説明

画像処理装置

【課題】 印刷媒体に対する画像の印刷を迅速に実行し得る技術を提供すること。
【解決手段】 プリンタが複数組の同じ対象画像の印刷を実行すべき場合に、1組目の対象画像の印刷が実行される際に、PCは、2種類の印刷順序(+90度状態、−90度状態)の中から+90度状態の印刷順序を選択し、+90度状態の印刷データを生成し、+90度状態の印刷データをプリンタに供給する。2組目の対象画像の印刷が実行される際に、PCは、2種類の印刷順序の中から−90度状態の印刷順序を選択し、−90度状態の印刷データを生成し、+90度状態の印刷データと−90度状態の印刷データとのうち、迅速な印刷を実現可能な+90度状態の印刷データをプリンタに供給する。3組目以降の対象画像の印刷が実行される際に、PCは、迅速な印刷を実現可能な+90度状態の印刷データをプリンタに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、主走査方向に沿った印刷ヘッドの移動と、副走査方向に沿った印刷媒体の搬送と、を実行することによって、印刷媒体に対する画像の印刷を実行する印刷実行部のための画像処理装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
例えば、主走査方向に沿った印刷ヘッドの移動(即ち印刷ヘッドの主走査)と、副走査方向に沿った印刷媒体の搬送と、を実行することによって、印刷媒体に対する画像の印刷を実行するシリアルタイプのインクジェットプリンタが知られている。シリアルタイプのインクジェットプリンタは、通常、印刷媒体を搬送しながら、印刷ヘッドの複数回の主走査を実行することによって、当該印刷媒体に印刷対象の対象画像を印刷する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−159702号公報
【特許文献2】特開2010−100017号公報
【特許文献3】特開2009−262346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷媒体に対する画像の印刷を迅速に実行することが求められている。本明細書では、印刷媒体に対する画像の印刷を迅速に実行し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、主走査方向に沿った印刷ヘッドの移動と、副走査方向に沿った印刷媒体の搬送と、を実行することによって、印刷媒体に対する画像の印刷を実行する印刷実行部のための画像処理装置を開示する。画像処理装置は、選択部と、印刷データ生成部と、供給部と、を備える。選択部は、印刷対象の対象画像を印刷するためのM種類(Mは2以上の整数)の印刷順序の中から、1種類の印刷順序を選択する。M種類の印刷順序のそれぞれでは、印刷ヘッドの最初の主走査によって印刷されるべき対象画像内の領域が互いに異なる。印刷データ生成部は、対象画像を表わす対象データを用いて、印刷実行部が上記の1種類の印刷順序に従った対象画像の印刷を実行可能な印刷データを生成する。供給部は、印刷データを印刷実行部に供給する。印刷実行部が、N組(Nは2以上の整数)の同じ対象画像の印刷を実行すべき場合に、選択部は、M種類の印刷順序の中から、2種類以上の印刷順序のそれぞれを順次選択し、印刷データ生成部は、順次選択される2種類以上の印刷順序に対応する2種類以上の印刷データのそれぞれを順次生成する。
【0006】
上記の構成によると、印刷実行部がN組の同じ対象画像の印刷を実行すべき場合に、画像処理装置は、M種類の印刷順序の中から2種類以上の印刷順序のそれぞれを順次選択し、当該2種類以上の印刷順序に対応する2種類以上の印刷データのそれぞれを順次生成する。この構成によると、印刷データを印刷実行部に迅速に供給し得るために、印刷実行部は、印刷媒体に対する画像の印刷を迅速に実行し得る。
【0007】
N組の対象画像のうち、第1組の対象画像の印刷が実行される際に、選択部は、M種類の印刷順序の中から、第1種の印刷順序を選択してもよく、印刷データ生成部は、第1種の印刷順序に対応する第1種の印刷データを生成してもよい。N組の対象画像のうち、第1組の対象画像の後に印刷されるべき第2組の対象画像の印刷が実行される際に、選択部は、M種類の印刷順序の中から、第1種の印刷順序と異なる第2種の印刷順序を選択してもよく、印刷データ生成部は、第2種の印刷順序に対応する第2種の印刷データであって、第1種の印刷データと異なる第2種の印刷データを生成してもよい。この構成によると、第1組の対象画像の印刷が実行される際に、第1種の印刷順序に対応する第1種の印刷データと、第2種の印刷順序に対応する第2種の印刷データと、の両方を生成する構成と比べると、第1種の印刷データを迅速に印刷実行部に供給し得るために、印刷実行部は、第1組の対象画像の印刷を迅速に実行し得る。
【0008】
第1組の対象画像の印刷が実行される際に、供給部は、第1種の印刷データを印刷実行部に供給してもよい。第2組の対象画像の印刷が実行される際に、供給部は、第1種の印刷データと第2種の印刷データとを含む上記の2種類以上の印刷データのうち、印刷に必要な時間が短いと推定される1種類の印刷データを、印刷実行部に供給してもよい。この構成によると、印刷実行部は、第2組の対象画像の印刷を迅速に実行し得る。
【0009】
画像処理装置は、さらに、対象データから得られる特定データを解析する解析部を備えていてもよい。供給部は、上記の解析の結果に基づいて、第1種の印刷データと第2種の印刷データとを含む上記の2種類以上の印刷データのうち、印刷に必要な主走査の回数が少ない上記の1種類の印刷データを、印刷実行部に供給してもよい。この構成によると、画像処理装置は、印刷に必要な時間が短いと推定される上記の1種類の印刷データを、印刷実行部に適切に供給し得る。
【0010】
第1組の対象画像の印刷が実行される際に、供給部は、第1種の印刷データを印刷実行部に供給してもよい。第2組の対象画像の印刷が実行される際に、供給部は、第2種の印刷データを印刷実行部に供給してもよい。
【0011】
第2組の対象画像の印刷が実行される際に、供給部は、第2種の印刷データの生成が完了する前に、第1種の印刷データに従った印刷の実行が完了することが予測される場合に、第2種の印刷データの生成が完了するのを待たずに、第1種の印刷データを印刷実行部に供給してもよい。この構成によると、画像処理装置は、第2組の対象画像の印刷が実行される際に、第2種の印刷データの生成に時間を要する場合に、第1種の印刷データを印刷実行部に供給することができる。このために、第2種の印刷データの生成が完了するのを待って、印刷データを印刷実行部に供給する構成と比べると、印刷実行部は、第2組の対象画像の印刷を迅速に実行し得る。
【0012】
N≦Mである場合に、選択部は、M種類の印刷順序の中から、N種類の印刷順序のそれぞれを順次選択してもよく、印刷データ生成部は、N種類の印刷順序に対応するN種類の印刷データのそれぞれを順次生成してもよい。N>Mである場合に、選択部は、M種類の印刷順序の中から、M種類の印刷順序のそれぞれを順次選択してもよく、印刷データ生成部は、M種類の印刷順序に対応するM種類の印刷データのそれぞれを順次生成してもよい。この構成によると、画像処理装置は、MとNとの大小関係に応じて、N組の同じ対象画像の印刷を印刷実行部に適切に実行させ得る。
【0013】
M≧K≧2である場合に、K組目の対象画像の印刷が実行される際に、選択部は、M種類の印刷順序の中から、K種類目の印刷順序を選択してもよく、印刷データ生成部は、K種類目の印刷順序に対応するK種類目の印刷データを生成してもよく、供給部は、K種類の印刷データのうち、印刷に必要な時間が短いと推定される1種類の印刷データを、印刷実行部に供給してもよい。N≧K>Mである場合に、K組目の対象画像の印刷が実行される際に、供給部は、M種類の印刷データのうち、印刷に必要な時間が短いと推定される1種類の印刷データを、印刷実行部に供給してもよい。
【0014】
印刷実行部が、1組の対象画像のみを印刷を実行すべき場合に、選択部は、M種類の印刷順序の中から、予め決められている特定の種類の印刷順序を選択してもよく、印刷データ生成部は、上記の特定の種類の印刷順序に対応する特定の印刷データを生成してもよく、供給部は、上記の特定の印刷データを印刷実行部に供給してもよい。この構成によると、画像処理装置は、1組の対象画像のみの印刷を印刷実行部に適切に実行させ得る。
【0015】
M種類の印刷順序のそれぞれは、以下の各条件(A)〜(C)を前提とする印刷順序であってもよい。(A)対象画像内の複数個の単位領域のそれぞれが、印刷ヘッドの1回の主走査が実行されることによって、印刷される。(B)複数個の単位領域のうちの第1種の単位領域が、第1の側から第2の側への印刷ヘッドの1回の主走査が実行されることによって、印刷される。(C)複数個の単位領域のうち、第1種の単位領域と異なる第2種の単位領域が、第1の側から第2の側への印刷ヘッドの1回の主走査と、第2の側から第1の側への印刷ヘッドの1回の主走査と、のどちらかが選択的に実行されることによって、印刷される。
【0016】
第1種の単位領域は、印刷ヘッドが複数種類の色のインクを吐出することによって印刷される領域であってもよい。第2種の単位領域は、印刷ヘッドが特定の1種類の色のインクのみを吐出することによって印刷される領域であってもよい。
【0017】
M種類の印刷順序のそれぞれは、さらに、以下の条件、即ち、(D1)画像処理装置が、複数個の単位領域のうちの最初の単位領域を決定する際に、対象画像の先端が空白領域を含む場合に、最初の単位領域が空白領域を含まないように、最初の単位領域が決定されること、を前提とする印刷順序であってもよい。また、M種類の印刷順序のそれぞれは、さらに、以下の条件、即ち、(D2)画像処理装置が、複数個の単位領域のうちの第1の単位領域を決定した後に、第1の単位領域の次の第2の単位領域を決定する際に、対象画像が、第1の単位領域の第2の単位領域側の辺に隣接する空白領域を含む場合に、第2の単位領域が空白領域を含まないように、第2の単位領域が決定されること、を前提とする印刷順序であってもよい。
【0018】
印刷実行部は、印刷媒体の短辺が副走査方向に沿うように、印刷媒体を搬送可能であると共に、搬送される印刷媒体の長辺に沿って印刷ヘッドを移動可能であってもよい。印刷実行部が、1ページ分の略矩形の対象画像の長辺が印刷媒体の長辺に沿うように、対象画像を印刷媒体に印刷すべき場合に、M種類の印刷順序は、印刷ヘッドの複数回の主走査によって、対象画像を、対象画像の第1の長辺側から第2の長辺側に向かって順次印刷するための印刷順序と、印刷ヘッドの複数回の主走査によって、対象画像を、対象画像の第2の長辺側から第1の長辺側に向かって順次印刷するための印刷順序と、を含んでいてもよい。
【0019】
上記の画像処理装置の機能を実現するための制御方法、コンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを格納するコンピュータ読取可能記憶媒体も新規で有用である。また、上記の画像処理装置と上記の印刷実行部とを備える印刷システムも新規で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】印刷システムの構成を示す。
