画像形成システム、判定基準設定装置及びプログラム
【課題】過去に保守要求に至った画像形成装置における時系列的な異常の発生傾向を保守判定の基準として設定するに際し、処理負担を軽減しつつ、より的確な保守判定の基準を設定する。
【解決手段】基準情報選定部71が、複数の画像形成装置10で構成されるグループにおける異常の発生に関し、異常の種別毎に、異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置の累計台数の分布と、異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守が施された画像形成装置の累計台数の分布との少なくとも一方を用いて、当該分布において予め定められた基準値を上回る異常の発生回数を特定し、当該特定した発生回数以上の異常が発生した画像形成装置で構成されるサブグループを抽出し、基準発生パターン生成部65が、当該サブグループについて保守が施された場合の時系列的な異常の発生傾向に基づいて保守判定の基準を設定する。
【解決手段】基準情報選定部71が、複数の画像形成装置10で構成されるグループにおける異常の発生に関し、異常の種別毎に、異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置の累計台数の分布と、異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守が施された画像形成装置の累計台数の分布との少なくとも一方を用いて、当該分布において予め定められた基準値を上回る異常の発生回数を特定し、当該特定した発生回数以上の異常が発生した画像形成装置で構成されるサブグループを抽出し、基準発生パターン生成部65が、当該サブグループについて保守が施された場合の時系列的な異常の発生傾向に基づいて保守判定の基準を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム、判定基準設定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
用紙等の記録材に画像を形成して出力する画像形成機能を備えた画像形成装置において、画像形成機能の動作に支障をきたす異常(紙詰まりや転写不良等)が頻発すると、画像形成装置の利用者に不便を生じることになる。そこで、このような状況に陥った画像形成装置に対する速やかな保守作業の実施が望まれる。
【0003】
上記のように画像形成装置などの装置を対象として保守の必要性を判定する技術に関し、これまでに種々の発明が提案されている。
【0004】
例えば、被管理複写機個々の不良発生頻度を計算し、対象となる複写機と同一機種のトータル不良発生頻度の平均値を計算して両者の算出結果を比較し、その比較結果に基づいて警告を発する発明や、被管理複写機個々における不良発生頻度を所定期間分保持し、各期間の不良発生頻度の上昇率が指定係数以上であれば警告を発する発明が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
例えば、警告判定要因を、最近の複数回の期間不良発生頻度の平均値とするか、あるいはリセット後の不良発生頻度と期間不良発生頻度をポイント化し、両者のポイントを掛け合わせた値とすることによって一時的な不良発生頻度の上昇による誤判断を防止する発明や、不良発生頻度の推移傾向が確実に低下する傾向であれば警告を出さないように判定することにより不良発生頻度が低下しているなかで、ほぼ一定期間毎の不良発生頻度やリセット後の不良発生頻度値が基準値を超えた場合にも警告を出さないようにする発明が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
例えば、障害の種類毎に重み付けを行い、その重み係数と発生頻度とを掛け合わせることによって障害率を計算し、その障害率があらかじめ設定された閾値を超えた場合にのみサービスセンターやユーザ等外部に障害発生を通知する発明が提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
例えば、ログデータをもとに印刷装置の障害やイベントの発生頻度を記録し、一定期間ごとに定められた基準値と比較することにより、部品の劣化や使用方法の問題などを自動的に発見し報告する発明や、前回比較と今回比較の発生頻度を比較して差分が基準値を超えたときに上位装置に報告する発明が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−167009号公報
【特許文献2】特開平09−230753号公報
【特許文献3】特開2006−007516号公報
【特許文献4】特開2008−006757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、過去に保守要求に至った画像形成装置における異常の時系列的な発生傾向を保守判定の基準として設定するに際し、処理負担を軽減しつつ、より的確な保守判定の基準を設定することが可能な技術を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る本発明は、複数の画像形成装置で構成されるグループにおける異常の発生に関し、異常の種別毎に、異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置の累計台数の分布と、異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守が施された画像形成装置の累計台数の分布との少なくとも一方を用いて、当該分布において予め定められた基準値を上回る異常の発生回数を基準回数として特定する特定手段と、前記特定手段により基準回数が特定された異常の種別について、前記グループに含まれる画像形成装置のうち異常の発生回数が当該基準回数以上