーレンス推定などが挙げられる.
【0047】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る画像処理装置について図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、この発明の実施の形態2に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【0048】
図4において、この発明の実施の形態2に係る画像処理装置は、画像格納部1と、局所領域設定部2と、局所領域コヒーレンス算出部3と、理論コヒーレンス分布算出部21と、サブウィンドウ設定部7と、サブウィンドウコヒーレンス算出部8と、コヒーレンス分布算出部22と、分布類似度算出部23と、類似度境界判定処理部24と、出力格納部11とが設けられている。
【0049】
つぎに、この実施の形態2に係る画像処理装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0050】
図5は、この発明の実施の形態2に係る画像処理装置のコヒーレンスと確率密度分布の関係を示す図である。
【0051】
上記の実施の形態1では、平均値や標準偏差などの指標を用いて境界の有無を判定していたが、この実施の形態2では、サブウィンドウで推定したコヒーレンスの分布と理論的な分布の類似性を評価することで、局所領域内の境界の有無を判定することが可能である。
【0052】
理論コヒーレンス分布算出部21は、算出されたコヒーレンスとサブウィンドウに含まれる画素数を用いて、推定されるコヒーレンスの確率密度分布を算出する。この理論コヒーレンス分布算出部21は、局所領域コヒーレンス算出部3で算出した2枚のSAR画像間の局所領域におけるコヒーレンスの値と、サブウィンドウ設定部7で設定する各サブウィンドウ内に含まれる画素数を用いて、サブウィンドウ内に含まれる各画素を用いて各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの確率密度分布の理論値を算出する。この理論的なコヒーレンスの確率密度分布は、非特許文献1によれば次の式(8)で表される。
【0053】
【数8】
【0054】
ここでは、コヒーレンスの確率密度関数の理論値を算出する式として式(8)を用いたが、理論的な確率密度関数を表す式であれば、本式に限定するものではない。確率密度関数を、例えば、画素数に応じて複数個、予め計算しておき、データベースに格納しておけば確率密度関数を計算する必要はない。
【0055】
コヒーレンス分布算出部22は、算出した各サブウィンドウのコヒーレンスの値から、コヒーレンスの観測値のヒストグラム(確率密度分布)を算出する。このコヒーレンス分布算出部22は、サブウィンドウコヒーレンス算出部8において算出した各サブウィンドウにおけるコヒーレンスのヒストグラムを算出する。
【0056】
分布類似度算出部23は、観測値及び理論値のコヒーレンスの確率密度分布の類似度を算出する。この分布類似度算出部23は、理論コヒーレンス分布算出部21とコヒーレンス分布算出部22において算出した理論値及び観測値のコヒーレンスの分布の類似度を算出する。2つの分布の類似性は、Studentのt検定や、F検定、Kolmogorov−Smirnov(K−S)検定などの統計的な分布の類似性を算出できる方法であれば、何を用いてもよい。ここでは、K−S検定を例にとって分布の類似性を比較する方式を説明する。K−S検定による2つの分布の類似性(以下、KS検定量と呼ぶ)は、次の式(9)により表される。
【0057】
【数9】
【0058】
ここで、Sref(t)は、理論コヒーレンス分布算出部21により算出された理論的なコヒーレンスの確率密度関数の経験分布であり、Sl(t)は、コヒーレンス分布算出部22において算出した各サブウィンドウでのコヒーレンスのヒストグラムの経験分布である。KS検定量(0≦KS≦1)は、2つの経験分布が一致している統計分布を比較した場合には0となる。また、類似性が低い経験分布を比較した場合には大きい値をとる。
【0059】
類似度境界判定処理部24は、観測値と理論値のコヒーレンスの確率密度関数の類似性を、予め設定した閾値を比較することで局所領域内に複数の異なるコヒーレンスを有する領域の境界が存在するかを判定する。この類似度境界判定処理部24は、分布類似度算出部23で算出した理論値と観測値それぞれのコヒーレンスの確率密度分布の類似度を、予め設定した閾値により評価することで、局所領域内に複数の異なるコヒーレンスを示す領域の境界が存在するかを判定する。
【0060】
局所領域内が一様である場合には、図5(a)に示すように、確率密度分布の理論値と観測値が似た確率密度関数になる。一方、局所領域内が一様ではない場合には、理論値を導出するための前提条件(局所領域が一様である)が満足されないため、理論値と観測値の確率密度関数が、図5(b)のように、異なるものとなる。従って、境界の有無の判定は、次の式(10)のように行う。
【0061】
【数10】
【0062】
ここで、KSthは予め設定された閾値である。
【0063】
以上のように、確率密度分布の理論値と観測値の類似性を指標として局所領域が一様であるかどうかを判定することが出来る。
【0064】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る画像処理装置について図6から図10までを参照しながら説明する。図6は、この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【0065】
図6において、この発明の実施の形態3に係る画像処理装置は、画像格納部1と、局所領域設定部2と、サブウィンドウ設定部7と、サブウィンドウ組み合わせ処理部31と、局所領域コヒーレンス算出部3と、理論平均値算出部4と、理論標準偏差算出部5と、閾値算出処理部6と、サブウィンドウコヒーレンス算出部8と、平均処理部9と、境界領域判定処理部10と、境界判定結果結合処理部32と、出力格納部11とが設けられている。
【0066】
つぎに、この実施の形態3に係る画像処理装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0067】
図7は、この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の局所領域から選択したサブウィンドウを示す図である。また、図8は、この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の新たな局所領域を示す図である。さらに、図9は、この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の2つの異なるコヒーレンスを有する領域が混在する局所領域を示す図である。図10は、この発明の実施の形態3に係る画像処理装置のサブウィンドウの組み合わせを示す図である。
