説明

画像処理装置

【課題】心筋の画像診断能の向上。
【解決手段】記憶部11は、心臓に関するボリュームデータを記憶する。抽出部13は、ボリュームデータから心筋領域を抽出する。曲面設定部15は、抽出された心筋領域のうちの外壁から内壁までの間の所定位置に、表示のための曲面を設定する。展開画像発生部17は、設定された曲面における画素値の空間分布を2次元の直交座標系で表現する展開画像のデータをボリュームデータに基づいて発生する。表示部19は、発生された展開画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心筋解析のため、X線コンピュータ断層撮影装置や磁気共鳴イメージング装置等の高分解能の画像診断装置により心臓全体をスキャンすることが可能となっている。心筋の解析結果を表示するために、画像診断装置により発生されたボリュームデータに基づいてポーラーマップやMPR(Multi Planar Reconstruction)画像を発生している。ポーラーマップは、心筋領域の心軸回りの基準点からの回転角度と心軸上の基準点からの距離とにより規定される2次元の極座標系で画素値の空間分布を示す画像である。従って、ポーラーマップは、心筋全体を観察するのに適している。しかし、ポーラーマップ上の位置と実際の心筋の位置との対応を把握しづらい。MPR画像は、心筋領域に設定された一断面内の画素値の空間分布を示している。従って、MPR画像上の位置と実際の心筋の位置との対応を把握しやすい。しかし、MPR画像により心筋全体を観察することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
目的は、心筋の画像診断能の向上を可能とする画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本実施形態に係る画像処理装置は、心臓に関するボリュームデータを記憶する記憶部と、前記ボリュームデータから心筋領域を抽出する抽出部と、前記抽出された心筋領域のうちの外壁から内壁までの間の所定位置に、表示のための曲面を設定する設定部と、前記曲面における画素値の空間分布を2次元の直交座標系で表現する展開画像のデータを前記ボリュームデータに基づいて発生する展開画像発生部と、前記発生された展開画像を表示する表示部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図。
【図2】図1の制御部の制御により実行される画像処理の典型的な流れを示す図。
【図3】図2のステップS2において抽出される心筋領域の模式図。
【図4】図2のステップS4において曲面設定部により行われる正規化処理を説明するための図。
【図5】図2のステップS7において展開画像発生部により行われる展開画像発生処理の概念を示す図。
【図6】図2のステップS7において展開画像発生部により行われる展開画像発生処理の詳細を示す図。
【図7】図2のステップS8において表示部による展開画像の表示例を示す図。
【図8】図2のステップS8において表示部による展開画像の他の表示例を示す図。
【図9】図2のステップS8において表示部による展開画像の他の表示例を示す図。
【図10】図2のステップS8において表示部による展開画像の他の表示例を示す図。
【図11】図2のステップS7において展開画像発生部により行われる他の展開画像発生処理の詳細を示す図。
【図12】図1のガイド画像発生部により発生されるガイド画像の表示例を示す図。
【図13】図1の投影処理部により行われる投影処理を説明するための図。
【図14】応用例4に係る制御部の制御のもとに行われる心筋領域の展開画像と血管領域の展開画像との重ね合わせ処理の典型的な流れを模式的に示す図。
【図15】図1のポーラーマップ発生部により発生されるポーラーマップの表示例を示す図。
【図16】図1の曲面画像発生部により発生される曲面画像の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる画像処理装置を説明する。
【0007】
図1は、本実施形態に係る画像処理装置1の構成を示す図である。図1に示すように、画像処理装置1は、記憶部11、抽出部13、表示曲面設定部15、展開画像発生部17、表示部19、操作部21、及び制御部23を有している。
【0008】
記憶部11は、画像診断装置により被検体の心臓をスキャンすることにより発生されたボリュームデータを記憶している。ボリュームデータは、心臓に関する画素領域(以下、心臓領域と呼ぶことにする。)を含んでいる。本実施形態に係る画像診断装置としては、X線コンピュータ断層撮影装置や磁気共鳴イメージング装置、PET装置、SPECT装置が挙げられる。X線コンピュータ断層撮影装置の場合、CTスキャン時において心臓には造影剤が流入している。磁気共鳴イメージング装置の場合、造影剤無しでも血流を画像化できるので、MRスキャン時において心臓には造影剤が流入していても流入していなくてもよい。ボリュームデータのボクセルには、心臓の形態指標に関する指標値や、心臓の機能指標に関する指標値が割り付けられている。ボリュームデータがX線コンピュータ断層撮影装置により発生された場合、ボリュームデータには形態指標の指標値であるCT値が割り付けられている。ボリュームデータが磁気共鳴イメージング装置の場合、ボリュームデータには形態指標の指標値であるT1値やT2値等が割り付けられている。機能指標としては、例えば、X線コンピュータ断層撮影装置や磁気共鳴イメージング装置により発生されたボリュームデータのパーフュージョン解析により算出された解析値が挙げられる。ボリュームデータがPET装置やSPECT装置により発生された場合、ボリュームデータには放射性同位元素の濃度分布を表す機能指標の指標値や、この指標値に基づいて計算された種々の機能指標の指標値が割り付けられている。記憶部11は、さらに、制御部23により実行される画像処理プログラムを記憶している。
【0009】
なお、以下の説明の簡便のため、形態指標の指標値や機能指標の指標値を特に区別しない場合、これらを総称して画素値を呼ぶことにする。
【0010】
抽出部13は、ボリュームデータの中から特定の部位に対応する画素領域を抽出する。具体的には、抽出部13は、ボリュームデータの中から心筋に対応する画素領域(以下、心筋領域と呼ぶことにする。)を抽出したり、血管に対応する画素領域(以下、血管領域と呼ぶことにする。)を抽出したりする。
