説明

画像処理装置

【課題】 どういった色覚特性を持つ人に対しても認識し易いカラー画像を生成する画像処理装置であって、周辺領域を含む文字の背景がグラデーションなどの複雑な模様の場合であっても、文字部の可読性を低下させことのない画像を生成可能な画像処理装置を提供する。
【解決手段】 色覚異常を持つ人にとって区別が付き難い色味を有する文字オブジェクトに対して、文字エッジ部の明度を下げると共に、文字内部の明度を上げる処理を実施することで、文字エッジ部と文字内部の明度差を強調させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多値画像データに関する画像処理装置および画像処理方法であって、特にCUD(カラーユニバーサルデザイン)に関する技術分野に属する。具体的には、文字部に対する補正処理により、色弱者であっても判別可能なCUD印刷処理を実現する。
【背景技術】
【0002】
近年、時代の進歩とともに各種印刷物、表示パネル、画像等の画像表示装置などにおいて、情報に関心を引き付け易くするとともに、より的確に情報を伝達できるようにするためにカラーデザイン化が進められている。このため、複写機やプリンタ等の画像形成装置においてもカラー印刷が一般的となっている。例えば、以前の白黒印刷によるプレゼンテーションに代わり最近ではカラープリンタを用いて出力された印刷物が多く用いられるようになってきている。しかしながら、これまでのカラープリンタやカラー複写機は、通常、色覚正常者による色認識を基準として製作されている。このため、色覚異常者にとって不便を感じるケースが多くなってきている。
【0003】
したがって、色が重要な情報伝達手段として利用されている今日にあっては、色覚異常者に不利にならないよう配慮されることが必要である。このような時代背景の下にあって、色覚異常者に対し色を認識し易くしたカラー印刷装置として、特許文献1に記載の画像処理装置が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の画像処理装置は、文字や記号とその背景との色調を変化させることなく、文字や記号の可読性を向上させることができ、また色覚異常を持つ人にとっても読み易い画像を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-20974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の画像処理装置は、文字領域とこの文字領域の周辺領域の画素の明度差、もしくは、文字領域のエッジ部分と周辺領域との明度差を強調する補正処理を特徴とする。当該補正処理により、文字や記号とその背景との色調を変化させることなく、背景の色と組み合わされることにより、文字や記号に関して可読性を向上させることを特徴としている。
【0007】
先行技術の補正処理は、文字領域と周辺領域との色の組み合わせによっては可読性の判定が上手く実行されない場合がある。また、周辺領域を含む文字の背景がグラデーションなどの複雑な模様の場合、文字領域に対して一貫した補正処理が為されないため、再現画像の画質に劣化が生じ、返って文字部の可読性を低下させる場合がある。
【0008】
本発明の目的は、背景の色味や模様に依存することなく、文字や記号の可読性を向上させることで色覚異常(色盲・色弱)を持つ人にとって、判別し易い画像を提供することである。さらに、通常の色覚特性を持つ人に対しても、オリジナルの文字や記号の印象を変化させることのない画像処理方法、画像処理装置、画像形成装置、画像処理プログラムおよび記録媒体の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
入力画像データに対して色情報を補正する画像処理装置であって、
前記画像データに含まれる各画素の属性を表す属性情報に基づいて、属性判定信号を生成する属性判定部と、
前記入力画像データと、前記属性信号と、から注目画素がエッジであるかを判定し、エッジ判定信号を生成するエッジ判定部と、
前記入力画像データが特定色であるかを判定し、特定色判定信号を生成する特定色判定部と、
前記属性判定信号と、前記エッジ判定信号と、前記特定色判定信号と、から注目画素が補正対象であるかを判定し、補正判定信号を生成する補正判定部と、
入力画像データと、前記補正判定信号と、から色情報が補正された新たな画像データを生成する特定色補正部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明における実施形態1によると、