の画像形成装置を特定し、当該特定した画像形成装置で構成されるサブグループを抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出されたサブグループについて保守が施された場合の該当する種別の異常の時系列的な発生傾向を生成し、当該異常の発生傾向が予め定められた設定条件を満たす場合に、当該異常の発生傾向を当該種別に係る保守判定の基準として設定する設定手段と、前記設定手段により発生傾向が設定された異常の種別について、保守判定の対象となる画像形成装置における直近の異常の時系列的な発生傾向と前記設定手段により設定された異常の発生傾向とを比較し、発生傾向の相関度の近さに応じて当該画像形成装置に対する保守の必要性を判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする画像形成システムである。
【0011】
請求項2に係る本発明は、請求項1に係る本発明において、前記判定手段は、前記特定手段により特定された発生回数以上の異常が直近に発生した画像形成装置を保守判定の対象として当該画像形成装置に対する保守の必要性を判定する、ことを特徴とする画像形成システムである。
【0012】
請求項3に係る本発明は、請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記設定手段は、保守が施された場合の時系列的な異常の発生傾向を、対象の画像形成装置に対する保守の要請日時を起点に遡った期間内に当該画像形成装置で発生した異常に基づいて生成する、ことを特徴とする画像形成システムである。
【0013】
請求項4に係る本発明は、請求項1乃至請求項3に係る本発明において、前記設定手段及び前記判定手段は、画像形成装置毎に、その画像形成装置で発生した異常を予め定められた時間長の期間単位で分類して処理するものであり、分類された異常の発生回数がゼロで且つ当該画像形成装置が非稼動の期間については、当該期間を非存在と見做して処理する、ことを特徴とする画像形成システムである。
【0014】
請求項5に係る本発明は、複数の画像形成装置で構成されるグループにおける異常の発生に関し、異常の種別毎に、異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置の累計台数の分布と、異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守が施された画像形成装置の累計台数の分布との少なくとも一方を用いて、当該分布において予め定められた基準値を上回る異常の発生回数を基準回数として特定する特定手段と、前記特定手段により基準回数が特定された異常の種別について、前記グループに含まれる画像形成装置のうち異常の発生回数が当該基準回数以上の画像形成装置を特定し、当該特定した画像形成装置で構成されるサブグループを抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出されたサブグループについて保守が施された場合の該当する種別の異常の時系列的な発生傾向を生成し、当該異常の発生傾向が予め定められた設定条件を満たす場合に、当該異常の発生傾向を当該種別に係る保守判定の基準として設定する設定手段と、を備えたことを特徴とする判定基準設定装置である。
【0015】
請求項6に係る本発明は、コンピュータに、複数の画像形成装置で構成されるグループにおける異常の発生に関し、異常の種別毎に、異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置の累計台数の分布と、異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守が施された画像形成装置の累計台数の分布との少なくとも一方を用いて、当該分布において予め定められた基準値を上回る異常の発生回数を基準回数として特定する特定機能と、前記特定機能により基準回数が特定された異常の種別について、前記グループに含まれる画像形成装置のうち異常の発生回数が当該基準回数以上の画像形成装置を特定し、当該特定した画像形成装置で構成されるサブグループを抽出する抽出機能と、前記抽出機能により抽出されたサブグループについて保守が施された場合の該当する種別の異常の時系列的な発生傾向を生成し、当該異常の発生傾向が予め定められた設定条件を満たす場合に、当該異常の発生傾向を当該種別に係る保守判定の基準として設定する設定機能と、を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、5、6に係る本発明によれば、過去に保守要求に至った画像形成装置における異常の時系列的な発生傾向を保守判定の基準として設定するに際し、本発明を適用しない場合に比べて、処理負担を軽減しつつ、より的確な保守判定の基準を設定することができる。
【0017】
請求項2に係る本発明によれば、画像形成装置に対する保守の必要性の判定に係る処理負担を、本発明を適用しない場合に比べて軽減することができる。
【0018】
請求項3に係る本発明によれば、保守の要請日時から保守の実施日時までの期間に発生した異常に起因して判定基準の数が増加することを抑制できる。
【0019】
請求項4に係る本発明によれば、異常発生回数がゼロで且つ非稼働の期間の存在に起因して判定基準の数が増加することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成システムの第1構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像形成システムに係る画像形成装置の構造を例示する図である。
【図3】第1構成例に係る監視装置の基準情報選定部の機能ブロックを例示する図である。
【図4】第1構成例における閾値決定を説明する図である。
【図5】第1構成例における閾値決定の処理フローを例示する図である。