【0011】
表示曲面設定部15は、心筋領域のうちの外壁から内壁までの間の指定位置に、表示のための曲面(以下、表示曲面と称する)を設定する。表示曲面は、後述する展開画像の表示面である。
【0012】
展開画像発生部17は、ボリュームデータに基づいて表示曲面に関する展開画像のデータを発生する。展開画像は、表示曲面における3次元的な画素値の空間分布を2次元の直交座標系で表現した画像である。
【0013】
表示部19は、展開画像等を表示機器に表示する。表示機器としては、例えばCRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が挙げられる。
【0014】
操作部21は、ユーザからの各種指令や情報入力を、入力機器を介して受け付ける。入力機器としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチボタン等の選択デバイス、あるいはキーボード等が挙げられる。
【0015】
制御部23は、画像診断装置の中枢として機能する。具体的には、制御部23は、記憶部11に記憶されている画像処理プログラムを展開し、この画像処理プログラムに従って各部を制御し、本実施形態に係る画像処理を実行する。
【0016】
以下、制御部23の制御のもとに実行される画像処理の詳細について説明する。なお、以下の説明を具体的に行うため、ボリュームデータは、X線コンピュータ断層撮影装置により発生されたものであるとする。
【0017】
図2は、制御部23の制御により実行される画像処理の典型的な流れを示す図である。制御部23は、ユーザから操作部21を介して画像処理の開始指示がなされたことを契機として画像処理を実行する。また、制御部23は、造影剤により造影された心臓に関するボリュームデータを記憶部11から読み込み、抽出部13に供給する(ステップS1)。
【0018】
ステップS1が行われると制御部23は、抽出部13に抽出処理を行わせる(ステップS2)。ステップS2において抽出部13は、領域拡張法等の任意の画像処理を利用して、ボリュームデータから心筋領域を抽出する。図3は、心筋領域R1の模式図である。図3に示すように、心筋領域R1は、中空の略円錐形状を有している。抽出部13は、心筋領域R1の形状に従って心筋領域R1の尖点PAと基点PBとを設定する。心筋領域R1の先端が尖点PAに設定され、心筋領域R1の基部側の任意点が基点PBに設定される。そして尖点PAと基点PBとを通る軸は、抽出部13により心軸ACに設定される。
【0019】
ステップS2が行われると制御部23は、曲面設定部15に断面設定処理を行わせる(ステップS3)。ステップS3において曲面設定部15は、心軸ACに沿う複数の断面をボリュームデータに設定する。典型的には、複数の断面は、心軸ACに直交するように設定される。なお、複数の断面の向きはこれに限定されない。例えば、複数の断面は、心軸ACに対して傾斜するように設定されてもよい。
【0020】
ステップS3が行われると制御部23は、曲面設定部15に正規化処理を行わせる(ステップS4)。ステップS4において曲面設定部15は、複数の断面の各々について、心筋領域の内壁と外壁との間の距離を既定の数値範囲で正規化する。図4は、正規化処理を説明するための図であり、断面内の心筋領域R1を模式的に示す図である。図4に示すように、まず曲面設定部15は、各断面について、心筋領域R1の内壁WIと外壁WOとを抽出する。より詳細には、曲面設定部15は、心筋領域R1の内側の境界をトレースすることにより心筋領域R1の内側の閉曲線(内壁)を抽出し、心筋領域の外側の境界をトレースすることにより心筋領域R1の外側の閉曲線(外壁)を抽出する。内側の境界は心筋領域R1の両壁のうちの心軸に近い方の境界であり、外側の境界は心筋領域R1の両壁のうちの心軸に遠い方の境界である。次に、曲面設定部15は、心軸ACから放射状に伸びる複数の直線LIを設定する。図4においては、簡便のため4つの直線LIが示されているが、実際の処理においては、4つよりも多い直線LIが設定されるとよい。次に曲面設定部15は、直線LIと内壁WIとの交点PI、直線LIと外壁WOとの交点POを特定する。曲面設定部15は、各直線LI上の交点PIと交点POとの間の距離を既定の数値範囲で正規化する。例えば、既定の数値範囲は、0%〜100%に設定される。この場合、曲面設定部15は、交点PIの位置を0%、交点POの位置を100%に設定する。交点PIと交点POとの間の直線LI上の各点の位置は、交点PIから交点POに進むにつれて交点PIから各点の位置までの距離が0%から100%に線形的に変化するように設定される。これにより正規化が行われる。以下、交点PIから交点POへの方向を厚さ方向と呼ぶことにする。
【0021】
ステップS4が行われると制御部23は、操作部25を介してユーザにより、既定の数値範囲(上述の例の場合、0%から100%)内での数値が指定されることを待機する(ステップS5)。指定される数値は、展開画像の表示曲面の位置を意味する。ユーザは、操作部25を介して数値範囲の下限値以上、上限値以下の所望の数値を指定する。数値範囲が0%から100%の場合、0%以上100%以下の所望の数値が指定される。数値は、キーボードやタッチパネル、マウス等の入力機器を介して入力されるとよい。なお、展開画像の表示曲面の位置を示す数値は、必ずしもユーザにより操作部25を介して指定されなくてもよい。例えば、曲面設定部15により、内壁を表す0%や外壁を表す100%に自動的に数値が指定されてもよい。
【0022】
ユーザにより数値が指定されると制御部23は、曲面設定部15に曲面設定処理を行わせる(ステップS6)。ステップS6において曲面設定部15は、ステップS5において指定された数値に対応する心筋領域上の位置に表示曲面を設定する。具体的には、まず、曲面設定部は、図4に示す各断面の各直線LIについて、指定された数値に対応する画素を特定する。そして曲面設定部15は、特定された全ての画素の集合を展開画像の表示曲面に設定する。
【0023】