【0068】
上記の実施の形態1及び2では、注目画素とその近傍画素で構成される局所領域内に、複数の異なるコヒーレンスを有する領域の境界が存在するかどうかを判定したが、この実施の形態3では、局所領域を分割したサブウィンドウを組み合わせた新たな局所領域による評価を実施することで、境界の位置や方向などを推定することが可能となる。
【0069】
サブウィンドウ組み合わせ処理部31は、局所領域を分割したサブウィンドウから任意の個数のサブウィンドウを選択する。このサブウィンドウ組み合わせ処理部31には、サブウィンドウ設定部7において、図3に示すように、局所領域を分割して得られたサブウィンドウが入力される。サブウィンドウ組み合わせ処理部31は、入力されたサブウィンドウを任意の個数だけ選択する。そして、選択したサブウィンドウから新たな局所領域を再構築する。
【0070】
例えば、図7のように、局所領域を分割した9つのサブウィンドウから3つのサブウィンドウを選択する。なお、ここでは、選択するサブウィンドウの個数を3個としているが、この個数は3つに限定するものではなく、形状も問わない。
【0071】
選択した3個のサブウィンドウを、図8のように、組み合わせて新たな局所領域を設定する。新たに設定した局所領域を用いて、上記の実施の形態1や実施の形態2の方法を用いて、境界の有無を判定する。なお、図6は上記の実施の形態1にサブウィンドウ組み合わせ処理部31及び境界判定結果結合処理部32を設けた場合を示しているが、上記の実施の形態2に本実施の形態3を適用する場合には、局所領域設定部2の後に、サブウィンドウ設定部7及びサブウィンドウ組み合わせ処理部31を設けるとともに、類似度境界判定処理部24の後に、境界判定結果結合処理部32を設ければ良い。
【0072】
境界判定結果結合処理部32は、複数通りの新しい局所領域を用いて得られた複数通りの境界判定結果を統合し、境界位置や方向などを得る。この境界判定結果結合処理部32は、サブウィンドウ組み合わせ処理部31により、複数通りのサブウィンドウの選択結果を用いて設定された複数通りの新たな局所領域内において判定された、境界の有無の判定結果を用いて、局所領域設定部2において設定した局所領域における境界の位置と方向を判定する。以下、判定方法について説明する。
【0073】
図9に示すように、局所領域設定部2において設定した局所領域内に、2つの異なるコヒーレンスを有する領域が混在する場合を考える。図9のように設定された局所領域を、サブウィンドウ設定部7において、図3のような9個のサブウィンドウに分割する。
【0074】
分割して得られた9個のサブウィンドウを、サブウィンドウ組み合わせ処理部31において、図10のような、10通りのサブウィンドウの組み合わせを考える。10通りの組み合わせにより10種類の新たな局所領域において、図9に示すような境界がある場合、図10(f)〜(j)では、新たな局所領域においては一様であるという判定結果が得られる。一方、図10(a)〜(e)においては、境界が存在するという結果が得られる。なお、分割数やサブウィンドウの組み合わせ方法などはここで説明した個数や形状に限定されるものではなく、どのような個数や形状を用いてもいい。
【0075】
得られた各判定結果において、図10(h)〜(j)のような横方向については境界が存在する結果であるという判定がなされ、また図10(c)〜(e)のような縦方向については一様な領域であると判定がなされる。この結果から縦方向に境界があることがわかる。
【0076】
次に、図10(a)と(b)の結果を比較する。この結果、図10(a)は一様な領域であり,図10(b)は境界を含む領域であると判断される。以上をまとめると、サブウィンドウ1、2、4、5、7、8は同一の領域であり、サブウィンドウ3、6、9は異なる領域であると考えられるので、境界の位置を得ることができる。本方式によれば、境界の存在の有無から方向、位置を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0077】
1 画像格納部、2 局所領域設定部、3 局所領域コヒーレンス算出部、4 理論平均値算出部、5 理論標準偏差算出部、6 閾値算出処理部、7 サブウィンドウ設定部、8 サブウィンドウコヒーレンス算出部、9 平均処理部、10 境界領域判定処理部、11 出力格納部、21 理論コヒーレンス分布算出部、22 コヒーレンス分布算出部、23 分布類似度算出部、24 類似度境界判定処理部、31 サブウィンドウ組み合わせ処理部、32 境界判定結果結合処理部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、2枚のレーダ画像間の複素相関であるコヒーレンスを注目画素とその近傍画素により構成される局所領域(ウィンドウ)内における複数の異なる性質(コヒーレンス)を有する領域の有無を判定する画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
取得時間の異なる2枚の合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)画像から、2枚のSAR画像取得時間の間に地表面に生じた変化を抽出するための技術の1つにCCD(Coherent Change Detection)がある。このCCDでは、SAR画像の輝度情報に加えて位相情報をも利用した変化抽出を実施するため、輝度変化では現れないような微小な変化に対しても感度が高いという特長がある。
【0003】
CCDでは、2枚のSAR画像間の複素相関値(コヒーレンス)を指標として変化抽出を実施する。この2枚の画像間の複素相関であるコヒーレンスをウィンドウの空間平均処理により算出する(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
このコヒーレンスの値域は0から1であり、2回の観測の間に変化のないウィンドウにおいては1に近い値を示し、変化のあるウィンドウにおいては0に近い値を示す。本性質を利用して、CCDではコヒーレンスの低いウィンドウを抽出することで変化領域を抽出する。
【0005】
また、変化のないウィンドウのコヒーレンスとコヒーレンスを推定するために用いたウィンドウサイズから算出される確率密度関数から、使用者が予め設定した誤警報確率を満足する閾値を算出し、各画素のコヒーレンスの値を閾値処理することで変化領域を抽出する変化抽出処理(例えば、非特許文献2参照)などがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Touzi. R, Lopes. A, Bruniquel. J, and Vachon. P.W, “Coherence estimation for SAR imagery,” IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing, vol.37, pp.135 -- 149, 1999.