【図2】1ページ目の対象画像の印刷を説明するための図を示す。
【図3】2ページ目の対象画像の印刷を説明するための図を示す。
【図4】プリンタドライバ処理のフローチャートを示す。
【図5】印刷データ生成処理のフローチャートを示す。
【図6】RGBデータを模式的に示す。
【図7】第1実施例の効果を説明するための図を示す。
【図8】第3実施例の印刷を説明するための図を示す。
【図9】第3実施例の印刷と変形例の印刷とを説明するための一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施例)
(システムの構成)
図1に示すように、印刷システム2は、PC10と、PC10の周辺機器であるインクジェットプリンタ50と、を備える。PC10とインクジェットプリンタ50とは、ネットワークケーブル4(即ちネットワーク)を介して、相互に通信可能である。なお、以下では、インクジェットプリンタ50のことを簡単に「プリンタ50」と呼ぶことがある。
【0022】
(PC10の構成)
PC10は、操作部12と、表示部14と、ネットワークインターフェイス16と、制御部20と、を備える。各部12,14,16,20は、バス線18に接続されている。操作部12は、キーボード及びマウスによって構成される。ユーザは、操作部12を操作することによって、様々な指示をPC10に入力することができる。表示部14は、様々な情報を表示するためのディスプレイである。ネットワークインターフェイス16には、ネットワークケーブル4が接続される。
【0023】
制御部20は、CPU22と、ROM、RAM、ハードディスク等のメモリ24と、を備える。CPU22は、メモリ24に格納されているプログラム(例えばプリンタドライバ26)に従って、様々な処理を実行する。CPU22がプリンタドライバ26に従って処理を実行することによって、選択部30、印刷データ生成部34、供給部36、及び、解析部38の各機能が実現される。
【0024】
メモリ24は、プリンタ50のためのプリンタドライバ26を格納している。プリンタドライバ26は、プリンタ50と共にパッケージされているメディアから、PC10にインストールされる。なお、変形例では、プリンタドライバ26は、プリンタ50のベンダによって提供されるサーバから、インターネットを介して、PC10にインストールされてもよい。
【0025】
(インクジェットプリンタ50の構成)
プリンタ50は、いわゆるシリアルタイプのインクジェットプリンタである。プリンタ50は、印刷ヘッド52と、ヘッド駆動部54と、媒体搬送部56と、制御部60と、を備える。図1には、印刷ヘッド52の簡略化された平面図が示されている。当該平面図に示されるように、印刷ヘッド52は、シアン(C)、マゼンタ(M)、及び、イエロー(Y)の3種類の有彩色と、ブラック(K)の1種類の無彩色と、を含む4種類の色のインク滴を吐出するための4本のノズル列NC,NM,NY,NKを備える。各ノズル列NC,NM,NY,NKは、主走査方向(即ち印刷ヘッド52の移動方向)において、非対称に配列されている(即ち、NC,NM,NY,NK,NY,NM,NCのように対称に配列されていない)。なお、変形例では、各ノズル列は、主走査方向において、対称に配列されていてもよい。各ノズル列NC,NM,NY,NKは、対応する色のインク滴を吐出するための複数個のノズルによって構成される。1本のノズル列NCを構成する複数個のノズルC1等は、副走査方向(即ち用紙Pの搬送方向)に沿って並んでいる。他のノズル列NM,NY,NKも、同様の構成を有する。また、各ノズル列NC,NM,NY,NKは、CMYKの4個のノズルが主走査方向に沿って伸びる一直線上に位置するように、構成されている。例えば、4個のノズルC1,M1,Y1,K1は、主走査方向に沿って伸びる一直線上に位置する。
【0026】
ヘッド駆動部54は、制御部60からの指示に従って、主走査方向に沿って印刷ヘッド52を往復移動させる(即ち印刷ヘッド52の主走査を実行する)。なお、本実施例では、印刷ヘッド52の主走査のうちの往路、復路のことを、それぞれ、符号OP(Outgoing Path)、RP(Returning Path)で表現する。また、ヘッド駆動部54は、制御部60からの指示に従って、印刷ヘッド52からインク滴を吐出させる。
【0027】
媒体搬送部56は、制御部60からの指示に従って、給紙トレイに収容されている用紙Pを給紙トレイから取り出して、主走査方向に直交する方向である副走査方向に沿って、用紙Pを搬送する。用紙Pは、短辺PSと長辺PLとを含む矩形形状(例えばA4サイズ、レターサイズ等)を有する。本実施例では、媒体搬送部56は、用紙Pの短辺PSが副走査方向(図1の上方向)に沿うように、用紙Pを搬送可能であり、用紙Pの長辺PLが副走査方向に沿うように、用紙Pを搬送不可能である場合を想定している。
【0028】
制御部60は、PC10から供給される印刷データに従って、ヘッド駆動部54及び媒体搬送部56の動作を制御する。
【0029】
(印刷対象の対象画像の印刷の概略)
PC10のユーザは、操作部12を操作して、文書作成ソフト、表計算ソフト、描画ソフト等のアプリケーションプログラムを利用することができる。さらに、ユーザは、アプリケーションによって生成されるデータによって表わされる画像を印刷するための指示を、操作部12に加えることができる。本実施例では、印刷対象の画像のことを「対象画像」と呼び、対象画像を表わすデータ(即ちアプリケーションによって生成されるデータ)のことを「対象データ」と呼ぶ。
【0030】
(1ページ目の対象画像)
図2(A)は、対象画像T1の一例を示す。対象画像T1は、1枚の用紙に印刷されるべき画像、即ち、1ページ分の画像(特に1ページ目の画像)である。アプリケーションによって生成される対象データでは、対象画像T1の上下方向及び左右方向が決められている。例えば、PC10の表示部14に対象画像T1が表示される際には、通常、対象データにおいて決められている対象画像T1の上下方向が表示部14の上下方向に沿うように(即ち対象画像T1の左右方向が表示部14の左右方向に沿うように)、対象画像T1が表示される。図2(A)の対象画像T1は、対象画像T1の上下方向及び左右方向と、図2の紙面の上下方向及び左右方向と、が一致している状態である。以下では、図2(A)の状態の対象画像T1のことを「0度状態の対象画像T1」と呼ぶ。
【0031】
対象画像T1は、対象画像T1の左右方向に沿って伸びる短辺IS1,IS2と、対象画像T1の上下方向に沿って伸びる長辺IL1,IL2と、を含む矩形形状を有する。さらに、本実施例では、対象画像T1の長辺IL1,IL2(即ち対象画像T1の上下方向)が用紙Pの長辺PLに沿うように印刷が実行される場合を例として、以下の説明を続ける。
【0032】
対象画像T1は、花の図形と、アルファベットの文字列(a〜g、A〜G)と、を含む。花の図形は、有彩色によって表わされるカラー画像であり、アルファベットの文字列は、無彩色(具体的には黒色)によって表わされるモノクロ画像である。本実施例では、花の図形は、CMYKのインクを用いて印刷され、アルファベットの文字列は、Kのインクのみを用いて印刷される場合を想定している。
【0033】
上述したように、本実施例では、用紙Pの短辺PSが副走査方向に沿うように用紙Pが搬送されて、対象画像T1の長辺IL1,IL2が用紙Pの長辺PLに沿うように印刷が実行される。従って、図2(A)に示される0度状態の対象画像T1を表わす印刷データが生成されても、プリンタ50は、適切な印刷を実行することができない。このため、本実施例では、PC10は、図2(B)に示される+90度状態の対象画像T1を表わす印刷データ、又は、図2(C)に示される−90度状態の対象画像T1を表わす印刷データに従って、対象画像T1の印刷をプリンタ50に実行させる。0度状態の対象画像T1を時計回り方向に90度回転させた状態が、+90度状態の対象画像T1であり、0度状態の対象画像T1を反時計回り方向に90度回転させた状態が、−90度状態の対象画像T1である。
【0034】
(対象画像T1の印刷のための前提条件)
本実施例では、以下の(A)〜(D)の各条件を満たすように、対象画像T1の印刷が実行される。
【0035】
(A)対象画像T1内の複数個の単位領域のそれぞれは、印刷ヘッド52の1回の主走査が実行されることによって、印刷される。例えば、図2(B)の+90度状態の対象画像T1は、3個の単位領域A1〜A3を含む。3個の単位領域A1〜A3は、印刷ヘッド52の3回の主走査によって、長辺IL1側から長辺IL2側に向かって、順次印刷される。即ち、最初に単位領域A1が印刷され、次いで単位領域A2が印刷され、最後に単位領域A3が印刷される。また、例えば、図2(C)の−90度状態の対象画像T1は、3個の単位領域A4〜A6を含む。3個の単位領域A4〜A6は、印刷ヘッド52の3回の主走査によって、長辺IL2側から長辺IL1側に向かって、順次印刷される。なお、個々の単位領域(例えばA1)の副走査方向の幅は、印刷ヘッド52の1本のノズル列の長さ(即ち、副走査方向の最も上流側のノズルと、副走査方向の最も下流側のノズルと、の間の距離)に等しい。また、以下では、図2(B)に示される印刷、図2(C)に示される印刷のことを、それぞれ、「+90度状態の印刷」、「−90度状態の印刷」と呼ぶことがある。
【0036】
(B)対象画像T1内の複数個の単位領域のうち、カラー画像を含む単位領域は、印刷ヘッド52の1回の往路OPの主走査が実行されることによって、印刷される。例えば、+90度状態の対象画像T1は、カラー画像を含む単位領域A1を含む。従って、+90度状態の印刷では、単位領域A1は、往路OPの主走査が実行されることによって、印刷される。また、例えば、−90度状態の対象画像T1は、カラー画像を含む単位領域A5,A6を含む。従って、−90度状態の印刷では、単位領域A5,A6のそれぞれは、往路OPの主走査が実行されることによって、印刷される。
【0037】
上述したように、本実施例では、カラー画像を含む単位領域の印刷には、印刷ヘッド52の往路OPの主走査を固定的に利用する。その理由を以下に記載する。カラー画像が印刷される場合には、プリンタ50は、通常、CMYKの4種類の色のうちの2種類以上の色のインク滴を用いて、1個のドットを用紙上に形成し得る。例えば、対象画像T1の花の図形のうちの葉の部分(即ち緑色)が印刷される場合には、プリンタ50は、シアンのインク滴とイエローのインク滴とを、用紙上の同じ位置に付着させて、緑色の1個のドットを用紙上に形成する。仮に、緑色のドットを形成するために往路OPの主走査が採用されると、図1のノズル列NCとノズル列NYとの位置関係から明らかなように、例えば、ノズルY1から吐出されたイエローのインク滴が用紙上の所定位置に付着した後に、ノズルC1から吐出されたシアンのインク滴が当該所定位置に付着する。即ち、イエローのインク滴の上にシアンのインク滴が付着することによって、緑色の1個のドットが形成される。一方において、仮に、緑色のドットを形成するために復路RPの主走査が採用されると、例えば、ノズルC1から吐出されたシアンのインク滴が用紙上の所定位置に付着した後に、ノズルY1から吐出されたイエローのインク滴が当該所定位置に付着する。即ち、シアンのインク滴の上にイエローのインク滴が付着することによって、緑色の1個のドットが形成される。従って、往路OPの主走査が採用される場合と復路RPの主走査が採用される場合とでは、緑色の1個のドットを形成するためのシアン及びイエローの各インク滴の用紙への付着順序が異なるために、緑色のドットの見た目の色が異なり得る。このように、2種類以上の色のインク滴の用紙への付着順序が異なることに起因して、印刷画像の見た目の色が異なるという事象が発生するのを避けるために、本実施例では、カラー画像を含む単位領域の印刷には、往路OPの主走査を固定的に利用する。
