説明

画像強調装置及び方法

【課題】特殊な光源を用いることなく、画像に含まれる特定の要素を強調することが可能な画像処理装置及び方法を得る。
【解決手段】画像取得部101は、映像信号作成部221から原画像を取得して、トーンカーブ作成部102に送信する。トーンカーブ作成部102は、トーンカーブ作成処理を実行して、原画像が有する複数の原輝度値と観察対象物の特性とに基づいてトーンカーブを作成する。画像強調部103は、トーンカーブを用いて原輝度値を変換輝度値に変換する。この変換輝度値が変換画像を構成する。画像合成部104は、合成関数を用いて重み付けした変換輝度値を加算、すなわち複数の変換画像を1つの合成画像に合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像に含まれる特定要素を強調する画像処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置は、観察対象物を撮像する内視鏡スコープと、画像処理を行う内視鏡プロセッサと、観察対象物を照明する照明光を生成する光源とを備える。観察対象物に応じて照明光の波長を変更するため、発光波長が異なる複数種の光源を有する内視鏡装置が知られている。内視鏡装置は、複数種の光源の各出射光量の比率を変更して、照明光の色調を変更する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−36361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来広く用いられている内視鏡装置は、1つの光源により照明光を得る構成であるため、複数種の光源を用いるために、専用の内視鏡スコープ及び内視鏡プロセッサを使用する必要がある。また、複数の光源を内視鏡装置に搭載すると、内視鏡装置のコスト、大きさが大きくなる。また、光源はノイズ源であるため、複数の光源が発するノイズに対して対策を施す必要が生じる。
【0005】
本発明はこれらの問題を鑑みてなされたものであり、特殊な光源を用いることなく、画像に含まれる特定の要素を強調することが可能な画像処理装置及び方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1の発明による画像処理装置は、複数の輝度値からなる画像を取得する画像取得部と、複数の輝度値から求められる計算値及び観察対象物の特性に応じて決定される変換関数を用いて輝度値を変換輝度値に変換する変換部とを備えることを特徴とする。
【0007】
計算値は、複数の輝度値の最大輝度値、最小輝度値、及び平均輝度値が好適である。
【0008】
変換部は、ガウス関数に基づいて変換関数を決定し、観察対象物の特性に応じてガウス関数の分散を決定することが好ましい。
【0009】
変換部は、ガウス関数を所定の範囲において累積して得られた累積分布に基づいて変換関数を決定することが好ましい。
【0010】
変換部は、累積分布を正規化して得られた正規化累積分布に基づいて変換関数を決定することが好ましい。
【0011】
変換部は、正規化累積分布の最小輝度値が複数の輝度値の最小輝度値となるように正規化累積分布を変換して得られた最小側分布に基づいて、変換関数を決定することが好ましい。
【0012】
変換部は、正規化累積分布の最大輝度値が既定の所定値よりも小さな値となるように正規化累積分布を変換して得られた分布に基づいて、変換関数を決定することが好ましい。
【0013】
前記画像処理装置は、複数の変換輝度値を合成して1つの合成画像を作成する合成部をさらに備えてもよく、変換部は、複数の変換関数を決定し、複数の変換関数ごとに変換輝度値を算出し、合成部は、複数の変換関数ごとに算出された変換輝度値を合成して1つの合成画像を作成することが好ましい。
【0014】
撮像部は連続的に画像を出力し、変換部は、撮像部が出力した画像に基づいて変換輝度値を連続的に出力し、合成部は、変換部が出力した変換輝度値に基づいて合成画像を連続的に作成してもよい。
【0015】
本願第2の発明による画像処理方法は、複数の輝度値からなる画像を取得するステップと、複数の輝度値から計算値を求めるステップと、計算値及び観察対象物の特性に応じて変換関数を決定するステップと、変換関数を用いて輝度値を変換輝度値に変換するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特殊な光源を用いることなく、画像に含まれる特定の要素を強調することが可能な画像処理装置及び方法を得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】画像処理装置を概略的に示したブロック図である。