【非特許文献2】MarkPreiss,D. G. & Stacy. N.“A Change Detection Technique for Repeat Pass interferometric SAR,”lEEE Geoscience and Remote Sensing Symposium Proceedings,2003.IGARSS'03.,2003,2,21-25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の画像処理装置では、コヒーレンスの推定処理や変化抽出処理において、注目画素とその近傍画素により構成された、大きさが固定であるウィンドウ内のコヒーレンスが一様であるのか、複数の異なる性質を有する領域が混在するウィンドウであるのかわからないという問題点があった。例えば、ウィンドウの空間平均処理によるコヒーレンスの推定を精度良く実施するためには、ウィンドウ内のコヒーレンスが一様である必要がある。このため、ウィンドウを大きく設定した場合には、複数の異なるコヒーレンスを有する領域が混在している可能性がありコヒーレンスの推定精度が低下する。
【0008】
また、本来一様な領域においては、コヒーレンスの推定を同時に処理することが可能であり、このような領域においてはウィンドウを大きく設定することが望ましいが、前述の理由によりウィンドウを大きく設定することが出来ず、コヒーレンスの推定処理にかかる時間が増加するという問題点があった。
【0009】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、ウィンドウ内における複数の異なる性質を有する領域の有無を判定することができる画像処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像処理装置は、異なる時間に観測された、同一の領域の2枚のレーダ画像を格納する画像格納部と、2枚のレーダ画像における注目画素とその近傍画素で構成される局所領域を設定する局所領域設定部と、2枚のレーダ画像間の前記局所領域のコヒーレンスを算出する局所領域コヒーレンス算出部と、前記局所領域を所定の画素数及び形状の複数のサブウィンドウに分割するサブウィンドウ設定部と、前記局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの理論平均値を算出する理論平均値算出部と、前記局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの理論標準偏差又は理論分散を算出する理論標準偏差算出部と、前記理論平均値及び前記理論標準偏差又は理論分散に基づき、所定の閾値を算出する閾値算出処理部と、各サブウィンドウのコヒーレンスを算出するサブウィンドウコヒーレンス算出部と、前記各サブウィンドウのコヒーレンスの平均値を算出する平均処理部と、前記所定の閾値及び前記サブウィンドウのコヒーレンスの平均値の閾値処理に基づき、前記局所領域が一様な領域であるのか、前記局所領域内に異なる性質を有する領域の境界が含まれるのかを判定する境界領域判定処理部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る画像処理装置によれば、ウィンドウ内における複数の異なる性質を有する領域の有無を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る画像処理装置の局所領域(ウィンドウ)を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る画像処理装置のサブウィンドウを示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る画像処理装置のコヒーレンスと確率密度分布の関係を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の局所領域から選択したサブウィンドウを示す図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の新たな局所領域を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の2つの異なるコヒーレンスを有する領域が混在する局所領域を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る画像処理装置のサブウィンドウの組み合わせを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の画像処理装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0014】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る画像処理装置について図1から図3までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示す図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0015】
図1において、この発明の実施の形態1に係る画像処理装置は、画像格納部1と、局所領域設定部2と、局所領域コヒーレンス算出部3と、理論平均値算出部4と、理論標準偏差算出部5と、閾値算出処理部6と、サブウィンドウ設定部7と、サブウィンドウコヒーレンス算出部8と、平均処理部9と、境界領域判定処理部10と、出力格納部11とが設けられている。なお、画像格納部1と出力格納部11はメモリなどが該当し、その他の各部は計算機などが該当する。
【0016】
つぎに、この実施の形態1に係る画像処理装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図2は、この発明の実施の形態1に係る画像処理装置の局所領域(ウィンドウ)を示す図である。また、図3は、この発明の実施の形態1に係る画像処理装置のサブウィンドウを示す図である。
【0018】
画像格納部1は、取得時間の異なる2回の観測により得られた、同一の領域の2枚のレーダ画像を格納している。つまり、同一領域を異なる取得時間で観測(撮像)した2枚のSAR画像が格納されている。なお、この実施の形態1ではレーダ画像としてSAR画像を例として説明するが、レーダ画像であれば良く、SAR画像に限定されない。画像格納部1に格納されている2枚のSAR画像の位置合わせ(レジストレーション)は、精度良く行われており、注目画素の座標は2枚のSAR画像間で同一である。
【0019】
