説明

画像印刷装置およびその動作制御方法

【目的】 複製が禁止されている画像の複製を比較的容易に禁止する。
【構成】 複製を禁止する画像が記録されているときにはその印刷物の裏面に複製禁止コードを記録する。印刷物を原稿台上に置き,記録されている画像が読み取られる(ステップ41)。裏面に複製禁止コードが記録されていれば,複製禁止コードが読み取られる(ステップ42)。複製禁止コードが読み取られると(ステップ43でYES),読み取られた画像の印画が禁止される(ステップ44)。複製禁止コードが読み取られないと(ステップ43でNO),画像が印画される(ステップ46)。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】この発明は,画像を印画する画像印刷装置およびその動作制御方法に関する。
【0002】
【発明の背景】低価格化にともない,スキャナおよびプリンタは一般家庭にまで普及してきた。スキャナを用いて写真などの可視記録媒体(ポスター,カレンダなど電子的処理を行うことなく記録されている画像を見ることができる媒体)に記録されている画像を読み取り,プリンタを用いて印刷することが簡単にできるようになった。このために著作権のある可視記録媒体,肖像権のある可視記録媒体までも著作権者,肖像権者に無断で違法に複写することができてしまう。
【0003】違法な複写を防ぐために,複写を禁止する画像を表す画像データをあらかじめ記憶しておく装置もある。このような装置では,読み取られた画像によって表される画像データがあらかじめ記憶されている画像データと一致するとプリント処理が禁止される。
【0004】しかしながら,このような装置では,禁止すべき画像の数が多くなるほど画像データを記憶するメモリの容量が多くなってしまう。
【0005】また,複写を禁止すべき可視記録媒体に記録されている画像に特殊なドットを付加する装置もある。このような装置では,画像の読み取りにおいて特殊なドットが検出されると,画像のプリントが禁止される。
【0006】しかしながら,このような装置では,画像に特殊なドット処理を施すために画像の劣化は否めない。
【0007】いずれにしても,可視記録媒体に記録されている所定の画像について比較的簡単に複写を禁止することはできない。
【0008】
【発明の開示】この発明は,可視記録媒体に記録されている所定の画像の複写を比較的簡単に禁止することを目的とする。
【0009】第1の発明による画像印刷装置は,表面に画像が,裏面に複製禁止を表すコードがそれぞれ記録されている可視記録媒体が配置される画像読み取り面,上記画像読み取り面に配置された上記可視記録媒体を撮像し,上記可視記録媒体に記録されている画像を表す画像データを出力する撮像手段,上記撮像手段から出力される画像データによって表される画像を印画する印画手段,上記複製禁止コードを読み取るコード読み取り手段,および上記コード読み取り手段によって,上記画像読み取り面に配置された可視記録媒体の複製禁止コードが読み取られたことに応答して上記印画手段による印画処理を禁止する印画制御手段を備えていることを特徴とする。
【0010】第1の発明は,上記装置に適した方法も提供しているすなわち,この方法は,画像読み取り面に配置された可視記録媒体を撮像し,上記可視記録媒体に記録されている画像を表す画像データを得,撮像により得られた画像データによって表される画像を印画する画像印刷装置において,上記画像読み取り面に配置された可視記録媒体の裏面に記録されている複製禁止コードを読み取り,上記複製禁止コードが読み取られたことに応答して,上記印画処理を禁止するものである。
【0011】第1の発明によると,上記可視記録媒体には表面に画像が裏面には複製禁止コードがそれぞれ記録されている。上記可視記録媒体が上記画像読み取り面に配置されると,上記撮像手段によって上記可視記録媒体の表面に記録されている画像が読み取られる。また,上記可視記録媒体の裏面に上記複製禁止コードが記録されているときには,その複製禁止コードが読み取られる。
【0012】上記複製禁止コードが記録されている可視記録媒体は,画像の複製が禁止されるものであるから,上記複製禁止コードを読み取ることができる。この場合には,その画像の印画処理が禁止される。画像の複製が禁止されていない場合には,上記可視記録媒体の裏面には複製禁止コードは記録されていない。上記複製禁止コードは読み取られない。この場合には,その画像の印画処理は禁止されず,印画される。
【0013】所定の画像について比較的簡単に無断複製を禁止することができるようになる。また,上記複製禁止コードは画像が記録されている表面ではなく,裏面に記録されているので,画像の劣化を生じさせることも未然に防止することができる。好ましくは,上記複製禁止コードは,複製禁止であることが分からないような記号によって構成されよう。
