説明

画像変化表示方法

【課題】 従来の4コマからなるグリッド状の合成画像を用いて画像変化や動画を視認させる方法では、使用できるコマ数が4コマのみという制約があるため表現に限界があった。また画像変化や動画表示にぎこちなさが伴い、滑らかな動きに欠けていた。
【解決手段】 4コマからなるグリッド状の合成画像シート2を背景とし、上部に複数の階層4を設け、新たに用意した任意の大きさの別版合成画像7を、背景画像の座標に対し水平垂直を保持し、且つ背景の4コマユニットに該当する位置をずらして配置させ、全ての階層の画像を統合させて一体化合成画像を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4コマからなるグリッド状の合成画像を利用して画像変化や動画を視認する表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の4コマからなるグリッド状の合成画像1を利用した画像変化表示の技術では、図14で示すような画像変化表示方法が知られている。また次のような記述があるので概要を示す。
【0003】
四種類の画像を基に作成されたグリッド状の合成画像1を配置した合成画像シート2の上部に、透過部と遮蔽部を有するマスクシート3を設ける。また、マスクシート3の移動の方向および範囲を規制するストッパー17を設け、マスクシート3の移動によって四種類の画像変化を得られる。さらに四つの連続画像を用いることにより、表示される画像は、四コマの動画として視認される。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
以下、この画像変化表示におけるグリッド状の合成画像の作成工程の概要を図とともに示す。図15は、第一工程として用意する同じ大きさの連続する四種類の原画像。図16は、第二工程として全ての画像に田の字状四マスのユニットで構成された四種類の分割画像。図17は、第三工程として田の字状四マスのそれぞれ四分の一ずつのマスを規則正しく残した四種類の間引き画像。図18は、第三工程で作成された四種類の間引き画像を合成して新たに作成された一枚の合成画像1である。
【0005】
次に、合成画像1に対応するマスクシート3の作成工程を以下に示す。合成画像1を作成の際に用いられた田の字状四マスのうち、任意の一マスを透過状態、残りの三マスを遮蔽状態としたものを最小単位とし、これらを縦横に必要数だけを配列して完成する。具体的な実現方法としては、透明樹脂素材に遮蔽性のある素材の塗布加工、不透明素材に穿孔して透過部を得る方法等がある。図19はマスクシート3の原理を示すものである。
【0006】
実施例の一例を紹介する。合成画像シート2の上部に対応するマスクシート3を設け、スライド移動によって画像の変化が得られる。原画像に連続画を用いることにより視覚的残像効果と相俟って、動画表現が視認できる。動画を再現するために、移動する範囲を一マスに限定したり、全方位に可動できる方法を取り入れた用具や装置が考えられる。具体的な実施例として動く絵本がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 特開平11−327479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の4コマからなるグリッド状の合成画像を用いて画像変化や動画を視認させる方法では、使用できるコマ数が4コマのみという制約があるため表現に限界があった。また画像変化や動画表示にぎこちなさが伴い、滑らかな動きに欠けていた。
【0009】
本発明は、このような従来の方法が有していた問題を解決しようとするものであり、滑らかさが欠けていた動画表示方法に改良を加え、さらに画像変化や動画表示において視覚効果を用いて楽しさを増大させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために次にあげる手段をとる。第1の課題解決手段は、4コマからなるグリッド状の合成画像シート2を背景とし、上部に複数の階層を設けて新たに用意した任意の大きさの別版合成画像7を配置する。この時に、背景画像の座標に対し水平垂直を保持し、且つ背景の4コマユニットに該当する位置をずらして配置させ、全ての階層の画像を統合させて一体化合成画像を得る。
【0011】
第2の課題解決手段は、4コマからなるグリッド状の合成画像シート2を背景とし、上部に複数の階層を設けて新たに用意した任意の大きさの別版合成画像7を配置する。この時に、背景画像の座標に対し任意の角度を付けて配置させ、全ての階層の画像を統合させて一体化合成画像を得る。
【0012】
第3の課題解決手段は、4コマで画像が1回転するユニットで構成された別版合成画像7を用意し、背景となる合成画像シート2の上部に階層を設けて配置し、さらに全ての階層の画像を統合させて一体化合成画像を得る。
【0013】
上述の第1の課題解決手段による作用は次の通りである。従来の動画表示は4コマで一巡するが、本発明の動画表示の特長は、例えば背景にある合成画像が一巡する前に、任意に設定したタイミングで他の位置にある4コマ画像を表示させられることである。表出するタイミングを自由にコントロールできることは、そのまま時間のずれを表現できることとなる。表示時間を長く感じさせられる表現技術が、画像を滑らかに見せられることに繋がった。