視覚異常を持つ人にとって区別が付き難い色味を有する文字オブジェクトに対して、文字エッジ部の明度を下げると共に、文字内部の明度を上げる処理を実施することができる。これにより、文字エッジ部と文字内部の明度差を強調させることができるため、色覚異常を持つ人にとっても読み易い画像データを提供が可能である。
【0011】
さらに、本補正処理においては、文字内部の色味(色相)はオリジナルの色味(色相)を保持するため、補正処理前後での画像データの印象を変えることがなく、通常の色覚特性を持つ人であっても違和感のない画像データを生成できる。
【0012】
さらにまた、本実施形態によれば、文字部のみの補正処理により可読性を向上させるため、文字自体の色味と、文字背景領域の色味との組み合わせを考慮する必要がない。従って、文字の背景がグラデーションなどの複雑な背景パターンであっても一貫した補正処理が為されるため、文字の可読性が失われることはない。
【0013】
また、本発明における実施形態2によると、
カラーモノクロ変換処理において、ユーザーが強調させることを意図している文字の輝度レベルと、文字背景の輝度レベルとが近似している場合であっても、文字エッジ部の明度を下げると共に、文字内部の明度を上げる処理を実施することで、文字エッジ部と文字内部の明度差を強調させることが可能である。
【0014】
これにより、カラーモノクロ変換処理においても、ユーザーが強調させることを意図している文字の可読性が失われることはない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】システムの構成を示すブロック図
【図2】印刷処理のための一構成を示す図
【図3】本発明におけるCUD画像処理部の構成を示す図
【図4】本発明における特定色判定処理の流れを示す図
【図5】本発明における特定色補正処理の流れを示す図
【図6】実施形態2における構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
<印刷システムの構成(全実施形態共通)>
図1は、本発明の実施形態に係る印刷システムの構成を示すブロック図である。なお、本発明の機能が実行されるのであれば、単体の機器であっても、複数の機器からなるシステムであっても、LAN,WAN等のネットワークを介して接続され、処理が行われるシステムであっても本発明を適用できる。
【0018】
同図において、コンピュータ3000は、CPU1を備えている。CPU1は、ROM3のプログラム用ROMや外部メモリ11に記憶された文書処理プログラム等に基づいて、後述される本発明の各実施形態に係わる処理を含む、図形、イメージ、文字、表等が混在した文書処理およびそれに基づく印刷処理の実行を制御する。またCPU1は、システムバス4に接続される各デバイスの制御を総括する。ROM3のプログラム用ROMや外部メモリ11には、CPU1の制御プログラムであるオペレーティングシステムプログラム(以下OS)等が記憶されている。また、ROM3のフォント用ROMあるいは外部メモリ11には上記文書処理の際に使用するフォントデータ等が記憶されている。さらに、ROM3のデータ用ROMあるいは外部メモリ11には上記文書処理等を行う際に使用する各種データが記憶されている。RAM2は、CPU1の主メモリ、ワークエリア等として機能する。
【0019】
キーボードコントローラ(KBC)5は、キーボード9や不図示のポインティングデバイスからのキー入力を制御する。CRTコントローラ(CRTC)6は、バーコード画像の表示を含む、CRTディスプレイ(CRT)10による表示を制御する。7はディスクコントローラ(DKC)を示し、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、編集ファイル、プリンタ制御コマンド生成プログラム(以下プリンタドライバ)等を記憶するハードディスク(HD)、フロッピー(登録商標)ディスク(FD)等の外部メモリ11とのアクセスを制御する。プリンタコントローラ(PRTC)8は、双方向性インターフェース(インターフェース)21を介してプリンタ1500に接続されて、プリンタ1500との通信制御処理を実行する。
【0020】
なお、CPU1は、CRT10上の不図示のマウスカーソル等で指示されたコマンドに基づいて、予め登録された種々のウィンドウを開き、種々のデータ処理を実行する。ユーザは印刷を実行する際、印刷の設定に関するウィンドウを開き、プリンタの設定や、印刷モードの選択を含むプリンタドライバに対する印刷処理方法の設定を行うことができる。
【0021】
プリンタ1500は、そのCPU12によって制御される。プリンタCPU12は、ROM13に記憶された制御プログラム等、あるいは外部メモリ14に記憶された制御プログラム等に基づいてシステムバス15に接続される印刷部(プリンタエンジン)17に印刷出力情報としての画像信号を出力する。
