説明

画像印刷用の携帯装置および方法、並びに同装置用の記録媒体、ペンおよびベンチマーク

本発明は、有形の被印刷物上に設けられる印刷領域内に画像を印刷するための携帯装置に関し、この装置は、被印刷物上に手で置くことができ、被印刷物上のベンチマークの位置とは別に予め定められている関係を用いて、印刷される画像の対応する点に関係している、少なくとも1つの取り去りできるベンチマーク(96〜99)と、ベンチマークに対する印字ヘッドの位置を測定できる測定部と、印字ヘッドの位置の測定値からペンと被印刷物を隔てる距離を決定し、この距離が予め定められている閾値より大きい場合に、被印刷物への画像の印刷を防止できる制御部(14)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有形の被印刷物上に設けられる印刷領域内に画像を印刷するための携帯装置および方法に関する。また本発明は、この印刷方法を実施するためのデータ記録媒体、ペンおよびベンチマークにも関する。
【0002】
本発明は、特に「非接触」印刷装置に関する。すなわち、印刷される被印刷物に、印字ヘッドが直接物理的に接触しない印刷装置に関する。
【背景技術】
【0003】
印刷装置は、次のものを備えている。
−印刷領域内に手で置くことができ、かつ印字ヘッドを備える少なくとも1つのペンと、
−印字ヘッドの位置を測定するための測定部と、
−印字ヘッドを制御し、予め定められている像点を被印刷物上に印刷するのを制御するようになっている制御部。
【0004】
このような装置は、例えば特許文献1(US5,861,877)に開示されている。この公知の装置において、ペンの位置は、加速度計または同様の位置センサを用いて測定される。従って、ペンの位置は、その開始点と比較して測定される。
【0005】
これは、画像を正しく印刷するには、画像を印刷する被印刷物に対して、ペンの開始点を正しく位置合わせする必要があることを示している。この操作を手作業で行うのは、面倒であることは理解しうる。
【0006】
さらに、印刷プロセスが始まると、完了するまで続けなければならない。その理由は、画像の印刷が完了する前に、被印刷物からペンを引き揚げると、以前使用していたのと同じ開始点に、非常に正確にペンを位置合わせすることによってしか、この印刷を再開できないからである。画像の印刷を、印刷領域の任意の点から開始することはできない。
【0007】
前述の第1の装置と並んで、特許文献2(US6,808,330)は、被印刷物内に位置ラベルを組み込むことによって、ペンの位置を測定する第2の印刷装置を提案している。ペンが、これらのラベルの1つの上を通過する時、ラベルを読み取って、被印刷物に対するペンの位置を決定するようになっている。しかし、この第2の装置を使用して、位置ラベルを欠いている被印刷物上に画像を印刷することはできない。
【0008】
特許文献3(DE10,2005,003,333)や特許文献4(WO2004/015980)に記載されているような他の印刷装置は、ペンの位置を検出するために、マーカを使用している。しかし、これらの装置では、被印刷物に対する本当の「非接触」印刷はできない。例えば、ペンの一部とのちょっとした物理的接触によって変形するか、または破れることがある、曲がり易いか、または傷つき易い被印刷物上に画像を印刷するために、これらの装置を使用することはできない。さらに、これらの装置には、印刷距離が不適当になるのを避けるための手段が設けられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5861877号明細書
【特許文献2】米国特許第6808330号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102005003333号明細書
【特許文献4】国際公開第2004/015980号
【特許文献5】欧州特許第1502544号明細書
【特許文献6】仏国特許出願公開第0953462号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の1つの目的は、上記の欠点の少なくとも1つを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、携帯印刷装置に関し、
−被印刷物上に手で置くことができる、少なくとも1つの取り去り可能なベンチマークを備え、このベンチマークは、被印刷物上のベンチマークの位置とは関係なく予め定められている関係によって、印刷される画像の対応する点に関係付けられており、
−印刷装置の測定部は、ベンチマークに対する印字ヘッドの位置を測定するようになっており、
−印刷装置の制御部は、
・ベンチマークに対する印字ヘッドの実際の測定位置と、
・像点とベンチマークとを関係付ける予め定められている関係とに応じて、印刷される像点を決定するようになっており、
−さらに、制御部は、印字ヘッドの位置の測定値から、ペンと被印刷物との距離を決定し、この距離が予め定められている閾値より大きい場合に、被印刷物への画像の印刷を防止するようになっている。
【0012】
被印刷物上に少なくとも1つのベンチマークを置き、このベンチマークに対するペンの位置を測定することにより、ベンチマークを基準とする基準フレームにおけるペンの位置を特定することができる。従って、測定位置は、ペンの開始点とは関係がない。従って、この印刷装置においては、開始点にペンを正確に位置合わせする必要はない。また、印刷が中断されたとき、印刷領域の任意の点から印刷プロセスを再開することもできる。
【0013】
ベンチマークは、被印刷物とは別の機構である。従って、この印刷装置は、任意の被印刷物に印刷することができる。
【0014】
最後に、ペンと被印刷物との距離が限度を超えていることから生じる不適切な印刷を、回避することができる。
【0015】
本発明の印刷装置の実施形態は、次の特徴を1つ以上備えているのがよい。
・測定部は、ベンチマークに対する印字ヘッドの方向を測定するようにもなっており、制御部は、この方向の測定値に応じて印字ヘッドを制御するようにもなっている。
・印刷装置は、
−少なくとも2つのベンチマークと、
−これら2つのベンチマーク間の距離を測定するようになっている測定部と、
