説明

画像取得装置

【課題】シート状の基材上に形成された薄膜パターンの画像を取得する際に、検出角を容易に変更する。
【解決手段】画像取得装置1は、中心軸Kを中心とするドラム11を有し、ドラム11の回転により外側面111に沿ってウエブ9が搬送される。画像取得装置1は、中心軸Kに平行な線状の撮像領域90に向けて光を出射する光照射部21と、撮像領域90からの光をラインセンサにて受光する受光部23とをさらに有し、光照射部21および受光部23は移動機構4により中心軸Kに垂直、かつ、互いに交差する2方向に移動する。移動機構4を制御することにより、受光部23の光軸J2とウエブ9の法線Nとのなす検出角θ2が変更されるとともに、光軸J2上においてラインセンサの受光面と共役なフォーカス位置Pが薄膜パターン上に配置される。このように、受光部23を2方向に移動する移動機構4のみにより、検出角θ2を容易に変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の基材上に形成された薄膜パターンの画像を取得する画像取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な分野において、フィルム状または板状の基材上に形成されたパターンの検査が行われている。例えば、特許文献1に開示されるパターン検査装置では、樹脂フィルム上に形成された配線パターンの検査が行われる。パターン検査装置では、光源に波長500nm以上の光のみを放射するLED(Light Emitting Diode)が用いられることにより、コントラストの良い画像が得られる。
【0003】
なお、特許文献2に開示される膜厚測定装置では、半導体レーザから透明ポリエステルフィルムに光が照射され、シリコンフォトダイオードにて正反射光強度が検出される。半導体レーザおよびシリコンフォトダイオードは、ステッピングモータにより、0°から90°の範囲内で移動し、光入射角が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−112845号公報
【特許文献2】特開2004−101505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、様々な電子機器にタッチパネルが設けられる。このようなタッチパネルの製造では、樹脂にて形成されたシート状の基材上に透明電極等の透明なパターンが形成される。基材上の透明なパターンの外観検査を行う場合、例えば、光照射部から当該基材上の撮像領域に光を照射し、受光部にて反射光を受光することによりパターンの画像が取得される。この場合に、撮像領域から受光部に至る光軸と基材の法線とのなす検出角を変更することにより、受光する光の干渉状態を変化させてコントラストの高い画像を取得することが考えられる。受光部を回動させて検出角を変更する場合、受光部を精度よく回動する機構が必要となるが、このような回動機構は設計および製作が容易ではない。したがって、受光部を回動させることなく、検出角を容易に変更する手法が求められる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、シート状の基材上に形成された薄膜パターンの画像を取得する際に、検出角を容易に変更することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、シート状の基材上に形成された薄膜パターンの画像を取得する画像取得装置であって、所定の中心軸を中心とする円筒面である外側面を有し、前記中心軸を中心として回転することにより前記外側面に沿って前記基材を搬送するドラムと、前記薄膜パターンに対して透過性を有する波長の光を、前記ドラムに保持される前記基材上において前記中心軸に平行な線状の撮像領域に向けて出射する光照射部と、ラインセンサと、前記撮像領域からの光を前記ラインセンサへと導く光学系とを有する受光部と、前記光照射部および前記受光部を前記中心軸に垂直、かつ、互いに交差する2方向に移動する移動機構と、前記移動機構を制御することにより、前記光学系の光軸と前記基材の法線とのなす検出角を変更するとともに、前記光軸上において前記ラインセンサの受光面と共役な位置を前記薄膜パターン上に配置する制御部とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像取得装置であって、前記光照射部が、前記撮像領域に平行かつ前記共役な位置を通過する軸を中心とする所定の角度範囲において前記撮像領域に向けて前記光を照射するものであり、前記軸に垂直な面上において、前記法線から前記光軸