説明

画像出力装置および画像生成装置

【課題】記憶媒体が添付された用紙を利用し,より安全に秘匿情報を配布することができる画像出力装置および画像生成装置を提供する。
【解決手段】秘匿情報が記憶された配布原稿には,その紙面上に所定の変換ルールに従って秘匿画像を変換した変換後画像が記録され,記憶媒体にはその変換ルールを得るための復元データが記憶される。MFPでは,原稿の記憶媒体から復元データを読み出し(S202),配布原稿の紙面から変換後画像を読み取る(S203)。そして,復元データから変換ルールを取得し(S205),その変換ルールを解析して変換後画像を逆変換し(S206),変換ルールによって変換される前の画像である原画像,すなわち秘匿画像を生成する。そして,生成した原画像を印刷する(S208)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像出力装置および画像生成装置に関する。さらに詳細には,RFID(Radio Frequency IDentification)タグ等の記憶媒体(以下,便宜上「RFIDタグ」と称する)にアクセス可能な画像出力装置および画像生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,秘匿情報が記載された書類などの配布方法として,秘匿情報部分にシールを貼付し,受取人が書類に貼付されたシールを剥がすことで,秘匿情報を保護しつつ安全に書類を配布する方法が広く知られている。
【0003】
また,RFIDタグが添付された用紙(以下,「RFID用紙」とする)が提供されている。RFID用紙を利用する技術としては,例えば,特許文献1には,RFIDタグから読み取ったデータと原稿から読み取った画像との両方を,印刷用紙に出力する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−088584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の秘匿情報配布手段には,次のような問題があった。すなわち,上述のシールを貼付する方法では,シールを剥がして秘匿情報を見ることが誰にでもでき,悪意を持った第三者が簡単に秘匿情報を盗み見ることができる。そこで,上述のRFIDタグを利用することで,秘匿情報を配布することが考えられる。つまり,秘匿情報をRFIDタグに記憶し,受取人がRFIDタグに記憶された秘匿情報を印刷するのである。しかし,RFIDタグを盗み取ってRFIDタグの内容を読み出したり,RFIDタグを盗み取らないまでもRFIDタグの内容を不正に読み出すこと(いわゆるスキミング)で,容易に秘匿情報を取得できてしまう。
【0006】
本発明は,前記した従来の画像処理装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,記憶媒体が添付された用紙を利用し,より安全に秘匿情報を配布することができる画像出力装置および画像生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた画像出力装置は,原稿の紙面に形成された,変換ルールに従って変換された画像である変換後画像を読み取る読取手段と,原稿に添付された記憶媒体に記憶されたデータを読み出し,そのデータから変換ルールを取得する取得手段と,取得手段が取得した変換ルールに従って,読取手段が読み取った変換後画像から原画像を生成する生成手段と,生成手段にて生成された原画像を出力する出力手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の画像出力装置が取り扱う原稿には,その紙面上に所定の変換ルールに従って画像(原画像)を変換した画像(変換後画像)が記録され,記憶媒体にはその変換ルールあるいは変換ルールを得るためのデータが記憶されている。そして,本発明の画像出力装置では,原稿の紙面に形成された変換後画像を読み取る。さらに,原稿の記憶媒体からデータを読み出し,そのデータを基に変換後画像に対応する変換ルールを取得する。そして,その変換ルールに従って変換後画像を変換し,変換ルールを基に変換される前の画像である原画像を生成する。
【0009】