【図6】第1構成例における情報選定の処理フローを例示する図である。
【図7】第1構成例における保守必要性判定の処理フローを例示する図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る画像形成システムの第2構成例を示す図である。
【図9】第2構成例に係る監視装置の異常情報選定部の機能ブロックを例示する図である。
【図10】第2構成例における閾値決定の処理フローを例示する図である。
【図11】第2構成例における情報選定の処理フローを例示する図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る画像形成システムの第3構成例を示す図である。
【図13】第3構成例に係る監視装置の情報補正部及び基準情報選定部の機能ブロックを例示する図である。
【図14】第3構成例におけるデータ補正を説明する図である。
【図15】第3構成例に係る監視装置の情報補正部及び異常情報選定部の機能ブロックを例示する図である。
【図16】第3構成例におけるデータ補正の処理フローを例示する図である。
【図17】第3構成例におけるデータ補正の結果を例示する図である。
【図18】本発明の一実施形態に係る画像形成システムにおいて監視装置として動作するコンピュータのハードウェア構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る画像形成システムの第1構成例を示してある。
本例の画像形成システムは、用紙等の記録材に画像を形成して出力する画像形成装置10と、画像形成装置10の管理者や保守担当者などに利用される保守情報入力端末50と、を有している。図1の例では、2台の画像形成装置10と1台の保守情報入力端末50とを示してあるが、これらの台数は任意である。
【0022】
また、本例の画像形成システムは、画像形成装置10及び保守情報入力端末50のそれぞれと通信網を介して有線又は無線により通信可能に接続され、これらから収集した情報を用いて画像形成装置10に対する保守作業の必要性を判定する監視装置60を有している。図1の例では、監視装置60を1台の装置により構成してあるが、各機能部を複数台の装置に分散した構成としてもよい。
【0023】
画像形成装置10は、用紙等の記録材に画像を形成して出力する画像形成機能を備えた装置である。画像形成装置10としては、プリンタ(印刷装置)、コピー機(複写装置)、ファクシミリ装置などの装置が挙げられるほか、印刷・複写・ファクシミリ等の機能を複合的に備えた複合機も含まれる。
【0024】
画像形成装置10の動作について、図2を参照して概略的に説明する。
図2には、画像形成装置10における画像形成部の構造を例示してある。
本例の画像形成装置10は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式であり、代表的な機能部として、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を用紙P(記録材の一例)に一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着器34と、を備えている。
また、本例の画像形成装置10は、各部の動作を制御する制御部40、利用者への情報の提示や利用者からの指示を受け付けるためのユーザインタフェース(UI)41、を備えている。
【0025】
本例において、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々は、矢印A方向に回転する感光体ドラム11(11Y,11M,11C,11K)を有する。また、感光体ドラム11の各々の周囲には、感光体ドラム11を帯電する帯電器12、感光体ドラム11上に露光ビームBmを照射して静電潜像を書き込む露光器13、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラムクリーナ17、といった各種の電子写真用デバイスが順次配設されている。
これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されており、中間転写ベルト15に対して接離可能に構成されている。
【0026】
また、本例の画像形成装置10は、用紙搬送系として、用紙収容部から用紙Pを取り出して二次転写部20へと送り込む給紙動作を行う給紙機構部31と、二次転写部20を通過した用紙Pを定着器34側へと搬送する搬送ベルト32と、用紙Pを定着器34の入口へとガイドする定着入口ガイド33と、定着器34から排紙された用紙Pをガイドする排紙ガイド35と、排紙ガイド58によりガイドされた用紙Pを装置外部に排出する排紙ロール36と、を備えている。
【0027】
すなわち、給紙機構部31により用紙収容部から二次転写部20へと給紙された用紙Pは、二次転写部20にて中間転写ベルト15上のトナー像が静電転写された後、中間転写ベルト15から剥離された状態で搬送ベルト32へと搬送される。そして、搬送ベルト32により、定着器34の動作速度に合わせて、定着入口ガイド33を介して定着器34まで搬送される。定着器34に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着器34によって熱及び圧力を加える定着処理を受けることで用紙P上に定着される。その後、定着画像が形成された用紙Pは、排紙ガイド35及び排紙ロール36を介して、装置外部に設けられた排紙収容部(図示せず)へと搬送される。
【0028】
また、本例の画像形成装置10は、画像形成動作中に装置内で発生した種々の異常を検出して異常情報を生成する機能を有している。異常情報には、主に動作異常に関連するエラーコード情報全般が含まれる。本例では、検出対象として予め定められた異常を検出しており、エラー(故障)の他に、ワーニング(警告)、インフォメーション(情報)といったレベルの異常も検出する。
