説明

画像化アプリケーションの造影剤濃度の即時の可視化

組織を含み造影剤でかん流される臓器を画像化するシステム(600)が示される。システムは臓器の時間に対するデジタル表現を示す一連のオリジナル画像を示す手段(603−608)を含み、個々のオリジナル画像は、造影剤を含み得る臓器の対応する位置に関する呼掛信号に対する応答を個々が示す複数のオリジナル値を含み、組織寄与分は縮小されている。更にシステムは選択されたオリジナル画像のセットの各々に対してオーバレイ画像を生成する手段(609−651)であって、選択された位置のセットの各々に対し、オーバレイ画像がa)線形化値が所与の閾値に達するとき選択された位置内の造影剤濃度に比例する対応するオリジナル値から導出される線形化値とb)線形化値が所与の値に達しないとき呼掛信号に対する対応する応答に非線形で依存する圧縮値と、からなるオーバレイ値を含む手段と、オーバレイ画像を連続表示する手段(654−660)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療画像分野に関する。特に、本発明は造影剤画像利用例に関する。
【背景技術】
【0002】
医学的利用のための設備の分野では、実質的に非侵襲で患者の臓器を分析するための画像技術が十分に確立されており、例えば、画像化は、臓器に超音波を当てることで生じるエコー信号の記録を基にすることができる。この目的のために、(例えば、超音波応用のリン脂質安定化ガス充填マイクロバブルなどの)造影剤が通常患者に投与される。造影剤は実効的な(超音波の)反射体として作用し、従って、造影剤が存在する臓器内部の脈管系における血液の可視化を強化する。特に、この技術は、血液かん流のアセスメントのために一般的に活用される。実際に、造影剤は患者内の血液と同じ速度で流れるので、その追跡により分析中の臓器内の血液かん流についての情報が得られる。
【0003】
通常、造影剤の流れは、かん流プロセスの間に臓器を撮像することによりモニタされる。より詳細には、個々の画像は、臓器の対応する部位から生じるエコー信号の振幅を示すピクセル値のマトリクスにより形成される。この目的のため、エコー信号は通常、ビデオモニタにより支持されるより小さい動的範囲にその振幅を適応させるように、圧縮される。バランスの良いコントラストを得るために、プロセスは常に、非線形の圧縮を含む。操作は通常、対数タイプの伝達関数を基にする。
【0004】
一般に、造影剤の追跡を促すために、臓器の組織の寄与は最初エコー信号内で減じられる。この成果は、コントラスト特定撮像モードでエコー信号を取得することにより達成される。このコントラスト特定撮像の一つの例は、パルス反転技術により達成される。コントラスト特定撮像の別の例は、電力変調技術により、又は、パルス反転及び電力変調技術の組合せにより、達成される。コントラスト特定撮像の更に別の例は、XP000764798 Arditi M.らの“Preliminary Study in Differential Contrast Echography”Ultrasound in Medicine and Biology,Vol.23,No.8,pp.1185−1194 1997,Elsevior(非特許文献1)に開示される。この目的のため、引用文献は2つのチャネルでエコー信号を処理することを示し、これら信号はその後減じられる。そのように取得された処理済信号は通常、線形のグレースケール(即ち、処理済信号の振幅に比例するグレーレベル)で表示される。特定の実装では、同じ処理済信号は、(処理前の)対数圧縮画像上にスーパーインポーズされる。
【0005】
いずれにせよ、ビデオ信号(即ち、エコー信号の振幅を圧縮することにより得られるもの)の振幅も、コントラスト信号(即ち、引用文献の記載により得られる、若しくは他の周知のコントラスト特定撮像技術により得られる生のエコー信号)の振幅も、造影剤の局所濃度に直接に比例するものではない。事実として、エコー信号のパワー(即ち、エコーパワー信号)のみが造影剤の局所濃度との直接の比例関係を示すに過ぎない。
【0006】
特に、ビデオ信号を参照して、(例えば、1.7〜2.5の比である、即ち、20・log10(1.7)=5dB〜20・log10(2.5)=5dBの比である)エコー信号の少しの差異は、結果としての圧縮画像内で全体的にマスクされるので、(かん流欠損による)微妙な変動若しくは混濁不均質を伴う血液流分布では識別が難しく、容易に見落とされてしまう。このことは、通常病理状況を示すかん流の異常の検出を妨げる。
【0007】
いずれにせよ、結果としての画像は、各々のタイプの装備に実装される特定の対数圧縮に強く依存する。しかも、このプロセスは、様々なオペレータの好みに従って対数圧縮の設定により主観的に導入される。従って、得られる結果は、異なる装備の設定を利用するオペレータ間では比較できない。
【0008】
一方で、かん流プロセスの定量的アセスメントが、パラメータ解析技術により与えられる。この場合、ビデオ信号は、その振幅が、臓器の対応する部位での造影剤の局所濃度と直接的に比例するように、線形化されるのが好ましい。この目的のため、逆対数圧縮関数がビデオ信号に適用され、かくして得られる結果は(元のエコー信号の局所パワーに直接比例する信号と為るように)自乗される。個々の単体のピクセル(若しくは、隣接するピクセルのグループ)のための線形化信号の時間変動は、数学的関数に適合する。数学的関数は様々のかん流パラメータを計算するのに利用されるが、それらパラメータは、(関連する血液量、その速度、流れなどの)臓器の対応部位の対応する血流力学及び形態学特性を示すものである。
【0009】
上述の解析の結果は、いわゆるパラメトリック画像(即ちマップ)によって、図式的に示されてもよい。パラメトリック画像は、選択されたかん流パラメータの夫々の値を個々のピクセルに割り当てることにより形成される。通常、かん流パラメータの様々な範囲の値は対応する色でコード化される。かようにして得られたピクセル値は、元の画像の一つの上にオーバレイされる。このようにして、パラメトリック画像は、解析段階の臓器全体に渡るかん流パラメータの空間分布を示す。
【0010】
しかしながら、パラメトリック画像は、かん流が異常である臓器の危険な部位の識別を促し得るが、かん流パラメータの静的表示を為すに過ぎない。従って、パラメトリック画像によりかん流プロセスを直接視覚で認知はできない。かん流プロセスの直接視覚での認知は、通常、元の画像シーケンスの再生によってのみ与えられる。
【特許文献1】EP−A−0458745
【特許文献2】WO−A−91/15244
【特許文献3】EP−A−0554213
【特許文献4】WO−A−94/09829
【特許文献5】WO−A−95/16467
【特許文献6】WO−A−2004/110279
【特許文献7】PCT/EP06/068305
【非特許文献1】XP000764798 Arditi M.らによる“Preliminary Study in Differential Contrast Echography”Ultrasound in Medicine and Biology,Vol.23,No.8,pp.1185−1194 1997,Elsevior
