説明

画像変換装置

【課題】符号化画像データを変換する画像変換装置において、主観的な画質の劣化を防ぐ技術を提供することを課題とする。
【解決手段】MPEG2デコーダ2は、MPEG2データ51をデコードして非圧縮画像データ52を出力する。H.264エンコーダ3は、非圧縮画像データ52をエンコードしてH.264データ53を出力する。量子化パラメータ決定部30は、MPEG2データ51の量子化ステップ平均値Qs_AVE_MP2に基づいて、イントラ量子化パラメータ56及びインター量子化パラメータ57を算出する。符号化モード決定部37は、イントラ符号化時及びインター符号化時のそれぞれの符号化コストに基づいて、非圧縮画像データ52のマクロブロックの符号化モードを決定する。セレクタ34は、決定した符号化モードに基づいて、算出した量子化パラメータのうちいずれかを、量子化パラメータQP_AVCとして出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MPEGあるいはH.264/AVCなどの規格に基づいて符号化画像データを変換する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送で配信される画像や、DVD、ハードディスクなどに格納される画像などは、各種の符号化方式に従って圧縮される。これは、伝送帯域を圧迫しないため、伝送速度を上げるため、あるいは、記憶サイズを小さくするなどの目的のためである。
【0003】
画像の符号化方式には、MPEG2やH.264/AVC(以下、単に「H.264」と呼ぶ。)など様々な規格が存在する。入力した符号化画像の符号量を削減するなどの目的で符号化方式の変換が行われる場合がある。トランスコーダなどの画像変換装置は、入力した符号化画像を一旦デコードする。そして、トランスコーダは、デコードした画像を、再び異なる符号化方式(あるいは同じ符号化方式)で符号化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−42426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に係るトランスコーダは、MPEG2データをデコードし、デコードされた非圧縮画像データをH.264で符号化する。非圧縮画像データにおいて、符号化対象のマクロブロックの量子化ステップ値は、MPEG2データのフレーム内の量子化ステップ値の平均値及びピクチャ種別に基づいて決定される。
【0006】
非圧縮画像データのマクロブロックは、決定された量子化ステップ値を利用して符号化される。つまり、マクロブロックがイントラ符号化される場合及びインター符号化される場合のいずれであっても、決定した量子化ステップ値が共通に用いられる。この結果、符号化されたマクロブロックの画質に差が生じ、H.264データの主観的な画質が低下するおそれがあった。
【0007】
本発明は、符号化画像データを変換する画像変換装置において、主観的な画質の劣化を防ぐ技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、画像変換装置であって、第1符号化画像をデコードして非圧縮画像データを生成するデコーダと、前記非圧縮画像データをエンコードして第2符号化画像データを出力するエンコーダと、前記非圧縮画像データのマクロブロックの符号化に用いる量子化パラメータを決定する量子化パラメータ決定部と、を備え、前記量子化パラメータ決定部は、前記マクロブロックをインター符号化する場合に用いるインター量子化パラメータと、イントラ符号化する場合に用いるイントラ量子化パラメータとを算出する算出部と、前記マクロブロックの符号化モードを決定し、決定した符号化モードに基づいて前記インター量子化パラメータ及び前記イントラ量子化パラメータのいずれかを前記エンコード部に出力する符号化モード決定部と、を備える。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の画像変換装置において、前記算出部は、前記第1符号化画像データのフレーム内の量子化ステップ値の平均値に基づいて量子化パラメータの基準値を算出する基準値算出部と、インター符号化に対応するインター調整係数と、イントラ符号化に対応するイントラ調整係数とを、前記フレームの種別に基づいて決定する重み付け値決定部と、を含み、前記算出部は、前記基準値と前記インター調整係数とに基づいてインター量子化パラメータを算出し、前記基準値と前記イントラ調整係数とに基づいてイントラ量子化パラメータを算出する。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の画像変換装置において、前記符号化モード決定部は、前記符号化モードの決定に用いる量子化パラメータを、前記インター量子化パラメータ及び前記イントラ量子化パラメータのいずれかから選択する選択部と、選択された量子化パラメータに基づいて、前記マクロブロックをインター符号化した場合の符号化コストと、イントラ符号化した場合の符号化コストとを算出する符号化コスト算出部と、を含み、前記符号化モード決定部は、算出した符号化コストに基づいて前記符号化モードを決定する。