【0014】上記複製禁止コードは,不可視製インキを用いて上記可視記録媒体の裏面に記録されるようにしてもよい。この場合は,上記コード読み取り手段は,不可視製インキを用いて記録された複製禁止コードが読み取り可能なものとなろう。
【0015】上記複製禁止コードは不可視製インキを用いて記録されているので,ユーザは複製禁止の画像であることを推測することもできない。
【0016】悪意のあるユーザが複製禁止コードを隠して,複製禁止の画像を複製することを未然に防止することができるようになる。
【0017】上記画像読み取り面を覆うカバーをさらに設けてもよい。この場合,上記コード読み取り手段は上記カバーの内面に設けられることとなろう。
【0018】第2の発明による画像印刷装置は,与えられる画像データによって表される画像を可視記録媒体の表面に記録する画像記録制御手段,上記画像が複製禁止コードかどうかを判定する判定手段,および上記可視記録媒体の裏面に複製禁止を示すコードを記録するコード記録制御手段を備えていることを特徴とする。
【0019】第2の発明は,上記装置に適した動作制御方法も提供している。すなわち,この方法は,与えられる画像データによって表される画像を可視記録媒体の表面に記録し,上記画像が複製禁止かどうかを判定し,複製禁止と判定されたことに応じて,上記可視記録媒体の裏面に複製禁止コードを記録するものである。
【0020】第2の発明によると可視記録媒体の表面に画像が記録される。この画像が複製禁止のものかどうかが判定(ユーザに複製禁止であることを入力させ,その入力に応じて判定してもよいし,画像データに複製禁止であることを示すコードを付加し,その複製禁止コードを読取ることにより判定してもよい)される。複製禁止であれば,その画像が記録された可視記録媒体の裏面に複製禁止コードが記録される。
【0021】第2の発明によると,可視記録媒体の表面に記録された画像が複製禁止のものであると,その可視記録媒体の裏面に複製禁止コードが記録される。可視記録媒体の画像を読み取り印加しようとするときに複製禁止コードが読み取られるとその画像の印画処理を禁止させることができるようになる。
【0022】
【実施例の説明】図1は,画像印刷装置の外観を示している。
【0023】この画像印刷装置は,写真などに記録された画像を読み取り,用紙に印画(複写)できるものである。また,この画像印刷装置は,パーソナル・コンピュータその他装置から与えられる画像データを入力し,入力した画像データによって表される画像を印画することもできる。
【0024】さらに,この画像印刷装置においては,読み取られた画像が複製禁止かどうかを判定することもできる。読み取られた画像が複製禁止と判定されると,その読み取られた画像の印画が禁止される。この実施例においては,複製禁止の画像は,その画像が記録されている写真などの印刷物の裏面に複製禁止コードが記録されている。複製禁止コードが読み取られると,画像の印画が禁止される。
【0025】画像印刷装置1の本体8の上面には,透明なガラス板から構成されている原稿台4が設けられている。原稿台4内には,画像を読み取るための画像読み取りセンサが設けられている。本体8の上面の右上隅には,マーク6が形成されている。このマーク6に印刷物の右上が一致するように,印刷物が原稿台6上に置かれる。本体8内部に設けられている画像読み取りセンサにより,原稿台4に置かれた印刷物に記録されている画像が読み取られる。
【0026】本体8の一端には,原稿台4への光の入射を防ぐための原稿カバー2がその一端において開閉自在に設けられている。原稿カバー2の内面の一部には,コード読み取りセンサ3が設けられている。このコード読み取りセンサ3によって,原稿台4上に置かれた写真の裏面に記録されている複製禁止コードが読み取られる。
【0027】本体8の前面には,開口7が形成されている。この開口7から,読み取られた画像が印画された用紙9が排出される。また,本体8の前面の右下には,画像印刷装置1の電源スイッチ5が設けられている。
【0028】図2は,画像印画装置1の電気的構成を示すブロック図である。図3は,画像印画装置1において画像を印画するときの処理手順を示すフローチャートである。
【0029】画像印画装置1の全体の動作は,MPU(micro processing unit )16によって統括される。
【0030】上述したように画像印画装置1の電源スイッチ5の電源のオン,オフを示す信号はCPU14に入力する。また,CPU14には,メモリ15が外付けされている。
【0031】画像印画装置1には,SCSI(small computer system interface )13が設けられている。このSCSI13にはパーソナル・コンピュータ(図示略)が接続されている。パーソナル・コンピュータから画像データその他の制御データがSCSI13を介して画像印画装置1に入力する(ステップ31)。