【非特許文献2】RafterらによるImaging technologies and techniques,Cardiology Clinic 22(2004),ページ181−197
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
いずれにせよ、パラメータ解析技術では、通常、記録された情報に関する時間のかかる処理が要求される。従って、得られた結果はオフラインでのみ利用可能である(即ち、かん流プロセスの間にリアルタイムでは利用不可能である)。
【0012】
本発明は、独立請求項に記載される解決策を提示する。本発明に係る好適な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0013】
原理上は、本発明は線形化信号を動的に表現するアイデアを基にする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
特に、本発明に係る形態は、組織を含む臓器を画像化するシステムを提案し、該臓器は造影剤でかん流される。上記システムは、(臓器に関して時間に対するデジタル表現を示す)一連のオリジナル画像を提示する(超音波スキャナなどの)手段を含む。個々のオリジナル画像は、複数のオリジナル値を含む。個々のオリジナル値は、臓器の対応する位置に関する(インソニファイの超音波パルスから生じるエコー信号などの)呼び掛け信号に対する応答を個々が示し、該臓器は造影剤を含むことがあり、(例えば、コントラスト特定画像化モードで取得されて)組織の寄与分は実質的に縮小されている。システムは更に、(一時的サブサンプリングから生じる選択されたオリジナル画像の全て、若しくはサブセットなどの)選択されたオリジナル画像のセットの各々に対してオーバレイ画像を生成する手段を含む。この結果は、選択された位置のセットに関して、操作することで成し遂げられ、該セットは、オリジナル画像の全ての位置、若しくは(例えば、関心領域、即ちROIの)その一部を含む。個々の選択された位置に対して、オーバレイ画像はオーバレイ値を含む。オーバレイ値は、線形化信号が所与の閾値に達するときには(例えば、上記線形化値が閾値を超えるときには)選択された位置内の造影剤濃度に比例する対応するオリジナル値から導出される線形化値からなり、そうでないときには(即ち、線形化値が閾値より低いときには)呼び掛け信号に対する対応する応答に非線形で依存する圧縮値からなる。オーバレイ画像を連続して表示する手段が、更に含まれる。
【0015】
通常、線形化値は、局所的なエコーパワーに比例する。
【0016】
更に、圧縮値は、一般的に対数法則に従ってエコー信号に依存する
【0017】
本発明の好適な実施形態では、閾値が、組織の対応する残余の寄与分よりも高い。
【0018】
概略、一連のオリジナル画像は、一つ又はそれ以上のインソニファイの超音波パルスを当て、対応する無線周波数エコー信号(生の信号)を記録し、組織の寄与分を縮小するように無線周波数エコー信号を処理し、更に、所望のオリジナル画像を生成することにより、得られる。
【0019】
ROI外部のピクセル値は、対応する圧縮値に割り当てられてもよい。
【0020】
概略、圧縮値は、同様にオリジナル値から導出される。
【0021】
提案の解決策は一般的に適用され、圧縮値から開始する。この場合、オーバレイ画像は、ROI内部の個々の圧縮値を必要時にその線形化値と(逆対数圧縮関数を適用し得られた結果を自乗することにより、圧縮値から計算される線形化値と)置き換えることにより、得られる。
【0022】
この目的のために、本発明の実施では、線形化画像は、ROI内部のピクセルに対して圧縮値を線形化することにより、生成される。このように得られる線形化値は閾値と比較される。
【0023】
更なる拡張として、線形化画像は、(例えば、通常超音波画像化で生じるスペックル粒子の大きさに基づいて)評価された解決策に従う空間サブサンプリングである。
【0024】
好適な実施形態では、線形化値は、(圧縮値の一つとは異なる)色別参照テーブルに従って表現される。
【0025】
オーバレイ画像が、対応するオリジナル画像の取得の間に実質的にリアルタイムで表示されるとき、提案の解決策は特に利点がある。
【0026】
本発明の別の形態は、造影剤を潅流される臓器を画像化するための対応する方法を示す。
【0027】
本発明の更なる形態は、上記方法を実施するためのコンピュータプログラムを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
特徴や利点のみならず発明自身も、添付の図面と共に読まれるべき以下の詳細な説明を参照して理解されが、以下の詳細な説明は限定的でない例示としてのみ与えられるものである。
【0029】
特に図1を参照して、超音波スキャナ100で構成される医療用画像化システムが示される。スキャナ100は、患者110の臓器105を解析するために、特に(例えば、診断目的のために)血液かん流にアクセスするために利用される。
【0030】
特に、超音波スキャナ100は、(アレイタイプなどの)ハンドヘルド送受信画像化プローブ120を伴う中央ユニット115を含む。画像化プローブ120は、(例えば、2〜10Mhzの中心周波数を有する)一連のインソニファイの(即ち、高周波をあてて音響ホログラムを作る)超音波パルスで構成される超音波を送信し、超音波パルスの反射から生じる(生の)無線周波数(RF)エコー信号を受信する。このために、画像化プローブ120には、送受信マルチプレクサが設けられ、これにより、パルスエコーモードで画像プローブ120を利用できる。
【0031】
中心ユニット115はマザーボード125を収容し、該マザーボード125上では(マイクロプロセッサ、ワークメモリ、及びハードディスクドライブなどの)超音波スキャナの操作を制御する電子回路が搭載される。しかも、(全体として符号130が付されている)1枚若しくはそれ以上のドータボードがマザーボード125上に差し込まれている。ドータボード130は、画像化プローブ120を駆動するための及び受信したエコー信号を処理するための電子回路を設ける。超音波スキャナ100は、(フロッピー(登録商標)ディスクなどの)リムーバブルディスク140を読み取るためのドライブ135も備わり得る。モニタ145は、進行中の解析処理に係る画像を表示する。超音波スキャナ100の操作はキーボード150により制御され、該キーボード150は従来技術に従って中心ユニット115に接続する。キーボードには、モニタ145の画面上の(図示しない)ポインタの位置を操作するトラックボールが設けられるのが好ましい。
【0032】
臓器105の血液かん流にアクセスするために、超音波造影剤(UCA)が患者110に投与される。造影剤は、(例えば、輸液ポンプによる)持続輸液として、若しくは、(通常、シリンジによって手作業で)ボーラスとして、静脈注射により投与されるのが好ましい。
【0033】