【0038】
(C)複数個の単位領域のうち、モノクロ画像のみを含む単位領域は、印刷ヘッド52の1回の往路OPの主走査と、印刷ヘッド52の1回の復路RPの主走査と、のどちらかが選択的に実行されることによって、印刷される。例えば、+90度状態の対象画像T1は、モノクロ画像のみを含む単位領域A2,A3を含む。従って、+90度状態の印刷では、単位領域A2,A3のそれぞれは、往路OPの主走査及び復路RPの主走査のどちらかが選択的に実行されることによって、印刷される。また、例えば、−90度状態の対象画像T1は、モノクロ画像のみを含む単位領域A4を含む。従って、−90度状態の印刷では、単位領域A4は、往路OPの主走査及び復路RPの主走査のどちらかが選択的に実行されることによって、印刷される。
【0039】
なお、カラー画像を含む単位領域の印刷と異なり、モノクロ画像のみを含む単位領域の印刷には、ブラックのインクのみが利用されるために、往路OPの主走査及び復路RPの主走査のどちらが採用されても、ドットの見た目の色は同じである。従って、本実施例では、モノクロ画像のみを含む単位領域の印刷には、往路OPの主走査又は復路RPの主走査を選択的に利用する。
【0040】
続いて、モノクロ画像のみを含む単位領域の印刷のために、往路OPの主走査と復路RPの主走査とのうちの一方を選択するための手法を以下に説明する。本実施例では、往路OPの主走査と復路RPの主走査とのうち、迅速な印刷を実現可能な主走査が選択される。例えば、+90度状態の印刷では、カラー画像を含む単位領域A1の印刷のために、往路OPの主走査が採用される。仮に、次に印刷されるべき単位領域A2の印刷のために、往路OPの主走査が採用されると、往路OPの主走査の開始位置まで印刷ヘッド52を戻す必要がある。即ち、印刷ヘッド52からインク滴が吐出されない状態で、復路RPの主走査を実行する必要がある。これに対し、単位領域A2の印刷のために、復路RPの主走査が採用されると、往路OPの主走査の開始位置まで印刷ヘッド52を戻す必要がない。従って、本実施例では、単位領域A2の印刷のために、復路RPの主走査が採用される。同様に、単位領域A3の印刷のために、往路OPの主走査が採用される。
【0041】
(D)PC10の制御部20は、可能な限り、空白領域M1,M2,M3(図2(A)参照)が各単位領域A1〜A3等に含まれないように、各単位領域A1〜A3等を順次決定する。
【0042】
例えば、制御部20は、+90度状態の対象画像T1のうちの最初に印刷されるべき単位領域A1を決定する際に、長辺IL1に隣接する空白領域M1が単位領域A1に含まれないように、単位領域A1を決定する。即ち、制御部20は、対象画像T1の先端(即ち図2(B)の上端)が空白領域M1を含む場合に、空白領域M1が単位領域A1に含まれないように、単位領域A1を決定する。制御部20は、次に印刷されるべき単位領域A2を決定する際に、単位領域A1から長辺IL2側に向けてアルファベットC,D(さらにc,d)が連続的に記述されているために、単位領域A2が単位領域A1に隣接するように、単位領域A2を決定する。この場合、単位領域A2は、空白領域M2(図2(A)参照)を含む。また、制御部20は、次に印刷されるべき単位領域A3を決定する際に、単位領域A2から長辺IL2側に向けてアルファベットE,F(さらにe,f)が連続的に記述されているために、単位領域A3が単位領域A2に隣接するように、単位領域A3を決定する。この場合、単位領域A3は、空白領域M3(図2(A)参照)を含む。
【0043】
同様に、制御部20は、−90度状態の対象画像T1について、単位領域A4〜A6を順次決定する。特に、制御部20は、単位領域A4を決定した後に、単位領域A4の次の単位領域A5を決定する際に、単位領域A4の単位領域A5側の辺(即ち図2(C)の単位領域A4の下辺)に隣接する空白領域M2が存在するために、単位領域A5が空白領域M2を含まないように、単位領域A5を決定する。
【0044】
このように条件(D)を採用すると、条件(D)を採用しない構成(空白領域を考慮しない構成)と比べて、カラー画像(花の図形)が異なる複数個の単位領域に跨って配置されることを抑制し得る。即ち、条件(D)を採用すると、カラー画像を含む単位領域の数を低減し得るために、印刷に必要な主走査の回数を低減し得る。
【0045】
制御部20は、上記の各条件(A)〜(D)を前提とすることによって、+90度状態の対象画像T1を印刷するための印刷順序(即ち図2(B)の単位領域A1→A2→A3)と、−90度状態の対象画像T1を印刷するための印刷順序(即ち図2(C)の単位領域A4→A5→A6)と、を決定することができる。図2(B)及び(C)から明らかなように、+90度状態の印刷順序では、最初の主走査で単位領域A1が印刷され、−90度状態の印刷順序では、最初の主走査で単位領域A4が印刷される。従って、M種類(本実施例ではM=2である)の印刷順序では、最初の主走査で印刷されるべき領域が互いに異なる。
【0046】
(2ページ目の対象画像T2)
図3(A)は、2ページ目の対象画像T2の一例を示す。数字の文字列は、無彩色によって表わされるモノクロ画像であり、Kのインクのみを用いて印刷される。1ページ目の対象画像T1の場合と同様に、上記の(A)〜(D)の各条件を満たすように、2ページ目の対象画像T2の印刷が実行される。従って、図3(B)の+90度状態の対象画像T2に含まれる2個の単位領域A7,A8は、印刷ヘッド52の2回の主走査によって、順次印刷される。また、図3(C)の−90度状態の対象画像T2に含まれる2個の単位領域A9,A10は、印刷ヘッド52の2回の主走査によって、順次印刷される。なお、+90度状態の印刷でも、−90度状態の印刷でも、1ページ目の対象画像T1の最後に印刷される単位領域A3又はA6は、往路OPの主走査によって印刷される。従って、2ページ目の対象画像T2の最初に印刷される単位領域A7又はA9は、迅速な印刷を実現可能な復路RPの主走査によって印刷される。
【0047】
(プリンタドライバ26によって実行される処理)
PC10のユーザが、対象データの印刷の指示を操作部12に加える場合に、制御部20は、プリンタドライバ26に従って、図4のフローチャートで示される各処理を実行する。なお、上記の印刷の指示は、ユーザによる印刷解像度の指定と、ユーザによる印刷組数(「印刷部数」と呼ばれることもある)の指定と、を含む。以下では、ユーザによって選択された印刷組数を符号N(Nは1以上の整数)で表現する。また、2ページ分の対象画像T1,T2の印刷が指示され、かつ、各対象画像T1,T2の長辺(例えばIL1,IL2)が用紙Pの長辺PLに沿うような印刷が指示された場合を例として、各処理の内容を説明する。
【0048】
(1組の対象画像T1,T2のみの印刷)
図4に示されるように、S10において、制御部20は、印刷組数Nが2以上であるのか否かを判断する。印刷組数Nが1である場合(S10でNOの場合)には、S12において、制御部20は、通常印刷処理を実行する。
【0049】
(通常印刷処理)
通常印刷処理では、選択部30(図1参照)は、+90度状態の印刷順序と、−90度状態の印刷順序と、の2種類の印刷順序の中から、予め決められている+90度状態の印刷順序を選択する。さらに、印刷データ生成部34(図1参照)は、対象データを用いて、プリンタ50が+90度状態の印刷順序に従った対象画像T1,T2の印刷を実行可能な2ページ分の印刷データを生成する。より具体的に言うと、印刷データ生成部34は、対象データのラスタライズを実行して、+90度状態の対象画像T1,T2を表わすRGBデータを生成する。さらに、印刷データ生成部34は、RGBデータに対する色変換処理を実行して、CMYKデータを生成する。さらに、印刷データ生成部34は、CMYKデータに対するハーフトーン処理を実行して、印刷データを生成する。本実施例では、ハーフトーン処理で生成される各画素の値は、ドットON又はドットOFFを表わす二値で表現される。なお、変形例では、印刷データを構成する各画素は、三値以上の値(例えば、大ドットON、中ドットON、小ドットON、及び、ドットOFF)で表現されてもよい。
【0050】
なお、ここでは、個々の単位領域を決定するための手法、単位領域の主走査の向きを決定するための手法等の説明を省略するが、これらは、後述の図5の印刷データ生成処理(図4のS18及びS38)を参照すれば、容易に理解可能である。即ち、図5の印刷データ生成処理のS72において、選択済みの状態を+90度状態とすれば、図4のS12の通常印刷処理で印刷データを生成するための処理が実現される。
【0051】
S12の通常印刷処理では、さらに、供給部36(図1参照)は、+90度状態の対象画像T1,T2を表わす2ページ分の印刷データのそれぞれをプリンタ50に順次供給する。この結果、プリンタ50は、+90度状態の対象画像T1を表わす1ページ目の印刷データに従って(即ち図2(B)の印刷順序に従って)、対象画像T1を1枚目の用紙に印刷し、+90度状態の対象画像T2を表わす2ページ目の印刷データに従って(即ち図3(B)の印刷順序に従って)、対象画像T2を2枚目の用紙に印刷する。なお、プリンタ50が印刷データに従って実行する動作については、後で詳しく述べる。S12の通常印刷処理が終了すると、図4のプリンタドライバ処理が終了する。
【0052】
(2組以上の対象画像T1,T2の印刷)
印刷組数Nが2以上である場合(S10でYESの場合)には、S14において、制御部20は、印刷対象の組を示すKを「1」に設定する。次いで、選択部30は、+90度状態の印刷順序と、−90度状態の印刷順序と、の2種類の印刷順序の中から、1種類の印刷順序を選択する。本実施例では、S16において、選択部30は、予め決められている+90度状態の印刷順序を選択する。従って、以下では、+90度状態の印刷順序が選択された場合を例として、S18〜S22の処理の内容を説明する。なお、変形例では、S16において、選択部30は、予め決められている−90度状態の印刷順序を選択してもよいし、2種類の印刷順序の中からランダムに1種類の印刷順序を選択してもよい。
【0053】
(1組目の対象画像T1,T2の印刷)
次いで、S18において、印刷データ生成部34は、1ページ目の対象画像T1を表わす1ページ目の対象データを用いて、印刷データ生成処理(図5)を実行する。なお、図5に示される複数の処理のうちのS62,S70,S71は、図4のS18の印刷データ生成処理では実行されない。