【0022】
また、このROM13のプログラムROMには、CPU12の制御プログラム等が記憶される。また、ROM13のフォント用ROMには上記印刷出力情報を生成する際に使用するフォントデータ等が記憶される。また、ROM13のデータ用ROMには、ハードディスク等の外部メモリ14がないプリンタの場合には、コンピュータ上で利用される情報等が記憶されている。
【0023】
CPU12は入力部18を介してコンピュータとの通信処理が可能となっている。これにより、プリンタ内の情報等をコンピュータ3000に通知できる。RAM19は、CPU12の主メモリや、ワークエリア等として機能するRAMである。また、図示しない増設ポートに接続されるオプションRAMによりメモリ容量を拡張することができるように構成されている。なお、RAM19は、出力情報展開領域、環境データ格納領域、NVRAM等に用いられる。
【0024】
前述したハードディスク(HD)、ICカード等の外部メモリ14は、メモリコントローラ(MC)20によりアクセスを制御される。外部メモリ14は、オプションとして接続され、フォントデータ、エミュレーションプログラム、フォームデータ等を記憶する。また、18は前述した操作パネルで操作のためのスイッチおよびLED表示器等である。
【0025】
また、プリンタ1500は図示しないNVRAMを有し、操作パネル1501からのプリンタモード設定情報を記憶するようにしてもよい。
【0026】
印刷部17は本実施形態では電子写真方式のエンジンとしている。従って、バーコード画像を含む印刷データはトナーのドットによって最終的に紙などの媒体上に記録される。なお、本発明における印刷の方式はこのような電子写真方式に限られないことはもちろんである。例えば、インクジェット方式など、ドットを形成して印刷を行ういずれの方式の印刷装置にも本発明を適用することができる。
【0027】
図2は、図1に示したコンピュータ3000における印刷処理のための一構成を示す図である。アプリケーション201、グラフィックエンジン202、プリンタドライバ203、およびシステムスプーラ204は、外部メモリ11に保存されたファイルとして存在する。そして、これらは、OSやそのモジュールを利用するモジュールによってRAM2にロードされて実行されるプログラムモジュールである。
【0028】
また、アプリケーション201およびプリンタドライバ203は、外部メモリ11のFDや不図示のCD−ROM、あるいは不図示のネットワークを経由して外部メモリ11のHDに追加することが可能となっている。外部メモリ11に保存されているアプリケーション201はRAM2にロードされて実行される。RAM2にロードされ実行中のアプリケーション201からプリンタ1500に対して印刷を行う際には、同様にRAM2にロードされ実行可能となっているグラフィックエンジン202を利用して出力(描画)を行う。
【0029】
グラフィックエンジン202は、プリンタなどの印刷装置ごとに用意されたプリンタドライバ203を外部メモリ11からRAM2にロードし、アプリケーション201の出力をプリンタドライバ203に設定する。また、グラフィックエンジン202はアプリケーション201から受け取るGDI(Graphic Device Interface)関数をDDI(Device Driver Interface)関数に変換して、プリンタドライバ203へ出力する。プリンタドライバ203は、グラフィックエンジン202から受け取ったDDI関数に基づいて、プリンタが認識可能な制御コマンド、例えばPDL(Page Description Language)に変換する。変換されたプリンタ制御コマンドは、OSによってRAM2にロードされたシステムスプーラ204を経てインターフェース21経由でプリンタ1500へ印刷データとして出力される仕組みとなっている。
【0030】
本実施形態の印刷システムは、プリンタドライバ203内にCUD(Color Universal Design)画像処理部205を有することを特徴とする。CUD画像処理部205はプリンタドライバ203のビルドインモジュールであってもよいし、個別のインストーレーションによって追加されるライブラリモジュールの形式であっても構わない。プリンタドライバ203はグラフィックエンジン202から送信されたデータ信号から、多値または二値の入力画像データ信号、および多値または二値の属性データ信号を生成し、CUD画像処理部205に送信する。プリンタドライバ203は、多値または二値の画像データの印刷処理に関し、CUD画像処理部205の実行により、後述する本発明の補正処理を行う。