すなわち,本発明の画像出力装置は,原稿から,変換後画像と変換ルールとを取得する。そして,両者を組み合わせることで原画像を復元する。つまり,原稿の紙面および記憶媒体のデータそれぞれ単体では,原画像を得ることができない。そのため,例えば,原稿の紙面がコピーされたとしても,その紙面上の画像からは秘匿情報が認識できない。また,記憶媒体が抜き取られたり,記憶媒体のデータが不正に読み出されたとしても,その記憶媒体のデータのみでは秘匿情報を得られない。また,原稿そのものが盗まれたとしても,紙面上の画像と記憶媒体のデータとを組み合わせて原画像を復元できる機能を備えた装置がなければ秘匿情報を得られない。従って,秘匿情報が流出し難い。
【0010】
また,本発明の画像出力装置の取得手段は,記憶媒体に記憶された変換ルールを読み取って取得するとよい。すなわち,装置自身が変換ルールを記憶していると,変換後画像を作成する装置と変換後画像を復元する装置(本装置)との間で変換ルールを共通化する必要があり,変換ルールの固定化を招く。記憶媒体に変換ルールそのものを記憶し,その変換ルールを取得手段が直接取得することで,変換ルールに多様性を持たせることができ,安全性の向上がより期待できる。
【0011】
また,本発明の画像出力装置の取得手段は,記憶媒体に記憶された,変換ルールを得る際に参照するデータを読み取り,そのデータに適合する変換ルールを取得するとしてもよい。すなわち,記憶媒体に,変換ルールを得る際に参照するデータ(例えば,変換ルールを記憶した情報処理装置へのパス,変換ルールを完成させるためのパラメータ,変換ルールを選択する選択肢)を記憶し,そのデータを基に変換ルールを取得する。これにより,変換ルールを取得するためのステップが複雑になり,原画像の復元がより困難になる。よって,安全性の向上がより期待できる。
【0012】
また,本発明の画像出力装置は,記憶媒体に少なくとも認証に必要な認証データが記憶されており,認証情報を入力する入力手段と,入力手段にて入力された認証情報と,記憶媒体から読み出した認証データとを基に,認証処理を行う認証手段とを備え,生成手段は,認証手段によって認証された場合に変換後画像から原画像を生成するとよい。認証データには,例えば,パスワード,暗証番号,指紋等の生体認証情報がある。画像変換に認証を要求することで,安全性をより向上させることができる。
【0013】
また,本発明は,原画像を取得する画像取得手段と,取得手段が取得した原画像を,変換ルールに従って変換して変換後画像を生成する画像生成手段と,用紙に添付された記憶媒体に,変換ルールと変換ルールを得る際に参照する情報との少なくとも一方のデータを書き込む書込手段と,画像生成手段にて生成された変換後画像を,用紙に印刷する印刷手段とを備えることを特徴とする画像生成装置を含んでいる。これにより,本発明の画像出力装置の対象とする原稿を生成することができる。
【0014】
また,本発明の画像生成装置の画像生成手段は,原画像の一部を変換した画像を生成するとよい。すなわち,用紙の紙面全体を解読困難なものにすると,ユーザに戸惑いを与えることがある。また,宛先や説明書き等,解読が必要な情報を混載させたい状況も考えられる。そこで,用紙の一部に未変換の部分,すなわち解読可能な部分を印刷することで,利便性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,記憶媒体が添付された用紙を利用し,より安全に秘匿情報を配布することができる画像出力装置および画像生成装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態にかかる複合機の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態にかかる複合機の,画像読取部の概略構成を示す図である。
【図3】実施の形態にかかる複合機の,画像形成部の概略構成を示す図である。
【図4】実施の形態にかかる複合機の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】秘匿情報を含む原稿の一例を示す図である。
【図6】秘匿情報を含む原稿をRFID用紙にコピーした状態の一例を示す図である。
【図7】原稿生成処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】原稿復元処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】原稿復元処理を行う際の,パスワードの入力画面の一例を示す図である。
【図10】他の変換ルールによって変換した画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明にかかる画像出力装置および画像生成装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,RFIDタグにアクセス可能な複合機(MFP:Multi Function Peripheral )に本発明を適用したものである。