ステップS6が行われると制御部23は、展開画像発生部17に展開画像発生処理を行わせる(ステップS7)。ステップS7において展開画像発生部17は、ステップS6において設定された表示曲面に関する展開画像のデータをボリュームデータに基づいて発生する。以下、展開画像発生処理について詳細に説明する。
【0024】
図5は、展開画像発生処理の概念を示す図である。図5の(a)は展開前の表示曲面PCを示し、図5の(b)は展開後の表示曲面、すなわち、展開画像を示している。図5に示すように、展開画像発生処理は、表示曲面PCを展開開始点PSから剥ぐように展開する処理である。
【0025】
図6は、展開画像発生処理を詳細に説明するための図である。図6の(a)は心筋領域R1の縦断面を示し、図6の(b)は心筋領域R1に設定された断面CSnを示し、図6の(c)は展開画像のためのテンプレートを示している。なお例示のため、図6の(a)には、3つの断面CS1、CS2、CSmが示されている。断面の数nは、幾つに設定されてもよい。断面数nが多ければ多いほど、展開画像の解像度が向上する。図6の(b)に示すように、表示曲面DPは、心筋領域R1内の50%の位置に設定されているものとする。
【0026】
展開画像発生処理においては、まず、各断面CSnにおいて展開開始点PSが展開画像発生部17により設定される。各断面CSnにおいて展開開始点PSは、心軸AC回りの同一角度に設定される。展開開始点PSの角度は、ユーザにより操作部21を介して任意の値に設定可能である。以下の説明を具体的に行うため、展開開始点PSは、0°に設定されるとする。また、展開画像発生部17により、各断面CSnにおいて基準点PRが設定される。基準点PRは、各断面CSnにおいて、展開開始点PSとは異なる同一角度に設定される。基準点PRのが、展開画像のX軸の中心に位置合わせされる。例えば、基準点PRと展開開始点PSとは、基準点PRと展開開始点PSとの角度差が±180°になるように設定される。
【0027】
展開画像発生部17は、表示曲面DPと断面CSnとが交差する円周上の画素(以下、円周画素と呼ぶことにする。)の画素値を、図6の(c)に示す展開画像のためのテンプレートに割り付けることにより、展開画像を発生する。図6の(c)に示すように、テンプレートの縦軸(Y軸)は、心軸AC上の距離に規定される。心軸AC上の距離は、具体的には、心軸AC上の基準位置(例えば、尖点PA)からの心軸ACに沿う距離に規定される。テンプレートの横軸(X軸)は、心筋領域R1の心軸AC回りの基準位置(例えば、基準点PR)からの距離である。換言すれば、テンプレートの横軸(X軸)は、円周上の距離に規定される。円周上の距離は、具体的には、各断面と表示曲面とが交差する円周上の基準位置(例えば、基準点PR)からの円周に沿う距離に規定される。このように、テンプレートは、心軸上の距離と円周上の距離とにより規定される2次元の直交座標系を有している。各断面CSnの基準点PRは、テンプレートのX軸の中心(すなわち、距離0)に位置合わせされる。例えば、基準点PRから時計回り方向がテンプレートの+X方向に規定され、基準点PRから反時計回り方向がテンプレートの−X方向に規定される。テンプレートのX軸に沿う長さは、各断面CSnの円周の長さのうちの最大長に設定される。なお、テンプレートのX軸の長さは、最大長より長く設定されてもよい。
【0028】
ここで、テンプレートへの画素値の割付処理を具体的に説明する。まず、展開画像発生部17は、複数の断面の各々について、表示曲面DPと断面CSnとが交差する円周上の複数の円周画素を特定する。そして、展開画像発生部17は、各円周画素のテンプレート座標を特定する。具体的には、まず、展開画像発生部17は、尖点PAから各断面CSnまでの心軸ACに沿う距離を特定する。これにより、各円周画素についてテンプレートのY軸座標が特定される。次に、展開画像発生部17は、各断面CSnについて、基準点PRから各円周画素までの円周に沿う距離を特定する。これにより、各円周画素についてテンプレートのX軸座標が特定される。そして、展開画像発生部17は、各円周画素について、特定されたテンプレート座標に円周画素の画素値を割り付ける。この円周画素の画素値の割付により展開画像のデータが発生される。
【0029】
ステップS7が行われると制御部23は、表示部19に表示処理を行わせる(ステップS8)。ステップS8において表示部19は、ステップS7において発生された展開画像を表示する。図7は、展開画像I1の一例を示す図である。図7に示すように、展開画像I1は、このような発生過程からわかるように、3次元的な表示曲面における画素値の空間分布を、2次元の直交座標で表現した画像である。表示部19は、例えば、展開画像I1を画素値に応じてグレーで表示する。表示部19は、展開画像I1上の位置の把握を容易にするために、基準点PRからの円周に沿う距離を示す目印を展開画像に重ねて表示してもよい。このような目印としては、例えば、図7に示すように、距離0(基準点)を示す線LR1、中間距離±Midを示す線LR2、最大距離±Maxを示す線LR3が挙げられる。なお、最大距離±Maxは、各断面CSnの円周に沿って基準点から展開開始点までの距離のうちの最大距離である。中間距離±Midは、最大距離±Maxの半分である。なお、目印は、点線に限定されず、実線、破線、一点鎖線等の既存のあらゆる線が適用可能である。また、目印は、線に限定されず、展開画像I1の端部等に表示されるマークであってもよい。
【0030】
医師等のユーザは、3次元的な画素値の空間分布を2次元の極座標で表現したポーラーマップに比して展開画像の方が、画像上の位置と実際の心筋の位置との対応関係を把握しやすい。また、展開画像の表示曲面は、心筋領域の全体に分布している。従って、ユーザは、断面内の画素値の空間分布を表現するMPR画像に比して展開画像の方が、心筋領域の全体を観察することができる。
【0031】
ステップS8が終了すると制御部23は、本実施形態に係る画像処理を終了する。
【0032】