とは反対側に前記軸を中心として前記検出角だけ傾斜した角度位置が前記所定の角度範囲に含まれる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像取得装置であって、前記ドラムの前記外側面において前記中心軸を中心とする周方向の各部位における振れ量を示す補正テーブルを記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部が、前記ドラムの回転に同期して、前記移動機構を前記補正テーブルを用いて制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検出角を容易に変更することができる。また、請求項2の発明では、画像取得装置の制御を簡素化することができ、請求項3の発明では、ラインセンサの受光面と共役な位置を薄膜パターン上に常時精度よく配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像取得装置の概略構成を示す図である。
【図2】撮像ユニットを示す図である。
【図3】検出角の変更動作を説明するための図である。
【図4】検出角の変更動作を説明するための図である。
【図5】プロファイルの例を示す図である。
【図6】画像取得装置の機能構成を示すブロック図である。
【図7】画像取得装置の動作の流れを示す図である。
【図8】撮像ユニットの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る画像取得装置1の概略構成を示す正面図である。画像取得装置1は、シート状の基材上に形成された多層の薄膜パターンの画像であるパターン画像を取得し、パターン画像に基づいて薄膜パターンの検査を実行する。図1では、基材は、樹脂フィルムのウエブ、すなわち、連続シートである。薄膜パターンは、例えば、透明電極膜であり、本実施の形態では、基材および薄膜パターンは、透明膜により覆われる。実際には、基材上に反射防止膜等の他の層も設けられる。
【0013】
以下の説明では、薄膜パターンを単に「パターン」と呼び、基材および基材上の膜をまとめて「ウエブ9」または「検査対象」と呼ぶ。ウエブ9は、例えば、静電容量型のタッチパネルの製造に用いられる。なお、検査対象(ウエブ9)の大部分は基材であることから、検査対象の取り扱い等に関しては、検査対象と基材とは厳密に区別することなく説明を行っている。
【0014】
画像取得装置1は、ドラム11と、撮像ユニット2と、移動機構4と、コンピュータ(図示省略)とを備える。ドラム11は、図1中のY方向に平行な所定の中心軸Kを中心とする円筒面である外側面111を有し、ドラム11には減速機構を介してモータ112が接続される。画像取得装置1は、Y方向に長い2つのローラ121をさらに備え、2つのローラ121はドラム11の下方において、Y方向に垂直なX方向におけるドラム11の前後((+X)側および(−X)側)にそれぞれ配置される。ウエブ9は(−X)側のローラ121、ドラム11および(+X)側のローラ121に順に架けられる。
【0015】
モータ112の駆動によりドラム11が中心軸Kを中心として図1中の時計回りに回転することにより、外側面111に沿ってウエブ9が搬送される。すなわち、ウエブ9の各部位は(−X)側のローラ121、ドラム11および(+X)側のローラ121を順に経由して移動する。ドラム11には、回転角度を検出するエンコーダ113(後述の図6参照)が設けられる。なお、ウエブ9の移動方向において(−X)側のローラ121の上流側には検査前のウエブ9をロールとして支持する供給部が設けられ、(+X)側のローラ121の下流側には検査後のウエブ9をロールとして支持する回収部が設けられる。
【0016】
移動機構4は、画像取得装置1の天板10に取り付けられるX方向移動部41と、X方向移動部41の移動体に固定されるZ方向移動部42とを有し、Z方向移動部42の移動体に撮像ユニット2が固定される。X方向移動部41は、モータ、ボールねじ、ガイドレール等を有し、モータの駆動によりZ方向移動部42がX方向に移動する。Z方向移動部42も同様に、モータ、ボールねじ、ガイドレール等を有し、モータの駆動により撮像ユニット2がX方向およびY方向に垂直なZ方向に移動する。このように、移動機構4は、中心軸Kに垂直、かつ、互いに交差する2方向(図1では、直交するX方向およびZ方向)に撮像ユニット2を移動する機構である。
【0017】