局所領域設定部2は、2枚のSAR画像中の注目画素とその近傍画素で構成される局所領域(ウィンドウ)を設定する。この局所領域設定部2では、画像格納部1に格納されている2枚のSAR画像を取得した後、2枚のSAR画像において本発明による処理の対象となる注目画素の座標を(m,n)とした場合に、図2に示すように、注目画素(m,n)とその近傍画素で構成される局所領域に含まれる画素を抽出する。なお、図2においては、局所領域の大きさが縦横9×9画素の正方形の範囲としているが、局所領域の大きさや形状はこれに限られるものではない。
【0020】
局所領域コヒーレンス算出部3は、局所領域設定部3において設定した局所領域における2枚のSAR画像間のコヒーレンスを算出する。この局所領域コヒーレンス算出部3は、局所領域設定部2によって抽出された局所領域に含まれる画素を用いて2枚のSAR画像間のコヒーレンスを算出する。このコヒーレンスδL(m,n)は、次の式(1)で表されるものである。
【0021】
【数1】
【0022】
ここで、Z1(i)は1枚目のレーダ画像の位置(i)が持つデータ値を示し、Z2(i)は2枚目のレーダ画像の位置(i)が持つデータ値を示す。また、*は複素共役を示す。さらに、Lは局所領域設定部2で設定した局所領域に含まれる画素数であり、iは局所領域に含まれる画素のインデックスを表す。
【0023】
式(1)で表されるコヒーレンスは、2枚のSAR画像が同一の軌道で取得されるという条件の下、地表面に変化がない場合には1に近い値をとり、地表面に変化が生じた場合には1より小さい値をとる。
【0024】
理論平均値算出部4は、局所領域設定部2で設定した局所領域の全体的なコヒーレンスの値を真のコヒーレンスとし、サブウィンドウ設定部7でコヒーレンスを推定した場合に得られるコヒーレンスの平均値の理論値を算出する。この理論平均値算出部4は、局所領域コヒーレンス算出部3で算出した2枚のSAR画像間の局所領域におけるコヒーレンスの値と、サブウィンドウ設定部7で設定する各サブウィンドウ内に含まれる画素数を用いて、サブウィンドウ内に含まれる各画素を用いて推定して得られる各サブウィンドウのコヒーレンスの平均値を理論的に算出する。この理論的なコヒーレンスの平均値は、非特許文献1によれば次の式(2)で表される。
【0025】
【数2】
【0026】
ここで、δLは局所領域に含まれる全ての画素から算出したコヒーレンス、δSはサブウィンドウで推定した場合に得られるコヒーレンスである。また、Mは各サブウィンドウ内の画素数である。さらに、Fは一般超幾何関数、Γはガンマ関数、E(x)はxの期待値を表す。
【0027】
本式に局所領域コヒーレンス算出部3で得られた局所領域全体のコヒーレンスとサブウィンドウの画素サイズを入力することで、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの平均値を得ることが出来る。ここでは、コヒーレンスの平均値の理論値を算出する式として式(2)を用いたが、平均値を表す理論式であれば本式に限定するものではない。また、式(2)に示した理論的なコヒーレンスの平均値を、例えば、画素数に応じて複数個、予め計算しておき、データベースとして保有しておけば理論値を計算する必要はない。
【0028】
理論標準偏差算出部5は、局所領域設定部2で設定した局所領域の全体的なコヒーレンスの値を真のコヒーレンスとし、サブウィンドウ設定部7でコヒーレンスを推定した場合に得られるコヒーレンスの標準偏差の理論値を算出する。この理論標準偏差算出部5は、局所領域コヒーレンス算出部3で算出した局所領域全体のコヒーレンスの値と、サブウィンドウ設定部7で設定したサブウィンドウ内に含まれる画素数を用いて、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの標準偏差の理論値σ(δS)を算出する。理論的なコヒーレンスの標準偏差は、非特許文献1に記載されているような次の式(3)で表現されている。
【0029】
【数3】
【0030】
ここでは、コヒーレンスの標準偏差(または標準偏差の2乗である分散)の理論値を算出する式として式(3)を用いたが、理論的な標準偏差を表す式であれば、本式に限定するものではない。また、前述の理論平均値算出部4と同様に、理論的な標準偏差を、例えば、画素数に応じて複数個、予め計算しておき、データベースに格納しておけば標準偏差を計算する必要はなくなる。
【0031】
閾値算出処理部6は、理論平均値算出部4と理論標準偏差算出部5の結果から、局所領域設定部2において設定した局所領域内に異なる性質を有する領域の有無を判定するための閾値を算出する。この閾値算出処理部6は、理論平均値算出部4と理論標準偏差算出部5においてそれぞれ算出した理論的なコヒーレンスの平均値と標準偏差を用いて、局所領域内に異なる性質を有する領域の境界が含まれるかどうかを判定するための閾値を算出する。閾値Cthは、例えば次の式(4)のように設定することで得られる。
【0032】
【数4】
【0033】
ここで、α(>0)は使用者が任意に設定する係数であり、小さい値に設定することで、境界領域判定処理における閾値処理において、局所領域内にある境界の検出性能が向上するが、本来境界が存在しない領域においても境界が存在すると判定される誤検出が多くなる。一方、係数αを大きい値に設定した場合には、誤検出が低下するが検出確率も低下する。係数αは、使用者が入力しても良く、あるいは予め設定した値をメモリ等に格納しておきそれを使用しても良く、その方法は問わない。また、閾値Cthそのものを使用者が入力、または予めメモリ等に格納しておきそれを使用しても構わない。
【0034】
サブウィンドウ設定部7は、局所領域設定部2において設定した局所領域を、任意の大きさ(画素数)及び形状のサブウィンドウに分割設定する。このサブウィンドウ設定部7は、局所領域設定部2で設定した注目画素とその近傍画素で構成される局所領域を任意の大きさかつ形状のサブウィンドウ(領域)に分割する。ウィンドウ(局所領域)を分割した領域がサブウィンドウである。
【0035】
ここで、ウィンドウをN個の矩形のサブウィンドウに分割した場合の概念図を図3に示す。なお、図3では、注目画素とその近傍画素により構成されたL画素のウィンドウを分割数N=9としてサブウィンドウの形状と大きさが全て等しい正方形である状態を想定しているが、分割数Nは9に限定されず、サブウィンドウ内に含まれる画素数が2個以上であれば良い。また、サブウィンドウの形状も正方形である必要はなく、その形状は問わない。ただし、各サブウィンドウの画素数Mは全てのサブウィンドウで同じである必要がある。
【0036】
サブウィンドウコヒーレンス算出部8は、各サブウィンドウのコヒーレンスを算出する。このサブウィンドウコヒーレンス算出部8は、サブウィンドウ設定部7においてウィンドウを分割した各サブウィンドウにおけるコヒーレンスをそれぞれ算出する。各サブウィンドウでの2枚のSAR画像間のコヒーレンスを、δsi(i=1,2,…,N)とするならば、次の式(5)で与えられる。