【0018】
[MFPの全体構成]
実施の形態のMFP100は,図1に示すように,用紙に画像を印刷する画像形成部10(出力手段,印刷手段の一例)と,原稿の画像を読み取る画像読取部20(読取手段,画像取得手段の一例)とを備えている。また,画像読取部20の前面側には,液晶ディスプレイからなる表示部41と,スタートキー,ストップキー,テンキー等から構成されるボタン群42とを備えた操作パネル40が設けられ,この操作パネル40により動作状況の表示やユーザによる入力操作が可能になっている。
【0019】
[画像読取部の構成]
画像読取部20は,原稿を読み取って画像データを作成する。具体的に本形態の画像読取部20は,図2に示すように,原稿の画像を読み取るスキャナ部21と,原稿の自動搬送を行うADF(Auto Document Feeder:自動原稿供給装置)22とを備えている。スキャナ部21は,その上面に位置する透明なプラテンガラス23,24と,その内部に位置するイメージセンサ25とを備えている。
【0020】
ADF22は,読み取り前の原稿を載置する原稿トレイ221と,読み取り後の原稿を載置する排出トレイ222とを備えている。ADF22の内部には,各種のローラよって原稿トレイ221と排出トレイ222とを連結する略U字形状の搬送路27が設けられている。具体的に,ADF22の搬送路27は,原稿トレイ221からADF22内に取り込まれ,幾つものローラを経由してUターンし,ADFガラス23上を通って排出トレイ222に向かう経路を構成している。また,ADF22は,スキャナ部21の上方を開閉可能に覆い,プラテンガラス24を含む原稿載置台26上に載置された原稿に対する原稿押さえカバーとしての機能も兼ねる。
【0021】
原稿の読取方式としては,フラットベッド(原稿固定走査)方式と,ADF(原稿移動走査)方式とがある。フラットベッド方式の場合,原稿を1枚ずつプラテンガラス24(以下,「FBガラス24」とする)上に載置する。その状態で,イメージセンサ25が副走査方向(主走査方向に直交方向,図2の矢印A方向)に移動し,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。一方,ADF方式の場合,原稿を纏めて原稿トレイ221に載置する。そして,イメージセンサ25がプラテンガラス23(以下,「ADFガラス23」とする)に対向する位置に移動し,固定される。その状態で,原稿がADFガラス23に対向する位置(読取位置)に搬送され,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。
【0022】
また,ADF22は,所定範囲内に存在するRFIDタグを検知し,そのRFIDタグに対してデータの読み出しおよび書き込みを行うことが可能なリード/ライト装置51(以下,「R/W装置51」とする。取得手段の一例)を備えている。R/W装置51は,搬送路27を通過する原稿に添付されたRFIDタグにアクセス可能な範囲に配置される。
【0023】
[画像形成部の構成]
画像形成部10は,パーソナルコンピュータ(PC)等の情報端末装置から送られてくる画像データや画像読取部20で読み取った原稿の画像データを基に画像を形成し,当該画像を用紙に転写する。本形態の画像形成部10は,周知の電子写真方式によって画像を形成するものであり,図3に示すように,画像を形成するプロセス部50と,未定着のトナー像を定着させる定着装置8と,画像形成前の用紙を載置する給紙カセット91と,画像形成後の用紙を載置する排紙トレイ92とを備えている。
【0024】
画像形成部10内には,底部に位置する給紙カセット91に収容された用紙が,給紙ローラ73,プロセス部50,定着装置8を通り,排紙ローラ74を介して上部の排紙トレイ92へ導かれるように,略S字形状の搬送路71が設けられている。すなわち,画像形成部10は,給紙カセット91に載置されている用紙を1枚ずつ取り出し,その用紙をプロセス部50に搬送し,プロセス部50にて形成されたトナー像をその用紙に転写する。さらに,トナー像が転写された用紙を定着装置8に搬送し,トナー像をその用紙に熱定着させる。そして,定着後の用紙を排紙トレイ92に排出する。
【0025】
プロセス部50は,感光体1と,感光体1の表面を一様に帯電する帯電装置2と,感光体1の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光装置3と,静電潜像に対してトナーによる現像を行う現像装置4と,感光体1上のトナー像を用紙に転写させる転写装置5とを有している。