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載の画像変換装置において、前記エンコーダは、マクロブロックをイントラ符号化するときに、複数の予測単位のうちいずれか一つの予測単位でイントラ符号化を実行し、前記符号化コスト算出部は、各予測単位に対応した複数の符号化コストを算出し、算出した前記複数の符号化コストに基づいて、前記マクロブロックをイントラ符号化するときの予測単位を決定するイントラ符号化コスト決定部、を含む。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像変換装置において、前記量子化パラメータ決定部は、前記インター量子化パラメータを算出する第1量子化パラメータ算出部と、前記イントラ量子化パラメータを算出する第2量子化パラメータ算出部と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、マクロブロックの符号化モードに基づいて、インター量子化パラメータ及びイントラ量子化パラメータのうちいずれかが、エンコーダに出力される。マクロブロックは、符号化モードに応じた量子化パラメータにより適切に符号化されるため、各マクロブロックの画質のばらつきを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態によるトランスコーダの機能的構成を示すブロック図である。
【図2】量子化パラメータ決定部の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】MPEG2データにおける各マクロブロックの符号化モードの一例を示す図である。
【図4】H.264データにおける各マクロブロックの符号化モードの一例を示す図である。
【図5】係数テーブルを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
{トランスコーダの全体構成}
図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係るトランスコーダ1の機能的構成を示すブロック図である。トランスコーダ1は、MPEG2データ51をH.264データ53に変換する装置である。トランスコーダ1は、MPEG2デコーダ2と、H.264エンコーダ3と、アクティビティ算出部4とを備えている。
【0016】
MPEG2デコーダ2は、MPEG2方式で符号化されたMPEG2データ51を入力する。MPEG2デコーダ2は、MPEG2データ51をデコードして、非圧縮画像データ52を生成する。
【0017】
H.264エンコーダ3は、非圧縮画像データ52と符号化パラメータ55とを入力する。H.264エンコーダ3は、非圧縮画像データ52をH.264方式で符号化することにより、H.264データ53を生成する。符号化パラメータ55は、MPEG2データ51の符号化に関するパラメータを含む情報である。
【0018】
H.264エンコーダ3は、量子化パラメータ決定部30を備える。量子化パラメータ決定部30は、符号化パラメータ55を利用して、非圧縮画像データ52の各マクロブロックの量子化パラメータを決定する。量子化パラメータ決定部30の詳細については、後述する。
【0019】
アクティビティ算出部4は、非圧縮画像データ52のマクロブロック内の画素のばらつき度合いを示すアクティビティACTを算出する。アクティビティACTは、マクロブロックごとに算出され、量子化パラメータの決定に用いられる。アクティビティACTは、たとえば、マクロブロック内の画素平均値と、各画素値との差分絶対値和として算出される。画素値として、画素の輝度値などが用いられる。
【0020】
図1では、アクティビティ算出部4を個別の機能ブロックとして示している。しかし、MPEG2デコーダ2が、アクティビティ算出部4を備えてもよい。この場合、アクティビティACTは、符号化パラメータ55の一部として、H.264エンコーダ3に入力される。あるいは、H.264エンコーダ3が、アクティビティ算出部4を備えていてもよい。
【0021】
{量子化パラメータ決定部30の構成}
図2は、量子化パラメータ決定部30の機能的構成を示すブロック図である。量子化パラメータ決定部30は、非圧縮画像データ52の各マクロブロックの量子化パラメータを算出するとともに、各マクロブロックの符号化モードを決定する。
【0022】
以下、符号化対象である非圧縮画像データ52のマクロブロックを、ターゲットMB(MacroBlock)と呼ぶ。ターゲットMBが属する非圧縮画像データ52のフレームを、ターゲットフレームと呼ぶ。