−この距離に比例して画像を拡大または縮小するために、これら2つのベンチマーク間の測定距離に応じても、印刷する像点を決定するようになっている制御部とを備えている。
・印刷装置は、ベンチマークとは関係なく、手で置くことができる少なくとも1つの中継マーカを備え、この中継マーカは、被印刷物に対するその位置とは関係なく予め定められている関係で像点に関係付けられてはおらず、さらに、測定部は、
−この中継マーカを基準とする基準フレームにおけるペンの位置を検出するセンサと、
−ベンチマークに対する中継マーカの位置を検出するセンサと、
−中継マーカを基準とする基準フレームで表されたペンの測定位置を、ベンチマークに対する位置に変換する変換器とを備えている。
・測定部は、
−磁気センサまたは磁界源のどちらか一方が、ペンに内蔵されているのに対して、他方は、ベンチマークまたは中継マーカに内蔵されている、少なくとも1つの磁気センサおよび少なくとも1つの磁界源と、
−磁界源が放射した磁界を、磁気センサが測定した測定値から、ベンチマークまたは中継マーカに対する印字ヘッドの位置を決定する決定器とを備えている。
・磁気センサは、3軸磁気センサであり、磁界源は3軸磁界源である。
・測定部は、
−送信器または受信器のどちらか一方がペンに内蔵されているのに対して、他方は、ベンチマークまたは中継マーカに内蔵されており、ペンとベンチマークまたは中継マーカとの間を伝播するようになっている波の、少なくとも1つの送信器および1つの受信器と、
−送信器と受信器との間の波の伝播時間から、ベンチマークまたは中継マーカに対する印字ヘッドの位置を決定する決定器とを備えている。
【0016】
さらに、印刷装置の実施形態は、次の利点を有する。
−印刷中にベンチマークに対する印字ヘッドの方向を考慮することにより、印刷品質を改善している。
−少なくとも2つのベンチマークを使用し、これら2つのベンチマーク間の距離を測定することにより、この測定距離に比例して印刷画像を拡大または縮小している。
−中継マーカを使用することにより、ペン位置の測定に使用する信号の電力を増大することなしに、印刷領域を拡大している。
−磁気センサおよび磁界源を使用することにより、ベンチマークに対するペンの位置を正確に測定している。
−3軸磁気センサおよび3軸磁界源を使用することにより、同時に同じ磁気センサおよび同じ磁界源を使用して、ベンチマークに対するペンの位置および方向を測定できる。
−送信器および受信器を使用することにより、波の伝播時間からペンの位置を測定しており、その結果、正確な測定値を得ている。
【0017】
また、本発明は、予め定められている像点を被印刷物上に印刷するために、印刷領域内に手で置くことができるペンに内蔵されている印字ヘッドを使用して、有形の被印刷物上に設けられる印刷領域内に画像を印刷する方法にも関し、この方法は、
−被印刷物上に、少なくとも1つの取り去り可能なベンチマークで、被印刷物上のベンチマークの位置とは関係なく予め定められている関係によって、印刷される画像の対応する点に関係しているベンチマークを手で置くステップと、
−ベンチマークに対する印字ヘッドの位置を測定するステップと、
−印刷する像点を、
・ベンチマークに対する印字ヘッドの実際の測定位置、および
・像点とベンチマークとを関係付ける予め定められている関係に応じて、決定するステップと、
−予め定められている像点を被印刷物上に印刷するように印字ヘッドを制御するステップと、
−印字ヘッドの位置の測定値からペンと被印刷物との距離を決定し、この距離が予め定められている閾値より大きい場合に、被印刷物への画像の印刷を防止するステップとを備えている。
【0018】
この印刷プロセスの実施形態は、次の特徴を備えているのがよい。
・被印刷物に対する印字ヘッドの方向を測定するステップと、ベンチマークに対する印字ヘッドの方向測定値が、頂角および予め定められている方向によって画定されるインク射出許可円錐内に含まれていない場合に、被印刷物への画像の印刷を防止するステップとを備えている。
・被印刷物に対するペンの方向を測定するステップと、方向測定値に応じて、被印刷物上に射出するインク量を調節するステップとを備えている。
【0019】
また、本発明は、電子計算機が実行すると、上記の印刷方法を実施する指令を有する
データ記録媒体にも関する。
【0020】
また、本発明は、上記の印刷装置の構成要素であるペンにも関し、このペンは、ベンチマークに対する印字ヘッドの位置を測定するようになっている測定部の要素の少なくとも一部を内蔵し、制御部は、印字ヘッドの位置の測定値からペンと被印刷物との距離を決定し、この距離が予め定められている閾値より大きい場合に、被印刷物上に画像を印刷するのを防止するようになっている。
【0021】
最後に、本発明は、上記の印刷装置の構成要素である制御部にも関し、この制御部は、印字ヘッドの位置の測定値からペンと被印刷物のとの距離を決定し、この距離が予め定められている値より大きい場合に、被印刷物上に画像を印刷するのを防止するようにプログラムされている。
【0022】
本発明は、添付の図面を参照して、限定することなく単なる例として挙げる、以下の説明を読むことによって、よりよく理解しうると思う。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】印刷装置の第1の実施形態の概略の斜視図である。
【図2】図1の装置を使用する印刷方法のフロー図である。
【図3】印刷装置の第2の実施形態の概略の斜視図である。
【図4】携帯印刷装置の第3の実施形態の概略の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
全ての図において、同一の要素には、同じ符号を使用している。
【0025】
以下の説明において、当業者に公知の特徴および機能については、詳細には説明しない。
【0026】
図1は、水平に置かれている有形の被印刷物4上に、画像を印刷するための装置2を示している。
【0027】
本明細書において、画像とは、被印刷物4上に印刷しうるあらゆる種類のパターンのことである。これらのパターンは、白黒、または灰色の濃淡、または必要なら色の濃淡を有するカラーであってもよい。これらのパターンは、写真、幾何学模様などに相当してもよい。