【0026】
プロセス部50では,感光体1の表面が帯電装置2によって一様に帯電される。その後,露光装置3からの光により露光され,用紙に形成すべき画像の静電潜像が形成される。次いで,現像装置4を介して,トナーが感光体1に供給される。これにより,感光体1上の静電潜像は,トナー像として可視像化される。
【0027】
また,画像形成部10は,所定範囲内に存在するRFIDタグを検知し,そのRFIDタグに対してデータの読み出しおよび書き込みを行うことが可能なR/W装置52(書込手段の一例)を備えている。R/W装置52は,搬送路71を通過するRFID用紙のRFIDタグにアクセス可能な範囲に配置される。
【0028】
[MFPの電気的構成]
続いて,MFP100の電気的構成について説明する。MFP100は,図4に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM34と,ASIC35と,ネットワークインタフェース36と,FAXインタフェース37とを備えた制御部30を有している。
【0029】
CPU31は,MFP100における画像読取機能,画像形成機能等の各種機能を実現するための演算を実行し,制御の中枢となるものである。ROM32には,MFP100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。NVRAM(Non Volatile RAM)34は,不揮発性を有する記憶手段であって,各種設定ないし画像データ等を保存する記憶領域として利用される。
【0030】
CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,MFP100の各構成要素(例えば,画像形成部10を構成する露光装置の点灯タイミング,用紙の搬送路を構成する各種ローラの駆動モータ(不図示),画像読取部20を構成するイメージセンサユニットの移動用モータ(不図示))を,ASIC35を介して制御する。
【0031】
ネットワークインターフェース36は,インターネット等のネットワークに接続され,PC等の情報処理装置との接続を可能にしている。FAXインターフェース37は,電話回線に接続され,相手先のFAX装置との接続を可能にしている。そして,ネットワークインターフェース36やFAXインターフェース37を介してジョブのやりとりを行うことができる。
【0032】
[秘匿情報配布手順]
続いて,MFP100を利用して秘匿情報を含む画像を配布する手順について説明する。MFP100は,秘匿情報を含む画像(以下,「秘匿画像」とする)を,その秘匿情報が解読困難な画像に変換し,その変換後の画像(以下,「変換後画像」とする)が印刷された原稿(以下,「配布原稿」とする)を生成する原稿生成機能と,その配布原稿から変換後画像を読み取り,その変換後画像から秘匿画像を復元する原稿復元機能とを有している。
【0033】
具体的には,次のような手順で秘匿画像を配布する。例えば図5に示すような,秘匿画像83を含む原画像81を用意する。MFP100では,配布原稿を作成するに際し,原画像81のデータを取得し,原画像81から秘匿画像83を抽出し,所定の変換ルールに従って秘匿画像83を変換する。例えば,「原画像を4分割して並び替え,さらに横に45度,縦に45度に傾き補正する」という変換ルールに従って秘匿画像83を変換する。そして,図6に示すように,変換後の画像である変換後画像85を,RFIDタグ86が添付されたRFID用紙82に印刷する。
【0034】
さらに,MFP100は,RFIDタグ86に,原画像81内における秘匿画像83の位置情報と,変換ルールを取得するためのデータ(以下,「復元データ」とする)とを書き込む。すなわち,MFP100は,変換後画像85が紙面上に印刷され,さらに復元データがRFIDタグ86に書き込まれた配布原稿を生成する。なお,変換後画像85のRFID用紙82への印刷と復元データのRFIDタグ86への書込みとは,どちらを先に行ってもよい。
【0035】
一方,配布原稿から秘匿画像を取得するには,その配布原稿の紙面から変換後画像85を読み取り,さらにはRFIDタグ86に記憶された復元データを取得する。そして,復元データから変換ルールを取得し,取得した変換ルールに基づいて,変換後画像85を逆変換して秘匿画像83を復元する。
【0036】
[原稿生成処理]