各異常情報は、その異常の種別毎に予め割り当てられたエラーコードで識別される。例えば、手差し給紙部からの給紙が失敗した場合の異常情報には“75−XXX”のコードが割り当てられ、パンチ屑収容部がフル状態に近い場合の異常情報には“127−XXX”のコードが割り当てられる。本例では、画像形成部のみでも400種類以上のコードを割り当てている。
なお、例えば、「Fuser部(定着器34)でジャムが発生して用紙が排出されない」という訪問要請(保守要請)があった場合において、画像形成装置10で実際に発生した異常は、定着器34の故障であったり、定着器34の入出力部の用紙搬送ロールの磨耗による走行不良であったりし、一つの要因から種別(エラーコード)の異なる複数の異常情報が発生し得る。
【0029】
画像形成装置10により生成された異常情報は、無線又は有線による通信によって監視装置60へ送信される。異常情報の送信は、異常情報の生成に応じて直ちに行われてもよく、生成した異常情報を装置内部のメモリに蓄積しておき、予め定められた送信条件を満たしたことを契機に、蓄積しておいた異常情報を送信する構成を採用してもよい。具体的には、例えば、装置の動作モードが切り替わる際(通常モードから休止モードへの切り替え時など)に送信したり、監視装置60からの要求に応答して送信したり、予め定められた時間間隔毎(例えば、1日毎)に送信してもよい。
本例では、監視装置60へ送信する異常情報に、発生した異常の種別、その異常の発生日時、自装置を識別する装置ID情報などを含めている。
【0030】
次に、保守情報入力端末50について説明する。
本例の保守情報入力端末50は、画像形成装置10の設置場所に訪問して保守作業を実際に行った保守担当者(或いはその報告を受けた者など)から、その保守作業に関する保守情報の入力を受け付けて、監視装置60へ送信する。また、本例の保守情報入力端末50は、画像形成装置10に対する保守の必要性に係る判定結果に関する情報を監視装置60から受信して、画像形成装置10に設けられた表示装置により表示出力する。
本例では、本例において監視装置60へ送信する保守情報は、保守作業の実施日時、当該保守作業により除去された異常の種別、当該保守作業の対象となった画像形成装置10を識別する装置ID情報などを含めている。本例では、保守担当者が、保守作業により除去した異常に該当する異常の種別を入力するようにしてある。
【0031】
次に、監視装置60について説明する。
本例の監視装置60は、画像形成装置10に対する保守の必要性を判定する装置であり、異常情報取得部61、異常情報蓄積部62、保守情報取得部63、保守情報蓄積部64、基準発生パターン生成部65、基準発生パターン蓄積部66、類似度算出部67、保守必要性判定部68、基準情報選定部71、を有している。
【0032】
異常情報取得部61は、画像形成装置10から送信される異常情報を取得(受信)して、異常情報蓄積部62に記憶させる。
異常情報蓄積部62に蓄積(記憶)される異常情報には、画像形成装置10に発生した異常の種別、その異常の発生日時、その異常が発生した画像形成装置10を識別する装置ID情報などが格納されている。
【0033】
保守情報取得部63は、保守情報入力端末50から送信される保守情報を取得(受信)して保守情報蓄積部62に記憶させる。
保守情報蓄積部64に蓄積(記憶)される保守情報には、保守作業の実施日時、当該保守作業による除去対象の異常の種別、当該保守作業の対象となった画像形成装置10を識別する装置ID情報などが格納されている。
【0034】
基準情報選定部71は、基準発生パターン生成部65による基準発生パターン(保守判定の基準の一例)の生成に用いる情報を選定(抽出)する処理部であり、図3に機能ブロックを例示するように、ヒストグラム生成部71a、閾値決定部71b、情報選定部71cを有している。
【0035】
ヒストグラム生成部71aは、異常の種別毎に、予め定められた期間内における異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置10の累計台数の分布を示すヒストグラム(以下、全体ヒストグラムという)と、当該期間内における異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守作業が実施された画像形成装置10の累計台数の分布を示すヒストグラム(以下、保守事例ヒストグラム)を生成する。
【0036】
図4には、ヒストグラム生成部71aにより異常の種別毎に生成されたヒストグラムを例示してある。
図4(a)は全体ヒストグラムの例であり、横軸を異常の発生回数とし、縦軸を該当する回数の異常が発生した画像形成装置10の累計台数とし、発生パターンの抽出対象となる長さの期間(例えば5日間)において該当する回数の異常が発生した画像形成装置10の累計台数を棒グラフで表し、その積算値を折れ線グラフで表している。
図4(b)は保守事例ヒストグラムの例であり、横軸を異常の発生回数とし、縦軸を該当する回数の異常が発生し且つ保守作業が実施された画像形成装置10の累計台数とし、発生パターンの抽出対象となる長さの期間(例えば5日間)において該当する回数の異常が発生し且つ保守作業が実施された画像形成装置10の累計台数を棒グラフで表している。
【0037】
閾値決定部71bは、異常の種別毎に、ヒストグラム生成部71aにより生成された全体ヒストグラム及び保守事例ヒストグラムに基づいて、基準発生パターンの生成に用いる情報を選定するための閾値を決定する。この閾値は、本システムによる管理対象となる複数台の画像形成装置10で構成されるグループから、その異常を特徴付ける画像形成装置10から構成されるサブグループを抽出するためのものであり、本例では、全体ヒストグラムにおける画像形成装置10の累計台数(総数)に対する累計台数(積算値)の割合が基準値α(例えば80%)以上となる最小の異常の発生回数で、且つ、保守事例ヒストグラムにおける画像形成装置10の累計台数(総数)に対する累計台数(積算値)の割合が基準値β(95%)以上となる上方側の分布領域の最小の異常の発生回数を特定し、当該特定した異常の発生回数を閾値(基準回数)に決定する。