【0032】画像の記録の場合には,パーソナル・コンピュータから画像データとともに画像の記録指令を示す制御データが与えられる。また,与えられた画像データによって表される画像が複製禁止画像(著作権フリーでない画像,肖像権のある画像など)の場合には,画像データに複製禁止を表すデータも付加されている。
【0033】パーソナル・コンピュータから与えられた画像データはCPU14を介してメモリ15に入力し,一時的に記憶される。画像データはメモリ15から読み出され,DSP(digital signal processor)17に入力する。DSP17において,RGB画像データからYMC画像データへの色再現変換,印画ヘッド19に応じた色補正処理その他の画像データ処理が行われる(ステップ32)。
【0034】入力した画像データに複製禁止を表すデータが付加されているかどうかがCPU14において判定されている。複製禁止を表すデータが付加されているときには(ステップ33でYES),複製禁止データがASIC(application specific integrated circuit )18からコード記録ヘッド20に入力する。コード記録ヘッド20により,用紙の裏面に複製禁止コードが印字される(ステップ34)。入力した画像データに複製禁止を表すデータが付加されていなければ(ステップ33でNO),ステップ34の処理はスキップされるのはいうまでもない。
【0035】画像データはASIC18を介して印画ヘッド19に与えられる。印画ヘッド19により画像印画装置1に入力した画像データによって表される画像が用紙の表面に印画される(ステップ35)。
【0036】図4は,画像印画装置1によって用紙9の表面に印画された画像の一例を示している。画像印画装置1にパーソナル・コンピュータから画像データが与えられることにより,その与えられた画像データによって表される画像が印画されることとなる。
【0037】図5は,画像印画装置1によって用紙9の裏面に印画された複製禁止コードの一例を示している。上述したように,パーソナル・コンピュータから与えられた画像データに複製禁止を表すデータが付加されていたときには,コード記録ヘッド20により複製禁止の画像が印画された用紙9の裏面に複製禁止コード10が記録される。
【0038】後述のように用紙9の表面に記録された画像が読み取られ,その読み取られた画像が印画されるときには,裏面に記録された複製禁止コードも読み取られる。複製禁止コードが読み取られたときには,表面に記録された画像は複製禁止と判断され,その印画が禁止される。複製禁止コードが読み取られないときには,用紙9の表面に記録された画像は複製が禁止されていないものと判定され,読み取られた画像が印画される。
【0039】図6は,画像印画装置1による画像複写処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0040】上述したように複写すべき画像が記録された写真などの印刷物が,画像が記録されている面が原稿台4の面に向かうようにして原稿台4上に置かれる。画像読み取りセンサ11によって,原稿台4に置かれた印刷物に記録された画像が読み取られる(ステップ41)。また,原稿台4に置かれた印刷物の裏面に複製禁止コードが記録されていると,コード読み取りセンサ3によってその複製禁止コードが読み取られる(ステップ42)。
【0041】コード読み取りセンサ3によって複製禁止コードが読み取られると,その複製禁止コードが裏面に記録されている印刷物には複製が禁止された画像が記録されていると判定される(ステップ43でYES)。すると,画像読み取りセンサ11によって読み取られた画像の印画処理は禁止される(ステップ44)。正当権限ない複製を未然に防止することができるようになる。
【0042】コード読み取りセンサ3によって複製禁止コードが読み取られないと,その印刷物に記録されている画像は複製が禁止されていないと判定される(ステップ43でNO)。画像読み取りセンサ11によって,印刷物に記録されている画像が読み取られ,その画像を表す画像データが出力される。
【0043】画像データは,CPU14を介してメモリ15に入力し,一時的に記憶される。メモリ15から画像データが読み出され,上述したようにDSP17において画像データ処理が行われる(ステップ45)。画像データはASIC18を介して印画ヘッド19に与えられ,用紙9の表面に,読み取られた画像が印画される(ステップ46)。画像の複写が終了することとなる。