【0014】
第2の課題解決手段による作用は次の通りである。マスクシート3を使用する際、緩やかな角度が付いて配置されている別版合成画像7に対しては強く作用しモアレ効果を生む。また背景の合成画像シート2に対して45度の傾斜角が付いて配置されている別版合成画像7に対しては、反応が弱くなり動画の効果は殆どなくなるという大きな特徴がある。
【0015】
第3の課題解決手段による作用は次の通りである。マスクシート3は、90度ずつ回転する画像に対して反応し表現する。合成画像シート2、マスクシート3どちらも方眼ユニットが基本となっているので、マスクシート3を90度回転させても本来の機能は変らずに維持されている。本発明の長所が最大限に生かされており、平面内での発想を立体や空間に展開すると、応用範囲がさらに拡がる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1においては、多くの階層4を用いることで複雑な表現が得られるようになった。従来の4コマのみの単調な動きに複雑さが増し、時間的なズレを表現できるようになった効果は大きい。つまり4コマ以上のコマ数を使用した表現と同等な効果を生み出すことが出来るようになったのである。例えば、一つの画像が表示された後、ワンテンポ遅れて追いかけるように次の画像が表出させられるという具合である。課題であった滑らかな動きが得られるようになったばかりでなく、メリハリの効いた画面表示が出来るようにもなった。非常に発展性があるので広範囲な分野において利用され、不思議さや面白さのある表現は増大するものと思われる。
【0017】
また、別版合成画像7には従来の4種類の画像以外にも、2種類及び3種類の画像を使用して表現した循環画像を組込むことが出来る。サイクルの違う循環画像を同時に組込むことで、表示画面全体にリズムを生みだすことが可能となり、表現に幅が出て豊かになった。
【0018】
請求項2において、色彩表現面に関しては、色が変化しながら動くグラデーション効果はインパクトが強く、見るものに強い印象を与える。図形面に関しては、独特な動きを伴いながら形が現れる様子は視覚効果が大きい。なお、背景の合成画像シート2に対して45度の傾斜角を付けて配置された時に動画効果がなくなるという現象は、逆にこの特性を生かした遊び方が生まれるきっかけとなる。マスクシート3を乗せる角度で画像が見え隠れする表現などができる。不思議な感じを与えるので、パズルやゲームなどの分野で効果を発揮する。
【0019】
請求項3において、4コマの合成画像1を90度ずつ回転させながら循環できることは大きなメリットで、正方形や立方体の形状などをベースに展開すると複合した相乗効果がある。また回転機構を有する用品に対しても付加価値となって大きな効果を生む。さらに視覚効果が大きいので、遊具などに使用すると有効である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 本発明の表示方法の全体構成を表す分解斜視図
【図2】 本発明の表示方法の実施の形態を示す平面図
【図3】 図2のA−Aの断面図
【図4】 4種類の原画像が循環配列された合成画像を表す模式図
【図5】 任意の位置に別版合成画像が配置された階層
【図6】 図4と図5の画像が統合された一体化合成画像の平面図
【図7】 図6の一体化合成画像に対応するマスクシート
【図8】 図6の一体化合成画像の4地点における4種類の表示画像
【図9】 別版合成画像が緩やかな角度で配置された一体化合成画像の平面図
【図10】 別版合成画像が45度の傾斜角で配置された一体化合成画像の平面図
【図11】 合成画像シートの平面図
【図12】 図11に別版合成画像を配置した一体化合成画像の平面図
【図13】 図12の一体化合成画像の4地点における4種類の表示画像
【図14】 従来の画像変化表示装置の分解斜視図
【図15】 動画画像の4種類の原画像平面図
【図16】 図15の4種類の分割画像平面図
【図17】 図16の4種類の間引き画像平面図
【図18】 図17の4種類の間引き画像を合成させた一枚の合成画像平面図
【図19】 図18に対応するマスクシートの原理を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明の特徴となる表示方法を具現化させるための全体構成を表す分解斜視図である。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図4は背景となる合成画像の模式図である。4種類の原画像がグリッド状に分割され、さらに田の字型ユニットに構成されて規則正しく循環配列されている。ABCDの各記号は原画像の4種類を表す。
【0022】
図5は、図4の合成画像1の上部に配置される別版合成画像7の模式図である。下部にある合成画像1と同じ条件で作成された原画像が循環配列されている。abcdの各記号は別版の合成画像を成す原画像の4種類を表す。上部にある別版合成画像7が移動配置できる範囲は、下部にある4コマユニットの座標内であるが、配置する場所によってさまざまな表情が表わせるようになる。
【0023】
図6は、図4の合成画像1の上部に配置された別版合成画像7が右下方向にそれぞれ1コマ分移動して配置された状態を表している。上下2層の画像の隣接している部分が、背景のABCDの循環配列とは異なる位置関係になっていることが確認できる。図7は対応するマスクシート3である。
