説明

画像処理装置

【課題】共有したアドレス帳の宛先データを含む転送設定を他の画像処理装置に配信すると、誤送信や送信エラーが発生してしまう。
【解決手段】共有したアドレス帳の宛先データを含む転送設定を他の画像処理装置複に配信する場合は、共有したアドレス帳の識別情報も同期して配信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合機などの画像処理装置の文書転送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の複合機は、電子文書の送信/転送のために使用するアドレス帳をハードディスクに保持し、アドレス帳に登録されている宛先データが示す宛先へ電子文書を送信/転送する機能を備えている。アドレス帳は、具体的には、EmailアドレスやFAX番号等の宛先データ、及び、これら宛先データを識別するために一意に割り当てられた宛先IDが互いに対応づけられて管理されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の複合機では、例えばFAX等のある受信条件で受信した電子文書を予め登録した転送先へ自動的に転送するといった機能を備えているものもある(以下では、このような機能を受信転送機能という)。なお、受信転送機能を備える複合機は、受信した電子文書の転送先を登録する際、転送先の情報として、上記宛先データそのものではなく、アドレス帳で管理されている宛先データの識別ID(宛先ID)を登録することもできる。宛先データそのものではなく宛先IDを登録することで、アドレス帳の宛先データが更新された場合に、最新の宛先データが示す宛先へ電子文書を転送することができるといった利点がある。
【0004】
ところで、従来の複合機において、電子文書の転送先として登録した宛先ID等の設定情報を他の複合機に配信する機能や、配信された設定情報をインポートして利用する機能を備えているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−081056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、複合機自身が持つアドレス帳ではなく、ネットワーク上に公開されているアドレス帳を参照して利用する技術が登場している。しかしながら、公開されているアドレス帳を参照して利用するためには、どの装置(アドレス帳サーバ)がアドレス帳を公開しているのかを特定する必要があるので、事前の準備として、アドレス帳を公開している装置のアドレス(例えばIPアドレス)を登録しておく必要がある。
【0007】
上述のように、電子文書を自動的に転送する機能を備える複合機において、転送先の情報として、自装置のアドレス帳の宛先IDではなくネットワーク上に公開されているアドレス帳の宛先IDを登録する場合が考えられる。更に、その登録した宛先IDを含む設定情報を他の複合機に配信する場合も考えられる。
【0008】
このような場合、登録した宛先IDを含む設定情報を他の複合機に配信しても、配信先の複合機(すなわち設定情報をインポートした複合機)では、必ずしも宛先IDに紐づく宛先データを参照できるとは限らない。なぜなら、配信先の複合機は、宛先IDだけ配信されても、どの装置がアドレス帳を公開しているかを特定できない限り、その宛先IDに紐づく宛先データを参照できない可能性があるからである。そのため、ネットワーク上に公開されているアドレス帳の宛先データを配信先の複合機で参照できず、送信/転送エラーとなってしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みて為されたもので、宛先IDを他の画像処理装置に配信する際に、宛先IDの配信に付随してアドレス帳サーバのアドレスも配信することで、配信先の画像処理装置でアドレス帳サーバから宛先データを参照できない事態を防止できる画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像処理装置は、宛先データとその宛先データを識別する宛先IDとを管理する宛先管理サーバと通信可能な画像処理装置であって、
前記宛先管理サーバのアドレスを登録するアドレス登録手段と、
電子文書を受信する受信手段と、
ある受信条件で受信した電子文書の転送先を示す情報として、前記宛先IDを登録する宛先ID登録手段と、
前記受信条件で前記受信手段が電子文書を受信した場合、前記登録された宛先IDにより識別される宛先データを前記宛先管理サーバから取得するとともに、当該取得した宛先データが示す宛先へ前記受信した電子文書を転送する転送手段と、
前記受信転送登録手段で登録した宛先IDを他の画像処理装置に配信する場合、前記宛先IDの配信に付随して前記アドレス登録手段で登録した宛先管理サーバのアドレスを配信する配信手段と
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、配信先の画像処理装置で宛先参照エラーとなってしまうことを防止できる画像処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1のシステム全体を表した構成図である。
【図2】実施例1のMFP110のハードウェア構成を説明する構成図である。
【図3】実施例1のアドレス帳サーバ120のハードウェア構成を説明する構成図である。
【図4】実施例1のアドレス帳サーバ120で管理されているアドレス帳のデータ構造図である。
【図5】実施例1のMFP130のハードウェア構成を説明する構成図である。
【図6】実施例1のMFP110の受信した電子文書の転送設定登録を説明するためのフローチャートである。
【図7】実施例1のMFP110での転送設定データの構造図である。