なお、ステップS8において展開画像の表示方法は、グレー表示のみに限定されない。例えば、表示部19は、図8に示すように、展開画像I2を画素値に応じたカラーで表示してもよい。この際、表示部19は、カラーと画素値との対応関係をユーザに提示するために、カラーバーを展開画像I2とともに表示するとよい。カラー表示により、ユーザは、画素値の違いを色の違いで把握することができる。さらなる他の表示方法として、表示部19は、展開画像を、図9に示すように、等高線表示をしてもよいし、図10に示すように、3次元グラフ表示してもよい。図9に示すように、等高線表示の場合、表示部19は、等しい画素値を有する画素が線(等高線)で結ばれた展開画像I3を表示する。等高線は、画素値に応じたグレーで表示されても、カラーで表示されてもどちらでもよい。図10に示すように、3次元グラフ表示の場合、表示部19は、画素値に応じた高さを有する3次元的な棒グラフで表現する展開画像I4を表示する。棒グラフは、画素値に応じたグレーで表示されても、カラーで表示されてもどちらでもよい。また、3次元グラフ表示における視点の位置は、ユーザにより操作部21を介して任意に設定可能である。
【0033】
このように本実施形態に係る表示部19は、展開画像を通常の表示方法の他に、等高線表示や3次元グラフ表示を行うことができる。また、これら表示方法は、画素値に応じたグレー又はカラーで表示することができる。画像処理装置1は、このように、展開画像の多数の表示方法を有している。これら表示方法は、ユーザから操作部21を介した指示に応じて任意に選択可能である。すなわち表示部19は、ユーザの好みに応じた表示方法で展開画像を表示することができ、画像診断の効率を向上させることができる。
【0034】
心筋領域の厚さは、同一ではなく、心筋領域内の部位に応じて異なっている。従って、心筋領域の厚さ方向の位置を絶対距離(正規化前の距離)により指定すると、ある部位では内壁に近かったり、他の部位では外壁に近かったりしてしまう。上述のように画像処理装置1は、心筋領域の厚みを既定の数値範囲で正規化し、この数値範囲内での任意の指定値に対応する表示曲面に関する展開画像を発生している。このように心筋領域の厚みを正規化することにより、画像処理装置1は、内壁付近や外壁付近、心筋内部等の心筋領域の厚み方向に関する解剖学的に同質な位置を単一の指定値により一括して指定することができる。従って、この正規化処理により、表示曲面の設定を簡素化させたり、画像診断能を向上させたりできる。
【0035】
ユーザは、心筋領域の厚さ方向に関する特定位置のみに関心があるわけではない。例えば、心筋梗塞は、心筋内膜側から心筋外膜側へ向けて組織が死んでいく。そのため、心筋の厚み方向に沿ってどれだけ組織が死んでいるか確認することが臨床上重要である。画像処理装置1は、展開画像を心筋の厚さ方向に沿ってブラウジング表示することができる。例えば、表示されている展開画像とは異なる位置の表示曲面に関する展開画像を観察したい場合、ユーザは、ステップS5と同様に操作部21を介して任意の表示曲面位置を指定可能である。表示曲面位置が指定された場合、展開画像発生部17は、指定された表示曲面位置に関する展開画像を発生し、表示部19は、この発生された展開画像を表示する。このようにして、展開画像発生部17は、ユーザからの表示曲面位置の変更指示に従って展開画像の表示曲面を更新することができる。これにより画像処理装置1は、心筋領域の厚さ方向の任意位置の表示曲面における画素値の空間分布を展開画像でブラウジング表示することができる。ブラウジング表示により、短時間で広範囲の部位を観察することが可能になる。
【0036】
なお、上述の説明において、展開画像の座標系は、心軸上の距離と円周上の距離とにより規定される第1の直交座標系であるとした。しかしながら、本実施形態は、これに限定されない。例えば、展開画像の座標系は、心軸上の距離と心軸回りの回転角度とにより規定される第2の直交座標系であってもよい。以下、第1の座標系に関する展開画像を心軸−円周展開画像と呼び、第2の座標系に関する展開画像を心軸−角度展開画像と呼ぶことにする。展開画像発生部17は、ステップS6において設定された表示曲面に関する心軸−角度展開画像をボリュームデータに基づいて発生する。
【0037】
以下、図11を参照しながら、ステップS7において展開画像発生部17により行われる心軸−角度展開画像の発生方法について説明する。図11の(a)は心筋領域R1の縦断面を示し、図11の(b)は心筋領域R1に設定された断面CSnを示し、図11の(c)は心軸−角度展開画像のためのテンプレートを示している。図11の(c)に示すように、心軸−角度展開画像のためのテンプレートの縦軸(Y軸)は、心軸AC上の距離、具体的には、心軸AC上の基準位置(例えば、尖点PA)からの心軸ACに距離に規定される。テンプレートの横軸(X軸)は、心筋領域R1の心軸AC回りの基準位置(例えば、基準点PR)からの回転角度に規定される。換言すれば、テンプレートの横軸(X軸)は、心軸AC回りの回転角度、具体的には、心軸AC回りの基準位置(例えば、基準点PR)からの回転角度に規定される。このように、心軸−角度展開画像のためのテンプレートは、心軸上の位置と心軸回りの回転角度とにより規定される2次元の直交座標系を有している。各基準点PRは、テンプレートのX軸の中心(すなわち、角度0°)に位置合わせされる。例えば、基準点PRから時計回りがテンプレートの+X方向に規定され、基準点PRから反時計回りがテンプレートの−X方向に規定される。
【0038】
ここで、画素値の割付処理を具体的にする。まず、展開画像発生部17は、複数の断面CSnの各々について、表示曲面DPと断面CSnとが交差する円周上の複数の円周画素を特定する。そして、展開画像発生部17は、各円周画素のテンプレート座標を特定する。具体的には、まず、展開画像発生部17は、尖点PAから各断面CSnまでの心軸ACに沿う距離を特定する。これにより、各円周画素についてテンプレートのY軸座標が特定される。次に、展開画像発生部17は、各断面CSnについて、基準点PRから各円周画素までの心軸AC回りの回転角度を特定する。これにより、各円周画素についてテンプレートのX軸座標が特定される。そして、展開画像発生部17は、各円周画素について、特定されたテンプレート座標に円周画素の画素値を割り付ける。この円周画素の画素値の割付により心軸−角度展開画像が発生される。
【0039】