【0028】
被印刷物4は、平らで水平な上面を有している。被印刷物4は、印刷することができるあらゆる種類の材料から作られる。本明細書において、被印刷物4は、印字ヘッドと直接接触すると、損傷する恐れがある材料から作られているものとする。例えば、被印刷物4は、人間の皮膚、蜘蛛の巣、ミルクの膜、ビールの泡等のような曲がり易く、傷つき易い膜であってもよい。
【0029】
印刷装置2は、携帯用である。すなわち、工学的な持ち上げ手段を必要としないで、人間が直接運搬することができる。そのため、印刷装置2の要素の全重量は、10kgより軽く、特に5〜1kgより軽い方が好ましい。運搬を容易にするために、印刷装置2の要素の全容積は、通常0.15m3より小さく、10-3〜10-43より小さい方が好ましい。
【0030】
印刷装置2は、ペン8を備えており、このペン8は、被印刷物4の上面に設けられ、その内部に画像が印刷される印刷領域10上に、操作者が手で置くことができる。ペン8は、被印刷物と直接接触するのを避けるために、ゼロでない閾値S3より大きい高さhだけ、被印刷物4から垂直に離れていなければならない。
【0031】
印刷領域10は、ここでは、幅Lおよび長さLgの長方形である。
【0032】
ペン8は、基本的に長さ方向の軸A1に沿って延びている。操作者の手によって容易に扱うことができるように、ペン8の寸法は定められている。例えば、ペン8の長さは、20cmより短く、その幅は、5cmより狭い。ペン8の重さは、通常、1kgより軽く、200gより軽い方が好ましい。
【0033】
ペン8は、この被印刷物4への印刷に必要な全ての要素を集めている印字ヘッド12を備えている。例えば、印字ヘッド12は、次のものを備えるインクジェット印字ヘッドである。
−被印刷物4に射出するインクの1つ以上の貯蔵部と、
−少なくとも1つのインク射出ノズルと、
−貯蔵部からインクをノズルに転送し、被印刷物にインクを射出する少なくとも1つの作動部。
【0034】
本明細書においては、各インク射出ノズルは、基本的に軸A1に平行に延びていると想定している。
【0035】
また、ペン8は、次のものも備えている。
−印字ヘッドを制御する制御部14と、
−被印刷物4上に印刷される画像を有するメモリ16と、
−インタフェース18と、
−電池などの操作に必要な電源(図示せず)。
【0036】
制御部14は、メモリ16に接続されている。メモリ16に記録されている画像は、例えば「ビットマップ」フォーマットなどの標準フォーマットなどで、符号化されている。ここでは、印刷される画像は、長方形の画像である。
【0037】
制御部14は、データ記録媒体に記録されている命令を実行するようになっている、プログラム可能な電子計算機から作成されている。このため、メモリ16は、制御部14が実行すると、図2の方法を実行するのに、必要な命令を備えている。
【0038】
インタフェース18は、印刷される画像をメモリ16に記録するために、ペン8をコンピュータに接続する働きをする。
【0039】
また、印刷装置2は、被印刷物4上に手で置くことができる取り除き可能なベンチマークも備えている。この実施形態では、印刷装置は、4つのベンチマーク20〜23を備えている。
【0040】
ベンチマーク20〜23は、既に存在する被印刷物4の上に付加される。従って、これらのベンチマークは、被印刷物4とは別の機構であり、操作者が自由に被印刷物4上に置くことができる。ここでは、ベンチマークは、この被印刷物4上に置かれ、重力だけを利用して、被印刷物4上の位置を維持するようになっている。
【0041】
これらのベンチマークのそれぞれは、被印刷物上のベンチマークの位置とは関係なく、予め定められている関係によって、印刷される画像の点に関係付けられている。この予め定められている関係は、例えばメモリ16に記録されている。ここでは、この予め定められている関係は、ベンチマーク20〜23のそれぞれが、印刷される長方形の画像の角に対応することを示しているものとする。従って、これらのベンチマークは、印刷領域10の範囲を定めていることになる。
【0042】
印刷装置2は、ベンチマーク20〜23に対する印字ヘッド12の位置および方向を測定するユニットを備えている。このユニットは、印字ヘッドの6つの自由度を測定する。このため、印字ヘッドの位置および方向は、ベンチマーク20に対して何らの自由度もなく固定されている直交XYZ基準フレームで表される2つのトリプレットからなる座標(x,y,z)および座標(θx,θy,θz)によって、それぞれ示されている。ここで、XYZ基準フレームのXおよびY方向は、被印刷物4の上面に平行であるのに対して、Z方向は、垂直に延びている。角度θx、θy、θzは、軸A1とそれぞれX、Y、Z方向とが成す角度に相当している。
【0043】
印字ヘッド12の位置を決定するために、この実施形態では、ペン8およびベンチマーク20〜23は、それぞれ電磁波の送信器30および受信器32を備えている。例えば、送信器30および受信器32は、略語UWBの方がよく知られているウルトラワイドバンド波の送信器および受信器である。これらの送信器および受信器のそれぞれは、送信器30と受信器32との間の波の伝播時間を測定するために、波の送信時刻および受信時刻を測定するためのタイマを備えている。
【0044】
また、制御部14は、伝播時間の測定値からペン8とそれぞれのベンチマーク20〜23との距離を決定する決定器33も備えている。
【0045】
印字ヘッドの方向は、ここでは、印字ヘッドを基準とする軸A1の方向によって示されている。従って、印字ヘッド12の方向を測定することは、角度θx、θy、θzを測定することである。このため、測定部は、次のものも備えている。
−ペン8に対して何らの自由度もなく固定されている加速度計34および磁力計36と、
−ベンチマーク20〜23のそれぞれに対して何らの自由度もなく固定されている加速度計38および磁力計40。
【0046】
例えば、加速度計34および磁力計36は、ペン8に内蔵されている。加速度計38および磁力計40は、ベンチマーク20〜23のそれぞれに内蔵されている。
【0047】