【0037】
【数5】
【0038】
平均処理部9は、算出した各サブウィンドウのコヒーレンスの平均値を算出する。この平均処理部9は、サブウィンドウコヒーレンス算出部8において算出した各サブウィンドウにおけるコヒーレンスの平均値を算出する。平均値の算出は、次の式(6)で行う。
【0039】
【数6】
【0040】
境界領域判定処理部10は、サブウィンドウのコヒーレンスの平均値と閾値を閾値処理することで、局所領域が一様な領域であるか、複数の異なるコヒーレンスを有する領域が混在する領域であるかを判定する。この境界領域判定処理部10は、閾値算出処理部6及び平均処理部9においてそれぞれ得られた閾値Cthとサブウィンドウのコヒーレンスの平均値を用いて局所領域内に境界領域が含まれるかどうかを判定する。判定は、次の式(7)により表される処理により行われる。
【0041】
【数7】
【0042】
この方式によると、理論的に算出された平均値は、局所領域内における2枚のSAR画像間のコヒーレンスが一様であるという仮定の下で導出されている。従って、各サブウィンドウにおけるコヒーレンスの算出結果の平均値と理論式より算出されたコヒーレンスの平均値は近い値を示す傾向にある。
【0043】
一方、局所領域内に複数の異なるコヒーレンスを有する領域が存在する場合には、理論式における前提条件を満足しないため、各サブウィンドウにおけるコヒーレンスの平均値は、理論値と異なる値を示すことになる。従って、理論値と観測値を比較することで局所領域内に含まれるデータのコヒーレンスが一様であるかどうかを判定することが出来る。
【0044】
最後に、出力格納部11は、境界領域判定結果などの本装置における出力結果を格納する。
【0045】
以上のように、本実施の形態1では、局所領域全体から算出されるコヒーレンスの値から得られる各サブウィンドウで推定されるコヒーレンスの平均値の理論値と観測値を比較することで、設定した局所領域に複数の異なるコヒーレンスを持つ領域の境界が存在するかどうかを判定することが出来る。なお、ここでは理論的に算出される平均値とサブウィンドウで推定されたコヒーレンスの平均値を用いて境界の有無を判定しているが、平均値の代わりに、分散や標準偏差など2枚のSAR画像間の真のコヒーレンスの理論値を計算することが可能であるならば、算出した理論値とサブウィンドウから算出される観測値を比較することが可能である。従って、境界の有無に用いる指標は平気値に限定するものではない。さらに、これらの各特徴量を任意の組み合わせにより組み合わせて評価することも可能である。
【0046】
本実施の形態1により得られた結果において、一様ではない領域と判定された領域においては、コヒーレンスを推定するウィンドウの大きさや形状を変化させることでコヒーレンスの推定精度の低下を防ぐことが可能となる。なお、ウィンドウの大きさや形状の変化については、予め設定した任意の大きさや形状を持つウィンドウによるコヒーレンス推定などが挙げられる.
【0047】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る画像処理装置について図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、この発明の実施の形態2に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【0048】
図4において、この発明の実施の形態2に係る画像処理装置は、画像格納部1と、局所領域設定部2と、局所領域コヒーレンス算出部3と、理論コヒーレンス分布算出部21と、サブウィンドウ設定部7と、サブウィンドウコヒーレンス算出部8と、コヒーレンス分布算出部22と、分布類似度算出部23と、類似度境界判定処理部24と、出力格納部11とが設けられている。
【0049】
つぎに、この実施の形態2に係る画像処理装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0050】
図5は、この発明の実施の形態2に係る画像処理装置のコヒーレンスと確率密度分布の関係を示す図である。
【0051】
上記の実施の形態1では、平均値や標準偏差などの指標を用いて境界の有無を判定していたが、この実施の形態2では、サブウィンドウで推定したコヒーレンスの分布と理論的な分布の類似性を評価することで、局所領域内の境界の有無を判定することが可能である。
【0052】
理論コヒーレンス分布算出部21は、算出されたコヒーレンスとサブウィンドウに含まれる画素数を用いて、推定されるコヒーレンスの確率密度分布を算出する。この理論コヒーレンス分布算出部21は、局所領域コヒーレンス算出部3で算出した2枚のSAR画像間の局所領域におけるコヒーレンスの値と、サブウィンドウ設定部7で設定する各サブウィンドウ内に含まれる画素数を用いて、サブウィンドウ内に含まれる各画素を用いて各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの確率密度分布の理論値を算出する。この理論的なコヒーレンスの確率密度分布は、非特許文献1によれば次の式(8)で表される。
【0053】
【数8】
【0054】
ここでは、コヒーレンスの確率密度関数の理論値を算出する式として式(8)を用いたが、理論的な確率密度関数を表す式であれば、本式に限定するものではない。確率密度関数を、例えば、画素数に応じて複数個、予め計算しておき、データベースに格納しておけば確率密度関数を計算する必要はない。
【0055】
コヒーレンス分布算出部22は、算出した各サブウィンドウのコヒーレンスの値から、コヒーレンスの観測値のヒストグラム(確率密度分布)を算出する。このコヒーレンス分布算出部22は、サブウィンドウコヒーレンス算出部8において算出した各サブウィンドウにおけるコヒーレンスのヒストグラムを算出する。
【0056】
分布類似度算出部23は、観測値及び理論値のコヒーレンスの確率密度分布の類似度を算出する。この分布類似度算出部23は、理論コヒーレンス分布算出部21とコヒーレンス分布算出部22において算出した理論値及び観測値のコヒーレンスの分布の類似度を算出する。2つの分布の類似性は、Studentのt検定や、F検定、Kolmogorov−Smirnov(K−S)検定などの統計的な分布の類似性を算出できる方法であれば、何を用いてもよい。ここでは、K−S検定を例にとって分布の類似性を比較する方式を説明する。K−S検定による2つの分布の類似性(以下、KS検定量と呼ぶ)は、次の式(9)により表される。
【0057】
【数9】
【0058】