なお、ボリュームデータにおいて心筋領域R1は、心軸上の位置に応じて角度に関する空間分解能が異なっている。従って、尖点PA付近等の比較的角度に関する空間分解能が低い場合、心軸−角度展開画像において画素値が割り付けられない空の画素が発生するおそれがある。この場合、展開画像発生部17は、空の画素の画素値を補間により算出する。補間方法としては、空の画素の画素値を最も角度が近い画素の画素値に置き換える二アレストネイバー(nearest neighbor)法や、画素値分布に基づいて画素の画素値を推定するバイリニア(bi-linear)法等の既知の如何なる補間法が適用可能である。このような補間方法を実行することで、画素値が割り付けられない空の画素を失くすことができる。従って、心軸−角度展開画像による画像診断能が向上する。
【0040】
発生された心軸−角度展開画像は、表示部19により表示される。表示部19は、心軸−円周展開画像上の位置の把握を容易にするために、心軸AC回りの基準点PRからの回転角度を示す基準線を心軸−角度展開画像に重ねて表示してもよい。このような基準線としては、例えば、図11の(c)に示すように、0°(基準点PR)を示す線、+90°を示す線、−90°を示す線、±180°を示す線が挙げられる。
【0041】
なお、心軸−角度展開画像は、心軸−円周展開画像から発生されてもよい。この場合、展開画像発生部17は、X軸に関する画像幅を均一にするように心軸−円周展開画像に補間処理を施し、心軸−角度展開画像を発生する。例えば、展開画像発生部17は、心軸−円周展開画像のX軸に関する最大幅を特定し、特定された最大幅を基準幅に設定する。そして、展開画像発生部17は、各Y軸座標についてX軸に関する画像幅を基準幅に伸張するために、心軸−円周展開画像に補間処理を施す。これにより、心軸−円周展開画像から心軸−角度展開画像が発生される。なお、補間方法としては、上述の二アレストネイバー法やバイリニア法等の既知の如何なる補間法が適用可能である。
【0042】
かくして、本実施形態に係る画像処理装置1によれば、心筋の画像診断能を向上させることができる。
【0043】
次に、展開画像による画像診断能を向上させるための種々の応用例について説明する。なお、以下の応用例において展開画像は、心軸−円周展開画像であっても心軸−角度展開画像であってもどちらでも適用可能である。従って、以下の説明において、特に明示しない限り単に展開画像と記載することにする。
【0044】
[応用例1]
図1に示すように、画像処理装置1は、さらにガイド画像発生部25を有している。ガイド画像発生部25は、表示中の展開画像の表示曲面の位置を明瞭に示すためのガイド画像のデータを発生する。表示部19は、発生されたガイド画像を展開画像と並べて表示する。以下に、応用例1に係る画像処理装置1の詳細について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0045】
図12は、展開画像I1とガイド画像GIとの表示例を示す図である。図12に示すように、ガイド画像GIは、標準的な形状を有する心筋領域を模式的に表現する画像である。例えば、ガイド画像GIは、模式的な心筋領域を3次元的に表現する3次元模式画像GI1と、模式的な心筋領域を基部側から見た平面模式画像GI2とを有している。3次元模式画像GI1と平面模式画像GI2とには、展開画像の表示曲面の位置を示す線L2が重ねられている。表示曲面の位置の表示のために、3次元模式画像GI1と平面模式画像GI2との内壁と外壁との間の距離は、図2のステップS4における正規化の数値範囲で正規化されている。ガイド画像発生部25は、ステップS5において指定された数値に対応する3次元模式画像GI1と平面模式画像GI2とにおける位置を計算し、計算された位置に線L2を重ね合わせる。そして、表示部19は、線L2が重ね合わされた3次元模式画像GI1と平面模式画像GI2とを表示する。ガイド画像発生部25は、3次元模式画像GI1と平面模式画像GI2とに、上述の基準線LR1、LR2,LR3を表示してもよい。これにより、ユーザは、展開画像上の位置を実際の心筋の位置との対応関係をさらに明瞭且つ容易に把握することができる。
【0046】
このように画像処理装置1は、展開画像の表示曲面の位置を明瞭に示すガイド画像を発生し、展開画像と並べて表示することができる。ユーザは、ガイド画像を観察することで、展開画像の表示曲面の心筋領域における位置を明瞭且つ容易に把握することができる。かくして、応用例1に係る画像処理装置1によれば、心筋の画像診断能が向上する。
【0047】
なお、上述の説明においては、例示のために表示部19は、ガイド画像として、模式的な心筋領域を3次元的に表現する3次元模式画像と、模式的な心筋領域を基部側から見た平面模式画像とを含んでいるとした。しかしながら、表示部19は、3次元模式画像と平面模式画像との何れか一方を表示してもよい。また、表示部19は、ガイド画像として、異なる向きの心筋領域を模式的に示す画像を表示してもよい。
【0048】
[応用例2]
図1に示すように、画像処理装置1は、さらに投影処理部27を有している。投影処理部は、複数の表示曲面に関する複数の展開画像に画素値投影処理を施し単一の投影画像を発生する。以下に、応用例2に係る画像処理装置1の詳細について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0049】
制御部23は、操作部21を介したユーザからの指示に従って、応用例2に係る画像処理を実行するために、展開画像発生部17、投影処理部25、及び表示部19を制御する。まず、展開画像発生部17は、図13に示すように、内壁から外壁までの間の複数の表示曲面に関する複数の展開画像のデータをボリュームデータに基づいて発生する。すなわち、複数の表示曲面は、心筋領域の厚み方向に沿って配列されている。次に投影処理部25は、複数の展開画像のデータに対して所定の投影方向に沿って画素値投影処理を施し、複数の展開画像のデータから単一の投影画像のデータを発生する。所定の投影方向は、例えば、厚み方向に規定される。本実施形態に係る画素値投影処理としては、投影レイが貫く画素の画素値の加算値を投影画像の画素の画素値に設定する加算投影処理、最大値を投影画像の画素の画素値に設定する最大値投影処理、平均値を投影画像の画素の画素値に設定する平均値投影処理、最小値を投影画像の画素の画素値に設定する最小値投影処理等の既存のあらゆる投影処理が適用可能である。実行する画素値投影処理の種類は、ユーザにより操作部21を介して任意に選択可能である。
【0050】