図2は、撮像ユニット2を示す図である。図2では、光照射部21についてのみ、受光部23の光軸J2を含む面における断面を示している。撮像ユニット2は、ドラム11に保持されるウエブ9上における線状の(Y方向に伸びる線状の)撮像領域90に向かって光を出射する光照射部21と、撮像領域90からの反射光を受光する受光部23とを備える。受光部23は、複数の受光素子が直線状に(1次元に)配列されたラインセンサ231と、撮像領域90からの光をラインセンサ231へと導く光学系232とを備え、ラインセンサ231および光学系232は鏡筒233の内部に設けられる。図2では、Z方向に平行な光学系232の光軸J2上においてラインセンサ231の受光面と光学的に共役な位置(以下、「フォーカス位置」という。)を点Pにて示している。
【0018】
光照射部21は、パターンに対して透過性を有する波長の光を出射する。光は、ドラム11の中心軸Kに平行な線状の撮像領域90に少なくとも照射される。具体的には、光照射部21では、撮像領域90に平行かつフォーカス位置Pを通過する軸(仮想的な軸であり、以下、「仮想軸」という。)を中心とする円弧状の支持部210が設けられ、支持部210は受光部23の鏡筒233に固定される。支持部210には複数のLED211が配列され、複数のLED211からの光は拡散板212を介して均一化されて撮像領域90に照射される。このように、図2の光照射部21は、仮想軸を中心とする所定の角度範囲αにおいて撮像領域90に向けて光を照射するものである。
【0019】
次に、撮像ユニット2における検出角の変更動作について説明する。検出角とは、図1の受光部23の(光学系232の)光軸J2と、撮像領域90におけるウエブ9の法線Nとのなす角θ2である。画像取得装置1では、ドラム11の円周の上半分、すなわち、外側面111の法線のZ方向に対する傾斜角が0°ないし90°の範囲にて外側面111とウエブ9とが当接する。また、受光部23の光軸J2はZ方向に平行である。したがって、ウエブ9においてドラム11と当接する領域上における撮像領域90の位置(正確には、中心軸Kを中心とする角度位置)に応じて、当該位置におけるウエブ9の法線Nと光軸J2とのなす検出角θ2が0°ないし90°の範囲内にて変化する。以下の説明では、撮像領域90におけるウエブ9の法線Nを、単に「ウエブ9の法線N」という。
【0020】
ドラム11の頂点(最も(+Z)側の部位)に位置するウエブ9の薄膜パターン(表面)上に受光部23のフォーカス位置Pが配置される際の撮像ユニット2の位置(図3および図4にて二点鎖線にて示す撮像ユニット2の位置)を基準位置として、例えば、検出角θ2をφa(ただし、0°<φa<90°)とする場合には、図3に示すように、基準位置からの撮像ユニット2のX方向の移動量DXはドラム11の半径Rの(sinφa)倍(すなわち、Rsinφa)であり、Z方向の移動量DZは(R−Rcosφa)である。これにより、撮像ユニット2における検出角θ2がφaになるとともに、フォーカス位置Pがほぼウエブ9の薄膜パターン上に配置される(すなわち、フォーカス調整が行われる。)。
【0021】
同様に、検出角θ2をφaよりも大きいφb(ただし、φa<φb<90°)とする場合には、図4に示すように、基準位置からの撮像ユニット2のX方向の移動量DXは(Rsinφb)であり、Z方向の移動量DZは(R−Rcosφb)である。これにより、撮像ユニット2における検出角θ2がφbになるとともに、フォーカス位置Pがほぼウエブ9の薄膜パターン上に配置される。以上のように、画像取得装置1では、撮像ユニット2における検出角θ2の変更動作およびフォーカス調整が、移動機構4により撮像ユニット2をX方向およびZ方向に移動するのみで実現される。なお、上記基準位置は、検出角θ2の変更時における撮像ユニット2のX方向およびZ方向への移動量の説明を簡素化するためのものであり、検出角θ2の変更時に撮像ユニット2が基準位置へと戻る必要はない。
【0022】
図2の光照射部21を有する撮像ユニット2では、上記仮想軸(すなわち、撮像領域90に平行かつフォーカス位置Pを通過する軸)に垂直な面上において、ウエブ9の法線Nから光軸J2とは反対側に当該仮想軸を中心として検出角θ2だけ傾斜した角度位置(図2中にて符号A1を付す一点鎖線にて示す。)が角度範囲αに含まれる状態において受光部23による画像(ライン画像)の取得が行われる。なお、撮像領域90から受光部23に入射する光に着目すると、当該角度位置において、光照射部21から撮像領域90に至る光軸が配置されていると捉えることができ、当該光軸とウエブ9の法線Nとのなす角を照射角と呼ぶと、照射角と検出角とが等しくなっている。
【0023】