【0023】
量子化パラメータ決定部30は、イントラQP(Quantization Parameter)決定部31と、インターQP決定部32と、リミッタ33A,33Bと、セレクタ34,35と、コスト計算部36と、符号化モード決定部37とを備える。
【0024】
イントラQP決定部31は、ターゲットMBがイントラ符号化(フレーム内予測符号化)される場合に用いられるイントラ量子化パラメータ56を算出する。インターQP決定部32は、ターゲットMBがインター符号化(フレーム間予測符号化)される場合に用いられるインター量子化パラメータ57を算出する。イントラ量子化パラメータ56及びインター量子化パラメータ57は、ターゲットMBの符号化モードの決定結果に関係なく算出される。
【0025】
リミッタ33Aは、4×4画素単位でイントラ符号化を行う場合に用いられるイントラ量子化パラメータ56Aを出力する。リミッタ33Bは、8×8画素単位でイントラ符号化を行う場合に用いられるイントラ量子化パラメータ56Bを出力する。イントラ量子化パラメータ56は、16×16画素単位でイントラ符号化を行うときに用いられる。
【0026】
セレクタ34は、イントラ量子化パラメータ56,56A,56Bと、インター量子化パラメータ57とを入力する。セレクタ34は、符号化モード決定部37が決定した符号化モードに対応する量子化パラメータを、量子化パラメータQP_AVCとして出力する。
【0027】
セレクタ35は、イントラ量子化パラメータ56及びインター量子化パラメータ57を入力する。セレクタ35は、選択情報に基づいて、入力された二つの量子化パラメータのうちいずれかをコスト計算部36に出力する。
【0028】
コスト計算部36は、イントラ符号化及びインター符号化のそれぞれについて、符号化コストを計算する。符号化コストとは、ターゲットMBの発生符号量を推定する評価値である。コスト計算部36は、イントラコスト計算部36Aと、インターコスト計算部36Bとを備える。イントラコスト計算部36Aは、ターゲットMBをイントラ符号化したときの符号化コストを計算する。インターコスト計算部36Bは、ターゲットMBをインター符号化したときの符号化コストを計算する。
【0029】
符号化モード決定部37は、コスト計算部36から出力された符号化コストに基づいて、ターゲットMBの符号化モードを決定する。
【0030】
{マクロブロックの符号化モードの変化}
次に、マクロブロックの符号化モードの変化について説明する。図3は、Pピクチャとして符号化されたMPEG2データ51のフレーム(MPEG2フレーム)51Fを示す図である。図4は、図3に示すMPEG2フレーム51Fから変換されたH.264データ53のフレーム(H.264フレーム)53Fを示す図である。
【0031】
H.264フレーム53Fのピクチャ種別は、MPEG2フレーム51Fのピクチャ種別に対応する。図3及び図4に示すように、ターゲットフレームに対応するMPEG2フレーム51FがPピクチャとして符号化された場合、ターゲットフレームは、PピクチャとしてH.264方式で符号化される。同様に、MPEG2フレーム51FがIピクチャであれば、ターゲットフレームは、Iピクチャとして符号化される。
【0032】
ターゲットフレームがPピクチャまたはBピクチャとして符号化される場合、量子化パラメータ決定部30は、ターゲットMBの符号化モードを、イントラ符号化及びインター符号化のいずれかに決定する。
【0033】
上述したように、符号化モードは、ターゲットMBの符号化コストに基づいて決定される。したがって、MPEG2フレーム51Fでインター符号化されていたマクロブロックが、H.264フレーム53Fでインター符号化されるとは限らない。図3及び図4に示すように、マクロブロックM02は、MPEG2フレーム51Fではインター符号化されているが、H.264フレーム53Fではイントラ符号化されている。マクロブロックM05は、MPEG2フレーム51Fではイントラ符号化されているが、H.264フレーム53Fではインター符号化されている。
【0034】
量子化パラメータ決定部30は、マクロブロックごとにイントラ量子化パラメータ56及びインター量子化パラメータ57を算出する。このため、決定された符号化モードに応じた適切な符号化を実行することができる。
【0035】
{量子化パラメータ決定部30の動作}
以下、図2を参照して、量子化パラメータ決定部30が、ターゲットMBの量子化パラメータQP_AVCを出力するまでの動作を説明する。ここで、ターゲットフレームが、Pピクチャとして符号化されると仮定する。
【0036】
{イントラ量子化パラメータ56の算出}