【0054】
図5の処理が開始される時点(S60の時点)では、後述のCtotal、Mtotal等は、「0」に設定されている。図5に示されるように、S60において、印刷データ生成部34は、空白フラグをONに設定する。空白フラグは、空白領域(図2のM1等)を特定するために利用される。次いで、S64において、印刷データ生成部34は、1ページ目の対象画像T1の全領域に対応する全ラスタが生成されたのか否かを判断する。S64でNOの場合、S72において、印刷データ生成部34は、図4のS16で選択された+90度状態の印刷順序に従って、1ページ目の対象データのラスタライズを実行して、1本のRGBラスタを生成する。なお、RGBラスタは、256階調のRGB値で表現される複数個の画素によって構成される。S72のラスタライズ処理の内容について、次に詳しく説明する。
【0055】
後述のS74でYESと判断された場合、又は、後述のS92を終えた場合には、S72のラスタライズ処理が再び実行され得る。即ち、印刷データ生成部34は、S72のラスタライズ処理を繰り返し実行することによって、1ページ目の対象画像T1を表わす複数本のRGBラスタのそれぞれを順次生成する。S72では、印刷データ生成部34は、ユーザによって指定された印刷解像度に従って、RGBラスタを生成する。+90度状態の印刷順序が選択された場合には、印刷データ生成部34は、対象画像T1の長辺IL1側から長辺IL2側に向かって(即ち図2(B)の上側から下側に向かって)、RGBラスタを順次生成する。図6を参照しながら、この点について、より詳しく説明する。即ち、図6に示されるように、印刷データ生成部34は、1回目のS72のラスタライズ処理において、長辺IL1を含むRGBラスタL1を生成し、2回目のS72のラスタライズ処理において、RGBラスタL1に隣接するRGBラスタを生成する。なお、仮に、−90度状態の印刷順序が選択された場合には、印刷データ生成部34は、対象画像T1の長辺IL2側から長辺IL1側に向かって(即ち図2(C)の上側から下側に向かって)、RGBラスタを順次生成する。即ち、印刷データ生成部34は、対象画像T1の印刷方向に沿った順序で、RGBラスタを順次生成する。
【0056】
S72のラスタライズ処理を終えると、印刷データ生成部34は、S74において、空白フラグがONであり、かつ、処理対象のRGBラスタ(S72で生成されたRGBラスタ)が空白であるのか否かを判断する。S74では、印刷データ生成部34は、処理対象のRGBラスタを構成する全ての画素のそれぞれについて、当該画素のRGBの全ての値が「255」である場合に、処理対象のRGBラスタが空白であると判断する。即ち、S74では、印刷データ生成部34は、処理対象のRGBラスタを構成する少なくとも1個の画素のRGBのいずれかの値が「254」以下である場合に、処理対象のRGBラスタが空白でないと判断する。
【0057】
上述したように、印刷データ生成部34は、1回目のS72の処理において、RGBラスタL1(図6参照)を生成する。S60で空白フラグとしてONが設定されており、さらに、RGBラスタL1が空白領域M1(図6参照)を構成しているため、印刷データ生成部34は、S74でYESと判断し、S64に戻る。この場合、空白フラグとしてONが維持される。次いで、印刷データ生成部34は、S64で再びNOと判断して、S72において、RGBラスタL1に隣接するRGBラスタを生成する。この場合も、処理対象のRGBラスタが空白領域M1を構成しているため、印刷データ生成部34は、S74でYESと再び判断し、S64に戻る。同様に、空白領域M1を構成する他の各ラスタについて、S74でYESと判断される。本実施例では、図6に示されるように、空白領域M1を構成するX1本のラスタのそれぞれについて、S74でYESと判断される。
【0058】
図6のRGBラスタL2は、対象画像T1のアルファベット「A」(図2(B)参照)の一部を表わす。従って、RGBラスタL2が生成された場合には、印刷データ生成部34は、S74でNOと判断し、S76に進む。S76では、印刷データ生成部34は、空白フラグをOFFに設定する。
【0059】
次いで、S78において、印刷データ生成部34は、処理対象のRGBラスタを構成する全ての画素の色変換処理(後述のS80参照)が終了したのか否かを判断する。S78でNOの場合、印刷データ生成部34は、処理対象のRGBラスタを構成する複数個の画素の中から、S80の色変換処理が実行されていない1個の画素を、処理対象の画素として選択する。次いで、S80において、印刷データ生成部34は、処理対象の画素の色変換処理を実行して、256階調のCMYK値で表現される画素を生成する。S80の色変換処理が順次実行されることにより、RGBデータからCMYKデータが生成される。
【0060】
続いて、S82において、解析部38(図1参照)は、現在のCの合計値(Ctotal)に処理対象の画素のC値(Ctarget)を加算して、新たなCの合計値(Ctotal)を算出する。なお、1回目のS82の処理では、現在のCtotalとして「0」が設定されている。S82では、解析部38は、さらに、Cの場合と同様に、MYKのそれぞれの新たな合計値(Mtotal、Ytotal、及び、Ktotal)を算出する。
【0061】
次いで、S84において、印刷データ生成部34は、S80の色変換処理で生成された画素のハーフトーン処理(例えば誤差拡散法を用いたハーフトーン処理)を実行して、CMYKの4種類の色に対応する4個の値(本実施例ではドットON又はドットOFFを表わす二値)で表現される画素を生成する。
【0062】
S84を終えると、S78に戻る。従って、印刷データ生成部34及び解析部38は、処理対象のRGBラスタを構成する全ての画素のそれぞれについて、S80の色変換処理と、S82の算出処理と、S84のハーフトーン処理と、を実行する。この結果、処理対象のRGBラスタから、ハーフトーン処理後の複数個の画素(以下では「処理対象の印刷ラスタ」と呼ぶ)が生成される。この場合、印刷データ生成部34は、S78でYESと判断し、S86に進む。
【0063】
S86では、印刷データ生成部34は、処理対象の印刷ラスタに対応する用紙P上の位置にインク滴を吐出すべきノズルを示すノズル番号を、処理対象の印刷ラスタに割り当てる。これにより、プリンタ50は、印刷データを参照することによって、どのノズルからインク滴を吐出すべきかを知ることができる。
【0064】
次いで、S88において、印刷データ生成部34は、1回のパス(即ち1回の主走査)の印刷に必要な全てのRGBラスタについて、色変換処理及びハーフトーン処理が終了したのか否かを判断する。なお、1回のパスの印刷に必要なラスタの数は、ユーザによって指定された印刷解像度に基づいて特定される。本実施例では、図6に示されるように、1回のパスの印刷に必要なラスタの数は、X2本である。
【0065】
処理対象のRGBラスタがRGBラスタL2である場合には、印刷データ生成部34は、S88でNOと判断して、S64に戻る。この場合、印刷データ生成部34は、S64でNOと判断し、次いで、RGBラスタL2に隣接するRGBラスタを生成する(S72)。空白フラグがOFFに維持されているために、印刷データ生成部34は、S74でNOと判断する。次いで、印刷データ生成部34及び解析部38は、S76〜S84を実行する。このように、印刷データ生成部34は、1回のパスの印刷に必要なX2本のRGBラスタ(即ち1個の単位領域(例えばA1)に対応するX2本のRGBラスタ)の色変換処理及びハーフトーン処理を実行し、解析部38は、当該X2本のRGBラスタを構成する全ての画素のCMYKのそれぞれの合計値(Ctotal等)を算出する。X2本のRGBラスタについて、色変換処理、算出処理、及び、ハーフトーン処理が終了した場合には、印刷データ生成部34は、S88でYESと判断する。これにより、1回の主走査によって印刷される1個の単位領域を表わす複数本の印刷ラスタ(以下では「1パス分の印刷ラスタ」と呼ぶ)が完成する。即ち、1個の単位領域が決定される。S88でYESの場合、S90に進む。
【0066】
S90では、解析部38は、往路OPの主走査が実行されるべきなのか、あるいは、往路OPの主走査及び復路RPの主走査のどちらかが選択的に実行されるべきなのか、を判断する。具体的に言うと、解析部38は、有彩色のCMYのうちの少なくとも1つの合計値(例えばCtotal)が「0」より大きい場合には、往路OPの主走査が実行されるべきと判断する。また、解析部38は、CMYのうちの全ての合計値が「0」である場合(即ち無彩色のKの合計値(Ktotal)のみが「0」より大きい場合)には、往路OPの主走査及び復路RPの主走査のどちらかが選択的に実行されるべきと判断する。
【0067】
例えば、カラー画像を含む単位領域A1(図2(B)参照)を表わす1パス分の印刷ラスタが生成された場合に、S90の判断が実行される際には、CMYのうちの少なくとも1つの合計値が「0」より大きくなる。なお、本実施例では、花の図形が緑色の葉を含むために、通常、少なくともC及びYの2つの合計値のそれぞれが「0」より大きくなる。従って、解析部38は、往路OPの主走査が実行されるべきと判断する。この場合、解析部38は、図2(B)に示されるテーブルに、単位領域A1の印刷のための主走査に関する情報を書き込む。即ち、解析部38は、「パス数」の欄に「1」を書き込むと共に、「方向」の欄に「往路OP」を書き込む。さらに、ここで書き込まれる往路OPの主走査は、印刷ヘッド52がインク滴を吐出しながら単位領域A1を印刷するための主走査であるために、解析部38は、「方向」の欄に書き込まれた「往路OP」に「印刷」を示す情報(以下では(印刷)と表現する)を付加する。さらに、印刷ヘッド52がインク滴を吐出しながら実行される1回の主走査に必要な時間として、第1の時間(本実施例では300(ms))が予め決められている。従って、解析部38は、「時間」の欄に「300」を書き込む。
【0068】
往路OPの主走査が実行されるべきと判断された場合には、S90において、印刷データ生成部34は、さらに、往路OPを示す片方向情報を、1パス分の印刷ラスタに付加する。例えば、単位領域A1に対応する1パス分の印刷ラスタが生成された場合には、片方向情報が付加される。なお、往路OPの主走査及び復路RPの主走査のどちらかが選択的に実行されるべきと判断された場合には、印刷データ生成部34は、往路OPの主走査及び復路RPの主走査のどちらかを選択的に実行可能であることを示す双方向情報を、1パス分の印刷ラスタに付加する。片方向情報又は双方向情報が1パス分の印刷ラスタに付加されることによって、1個の単位領域を表わす1パス分の印刷データが完成する。
【0069】
S90を終えると、印刷データ生成部34は、CMYKのそれぞれの合計値(Ctotal等)を「0」にリセットする。次いで、S92において、印刷データ生成部34は、空白フラグをONに設定し、S64に戻る。これにより、単位領域A2,A3のそれぞれについて、S72以降の処理が実行される。
【0070】