【0038】
なお、上記のように、全体ヒストグラム及び保守事例ヒストグラムの両方を用いて閾値を決定するのではなく、その一方を用いて閾値を決定してもよい。すなわち、全体ヒストグラムのみを用いて、該当する異常の発生頻度が高い画像形成装置10に係るサブグループを抽出する閾値を決定してもよく、又は、保守事例ヒストグラムのみを用いて、該当する異常の発生に伴う保守が実施された傾向にある画像形成装置10に係るサブグループを抽出する閾値を決定してもよい。
【0039】
情報選定部71cは、異常の種別毎に、閾値決定部71bにより決定された閾値に基づいて、基準発生パターンの生成に用いる情報を選定(抽出)する。本例では、発生パターンの抽出対象となる期間(例えば5日間)内に閾値(例えば8件)以上の異常が発生した画像形成装置10に係るサブグループを抽出し、当該サブグループに属する画像形成装置10毎に異常情報及び保守情報を選定(抽出)して基準発生パターン生成部65へ供給する。すなわち、閾値決定部71bにより閾値が決定された異常の種別について、画像形成装置10毎に対象期間内における異常の発生回数を異常情報取得部61の記憶内容に基づいて算出し、算出された異常の発生回数が閾値以上の画像形成装置10を特定し、当該特定された画像形成装置10で構成されるサブグループを抽出する。
【0040】
本例の基準情報選定部71による動作の一例を、図5及び図6に例示する処理フローを参照して説明する。
基準情報選定部71では、異常情報蓄積部16を参照し、異常情報が存在する場合に以下の処理を行う(ステップS11、S12)。
まず、ヒストグラム生成部71aが、保守情報蓄積部64に蓄積されている保守情報を取得し(ステップS13)、保守作業に係る異常の種別を特定して、当該異常に対応する異常情報を異常情報蓄積部16から取得して、異常の種別毎に全体ヒストグラム及び保守事例ヒストグラムを生成する(ステップS14、S15)。
次に、閾値決定部71bが、全体ヒストグラムに基づいて、画像形成装置10の累計台数(積算値)の割合が基準値αを超える異常の発生回数を求め(ステップS16)、保守事例ヒストグラムに基づいて、画像形成装置10の累計台数(積算値)の割合が基準値αを超える異常の発生回数(例えば7件)の分布領域において累計台数(積算値)の割合が基準値β以上となる上方側の分布領域における最小の異常の発生回数(例えば8件)を閾値(基準回数)として決定する(ステップS17)。
【0041】
次に、情報選定部71cが、画像形成装置10に対する保守作業を基準に遡った期間(例えば5日以内)における異常の発生回数を算出して前記決定された閾値と比較し(ステップS21)、異常の発生回数が閾値以上の画像形成装置10を特定し、当該特定した画像形成装置10で構成されるサブグループを抽出し、当該サブグループに属する画像形成装置10毎に異常情報及び保守情報を選定(抽出)して基準発生パターン生成部65へ供給する(ステップS22)。一方、異常の発生回数が閾値未満の画像形成装置10に係る異常情報及び保守情報については、基準発生パターンの生成に用いる情報から除外する(ステップS23)。
すなわち、異常の発生回数が閾値未満の場合には、その種別の異常については例外的なケースであるとして、基準発生パターンの生成に用いる情報を排除し、後述する保守判定の為の統計処理の負担軽減と判定精度の向上を図る。
【0042】
基準発生パターン生成部65は、保守情報蓄積部64に蓄積されている保守情報及び異常情報蓄積部16に蓄積されている異常情報のうち、基準情報選定部71によって抽出された(基準情報選定部71から供給された)異常情報及び保守情報に基づいて、過去に緊急呼び出し等に応じて保守作業が施された画像形成装置10について、その保守作業以前における予め定められた長さの期間内に検出された時系列的な異常の発生傾向(以下、発生パターンという)を抽出し、保守判定の基準となる発生パターン(以下、基準発生パターンという)を異常の種別毎に生成して基準発生パターン蓄積部66に記憶させる。
【0043】
本例の基準発生パターン生成部65では、一例として、異常の種別毎の基準発生パターンを以下のようにして生成する。
まず、保守情報蓄積部64に蓄積されている保守情報及び異常情報蓄積部16に蓄積されている異常情報のうち、基準情報選定部71によって抽出された(基準情報選定部71から供給された)異常情報及び保守情報に基づいて、異常の種別毎に保守の実施日時及び装置ID情報の組を取得し、異常の種別毎に取得した保守実施日時及び装置ID情報の組のそれぞれを基に関連する異常情報を特定し、該当する画像形成装置10に対する保守作業を基準に遡った期間(例えば5日以内)における異常の発生パターンを抽出する。本例では、該当する期間内における日別の異常の発生回数(或いは累積回数)を抽出するが、該当する期間を他の時間長(例えば1時間)で区切った単位における単位時間別の発生回数などを抽出するようにしてもよい。
【0044】
次に、異常の種別毎に、過去に保守作業が実施された複数の画像形成装置10のそれぞれについて抽出された異常の発生パターンに基づいて、それぞれの発生パターン間の相関度(本例では相関係数)を算出し、相関度が予め定められた閾値以上となる発生パターン同士を選び出すことにより、相関関係にある複数の発生パターンを要素とした発生パターン群に分類(グルーピング)する。そして、分類毎の発生パターン群に基づいて、その分類に係る基準発生パターンの候補を生成する。本例では、発生パターン群に属する各発生パターンの平均値を、該当する異常の種別に係る基準発生パターンの候補としている。