まず、イントラ量子化パラメータ56の算出について説明する。イントラQP決定部31は、ターゲットMBのアクティビティACTをアクティビティ算出部4から入力する。イントラQP決定部31は、符号化パラメータ55をMPEG2デコーダ2から入力する。符号化パラメータ55は、MPEG2フレーム51Fのピクチャ種別を示す種別情報FT及び量子化ステップ平均値Qs_AVE_MP2を含む。量子化ステップ平均値Qs_AVE_MP2は、MPEG2フレーム51F内の各マクロブロックの量子化ステップ値の平均値である。
【0037】
基準値決定部311は、アクティビティACTと量子化ステップ平均値Qs_AVE_MP2とに基づいて、ターゲットMBの量子化ステップ値の基準となる基準値61を算出する。たとえば、ターゲットMBのアクティビティACTから、MPEG2フレーム51Fの各マクロブロックのアクティビティの平均値が減算される。基準値決定部311は、減算結果と、減算結果の大きさに応じた重み付け値とを乗算して、補正値を算出する。基準値決定部311は、量子化ステップ平均値Qs_AVE_MP2に補正値を加算して、基準値61を算出する。
【0038】
係数決定部312は、係数テーブル313を参照して、イントラ量子化パラメータ56の算出に用いるイントラ調整係数C1を決定する。図5は、係数テーブル313を示す図である。図5に示すように、H.264/AVC符号化モードの「Intra」に対応する行には、MPEG2フレーム51Fのピクチャ種別に応じたパラメータ「α_I」、「α_Ipb」が設定されている。ここで説明している例では、MPEG2フレーム51FがPピクチャであるため、係数決定部312は、パラメータ「α_Ipb」をイントラ調整係数C1として出力する。
【0039】
乗算器314は、イントラ調整係数C1を基準値61に乗算する。これにより、ターゲットMBがイントラ符号化される場合に用いられる量子化ステップ値62が算出される。QP変換部315は、予め設定された変換式に基づいて、量子化ステップ値62をイントラ量子化パラメータ56に変換する。
【0040】
イントラ量子化パラメータ56は、セレクタ34に入力される。セレクタ34に入力されたイントラ量子化パラメータ56は、16×16画素単位でイントラ符号化を実行するときに用いられる。
【0041】
{上限値の設定}
リミッタ33A,33Bは、イントラ量子化パラメータ56を入力する。リミッタ33Aは、ターゲットMBを4×4画素単位でイントラ符号化することを想定して、イントラ量子化パラメータ56に対する上限値を設定する。
【0042】
4×4画素単位のイントラ符号化の際に、イントラ量子化パラメータ56に対する上限値を設定する理由を説明する。イントラ量子化パラメータ56を用いて4×4画素単位でイントラ符号化を行った場合、16×16画素単位でイントラ符号化を行った場合よりも発生符号量が増加する。発生符号量を抑制するために、4×4画素単位のイントラ符号化の際には、ターゲットMBの画質が劣化しやすくなる。このため、イントラ量子化パラメータ56に上限値を設定することにより、ターゲットMBの画質の劣化を防止することができる。
【0043】
リミッタ33Aにおいて、上限値は、ターゲットMBのアクティビティACTに基づいて決定される。アクティビティACTの増加に応じて上限値が増加する変換式が、リミッタ33Aに設定されている。イントラ量子化パラメータ56が、アクティビティACTに基づいて設定した上限値よりも大きい場合、リミッタ33Aは、イントラ量子化パラメータ56を上限値に変更する。リミッタ33Aから出力される量子化パラメータを、イントラ量子化パラメータ56Aとする。イントラ量子化パラメータ56Aは、セレクタ34に入力される。
【0044】
リミッタ33Bは、ターゲットMBを8×8画素単位でイントラ符号化することを想定して、イントラ量子化パラメータ56に対する上限値を設定する。リミッタ33Bの上限値は、リミッタ33Aと同様に、ターゲットMBのアクティビティACTに基づいて決定される。ただし、リミッタ33Bの上限値は、リミッタ33Aで設定される上限値よりも大きい。これは、ターゲットMBの画質の劣化の程度が、4×4画素単位よりも、8×8画素単位でイントラ符号化したときの方が小さいためである。リミッタ33Bから出力される量子化パラメータを、イントラ量子化パラメータ56Bとする。イントラ量子化パラメータ56Bは、セレクタ34に入力される。
【0045】
{インター量子化パラメータ57の算出}
インターQP決定部32は、イントラQP決定部31と同様の処理を行うことにより、インター量子化パラメータ57を決定する。インターQP決定部32において、イントラQP決定部31と同様の機能ブロックについては、説明を省略する。係数決定部322がインター調整係数C2を出力する点が、イントラQP決定部31と異なる。
【0046】
図5を参照して、H.264/AVC符号化モードの「Inter」に対応する行には、MPEG2フレーム51Fのピクチャ種別に応じたパラメータ「α_I」、「α_P」、及び「α_B」が設定されている。ここで説明している例では、MPEG2フレーム51FがPピクチャであるため、係数決定部322は、パラメータ「α_P」をインター調整係数C2として出力する。