適切な造影剤は、液体キャリア内に気泡の懸濁を含む。通常、気泡は、0.1−5μmのオーダの直径を有し、このことにより、気泡は患者の毛細血管床を通過できる。気泡は一般に、気体若しくはその前駆体を、乳化剤、オイル、濃化剤、糖、プロテイン若しくはポリマを含む種々のシステムの中に取り込む若しくは封入することにより安定化される。安定化された気泡は、ガス充填微小胞と称される。微小胞は、水媒体内で分散され(この場合、マイクロバブルとしても知られる)界面活性、即ち両親媒性部材を含む非常に薄いエンベロープにより気体/液体界面にて結合された、気泡を含む。一方で、微小胞は、(マイクロバルーン若しくはマイクロカプセルとしても知られる)脂質若しくは天然/人工ポリマで形成された固体部材により、内部で気泡が取り囲まれた懸濁を含む。別の種類の造影剤は、ポリマ若しくは別の固体の多孔性微粒子の懸濁を含み、該懸濁は微粒子の孔の内部に封入された気泡を坦持する。微小胞、特にマイクロバブル及びマイクロバルーン、及びそれらの調合液の適切な水性懸濁は、EP−A−0458745(特許文献1)、WO−A−91/15244(特許文献2)、EP−A−0554213(特許文献3)、WO−A−94/09829(特許文献4)及びWO−A−95/16467(特許文献5)に記載され(、それらの開示は参照の上本明細書に組み込まれ)る。ガス充填微小胞を含む商業用の超音波造影剤は、Bracco International BVによるSono Vue(登録商標)である。
【0034】
画像化プローブ120は、解析されるべき臓器105の領域内で患者110の皮膚に接触して配置される。時間に対して超音波パルスに応じて記録されるエコー信号は、臓器105の組織による寄与と造影剤による寄与との重ね合わせの結果生じる。超音波スキャナ100は、造影剤の(非線形の)寄与に関してエコー信号内の組織の(線形の)寄与を実質的に減じるように、コントラスト特定画像化モードで動作する。コントラスト特定画像化モードは、例えば、“RafterらによるImaging technologies and techniques,Cardiology Clinic 22(2004),ページ181−197”(非特許文献2)(これらの内容は参照の上本明細書に組み込まれる)に記載されるように、高調波イメージング(HI)、パルス反転(PI)、電力変調(PM)及びコントラストパルスシークエンシング(CPS)技術を含む。一般に、オリジナルの(未処理の)エコー信号に対する(処理済みの)エコー信号内の組織の寄与分の縮小は、振幅比(dB)により規定される。縮小は、少なくとも40dBが好ましく、より好ましくは少なくとも50dBであり、更に好ましくは少なくとも60dBである。従って、通常の実施では、組織の残余の寄与分は、常に処理済みのエコー信号内に存在する。この残余の寄与分は、評価段階の臓器の生体構造の情報を表示するのに利用され得る。しかしながら、好ましい実施形態では、組織の寄与は完全に除去される。つまり、造影剤の寄与のみが処理済みのエコー信号内に存在し、解析段階の臓器の生体構造に関する情報は、その中で利用可能ではない。この場合、以下の記載で示すように、所望であれば、標準的な非コントラスト特定エコー信号から、解析段階の臓器の生体構造に関するできるだけの情報を導出可能である。
【0035】
結果であるエコー信号は、(例えば、毎秒10−30画像の画像化率で)対応する連続の捕捉の瞬間で臓器105を表す一連のデジタル画像(若しくはフレーム)に変換される。個々の画像は、夫々の視覚的エレメント、即ち基本的なピクチャエレメント(ピクセル)若しくは基本的なボリュームエレメント(ボクセル)に対する値の(例えば、512行512列の)マトリクスから成るビットマップにより、形成される。個々のピクセル(ボクセル)は、臓器105のごく一部を構成する位置に対応する。通常、ピクセル値は、ピクセルの明るさを規定する(例えば、8ビットの)グレースケールレベルにより示される。ピクセル値は、0(黒)から255(白)まで、(ピクセル位置の音響的応答を示す)対応するエコー信号の強度に従って、増加する。
【0036】
上述の処理の間、エコー信号は、画像の視覚的質を改善するため非線形の圧縮を受ける。実際に、エコー信号の振幅は、その(電圧)振幅の最大限利用可能な値と最小限利用可能な値との間の比として規定される、大きいダイナミックレンジを有する。例えば、エコー信号振幅(DR)のダイナミックレンジは、容易に10000(即ち、20・log10(10000)=80dB)を超え得る。しかしながら、観察者が一般にモニタ145で認識し得るダイナミックレンジは、30dB以下である。従って、エコー信号内に含まれる全ての有用な情報を視覚的に認識できるようにするため、下方振幅エコー信号を増強すべく非線形でエコー信号を増幅することが必要である。このことにより、解析段階の臓器105に関する有用な生体構造情報を伝達する、バランスの良いコントラストを伴った画像を、得ることができる。
【0037】
対数タイプの伝達関数を介してエコー信号を圧縮することにより、通常、所望の結果が達成される。スキャナ1000の夫々の製造者は、この対数圧縮の実装に対する特有のアプローチを有する。例えば、モニタ145に表示されるビデオ信号は、以下の伝達関数を適用することにより得られる圧縮信号に等しく設定され得る。

ここで、Aはエコー信号の振幅であり、MAXはエコー信号の最大許容振幅であり、LCは(dBで)所望の圧縮因子を規定するパラメータであり、Aはビデオ信号の振幅であり、MAXはビデオ信号の最大許容振幅であり、Aは圧縮信号の振幅である。
【0038】
伝達関数(0.1)は、(固体散乱物が内部に埋め込まれたポリウレタンゲルなどの)組織を模倣するファントム部材を利用して、実験的に検証された。圧縮因子LCの所与の値に対しては、(dBで表示される)スキャナのゲイン設定を変更することにより一連の画像が取得された。該ゲイン設定は、その全体のダイナミックレンジDRをカバーするように、エコー信号の振幅を規定した。画像は、単一のスペックルゲインの内部に含まれる非常に小さい領域内でピクセル値を計測することにより、オフラインで解析された。
【0039】
伝達関数(0.1)の適用による対数圧縮の効果は、図2に図式的に示される。特に、この図は、(横軸上の)エコー信号の振幅に対して(縦軸上の)ビデオ信号の振幅をプロットするダイヤグラムを示す。それら両方とも、(A/MAXに等しい相対的ビデオ信号振幅と、A/MAXに等しい相対的エコー信号振幅とを伴って)0から100の相対値で表されている。
【0040】
図に示すように、(実線の)曲線210は(ビデオ信号がエコー信号に比例する)線形関係を示し、該線形関係は(対数圧縮することなく)エコー信号をビデオ信号の中に線形でマッピングすることにより取得される。一方、(破線の)曲線220及び(点鎖線の)曲線230は、圧縮因子LCが夫々30dBと60dBに等しい伝達関数(0.1)の適用から発生した非線形関係を示す。
【0041】
対数圧縮は、エコー信号の下方値を増強するように、非線形でエコー信号を実際に増幅するのは明白である。特に、ビデオ信号は、曲線220、230と横軸との交点により与えられる最小値より低いエコー信号の値に対して、常にゼロである(即ち、A=0)。

この最小値MINより高いエコー信号の値に対しては、ビデオ信号は、エコー信号の僅かな増加に対しても飛躍的な値をとる。しかしながら、望ましい結果はビデオ信号とエコー信号との間の比例関係の喪失を示す。この効果はより大きい圧縮因子LCの値に対して(即ち、曲線220に対して曲線230で)より明らかである。