加速度計34は、軸A1と地球の重力場の局所的方向によって示される鉛直方向とが成す角度を測定する。磁力計36は、軸A1と地球の磁界の磁北とが成す角度を測定する。
【0048】
軸A1の方向測定の精度を向上するために、加速度計34および磁力計36は、ペン8の印字ヘッド12から最も遠い部分に設けられるのが好ましい。
【0049】
加速度計38は、ベンチマークを基準とする軸A2と鉛直線とが成す角度を測定する。磁力計40は、この軸A2と磁北とが成す角度を測定する。
【0050】
軸A2の方向は、被印刷物4の上面の方向を表す必要がある。このため、本明細書では、各ベンチマークは、被印刷物4上に置かれるとき、軸A2が被印刷物4の上面に正しく垂直になるようになっている。例えば、それぞれのベンチマークは、軸A2に垂直で、かつ被印刷物4の上面に直接載るようになっている、少なくとも1つの平面を備えている。各ベンチマークは、これらの平面を2つより多く持たず、かつベンチマークの他の面は、凹面であることが好ましい。ここで、各ベンチマークは、円筒形であり、その円筒形の回転軸が軸A2である。
【0051】
以下、印刷装置2の動作について、図2の方法に関して詳細に説明する。
【0052】
最初のステップ50では、印刷される画像が、メモリ16に記録されることが好ましい。このため、例えば、ペン8は、インタフェース18を介してコンピュータに接続されている。
【0053】
次いで、ステップ52では、ベンチマーク20〜23が、被印刷物4上に手で置かれる。ここでは、ベンチマーク20〜23は、印刷領域10の角を定めるように配置されている。
【0054】
ステップ54では、ペン8に電圧が加えられ、次いで印刷領域10の方に運ばれる。
【0055】
次いで、ステップ56では、ベンチマーク20〜23に対する印字ヘッド12の位置が測定される。このため、決定器33は、送信器/受信器30からベンチマーク20〜23に送信される電磁波の伝播時間を測定する。次いで、これらの伝播時間を使用して、制御部14が、印字ヘッド12からベンチマーク20〜23のそれぞれまでの距離を決定する。同様に、ステップ56では、ベンチマーク20〜23の相互の距離が測定される。これらの種々の伝播時間に基づき、制御部14は、例えば三角測量によって、XYZ基準フレームにおける印字ヘッド12の座標(x,y,z)を決定する。
【0056】
並行して、ステップ58では、X、Y、Z方向に対する軸A1の方向も測定される。このため、加速度計34および磁力計36は、それぞれ鉛直線および磁北に対する軸A1の方向を測定する。同時に、ベンチマーク20〜23のそれぞれの加速度計38および磁力計40は、それぞれ鉛直線および磁北に対する軸A2の方向を測定する。次いで、これらの測定値は、制御部14に伝達され、この制御部14は、これらの値を組み合わせて、XYZ基準フレームにおける軸A1の角座標(θx,θy,θz)を取得する。
【0057】
ペン8の位置および方向測定値に基づき、ステップ60では、制御部14は、印字ヘッド12から被印刷物4までの垂直距離(図1)、および軸A1と垂直方向Zとの角θzの値を決定する。
【0058】
ステップ62では、制御部14は、ペンが被印刷物4の面にほぼ垂直のインク射出許可円錐内にあるかどうかを調べる。このため、例えば、距離および角θzの絶対値は、それぞれ予め定められている閾値S1およびS2と比較される。距離が閾値S1より大きい場合、または角θzの絶対値が閾値S2より大きい場合、ステップ64において、印字ヘッド12から被印刷物4へインクを射出するのが、自動的に防止される。従って、閾値S1およびS2は、インク射出許可円錐を画定している。ペンがこの円錐内にない場合、すなわち被印刷物4から遠すぎるか、またはこの被印刷物に対して傾き過ぎている場合、印刷を適正に行うことができないので、印刷は、中止されなければならない。
【0059】
逆にペンが円錐内にある場合、続いてステップ66に進み、被印刷物4上のインクの堆積点P(図1)の座標を計算する。点Pは、印字ヘッド12が射出するインクが堆積する、印刷領域10の位置である。点Pの座標は、印字ヘッドの座標(x,y,z)および座標(θx,θy,θz)から得られる。例えば、点Pの座標は、印字ヘッドから射出されるインクの軌道と、印刷領域10との交点の座標を計算することによって得られる。
【0060】
次いで、ステップ68では、制御部14は、メモリ16に記録されている、点Pに関係している画像の点を特定する。このために、各ベンチマークと像点に関する予め定められている関係が使用される。
【0061】
例えば、画像の点がまだ特定されていない場合、動作70の間、制御部14は、ペン8に対する種々のベンチマーク20〜23の位置から、印刷領域10のサイズを計算する。次いで、この動作70中に、制御部14は、XYZ基準フレームで表されている点Pの座標を、印刷される画像のピクセルに対応する座標に変換するために使用できる伸縮係数を計算する。例えば、X方向およびY方向にそれぞれ沿った2つの伸縮係数CxおよびCyが、次の式を用いて計算される。
x=(Limg/L)
y=(Lgimg/Lg)
上式で、LimgおよびLgimgは、印刷される画像のそれぞれ幅および長さである。
【0062】
従って、ベンチマーク間の間隔は、印刷画像の寸法を決定する。言い換えると、ベンチマーク間の間隔が広くなればなるほど、印刷画像は大きくなる。逆に、ベンチマーク相互間が近くなればなるほど、印刷画像は小さくなる。本明細書では、全ての例において、印刷画像は、印刷領域全体を占有する。
【0063】
この特定の例では、印刷領域および印刷される画像が長方形なので、伸縮係数CxおよびCyは、点Pの座標(x,y)にかかわらず一定である。
【0064】
しかし、印刷領域と印刷される画像が同じ形状でない(例えば、定められている印刷領域が台形であり、印刷される画像は長方形である)場合、画像が常に印刷領域を完全に満たすように、伸縮係数CxおよびCyは、点Pの座標(x,y)に応じて変わる。
【0065】
伸縮係数CxおよびCyが決定されると、動作72中に、それらの伸縮係数を使用して、堆積位置の座標(x,y)から印刷されるピクセルの座標が得られる。例えば、xおよびyの座標に、それぞれ伸縮係数CxおよびCyを掛け算するだけで得られる。
【0066】