モノクロ画像のみを含む単位領域A2(図2(B)参照)を表わす1パス分の印刷ラスタが生成された場合に、S90の判断が実行される際には、CMYのうちの全ての合計値が「0」であるために、解析部38は、往路OPの主走査及び復路RPの主走査のどちらかが選択的に実行されるべきと判断する。解析部38は、単位領域A2の前に印刷される単位領域A1について、往路OPの主走査が実行されるべきと既に判断している。従って、仮に、単位領域A2の印刷のために往路OPの主走査が実行されると、当該往路OPの主走査を実行する前に、復路RPの主走査(戻りの主走査)が必要になるために、印刷に必要な主走査の回数が多くなってしまう。従って、解析部38は、印刷に必要な主走査の回数を少なくするために、単位領域A2について、復路RPの主走査が実行されるべきと判断する。この場合、解析部38は、図2(B)に示されるテーブルに、単位領域A2の印刷のための情報(「2」、「復路RP(印刷)」、「300」)を書き込む。なお、単位領域A2を表わす1パス分の印刷ラスタには、双方向情報が付加される。
【0071】
同様に、モノクロ画像のみを含む単位領域A3(図2(B)参照)を表わす1パス分の印刷ラスタが生成された場合に、S90の判断が実行される際には、解析部38は、図2(B)に示されるテーブルに、単位領域A3の印刷のための情報(「3」、「往路OP(印刷)」、「300」)を書き込む。なお、単位領域A3を表わす1パス分の印刷ラスタには、双方向情報が付加される。
【0072】
図2(B)に示されるように、単位領域A3は、対象画像T1の長辺IL2を含む。単位領域A3を表わす1パス分の印刷ラスタが生成された場合には、S64において、印刷データ生成部34は、1ページ目の対象画像T1の全領域を表わす全ラスタが生成されたと判断する(即ちS64でYESと判断する)。
【0073】
S64でYESの場合には、S66において、印刷データ生成部34は、CMYKのうちのいずれか1つの合計値が「0」より大きいのか否かを判断する。例えば、X2本のラスタ(上記のS88参照)より少ない本数の印刷ラスタが生成された段階で、S64でYESと判断され得る。このような状況では、X2本より少ない本数の印刷ラスタについて実行されたS82の算出処理において、CMYKのうちのいずれか1つの合計値が「0」より大きくなり得るために、S66でYESと判断され得る。S66でYESの場合には、S68において、解析部38は、上記のS90と同様の処理(パス方向の判断、テーブルへの書き込み等)を実行し、さらに、CMYKのそれぞれの合計値(Ctotal等)を「0」にリセットする。S66でNOの場合、又は、S68を終えた場合には、図3のS18の印刷データ生成処理が終了する。これにより、+90度状態の1ページ目の対象画像T1を表わす1ページ分の印刷データが完成する。
【0074】
(図4のプリンタドライバ処理の続き)
図4のS18を終えると、S20において、供給部36は、+90度状態の1ページ目の対象画像T1を表わす1ページ分の印刷データをハードディスクに記憶させると共に、供給部36は、当該1ページ分の印刷データをプリンタ50に供給する。なお、供給部36は、+90度状態の印刷順序に従って、複数パス分の印刷データのそれぞれを、プリンタ50に順次供給する。即ち、供給部36は、単位領域A1を表わす1パス分の印刷データを供給し、次いで、単位領域A2を表わす1パス分の印刷データを供給し、次いで、単位領域A3を表わす1パス分の印刷データを供給する。なお、単位領域A1を表わす1パス分の印刷データがプリンタ50に供給される際に、供給部36は、図5のS74でYESと判断された空白領域M1に対応する距離だけ用紙Pを搬送することを指示する搬送指示データを、1パス分の印刷データとともにプリンタ50に供給する。
【0075】
なお、本実施例では、供給部36は、S18の印刷データ生成処理で1ページ分の印刷データが生成された後に、1ページ分の印刷データをプリンタ50に供給する。これに代えて、変形例では、供給部36は、S18の印刷データ生成処理で1パス分の印刷データが生成される毎に、1パス分の印刷データをプリンタ50に供給してもよい。
【0076】
(1ページ目の対象画像T1を印刷するためのプリンタ50の動作)
+90度状態の1ページ目の対象画像T1を表わす1ページ分の印刷データに従って、プリンタ50が実行する動作について説明する。プリンタ50は、まず、単位領域A1を表わす1パス分の印刷データをPC10から取得する。当該1パス分の印刷データは、往路OPの主走査を示す片方向情報を含む。さらに、当該1パス分の印刷データには、空白領域M1に対応する距離だけ用紙Pを搬送することを指示する搬送指示データが付加されている。従って、プリンタ50の制御部60は、搬送指示データに従って、空白領域M1に対応する距離の用紙Pの搬送を、媒体搬送部56に実行させる。次いで、制御部60は、用紙Pが静止している状態で、1パス分の印刷データに従って、印刷ヘッド52の往路OPの主走査と、各ノズルからのインク滴を吐出とを、ヘッド駆動部54に実行させる。これにより、単位領域A1の印刷が実行される。単位領域A1の印刷が終了すると、制御部60は、1個の単位領域に対応する距離の用紙Pの搬送を、媒体搬送部56に実行させる。
【0077】
次いで、プリンタ50は、単位領域A2を表わす1パス分の印刷データをPC10から取得する。当該1パス分の印刷データは、双方向情報を含む。従って、プリンタ50の制御部60は、1パス分の印刷データに従って、印刷ヘッド52の主走査の回数が少なくて済む主走査、即ち、印刷ヘッド52の復路RPの主走査と、各ノズルからのインク滴を吐出とを、ヘッド駆動部54に実行させる。これにより、単位領域A2の印刷が実行される。同様に、制御部60は、単位領域A3を表わす1パス分の印刷データに従って、単位領域A3の印刷を実行する。これにより、+90度状態の1ページ目の対象画像T1の印刷が終了する。
【0078】
上述したように、上記の搬送指示データに従った用紙Pの搬送が実行されるために、用紙Pが停止している状態で、印刷ヘッド52が空白領域M1上を移動するための主走査が実行されない。即ち、本実施例では、プリンタ50は、空白領域をスキップしながら印刷を実行することができるために、迅速な印刷を実行することができる。なお、仮に、−90度状態の印刷順序に従って、対象画像T1の印刷が実行される場合(図2(C)参照)でも、上記と同様の搬送指示データが利用される。このために、用紙Pが停止している状態で、印刷ヘッド52が空白領域M2,M3上を移動するための主走査が実行されない。
【0079】
(図4のプリンタドライバ処理の続き)
図4のS20を終えると、S22において、制御部20は、対象データが、次のページの対象画像を表わすデータを含むのか否かを判断する。2ページ目の対象画像T2が存在する場合には、制御部20は、S22でYESと判断し、S18の印刷データ生成処理に進む。この結果、印刷データ生成部34は、+90度状態の2ページ目の対象画像T2を表わす1ページ分の印刷データを生成し、解析部38は、図3(B)に示されるテーブルを生成する。さらに、S20において、供給部36は、+90度状態の2ページ目の対象画像T2を表わす1ページ分の印刷データをハードディスクに記憶させる。この結果、+90度状態の2ページ分の対象画像T1,T2を表わす2ページ分の印刷データがハードディスクに記憶される。次いで、供給部36は、+90度状態の2ページ目の対象画像T2を表わす1ページ分の印刷データをプリンタ50に供給する。これにより、プリンタ50は、単位領域A7,A8(図3(B)参照)のそれぞれを順次印刷する。この結果、1組目の対象画像T1,T2の印刷(2枚の用紙に対する印刷)が完了する。
【0080】
S22でNOの場合、S30において、制御部20は、現在のKの値(現在の印刷対象の組)が、ユーザによって指定された印刷組数Nに等しいのか否かを判断する。現在のKがNに等しい場合(S30でYESの場合)には、図4のプリンタドライバ処理が終了する。現在のKがNに等しくない場合(S30でNOの場合)には、S32において、制御部20は、現在のKに「1」を加算して、新たなKを算出し、S34に進む。
【0081】
(2組目の対象画像T1,T2の印刷)
S34では、制御部20は、未処理の状態があるのか否かを判断する。上述したように、1組目の対象画像T1,T2が印刷される場合(K=1の場合)には、S16において、+90度状態の印刷順序が選択され、S18において、+90度状態の印刷順序に従って印刷データが生成される。従って、2組目の対象画像T1,T2が印刷される際には、−90度状態の印刷順序が未だに選択されていない。この場合、制御部20は、未処理の状態がある(S34でYES)と判断し、S36において、未処理の状態、即ち、−90度状態の印刷順序を選択する。
【0082】
次いで、印刷データ生成部34は、−90度状態の印刷順序に従って、S38の印刷データ生成処理を実行する。S38の印刷データ生成処理は、S18の印刷データ生成処理とほぼ同様である。ただし、S18の印刷データ生成処理では、1ページ分の印刷データが生成されたのに対し、S38の印刷データ生成処理では、複数ページ分(本実施例では2ページ分)の印刷データの全てが生成される。このために、S38の印刷データ生成処理では、図5に示されるように、S70及びS71の処理が実行される。
【0083】
S38の印刷データ生成処理では、印刷データ生成部34は、まず、−90度状態の1ページ目の対象画像T1(図2(C)参照)を表わす1ページ分の印刷データを生成する。この際に、解析部38は、図2(C)に示されるテーブルを生成する。図2(C)に示されるテーブルが生成される様子を以下に詳しく説明する。
【0084】
モノクロ画像のみを含む単位領域A4(図2(C)参照)を表わす1パス分の印刷データが生成される場合に、S90の判断が実行される際には、解析部38は、往路OPの主走査及び復路RPの主走査のどちらかが選択的に実行されるべきと判断する。この場合、解析部38は、図2(C)に示されるテーブルに、単位領域A4の印刷のための情報(「1」、「往路OP(印刷)」、「300」)を書き込む。なお、本実施例では、対象画像T1を印刷するための最初の主走査として、往路OPが必ず採用される。従って、−90度状態の対象画像T1のうち、最初の主走査で印刷される単位領域A4については、「方向」の欄に「往路OP」が書き込まれる。
【0085】
なお、単位領域A4には、空白領域M2が隣接している。従って、単位領域A4についてS90の判断を終えた後に実行されるS74では、印刷データ生成部34は、空白フラグがONであり、かつ、処理対象のラスタが空白であると判断する(即ちS74でYESと判断する)。これにより、空白領域M2が単位領域A5に含まれないように、単位領域A5が決定される。
【0086】