【0042】
その代わりに、解析段階の臓器内の血液かん流に関する正確な関数情報を導出するには、ビデオ信号の線形性が重要である。以下に利用するように、線形性という用語は、ビデオ信号の振幅(即ち、ピクセル値)を、対応するピクセル位置の造影剤の局所濃度に直接に比例せしめる処理を、示す。(造影剤濃度は血液量に関連する、即ち比例するので、)この線形化信号により、臓器の夫々の一部の(相対的)局所血液量が直接的に示される。結果として、線形化信号により、臓器の血液かん流の正確な評価が可能になる。
【0043】
この結果はエコー信号の局所出力を計算して取得される。エコー信号が直接利用し得るときは、この結果はその振幅を二乗することにより容易に取得される。

ここで、ALは線形化信号の振幅である。この場合、線形化信号は、最小値MIN=0から最大値MAX=(MAXまでにわたる。しかしながら、最も実際的な状況ではビデオ信号のみが利用可能である。この場合、線形性は、WO−A−2004/110279(特許文献6)に記載されるように、(効果を逆転する)逆対数圧縮を適用しそのようにして得られた結果を二乗することで得られる(WO−A−2004/110279の開示全体は本明細書に参照の上組み込まれる)。例えば、対数圧縮が伝達関数(0.1)により規定されるとき、線形化信号は以下の逆関数により計算される。

この場合、線形化信号振幅は、最小値MINから最大値MAXまでにわたり、夫々以下の式で与えられる。



【0044】
対数圧縮に関する及び生体解析に対する線形化に関する利用例が図3に示される。この目的のため、ボーラス注入後の造影剤濃度のピーク時の兎の心臓に関する3つの画像が得られた。(A)及び(B)が付された画像は、夫々、圧縮因子LCを83dB及び40dBと等しくして、伝達関数(0.1)に基づく対数圧縮を適用することで、得られた。一方、(C)が付された画像はビデオ信号を線形化することで得られた。画像の外見は適用される処理に強く依存することが、この図から明白である。
【0045】
特に、より高い圧縮因子LCにより得られた画像(A)は、解析段階の臓器についてバランスの良い表示を示す。この場合、圧縮画像(A)は、腎臓皮質全体の明らかな均一の混濁を示す。圧縮画像(B)に示されるように圧縮因子LCが低いと、視覚的な質は相当程度低下する。しかしながら、4時に対応する領域に、僅かな混濁不均一が見られる。一方、画像(C)の線形化では、混濁が不均一であることが明白である。しかしながら、解析段階の臓器の表示が非常に貧弱であるという犠牲により、この結果が達成されている。
【0046】
特に、線形化画像(C)において、腎臓皮質の上方部分が明るく均一であり、下方右部分がより混濁がない、ということが検出可能である。同じ画像(C)の標準的なオフラインの定量化解析により確認された。この目的のため、ピクセル値が、線形化画像(C)の上方領域、中間領域及び下方領域で計測された。これらのピクセル値は夫々の領域で平均化された。図に示すように、中間領域(22dB)と下方領域(26dB)との平均ピクセル値は、上方領域の平均ピクセル値(1dB)よりも非常に低い。深さに関する均一なトランスデューサ感度を仮定すると、(線形化信号は比例するから、)(夫々、9dBと5dBの)対応する差異が、縮小した造影剤濃度を示す。血液かん流の関連する欠損は、腎臓皮質のこの部分の病理状態を示し得る。
【0047】
本発明の実施形態に係る解決策は、同時表示のため元の圧縮画像上に線形化画像をオーバレイする。この目的のため、ROIが選択される。ROI内部の個々のピクセルは、局所的なエコーパワーに略比例する(即ち、解析段階の臓器の対応する部位に存在するときの造影剤濃度に比例する)(線形化)値が割り当てられる。ただしこの線形化値が所定の閾値に達する場合である。(線形化値が閾値THより低い)ROI内部の他のピクセル、及びROI外部のピクセルは、元の圧縮画像のように表示される。
【0048】
上記提案のオーバレイ表示は、解析段階の臓器に関する生体構造情報はモニタで示される画像内で失われないことを保証する。同時に、これにより、僅かな変化を伴う血液流分布を、即ち混濁不均一を識別できる。従って、(通常、病態を示す)かん流異常の検出が強く促進される。
【0049】
更に、得られた結果は、用いられる器具のタイプに、更に依存しない。いずれにせよ、(対数圧縮の設定における)主観性は回避される。結果として、今や様々な器具や設定を利用するオペレータ間で、結果を比較することが可能である。
【0050】
従って、上記提案の解決策は、(かん流プロセスの間の)造影剤濃度の、時間に対する漸進的変化の動画表示を示すものである。
【0051】
時間のかかるオフライン解析を必要とすることなく即座に所望の結果を入手できることが、強調される。従って、得られた画像は、かん流プロセスの間にリアルタイムで表示され得る。これにより、可能な病変の位置及び重篤性に関する最初の迅速な診断が可能になる。続いて、何らかの更なる検査が必要か否か(場合によっては、どの処置手順が採られなければならないか)を即座に決定することが可能である。
【0052】
閾値THは、線形化信号内の組織に関する対応する(減じられた)寄与分よりも高く(即ち、エコー信号内の組織の寄与分の元の限度を線形化することで得られる、線形化限度よりも高く)設定されてもよい。この目的のため、閾値THは、最大の線形化信号の所定のパーセントに設定されてもよい。例えば、閾値THは、好ましくは最大の線形化信号の1−10%の範囲で選ばれ、より好ましくは5%に等しい値などの4−7%の範囲で選ばれる。このように、閾値THより高い線形化値は、造影剤のみを示す(このときその濃度が重要である)。一方で、線形化値が閾値THより低い−他のピクセルに対する圧縮値は、(非常に低い濃度の造影剤が付加されることがある)組織のみを示す。当業者には理解され得るように、線形化信号内の組織の寄与分がほぼ完全に除去され得る例では、閾値THはゼロに設定されてもよい。
【0053】
線形化画像は、任意の利得係数により評価され、色別参照テーブルに従って表示される。このように、エコー信号内の差異は更に強調される。
【0054】
図4に進むと、上述の解決策の適用例が、図3と同じ実験データを用いて、示されている。特に、左画像(A)は、(より高い圧縮因子LCにより得られた)図3内で同じ参照で示された圧縮画像に対応する。逆に、右画像(B)は、本発明の実施形態に基づく方法に係るこの圧縮画像に、対応する線形化画像をオーバレイすることにより、画像(A)から得られる。線形画像内に表示されるピクセルは、圧縮画像内に表示されるピクセル(即ち、元のグレースケールレベル)に対して、(色分けにより)容易に認識される。このように、腎臓皮質の下方右部分のかん流不均一を即座に識別することが可能である。同時に、得られた画像は、背景内に解析段階の臓器に関するバランスの良い表示となる。
【0055】
同じ解決策の別の利用例が図5aに示される。この場合、画像(A)は、標準対数圧縮を適用して得られた。画像(A)は、造影剤の連続注入の間の、造影剤濃度の定常状態での豚の腎臓を示す。30%狭窄が腎動脈内に誘発され腎臓皮質に異常かん流を生じている。画像(A)は、腎臓皮質全体の一様な混濁を示しており、従ってかん流異常は検出され得ない。