【0047】
基準値61とインター調整係数C2とが乗算されることにより、インター符号化に対応した量子化ステップ値63が算出される。QP変換部315は、量子化ステップ値63をインター量子化パラメータ57に変換する。インター量子化パラメータ57は、セレクタ34,35にそれぞれ入力される。
【0048】
このように、量子化パラメータ決定部30は、イントラQP決定部31及びインターQP決定部32を備えることにより、イントラ量子化パラメータ56及びインター量子化パラメータ57を並行して決定できる。したがって、量子化パラメータQP_AVCを決定する処理を高速化できる。
【0049】
{符号化コストの計算}
量子化パラメータ決定部30は、ターゲットMBの符号化コストを計算する。計算した符号化コストに基づいて、ターゲットMBの符号化モードが、イントラ符号化及びインター符号化のいずれかに決定される。
【0050】
セレクタ35は、イントラ量子化パラメータ56及びインター量子化パラメータ57を入力する。セレクタ35は、選択情報に基づいて、符号化コストの計算に用いる量子化パラメータを決定する。選択情報は、トランスコーダ1の動作を制御する制御部(図示省略
)などから入力される。
【0051】
選択情報では、イントラ量子化パラメータ56、インター量子化パラメータ57、及びMPEG2フレーム51Fのピクチャ種別のいずれかが指定される。たとえば、選択情報でインター量子化パラメータ57が指定された場合、セレクタ35は、インター量子化パラメータ57を出力する。ピクチャ種別が指定された場合、セレクタ35は、MPEG2フレーム51FがIピクチャのときには、イントラ量子化パラメータ56を出力し、MPEG2フレーム51FがP,Bピクチャのときには、インター量子化パラメータ57を出力する。
【0052】
コスト計算部36において、イントラコスト計算部36Aは、入力された量子化パラメータを用いて、4×4画素、8×8画素、及び16×16画素単位でイントラ符号化したときの符号化コストを計算する。つまり、イントラコスト計算部36Aでは、イントラ符号化時の予測単位に応じた3つの符号化コストが計算される。イントラコスト計算部36Aは、計算した3つの符号化コストのうち、最小の符号化コストを特定する。特定された最小の符号化コストと、最小の符号化コストに対応する予測単位を示す情報とが、コスト情報64Aとして、符号化モード決定部37に出力される。
【0053】
インターコスト計算部36Bは、入力された量子化パラメータを用いて、インター符号化時の符号化コストを計算する。計算した符号化コストが、コスト情報64Bとして出力される。
【0054】
符号化モード決定部37は、コスト情報64A及びコスト情報64Bに基づいて、ターゲットMBの符号化モードを決定する。符号化コストの小さい符号化モードが、ターゲットMBの符号化モードとして決定される。符号化モード決定部37は、決定した符号化モードをセレクタ35に通知する。セレクタ35は、通知された符号化モードに対応する量子化パラメータを、ターゲットMBの符号化に用いる量子化パラメータQP_AVCとして出力する。
【0055】
セレクタ34は、インター符号化が符号化モードとして指定されれば、インター量子化パラメータ57を量子化パラメータQP_AVCとして出力する。H.264エンコーダ3は、インター量子化パラメータ57を利用してターゲットMBをインター符号化する。同様に、8×8画素単位でのイントラ符号化が符号化モードとして指定されれば、H.264エンコーダ3は、イントラ量子化パラメータ56Bを利用して、8×8画素単位のイントラ符号化を実行する。
【0056】
以下、MPEG2フレーム51FがIピクチャである場合における、量子化パラメータ決定部30の動作を説明する。この場合、ターゲットMBがインター符号化されることがないため、インターQP決定部32は、インター量子化パラメータ57を出力しない。量子化パラメータ決定部30は、4×4画素、8×8画素、及び16×16画素単位のイントラ符号化のいずれかから符号化モードを決定する。
【0057】
以上説明したように、量子化パラメータ決定部30は、イントラ符号化及びインター符号化のそれぞれに対応した二つの量子化パラメータを生成する。量子化パラメータ決定部30は、イントラ符号化及びインター符号化のそれぞれについて符号化コストを計算して、符号化モードを決定する。H.264エンコーダ3は、決定された符号化モードに対応する量子化パラメータを用いて、ターゲットMBを符号化する。これにより、ターゲットMBが、符号化モードに応じた量子化パラメータにより符号化されるため、H.264フレーム53Fの各マクロブロックの画質のばらつきを防ぐことができる。したがって、トランスコーダ1は、H.264データ53の主観画質を向上させることができる。