【図8】実施例1のMFP110の転送設定配信動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】実施例2のMFP110の転送設定配信動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施例1]
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0014】
図1は本実施例のシステム構成の一例である。同図において、符号110、及び130は複合機などの画像処理装置(以下、MFPと記す)である。符号120はアドレス帳サーバである。同図に示されるように、MFP110、アドレス帳サーバ120(宛先管理サーバ)、MFP130がネットワークを介して通信可能に接続されている。MFP110からMFP130へと各種設定値を配信し、同じ設定値に変更することができる。
【0015】
図2は本実施例のMFP110の機器の構成図の一例である。111は装置全体を制御するCPU、112はCPU111のワークエリアを提供するRAM、113は本発明のプログラムを提供およびさまざまな設定を記憶するNVRAM(ハードディスク等でもよい)である。また115はユーザ(使用者、設置者含む)がコマンドの入力を行うユーザコマンド入力装置、116は画面表示を行うUI表示装置である。また117は他機器とネットワークによる通信を行う通信装置、118はメインバスである。
【0016】
尚、本実施例は特に断らない限り、MFP110ではCPU111がメインバス118を介してRAM112、ハードディスク113、ユーザコマンド入力装置115、UI表示装置116、通信装置117を制御して実施する。
【0017】
図3は本実施例のアドレス帳サーバ120の機器の構成図の一例である。121は装置全体を制御するCPU、122はCPU121のワークエリアを提供するRAM、123は本発明のプログラムを提供およびさまざまな設定を記憶するNVRAM(ハードディスク等でもよい)である。また127は他機器とネットワークによる通信を行う通信装置、128はメインバスである。
【0018】
尚、本実施例は特に断らない限り、アドレス帳サーバ120ではCPU121がメインバス128を介してRAM122、ハードディスク123、通信装置127を制御して実施する。
【0019】
アドレス帳サーバ120はEmailアドレスやFAX番号といった情報を含む宛先データをハードディスク123に記録することができる。図4は、アドレス帳サーバのハードディスク123に記録されている宛先データのリストであるアドレス帳の管理の一例である。宛先データは宛先データを特定するための識別子(宛先ID)を含んでいる。前記識別子は汎用一意識別子でも良いし、アドレス帳サーバ120を特定する識別子(IPアドレスなど)とアドレス帳サーバ120内で唯一となる識別子の組み合わせでも良い。アドレス帳サーバ120は通信装置127からネットワークを介して、アドレス帳を別の装置に公開することが可能である。
【0020】
図5は本実施例のMFP130の機器の構成図の一例である。131は装置全体を制御するCPU、132はCPU111のワークエリアを提供するRAM、133は本発明のプログラムを提供およびさまざまな設定を記憶するNVRAM(ハードディスク等でもよい)である。また135はユーザ(使用者、設置者含む)がコマンドの入力を行うユーザコマンド入力装置、136は画面表示を行うUI表示装置である。また137は他機器とネットワークによる通信を行う通信装置、138はメインバスである。
【0021】
尚、本実施例は特に断らない限り、MFP130ではCPU131がメインバス138を介してRAM132、ハードディスク133、ユーザコマンド入力装置135、UI表示装置136、通信装置137を制御して実施する。
【0022】
図6は、MFP110において、ある受信条件で電子文書を受信した際の転送設定を行う動作の一例である。まず初めにMFP110は転送設定を行うための入力を促す画面をUI表示装置116に表示する(S101)。
【0023】
次にMFP110は、ユーザコマンド入力装置115から転送条件の選択指示を受け付ける(S102)。
【0024】
転送条件は電子文書を受信した時にどのような条件の場合にその電子文書を転送するかを決定する設定であり、例えば「FAXで受信した場合は転送を行う」といった設定となる。その後、転送先を示す情報を設定するため、MFP110はユーザコマンド入力装置115からアドレス帳の表示要求を受け付ける(S103)。具体的には、MFP110は、通信装置117を介してアドレス帳サーバ120にアドレス帳の取得要求を送信し、アドレス帳サーバ120からアドレス帳を取得する(S104)。なお、MFP110は、アドレス帳サーバ120に取得要求を送信するために、事前の準備として、アドレス帳をネットワーク上に公開しているアドレス帳サーバのIPアドレス等を登録しておく必要がある。
【0025】
なお本実施例ではMFP110とアドレス帳サーバ120がネットワークで接続されているが、MFP110とアドレス帳サーバ120が同一装置であってもよい。MFP110とアドレス帳サーバ120が同一装置である場合では、MFP110はメインバス118を介して、ハードディスク113に保存されているアドレス帳を取得する。
【0026】
そしてMFP110は、アドレス帳サーバ120(又はハードディスク113)から取得したアドレス帳をUI表示装置116に表示する(S105)。
【0027】
アドレス帳の表示後、MFP110は、ユーザコマンド入力装置115から転送先として設定する宛先データの選択指示を受け付ける(S106)。最後にMFP110はS103で選択指示を受けた宛先データを識別する宛先IDの転送設定をハードディスク113に保存する(S107)。
【0028】
図7は、S107でハードディスク113に保存される転送設定のリストの一例である。転送先としては、アドレス帳に含まれる宛先データそのものではなく、宛先データの識別子(宛先ID)を設定する。