そして、表示部19は、発生された投影画像を表示する。表示部19は、投影画像を画素値に応じたグレーで表示してもよいし、カラーで表示してもよい。上述の発生過程からわかるように、投影画像の各画素の画素値は、心筋領域の厚み方向に沿う全ての画素の画素値を反映している。また、投影画像は、展開画像と同一の直交座標系を有している。従って、ユーザは、単一の投影画像を観察するのみで、心筋に異常があるか否か、さらには、異常のある部位の位置を一目瞭然に把握することができる。
【0051】
このように画像処理装置1は、複数の表示曲面に関する複数の展開画像のデータに基づいて単一の投影画像のデータを発生し、発生された投影画像を表示する。ユーザは、投影画像を観察することで心筋の全体の状態を容易且つ明瞭に把握することができる。かくして、応用例2に係る画像処理装置1によれば、心筋の画像診断能が向上する。
【0052】
[応用例3]
図1に示すように、画像処理装置1は、さらに厚さ算出部29を有している。厚さ算出部29は、展開画像の各画素について心筋領域の厚さを算出する。以下に、応用例3に係る画像処理装置1の詳細について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0053】
応用例3において制御部23は、ユーザからの操作部21を介した指示に従って、応用例3に係る画像処理を実行するために、厚さ算出部29、展開画像発生部17、及び表示部19を制御する。まず、厚さ算出部29は、展開画像に含まれる複数の画素の各々について、図4の直線L1に沿う心筋領域の厚さ方向に関する内壁と外壁との間の距離、すなわち、心筋領域の厚さを算出する。心筋領域の厚さとしては、例えば、内壁と外壁との間に含まれる画素の数であっても、この画素の数に所定の定数を乗じた値であってもどちらでもよい。次に展開画像発生部17は、展開画像に含まれる複数の画素の各々について、算出された厚さを展開画像の画素値に割り付ける。これにより、心筋領域の厚さの空間分布を2次元の直交座標で表現する展開画像(以下、厚み展開画像と呼ぶことにする。)のデータが発生される。
【0054】
表示部19は、発生された厚み展開画像を表示する。厚み展開画像の表示方法は、厚みの値に応じたグレーで表示してもよいし、カラーで表示してもよい。また、表示部19は、厚み展開画像を等高線表示してもよい良いし、3次元グラフ表示してもよい。
【0055】
このように応用例3に係る画像処理装置1は、心筋領域の厚みを2次元の直交座標で表現する厚み展開画像を発生し、発生された厚み展開画像を表示する。ユーザは、厚み展開画像を観察することで心筋の厚みを容易且つ明瞭に把握することができる。かくして、応用例3に係る画像処理装置1によれば、心筋の画像診断能が向上する。
【0056】
[応用例4]
応用例4に係る画像処理装置1は、展開画像に血管領域を重ねて表示することができる。以下、応用例4に係る画像処理装置1について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0057】
図14は、制御部23の制御のもとに行われる応用例4に係る画像処理の典型的な流れを模式的に示す図である。応用例4において制御部23は、ユーザからの指示に従って、応用例4に係る画像処理の実行のために、抽出部13、展開画像発生部17、及び表示部19を制御する。抽出部13は、ボリュームデータから心筋領域R1と血管領域R2とを抽出する。応用例4に係る血管領域R2としては、典型的には、心臓を取り囲む冠動脈に関する画素領域(以下、冠動脈領域と呼ぶことにする。)であるが、心筋を栄養する他の血管に関する血管領域であってもよい。抽出対象の血管領域の種類は、操作部21を介してユーザにより任意に選択可能である。
【0058】
次に、展開画像発生部17は、ボリュームデータに基づいて、心筋領域の展開画像I1と血管領域の展開画像I5とを発生する。血管領域の展開画像I5は、心筋領域の展開画像I1と同様の方法により発生される。なお血管領域の展開画像I5と心筋領域の展開画像I1との画像サイズが異なる場合、同一の画像サイズになるように、血管領域の展開画像I5または心筋領域の展開画像I1は縮小または拡大される。そして、表示部19は、心筋領域の展開画像I1に血管領域の展開画像I5を位置整合して重ね合わせて表示する。
【0059】
このように応用例4に係る画像処理装置1は、心筋領域の展開画像に血管領域の展開画像を重ね合わせて表示している。この表示により、ユーザは、心筋の性状と血管の性状とを互いの位置関係を関連付けて観察することができる。例えば、狭窄等の異常を起こしている血管がある場合、この血管が栄養している心筋部位にも異常が発生する。従って、応用例4のように、心筋領域の展開画像に血管領域の展開画像を重ね合わせて表示することは、疾患の責任結果の特定に有効な技術であり、臨床的にとても有用である。かくして、応用例4に係る画像処理装置1によれば、心筋の画像診断能が向上する。
【0060】
[応用例5]
図1に示すように、応用例5に係る画像処理装置1は、さらに、ポーラーマップ発生部31を有している。ポーラーマップ発生部31は、ボリュームデータに基づいて展開画像と同様の表示曲面に関するポーラーマップを発生する。表示部19は、ポーラーマップと展開画像とを並べて表示する。以下、応用例5に係る画像処理装置1について詳細に説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0061】
図15は、展開画像I1とポーラーマップI6との表示例を示す図である。図15に示すように、展開画像I1とポーラーマップI6とは、表示部19により並べて表示される。例えば、ポーラーマップ発生部31は、ステップS5において指定された数値に対応する表示曲面に関するポーラーマップI6をボリュームデータに基づいて発生する。従って、表示されている展開画像I1とポーラーマップI6とは、同一の表示曲面を有している。ユーザは、単一の表示曲面に関する心筋の性状を展開画像I1とポーラーマップI6との両方で確認することができる。従って、梗塞領域や虚血領域の評価のワークフローが向上する。
【0062】