次に、画像取得装置1における画像取得の原理について説明する。図5は検出角とコントラストとの関係を示すプロファイルを例示する図である。実線811は厚さ30nmの透明電極パターン上に厚さ900nmの透明膜を形成した場合の検出角とコントラストとの関係を示す。背景では厚さ900nmの透明膜のみが存在するものとしている。照射光の波長は570nmである。
【0024】
ここで、コントラストとは、基材上にパターンを含む多層膜が存在する場合に受光部23(のラインセンサ231)に入射する光の強度と、基材上に上記多層膜からパターンを除いた膜のみが存在する場合に受光部23に入射する光の強度との比である。換言すれば、コントラストは、パターンと背景との間の明度比(=(パターン領域の明度)/(背景領域の明度))である。明度はその波長における反射率に対応し、明度比は反射率比でもある。例えば、外部の膜厚計により、ウエブ9においてパターンが存在する領域における各層の膜厚を取得し、続いて、パターンの周囲の領域である背景における各層の膜厚を取得し、基材上における層構造および各層の膜厚に基づく演算により、上記プロファイルが取得可能である。後述するように、本実施の形態では、他の手法により同様のプロファイルが取得される。もちろん、コントラストとしては、明度や反射率の差等の他の値が利用されてもよい。
【0025】
図5において、通常、コントラストが0.5以下または2以上の場合に良好なパターン画像が取得可能となる。実線811の場合、検出角がおよそ0°以上28°以下、または、40°以上45°以下の場合に、適切なパターン画像が取得される。ただし、45°は図5における形式的な上限にすぎない。なお、コントラストが0.77以下または1.3以上であれば、条件によってはパターン検査が可能である。好ましくは、コントラストは、0.67以下または1.5以上である。また、「コントラストが高い」とはコントラストが良好であることを指し、明暗がはっきり区別できる状態を意味する。コントラストが高いことは、必ずしもコントラストの値が大きいことを意味しない。
【0026】
図5の破線812は厚さ30nmの透明電極パターン上に厚さ960nmの透明膜を形成した場合の検出角とコントラストとの関係を示す。背景では厚さ960nmの透明膜のみが存在するものとしている。一点鎖線813は厚さ30nmの透明電極パターン上に厚さ1000nmの透明膜を形成した場合の検出角とコントラストとの関係を示す。背景では厚さ1000nmの透明膜のみが存在するものとしている。照射光の波長は570nmである。曲線811〜813にて示すように、透明膜の厚さが変化することにより、コントラストが高いパターン画像が取得される検出角が大きく変化することが判る。
【0027】
すなわち、検出角を変化させると透明な各層を経由する光(受光部23に入射する光)の光路長が変化して光の干渉状態が変化し、これにより、特定の検出角では高いコントラストが得られない場合であっても、波長を変えることなく検出角を変化させることにより、高いコントラストを得ることが可能となる。さらに換言すれば、検出角を変化させることにより、白色光源および多数のフィルタを用いて多数の波長から波長を選択してパターン画像を取得することと同等の画像取得が実現される。
【0028】
図6は、画像取得装置1の機能構成を示すブロック図である。破線にて囲む構成は、エンコーダ113を除き、図1に示す構成であり、他の構成は、既述のコンピュータにより実現される。画像取得装置1は、受光部23からの出力が入力されるプロファイル取得部31、プロファイル取得部31にて求められたプロファイルが入力される角度決定部32、全体を制御する全体制御部30、補正テーブル331を記憶する記憶部33、および、後述の検査を行う検査部36を備える。ここで、補正テーブル331は、ドラム11の外側面111において中心軸Kを中心とする周方向の各部位における振れ量を示すものである。振れ量は、ドラム11の偏芯に起因する繰返し再現性のある値であり、例えば、変位センサを用いて周方向における外側面111の各部位の径方向における変位を測定することにより取得される。
【0029】
図7は、画像取得装置1の動作の流れ図である。画像取得装置1では、まず、検出角とコントラストとの関係を示すプロファイルが取得される(ステップS11)。具体的には、図1の移動機構4を制御して検出角を変更しつつ、受光部23のラインセンサ231により撮像領域90のライン画像が繰り返し取得される。このとき、撮像領域90にパターンおよび背景が存在するように、必要に応じてドラム11がウエブ9を移動し、プロファイル取得部31では、ラインセンサ231にてライン画像が取得される毎に、パターンの領域からの光強度と背景の領域からの光強度との比がコントラストとして求められる。検出角は予め設定された最小角から最大角まで変更され、これにより、プロファイルが取得される。