続いて,原稿生成機能を実現する原稿生成処理(画像取得手段,画像生成手段,書込手段,印刷手段の一例)について,図7のフローチャートを参照しつつ説明する。本原稿生成処理は,MFP100が配布原稿の作成指示を受け付けたことを契機に実行される。
【0037】
まず,認証情報を取得する(S101)。認証情報は,本原稿生成処理にて作成された配布原稿から秘匿画像を復元する権限を与えるための情報である。認証情報には,例えば,パスワード,暗証番号,指紋等の生体認証情報がある。MFP100では,認証情報としてパスワードを取得する。なお,認証不要の場合には,認証情報を取得することなくS102に移行する。
【0038】
次に,秘匿画像を取得する(S102)。取得方法としては,例えば,ネットワークインターフェース36を介して接続する他の情報処理装置や,MFP100に直接接続されるUSBメモリ等の記憶媒体から原画像のデータを取得し,その原画像の全部あるいは一部を秘匿画像として取得する。また,画像読取部20にて原稿を読み取り,その原稿の画像を秘匿画像としてもよい。
【0039】
なお,必ずしも原画像の全体を秘匿画像にする必要はない。例えば,原画像には,図5に示した原画像81のように,宛先情報のような解読可能な状態で印刷された方が便利な非秘匿画像84が含まれることもある。そこで,原画像の一部を秘匿画像としてもよい。
【0040】
次に,変換ルールを取得する(S103)。変換ルールは,あらかじめMFP100に設定されたものであってもよいし,ユーザが操作パネル40を操作することによって個別に設定されたものであってもよい。また,ネットワークインターフェース36を介して接続する他の情報処理装置から取得してもよい。その後,取得した変換ルールに基づいてS102で取得した秘匿画像を変換し,秘匿情報の解読が困難な変換後画像を生成する(S104)。
【0041】
次に,給紙トレイ91にセットされたRFID用紙の搬送を開始する(S105)。そして,R/W装置52によって,そのRFID用紙のRFIDタグに,変換ルールを取得するための情報である復元データを書き込む(S106)。復元データには,必要に応じて,S101で取得した認証情報や秘匿画像の位置情報も含まれる。
【0042】
復元データとしては,勿論,変換ルールそのものが適用可能であるが,変換ルールは必ずしも必須ではない。例えば,変換ルールを他の情報処理装置(例えばサーバ)に記憶する構成とし,復元データにはその情報処理装置にアクセスするためのアクセス情報(IPアドレス,ディレクトリ,ファイル名等)を記憶してもよい。また,例えば,秘匿画像を変換する装置と秘匿画像を復元する装置とで共通の変換ルールを扱う場合には,変換のためのパラメータ(例えば,原画像を傾斜させて歪み画像を形成するという共通の変換ルールを扱う場合に,補正する傾斜角度がパラメータとなる)を記憶してもよい。すなわち,RFIDタグには,変換ルールと変換ルールを得る際に参照する情報との少なくとも一方のデータが書き込まれる。
【0043】
なお,復元データとして,変換ルールそのものではなく,変換ルールを取得するためのデータを記憶する場合には,変換ルールを取得するためのステップが複雑になり,安全性の向上が期待できる。一方,復元データとして,変換ルールそのものを記憶する場合には,変換ルールを取得するためのステップがシンプルになり,制御の複雑化を回避することが期待できる。
【0044】
次に,S105にて生成された変換後画像を基に印刷イメージを生成し,その印刷イメージを復元データが記憶されたRFID用紙に印刷する(S107)。これにより,配布原稿が生成される。S107の後は,生成された配布原稿を排紙トレイ92に排紙し,本処理を終了する。
【0045】
[原稿復元処理]
続いて,原稿復元機能を実現する原稿復元処理(読取手段,取得手段,生成手段,出力手段,入力手段,認証手段の一例)について,図8のフローチャートを参照しつつ説明する。本原稿復元処理は,MFP100が配布原稿の復元指示を受け付けたことを契機に実行される。なお,ADF22の原稿トレイ221には,配布原稿が載置されているものとする。
【0046】
まず,画像読取部20のADF22によって配布原稿の自動搬送を開始する(S201)。そして,R/W装置51によって,その配布原稿に添付されたRFIDタグから復元データを読み出す(S202)。
【0047】
その後,イメージセンサ25によって,配布原稿の紙面を読み取る(S203)。これにより,配布原稿に印刷された変換後画像を取得する。なお,原画像の一部が秘匿画像である場合には,読み取った配布原稿の画像データから変換後画像を抽出する。変換後画像の配布原稿中の位置情報は,S202で取得した復元データに含まれていてもよいし,配布原稿の画像データを解析し,濃度差等から推測してもよい。