【0056】
(B)が付された対応する画像は、選択したROIへ上述の解決策を適用して得られたのであり、該ROIは図の楕円領域に限定される。結果として、ROI内部のピクセルは、(対応する線形化値が、夫々、閾値THより厳密に高いか低いかによって)線形化画像で、若しくは、圧縮画像で、表示される。一方、ROI外部のピクセルは、常時、圧縮画像で表示される。図に示すように、疑わしい領域は、(同じ臓器の生体構造表示に悪影響を与えることなく)腎臓皮質の頂部で明確に可視となっている。
【0057】
かん流異常の位置は、腎臓皮質の標準的解析により蛍光性の微小形態を使って確認された。しかも、かん流のオフラインの定量的解析は、破壊補充技術で取得された腎臓皮質の一連の画像に関して実施された。特に、線形化ビデオ信号の二乗平均平方根の二乗(RMS)値が、疑わしい領域に配置されるROI内のピクセル、及び、(重い状況であるとされる)その左の制御領域内に配置された別のROI内のピクセルのために、計算された。図5Bに示すように、(A)を付された図は、狭窄を誘発する前のベースライン状況の、疑わしい領域のための(曲線610s)、及び制御領域のための(曲線610c)、時間に対するRMS値をプロットしている。図に示すように、曲線610s、610cは非常に類似する。一方、(B)を付された図は、狭窄状況の、同じ疑わしい領域のための(曲線620s)、及び同じ制御領域のための(曲線620c)、時間に対するRMS値をプロットしている。この場合、疑わしい領域曲線62sは、制御領域の曲線620cと全く異なり、このことより、かん流異常の正確な位置を確認する。
【0058】
図6を参照して、本発明の実施形態に係る解決策を実行するのに利用され得る主たるソフトウエア及びハードウエアコンポーネントは、全体として参照600が付されている。オペレーティングシステム及び他のアプリケーションプログラムと共にプログラムが稼動するとき(図示せず)に、情報(プログラム及びデータ)は通常、ハードディスク上に格納され少なくとも一部ワーキングメモリ内にロードされる。プログラムは、例えばCD−ROMからハードディスク上に、最初インストールされる。
【0059】
特に、ドライバ603は画像化プローブ(図示せず)を制御する。例えば、画像化プローブドライバ603は、解析段階の臓器に適用される超音波パルスを生成するための透過ビーム形成器及びパルサを含む。上記臓器から受信される対応する(アナログRF)エコー信号は、レシーブプロセッサ606に供給される。通常、レシーブプロセッサ606は、アナログRFエコー信号を前もって増幅し、予備的時間ゲイン補償(TGC)を適用する。アナログRFエコー信号は、アナログデジタルコンバータ(ADC)によりデジタルにコンバートされ、受信ビーム形成器を介して集中信号に組み合わせられる。このように得られたデジタル信号は、更なるデジタルアルゴリズム、及び他の線形の若しくは非線形の(ポストビーム形成のTGCなどの)シグナルコンディショナを介して処理されるのが好ましい。特に、レシーブプロセッサ606は、コントラスト特定アルゴリズムを利用して(前述のHI、PI、PM若しくはCPS技術に基づくことなどにより)組織の寄与分を削除する。このように処理されたデジタル信号は、ビデオプロセッサ608に渡され、そこでは信号は変調され、対数圧縮され、更にビデオフォーマットにスキャンコンバートされる。その処理の結果、一連の圧縮画像Iの記録となる。この目的のため、ビデオプロセッサ608は、所望の圧縮因子LCをインプットとして受ける。
【0060】
圧縮画像Iは一時的サブサンプラ609に与えられ、該一時的サブサンプラ609は(例えば0から10の)サブサンプリングパラメータPを受ける。一時的サブサンプラ609は、あらゆるP+1から一つの圧縮画像を出力する。この目的のため、一時的サブサンプラ609は、圧縮画像Iを通過させ、次のPをスキップする。最も実用的な状況では、サブサンプリングパラメータPは0に設定され(、あらゆる圧縮画像Iが考慮され)る。その代わり、サブサンプリングパラメータPのより高い値は、(例えば、超音波スキャナが毎秒100−500フレームなどの超高速フレーム率で稼動する場合に)処理される圧縮画像Iの数を限定するのに利用される。
【0061】
ドローイングモジュール612は、(ビデオプロセッサ608からの)圧縮画像Iに関する解析処理のためのROIを予め規定するのに利用される。操作より、縮小マスクMが生成され、該縮小マスクは、圧縮画像I(即ち、MxN)と同じサイズのバイナリ値のマトリクスから構成される。ROI内部のバイナリ値はロジック値1を割り当てられ、ROI外部のバイナリ値はロジック値0を割り当てられる。乗算器オペレータ615は、一時的サブサンプラ609から(一時的にサブサンプルされていることがある)圧縮画像Iと、ドローイングモジュール612から縮小マスクMとを受ける。オペレータ615は、縮小画像Iの対応するシーケンスを生成するように、ピクセル毎に、個々の圧縮画像Iに縮小マスクMを乗じる。結果として、縮小画像Iは、(縮小マスクMにより規定される)ROI内部にある圧縮画像Iのピクセル値のみを含み、他のピクセル値は0にリセットされる。
【0062】
個々の縮小画像Iは線形化オペレータ618に与えられ、該線形化オペレータ618は対応する線形化画像Iを出力する。特に、オペレータ618は、ピクセル毎に縮小画像Iを線形化し、その線形化画像Iの個々のピクセル値を局所のエコーパワーに直接比例させるように(即ち、解析段階の臓器内に存する造影剤の濃度に比例させるように)する。懸案の例では、この結果は、式(0.3)を縮小画像Iのあらゆるピクセル値に適用することで、到達される。
【0063】
それから線形化画像Iは、マスクジェネレータ621に渡されるが、該マスクジェネレータ621は閾値THにより制御される。マスクジェネレータ621は、対応する線形化マスクMを生成する。個々のピクセルの値が閾値THを超えるならば(個々のピクセルに)論理値1を割り当て、そうでないならば論理値0を割り当てることで、線形化マスクMは線形化画像Iから得られる。乗算器オペレータ624は、(線形化オペレータ618から)線形化画像Iを受け取り、(マスクジェネレータ621から)線形化マスクMを受け取る。オペレータ624は、ピクセル毎に線形化画像Iに線形化マスクMを乗じ、対応するマスク化された(線形化された)画像MIを生成する。結果として、マスクされた画像MIは、閾値THを超える線形化画像Iのピクセル値のみを含み、他のピクセル値は0にリセットされる。
【0064】