【0030】
角度決定部32では、取得されたプロファイルに基づいて、検出角の設定すべき角度(以下、「設定角度」という。)が決定される(ステップS12)。設定角度の決定では、好ましくは、コントラストが最も高くなる角度が選択される。設定角度は全体制御部30へと入力され、全体制御部30が移動機構4を制御する、すなわち、設定角度に対応するドラム11の角度位置に撮像領域90が位置するように撮像ユニット2を移動することにより、検出角が設定角度となる(ステップS13)。
【0031】
上記準備作業が完了すると、光照射部21からの光の出射およびモータ112の駆動が開始され、ドラム11によるウエブ9の搬送が開始される(ステップS14)。受光部23では、線状の撮像領域90のライン画像が高速に繰り返し取得される。このとき、全体制御部30にはエンコーダ113からの信号が入力され、ドラム11の回転角度に同期して移動機構4を補正テーブル331に基づいて制御することにより、ドラム11の外側面111の各部位における振れ量に合わせて撮像ユニット2が僅かに移動する。これにより、受光部23のフォーカス位置Pが、ウエブ9の薄膜パターン上に常時配置される。以上の動作により、検査部36において、薄膜パターンを示す2次元のパターン画像のデータが取得される(すなわち、記憶される。)(ステップS15)。
【0032】
検査部36には、基準となる参照画像のデータが記憶されており、パターン画像のデータと参照画像のデータとを比較することにより、欠陥の有無が判定される(ステップS16)。実際には、ステップS15およびS16は、ウエブ9が一定の距離だけ搬送される毎に繰り返し実行され、ウエブ9に対する全ての検査が完了すると、光の照射およびウエブ9の搬送が停止され、検査が終了する(ステップS17)。なお、検査部36では、仮に受光部23に入射する光の量が検出角に依存して変化する場合には、設定角度に合わせてパターン画像のデータが補正されてよい。また、パターン画像および参照画像を所定の手法にて正規化し、正規化後の両画像を比較することにより、検査が行われてもよい。もちろん、パターン画像の検査は参照画像との比較以外の手法にて行われてもよい。
【0033】
以上に説明したように、画像取得装置1では、外側面111に沿ってウエブ9を搬送するドラム11、および、撮像ユニット2をドラム11の中心軸Kに垂直、かつ、互いに交差する2方向に移動する移動機構4が設けられ、移動機構4を制御することにより、検出角が変更されるとともにフォーカス調整が行われる。このように画像取得装置1では、撮像ユニット2を回動する機構を設けることなく、撮像ユニット2を2方向に移動する移動機構4のみにより、検出角を容易に変更するとともにフォーカス位置Pを薄膜パターン上に配置することができる。
【0034】
また、撮像領域90に照射される光の波長を変更することなく、パターンと背景との間のコントラストが高いパターン画像を取得することができる。これにより、波長を変更するための複雑な構造、あるいは、多波長の光に対応した光学系の設計や煩雑な調整が不要となり、画像取得装置1の製造コストを削減することができる。さらに、例えば、感光性のレジストがパターン上の層に含まれる場合等であっても、使用できない波長の光を避けつつ、パターン画像を容易に取得することができる。
【0035】
画像取得装置1では、ドラム11の回転に同期して、移動機構4が補正テーブル331を用いて制御されることにより、ラインセンサ231の受光面と共役なフォーカス位置Pを薄膜パターン上に常時精度よく配置することができる。その結果、コントラストが高いパターン画像を安定して取得することができる。また、ドラム11を用いる画像取得装置1では、水平方向に搬送されるウエブの画像を取得する装置に比べて、装置の設置面積を小さくすることができる。なお、画像取得装置1の設計によっては、光軸J2方向における受光部23とウエブ9との間の距離を検出するセンサを設け、当該センサの出力に基づいて受光部23が光軸J2に沿って移動することにより、パターン画像の取得時にリアルタイムでフォーカス調整が行われてもよい。
【0036】
画像取得装置1では、パターン検査の他に、パターン画像の表示が行われてもよい。例えば、図6にて破線の矩形にて示すように、受光部23に表示制御部34が接続され、表示制御部34にディスプレイ35が接続される。パターン画像の表示では、操作者により指定されたウエブ9上の領域近傍に撮像領域90が配置され(検出角は設定角度となっている。)、ウエブ9を搬送しつつ、受光部23のラインセンサ231にて撮像領域90のライン画像が繰り返し取得される。ライン画像のデータは表示制御部34に入力される。これにより、指定された領域における薄膜パターンを示すパターン画像のデータが取得され、パターン画像がディスプレイ35に表示される。他の画像取得装置において表示制御部34およびディスプレイ35が設けられてもよい。