【0029】
図8は転送設定データを、他の複合機であるMFP130に配信する際のMFP110の動作の一例である。
【0030】
まず初めにMFP110は、転送設定データの配信先の情報を取得する(S201)。具体的な例としては、配信を実行する際にユーザコマンド入力装置115から入力された設定を取得してもよいし、予めユーザコマンド入力装置115から入力された設定をハードディスク113に保存しておき配信時に読みだしてもよい。
【0031】
次にMFP110はハードディスク113に保存されている転送設定データを、配信用データへと変換処理を行う(S202)。
【0032】
次にMFP110は、転送設定に登録されている宛先データの取得先として、アドレス帳サーバが設定されているかどうかを判断する(S203)。この判断の具体例としては、MFP110に登録されている1つないし複数のアドレス帳サーバがあるかないかを判断するという方法がある。また、転送設定に保存されている宛先データを1件ずつ、アドレス帳サーバに登録されている宛先かどうか調べるという方法もある。
【0033】
S203でYESと判断された場合は、アドレス帳サーバのアドレスを宛先取得場所の設定として配信用データに追記する(S204)。
【0034】
アドレス帳サーバのアドレスとしては、IPアドレスが例に挙げられる。その後、配信用データを配信先に配信する(S205)。
【0035】
なお、本実施例では配信先をMFP130としているが、MFP130はMFP110と同じ画像処理装置ではなく、情報処理端末でもよい。MFP130が情報処理端末である場合は、配信データをファイルとして保存する。ファイル化された配信データをさらに他の画像処理装置に配信することで、画像処理装置の設定値変更を行うことができる。S203でNOと判断された場合は、S205を行う。S205を実行して処理を終了する。
【0036】
実施例1によれば、宛先IDの配信に付随してアドレス帳サーバのアドレスも配信するので、配信先の複合機で宛先データが参照できる転送エラーとなってしまう事態を防止できる。
【0037】
[実施例2]
本実施例のシステム構成は実施例1と同様であるため説明は省略する。
【0038】
本実施例のMFP110の機器の構成、アドレス帳サーバ120の機器の構成、MFP130の機器の構成についても実施例1と同様であるため説明は省略する。
【0039】
本実施例の転送設定を行う際のMFP110の動作の一例についても実施例1と同様であるため説明は省略する。
【0040】
図9は転送設定データをMFP130に配信する際のMFP110の動作の一例である。
【0041】
まず初めにMFP110は転送設定データの配信先の情報を取得する(S301)。具体的な例としては、配信を実行する際にユーザコマンド入力装置115から入力された設定を取得してもよいし、予めユーザコマンド入力装置115から入力された設定をハードディスク113に保存しておき配信時に読みだしてもよい。次にMFP110はハードディスク113に保存されている転送設定を、配信用データへと変換処理を行う(S302)。 次にMFP110は転送設定に登録されている宛先データの取得先として、アドレス帳サーバが設定されているかどうかを判断する(S303)。この判断の具体例としては、MFP110に登録されている1つないし複数のアドレス帳サーバがあるかないかを判断するという方法がある。また、転送設定に保存されている宛先データを1件ずつ、アドレス帳サーバに登録されている宛先かどうか調べるという方法もある。S303でYESと判断された場合は、アドレス帳サーバから取得した宛先データを配信用データに追記する(S304)。同時に配信用データ内の転送設定の転送先として、S304で追記した宛先データを設定しなおす(S305)。こうすることで、配信用データ内に転送設定と宛先データを持ち、配信後も送信エラーとならない設定とすることができる。その後、配信用データを配信先に配信する(S306)。
【0042】
本実施例では配信先をMFP130としているが、MFP130はMFP110と同じ画像処理装置ではなく、情報処理端末でもよい。MFP130が情報処理端末である場合は、配信データをファイルとして保存する。ファイル化された配信データをさらに他の画像処理装置に配信することで、画像処理装置の設定値変更を行うことができる。S303でNOと判断された場合は、S306を行う。S306を実行して処理を終了する。
【符号の説明】
【0043】
110 MFP
120 アドレス帳サーバ
130 MFP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宛先データとその宛先データを識別する宛先IDとを管理する宛先管理サーバと通信する画像処理装置であって、
前記宛先管理サーバのアドレスを登録するアドレス登録手段と、
電子文書を受信する受信手段と、
ある受信条件で受信した電子文書の転送先を示す情報として、前記宛先IDを登録する宛先ID登録手段と、
前記受信条件で前記受信手段が電子文書を受信した場合、前記登録された宛先IDにより識別される宛先データを前記宛先管理サーバから取得するとともに、当該取得した宛先データが示す宛先へ前記受信した電子文書を転送する転送手段と、
前記宛先ID登録手段で登録した宛先IDを他の画像処理装置に配信する場合、前記宛先IDの配信に付随して前記アドレス登録手段で登録した宛先管理サーバのアドレスを配信する配信手段と
を有することを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−81059(P2013−81059A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219780(P2011−219780)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】