カラー画像のみを含む単位領域A5(図2(C)参照)を表わす1パス分の印刷データが生成される場合に、S90の判断が実行される際には、解析部38は、往路OPの主走査が実行されるべきと判断する。ただし、解析部38は、単位領域A5の前に印刷される単位領域A4について、往路OPの主走査が実行されるべきと既に判断している。従って、往路OPの主走査の開始位置まで印刷ヘッド52を戻す必要がある。このために、解析部38は、まず、図2(C)に示されるテーブルに、印刷ヘッド52を戻すための情報を書き込む。即ち、解析部38は、「パス数」の欄に「2」を書き込むと共に、「方向」の欄に「復路RP」を書き込む。さらに、ここで書き込まれる復路RPの主走査は、印刷ヘッド52がインク滴を吐出せずに実行される戻りの主走査であるために、選択部30は、「方向」の欄に書き込まれた「復路RP」に「戻り」を示す情報(以下では(戻り)と表現する)を付加する。印刷ヘッド52がインク滴を吐出せずに実行される1回の主走査(即ち戻りの主走査)に必要な時間として、上記の第1の時間(300(ms))より短い第2の時間(本実施例では150(ms))が予め決められている。従って、解析部38は、「時間」の欄に「150」を書き込む。なお、変形例では、解析部38は、上記の第1及び第2の時間のみならず、用紙の搬送時間等の他の時間をさらに考慮してもよい。次いで、解析部38は、図2(C)に示されるテーブルに、単位領域A5の印刷のための情報(「3」、「往路OP(印刷)」、「300」)を書き込む。
【0087】
同様に、カラー画像のみを含む単位領域A6(図2(C)参照)を表わす1パス分の印刷データが生成される場合に、S90の判断が実行される際には、解析部38は、図2(C)に示されるテーブルに、印刷ヘッド52を戻すための情報(「4」、「復路RP(戻り)」、「150」)と、単位領域A6の印刷のための情報(「5」、「往路OP(印刷)」、「300」)と、を書き込む。
【0088】
−90度状態の1ページ目の対象画像T1を表わす1ページ分の印刷データが生成されると、S70において、制御部20は、次ページあり(S70でYES)と判断する。この場合、制御部20は、S71において、空白フラグとしてONを設定し、S64に戻る。これにより、印刷データ生成部34は、−90度状態の2ページ目の対象画像T2(図3(C)参照)を表わす1ページ分の印刷データを生成し、解析部38は、図3(C)に示されるテーブルを生成する。当該印刷データが生成されると、S70において、制御部20は、次ページなし(S70でNO)と判断し、印刷データ生成処理が終了する。
【0089】
(図4のプリンタドライバ処理の続き)
図4のS38を終えると、S42において、供給部36は、+90度状態の印刷順序に従って生成された印刷データ(以下では「+90度状態の印刷データ」と呼ぶ)を用いた印刷に必要な時間と、−90度状態の印刷順序に従って生成された印刷データ(以下では「−90度状態の印刷データ」と呼ぶ)を用いた印刷に必要な時間と、を比較する。図3(B)及び(C)に示されるように、+90度状態の印刷データを用いた印刷に必要な時間(1500(ms))は、−90度状態の印刷データを用いた印刷に必要な時間(1800(ms))よりも短い。この場合、供給部36は、S42でYESと判断し、S46において、ハードディスクに記憶されている+90度状態の印刷データをプリンタ50に供給する。これにより、プリンタ50は、+90度状態の印刷データを用いて、2組目の対象画像T1,T2の印刷を実行する。
【0090】
なお、−90度状態の印刷データを用いた印刷に必要な時間が、+90度状態の印刷データを用いた印刷に必要な時間よりも短い場合(S42でNOの場合)には、S44において、供給部36は、ハードディスクに記憶されている+90度状態の印刷データを消去し、−90度状態の印刷データをハードディスクに新たに記憶させる。次いで、S46において、供給部36は、ハードディスクに記憶されている−90度状態の印刷データをプリンタ50に供給する。これにより、プリンタ50は、−90度状態の印刷データを用いて、2組目の対象画像T1,T2の印刷を実行する。
【0091】
なお、図3(B)及び(C)の各テーブルから明らかなように、対象画像T1,T2の印刷に必要なパス数が少ない方が、印刷に必要な時間が短くなる。従って、S42では、供給部36は、対象画像T1,T2の印刷に必要なパス数が最も少ない印刷順序に対応する印刷データを選択することになる。従って、変形例では、供給部36は、印刷に必要な時間を算出せずに、図3(B)及び(C)の各テーブルのパス数を比較して、対象画像T1,T2の印刷に必要なパス数が最も少ない印刷順序に対応する印刷データを選択してもよい。一般的に言うと、供給部36は、対象画像T1,T2の印刷に必要な時間が短いと推定される1種類の印刷データを、プリンタ50に供給すればよい。
【0092】
(3組目以降の対象画像T1,T2の印刷)
図4のS46を終えると、S30に戻る。ユーザによって指定された印刷組数Nが3以上である場合には、制御部20は、S30で再びNOと判断し、S32でK=3を算出し、S34でNO(未処理の状態なし)と判断する。この場合、供給部36は、S38で印刷データを生成することなく、ハードディスクに記憶されている印刷データ(図2及び図3の例では+90度状態の印刷データ)をプリンタ50に供給する。これにより、プリンタ50は、3組目の対象画像T1,T2の印刷を実行する。4組目以降も同様である。
【0093】
(本実施例の効果)
第1実施例の印刷システム2について詳しく説明した。図7を参照しながら、本実施例の効果を説明する。なお、図7では、説明を簡単化するために、1ページ分の対象画像T1のみが印刷される場合を例としている。
【0094】
図7の比較例に示されるように、プリンタ50がN組の同じ対象画像T1の印刷を実行すべき場合に、1組目(K=1)の対象画像T1が印刷される際に、+90度状態の印刷データと−90度状態の印刷データとの2種類の印刷データを生成する構成を採用することが考えられる。比較例の構成によると、1組目の対象画像T1が印刷される際に、2種類の印刷データのどちらが迅速な印刷を実現可能であるのかを判断することができ、迅速な印刷を実現可能な+90度状態の印刷データをプリンタ50に供給することができる。しかしながら、比較例の構成では、1組目の対象画像T1が印刷される際に、2種類の印刷データを生成する必要があるために、1組目の対象画像T1の印刷のための+90度状態の印刷データをプリンタ50に供給するまでに時間がかかる。
【0095】
これに対し、本実施例によると、1組目(K=1)の対象画像T1が印刷される際に、選択部30は、2種類の印刷順序(+90度状態の印刷順序と−90度状態の印刷順序)の中から+90度状態の印刷順序を選択し、印刷データ生成部34は、+90度状態の印刷データを生成し、供給部36は、+90度状態の印刷データをプリンタ50に供給する。1組目の対象画像T1が印刷される際に、2種類の印刷データを生成する必要がなく、+90度状態の印刷データを生成すれば足りる。このために、比較例の構成と比べると、1組目の対象画像T1の印刷のための+90度状態の印刷データをプリンタ50に迅速に供給することができる。この結果、プリンタ50は、1組目の対象画像T1の印刷を迅速に実行することができ、1組目の対象画像T1の印刷結果をユーザに迅速に提供することができる。ユーザは、通常、印刷組数として複数組を指定する場合には、1組目の印刷結果を迅速に入手することを望む。これは、例えば、ユーザは、1組目の印刷結果が意図したものではない場合に、後の組の印刷をキャンセルすることができるからである。本実施例によると、1組目の対象画像T1の印刷結果をユーザに迅速に提供することができるために、ユーザの要望に応じることができる。
【0096】
なお、比較例の構成によると、1組目(K=1)の対象画像T1が印刷される際に、2種類の印刷データを生成して、迅速な印刷を実現可能な印刷データの判断を実行することができるために、2組目(K=2)の対象画像T1が印刷される際に、印刷データを生成しなくても、+90度状態の印刷データをプリンタ50に供給することができる。即ち、比較例の構成では、2組目の対象画像T1の印刷のための+90度状態の印刷データをプリンタ50に迅速に供給することができる。
【0097】
これに対し、本実施例では、選択部30は、2組目(K=2)の対象画像T1が印刷される際に、−90度状態の印刷順序を選択し、印刷データ生成部34は、−90度状態の印刷データを生成する。さらに、供給部36は、2種類の印刷データのどちらが迅速な印刷を実現可能であるのかを判断し、+90度状態の印刷データをプリンタ50に供給する。本実施例によると、2組目(K=2)の対象画像T1が印刷される際に、−90度状態の印刷データを生成する必要があるために、比較例の構成と比べると、2組目(K=2)の対象画像T1の印刷が遅れるようにも思える。
【0098】
しかしながら、プリンタ50は、1組目の対象画像T1の印刷を完了してからでなければ、2組目の対象画像T1の印刷を開始することができない。従って、2組目の対象画像T1の印刷のための+90度状態の印刷データをプリンタ50に供給するタイミングは、本実施例よりも比較例の構成の方が早いかもしれないが、プリンタ50は、比較例の構成によって+90度状態の印刷データが供給されるタイミングで、2組目の対象画像T1の印刷を開始することができず、1組目の対象画像T1の印刷が完了するまで待つ必要がある。本実施例では、プリンタ50が1組目の対象画像T1の印刷を実行している間に、印刷データ生成部34は、−90度状態の印刷データを生成することができる。従って、供給部36は、プリンタ50が1組目の対象画像T1の印刷を完了する前に、−90度状態の印刷データをプリンタ50に供給し得る。この結果、プリンタ50は、1組目の対象画像T1の印刷を完了したタイミングで、2組目の対象画像T1の印刷を開始することができる。従って、本実施例によると、比較例の構成と比べて、2組目の対象画像T1の印刷が遅れるということも抑制し得る。
【0099】
比較例の構成でも、本実施例の構成でも、3組目以降(K=3〜N)の対象画像T1が印刷される際には、迅速な印刷が実現可能な+90度状態の印刷データが、プリンタ50に供給される。上述したように、本実施例によると、比較例の構成と比べて、1組目の対象画像T1の印刷を迅速に実行することができ、2組目以降の対象画像T1の印刷が遅れることも抑制し得る。従って、本実施例によると、比較例の構成と比べて、ユーザによって印刷指示が与えられてからN組目の対象画像T1の印刷が完了するまでのトータルの時間を短縮し得る。
【0100】
第1実施例の各要素と本発明の各要素との対応関係を記載しておく。PC10、プリンタ50が、それぞれ、「画像処理装置」、「印刷実行部」の一例である。+90度状態の印刷順序、−90度状態の印刷順序が、それぞれ、「第1種の印刷順序」、「第2種の印刷順序」の一例である。往路OPの主走査、復路RPの主走査が、それぞれ、「第1の側から第2の側への印刷ヘッドの1回の主走査」、「第2の側から第1の側への印刷ヘッドの1回の主走査」の一例である。上述したように、第1実施例では、CMYのうちの1種類以上のインクによって印刷される各単位領域については、往路OPの主走査が採用される(図6参照)。そのような各単位領域のうち、CMYKのうちの2種類以上の色のインクによって印刷される単位領域(例えば緑色を含む単位領域A1)が、「第1種の単位領域」の一例である。Kのインクのみによって印刷される単位領域(例えば単位領域A2,A3)が、「第2種の単位領域」の一例である。また、図5のS80で生成されるCMYKデータが、「特定データ」の一例である。また、対象画像T1の長辺IL1、長辺IL2が、それぞれ、「第1の長辺」、「第2の長辺」の一例である。