【0045】
その後、基準発生パターンの候補毎に、異常情報蓄積部62を参照して基準発生パターンの候補と相関関係を有する発生パターンが生じた事例を抽出し、各事例について保守情報蓄積部64を参照して保守作業が発生したか否かを特定し、保守発生件数及び保守未発生件数を求めて保守発生割合を算出する。本例では、基準発生パターンの候補と相関関係を有する発生パターンが生じた事例として、基準発生パターンの候補との相関度が予め定められた閾値以上であるものを抽出する。
そして、保守発生割合が基準値以上(例えば60%以上)となる基準発生パターンの候補を基準発生パターンに設定し、該当する異常の種別と対応付けて基準発生パターン蓄積部66に記憶させる。
【0046】
類似度算出部67は、基準発生パターンの設定後に、新たに異常が発生した画像形成装置10から取得されて異常情報蓄積部62に蓄積された異常情報に基づいて、その異常の種別について直近の異常の発生パターンを抽出し、その異常の種別に対応する基準発生パターンとの相関度を算出する。該当する異常の種別に対して複数の基準発生パターンが設定されている(基準発生パターン蓄積部66に記憶されている)場合には、基準発生パターン毎に相関度を算出する。
【0047】
保守必要性判定部68は、類似度算出部67により算出された相関度の近さに応じて、画像形成装置10に対する保守の必要性を判定する。すなわち、判定対象の画像形成装置10における直近の異常の発生パターンについて基準発生パターン毎に算出された相関度を予め定められた閾値と比較し、当該閾値以上のものが見つかった場合(すなわち、直近の異常の発生パターンに類似する基準発生パターンが設定されている場合)に、その異常の発生パターンが抽出された画像形成装置10に対して保守作業を施す必要があると判定する。なお、異常の種別と保守作業の内容とを関連付けておけば、どのような保守作業を施すべきかについても判定できる。
【0048】
本例の類似度算出部67及び保守必要性判定部68による動作の一例を、図7に例示する処理フローを参照して説明する。
まず、類似度算出部67が、保守の必要性を判定する対象となる画像形成装置10に係る直近の期間内の異常情報を異常情報蓄積部16から抽出する処理を行い(ステップS31)、該当する異常情報が存在するか否かを判定する(ステップS32)。
該当する異常情報が存在しない場合には処理を終了し、一方、該当する異常情報が存在する場合には、その異常の種別について抽出フォーマット(本例では、異常の発生回数の時系列推移を表すフォーマット)に従って異常の発生パターンを抽出する(ステップS33)。また、その異常の種別に対する基準発生パターンを基準発生パターン蓄積部66から取得する処理を行い(ステップS34)、該当する基準発生パターンが1種類か否かを判定する(ステップS35)。
【0049】
該当する基準発生パターンが1種類の場合には、その基準発生パターンとステップS33で抽出した発生パターンとの相関度を算出し(ステップS36)、一方、該当する基準発生パターンが2種類以上の場合には、各基準発生パターンとステップS33で抽出した発生パターンとの相関度をそれぞれ算出してその最大値を選択する(ステップS37)。
その後、保守必要性判定部68が、ステップS36又はステップS37で得られた相関度を相関判定用の閾値と比較して(ステップS38)、相関度が閾値未満である(相関関係を有しない)場合には処理を終了し、一方、相関度が閾値以上である(相関関係を有する)場合には保守作業を施す必要があると判定して、その旨を示す情報を保守情報入力端末50へ送信して警告出力させる(ステップS39)。
【0050】
以上のように、第1構成例では、異常を特徴付ける画像形成装置(異常の発生回数が比較的多く、保守作業の実行率が比較的高いもの)を抽出し、それ以外については基準発生パターンの生成に用いる対象から除外するように構成している。
これにより、保守作業に至った原因である可能性が低いと推定される異常に関する情報が、基準発生パターンの生成に用いる対象から除外されることになる。したがって、保守発生前に特徴的に出現した異常の発生パターンをより的確に表現した基準発生パターンを生成することができ、保守の必要性判定の精度向上に寄与することができるとともに、基準発生パターン生成部65による処理対象のデータ量を削減でき、装置全体としての処理負担を軽減することができる。
【0051】
図8には、本発明の一実施形態に係る画像形成システムの第2構成例を示してある。
本例の画像形成システムは、第1構成例における基準情報選定部71に代えて(或いは基準情報選定部71と共に)異常情報選定部72を備えた構成となっている。以下では、主に第1構成例と異なる部分について説明し、他の部分については説明を省略する。
【0052】
基準発生パターン蓄積部66には、異常の種別毎の基準発生パターンのそれぞれに、その基準発生パターンに係る異常の発生回数の最小値を示す基準値(基準回数)が対応付けられている。この基準値は、保守を実施しなかった傾向にある異常発生回数に係る画像形成装置における異常の情報を除外するためのものであり、第1構成例における基準情報選定部71(閾値決定部71b)で決定された閾値に相当する。基準情報選定部71を有する構成の場合には、基準情報選定部71により基準値の対応付けが行われる。なお、一の異常の種別に対して複数の基準発生パターンが存在する場合には、各基準発生パターンに係るそれぞれの基準値は互いに異なり得る。
【0053】
異常情報選定部72は、類似度算出部67による類似度算出に係る異常の発生パターンの生成に用いる情報を選定(抽出)する処理部であり、図9に機能ブロックを例示するように、基準値抽出部72a、閾値決定部72b、情報選定部72cを有している。
【0054】
基準値抽出部72aは、基準発生パターン蓄積部66から異常の種別毎の基準発生パターンに対応付けられた基準値を抽出する。