印刷されるピクセルが特定されると、ステップ74中に、制御部14は、ステップ68において特定されたピクセルを印刷するように印字ヘッドに命令する。このステップ中に、ペン8の測定方向に応じて、被印刷物に射出されるインク量が調節されることが好ましい。
【0067】
次いで、ステップ77中に、印刷されたピクセルの座標が、例えばメモリ16などに記憶され、次いで、制御部14は、全ての画像ピクセルが既に印刷されているか、それともまだ印刷されていないかを調べる。
【0068】
全てのピクセルが既に印刷されている場合、ステップ78に進み、印刷プロセスは自動的に終了する。次いで、ペンの電源が切られ、ベンチマーク20〜23は、被印刷物4から取り去られる。被印刷物4への画像の印刷が終了する。
【0069】
逆に、まだ全てが印刷されていない場合には、ステップ80中に、操作者は、印刷領域10の印刷がまだ行われていない場所の方に、ペン8を手で動かす。このステップ80の完了時に、印刷される画像の全てのピクセルが被印刷物4上に印刷されていない限り、ステップ56〜80は繰り返される。
【0070】
図3は、印字ヘッド12の位置および方向を測定するためのユニットが異なる点を除いては、印刷装置2と全く同じ印刷装置90を示している。より具体的には、今度の測定部は、少なくとも1つの3軸磁界源、および少なくとも1つの3軸磁気センサを用いて作成されている。
【0071】
「3軸磁界源」は、同一直線状にない少なくとも三つの異なる方向に、磁界を送信できる磁界源のことである。通常、これらの伝達方向は、互いに直交している。例えば、このような3軸磁界源は、三つの互いに直交する巻線軸の周りにそれぞれ巻かれた三つのコイルを用いて作成されている。例えば、各コイルの巻線は、三つの巻線軸の交点Oの各側にほぼ同等に分散されている。このような3軸磁界源は、遠方界において、点Oを中心とする三つの磁気双極子として、モデル化することができる。点Oからの距離が、3軸磁界源の最大寸法の少なくとも3〜4倍であるとき、遠方界にいると見なされる。3軸磁界源の最大寸法は、例えば、コイルの最大長に等しい。3軸磁界源は、伝達軸のそれぞれに沿って同時に、または時間的に順次に磁界を送信する。
【0072】
「3軸磁気センサ」は、相互に同一直線状にない少なくとも三つの測定軸上の磁界の大きさを測定できるセンサのことである。通常、これらの測定軸は、互いに直交している。このような3軸磁気センサは、例えば、コイルが、磁界を送信するためではなく、磁界の大きさを測定するために使用されるということを除いて、3軸磁界源と同様に作成されている。
【0073】
図3の実施形態では、ペン8は、ペン8と同じペン92によって置換されている。しかしながら、加速度計34および磁力計36は、3軸磁気センサ94によって置換されている。この3軸磁気センサ94は、ペン92に付加され、例えばこのペンに内蔵されている。
【0074】
ベンチマーク20〜23は、ベンチマーク96〜99と置換されている。これらのベンチマーク96〜99は、加速度計38および磁力計40が、ベンチマーク96においては3軸磁界源102によって、ベンチマーク97〜99においては、3軸磁気センサ104によって置換されていることを除いて、ベンチマーク20〜23と全く同じである。
【0075】
送信器30および受信器32は、ペンとベンチマーク96〜99とのデータの交換を可能にするために設けられている。このデータ交換は、例えば3軸磁界源102と3軸磁気センサ104とを、時間同期させるために使用される。
【0076】
決定器33は、連立方程式を解くことにより、ベンチマーク96に何らの自由度なく固定されているXYZ基準フレームにおける印字ヘッド12の位置および方向を決定する。この連立方程式は、3軸磁界源102と3軸磁気センサ94との間の磁気相互作用をモデル化することにより得られる。この連立方程式においては、印字ヘッドの座標(x,y,z)および座標(θx,θy,θz)は、未知数である。この連立方程式についての詳細なデータについては、特許文献5(EP1,502,544)に見ることができる。また、特許文献6(FR09,53,462)を参照することもできる。
【0077】
印刷装置90の動作は、印字ヘッドの位置および方向の測定の仕方が異なることを除いて、図2に関して述べた動作と全く同じである。
【0078】
図4は、例えば少なくとも1つの中継マーカを備えていることを除いて、印刷装置90と全く同じ印刷装置110を示す。図4を簡単にするために、中継マーカ112を、1つだけ示している。
【0079】
中継マーカ112は、印字ヘッドの位置および方向を測定するために使用される信号の電力を必ずしも増大することなく、印刷領域10の寸法を拡大する働きをする。より具体的には、この実施形態において、ベンチマーク96に内蔵されている3軸磁界源102から送信される磁界の実用範囲は、カバレッジエリア114によって示されている。ここでは、このカバレッジエリア114は、ベンチマーク97および98を含むほど十分に広くはないと想定している。
【0080】
中継マーカ112は、他のベンチマークおよびペン92とデータを交換するための送信器/受信器32を備えている。また、この中継マーカ112は、3軸磁界源116も備え、この3軸磁界源は、例えば3軸磁界源102と全く同じである。この3軸磁界源116の実用範囲は、カバレッジエリア118で示されている。中継マーカ112は、自装置のカバレッジエリア118がベンチマーク97および98を含むように、カバレッジエリア114内に設けられている。さらに、ペン92は、カバレッジエリア118内にあり、カバレッジエリア114内にはない。
【0081】
最後に、中継マーカ112は、例えば3軸磁気センサ104と全く同じ、3軸磁気センサ120を備えている。
【0082】
また、ペン92内には、座標変換部122も設けられている。
【0083】