【0024】
図8は上記内容の一体化合成画像8の上にマスクシート3を乗せた状態の表示画面である。4地点での表示画面を記載する。背景合成画像シートのA部分を全体表示した時に、上部ユニットの部分の表示はすべてcであることが確認できる。同様にB部分を全体表示した時はdを、C部分を全体表示した時はaを、D部分を全体表示した時はbをそれぞれ表示する。他の地点においても上下層の表示画像の違いが確認できる。図8で示した配置は一例であるが、移動する位置により表出する画像の割合が変化する。つまり配置の位置を変えることにより、無段階の表示組合わせが可能となるのである。ちなみに上記画像の配列は、背景の合成画像の3コマ目に別版合成画像7の1コマ目の画像が表出されるように調節されている。
【0025】
図9は、請求項2の内容を反映させた一体化合成画像8である。ここでは合成画像シート2の上の階層4に、別版合成画像7が任意の場所に緩やかな角度を付けて配置されている状態を表している。図10は、図9と同じ合成画像シート2の階層4に、別版合成画像7が45度の傾斜角を付けて配置されている状態を表している。
【0026】
図12は、請求項3の内容を反映させた一体化合成画像8である。4種類の原画像がそれぞれ回転しながら4コマユニットとして循環配置されているのが確認できる。図13は図12の一体化合成画像8の上に、マスクシート3を乗せた状態の4地点での表示画面である。各地点でABCDの各記号が回転して表示されているのが確認できる。4種類の回転表示画像として示している。
【0027】
用途や利用分野は、書籍、文具、教材、雑貨、玩具、室内用品、装飾展示など多岐にわたる。従来にない視覚効果は付加価値となってそれぞれの分野で大いに評価されるであろう。また、どの分野においても本発明は、電池や電気などを使用せずに、不思議で楽しい動画表現が得られるのが最大の特徴である。
【0028】
マスクシート3の具体的な実現方法としては、透明樹脂素材に遮蔽性のある素材の塗布加工、不透明素材に穿孔して透過部を得る方法、繊維状素材の織り加工、さらに、長尺の部材を用意して縦横に配置したり、網状加工が可能な素材を使用してグリッド状のパターンを得る方法がある。
【0029】
また、図示されてはいないが、合成画像シート2の背面部に採光性のある素材を使用することで、いっそう明るく滑らかな画像表示を得ることが可能となる。
【実施例1】
【0030】
本発明を使用した用品の実施例をとりあげる。まず、視覚効果を多く取り入れた絵本または用品がある。これは、マスクシート3の保持具を使わないシンプルな構成である。また、マスクシート3の保持具として単数もしくは複数のビスを使用したものとして、しおりやグリーティングカードなどがある。さらに、リング式ノートやバインダー形式のファイリング用品など広範囲に展開される。
【実施例2】
【0031】
前述のように平面環境での表現を主に例示してきたが、本発明は平面以外の環境条件でも大いに効果を発揮する。例えば、透明アクリル素材の特性を生かしたインテリア用品での立体表現や、マスクシート3と合成画像の間に間隙を設け、空間を生かした表現などがある。特にディスプレーなどの空間表現において、距離を置いて見た時に得られる動画の視覚効果は、従来にない展示効果をもたらすであろう。
【符号の説明】
【0032】
1 合成画像
2 合成画像シート
3 マスクシート
4 階層
5 遮蔽部
6 透過部
7 別版合成画像
8 一体化合成画像
9 表示画像A
10 表示画像B
11 表示画像C
12 表示画像D
13 回転表示画像A
14 回転表示画像B
15 回転表示画像C
16 回転表示画像D
17 ストッパー
18 原画像A
19 原画像B
20 原画像C
21 原画像D
22 分割画像A
23 分割画像B
24 分割画像C
25 分割画像D
26 間引き画像A
27 間引き画像B
28 間引き画像C
29 間引き画像D

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4コマからなるグリッド状の合成画像シート2を背景とし、上部に複数の階層4を設け、新たに用意した任意の大きさの別版合成画像7を、背景画像の座標に対し水平垂直を保持し、且つ背景の4コマユニットに該当する位置をずらして配置させ、全ての階層の画像を統合させて一体化合成画像を得る。
【請求項2】
4コマからなるグリッド状の合成画像シート2を背景とし、上部に複数の階層4を設け、新たに用意した任意の大きさの別版合成画像7を背景画像の座標に対し任意の角度で傾けて配置させ、全ての階層の画像を統合させて一体化合成画像を得る。
【請求項3】
4コマで画像が1回転するユニットで構成された別版合成画像7を用意し、背景となる合成画像シート2の上部に階層4を設けて配置し、さらに全ての階層の画像を統合させて一体化合成画像を得る。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−54327(P2013−54327A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203759(P2011−203759)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(508316922)
【Fターム(参考)】