【0037】
図8は、撮像ユニットの他の例を示す図であり、撮像ユニットの背面図である。図8の撮像ユニット2aでは、光照射部21aの構造が図2の光照射部21と相違するとともに、光照射部21aを回動する光照射部回動機構22が設けられる。光照射部21aは、Y方向に配列された複数のLEDと、LEDからの光を均一化して撮像領域90へと導く光学系とを備える。
【0038】
光照射部回動機構22は、フォーカス位置Pを中心とする円弧状のガイド板221を有し、ガイド板221は受光部23の鏡筒233に固定される。ガイド板221はX方向およびZ方向に平行な板部材である。光照射部21aには、Y方向に平行な軸を中心として回転するギア223および2つのガイドローラ224が設けられる。ガイド板221において、フォーカス位置Pに対する外側の円弧状の縁(すなわち、2つの円弧状の縁のうちフォーカス位置Pから遠い方の縁)にはラック222が設けられ、ギア223がラック222に歯合する。また、ガイド板221における内側の円弧状の縁には、ガイドローラ224が係合するガイド溝が形成される。
【0039】
撮像ユニット2では、図示省略のモータがギア223を回転することにより、光照射部21aがガイド板221の円弧状の縁に沿って移動する。すなわち、光照射部回動機構22により、撮像領域90に平行かつフォーカス位置Pを通過する軸(仮想的な軸)を中心として光照射部21aが回動する。なお、ギア223およびガイドローラ224は光照射部回動機構22の一部である。光照射部21aから撮像領域90に至る光軸J1とウエブ9の法線Nとのなす角θ1を照射角として、撮像ユニット2aでは、光照射部回動機構22により照射角θ1が変更される。
【0040】
撮像ユニット2aを有する画像取得装置1におけるパターン画像の取得では、検出角θ2を設定角度とする際に、光照射部回動機構22が光照射部21aを回動することにより、照射角θ1も変更されて設定角度となる。これにより、コントラストの高いパターン画像を取得することができる。一方、画像取得装置1の制御を簡素化するという観点では、図2の光照射部21を採用して、光照射部21を回動する機構を省略することが好ましい。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0042】
図7のステップS11の処理において、ドラム11によるウエブ9の移動に同期して移動機構4により撮像ユニット2,2aをドラム11の外側面111におよそ沿って移動することにより、ウエブ9上の同じ位置に対して複数の検出角にてライン画像が取得されてもよい。この場合、ラインに垂直な方向に沿ってコントラストが変化する画像が取得され、操作者が当該画像を参照して設定角度を決定することが可能である。また、ウエブ9の長手方向に同様のパターンが連続する場合には、複数の検出角におけるライン画像の取得時にドラム11によるウエブ9の搬送を行うことなく、上記画像と同様の画像を取得することが可能である。
【0043】
また、画像取得装置1において、膜厚計(光干渉式の分光膜厚計や、エリプソメータ)が設けられることによりプロファイルが取得されてもよい。
【0044】
画像取得装置1では、受光部23の光軸J2が、ZX平面に平行、かつ、Z方向に対して傾斜するように撮像ユニット2,2aが移動機構4に取り付けられてもよい。また、画像取得装置1の設計によっては、ドラム11の中心軸Kに平行な軸を中心として撮像ユニット2,2aを補助的に回動する機構が設けられてもよい。
【0045】
p偏光光またはs偏光光の一方を利用することにより、偏光光を利用しない場合に比べてコントラストが高いパターン画像が取得可能である場合には、撮像領域90と受光部23との間に偏光子が配置されてもよい。この場合、ウエブ9からの反射光のうち、p偏光光またはs偏光光のみが受光部23に入射する。また、光軸J2を中心として偏光子を回転する回転機構が設けられ、受光部23に入射する偏光光が切り替えられてもよい。さらに、p偏光光に基づいて第1パターン画像が取得され、s偏光光に基づいて第2パターン画像が取得されてもよい。この場合、例えば、第1パターン画像の各画素の値と第2パターン画像の対応する画素の値との積が求められ、積を画素値として有する画像がパターン画像として取得される。このようなパターン画像では、種類の異なる2つの画像が利用されるため、画像におけるノイズ等の影響が低減される。