【0048】
次に,配布原稿に印刷された変換後画像の復元が許可されているか否かを判断する(S204)。復元の可否は,S202で取得した復元データに含まれる認証情報を基に判断する。すなわち,MFP100では,復元データからパスワードを取得する。そして,操作パネル40の表示部41に,図9に示すような画面を表示し,パスワードの入力を促す。その後,入力されたパスワードを照合し,認証された場合には復元を許可し,認証されなかった場合には復元を許可しないと判断する。なお,復元データにパスワードが含まれていない場合,すなわち認証情報が設定されていない場合には,自動的に復元の許可あるいは不許可を決定する。
【0049】
変換後画像の復元が許可されなかった場合には(S204:NO),秘匿画像を出力できない旨を表示部41に表示し(S211),本処理を終了する。このように変換後画像の復元前に認証を行うことで,第三者による秘匿情報取得の可能性を低減できる。
【0050】
一方,変換後画像の復元が許可された場合には(S204:YES),S202で取得した復元データから変換ルールを取得する(S205)。変換ルールの取得方法は,復元データの内容に応じて異なる。例えば,復元データに,変換ルールが含まれている場合には,復元データから直接取得する。また,復元データに,変換ルールを記憶する装置のアクセス情報が記憶されている場合には,そのアクセス情報を基に変換ルールを記憶する装置にアクセスして取得する。また,復元データに,変換ルールのパラメータが記憶されている場合には,そのパラメータを基に変換ルールを作成して取得する。
【0051】
次に,S205で取得した変換ルールを基に変換後画像を逆変換するルールを解析し,その解析結果に基づいて,S203で読み取った変換後画像を逆変換し,変換後画像の変換前の画像(すなわち秘匿画像)を取得する(S206)。例えば,画像を4分割して並び替え,さらに横45度,縦45度に傾き補正した情報を変換ルールとして取得した場合には,縦に−45度,横に−45度に傾き補正し,さらに画像を4分割して並び替える逆変換ルールを作成し,その逆変換ルールに従って変換後画像を変換し,秘匿画像を復元する。
【0052】
その後,給紙トレイ91にセットされた用紙の搬送を開始する(S207)。そして,S206で逆変換された画像,すなわち秘匿画像を用紙に印刷する(S208)。なお,原画像の一部を秘匿画像にした場合には,秘匿画像のみを印刷してもよいし,秘匿画像以外の画像も秘匿画像に併せて印刷してもよい。
【0053】
以上詳細に説明したように本形態のMFP100では,秘匿画像を所定の変換ルールに従って変換する。そして,RFID用紙に変換後画像を印刷し,そのRFID用紙のRFIDタグに変換ルールを取得するためのデータである復元データを記憶する。これにより,秘匿情報配布用の配布原稿が作成される。また,MFP100では,配布原稿から,変換後画像と変換ルールとを取得する。そして,両者を組み合わせることで原画像を復元する。つまり,配布原稿の紙面およびRFIDタグのデータそれぞれ単体では,原画像を得ることはできない。そのため,例えば,配布原稿の紙面がコピーされたとしても,その紙面上の画像からは秘匿情報が認識できない。また,RFIDタグが抜き取られたり,RFIDタグのデータが不正に読み出されたりしても,そのRFIDタグのデータのみでは秘匿情報を得られない。また,配布原稿そのものが盗まれたとしても両者を組み合わせて原画像を復元できる機能を備えた装置がなければ秘匿情報を得られない。従って,秘匿情報が流出し難く,安全に秘匿情報を配布することが期待できる。
【0054】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,複合機(MFP)に限らず,コピー機,プリンタ,スキャナ,FAX装置等,画像処理機能を備えるものであれば適用可能である。また,画像形成部の画像形成方式は,電子写真方式に限らず,インクジェット方式であってもよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。
【0055】
また,実施の形態では,変換後画像を生成する原稿生成機能と,変換後画像を復元する原稿復元機能とを1つのMPF100が有しているが,原稿生成機能を有する画像処理装置と原稿復元機能を有する画像処理装置とを別々に設けてもよい。原稿生成機能のみを有する画像処理装置では,画像形成部にR/W装置があればよい。また,原稿復元機能のみを有する画像処理装置では,画像読取部にR/W装置があればよい。