空間サブサンプラ627は、上記のように得られたマスクされた画像MIを受け取る。モジュール627は、圧縮画像ICの一つの空間周波数成分に基づく因子に従って(例えば、超音波画像化で通常生じるスペックル粒子のサイズに従って、例えば2−6ピクセルと等価のものに従って)マスクされた画像MIをサブサンプリングする。空間サブサンプリングは、サブサンプリングが後に続くローパスフィルタリングを含むことが好ましい。ローパスフィルタリングは、カットオフ周波数を有し、該カットオフ周波数は(例えば、フーリエ解析により決定される)圧縮画像Iのうちの選択されたものの内の顕著なエネルギを含む最も高い周波数コンポーネントとして選ばれ得る。サブサンプリングは、例えば、カットオフ周波数の2倍に等しい空間サブサンプリング周波数に結果的に成る値として、決定され得る因子に従って実施される。このように、マスクされた画像MIは、対応するサブサンプルされたマスクされた画像SMIに変換される。つまり、サブサンプルされたマスクされた画像SMIの個々の値は、マスクされた画像MIの近接ピクセルのグループに対応するセルを示す(該セルは、上述の空間分解能に従って形成されるサイズを有する)。このことによって、(例えば、圧縮画像Iのずれによる)記録された情報の不規則を平滑にできる。
【0065】
それから(サブサンプルされた)マスクされたSMIは量子化器630に与えられる。量子化器630は、場合により利得係数を適用することによって、マスクされた画像SMIのセル値を(例えば、0から最大のビデオ信号MAXまで一様に分配された64若しくは128レベルから成る)対応する離散値に変換するように、調整される。量子化器630は色別(参照)テーブル633にもアクセスする。色別テーブル633は、全ての可能なレベルを(レベルが増加するとより明るくなるのが好ましい)対応する色の表示と結び付ける。例えば、個々の色は、実際の列挙を含むパレットの内部の位置にアクセスするためのインデクスにより規定される。量子化器630は、マスクされた画像SMI内の個々のセル値を対応する色の表示と置換する。
【0066】
マスクされた画像SMIは、空間補間器636に与えられる。空間補間器636は、(最近傍、双一次、若しくは双三次技術などの)補間技術によって圧縮画像Iのサイズに対応するマスクされた画像SMIのフルサイズ(即ち、M×N)を復元する。この目的のために、マスクされた画像SMI内の個々のセルの値が、対応するピクセルのグループのために複写され(最近傍補間方法)、任意に(ローパス2次元若しくは3次元の空間フィルタを用いる等して)空間フィルタが掛けられる。オペレーションにより、対応する(補間された)マスクされた画像IMIが生成される。マスクされた画像IMIは、単一画像バッファ639内にラッチされ(先の内容を置換す)る。このように、一時的サブサンプラ609により新しい圧縮画像Iが出力されると常に、バッファ639内のマスクされた画像IMIは更新され、そうでないときは変更無いまま維持され(最後に計算された、マスクされた画像IMIを維持す)る。
【0067】
同時に、線形化マスクMは、マスクジェネレータ621からインバータ642へも供給され、該インバータ642は(論理値0と1を交換することによって)対応する反転(線形化)マスクMを生成する。反転マスクMは、同様に単一画像バッファ645内にラッチされ(先の内容を置換し)、バッファ639内のマスクされた画像IMIと常時同期するようにする。乗算器オペレータ648は、(バッファ645内にラッチされた)反転マスクMと(ビデオプロセッサ608からの)最新の圧縮画像Iを受け取る。オペレータ648は、ピクセル毎に圧縮画像Iに反転マスクMを乗じて、対応するマスクされた(圧縮された)画像MIを得る。結果として、マスクされた画像MIは、ROI外部の、及びROI内部で閾値THより小さい、対応する圧縮画像Iのピクセル値を含み、ROI内部の他のピクセル値は0にリセットされる。
【0068】
加算器オペレータ651は、(バッファ639内にラッチされた)マスクされた画像IMIと、(乗算器オペレータ648からの)マスクされた画像MIを受け取る。オペレータ651は、ピクセル毎に(正確に同期して)マスクされた画像IMIとマスクされた画像MIとを加え、オーバレイ画像Iを得る。このように、ROI内部のオーバレイ画像Iの個々のピクセル値は、(同じ線形化画像Iの)そのピクセル値が閾値THより高いときは常に、線形化画像IL内として表示される。その代わりに、閾値THより低いROI内部の他のピクセル値、及びROI外部の全てのピクセル値は、圧縮画像I内として表示される。
【0069】
オーバレイ画像Iはモニタドライバ654に渡され、該モニタドライバ654はオーバレイ画像Iの視覚化を制御する。上述と同じオペレーションが、記録された個々の新しい圧縮画像Iに対して繰り返される。結果として、オーバレイIが、超音波スキャナのモニタでリアルタイムで連続して表示される。このことは、対応する圧縮画像Iが取得されると略同時にオーバレイ画像Iが利用可能になることを意味する(若しくは、僅かな遅れはあるが、いずれにせよ、表示を開始するのに取得が完了するのを待つ必要はない)。
【0070】
更に、若しくは一方で、このように得られたオーバレイ画像Iのシーケンスは、リポジトリ657内にもセーブされ得る。リポジトリ657はプレーヤ660によりアクセスされる。プレーヤ660は、インデクスXも受け取るが、該インデクスXはオーバレイ画像Iの所望の再生速度に従って選択される。例えば、速度インデクスXは、リアルタイムの再生に対しては1に設定され、スローモーションの再生に対しては1より低い値に設定され、若しくは、加速モーションの再生に対しては1より高い値に設定される。プレーヤ660は、リポジトリ657から連続してオーバレイIを抽出する。それから個々のオーバレイ画像Iは、(選択された速度インデクスXに対応するフレームレートで)再生のためにモニタドライバ654に渡される。
【0071】
改良
【0072】
局所的な特定の要求を満足するために、当業者は上述の解決策に数多くの修正や代案を適用することは、当然のことである。特に、本発明は発明の好適な実施形態を参照して相当程度詳細に記載したが、別の実施形態に加えて、形式的に及び詳細に種々の削除、置換及び変更が可能であることが、理解されるべきである。更に、本発明の開示された実施形態に関連して記載した特定の要素及び/又は方法は、設計選択の一般事項として他のどの実施形態とも組み込まれ得ることが明確に意図されている。
【0073】
例えば、超音波スキャナが(線形の、コンベクスの、位相の、若しくはマトリクスの、アレイタイプの画像化プローブなどを伴う)種々の構造を有し、若しくは他のユニットを含むならば、同様の考察が適用される。同様に、本発明の解決策は、(動脈内など別の方法で投与されるのであっても)均等の造影剤で実現する場合にも役立つ。更に、かん流評価に関連しない適用例でも本発明の解決策は利用され得る。2006年11月9日の同時係属出願PCT/EP06/068305(特許文献7)に記載された、特定の生物学的標的で固定される造影剤の検出及び定量化が、典型例である(該出願の開示の全体は参照の上本明細書に組み込まれる)。
【0074】
更に、(例えば、Arditiらによる上記引用文献に記載されるアルゴリズムを適用することにより)エコー信号の組織の寄与分を縮小させるようなどんな他の技術も利用され得る。エコー信号の組織の寄与分縮小のための、提案の数値例は限定的に解釈されるべきではないことも、留意されるべきである。特に、エコー信号からの組織の寄与分の完全な除去は、本発明の範囲内にある。
【0075】
いずれにせよ、(一時的サブサンプリング以外の)全ての利用可能な画像に対して提案の処理の利用が妨げられるものではない。