閾値決定部72bは、異常の種別毎に、各基準発生パターンに対応付けられた基準値のうち最小のものを閾値に決定する。
情報選定部72cは、閾値決定部71bにより決定された閾値に基づいて、類似度算出に係る異常の発生パターンの生成に用いる情報を選定(抽出)し、類似度算出部67へ供給する。
【0055】
本例の異常情報選定部72による動作の一例を、図10及び図11に例示する処理フローを参照して説明する。
異常情報選定部72では、まず、基準値抽出部72aが、基準発生パターン蓄積部66から基準発生パターンを抽出する(ステップS41)。
次に、閾値決定部72bが、異常の種別毎に、各基準発生パターンに対応付けられた基準値のヒストグラムを生成し(ステップS42)、そのヒストグラムにおいて最小の基準値を閾値に決定する(ステップS43)。
【0056】
その後、情報選定部72cが、基準発生パターンの設定後に新たに異常が発生した画像形成装置10に係る該当する異常情報に基づいて、その異常の種別について直近の異常の発生回数を求めて前記決定された閾値と比較し(ステップS51)、異常の発生回数が閾値以上の事例に係る異常情報及び保守情報を相関度算出に係る異常の発生パターンの生成に用いる情報に選定して類似度算出部67へ供給する(ステップS52)。一方、異常の発生回数が閾値未満の事例に係る異常情報及び保守情報については、相関度算出に係る異常の発生パターンの生成に用いる情報から除外する(ステップS53)。
【0057】
以上のように、第2構成例では、基準発生パターンの生成に用いる事例の抽出に用いた基準(異常の発生回数の最小値)を特定し、当該基準を満たす回数の異常が少なくとも発生した事例のみを相関度算出に係る異常の発生パターンの生成に用いる対象として抽出し、他の事例については相関度算出に係る異常の発生パターンの生成に用いる対象から除外するように構成している。
これにより、基準発生パターンとの比較に足りない回数の異常に関する情報が、相関度算出に係る異常の発生パターンの生成に用いる情報から除外されることになる。したがって、類似度算出部67による処理対象のデータ量を削減でき、装置全体としての処理負担を軽減することができる。
【0058】
図12には、本発明の一実施形態に係る画像形成システムの第3構成例を示してある。
本例の画像形成システムは、第1構成例における基準情報選定部71及び第2構成例における異常情報選定部72に加え、情報補正部73を備えた構成となっている。以下では、主に第1構成例及び第2構成例と異なる部分について説明し、他の部分については説明を省略する。
【0059】
情報補正部73は、基準情報選定部72及び異常情報選定部73による処理に用いられる情報を補正する処理部であり、図13及び図15に機能ブロックを例示するように、起点日特定部73a、データ補正部74bを有している。
【0060】
基準情報選定部71による処理に用いられる情報を補正する処理に関して、図13及び図14を参照して説明する。
起点日特定部73aは、過去に保守作業が施された画像形成装置10に係る保守作業以前の期間内に検出された異常の発生パターンを生成する起点となる起点日を特定する。この場合の起点日とは、図14(b)に例示するように、保守の要請があった日から遡り、保守の要請要因(当該保守による除去対象の異常)と一致する種別の異常が直近に発生した日(すなわち、画像形成装置10の使用に支障をきたす故障が発生したと推定される日)を指す。本例では、保守情報入力端末50から送信される保守情報に、その保守の要請日時が含められており、これを起点日の特定に用いている。
【0061】
データ補正部74bは、その画像形成装置10で検出された該当種別の異常について、起点日特定部73aにより特定された起点日から遡り、予め定められた長さの日数分(例えば5日分)の異常情報を抽出して基準情報選定部71へ供給する。その際、図14(a)に例示するように、該当種別の異常の発生回数がゼロの日があり、且つ、その日に画像形成装置10が非稼働(例えば、画像形成枚数のカウント値の差分=0)であった場合には、当該画像形成装置10についての処理においては、その日自体が存在しなかったものと見做す。また、このままだと、非存在と見做した日数分のデータが欠如することになるため、非存在と見做した日数分を更に遡って異常情報を抽出する。
図14(c)には、上記の処理の結果として抽出される異常情報の日別の発生回数を例示してある。
【0062】
異常情報選定部72による処理に用いられる情報を補正する処理に関して、図15を参照して説明する。
起点日特定部73aは、現在の日付を起点日として特定する。
データ補正部74bは、基準発生パターンの設定後に新たに異常が発生した画像形成装置10に係る該当種別の異常について、起点日特定部73aにより特定された起点日から遡り、予め定められた長さの日数分(例えば5日分)の異常情報を抽出して異常情報選定部72へ供給する。その際、該当種別の異常の発生回数がゼロの日があり、且つ、その日に画像形成装置10が非稼働であった場合には、当該画像形成装置10についての処理においては、その日自体が存在しなかったものと見做す。また、このままだと、非存在と見做した日数分のデータが欠如することになるため、非存在と見做した日数分を更に遡って異常情報を抽出する。
【0063】
なお、本例では、日を単位とした粒度で処理を説明しているが、他の時間長の単位で処理するようにしてもよい。
また、本例では、画像形成の枚数が0枚の場合に画像形成装置10が非稼働であると判断しているが、画像形成装置10から送信されるモード情報により休止モードと判定される場合や、起動状態の画像形成装置10から定期的に送信される情報が途絶えている場合など、画像形成装置10から得られる他の情報に基づいて画像形成装置10が非稼働か否かを判断するようにしてもよい。
【0064】
図16には、基準情報選定部71による処理に用いられる情報を補正する処理に関する処理フローを例示してある。