ここで、Sref(t)は、理論コヒーレンス分布算出部21により算出された理論的なコヒーレンスの確率密度関数の経験分布であり、Sl(t)は、コヒーレンス分布算出部22において算出した各サブウィンドウでのコヒーレンスのヒストグラムの経験分布である。KS検定量(0≦KS≦1)は、2つの経験分布が一致している統計分布を比較した場合には0となる。また、類似性が低い経験分布を比較した場合には大きい値をとる。
【0059】
類似度境界判定処理部24は、観測値と理論値のコヒーレンスの確率密度関数の類似性を、予め設定した閾値を比較することで局所領域内に複数の異なるコヒーレンスを有する領域の境界が存在するかを判定する。この類似度境界判定処理部24は、分布類似度算出部23で算出した理論値と観測値それぞれのコヒーレンスの確率密度分布の類似度を、予め設定した閾値により評価することで、局所領域内に複数の異なるコヒーレンスを示す領域の境界が存在するかを判定する。
【0060】
局所領域内が一様である場合には、図5(a)に示すように、確率密度分布の理論値と観測値が似た確率密度関数になる。一方、局所領域内が一様ではない場合には、理論値を導出するための前提条件(局所領域が一様である)が満足されないため、理論値と観測値の確率密度関数が、図5(b)のように、異なるものとなる。従って、境界の有無の判定は、次の式(10)のように行う。
【0061】
【数10】
【0062】
ここで、KSthは予め設定された閾値である。
【0063】
以上のように、確率密度分布の理論値と観測値の類似性を指標として局所領域が一様であるかどうかを判定することが出来る。
【0064】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る画像処理装置について図6から図10までを参照しながら説明する。図6は、この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【0065】
図6において、この発明の実施の形態3に係る画像処理装置は、画像格納部1と、局所領域設定部2と、サブウィンドウ設定部7と、サブウィンドウ組み合わせ処理部31と、局所領域コヒーレンス算出部3と、理論平均値算出部4と、理論標準偏差算出部5と、閾値算出処理部6と、サブウィンドウコヒーレンス算出部8と、平均処理部9と、境界領域判定処理部10と、境界判定結果結合処理部32と、出力格納部11とが設けられている。
【0066】
つぎに、この実施の形態3に係る画像処理装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0067】
図7は、この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の局所領域から選択したサブウィンドウを示す図である。また、図8は、この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の新たな局所領域を示す図である。さらに、図9は、この発明の実施の形態3に係る画像処理装置の2つの異なるコヒーレンスを有する領域が混在する局所領域を示す図である。図10は、この発明の実施の形態3に係る画像処理装置のサブウィンドウの組み合わせを示す図である。
【0068】
上記の実施の形態1及び2では、注目画素とその近傍画素で構成される局所領域内に、複数の異なるコヒーレンスを有する領域の境界が存在するかどうかを判定したが、この実施の形態3では、局所領域を分割したサブウィンドウを組み合わせた新たな局所領域による評価を実施することで、境界の位置や方向などを推定することが可能となる。
【0069】
サブウィンドウ組み合わせ処理部31は、局所領域を分割したサブウィンドウから任意の個数のサブウィンドウを選択する。このサブウィンドウ組み合わせ処理部31には、サブウィンドウ設定部7において、図3に示すように、局所領域を分割して得られたサブウィンドウが入力される。サブウィンドウ組み合わせ処理部31は、入力されたサブウィンドウを任意の個数だけ選択する。そして、選択したサブウィンドウから新たな局所領域を再構築する。
【0070】
例えば、図7のように、局所領域を分割した9つのサブウィンドウから3つのサブウィンドウを選択する。なお、ここでは、選択するサブウィンドウの個数を3個としているが、この個数は3つに限定するものではなく、形状も問わない。
【0071】
選択した3個のサブウィンドウを、図8のように、組み合わせて新たな局所領域を設定する。新たに設定した局所領域を用いて、上記の実施の形態1や実施の形態2の方法を用いて、境界の有無を判定する。なお、図6は上記の実施の形態1にサブウィンドウ組み合わせ処理部31及び境界判定結果結合処理部32を設けた場合を示しているが、上記の実施の形態2に本実施の形態3を適用する場合には、局所領域設定部2の後に、サブウィンドウ設定部7及びサブウィンドウ組み合わせ処理部31を設けるとともに、類似度境界判定処理部24の後に、境界判定結果結合処理部32を設ければ良い。
【0072】
境界判定結果結合処理部32は、複数通りの新しい局所領域を用いて得られた複数通りの境界判定結果を統合し、境界位置や方向などを得る。この境界判定結果結合処理部32は、サブウィンドウ組み合わせ処理部31により、複数通りのサブウィンドウの選択結果を用いて設定された複数通りの新たな局所領域内において判定された、境界の有無の判定結果を用いて、局所領域設定部2において設定した局所領域における境界の位置と方向を判定する。以下、判定方法について説明する。
【0073】
図9に示すように、局所領域設定部2において設定した局所領域内に、2つの異なるコヒーレンスを有する領域が混在する場合を考える。図9のように設定された局所領域を、サブウィンドウ設定部7において、図3のような9個のサブウィンドウに分割する。
【0074】
分割して得られた9個のサブウィンドウを、サブウィンドウ組み合わせ処理部31において、図10のような、10通りのサブウィンドウの組み合わせを考える。10通りの組み合わせにより10種類の新たな局所領域において、図9に示すような境界がある場合、図10(f)〜(j)では、新たな局所領域においては一様であるという判定結果が得られる。一方、図10(a)〜(e)においては、境界が存在するという結果が得られる。なお、分割数やサブウィンドウの組み合わせ方法などはここで説明した個数や形状に限定されるものではなく、どのような個数や形状を用いてもいい。
【0075】
得られた各判定結果において、図10(h)〜(j)のような横方向については境界が存在する結果であるという判定がなされ、また図10(c)〜(e)のような縦方向については一様な領域であると判定がなされる。この結果から縦方向に境界があることがわかる。
【0076】