【0031】
<実施形態1>
図3は、図2に示したCUD画像処理部205の構成を説明するブロック図である。
【0032】
CUD画像処理部205は、CUD補正判定部301とCUD補正処理部302とで構成される。
【0033】
CUD画像処理部205には、プリンタドライバ203から多値または二値の入力画像データ信号および、多値または(二値)の属性データ信号が入力される。本実施系においては入力画像データをRGBとし、補正処理後の出力画像データをR’B’G’として示している。なお、図には記載していないが、本実施形態において、画像データ信号はRGBそれぞれ8bitのデータとして処理している。出力画像データも同様である。
【0034】
また、属性データ信号とは、注目画素の属性や注目画素の属する面の属性をビット化した属性情報である。例えば、入力画素の各画素がテキスト(文字)、ビットマップ(写真)、ベクター(線画)のいずれの画像属性なのか、などの情報を保持している。属性信号は上記以外にも様々な情報を保持しているがここでは省略する。なお、図には記載していないが、本実施形態において、属性データ信号は4bitのデータとして処理している。
【0035】
CUD画像処理部205に入力された画像データ信号および属性データ信号は、まずCUD補正判定部301に送信され、本発明における補正処理が必要かどうかを判定される。CUD補正判定部301にて補正が必要だと判定された場合、その後のCUD補正処理部302にて本発明における補正処理が実施される。
【0036】
以下、CUD補正判定部301およびCUD補正処理部302について具体的に説明する。
【0037】
1.CUD補正判定部301
CUD補正判定部301では、入力画像データ信号および属性データ信号とから、注目画素において本発明における補正処理が必要かどうかを判定するCUD補正判定信号を生成し、後述するCUD補正処理部302に送信する。
【0038】
以下、図3を使って説明する。
【0039】
まず、属性判定部303において、入力された属性データ信号から、注目画素の属性が文字オブジェクトであるかを判定する。さらに判定結果を格納する1bitの属性判定信号を生成する。
【0040】
次に、エッジ判定部304は、属性判定部303において生成された1bitの属性判定信号を受信し、注目画素が文字オブジェクトであると判定された場合に、エッジ判定処理を行う。エッジ判定処理の方法は、内部に有しているFiFoメモリ(不図示)を使用して、属性データ信号によるパターンマッチングにて行う。パターンマッチング処理自体は既知の技術なので説明は省略するが、例えば、4bitの属性データ信号をビット変換により2bitの判定信号に変換し、この2bitの判定信号を2ライン遅延させる。これにより、注目画素ラインを含めた2bit3ラインの判定信号から3×3の画素領域でパターンマッチングを行う。
【0041】
なお、言うまでもなくエッジ判定処理の際に必要に応じてエッジ太らせ処理も実施する。エッジ太らせ処理は、文字エッジ部周辺の画素を意図的にエッジ部として処理することで、文字エッジ部の画素を増加させるものである。本実施形態においては、文字サイズに応じて文字内部への1画素ないしは2画素の文字エッジ部太らせ処理を実施している。
【0042】
エッジ判定部304では、前述したエッジ判定処理の後、注目画素が文字エッジ部であるかを判定した結果を格納する1bitのエッジ判定信号を生成する。
【0043】
次に、特定色判定部305は、入力画像データ信号の色値が特定色に近似しているかを判定し、1bitの特定色判定信号を生成する。なお、特定色とは、本発明における補正処理の対象となる基準の色味であり、色覚異常者にとって認識し難い文字オブジェクトの色味として、事前に設定可能な色値である。
【0044】
ここで、本明細書において色覚異常者とは、色覚異常者又は色覚障害者と呼ばれる人々のことをいう。色覚異常者としては、赤と緑の区別が付き難い赤緑色覚異常者が多いが、青と黄の区別が付き難い青黄色覚異常者も見られる。赤緑色覚異常者は、赤椎体系又は緑椎体系の異常に起因し、赤椎体系に異常がある異常者が第1色覚異常者と称され、緑椎体系に異常がある異常者が第2色覚異常者と称されている。また、青黄色覚異常は、青椎体系の異常に起因し、この場合の異常者が第3色覚異常者と称されている。
【0045】
すなわち、特定色判定部305にて判定の対象となる特定色とは、色覚異常者にとって認識し難い任意の色味であり、文字オブジェクトに適用される色味である。例えば第1色覚異常者の場合は赤系統や緑系統の色、もしくは青系統や黄系統の色となる。