【0044】上述した実施例においては,コード読み取りセンサ3は,原稿カバー2の一部に固定されているが,コード読み取りセンサ3を原稿台4上にわたって移動可能に構成してもよい。原稿台4に置かれた印刷物の裏面の全体をスキャンすることができるようになる。複製禁止コードが印刷物の裏面のどこに記録されていても読み取ることができる。また,原稿台4上に印刷物がどのように置かれても裏面に記録されている複製禁止コードを読み取ることができるようになる。
【0045】さらに,上述した実施例においては,複製禁止コードは目で見ることができるものであったが,必ずしも目で見ることができなくともよい。
【0046】たとえば,記録されたコードが目で見ることができないが赤外線により検出することかできるような特殊なインク(一例としては,Fe2+およびCu2+のうち少なくとも一方を20重量パーセント以上有し,かつ五二酸化燐を主成分とする燐酸塩系白色結晶粉末を含有するインク)を用いる。この場合には,コード読み取りセンサ3には,赤外線発光素子と赤外線受光素子とが用いられるのはいうまでもない。
【0047】複製禁止コードが目に見えないので,複製禁止コードを悪意により削除するなどの行為を防止することができるようになる。
【0048】また,複製禁止コードが読み取られ複製が禁止されたときには,その旨をユーザに報知するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】画像印画装置の外観を示す。
【図2】画像印画装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】画像を記録するときの処理手順を示すフローチャートである。
【図4】印画された画像の一例である。
【図5】複製禁止コードの一例である。
【図6】画像複写処理の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 画像印画装置
3 コード読み取りセンサ
4 原稿台
9 用紙
10 複製禁止コード
11 画像読み取りセンサ
13 SCSI
14 CPU
17 DSP
18 ASIC
19 印画ヘッド
20 コード記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面に画像が,裏面に複製禁止を表すコードがそれぞれ記録されている可視記録媒体が配置される画像読み取り面,上記画像読み取り面に配置された上記可視記録媒体を撮像し,上記可視記録媒体に記録されている画像を表す画像データを出力する撮像手段,上記撮像手段から出力される画像データによって表される画像を印画する印画手段,上記複製禁止コードを読み取るコード読み取り手段,および上記コード読み取り手段によって,上記画像読み取り面に配置された可視記録媒体の複製禁止コードが読み取られたことに応答して上記印画手段による印画処理を禁止する印画制御手段,を備えた画像印刷装置。
【請求項2】 上記複製禁止コードは,不可視製インキを用いて上記可視記録媒体の裏面に記録されており,上記コード読み取り手段は,不可視製インキを用いて記録された複製禁止コードが読み取り可能なものである,請求項1に記載の画像印刷装置。
【請求項3】 上記画像読み取り面を覆うカバーがさらに設けられ,上記コード読み取り手段は上記カバーの内面に設けられている,請求項1に記載の画像印刷装置。
【請求項4】 与えられる画像データによって表される画像を可視記録媒体の表面に記録する画像記録制御手段,上記画像が複製禁止コードかどうかを判定する判定手段,および上記可視記録媒体の裏面に複製禁止を示すコードを記録するコード記録制御手段,を備えた画像印刷装置。
【請求項5】 画像読み取り面に配置された可視記録媒体を撮像し,上記可視記録媒体に記録されている画像を表す画像データを得,撮像により得られた画像データによって表される画像を印画する画像印刷装置において,上記画像読み取り面に配置された可視記録媒体の裏面に記録されている複製禁止コードを読み取り,上記複製禁止コードが読み取られたことに応答して,上記印画処理を禁止する,画像印刷装置の動作制御方法。
【請求項6】 与えられる画像データによって表される画像を可視記録媒体の表面に記録し,上記画像が複製禁止かどうかを判定し,複製禁止と判定されたことに応じて,上記可視記録媒体の裏面に複製禁止コードを記録する,画像印刷装置の動作制御方法。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2001−298559(P2001−298559A)
【公開日】平成13年10月26日(2001.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−108783(P2000−108783)
【出願日】平成12年4月11日(2000.4.11)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】