ベンチマーク97、98およびペン92が、もっぱらカバレッジエリア118内だけにあるので、これらのベンチマーク97、98およびペン92の位置および方向は、中継マーカ112に対して何らの自由度なく固定されているX’Y’Z’基準フレームで表される(図4は、X’方向およびY’方向だけを示している)。しかしながら、中継マーカ112は、3軸磁気センサ120を備えているので、ベンチマーク96に対するこの中継マーカ112の位置および方向を測定する。これらの測定値から、変換部122は、XYZ基準フレームにおける中継マーカ112の位置および方向が分かっているので、X’Y’Z’基準フレームで表されているペン92の座標(x’,y’,z’)を、XYZ基準フレームで表される座標(x,y,z)に変換する。これ以降の印刷装置110の動作は、印刷装置90の動作と全く同じである。
【0084】
多数の他の実施形態も、実施可能である。特に、インクジェット印刷以外の他の種類の印刷も、実施可能である。例えば、印字ヘッドを、熱転写によって、電子写真または他の方法によって印刷できる、別の印字ヘッドに置換することができる。
【0085】
被印刷物は、任意の形状、鉛直線に対する任意の傾き、および任意の大きさ、あるいは任意の被印刷物の材質を有してもよい。例えば、被印刷物は、1枚の紙、硝子板、壁、天井、裏地であってもよい。被印刷物の材質に、インクだけを必要に応じて適合させればよい。被印刷物が鉛直線に対して傾いているとき、ベンチマークは、これを被印刷物4に取り付ける手段を備えていることが好ましい。例えば、被印刷物と接触するようになっているこのベンチマークの平らな面は、このベンチマークを被印刷物に接着させ、次いで、このベンチマークを被印刷物から手で取り外せる接着剤で覆われている。
【0086】
印刷領域が、印字ヘッドの位置および方向を測定するために使用する信号の範囲より大きい場合、中継マーカを使用する代わりに、ベンチマークを、より大きい電力、およびより広い範囲に届く信号を送信できるベンチマークと、置換してもよい。
【0087】
ベンチマークの数は、4つより多くてもよい。例えば、4つを超えるベンチマークは、例えば5角形の印刷領域などの、角が4つより多い印刷領域の範囲を定めるのに役立つ。
【0088】
また、ベンチマークの数は、4つより少なくてもよいが、簡略化した場合でも、1つは必要である。例えば、図3の実施形態では、印刷装置90のベンチマーク97〜99を削除しうる。しかし、ベンチマークが1つの場合、伸縮係数は、もはや2つのベンチマーク間の距離の関数ではなくなる。従って印刷領域の寸法は、一定か、または画像の寸法に等しいと体系的に想定するか、または画像の寸法だけから決定する。
【0089】
替わりに、ベンチマークと画像のピクセルとを関係付ける予め定められている関係は、1つ以上の第1のベンチマークに関してだけ予め記録されており、1つ以上の第2のベンチマークに関しては、予め記録されていない。例えば、第1のベンチマークが1つだけあると想定する。この場合、計算によって、第2のベンチマークに関する予め定められている関係が求められる。例えば、第2のベンチマークに関する予め定められている関係は、第1のベンチマークに対する第2のベンチマークの位置の測定値と、第1のベンチマークと画像のピクセルとを関係付ける予め定められている関係から決定される。
【0090】
被印刷物4については、印刷面が平面という特定の例について説明した。しかし、この印刷面は、必ずしも平面ではなくてもよい。例えば、半球形でもよいし、また他の隆起を有していてもよい。種々のベンチマーク間の被印刷物の形状についての知識に基づき、かつベンチマークに対するペンの位置および方向の測定から、ペンから被印刷物までの距離、および被印刷物に対するペンの方向を、決定することができる。
【0091】
ベンチマークは、必ずしも画像の角に対応しない。例えば、代替として、各ベンチマークは、画像の角以外の画像の予め定められている点に関係している。具体的には、あるベンチマークが、画像の中心に関係していてもよいのに対して、別のベンチマークは、画像の上辺の中点に関係していてもよいということである。
【0092】
一方にペンがあり、他方にベンチマークがある図に関して説明してきた種々の要素の配置は、変更することができる。例えば、代替として、制御部およびメモリを、ベンチマークに内蔵することができる。一般に、ペンの要素によって行われると本明細書で説明している機能は、ペンとベンチマークとの間で異なるように分散されていてもよい。
【0093】
また、印刷される画像を記録しているメモリも、必ずしもペンにも、ベンチマークの1つの中にもある必要はない。例えば、インタフェース18を介してペン8と通信できるコンピュータ内に配置されていてもよい。この場合、ペンは、必要に応じて、印刷する画像のデータを読み出すことができる。
【0094】
また、磁界源をベンチマークの中ではなく、ペンの中に入れることも可能であり、少なくとも1つがベンチマーク内に、少なくとも1つがペン内にある複数の磁界源を同時に使用することも可能である。
【0095】
代替として、3軸磁界源116および3軸磁気センサ120は、巻線軸が同一直線状にない3つのコイルからなる同じ3軸セットから作成される。この場合、3軸セットは、ソースモードまたはセンサモードで制御される。3軸セットのコイルがソースモードで制御されるとき、コイルは、電力を供給されて、磁界を生成する。ソースモードでは、3軸セットは、上述の3軸磁界源の1つと全く同じである。センサモードでは、コイルに電圧は加えられない。その結果、コイルを通過する周囲の磁束により電流が生じ、それによって周囲の磁界を測定できる。センサモードでは、3軸セットは、上述の3軸磁気センサの1つと全く同じである。
【0096】
ウルトラワイドバンド波以外の種類の波も使用することができる。例えば、音波を使用することができる。
【0097】
伸縮係数は、例えば2つのベンチマーク間の距離だけから決定することができる。この場合には、ベンチマークは、印刷される画像の対角線に印をつけるために使用され、この対角線の両端に置かれることが好ましい。
【0098】
別の代替形態では、伸縮係数の計算が省略される。この場合、印刷領域のサイズは、一定であるか、またはメモリ16に記録されている画像の寸法のみによって決定される。
【0099】
代替として、印字ヘッドの位置だけが測定され、その方向は測定されない。この場合、未知数の数が減少するので、磁気センサおよび磁界源の軸数を、減少させることができる。例えば、3軸磁気センサまたは3軸磁界源の代わりに、2軸磁気センサまたは2軸磁界源を使用することができる。また、使用する軸数も、3軸磁気センサまたは3軸磁界源の数を減らすことによって、減らすことができる。