【図2】ガウス関数を示したグラフである。
【図3】ガウス関数から累積値を求めて正規化する処理を示したグラフである。
【図4】画像の暗部及び明部を調整する処理を示したグラフである。
【図5】第1のトーンカーブを示したグラフである。
【図6】第2のトーンカーブを示したグラフである。
【図7】トーンカーブ作成処理を示したフローチャートである。
【図8】合成関数を示したグラフである。
【図9】合成関数作成処理を示したフローチャートである。
【図10】変換処理を示したフローチャートである。
【図11】原画像から変換画像を経て合成画像を作成する工程を模式的に示した図である。
【図12】合成画像にさらに変換画像を合成する工程を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明における画像処理装置100について添付図面を参照して説明する。まず、図1を用いて画像処理装置100の構成について説明する。本実施形態では、画像処理装置100は内視鏡装置200の一部として設けられる。
【0019】
内視鏡装置200は、観察対象物を撮像する内視鏡スコープ210と、画像処理を行う内視鏡プロセッサ220と、ディスプレイ230とを備える。
【0020】
内視鏡スコープ210は、被験者の体内に挿入されて、観察対象物を撮像する。そして、撮影画像を内視鏡プロセッサ220に送信する。
【0021】
内視鏡プロセッサ220は、映像信号作成部221と、メモリ222と、映像出力調整部223と、画像処理装置100とを備える。映像信号作成部221は、内視鏡スコープ210から撮影画像を受信して、所定の画像処理を施して原画像を作成する。原画像は、画素ごとにR(赤)、G(緑)、B(青)の輝度値を有する画像であって、画像処理装置100及びメモリ222に送信される。メモリ222は、映像信号作成部221及び画像処理装置100に接続され、画像を処理する間、一時的に画像を記憶する。
【0022】
映像信号作成部221は、画像処理装置100とディスプレイ230に接続される。画像処理装置100が出力した画像は、映像信号作成部221によって受信されて、ディスプレイ230の表示方式に応じた画像信号に変換された後、ディスプレイ230に送信される。ディスプレイ230は、映像信号作成部221から画像信号を受信して画像として表示する。
【0023】
画像処理装置100は、画像取得部101と、トーンカーブ作成部102と、画像強調部103と、画像合成部104とを備え、後述する変換処理を実行する。変換処理は、原画像から変換画像を経て合成画像を作成する処理である。トーンカーブ作成部102と画像強調部103とが変換部を成し、画像合成部104が合成部を成す。
【0024】
画像取得部101は、映像信号作成部221から原画像を取得して、トーンカーブ作成部102に送信する。トーンカーブ作成部102は、後述するトーンカーブ作成処理を実行して、原画像が有する複数の原輝度値と観察対象物の特性とに基づいてトーンカーブを作成する。トーンカーブは、R(赤)、G(緑)、B(青)の輝度値ごとに作成される。すなわち、1つの原画像に対して3つのトーンカーブが作成される。ここで、観察対象物の特性とは、観察対象物に含まれる様々な要素のうち、ユーザが観察を希望する要素をいう。例えば、観察対象物が人体の粘膜である場合、人体の粘膜は、血管、病変部、正常部など、様々な要素を含む。ユーザが血管を観察したいと希望する場合、観察対象物の特性は血管固有の色、つまり赤色近辺の波長である。
【0025】
画像強調部103は、トーンカーブを用いて原輝度値を変換輝度値に変換する。この変換輝度値が変換画像を構成する。すなわち、原画像と変換画像とは一対一で対応し、画像強調部103は原画像を変換画像に変換する。変換画像は、ユーザが観察を希望する要素を強調した画像である。画像強調部103は、複数の原画像に対して各々変換輝度値を作成し、メモリ222に送信する。メモリ222は、作成された変換輝度値を記憶する。
【0026】
画像合成部104は、メモリ222から複数の変換画像に対応する変換輝度値を読み出し、合成関数を用いて重み付けした変換輝度値を加算、すなわち複数の変換画像を1つの合成画像に合成する。合成関数は、ユーザが観察を希望する要素に応じて変換輝度値に重み付けをする関数であって、後述する合成関数作成処理を用いて画像合成部104によって作成される。
【0027】