【0101】
(第2実施例)
本実施例では、図4及び図5のフローチャートの内容が第1実施例と若干異なる。即ち、図4のS40が実行される点と、図5のS62が実行される点と、が第1実施例と異なる。
【0102】
制御部20は、1組目の対象画像T1,T2が印刷される際に、図4のS20で+90度状態の印刷データがプリンタ50に供給されると、タイマをスタートさせる。2組目の対象画像T1,T2が印刷される際に、図4のS38で−90度状態の印刷データが生成される間に、印刷データ生成部34は、S62において、1組目の対象画像T1,T2の印刷を完了することを監視する。具体的に言うと、印刷データ生成部34は、タイマの値が、1組目の対象画像T1,T2の印刷に必要な時間である1500(msec)(図3(B)参照)を超えるのか否かを判断する。タイマの値が1500(msec)を超える場合(S62でYESの場合)には、印刷データ生成部34は、−90度状態の印刷データを生成するのを停止して、図5の印刷データ生成処理を終了する。従って、図5の印刷データ生成処理が終了するケースとしては、S62でYESと判断されて終了するケース(以下では「タイムアップ終了」と呼ぶ)と、S70でNOと判断されて終了するケース(以下では「通常終了」と呼ぶ)と、が存在する。
【0103】
なお、上記と同様に、制御部20は、図4のS46で2組目以降のK組目の対象画像T1,T2の印刷のための印刷データがプリンタ50に供給された際に、タイマをスタートさせる。さらに、図4のS38でK+1組目の対象画像T1,T2の印刷のための印刷データが生成される際に、印刷データ生成部34は、S62において、K組目の対象画像T1,T2の印刷を完了することを監視する。
【0104】
図4のS38の印刷データ生成処理が終了すると、制御部20は、S40において、タイムアップ終了であるのか、通常終了であるのか、を判断する。タイムアップ終了である場合(S40でYESの場合)には、S46において、供給部36は、ハードディスクに記憶されている印刷データをプリンタ50に供給する。例えば、2組目の対象画像T1,T2が印刷される際に、−90度状態の印刷データを生成するための印刷データ生成処理(図4のS38)が、タイムアップ終了である場合には、S46において、供給部36は、1組目の対象画像T1,T2の印刷のために図4のS18で生成された+90度状態の印刷データをプリンタ50に供給する。
【0105】
(本実施例の効果)
本実施例によると、供給部36は、例えば、2組目の対象画像T1,T2が印刷される際に、−90度状態の印刷データの生成が完了する前に、1組目の対象画像T1,T2の実行が完了することが予測される場合に、−90度状態の印刷データの生成が完了するのを待たずに、+90度状態の印刷データをプリンタ50に供給する。この構成によると、PC10は、例えば、2組目の対象画像T1,T2が印刷される際に、−90度状態の印刷データを生成するための印刷データ生成処理(図4のS38)が時間を要する場合に、+90度状態の印刷データをプリンタ50に供給することができる。このために、−90度状態の印刷データの生成が完了するのを待って、印刷データをプリンタ50に供給する構成と比べると、プリンタ50は、2組目の対象画像T1,T2の印刷を迅速に実行し得る。なお、上記の場合には、2組目の対象画像T1,T2が+90度状態の印刷データを用いて印刷される間に、−90度状態の印刷データが生成されればよい。そして、3組目の対象画像T1,T2は、+90度状態の印刷データ及び−90度状態の印刷データのうち、迅速な印刷を実現可能な印刷データを用いて印刷されればよい。
【0106】
(第3実施例)
第1実施例と異なる点を説明する。第1実施例では、プリンタ50の媒体搬送部56は、用紙Pの短辺PSが副走査方向に沿うように、用紙Pを搬送可能であるが、用紙Pの長辺PLが副走査方向に沿うように、用紙Pを搬送不可能である。本実施例では、プリンタ50は、第1実施例と同様に、横向きの所定サイズの用紙を収容するための横向き用給紙トレイを備えると共に、第1実施例と異なり、縦向きの上記の所定サイズの用紙を収容するための縦向き用給紙トレイを備える。プリンタ50の媒体搬送部56は、第1実施例と同様に、横向き用給紙トレイに収容されている用紙の短辺が副走査方向に沿うように、当該用紙を搬送可能である(以下では「横向き搬送」と呼ぶ)と共に、第1実施例と異なり、縦向き用給紙トレイに収容されている用紙の長辺が副走査方向に沿うように、用紙を搬送可能である(以下では「縦向き搬送」と呼ぶ)。
【0107】
従って、プリンタ50は、第1実施例の図2(B)及び(C)に示されるように、用紙の横向き搬送を実行して、対象画像T1の長辺IL1,IL2が用紙Pの長辺PLに沿うように印刷を実行可能であるのみならず、図8(A)及び(B)に示されるように、用紙の縦向き搬送を実行して、対象画像T1の長辺IL1,IL2が用紙Pの長辺PLに沿うように印刷を実行可能である。なお、図8(A)は、0度状態の印刷順序(単位領域A11→A12)を示し、図8(B)は、+180度状態の印刷順序(単位領域A13→A14)を示す。即ち、本実施例では、プリンタ50は、0度状態の印刷順序(図8(A)参照)と、+90度状態の印刷順序(図2(B)参照)と、+180度状態の印刷順序(図8(B)参照)と、−90度状態の印刷順序(図2(C)参照)と、の4種類の印刷順序のいずれかに従って、対象画像T1の印刷を実行可能である。
【0108】
本実施例では、図4のS16において、PC10の選択部30は、上記の4種類の印刷順序の中から、1種類の印刷順序を選択する。さらに、図4のS36において、PC10の選択部30は、上記の4種類の印刷順序の中から、未処理の1種類の印刷順序を選択する。
【0109】
図9の第3実施例に示されるように、1組目(K=1)及び2組目(K=2)の対象画像T1の印刷は、第1実施例と同様である。3組目(K=3)の対象画像T1が印刷される際に、選択部30は、4種類の印刷順序の中から0度状態の印刷順序を選択し、印刷データ生成部34は、0度状態の印刷データを生成し、供給部36は、3種類の印刷データ(+90度状態、−90度状態、0度状態)のうち、迅速な印刷を実現可能な0度状態の印刷データをプリンタ50に供給する。次いで、4組目(K=4)の対象画像T1が印刷される際に、選択部30は、4種類の印刷順序の中から、+180度状態の印刷順序を選択し、印刷データ生成部34は、+180度状態の印刷データを生成し、供給部36は、4種類の印刷データ(+90度状態、−90度状態、0度状態、+180度状態)のうち、迅速な印刷を実現可能な0度状態の印刷データをプリンタ50に供給する。なお、5組目以降(K=5〜N)の対象画像T1が印刷される際に、供給部36は、4種類の印刷データのうち、迅速な印刷を実現可能な0度状態の印刷データをプリンタ50に供給する。
【0110】
本実施例でも、プリンタ50は、迅速な印刷を実行することができる。なお、0度状態の印刷順序は、例えば、「印刷ヘッド52の複数回の主走査によって、対象画像T1の第1の短辺IS1側から第2の短辺IS2側に向かって、対象画像T1を順次印刷するための第3種の印刷順序」と表現することができる。また、+180度状態の印刷順序は、例えば、「印刷ヘッド52の複数回の主走査によって、対象画像T1の第2の短辺IS2側から第1の短辺IS1側に向かって、対象画像T1を順次印刷するための第4種の印刷順序」と表現することができる。本実施例では、M=4である。上記の各実施例から明らかなように、Mは、2以上4以下の整数であってもよい。
【0111】
(第3実施例の変形例)
第3実施例では、2組目〜4組目(K=2〜4)の対象画像T1が印刷される際に、供給部36は、迅速な印刷を実現可能な印刷データをプリンタ50に供給する。ただし、図9の変形例に示されるように、K組目(K=2〜4)の対象画像T1が印刷される際に、供給部36は、K組目の対象画像T1が印刷される際に生成された印刷データをプリンタ50に供給してもよい。本変形例では、第3実施例と同様に、5組目以降(K=5〜N)の対象画像T1が印刷される際に、供給部36は、4種類の印刷データのうち、迅速な印刷を実現可能な0度状態の印刷データをプリンタ50に供給してもよい。本変形例でも、プリンタ50は、迅速な印刷を実行することができる。
【0112】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を例示することができる。
【0113】
(変形例1)上記の各実施例では、PC10が、各部30〜38を備えているが、それに代えて、プリンタ50が、各部30〜38を備えていてもよい。この場合、プリンタ50が「画像処理装置」の一例であり、プリンタ50内の供給部36は、プリンタ50内の印刷実行部(即ちヘッド駆動部54及び媒体搬送部56を制御するための印刷処理を実行する印刷処理部)に印刷データを供給してもよい。
【0114】
(変形例2)上記の各実施例では、解析部38は、図5のS80で生成されるCMYKデータを解析することによって、図3(B)及び(C)の各テーブルを生成するが、これに代えて、解析部38は、図5のS84で生成されるハーフトーン処理後のデータ(例えばドットON又はドットOFFの二値で表現されるデータ)を解析することによって、図3(B)及び(C)の各テーブルを生成してもよい。例えば、単位領域を構成する1個の画素のCMYのいずれか1つの値でもドットONを示す場合には、解析部38は、当該単位領域の印刷のために、往路OPの主走査が実行されるべきと判断してもよい。本変形例では、ハーフトーン処理後のデータが「特定データ」の一例である。
【0115】
(変形例3)上記の各実施例では、解析部38は、対象画像T1,T2の全領域を解析することによって、図3(B)及び(C)の各テーブルを生成する。これに代えて、解析部38は、対象画像T1,T2の一部の領域のみを解析してもよい。例えば、2ページ分の対象画像T1,T2の印刷が実行されるべき際に、解析部38は、1ページ目の対象画像T1のみを解析することによって、図2(B)及び(C)の各テーブルを生成してもよい。この場合、供給部36は、図4のS42において、図2(B)及び(C)の各テーブルに基づいて、迅速な印刷を実現可能な印刷データを選択してもよい。また、例えば、1ページ分の対象画像T1のみの印刷が実行されるべき際に、解析部38は、1ページ分の対象画像T1の一部の領域のみを用いた解析を実行してもよい。本変形例によると、解析に要する時間を短縮することができる。なお、対象データが表わすページ数が比較的に少ない場合に、上記の第1実施例のように全ページ分の対象画像を解析する手法を採用し、対象データが表わすページ数が比較的に多い場合には、1ページ分の対象画像(例えば1ページ目の対象画像)のみを解析する手法を採用してもよい。
【0116】