【0058】
コスト計算部36は、イントラ符号化の符号化コストと、インター符号化の符号化コストとの計算に、共通の量子化パラメータを利用する。それぞれの符号化モードに応じた量子化パラメータを用いて符号化コストを計算する場合と比較して、符号化モードを正確に判定することができる。したがって、画質の劣化を防ぐことが可能となる。
【0059】
本実施の形態では、量子化パラメータ決定部30は、量子化パラメータを決定する機能部として、イントラQP決定部31及びインターQP決定部32とを備える例を説明した。しかし、イントラ量子化パラメータ56を決定した後に、イントラQP決定部31が、インター量子化パラメータ57も決定してもよい。これにより、量子化パラメータ決定部30がインターQP決定部32を備える必要がないため、回路規模を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 トランスコーダ
2 MPEG2デコーダ
3 H.264エンコーダ
4 アクティビティ算出部
30 量子化パラメータ決定部
31 イントラQP決定部
32 インターQP決定部
33A,33B リミッタ
34,35 セレクタ
36 コスト計算部
36A イントラコスト計算部
36B インターコスト計算部
37 符号化モード決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1符号化画像をデコードして非圧縮画像データを生成するデコーダと、
前記非圧縮画像データをエンコードして第2符号化画像データを出力するエンコーダと、
前記非圧縮画像データのマクロブロックの符号化に用いる量子化パラメータを決定する量子化パラメータ決定部と、
を備え、
前記量子化パラメータ決定部は、
前記マクロブロックをインター符号化する場合に用いるインター量子化パラメータと、イントラ符号化する場合に用いるイントラ量子化パラメータとを算出する算出部と、
前記マクロブロックの符号化モードを決定し、決定した符号化モードに基づいて前記インター量子化パラメータ及び前記イントラ量子化パラメータのいずれかを前記エンコード部に出力する符号化モード決定部と、
を備える画像変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像変換装置において、
前記算出部は、
前記第1符号化画像データのフレーム内の量子化ステップ値の平均値に基づいて量子化パラメータの基準値を算出する基準値算出部と、
インター符号化に対応するインター調整係数と、イントラ符号化に対応するイントラ調整係数とを、前記フレームの種別に基づいて決定する重み付け値決定部と、
を含み、
前記算出部は、前記基準値と前記インター調整係数とに基づいてインター量子化パラメータを算出し、前記基準値と前記イントラ調整係数とに基づいてイントラ量子化パラメータを算出する画像変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像変換装置において、
前記符号化モード決定部は、
前記符号化モードの決定に用いる量子化パラメータを、前記インター量子化パラメータ及び前記イントラ量子化パラメータのいずれかから選択する選択部と、
選択された量子化パラメータに基づいて、前記マクロブロックをインター符号化した場合の符号化コストと、イントラ符号化した場合の符号化コストとを算出する符号化コスト算出部と、
を含み、
前記符号化モード決定部は、算出した符号化コストに基づいて前記符号化モードを決定する画像変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像変換装置において、
前記エンコーダは、マクロブロックをイントラ符号化するときに、複数の予測単位のうちいずれか一つの予測単位でイントラ符号化を実行し、
前記符号化コスト算出部は、
各予測単位に対応した複数の符号化コストを算出し、算出した前記複数の符号化コストに基づいて、前記マクロブロックをイントラ符号化するときの予測単位を決定するイントラ符号化コスト決定部、
を含む画像変換装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像変換装置において、
前記量子化パラメータ決定部は、
前記インター量子化パラメータを算出する第1量子化パラメータ算出部と、
前記イントラ量子化パラメータを算出する第2量子化パラメータ算出部と、
を含む画像変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−259178(P2011−259178A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131494(P2010−131494)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】