次に、図2から図7を用いてトーンカーブ作成処理について説明する。まず、トーンカーブ作成処理の概略について説明する。トーンカーブ作成処理は、まず、最大輝度値、最小輝度値、平均輝度値と、観察対象物の特性に応じて決定される分散とを用いてガウス関数を決定する。次に、ガウス関数を最小輝度値から最大輝度値まで積分して累積分布を求める。そして、累積分布を正規化して正規化累積分布を求める。さらに、正規化累積分布の最小輝度値が原画像の最小輝度値と同じ値となるように正規化累積分布を変換して最小側分布を求める。そして、平均輝度値よりも小さい側の分布に最小側分布を採用し、平均輝度値よりも大きい側の分布に正規化累積分布を採用した分布を作成する。これにより得られた分布に、所定値を乗じて変換関数、すなわちトーンカーブを作成する。所定値は、経験や実験等によって予め決定される値である。
【0028】
次に、トーンカーブ作成処理の詳細について説明する。図2を用いてガウス関数を決定する手順について説明する。図2は、輝度値を出現確率に応じてグラフ化したものである。ここで決定されるガウス関数の分散は、輝度値の平均値よりも小さい側と大きい側で異なる。小さい側は分散σ1、大きい側は分散σ2を用いる。分散σ1、σ2は、観察対象物の特性に応じて決定されるパラメータを用いて算出され、メモリ222に記憶される。パラメータは、経験や実験等によって予め決定される。出現確率が10−15であるときの輝度値を最大輝度値及び最小輝度値とする。平均輝度値よりも小さい側では、最小輝度値、平均輝度値、及び分散σ1によって、ガウス関数が決定され、平均輝度値よりも大きい側では、輝度最大輝度値、平均輝度値、及び分散σ2によって、ガウス関数が決定される。
【0029】
次に、ガウス関数を用いて累積分布及び正規化累積分布を求める手順について図3を用いて説明する。図3(a)に示すガウス関数を最小輝度値0から最大輝度値255まで積分し、累積分布を求める。求めた累積分布を図3(b)に示す。次に、累積分布の最大輝度値maxと最小輝度値minとの差で、累積分布から最小輝度値minを引いた値を除して正規化累積分布を求める。正規化累積分布を図3(c)に示す。
【0030】
次に、最小側分布を求める手順について図4(a)を用いて説明する。最小側分布は、正規化累積分布の最小輝度値における累積値が原画像の最小輝度値における累積値と同じ値になるように、正規化累積分布の平均輝度値から最小輝度値までの値を所定の関数を用いて変換することにより得られる。最小側分布g(x)を以下に示す。
g(x)=f(x)・(正規化累積分布の平均輝度値における累積値−原輝度値の最小輝度値における累積値)/正規化累積分布の最大輝度値における累積値+原輝度値の最小輝度値における累積値
ここで関数f(x)は、図3(c)に示す正規化累積分布であり、xは0以上平均輝度値以下の値であって、f(x)は0から1までの値をとる。
【0031】
その後、処理は、平均輝度値よりも小さい側の分布に最小側分布を採用し、平均輝度値よりも大きい側の分布に正規化累積分布を採用した分布を作成する。この分布を図4(a)に示す。正規化累積分布の最小輝度値が原画像の最小輝度値と同じ値になるように最小側分布を決定することにより、原画像と変換画像の最小輝度値を一致させることができる。最小輝度値は画像の黒レベルを表す値であるため、原画像と変換画像の黒レベルを一致させることができる。
【0032】
次に、図4(a)に示す分布を用いて変換関数を求める手順について図4(b)を用いて説明する。図4(a)に示す分布に、所定値を乗じて変換関数、すなわちトーンカーブを作成する。所定値は、例えば235が用いられる。輝度値が取り得る最大値である255を所定値として用いると画像中にハレーション、つまり白飛びを生じることがあるが、235を所定値として用いると白飛びを減少させることができる。作成されたトーンカーブの一例を図5及び図6に示す。図5は第1のトーンカーブを示し、例えば血管を強調するために用いられる。図6は第2のトーンカーブを示し、例えば発赤部を強調するために用いられる。発赤部は、病変等により周囲よりも赤みがかった部位である。
【0033】
次に、図7を用いてトーンカーブ作成処理についてフローチャートを用いて説明する。トーンカーブ作成処理は、後述する変換処理の中で実行される。
【0034】
始めのステップS701では、最小輝度値min、平均輝度値ave、及び分散σ1を用いて、平均輝度値aveよりも小さい側におけるガウス関数Gaussfloor(v)を決定する。そして、次のステップS702では、最大輝度値max、平均輝度値ave、及び分散σ2を用いて、平均輝度値aveよりも大きい側におけるガウス関数Gausscap(v)を決定する。そして変数vに0を代入して初期化する。