【0046】
基材上に形成される膜構造は、様々なものであってよく、通常、上記実施の形態にて例示したものよりも複雑な構造を有する。検査対象(または表示対象)となるパターンは1種類には限定されず、複数種類であってもよい。この場合、各検査対象のパターンの検査の際に、このパターンに重なる他のパターンは、背景として扱われる。
【0047】
上記実施の形態では、背景は1種類であるものとして説明したが、背景は1種類には限定されない。背景が複数種類の場合、各背景に関してプロファイルが求められ、いずれの背景に対してもコントラストが高くなる検出角が決定される。
【0048】
薄膜パターンの組成は、照射光に対してある程度の透過性を有するのであれば、他の材料にて形成されたものであってよく、必ずしも可視光に対して透明である必要はない。パターンは透明電極には限定されず、他の用途のパターンであってもよい。ただし、画像取得装置の用途としては、可視光を照射しても影ができない透明電極のパターン画像の検査または表示に特に適している。また、基材も樹脂以外の材料にて形成されたものであってよい。
【0049】
光照射部から出射される光の波長は、単一には限定されず、複数の波長の光が選択的に出射可能であってもよい。光源にはLEDではなく、LDが設けられてもよい。さらに、ハロゲンランプ等のランプとフィルタとの組み合わせが光源として設けられてもよい。
【0050】
移動機構4による撮像ユニット2,2aの2つの移動方向は、ドラム11の中心軸Kに垂直であるならば、必ずしも直交する必要はない。
【0051】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0052】
1 画像取得装置
4 移動機構
9 ウエブ
11 ドラム
21,21a 光照射部
23 受光部
30 全体制御部
33 記憶部
90 撮像領域
111 外側面
231 ラインセンサ
232 光学系
331 補正テーブル
J2 光軸
K 中心軸
N 法線
P フォーカス位置
α 角度範囲
θ2 検出角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材上に形成された薄膜パターンの画像を取得する画像取得装置であって、
所定の中心軸を中心とする円筒面である外側面を有し、前記中心軸を中心として回転することにより前記外側面に沿って前記基材を搬送するドラムと、
前記薄膜パターンに対して透過性を有する波長の光を、前記ドラムに保持される前記基材上において前記中心軸に平行な線状の撮像領域に向けて出射する光照射部と、
ラインセンサと、前記撮像領域からの光を前記ラインセンサへと導く光学系とを有する受光部と、
前記光照射部および前記受光部を前記中心軸に垂直、かつ、互いに交差する2方向に移動する移動機構と、
前記移動機構を制御することにより、前記光学系の光軸と前記基材の法線とのなす検出角を変更するとともに、前記光軸上において前記ラインセンサの受光面と共役な位置を前記薄膜パターン上に配置する制御部と、
を備えることを特徴とする画像取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像取得装置であって、
前記光照射部が、前記撮像領域に平行かつ前記共役な位置を通過する軸を中心とする所定の角度範囲において前記撮像領域に向けて前記光を照射するものであり、
前記軸に垂直な面上において、前記法線から前記光軸とは反対側に前記軸を中心として前記検出角だけ傾斜した角度位置が前記所定の角度範囲に含まれることを特徴とする画像取得装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像取得装置であって、
前記ドラムの前記外側面において前記中心軸を中心とする周方向の各部位における振れ量を示す補正テーブルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部が、前記ドラムの回転に同期して、前記移動機構を前記補正テーブルを用いて制御することを特徴とする画像取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−72825(P2013−72825A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213760(P2011−213760)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】