【0046】
特定色の設定方法としては、専用のUI(ユーザーインターフェース)を設けておき、使用の際にユーザーに選択させても構わない。また、プリセットとして事前に決められた複数の色値の組み合わせをソフトウェアに設定しておいても構わない。設定された特定色は、特定色設定部307に格納される。
【0047】
特定色とは別に、特定色判定閾値(ΔEth)も設定しておく必要がある。特定色判定閾値は後述する特定色判定処理で使用する値であり、注目画素の色味と、特定色との色味が近似しているかどうかを判定する際に用いる閾値である。特定色判定閾値は通常、ユーザー毎に異なる設定が必要ということはなく、事前に決められた値がソフトウェアに設定されていれば良い。特定色判定閾値は、特定色設定部307に格納される。
【0048】
以下、特定色判定部305における特定色判定処理を説明する。
【0049】
図4は特定色判定部305における特定色判定処理の流れを示したフロー図である。
【0050】
まず、S401にて、注目画素の色値を取得する。
【0051】
次に、S402にて、特定色設定部307から、特定色として事前に設定されている色値を取得する。
【0052】
次に、S403にて、特定色設定部307から、特定色判定閾値(ΔEth)を取得する。
【0053】
次に、S404にて、注目画素の色値が特定色の色値と近似しているかを判定する。
【0054】
なお、S404において実施される、注目画素の色値が特定色の色値と近似しているかの判定は、ここでは画像データ信号であるRGB信号を、均等色空間であるL*a*b*信号に変換して行われる。
【0055】
ここで、L*a*b*とは、国際照明委員会 (CIE) が策定した、人間の目で見える全ての色を記述でき、機器固有モデルの基準として利用できるように意図した色空間座標である。
3つの座標は、色の明度(L* = 0 は黒、L* = 100 は白の拡散色で、白の反射色はさらに高い)、赤/マゼンタと緑の間の位置(a*、負の値は緑寄りで、正の値はマゼンタ寄り)、黄色と青の間の位置(b*、負の値は青寄り、正の値は黄色寄り)に対応している。
【0056】
また、RGB信号からL*a*b*信号に変換する処理として、例えば変換行列を用いる方法や、ルックアップテーブル(LUT)を用いる方法などが考えられる。RGB信号からL*a*b*信号に変換する処理は既知の技術なので、ここでは省略する。
【0057】
注目画素の色値と、特定色の色値を均等色空間であるL*a*b*信号に変換した後、二つの色の色差(ΔE)を算出する。ここで、注目画素の色値、および特定色の色値をそれぞれL*a*b*信号に変換した場合の信号値をL*a*b*およびL*a*b*とする。この場合、色差(ΔE)は各L*a*b*信号のL*軸、a*軸、b*軸の差をそれぞれ二乗したものの和の平方根により求められる(式1)。
【0058】
ΔE=sqrt((L*−L*)+(a*−a*)+(b*−b*)・・・(1)
S404の判定処理では、この色差(ΔE)とS403で取得した特定色判定閾値(ΔEth)とを比較して、近似しているかどうかの判定を実施する。具体的には、ΔE≦ΔEthと判定された場合、注目画素と特定色は近似色であるとして、S405にて特定色判定信号に“ON“が設定される。
【0059】
一方、S404にてΔE>ΔEthと判定された場合、注目画素と特定色は近似色ではないとして、S406にて特定色判定信号に“OFF“が設定される。
【0060】
最後に、S407において、全ての特定色で判定処理が実施されたかどうかを確認し、まだ判定処理が実施されていない特定色があれば、S402に戻って、次の特定色を取得する処理を開始する。全ての特定色で判定処理が実施されていれば特定色判定処理を終了する。
【0061】
以上により、注目画素の属性判定信号、エッジ判定信号、特定色判定信号がそれぞれ補正判定部306に入力され、補正判定部306にて本発明における補正処理が必要かどうかの判定値を格納したCUD補正判定信号が生成される。
【0062】
以下、補正判定部306における補正判定処理について説明する。
【0063】
図5は、補正判定部306で実行される補正判定処理の流れ示したフロー図である。
【0064】
まず、S501にて、第1補正判定が実行される。第1補正判定では、注目画素が補正対象であるかどうかが判定される。具体的には、属性判定部303で生成された属性判定信号が文字オブジェクトであり、かつ特定色判定部305で生成された特定色判定信号が“ON”の場合に、注目画素が補正対象であると判定され、S502に処理が遷移する。
【0065】