また、ポーラーマップ発生部31は、ユーザにより操作部21を介して表示曲面の位置の変更指示に従って、変更後の表示曲面に関するポーラーマップを発生することができる。従って、応用例5に係る画像処理装置1は、展開画像I1の表示曲面とポーラーマップI6の表示曲面とを連動して変更することができる。これにより、応用例5に係る画像処理装置1は、展開画像I1とポーラーマップI6との連動ブラウジング表示処理を実現する。かくして、応用例5に係る画像処理装置1によれば、心筋の画像診断能が向上する。
【0063】
[応用例6]
図1に示すように、応用例6に係る画像処理装置1は、さらに合成画像発生部33を有している。合成画像発生部33は、形態指標に関する展開画像と機能指標に関する展開画像との合成画像を表示することができる。以下、応用例6に係る画像処理装置1について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0064】
制御部23は、操作部21を介したユーザからの指示に従って、応用例6に係る画像処理を実行するために、表示曲面設定部15、展開画像発生部17、合成画像発生部33、及び表示部19を制御する。表示曲面設定部15は、形態指標に関するボリュームデータに含まれる心筋領域と機能指標に関するボリュームデータに含まれる心筋領域との両方に、図2のステップS5において指定された位置に表示曲面を設定する。なお、形態指標に関するボリュームデータに含まれる心筋領域と機能指標に関するボリュームデータに含まれる心筋領域とは、既存の方法により位置合わせされているものとする。展開画像発生部17は、形態指標に関するボリュームデータに基づいて表示曲面に関する展開画像のデータを発生し、機能指標に関するボリュームデータに基づいて表示曲面に関する展開画像のデータを発生する。合成画像発生部33は、形態指標に関する展開画像と機能指標に関する展開画像とを合成し、合成画像を発生する。表示部19は、合成画像を表示する。
【0065】
このように応用例6に係る画像処理装置1は、形態指標に関する展開画像と機能指標に関する展開画像との合成画像を発生し、表示することができる。この表示により、ユーザは、心筋に関する機能指標の空間分布を、解剖学的位置関係を明瞭にして展開画像上で確認することができる。かくして、応用例6に係る画像処理装置1によれば、心筋の画像診断能が向上する。
【0066】
[応用例7]
図1に示すように、応用例7に係る画像処理装置1は、さらに曲面画像発生部35を有している。曲面画像発生部35は、表示曲面の画素値の空間分布を3次元的に表現する2次元画像(以下、曲面画像と呼ぶことにする。)のデータをボリュームデータに基づいて発生する。以下、応用例7に係る画像処理装置1について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0067】
制御部23は、操作部21を介したユーザからの指示に従って、応用例7に係る画像処理を実行するために、表示曲面設定部15、曲面画像発生部35、及び表示部19を制御する。曲面画像発生部35は、図2のステップS5において指定された位置に対応する表示曲面に関する曲面画像のデータをボリュームデータに基づいて発生する。例えば、曲面画像発生部35は、ボリュームデータから表示曲面を切り出し、切り出された表示曲面にレンダリング処理を実行し、曲面画像のデータを発生する。また、曲面発生部35は、表示曲面から外側の領域を心筋領域から削除し、残りの領域にレンダリング処理を実行し、曲面画像のデータを発生してもよい。視点の位置や視線の方向は、ユーザにより操作部21を介して任意に設定可能である。表示部19は、発生された曲面画像を表示する。
【0068】
図16は、曲面画像I7の表示例を示す図である。図16に示すように、表示部19は、例えば、曲面画像I7と展開画像I1とを並べて表示することができる。曲面画像I7の表示曲面部分は、機能指標の指標値に応じたカラーで表示される。曲面画像I7は、表示曲面の画素値の空間分布を3次元的に表現しているので、形状の歪みがない。すなわち、曲面画像I7は、表示曲面の画素値の空間分布を忠実に再現している。従って、ユーザは、曲面画像I7と展開画像I1とを見比べることにより、展開画像I1上の位置と実際の位置との対応関係をさらに明確にすることができる。かくして、応用例7に係る画像処理装置1によれば、心筋の画像診断能が向上する。
【0069】
なお、応用例7において合成画像発生部33は、同一の表示曲面に関する、形態指標に関する曲面画像と機能指標に関する曲面画像との合成画像を発生し、表示部19は、この合成画像を表示しても良い。
【0070】
例えば、血管が心筋内にもぐりこんでいる症例において、この実施例の有用性を説明する。心筋領域全体に関する3次元画像を表示した場合、血管の形態情報が心筋の機能情報に埋もれてしまい、ユーザは、血管の形態情報を観察することができない。しかし、本実施形態によれは、血管が走行している位置まで表示曲面を心筋の内部側に移動させることができる。従って応用例7に係る画像処理装置1は、血管が走行している位置を含む表示曲面を設定し、この表示曲面の形態指標に関する曲面画像と機能指標に関する曲面画像との合成画像を発生し、この合成画像を表示する。この合成画像の表示により、ユーザは、血管の走行と心筋の機能情報とを同時に観察することができる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
1…画像処理装置、11…記憶部、13…抽出部、15…表示曲面設定部、17…展開画像発生部、19…表示部、21…操作部、23…制御部、25…ガイド画像発生部、27…投影処理部、29…厚さ算出部、31…ポーラーマップ発生部、33…合成画像発生部、35…曲面画像発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓に関するボリュームデータを記憶する記憶部と、
前記ボリュームデータから心筋領域を抽出する抽出部と、
前記抽出された心筋領域のうちの外壁から内壁までの間の所定位置に、表示のための曲面を設定する設定部と、
前記曲面における画素値の空間分布を2次元の直交座標系で表現する展開画像のデータを前記ボリュームデータに基づいて発生する展開画像発生部と、
前記発生された展開画像を表示する表示部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記設定部は、