次に、図10(a)と(b)の結果を比較する。この結果、図10(a)は一様な領域であり,図10(b)は境界を含む領域であると判断される。以上をまとめると、サブウィンドウ1、2、4、5、7、8は同一の領域であり、サブウィンドウ3、6、9は異なる領域であると考えられるので、境界の位置を得ることができる。本方式によれば、境界の存在の有無から方向、位置を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0077】
1 画像格納部、2 局所領域設定部、3 局所領域コヒーレンス算出部、4 理論平均値算出部、5 理論標準偏差算出部、6 閾値算出処理部、7 サブウィンドウ設定部、8 サブウィンドウコヒーレンス算出部、9 平均処理部、10 境界領域判定処理部、11 出力格納部、21 理論コヒーレンス分布算出部、22 コヒーレンス分布算出部、23 分布類似度算出部、24 類似度境界判定処理部、31 サブウィンドウ組み合わせ処理部、32 境界判定結果結合処理部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる時間に観測された、同一の領域の2枚のレーダ画像を格納する画像格納部と、
2枚のレーダ画像における注目画素とその近傍画素で構成される局所領域を設定する局所領域設定部と、
2枚のレーダ画像間の前記局所領域のコヒーレンスを算出する局所領域コヒーレンス算出部と、
前記局所領域を所定の画素数及び形状の複数のサブウィンドウに分割するサブウィンドウ設定部と、
前記局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの理論平均値を算出する理論平均値算出部と、
前記局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの理論標準偏差又は理論分散を算出する理論標準偏差算出部と、
前記理論平均値及び前記理論標準偏差又は理論分散に基づき、所定の閾値を算出する閾値算出処理部と、
各サブウィンドウのコヒーレンスを算出するサブウィンドウコヒーレンス算出部と、
前記各サブウィンドウのコヒーレンスの平均値を算出する平均処理部と、
前記所定の閾値及び前記サブウィンドウのコヒーレンスの平均値の閾値処理に基づき、前記局所領域が一様な領域であるのか、前記局所領域内に異なる性質を有する領域の境界が含まれるのかを判定する境界領域判定処理部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
異なる時間に観測された、同一の領域の2枚のレーダ画像を格納する画像格納部と、
2枚のレーダ画像における注目画素とその近傍画素で構成される局所領域を設定する局所領域設定部と、
2枚のレーダ画像間の前記局所領域のコヒーレンスを算出する局所領域コヒーレンス算出部と、
前記局所領域を所定の画素数及び形状の複数のサブウィンドウに分割するサブウィンドウ設定部と、
前記局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、コヒーレンスの理論確率密度分布を算出する理論コヒーレンス分布算出部と、
各サブウィンドウのコヒーレンスを算出するサブウィンドウコヒーレンス算出部と、
前記各サブウィンドウのコヒーレンスに基づき、コヒーレンスの確率密度分布を算出するコヒーレンス分布算出部と、
前記コヒーレンスの理論確率密度分布及び前記コヒーレンスの確率密度分布の類似度を算出する分布類似度算出部と、
前記類似度及び予め設定した所定の閾値の閾値処理に基づき、前記局所領域が一様な領域であるのか、前記局所領域内に異なる性質を有する領域の境界が含まれるのかを判定する類似度境界判定処理部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
異なる時間に観測された、同一の領域の2枚のレーダ画像を格納する画像格納部と、
2枚のレーダ画像における注目画素とその近傍画素で構成される局所領域を設定する局所領域設定部と、
前記局所領域を所定の画素数及び形状の複数のサブウィンドウに分割するサブウィンドウ設定部と、
サブウィンドウを組み合わせて複数の新しい局所領域を設定するサブウィンドウ組み合わせ処理部と、
2枚のレーダ画像間の前記新しい局所領域のコヒーレンスを算出する局所領域コヒーレンス算出部と、
前記新しい局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの理論平均値を算出する理論平均値算出部と、
前記新しい局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの理論標準偏差又は理論分散を算出する理論標準偏差算出部と、
前記理論平均値及び前記理論標準偏差又は理論分散に基づき、所定の閾値を算出する閾値算出処理部と、
前記新しい局所領域の各サブウィンドウのコヒーレンスを算出するサブウィンドウコヒーレンス算出部と、
前記新しい局所領域の各サブウィンドウのコヒーレンスの平均値を算出する平均処理部と、
前記所定の閾値及び前記サブウィンドウのコヒーレンスの平均値の閾値処理に基づき、前記新しい局所領域が一様な領域であるのか、前記新しい局所領域内に異なる性質を有する領域の境界が含まれるのかを判定する境界領域判定処理部と、
前記複数の新しい局所領域の境界判定結果を統合して、前記局所領域における異なる性質を有する領域の境界の位置及び方向を判定する境界判定結果結合処理部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
異なる時間に観測された、同一の領域の2枚のレーダ画像を格納する画像格納部と、
2枚のレーダ画像における注目画素とその近傍画素で構成される局所領域を設定する局所領域設定部と、
前記局所領域を所定の画素数及び形状の複数のサブウィンドウに分割するサブウィンドウ設定部と、
サブウィンドウを組み合わせて複数の新しい局所領域を設定するサブウィンドウ組み合わせ処理部と、
2枚のレーダ画像間の前記新しい局所領域のコヒーレンスを算出する局所領域コヒーレンス算出部と、
前記新しい局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、コヒーレンスの理論確率密度分布を算出する理論コヒーレンス分布算出部と、
各サブウィンドウのコヒーレンスを算出するサブウィンドウコヒーレンス算出部と、
前記各サブウィンドウのコヒーレンスに基づき、コヒーレンスの確率密度分布を算出するコヒーレンス分布算出部と、
前記コヒーレンスの理論確率密度分布及び前記コヒーレンスの確率密度分布の類似度を算出する分布類似度算出部と、
前記類似度及び予め設定した所定の閾値の閾値処理に基づき、前記新しい局所領域が一様な領域であるのか、前記新しい局所領域内に異なる性質を有する領域の境界が含まれるのかを判定する類似度境界判定処理部と、