【0056】
また,実施の形態では,分割画像と歪み画像とを組み合わせて変換後画像を生成しているが,変換後画像の形式はこれに限るものではない。例えば,図10に示すように,秘匿画像を細分割し,それら分割領域をばらばらに配置したパズル画像であってもよい。また,この他,バーコード画像,空欄充足前画像,あるいはこれらを組み合わせた画像であってもよい。
【0057】
また,実施の形態では,原画像の一部を秘匿画像とする際,秘匿画像の位置情報と秘匿画像の変換ルールとを別のデータとしているが,変換ルールの一部に秘匿画像の抽出条件を含めてもよい。
【0058】
また,実施の形態では,原稿復元処理の際に,画像形成部10が用紙に印刷することで画像を出力しているが,画像の出力方法はこれに限るものではない。例えば,例えば,ネットワークインターフェース36を介して接続する他の情報処理装置や,MFP100に直接接続されるUSBメモリ等の記憶媒体に画像データとして出力してもよい。
【0059】
また,実施の形態では,復元データとして,秘匿画像を変換した変換ルールを記憶し,変換後画像の復元時には,その変換ルールを解析して変換後画像を逆変換しているが,これに限るものではない。すなわち,復元データとして,変換後画像を逆変換するための変換ルールを記憶し,変換後画像の復元時には,その変換ルールをそのまま利用してもよい。
【0060】
また,原稿生成処理によって得られた配布原稿の変換後画像にシールを貼付してもよい。これにより,より安全に秘匿画像を配布することができる。この場合,原稿復元処理を実行する前に,配布原稿に貼付されたシールを剥がし,変換後画像の読み取りを可能にする。
【符号の説明】
【0061】
10 画像形成部
20 画像読取部
30 制御部
40 操作パネル
41 表示部
51 R/W装置
52 R/W装置
100 MFP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の紙面に形成された,変換ルールに従って変換された画像である変換後画像を読み取る読取手段と,
前記原稿に添付された記憶媒体に記憶されたデータを読み出し,そのデータから前記変換ルールを取得する取得手段と,
前記取得手段が取得した変換ルールに従って,前記読取手段が読み取った変換後画像から原画像を生成する生成手段と,
前記生成手段にて生成された原画像を出力する出力手段と,
を備えることを特徴とする画像出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載する画像出力装置において,
前記取得手段は,前記記憶媒体に記憶された変換ルールを読み取って取得することを特徴とする画像出力装置。
【請求項3】
請求項1に記載する画像出力装置において,
前記取得手段は,前記記憶媒体に記憶された,変換ルールを得る際に参照するデータを読み取り,そのデータに適合する変換ルールを取得することを特徴とする画像出力装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する画像出力装置において,
前記記憶媒体には,少なくとも認証に必要な認証データが記憶されており,
認証情報を入力する入力手段と,
前記入力手段にて入力された認証情報と,前記記憶媒体から読み出した認証データとを基に,認証処理を行う認証手段とを備え,
前記生成手段は,前記認証手段によって認証された場合に前記変換後画像から原画像を生成することを特徴とする画像出力装置。
【請求項5】
原画像を取得する画像取得手段と,
前記取得手段が取得した原画像を,変換ルールに従って変換して変換後画像を生成する画像生成手段と,
用紙に添付された記憶媒体に,前記変換ルールと前記変換ルールを得る際に参照する情報との少なくとも一方のデータを書き込む書込手段と,
前記画像生成手段にて生成された変換後画像を,前記用紙に印刷する印刷手段と,
を備えることを特徴とする画像生成装置。
【請求項6】
請求項5に記載する画像生成装置において,
前記画像生成手段は,原画像の一部を変換した画像を生成することを特徴とする画像生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−199921(P2010−199921A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41758(P2009−41758)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】