一方、属性判定部303で生成された属性判定信号が文字オブジェクト以外であるか、もしくは、特定色判定部305で生成された特定色判定信号が“OFF”であれば、当該注目画素は補正対象外であると判定される。この場合、S505にてCUD補正判定信号に「補正なし」であることを示す値が格納される。
【0066】
S501の第1補正判定にて、注目画素が補正対象であると判定された場合、S502にて、第2補正判定が実行される。第2補正判定では、エッジ判定部304で生成されたエッジ判定信号を使って、注目画素がエッジ部であるかどうかが判定される。ここで、注目画素がエッジ部でないと判定された場合、すなわち当該注目画素は特定色で、かつ文字内部の画素であると判定され、S503にてCUD補正判定信号に「文字内部補正」であることを示す値が格納される。
【0067】
また、S502にて、注目画素がエッジ部であると判定された場合、すなわち当該注目画素は特定色で、かつ文字エッジ部であると判定され、S504にてCUD補正判定信号に「文字エッジ部補正」であることを示す値が格納される。
【0068】
以上、補正判定処理により、補正判定部306にて本発明における補正処理が必要かどうかの判定値を格納したCUD補正判定信号が生成される。
【0069】
2.CUD補正処理部302
CUD補正処理部302では、CUD補正判定部301から送信されたCUD補正判定信号と、入力画像データ信号とから、本発明における補正処理である特定色補正処理を実施し、出力画像データ信号を生成する。
【0070】
以下、CUD補正処理部302における特定色補正処理について説明する。
【0071】
まず、CUD補正判定部301から送信されたCUD補正判定信号が「補正なし」であることを示す値である場合、入力画像データ信号は特定色補正処理を実施することなく、そのまま出力画像データ信号として出力する。
【0072】
また、CUD補正判定部301から送信されたCUD補正判定信号が「文字内部」であることを示す値である場合、特定色判定部305での処理と同様に、入力画像データ信号であるRGB信号がL*a*b*信号に変換される。RGB信号がL*a*b*信号に変換された後、式(2)に示される様に、L*は所定値であるΔLi*だけ加算され、新たなL*’に更新される。最後に、更新後のL*a*b*信号はRGB信号に逆変換され、L*だけが補正処理された画像データ信号(R’G’B’)が生成される。
【0073】
L*’ = L* + ΔLi* ・・・(2)
以上の特定色補正処理により、文字内部の色値は、色味(色相)を保持したまま明度を上げることが可能である。
【0074】
一方、CUD補正判定部301から送信されたCUD補正判定信号が「文字内部」であることを示す値である場合、前述した、CUD補正判定信号が「文字エッジ部」であることを示す場合の処理と同様に、入力画像データ信号であるRGB信号がL*a*b*信号に変換される。
【0075】
RGB信号がL*a*b*信号に変換された後、式(3)に示される様に、L*は所定値であるΔLe*だけ減算され新たなL*’に更新される。最後に、更新後のL*a*b*信号はRGB信号に逆変換され、L*だけが補正処理された画像データ信号(R’G’B’)が生成される。
【0076】
L*’ = L* − ΔLe* ・・・(3)
以上の特定色補正処理により、文字エッジ部の色値は、色味(色相)を保持したまま明度を下げることが可能である。なお、本処理においては、エッジ判定部304で文字エッジ部太らせ処理を実施しているため、1画素ないしは2画素程度のエッジ画素の太らせ効果がある。
【0077】
ここで、ΔLi*およびΔLe*は明度を表す値である。式(2)および、式(3)においてそれぞれ所定の値をL*から単純に加算または減算することで、L*’を算出しているが、L*’の算出方法はこれに限ったものではない。例えばΔLi*およびΔLe*を定数ではなく、入力値をL*値としたLUT(ルックアップテーブル)を使用して、L*値に応じてΔLi*およびΔLe*を新たに生成することも有効である。
【0078】
<実施形態2>
実施形態2の印刷システムは、実施形態1と同様にカラーの入力画像データ信号を受信するが、その後の処理にて、画像データ信号をモノクロ画像に変換して使用する場合を想定する。
【0079】
実施形態1と同様にドライバ203内にCUD画像処理部を有しており基本的な構成は実施形態1と同じである。実施形態2のポイントであり、実施形態1との一番の違いは、特定色設定部307に格納される値にある。
【0080】
実施形態1では、特定色設定部307に格納する値として、色覚異常者にとって認識し難い文字オブジェクトの色値を設定していた。実施形態2における特定色設定部307では、通常の色覚特定を有する人が、文書やプレゼン資料などにおいて強調させたいと考える文字オブジェクトの色値を設定する。