【0076】
当然ながら、利用可能な画像を線形化するための対数圧縮及び式を規定する上述の伝達関数は単なる例示である。対数タイプの種々の伝達関数にも同様の考察が適用される。若しくは、より一般的に他の非線形圧縮にも同様の考察が適用される。
【0077】
更に、閾値THの数値例は限定的に解釈されてはならない。より一般的に、(組織の残余の寄与分と無関係な場合も含めて)別の方法で閾値THを設定することが、妨げられるものではない。いずれにせよ、種々の(最大の)閾値を利用することで、(ピクセル値がエコー信号の強度と共に減少する)ネガティブ画像に基づくシステムでも同様の結果は達せられ得る。
【0078】
本発明の技術は特に超音波利用例のために設計されているが、磁気共鳴画像(MRI)やX線コンピュータ断層撮影法(CT)等に基づく、他の医療用画像化例の利用が妨げられるものではない。
【0079】
一方で、超音波スキャナ及び別個のコンピュータ(若しくは均等なデータ処理エンティティ)から成るシステムでも、同じ解決策が利用され得る。この場合、記録された情報は、(例えば、リムーバブルディスク、メモリキー、若しくはネットワーク接続を介しての)処理のために超音波スキャナからコンピュータに伝達される。
【0080】
別の実施形態では、選択されたROI外部のピクセル値は、(ROI外部のオーバレイ画像の部分がブラックであるように)0にリセットされ得る。しかしながら、圧縮画像の全体コンテンツに対する提案の解決策の利用は想定される。
【0081】
本発明の別の実施形態では、線形化値が閾値THより低いROI内部のピクセルに対する圧縮値と、ROI外部のピクセルに対する圧縮値が、別の信号から得られ得る。例えば、基本Bモード画像化などの、非コントラスト特定の画像化モダリティで得られる信号からの圧縮値は、進んで利用され得る。これらの値は、例えば、画像化プローブドライバのエコー信号から得られ得る。そのように得られた値は、例えば、解析段階の臓器の生体構造を示すためのオーバレイ画像内の圧縮値として利用され得る。同時に、閾値THを超えるROI内部のピクセルに割り当てられる線形化値は、組織の寄与分が造影剤の一つに関して縮小された信号から得られる。前述のように、線形化信号内の組織の寄与分が完全に除去されると、閾値THがゼロに設定され得る。
【0082】
本発明の原理から乖離することなく、(線形化値の代わりに)圧縮値に閾値を適用することも可能である。この場合、線形化値は、閾値を超える圧縮値に対してのみ計算される。更に、(非圧縮の)エコー信号が利用可能であるとき、閾値より上の個々のピクセル値を線形化することにより又は閾値より上ではない個々のピクセル値を圧縮することにより、オーバレイ画像は直接に構成され得る。
【0083】
ある実施形態では、線形化信号は(パラメータ解析技術が実施される場合などの)他の目的にも既に利用可能である。この場合、何らの付加的な線形化オペレーションをすることなく利用可能な情報を活用することが可能である。
【0084】
線形化画像が(例えば、所定のサブサンプリングファクタに従って)異なる手順で空間サブサンプルされるならば、又は空間サブサンプリングが事前に若しくは事後に実施されるならば、同様の考察が適用される。いずれにせよ、(上述の空間サブサンプリングにより規定されるピクセルのグループのレベルではなく)ピクセルのレベルでの提案の解決策の適用は、排除されない。
【0085】
線形化値に関して利得計数を適用するステップは、別途スケール化された色別参照テーブルを適用することに、置き換えられ得ることにも留意するべきである。いずれにせよ、線形化値のグレースケール表示は、本発明の範囲内である。
【0086】
上述のように、オーバレイ画像がリアルタイムで表示される場合に本発明の利点がより明確に認められるとしても、得られた結果をオフラインで解析するために本発明の解決策を適用することが、想定される。
【0087】
(本発明の個々の実施形態を実施するのに利用され得る)プログラムが別途構成されていても、又はモジュール若しくはファンクションが追加的に加えられていても、同様の考察が適用される。更に、メモリ構造は、別のタイプのものでもよく、(必ずしも物理記憶媒体で構成されない)均等物で置き換えられてもよい。更に、提案の解決策は、(同様の若しくは付加的なステップを有し、別の順序でもよい)均等の方法で実施されるのに役立つ。いずれにせよ、プログラムは、(オブジェクトコードでもソースコードでも)外部の若しくは常駐のソフトウエア、ファームウエア又はマイクロコードなどの、データ処理システムにより若しくはデータ処理システムに関連して、利用されるのに適切な形態を取り得る。更に、プログラムは、コンピュータが使えるどんな媒体に設けられてもよい。媒体は、プログラムを含み、格納し、通信し、伝搬し、又は伝達するのに適切などんな要素でもよい。そのような媒体の例は、(プログラムが予めロードされる)固定ディスク、リムーバブルディスク、テープ、カード、ワイヤ、ファイバ、ワイヤレス接続、ネットワーク、放送波などである。例えば、媒体は、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、若しくは半導体タイプのものよい。
【0088】
いずれにせよ、本発明に係る解決策は、本発明に係る解決策は、(例えば、半導体物質のチップ内に集積された)ハードウエア構造で、若しくはソフトウエアとハードウエアの組合せで実施するのに役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態に係る解決策が利用可能な超音波スキャナの図的記述である。
【図2】対数圧縮の効果を示す説明図である。
【図3】対数圧縮と線形の適用例を示す。
【図4】本発明の実施形態に係る解決策の適用例を示す。
【図5a】本発明の実施形態に係る解決策の別の適用例を示す。
【図5b】本発明の実施形態に係る解決策の別の適用例を示す。
【図6】本発明の実施形態に係る解決策を実施するのに利用される主たるソフトウエア及びハードウエアコンポーネントを示す。
【符号の説明】
【0090】
600・・・全体システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を含み造影剤でかん流される臓器を画像化するシステム(600)において、
臓器に関して時間に対するデジタル表現を示す一連のオリジナル画像を提示する手段(603−608)であって、個々のオリジナル画像は、造影剤を含むことがある臓器の対応する位置に関する呼び掛け信号に対する応答を個々が示す複数のオリジナル値を含み、組織の寄与分が実質的に縮小された、手段を含み、
更に、
選択されたオリジナル画像のセットの各々に対してオーバレイ画像を生成する手段(609−651)であって、選択された位置のセットの各々に対して、オーバレイ画像は、
a)線形化値が所与の閾値に達するときには選択された位置内の造影剤濃度に比例する対応するオリジナル値から導出される線形化値と、
b)線形化値が所与の値に達しないときには呼び掛け信号に対する対応する応答に非線形で依存する圧縮値と、からなるオーバレイ値を含む、手段と、
オーバレイ画像を連続して表示する手段(654−660)と
を含むことを特徴とする