【0035】
次のステップS703からS711では、累積分布Cumulo(v)を作成する。ステップS703では、変数vが平均輝度値aveよりも小さいか否かを判断する。小さい場合、処理はステップS704に進み、小さくない場合、処理はステップS706に進む。
【0036】
ステップS704では、累積分布Cumulo(v)にガウス関数Gaussfloor(v)の値を代入する。そして次のステップS705では、変数vを1だけ増やしてステップS703に戻る。
【0037】
ステップS706では、累積分布Cumulo(v)にガウス関数Gausscap(v)の値を代入する。そして次のステップS707では、変数vを1だけ増やす。そして次のステップS708では、変数vが最大輝度値maxよりも大きいか否かを判断する。大きい場合、最大輝度値maxまで代入されたと判断できるため、処理はステップS711に進む。大きくない場合、未だ最大輝度値maxまで代入されていないと判断できるため、処理はステップS703に戻り、ステップS706からS708を繰り返す。
【0038】
次のステップS709からS711では、累積分布Cumulo(v)を0から最大輝度値maxまで積分することにより、累積分布Cumulo(v)を最終的に算出する。ステップS709では、変数vに1を代入して初期化する。そして、次のステップS710では、変数vが最大輝度値max以下であるか否かを判断する。最大輝度値max以下である場合、未だ最大輝度値maxまで累積されていないと判断できるため、処理はステップS711に進み、最大輝度値max以下でない場合、最大輝度値maxまで累積されたと判断できるため、処理はステップS721に進む。
【0039】
ステップS711では、累積分布Cumulo(v)に、累積分布Cumulo(v−1)の値を加算する。そして、ステップS710に戻る。これを繰り返すことにより、累積分布Cumulo(v)が算出される。
【0040】
次のステップS721及びS722では、累積分布を正規化する。ステップS721では、累積分布Cumulo(v)の最大輝度値Maxcumuloと最小輝度値Mincumuloを求める。そして次のステップS722では、最大輝度値Maxcumuloと最小輝度値Mincumuloを用いて、累積分布Cumulo(v)を正規化し、正規化累積分布NCumulo(v)を求める。正規化累積分布NCumulo(v)は以下の式によって示される。
NCumulo(v)=(Cumulo(v)−Mincumu)/(Maxcumu−Mincumu
【0041】
次のステップS731からS733では、最小側分布を求め、平均輝度値よりも小さい側の分布に最小側分布を採用し、平均輝度値よりも大きい側の分布に正規化累積分布を採用した分布を作成する。変数vに0を代入して初期化した後、ステップS731に進む。
【0042】
ステップS731では、変数vに平均輝度値aveを代入して初期化する。次のステップS732では、以下の式に従って、正規化累積分布NCumulo(v)の最小輝度値から平均輝度値までを最小側分布に変換する。
NCumulo(v)=NCumulo(v)・(NCumulo(ave)−Cumulo(min))/NCumulo(ave)+Cumulo(min)
ここで、NCumulo(ave)は、正規化累積分布の平均輝度値における累積値を表し、Cumulo(min)は、原輝度値の最小輝度値における累積値を表す。
【0043】
そして、次のステップS733では、vを1つ増やして、再度ステップS731を実行する。これにより得られた分布に所定値を乗じて変換関数、すなわちトーンカーブを作成する。トーンカーブは、ルックアップテーブルの形式でメモリ222に記憶される。そして、処理が終了する。
【0044】
次に、図8及び図9を用いて合成関数作成処理について説明する。合成関数作成処理は、合成関数を作成する処理である。合成関数は、色差信号Crを用いて作成され、画像の赤みに応じて輝度値に乗じられる重みを表す。第1から第3の合成関数を例として図8に示す。強調したい観察対象物に応じて、第1から第3の合成関数が用いられる。第2の合成関数は、汎用的に用いることが可能な関数である。第3の合成関数は、病変部を強調することが可能な関数である。一般に、正常部は赤みが少なく、病変部は赤みが多い。そのため、赤みを帯びていない部分に加える重みを減らすことにより、第3の合成関数は病変部を強調する。図8に示すグラフにおいて、赤みの代わりに明るさを軸とした場合、第1の合成関数は、合成画像の明るさを改善する。すなわち、変換画像の明るい部分に大きな重みを加えることにより、合成関数の明るさを改善できる。