【0100】
また、ペンの方向は、4元数によって表してもよい。
【0101】
各磁界源が、特定の周波数パターンで周期的磁界を継続的に生成する場合、送信器30および受信器32を介しての3軸磁界源102と3軸磁気センサ94および104との時間同期は、不要である。その代わりに、同期検出を使用することができる。
【0102】
また、印刷方法も変更することができる。例えば、印刷の自動中断を除くことができる。この場合、被印刷物4への印刷は、操作者によって停止され、自動的には停止されない。
【0103】
ステップ77を、印刷領域の同じ点に複数のインクの層を連続して重ねて印刷できるように変更することができる。例えば、ステップ77中、被印刷物4の点Pに印刷するたびに、印刷したピクセルおよび印刷した色を記録する。次いで、ペン8の点Pの2回目の通過中に、制御部14は、この点Pに印刷する2番目のインクを自動的に選択する。ペンが同じ点を通過するたびに堆積させるインクは、異なっても、異ならなくてもよい。同じ点に堆積される連続する層のインクは、混じり合っても、混じり合わなくてもよい。印刷領域の各点Pに塗料の層が全て堆積するまで、印刷を停止しない。
【0104】
ステップ62は、印刷を自動的に防止する条件に関して、他の決定基準に従うように変更することができる。例えば、簡易化した代替形態では、閾値S1またはS2との比較が省略される。
【0105】
別の代替形態では、測定距離hが予め定められている閾値S3より小さいとき、印刷は自動的に防止される。高さhがこの閾値S3より低くなると、ペン8が被印刷物4に近すぎて、この印刷物と接触する恐れがあることを、ユーザに警告するために、例えば音響信号などの警報が自動的にトリガされる。被印刷物4にペン8が接触すると、被印刷物を損傷する恐れがあるからである。
【0106】
ステップ68中の印字ヘッドの制御は、軸A1の方向の関数でもよい。例えば、インクの流速またはインクの射出量は、鉛直線に対する軸A1の方向に応じて調節される。逆に、測定方向の関数としてのインクの射出量の調節を、省略してもよい。
【0107】
別の実施形態では、印刷装置2は、同じ印刷領域内に同じ画像を同時に印刷するために使用される複数のペンを備えている。この場合、複数の操作者が、同じ印刷領域内に同時に同じ画像を印刷することに取り組むことができる。それぞれのペンによって印刷される同じ画像の種々の部分を完全に揃えて配置するためには、それぞれのペンの位置を、ベンチマークに関係する同じ基準フレームで測定するだけで十分である。
【0108】
特許請求の範囲の従属項に記載する特徴については、画像の印刷を自動的に防止できる特徴から独立して実施してもよい。具体的には、ペンが印刷物から遠すぎるか、または印刷物に対して傾きすぎている場合に、画像の印刷を防止する特徴を実施する必要なしに、中継マーカを使用することができる。
【符号の説明】
【0109】
2、90、110 印刷装置
4 被印刷物
8、92 ペン
10 印刷領域
12 印字ヘッド
14 制御部
16 メモリ
18 インタフェース
20〜23、96〜98 ベンチマーク
30 送信器
32 受信器
34、38 加速度計
36、40 磁力計
50〜68、74〜80 ステップ
70、72 動作
112 中継マーカ
114、118 カバレッジエリア
116 3軸磁界源
120 3軸磁気センサ
122 座標変換部
A1、A2 軸
h 高さ
L 幅
Lg 長さ
P 点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有形の被印刷物上に設けられる印刷領域内に画像を印刷するための携帯装置であって、前記装置は、
−前記印刷領域内に手で置くことができ、かつ印字ヘッド(12)を備える少なくとも1つのペン(8;92)と、
−前記被印刷物上に手で置くことができる少なくとも1つの取り去り可能なベンチマーク(20〜23;96〜99)であって、前記被印刷物上の前記ベンチマークの位置に関係なく予め定められている関係によって、印刷される画像の対応する点に関係している前記ベンチマーク(20〜23;96〜99)と、
−前記ベンチマークに対する前記印字ヘッドの位置を測定するようになっている、前記印字ヘッドの位置を測定するための測定部と、
−前記印字ヘッドを制御し、予め定められている像点の前記被印刷物への印刷を制御するようになっている制御部(14)であって、
・前記ベンチマークに対する前記印字ヘッドの実際の測定位置、および
・像点と前記ベンチマークとを関係付ける予め定められている関係
に従って、印刷する前記像点を決定するようになっている前記制御部(14)とを備え、
前記制御部(14)は、前記印字ヘッドの位置の測定値から、前記ペンと前記被印刷物との距離を決定し、前記距離が予め定められている閾値より大きい場合に、前記被印刷物への前記画像の印刷を防止するようになっていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記ベンチマークに対する前記印字ヘッドの方向を測定するようにもなっており、前記制御部(14)は、前記測定方向に応じて、前記印字ヘッドを制御するようにもなっていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、
−少なくとも2つのベンチマーク(20〜23;96〜99)と、
−前記2つのベンチマーク間の距離を測定するようになっている前記測定部と、
−前記距離に比例して前記画像を拡大または縮小するために、前記2つのベンチマーク間の前記測定距離に応じても、印刷する像点を決定するようになっている前記制御部(14)とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
−前記装置は、前記ベンチマークに関係なく、手で置くことができる少なくとも1つの中継マーカ(112)を備え、前記中継マーカは、前記被印刷物に対するその位置に関係なく予め定められている関係によっては、像点に関係付けられておらず、
−前記測定部は、
・前記中継マーカを基準とする基準フレームにおける前記ペンの位置を検出するためのセンサ(94)と、