【0081】
実施形態2のポイントは、ユーザーが強調させることを意図して設定した文字の色味(例えば赤)の輝度レベルと、文字背景の色味の輝度レベルが近似している場合に、カラーモノクロ変換により、3チャンネルのRGB信号が、1チャンネルの輝度信号に変換されることで、文字の可読性が低下することを防ぐことにある。
【0082】
図6は実施形態2におけるCUD画像処理部を説明するブロック図である。
【0083】
CUD補正判定部301および、CUD補正処理部302は実施形態1と同じであるが、実施形態2の処理においては、これらに加えて、カラー画像データをモノクロ画像データに変換するためのカラーモノクロ変換部601を有している。
【0084】
カラーモノクロ変換部601では、CUD補正処理部302で補正された画像データ信号(R’、G’、B’)を用いて、以下の変換式(4)により、輝度信号であるND1への変換処理を行う。
【0085】
ND1 = 0.21×R’+0.72×G’+0.07×B’ ・・・(4)
ここではモノクロ化ということで、ND1の1チャンネル信号で説明しているが、R=G=Bとして複数信号で処理し、最終的に1チャンネルにする方法もある。
【0086】
なお、カラーモノクロ変換部601で生成された輝度信号ND1は、この後不図示の輝度濃度変換部において、輝度信号から濃度信号に変換される。
【0087】
以上、説明したように実施形態2のCUD画像処理部における効果は次の通りである。
【0088】
カラーモノクロ変換において、ユーザーが強調させることを意図している文字の輝度レベルと、文字背景の輝度レベルとが近似している場合であっても、文字エッジ部の明度を下げると共に、文字内部の明度を上げる処理が可能である。これにより、文字エッジ部と文字内部の明度差を強調させることができるため、カラーモノクロ変換処理においても、ユーザーが強調させることを意図している文字の可読性が失われることはない。
【符号の説明】
【0089】
201・・・アプリケーション
202・・・グラフィックエンジン
203・・・プリンタドライバ
204・・・システムスプーラ
205・・・CUD画像処理部
301・・・CUD補正判定部
302・・・CUD補正処理部
303・・・属性判定部
304・・・エッジ判定部
305・・・特定色判定部
307・・・特定色設定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データに対して色情報を補正する画像処理装置であって、
前記画像データに含まれる各画素の属性を表す属性情報に基づいて、属性判定信号を生成する属性判定部(303)と、
前記入力画像データと、前記属性信号と、から注目画素がエッジであるかを判定し、エッジ判定信号を生成するエッジ判定部(304)と、
前記入力画像データが特定色であるかを判定し、特定色判定信号を生成する特定色判定部(305)と、
前記属性判定信号と、前記エッジ判定信号と、前記特定色判定信号と、から注目画素が補正対象であるかを判定し、補正判定信号を生成する補正判定部(306)と、
入力画像データと、前記補正判定信号と、から色情報が補正された新たな画像データを生成する特定色補正部(302)と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記属性判定部(303)は、注目画素が文字オブジェクトであるかを判定し、属性判定信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記エッジ判定部(304)は、文字サイズに応じて画素単位でエッジを太らせたエッジ判定信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記特定色は、カラーユニバーサルデザインに関する色値であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記特定色は、ユーザーが強調させることを意図して設定した文字の色値であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の画像処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−110617(P2013−110617A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254602(P2011−254602)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】