システム。
【請求項2】
線形化値が、呼び掛け信号に対応する応答のパワーに比例する
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム(600)。
【請求項3】
圧縮値が、対数法則に従って呼び掛け信号に対応する応答に依存する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム(600)。
【請求項4】
閾値が、組織の縮小された寄与分の対応する限度よりも高い
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか一に記載のシステム(600)。
【請求項5】
一連のオリジナル画像を提示する手段(603−608)が、
少なくとも一つのインソニファイの超音波パルスを臓器に当てる手段(120)と、
少なくとも一つのインソニファイの超音波パルスに応じて対応する無線周波数エコー信号を記録する手段(603)と、
組織の寄与分を縮小するように無線周波数エコー信号を処理する手段(606)と、
処理されたエコー信号から一連のオリジナル画像を生成する手段(608)と
を含む
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか一に記載のシステム(600)。
【請求項6】
個々の選択されない位置に対してはオーバレイ値は圧縮値から成る
ことを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか一に記載のシステム(600)。
【請求項7】
個々の圧縮値は対応するオリジナル値から導出される
ことを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか一に記載のシステム(600)。
【請求項8】
個々のオリジナル値が圧縮値から成り、圧縮値は所与の非線形の圧縮関数に従う呼び掛け信号に対応する応答に依存し、
オーバレイ画像(609−651)を生成する手段が、
線形化値が閾値に達するときは、個々の選択された位置の圧縮値を対応する線形化値と置き換える手段(618−651)であって、線形化値が、圧縮関数の逆関数を圧縮値へ適用しその逆関数の適用の結果を自乗することにより、計算される、手段を含む
ことを特徴とする請求項7に記載のシステム(600)。
【請求項9】
オーバレイ画像を生成する手段(609−615)が更に、
個々の選択された位置の圧縮値を対応する線形化値と置き換えることにより、個々の選択されたオリジナル画像を線形化画像に変換する手段(618)と、
線形化画像内の個々の線形化値を閾値と比較する手段621と
を含むことを特徴とする請求項8に記載のシステム(600)。
【請求項10】
オーバレイ画像を生成する手段(609−615)が更に、
評価された解決策に従って、空間サブサンプリングを線形化画像に適用する手段(627)を
含むことを特徴とする請求項9に記載のシステム(600)。
【請求項11】
オーバレイ画像を生成する手段(609−615)が更に、
複数の所与の色を線形化値の対応する範囲と関連させる手段(633)と、
オーバレイ画像内の個々の線形化値を対応する色の表現と置き換える手段(630)と
を含むことを特徴とする請求項1乃至10のうちのいずれか一に記載のシステム(600)。
【請求項12】
表示する手段(654−660)が、対応する選択されたオリジナル画像を取得した瞬間とリアルタイムで、個々のオーバレイ画像を表示するように調整されている
ことを特徴とする請求項1乃至11のうちのいずれか一に記載のシステム(600)。
【請求項13】
組織を含み造影剤でかん流される臓器を画像化する方法(600)において、
臓器に関して時間に対するデジタル表現を示す一連のオリジナル画像を提示するステップ(603−608)であって、個々のオリジナル画像は、造影剤を含むことがある臓器の対応する位置に関する呼び掛け信号に対する応答を個々が示す複数のオリジナル値を含み、組織の寄与分が実質的に縮小された、ステップを含み、
更に、
選択されたオリジナル画像のセットの各々に対してオーバレイ画像を生成するステップ(609−651)であって、選択された位置のセットの各々に対して、オーバレイ画像は、
a)線形化値が所与の閾値に達するときには選択された位置内の造影剤濃度に比例する対応するオリジナル値から導出される線形化値と、
b)線形化値が所与の値に達しないときには呼び掛け信号に対する対応する応答に非線形で依存する圧縮値と、からなるオーバレイ値を含む、ステップと、
オーバレイ画像を連続して表示するステップ(654−660)と
を含むことを特徴とする
方法。
【請求項14】
コンピュータプログラムがデータ処理システム(100)上で実行されるとき請求項13の方法(600)を実施するためのコンピュータプログラム(140)。
【請求項15】
コンピュータプログラムを具体化するコンピュータが利用可能な媒体を含むコンピュータプログラムプロダクトであって、
コンピュータプログラムは、データ処理システムで実行されるとき、組織を含み造影剤でかん流される臓器を画像化する方法を上記システムに実施させ、
上記システムは、
臓器に関して時間に対するデジタル表現を示す一連のオリジナル画像を提示するステップであって、個々のオリジナル画像は、造影剤を含むことがある臓器の対応する位置に関する呼び掛け信号に対する応答を個々が示す複数のオリジナル値を含み、組織の寄与分が実質的に縮小された、ステップを含み、
更に、
選択されたオリジナル画像のセットの各々に対してオーバレイ画像を生成するステップであって、選択された位置のセットの各々に対して、オーバレイ画像は、
a)線形化値が所与の閾値に達するときには選択された位置内の造影剤濃度に比例する対応するオリジナル値から導出される線形化値と、
b)線形化値が所与の値に達しないときには呼び掛け信号に対する対応する応答に非線形で依存する圧縮値と、からなるオーバレイ値を含む、ステップと、
オーバレイ画像を連続して表示するステップと
を含むことを特徴とする
コンピュータプログラムプロダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図6】
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【図5b】
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【公表番号】特表2009−515578(P2009−515578A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539446(P2008−539446)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068337
【国際公開番号】WO2007/054561
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(398063065)ブラッコ・リサーチ・ソシエテ・アノニム (13)
【氏名又は名称原語表記】BRACCO RESEARCH S.A.
【Fターム(参考)】