【0045】
次に、図9を用いて合成関数作成処理についてフローチャートを用いて説明する。合成関数作成処理は、後述する変換処理の中で実行される。ここでは一例として、第2の合成関数を作成する処理について説明する。
【0046】
始めのステップS901では、画素(x,y)が有する赤輝度値Img(r,x,y)、緑輝度値Img(g,x,y)、青輝度値Img(b,x,y)を用いて、色差信号Cr(x,y)を求める。
【0047】
次のステップS902では、色差信号Cr(x,y)の最大値Crmax及び最小値Crminを求める。そして次のステップS903では、以下の式を合成関数Combine(x,y)として作成する。
Combine(x,y)=(Cr(x,y)−Crmin)/(Crmax−Crmin
そして、処理が終了する。
【0048】
色差信号Cr(x,y)を用いて合成関数Combine(x,y)を作成することにより、赤色を含む部位をより強調することができる。
【0049】
次に、図10及び図11を用いて変換処理について説明する。変換処理は、原画像から合成画像を作成する処理であって、映像信号作成部221から原画像を受信する度に実行される。
【0050】
始めのステップS1001では、原画像OImg(x,y)をメモリ222に保存する。原画像は既定の数だけ準備され、添字iは0から既定の数未満の値を取る。一例として図11に原画像11(a)を示す。次のステップS1002では、原画像OImg(x,y)を構成する輝度値の最大値max、最小値min、及び平均値aveを求める。
【0051】
次のステップS1003では、トーンカーブを新たに作成するか否かを判断する。新たに作成する場合、処理はステップS1004に進み、作成しない場合、処理はステップS1007に進む。
【0052】
ステップS1004では、トーンカーブ作成処理を実行してトーンカーブを作成する。トーンカーブは、ルックアップテーブルLookUp(v)の形式でメモリ222に保存される。
【0053】
次のステップS1005では、トーンカーブを原画像に適用し、変換画像CImg(x,y)を作成する。図11に変換画像11(b)及び11(c)の一例を示す。そして、処理はステップS1003に戻って再度ステップS1004及びS1005を実行して、原画像に対応する数だけトーンカーブを作成する。原画像は、RGBの3つの輝度を有するため、原画像に対応する数とは、原画像の数の3倍である。そして、原画像の数の3倍だけトーンカーブを作成し終えると、ステップS1003においてステップS1006に進む。
【0054】
ステップS1006では、合成関数作成処理を実行して合成関数Combine(x,y)を作成する。図11に一例として合成関数を画像11(d)として示す。画像11(d)において明るい部分は重みが大きく、暗い部分は重みが小さい。そして次のステップS1007において、変換画像CImg(x,y)を合成関数Combine(x,y)で重み付けしたのちに合計し、合成画像を作成する。変換画像11(b)を画像11(d)で重み付けして変換画像11(c)に加えて得られた合成画像11(e)を一例として図11に示す。そして、処理が終了する。
【0055】
次に、合成画像を作成する他の手順について図12を用いて説明する。ここでは、合成画像に変換画像を合成してさらに合成画像を作成する。原画像12(a)から変換画像12(b)及び12(c)を経て中間合成画像12(d)を得るまでの手順は前述と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
中間合成画像12(d)を得た後、トーンカーブ作成部102は、さらにトーンカーブを作成し、画像強調部103は、トーンカーブを用いて変換画像12(e)を作成する。そして、画像合成部104は、さらに合成関数を作成し、この合成関数を用いて中間合成画像12(d)に変換画像12(e)を合成する。そして、合成画像12(f)を得る。このように、合成画像に対してさらに変換画像を合成することも可能である。中間合成画像12(d)に黒つぶれが生じていても、黒つぶれに対応する画素を明るくした変換画像を合成することによって、黒つぶれを無くすことができる。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、特殊な光源を用いることなく、画像に含まれる特定の要素を強調することができる。