・前記ベンチマークに対する前記中継マーカの位置を検出するためのセンサ(120)と、
・前記中継マーカを基準とする前記基準フレームで表されている前記ペンの測定位置を、前記ベンチマークに対する位置に変換するための変換器(122)も備えている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記測定部は、
−少なくとも1つの磁気センサ(94)、および少なくとも1つの磁界源(102;116)であって、前記磁気センサまたは前記磁界源の一方が、前記ペンに内蔵されているのに対して、他方は、前記ベンチマークまたは前記中継マーカに内蔵されている、前記磁気センサおよび前記磁界源と、
−前記磁界源から放射される磁界について前記センサが読み取った測定値から、前記ベンチマークまたは前記中継マーカに対する前記印字ヘッドの位置を決定するための決定器(33)とを備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記磁気センサ(94)は、3軸磁気センサであり、前記磁界源(102;116)は、3軸磁界源であることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記測定部は、
−前記ペンと前記ベンチマーク、または前記中継マーカとの間で伝播されるようになっている波の、少なくとも1つの送信器(30)および1つの受信器(32)であって、前記送信器または前記受信器の一方は、前記ペンに内蔵されているのに対して、他方は、前記ベンチマークまたは前記中継マーカに内蔵されおり、
−前記送信器と前記受信器との間の前記波の伝播時間から、前記ベンチマークまたは前記中継マーカに対する前記印字ヘッドの位置を決定するための決定器(33)を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
有形の被印刷物上に設けられる印刷領域内において、前記被印刷物上に予め定められている像点を印刷するために、前記印刷領域内に手で置くことができるペンに内蔵されている印字ヘッドを使用して、画像を印刷する方法であって、
−前記被印刷物上に、少なくとも1つの取り去り可能なベンチマークであって、前記被印刷物上の前記ベンチマークの位置とは関係なく予め定められている関係によって、印刷される前記画像の対応する点に関係している前記ベンチマークを手で置くステップ(52)と、
−前記ベンチマークに対する前記印字ヘッドの位置を測定するステップ(56)と、
−印刷する像点を決定するステップ(68)であって、
・前記ベンチマークに対する前記印字ヘッドの実際の測定位置、および
・像点と前記ベンチマークとを関係付ける予め定められている関係に応じて決定するステップと、
−前記予め定められている像点を前記被印刷物上に印刷するために、前記印字ヘッドを制御するステップとを有し、かつ
前記印字ヘッドの位置の測定値から、前記ペンと前記被印刷物との距離を決定するステップ(60)と、前記距離が予め定められている閾値より大きい場合に、前記被印刷物への前記画像の印刷を防止するステップ(64)とを備えていることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記被印刷物に対する前記印字ヘッドの方向を測定するステップと、前記ベンチマークに対する前記印字ヘッドの測定方向が、頂角および予め定められている方向によって画定されるインク射出許可円錐内に含まれていない場合に、前記被印刷物への前記画像の印刷を防止するステップとを備えていることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記被印刷物に対する前記ペンの方向を測定するステップ(58)と、測定方向に応じて前記被印刷物に射出するインク量を調節するステップとを備えていることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
電子計算機が命令を実行する時、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法を実施する命令を備えていることを特徴とするデータ記録媒体(16)。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置の構成要素であるペン(8;92)であって、前記ペンは、印字ヘッド(12)を備えており、かつ前記印刷領域内に手で置くことができ、前記ベンチマークに対する前記印字ヘッドの位置を測定するようになっている前記測定部の要素の少なくとも一部(30;94)を組み込んであり、前記ペンは、前記印字ヘッドの位置の測定値から、前記ペンと前記被印刷物との距離を決定し、前記距離が予め定められている閾値より大きい場合に、前記被印刷物への前記画像の印刷を防止するようになっている制御部(14)を備えていることを特徴とするペン。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置の構成要素である制御部(14)であって、前記制御部(14)は、前記印字ヘッドの位置の測定値から、前記ペンと前記被印刷物との距離を決定し、前記距離が予め定められている閾値より大きい場合に、前記被印刷物への前記画像の印刷を防止するようにプログラムされていることを特徴とする制御部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−510738(P2013−510738A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538325(P2012−538325)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【特許番号】特許第5143976号(P5143976)
【特許公報発行日】平成25年2月13日(2013.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067218
【国際公開番号】WO2011/058061
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】