前記外壁と前記内壁との間の距離を既定の数値範囲で正規化し、
前記所定位置として前記数値範囲内の所定の数値を、ユーザからの指示に従って、または自動的に指定し、
前記指定された数値に対応する前記曲面を前記心筋領域に設定する、
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記心筋領域の模式画像を前記展開画像とともに表示する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記模式画像に前記曲面の位置を示す目印を重ねる、請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記所定位置は、前記外壁から前記内壁までの間の複数の位置を含み、
前記展開画像発生部は、前記複数の位置にそれぞれ対応する複数の展開画像を前記ボリュームデータに基づいて発生し、前記発生された複数の展開画像に基づいて単一の投影画像を発生する、
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記投影画像を表示する、請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記投影画像の画素の画素値に応じたカラーで前記投影画像を表示する、請求項6記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記表示部は、前記展開画像を等高線表示または3次元グラフ表示する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記画素値は、パーフュージョン解析値または前記心筋領域の厚み値である、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記抽出部は、前記ボリュームデータから血管領域を抽出し、
前記展開画像発生部は、前記抽出された血管領域が前記展開画像に位置整合して重ね合わされた画像を発生し、
前記表示部は、前記重ね合わされた画像を表示する、
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記展開画像の前記直交座標系は、前記心筋領域の心軸上の第1の基準点からの距離と前記心筋領域の前記心軸回りの第2の基準点からの距離とにより規定される第1の座標系、または、前記心軸上の前記第1の基準点からの距離と前記心軸周りの前記第2の基準点からの回転角度とにより規定される第2の座標系により規定され、
前記展開画像は、前記第1の座標系により表現される第1の展開画像と、前記第2の座標系により表現される第2の展開画像とを含む、
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記展開画像発生部は、
前記心筋領域の心軸に沿って配列される複数の断面を前記心筋領域に設定し、
前記設定された複数の断面の各々について、前記断面と前記曲面とが交差する円周上の画素の画素値を、前記第1の座標系に割り付けることによって、前記第1の展開画像を発生する、
請求項11記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記展開画像発生部は、
前記心筋領域の心軸に沿って配列される複数の断面を前記心筋領域に設定し、
前記設定された複数の断面の各々について、前記断面と前記曲面とが交差する円周上の画素の画素値を、前記第2の座標系に割り付けることによって、前記第2の展開画像を発生する、
請求項11記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記展開画像発生部は、前記第1の展開画像に基づいて前記第2の展開画像を発生する、請求項11記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記曲面に関するポーラーマップを前記ボリュームデータに基づいて発生するポーラーマップ発生部をさらに備え、
前記表示部は、前記展開画像と前記ポーラーマップとを並べて表示する、
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項16】
合成画像発生部をさらに備え、
前記記憶部は、前記ボリュームデータとして、形態指標に関する形態ボリュームデータと機能指標に関する機能ボリュームデータとを記憶し、
前記展開画像発生部は、前記展開画像として、前記形態ボリュームデータに基づいて前記曲面に関する形態展開画像のデータを発生し、前記機能ボリュームデータに基づいて前記曲面に関する機能展開画像のデータを発生し、
前記合成画像発生部は、前記形態展開画像と前記機能展開画像との合成画像を発生し、
前記表示部は、前記合成画像を表示する、
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記表示曲面の画素値の空間分布を3次元的に表現する2次元画像のデータを前記ボリュームデータに基づいて発生する2次元画像発生部をさらに備え、
前記表示部は、前記2次元画像を表示する、
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項18】
合成画像発生部をさらに備え、
前記記憶部は、前記ボリュームデータとして、形態指標に関する形態ボリュームデータと機能指標に関する機能ボリュームデータとを記憶し、
前記2次元画像発生部は、前記2次元画像として、前記形態ボリュームデータに基づいて前記曲面に関する形態2次元画像のデータを発生し、前記機能ボリュームデータに基づいて前記曲面に関する機能2次元画像のデータを発生し、
前記合成画像発生部は、前記形態2次元画像と前記機能2次元画像との合成画像を発生し、
前記表示部は、前記合成画像を表示する、
請求項17記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−81660(P2013−81660A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224207(P2011−224207)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】