【0058】
また、内視鏡スコープ210が連続的に出力した画像に対して、画像強調部が変換輝度値を連続的に出力し、画像合成部が合成画像を連続的に作成すれば、動画における特定部位を強調してディスプレイ230に表示できる。
【0059】
なお、画像処理装置100は、内視鏡プロセッサ220以外の装置に備えられても良い。
【0060】
また、RGBチャンネルの輝度値を用いてトーンカーブを作成するのではなく、Gチャンネルの輝度情報や、色差信号YCrCbのCrを用いて作成してもよい。正常粘膜の表面構造や腫瘍の表面構造を強調することができる。
【0061】
また、色差信号Crを用いて合成関数を算出したが、色差信号Cr以外の信号を用いても良い。
【符号の説明】
【0062】
100 画像処理装置
101 画像取得部
102 トーンカーブ作成部
103 画像強調部
104 画像合成部
200 内視鏡装置
210 内視鏡スコープ
220 内視鏡プロセッサ
221 映像信号作成部
222 メモリ
223 映像出力調整部
230 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の輝度値からなる画像を取得する画像取得部と、
前記複数の輝度値から求められる計算値及び観察対象物の特性に応じて決定される変換関数を用いて前記輝度値を変換輝度値に変換する変換部とを備える画像処理装置。
【請求項2】
前記計算値は、前記複数の輝度値の最大輝度値、最小輝度値、及び平均輝度値である請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記変換部は、ガウス関数に基づいて前記変換関数を決定し、前記観察対象物の特性に応じてガウス関数の分散を決定する請求項1から2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記変換部は、前記ガウス関数を所定の範囲において累積して得られた累積分布に基づいて前記変換関数を決定する請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記変換部は、前記累積分布を正規化して得られた正規化累積分布に基づいて前記変換関数を決定する請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記変換部は、前記正規化累積分布の最小輝度値が前記複数の輝度値の最小輝度値となるように前記正規化累積分布を変換して得られた最小側分布に基づいて、前記変換関数を決定する請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記変換部は、前記正規化累積分布の最大輝度値が既定の所定値よりも小さな値となるように前記正規化累積分布を変換して得られた分布に基づいて、前記変換関数を決定する請求項5又は6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
複数の前記変換輝度値を合成して1つの合成画像を作成する合成部をさらに備え、
前記変換部は、複数の変換関数を決定し、前記複数の変換関数ごとに変換輝度値を算出し、
前記合成部は、前記複数の変換関数ごとに算出された変換輝度値を合成して1つの合成画像を作成する請求項1から7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記撮像部は連続的に画像を出力し、
前記変換部は、前記撮像部が出力した画像に基づいて前記変換輝度値を連続的に出力し、
前記合成部は、前記変換部が出力した変換輝度値に基づいて前記合成画像を連続的に作成する請求項1から8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
複数の輝度値からなる画像を取得するステップと、
前記複数の輝度値から計算値を求めるステップと、
前記計算値及び観察対象物の特性に応じて変換関数を決定するステップと、
前記変換関数を用いて前記輝度値を変換輝度値に変換するステップとを備える画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−5884(P2013−5884A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139807(P2011−139807)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】