前記複数の新しい局所領域の境界判定結果を統合して、前記局所領域における異なる性質を有する領域の境界の位置及び方向を判定する境界判定結果結合処理部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項1】
異なる時間に観測された、同一の領域の2枚のレーダ画像を格納する画像格納部と、
2枚のレーダ画像における注目画素とその近傍画素で構成される局所領域を設定する局所領域設定部と、
2枚のレーダ画像間の前記局所領域のコヒーレンスを算出する局所領域コヒーレンス算出部と、
前記局所領域を所定の画素数及び形状の複数のサブウィンドウに分割するサブウィンドウ設定部と、
前記局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの理論平均値を算出する理論平均値算出部と、
前記局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの理論標準偏差又は理論分散を算出する理論標準偏差算出部と、
前記理論平均値及び前記理論標準偏差又は理論分散に基づき、所定の閾値を算出する閾値算出処理部と、
各サブウィンドウのコヒーレンスを算出するサブウィンドウコヒーレンス算出部と、
前記各サブウィンドウのコヒーレンスの平均値を算出する平均処理部と、
前記所定の閾値及び前記サブウィンドウのコヒーレンスの平均値の閾値処理に基づき、前記局所領域が一様な領域であるのか、前記局所領域内に異なる性質を有する領域の境界が含まれるのかを判定する境界領域判定処理部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
異なる時間に観測された、同一の領域の2枚のレーダ画像を格納する画像格納部と、
2枚のレーダ画像における注目画素とその近傍画素で構成される局所領域を設定する局所領域設定部と、
2枚のレーダ画像間の前記局所領域のコヒーレンスを算出する局所領域コヒーレンス算出部と、
前記局所領域を所定の画素数及び形状の複数のサブウィンドウに分割するサブウィンドウ設定部と、
前記局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、コヒーレンスの理論確率密度分布を算出する理論コヒーレンス分布算出部と、
各サブウィンドウのコヒーレンスを算出するサブウィンドウコヒーレンス算出部と、
前記各サブウィンドウのコヒーレンスに基づき、コヒーレンスの確率密度分布を算出するコヒーレンス分布算出部と、
前記コヒーレンスの理論確率密度分布及び前記コヒーレンスの確率密度分布の類似度を算出する分布類似度算出部と、
前記類似度及び予め設定した所定の閾値の閾値処理に基づき、前記局所領域が一様な領域であるのか、前記局所領域内に異なる性質を有する領域の境界が含まれるのかを判定する類似度境界判定処理部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
異なる時間に観測された、同一の領域の2枚のレーダ画像を格納する画像格納部と、
2枚のレーダ画像における注目画素とその近傍画素で構成される局所領域を設定する局所領域設定部と、
前記局所領域を所定の画素数及び形状の複数のサブウィンドウに分割するサブウィンドウ設定部と、
サブウィンドウを組み合わせて複数の新しい局所領域を設定するサブウィンドウ組み合わせ処理部と、
2枚のレーダ画像間の前記新しい局所領域のコヒーレンスを算出する局所領域コヒーレンス算出部と、
前記新しい局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの理論平均値を算出する理論平均値算出部と、
前記新しい局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、各サブウィンドウでコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの理論標準偏差又は理論分散を算出する理論標準偏差算出部と、
前記理論平均値及び前記理論標準偏差又は理論分散に基づき、所定の閾値を算出する閾値算出処理部と、
前記新しい局所領域の各サブウィンドウのコヒーレンスを算出するサブウィンドウコヒーレンス算出部と、
前記新しい局所領域の各サブウィンドウのコヒーレンスの平均値を算出する平均処理部と、
前記所定の閾値及び前記サブウィンドウのコヒーレンスの平均値の閾値処理に基づき、前記新しい局所領域が一様な領域であるのか、前記新しい局所領域内に異なる性質を有する領域の境界が含まれるのかを判定する境界領域判定処理部と、
前記複数の新しい局所領域の境界判定結果を統合して、前記局所領域における異なる性質を有する領域の境界の位置及び方向を判定する境界判定結果結合処理部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
異なる時間に観測された、同一の領域の2枚のレーダ画像を格納する画像格納部と、
2枚のレーダ画像における注目画素とその近傍画素で構成される局所領域を設定する局所領域設定部と、
前記局所領域を所定の画素数及び形状の複数のサブウィンドウに分割するサブウィンドウ設定部と、
サブウィンドウを組み合わせて複数の新しい局所領域を設定するサブウィンドウ組み合わせ処理部と、
2枚のレーダ画像間の前記新しい局所領域のコヒーレンスを算出する局所領域コヒーレンス算出部と、
前記新しい局所領域のコヒーレンス及び各サブウィンドウの画素数に基づき、コヒーレンスの理論確率密度分布を算出する理論コヒーレンス分布算出部と、
各サブウィンドウのコヒーレンスを算出するサブウィンドウコヒーレンス算出部と、
前記各サブウィンドウのコヒーレンスに基づき、コヒーレンスの確率密度分布を算出するコヒーレンス分布算出部と、
前記コヒーレンスの理論確率密度分布及び前記コヒーレンスの確率密度分布の類似度を算出する分布類似度算出部と、
前記類似度及び予め設定した所定の閾値の閾値処理に基づき、前記新しい局所領域が一様な領域であるのか、前記新しい局所領域内に異なる性質を有する領域の境界が含まれるのかを判定する類似度境界判定処理部と、
前記複数の新しい局所領域の境界判定結果を統合して、前記局所領域における異なる性質を有する領域の境界の位置及び方向を判定する境界判定結果結合処理部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−185699(P2011−185699A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50342(P2010−50342)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]