(変形例4)上記の各実施例では、CMYのうちの1種類のインクのみによって印刷される単位領域について、往路OPの主走査が実行される。これに代えて、CMYのうちの1種類のインクのみによって印刷される単位領域について、往路OPの主走査及び復路RPの主走査のどちらかが選択的に実行されてもよい。即ち、(1)CMYKのうちの2種類以上のインクによって印刷される第1種の単位領域については、往路OPの主走査が実行され、(2)Kのインクのみによって印刷される第2種の単位領域については、往路OPの主走査及び復路の主走査が選択的に実行され、(3)CMYのうちの1種類のインクのみによって印刷される第3種の単位領域については、往路OPの主走査及び復路の主走査が選択的に実行されてもよい。
【0117】
(変形例5)上記の第3実施例では、例えば、印刷組数Nが「3」である場合に、選択部30は、3種類の印刷順序を順次選択し、印刷データ生成部34は、3種類の印刷データを順次生成する。即ち、一般的に言うと、印刷順序の種類の数M≧Nである場合に、選択部30は、N種類の印刷順序を順次選択し、印刷データ生成部34は、N種類の印刷データを順次生成する。また、例えば、印刷組数Nが「5」である場合に、選択部30は、4種類の印刷順序を順次選択し、印刷データ生成部34は、4種類の印刷データを順次生成する。即ち、一般的に言うと、M<Nである場合に、選択部30は、M種類の印刷順序を順次選択し、印刷データ生成部34は、M種類の印刷データを順次生成する。これに代えて、M≧Nである場合に、選択部30は、Nより小さいN’種類(N’は2以上の整数)の印刷順序を順次選択し、印刷データ生成部34は、N’種類の印刷データを順次生成してもよい。また、M<Nである場合に、選択部30は、Mより小さいM’種類(M’は2以上の整数)の印刷順序を順次選択し、印刷データ生成部34は、M’種類の印刷データを順次生成してもよい。本変形例も、「選択部は、M種類の印刷順序の中から、2種類以上の印刷順序のそれぞれを順次選択し、印刷データ生成部は、順次選択される2種類以上の印刷順序に対応する2種類以上の前記印刷データのそれぞれを順次生成する」という構成に含まれる。
【0118】
(変形例6)上記の各実施例では、各部30〜38がソフトウェア(プリンタドライバ26)によって実現されるが、各部30〜38のうちの少なくとも1つが論理回路等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0119】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0120】
2:印刷システム、10:PC、20:制御部、24:メモリ、26:プリンタドライバ、30:選択部、34:印刷データ生成部、36:供給部、38:解析部、50:インクジェットプリンタ、52:印刷ヘッド、60:制御部、A1〜A6:単位領域、T1、T2:対象画像、M1〜M3:空白領域、NC,NY,NM,NK:ノズル列、OP:往路、RP:往路、P:用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に沿った印刷ヘッドの移動と、副走査方向に沿った印刷媒体の搬送と、を実行することによって、前記印刷媒体に対する画像の印刷を実行する印刷実行部のための画像処理装置であって、
印刷対象の対象画像を印刷するためのM種類(前記Mは2以上の整数)の印刷順序の中から、1種類の印刷順序を選択する選択部であって、前記M種類の印刷順序のそれぞれでは、前記印刷ヘッドの最初の主走査によって印刷されるべき前記対象画像内の領域が互いに異なる、前記選択部と、
前記対象画像を表わす対象データを用いて、前記印刷実行部が前記1種類の印刷順序に従った前記対象画像の印刷を実行可能な印刷データを生成する印刷データ生成部と、
前記印刷データを前記印刷実行部に供給する供給部と、を備え、
前記印刷実行部が、N組(前記Nは2以上の整数)の同じ前記対象画像の印刷を実行すべき場合に、
前記選択部は、前記M種類の印刷順序の中から、2種類以上の印刷順序のそれぞれを順次選択し、
前記印刷データ生成部は、順次選択される前記2種類以上の印刷順序に対応する2種類以上の前記印刷データのそれぞれを順次生成する、画像処理装置。
【請求項2】
前記N組の前記対象画像のうち、第1組の前記対象画像の印刷が実行される際に、
前記選択部は、前記M種類の印刷順序の中から、第1種の印刷順序を選択し、
前記印刷データ生成部は、前記第1種の印刷順序に対応する第1種の前記印刷データを生成し、
前記N組の前記対象画像のうち、前記第1組の前記対象画像の後に印刷されるべき第2組の前記対象画像の印刷が実行される際に、
前記選択部は、前記M種類の印刷順序の中から、前記第1種の印刷順序と異なる第2種の印刷順序を選択し、
前記印刷データ生成部は、前記第2種の印刷順序に対応する第2種の前記印刷データであって、前記第1種の印刷データと異なる前記第2種の印刷データを生成する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1組の前記対象画像の印刷が実行される際に、
前記供給部は、前記第1種の印刷データを前記印刷実行部に供給し、
前記第2組の前記対象画像の印刷が実行される際に、
前記供給部は、前記第1種の印刷データと前記第2種の印刷データとを含む前記2種類以上の印刷データのうち、印刷に必要な時間が短いと推定される1種類の印刷データを、前記印刷実行部に供給する、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
さらに、前記対象データから得られる特定データを解析する解析部を備え、
前記供給部は、前記解析の結果に基づいて、前記第1種の印刷データと前記第2種の印刷データとを含む前記2種類以上の印刷データのうち、印刷に必要な主走査の回数が少ない前記1種類の印刷データを、前記印刷実行部に供給する、請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1組の前記対象画像の印刷が実行される際に、
前記供給部は、前記第1種の印刷データを前記印刷実行部に供給し、
前記第2組の前記対象画像の印刷が実行される際に、
前記供給部は、前記第2種の印刷データを前記印刷実行部に供給する、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第2組の前記対象画像の印刷が実行される際に、
前記供給部は、前記第2種の印刷データの生成が完了する前に、前記第1種の印刷データに従った印刷の実行が完了することが予測される場合に、前記第2種の印刷データの生成が完了するのを待たずに、前記第1種の印刷データを前記印刷実行部に供給する、請求項2から5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
N≦Mである場合に、
前記選択部は、前記M種類の印刷順序の中から、N種類の印刷順序のそれぞれを順次選択し、
前記印刷データ生成部は、前記N種類の印刷順序に対応するN種類の前記印刷データのそれぞれを順次生成し、
N>Mである場合に、
前記選択部は、前記M種類の印刷順序の中から、前記M種類の印刷順序のそれぞれを順次選択し、
前記印刷データ生成部は、前記M種類の印刷順序に対応するM種類の前記印刷データのそれぞれを順次生成する、請求項1から6のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記印刷実行部が、1組の前記対象画像のみを印刷を実行すべき場合に、
前記選択部は、前記M種類の印刷順序の中から、予め決められている特定の種類の印刷順序を選択し、
前記印刷データ生成部は、前記特定の種類の印刷順序に対応する特定の前記印刷データを生成し、
前記供給部は、前記特定の印刷データを前記印刷実行部に供給する、請求項1から7のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記M種類の印刷順序のそれぞれは、以下の各条件、即ち、
(A)前記対象画像内の複数個の単位領域のそれぞれが、前記印刷ヘッドの1回の主走査が実行されることによって、印刷されること、
(B)前記複数個の単位領域のうちの第1種の単位領域が、第1の側から第2の側への前記印刷ヘッドの1回の主走査が実行されることによって、印刷されること、及び、
(C)前記複数個の単位領域のうち、前記第1種の単位領域と異なる第2種の単位領域が、前記第1の側から前記第2の側への前記印刷ヘッドの1回の主走査と、前記第2の側から前記第1の側への前記印刷ヘッドの1回の主走査と、のどちらかが選択的に実行されることによって、印刷されること、
を前提とする印刷順序である、請求項1から8のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記印刷実行部は、前記印刷媒体の短辺が前記副走査方向に沿うように、前記印刷媒体を搬送可能であると共に、搬送される前記印刷媒体の長辺に沿って前記印刷ヘッドを移動可能であり、
前記印刷実行部が、1ページ分の略矩形の前記対象画像の長辺が前記印刷媒体の長辺に沿うように、前記対象画像を前記印刷媒体に印刷すべき場合に、
前記M種類の印刷順序は、
前記印刷ヘッドの複数回の主走査によって、前記対象画像を、前記対象画像の第1の長辺側から第2の長辺側に向かって順次印刷するための印刷順序と、
前記印刷ヘッドの複数回の主走査によって、前記対象画像を、前記対象画像の前記第2の長辺側から前記第1の長辺側に向かって順次印刷するための印刷順序と、
を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
主走査方向に沿った印刷ヘッドの移動と、副走査方向に沿った印刷媒体の搬送と、を実行することによって、前記印刷媒体に対する画像の印刷を実行する印刷実行部のための画像処理装置に搭載されるコンピュータに、以下の各処理、即ち、
印刷対象の対象画像を印刷するためのM種類(前記Mは2以上の整数)の印刷順序の中から、1種類の印刷順序を選択する選択処理であって、前記M種類の印刷順序のそれぞれでは、前記印刷ヘッドの最初の主走査によって印刷されるべき前記対象画像内の領域が互いに異なる、前記選択処理と、
前記対象画像を表わす対象データを用いて、前記印刷実行部が前記1種類の印刷順序に従った前記対象画像の印刷を実行可能な印刷データを生成する印刷データ生成処理と、
前記印刷データを前記印刷実行部に供給する供給処理と、
を実行させるコンピュータプログラムであって、
前記印刷実行部が、N組(前記Nは2以上の整数)の同じ前記対象画像の印刷を実行すべき場合に、
前記選択処理では、前記M種類の印刷順序の中から、2種類以上の印刷順序のそれぞれを順次選択し、
前記印刷データ生成処理では、順次選択される前記2種類以上の印刷順序に対応する2種類以上の前記印刷データのそれぞれを順次生成する、コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−66452(P2012−66452A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212377(P2010−212377)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】