情報補正部73では、まず、起点日特定部73aが、保守情報蓄積部64に蓄積されている保守情報を取得し(ステップS61)、保守作業に係る異常の種別を特定する(ステップS62)。そして、特定した異常の種別について、当該保守情報に対応する画像形成装置10における直近の異常の発生日を検索し、起点日として設定する(ステップS63)。
【0065】
次に、データ補正部74bが、その画像形成装置10で検出された該当種別の異常について、起点日特定部73aにより特定された起点日から遡り、予め定められた長さの日数分(例えば5日分)における日々の異常の発生回数とカウント値とを突き合わせる(ステップS64)。このカウント値は、画像形成装置10が稼働しているか否かの特定に用いられる情報であり、本例では画像形成した枚数のカウント値を用いるが、用紙搬送ロールの駆動距離のカウント値など、他の情報を用いてもよい。そして、カウント値の更新が無く(すなわち、画像形成装置10が非稼働)、特定した異常の種別が発生していない日を時系列データ(日々の異常の発生回数)から除外する(ステップS65)。また、除外した日数分のデータを補充するために、その日数分を更に遡って上記の処理(ステップS64、S65)を行う。
【0066】
図17には、情報補正部73によるデータ補正の結果を例示してある。
図17(a)〜(c)には、データ補正前の日別の異常の発生回数について3パターンを例示してあり、同図(d)には、これら3パターンに対するデータ補正の結果を例示してある。
図17(a)と(b)を比較すると、稼働日と非稼働日の態様及び稼働日における異常の発生回数が一致するものの、保守の要請日と訪問日(保守の実施日)の関係が相違している。また、図17(b)と(c)を比較すると、保守の要請日と訪問日の関係及び稼働日における異常の発生回数が一致するものの、稼働日と非稼働日の態様が相違している。
このように、データ補正前は異なる内容となっているが、データ補正を行うことで、図17(d)に示すように1つのパターンに集約される。
【0067】
以上のように、第3構成例では、画像形成装置10の稼働状況や画像形成装置10に対する保守の要請日と実施日とのズレ等によるデータのばらつきによって、本来的には1つに集約されるべき複数の基準発生パターンが生じることが抑制され、基準発生パターンの数が抑えられる。
したがって、類似度算出部67による処理対象のデータ量を削減でき、装置全体としての処理負担を軽減することができると共に、保守の必要性の判定制度を向上させることができる。
【0068】
ここで、第1構成例〜第3構成例に示した監視装置60は、保守判定の基準を設定する判定基準設定装置と、設定された保守判定の基準に基づいて画像形成装置10に対する保守の必要性を判定する判定装置とを一体に備えた構成であるが、これらを別体の装置により構成してもよい。
【0069】
また、本例においては、基準発生パターンの設定に係る画像形成装置10と保守判定の対象の画像形成装置10は、同じ装置であってもよく、異なる装置であってもよい。すなわち、1以上の画像形成装置10(保守判定の対象の画像形成装置10が含まれてもよい)における過去の異常情報及び保守情報に基づいて基準発生パターンを設定し、その後、当該基準発生パターンを用いて保守判定の対象の画像形成装置10に対する保守の必要性を判定する。
【0070】
図18には、本例の予測システムにおいて監視装置60として動作するコンピュータのハードウェア構成を例示してある。
本例では、各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)81、CPU81の作業領域となるRAM(Random Access Memory)82や基本的な制御プログラムを記録したROM(Read Only Memory)83等の主記憶装置、本発明の一実施形態に係るプログラムや各種データを記憶するHDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置、各種情報を表示出力するための表示装置及び操作者により入力操作に用いられる操作ボタンやタッチパネル等の入力機器とのインタフェースである入出力I/F85、他の装置との間で有線又は無線により通信を行うインタフェースである通信I/F86、等のハードウェア資源を有するコンピュータにより構成されている。
そして、本発明の一実施形態に係るプログラムを補助記憶装置84等から読み出してRAM82に展開し、これをCPU81により実行させることで、本発明の一実施形態に係る判定基準設定装置の各機能をコンピュータ上に実現している。
【0071】
なお、本発明の一実施形態に係るプログラムは、例えば、当該プログラムを記憶したCD−ROM等の外部記憶媒体から読み込む形式や、通信網等を介して受信する形式などにより、本例に係るコンピュータに設定される。
また、本例のようなソフトウェア構成により各機能部を実現する態様に限られず、それぞれの機能部を専用のハードウェアモジュールで実現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10:画像形成装置、 50:保守情報入力端末、 60:監視装置、
61:異常情報取得部、 62:異常情報蓄積部、 63:保守情報取得部、 64:保守情報蓄積部、 65:基準発生パターン生成部、 66:基準発生パターン蓄積部、 67:類似度算出部、 68:保守必要性判定部、 71:基準情報選定部、 72:異常情報選定部、 73:情報補正部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム、判定基準設定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
用紙等の記録材に画像を形成して出力する画像形成機能を備えた画像形成装置において、画像形成機能の動作に支障をきたす異常(紙詰まりや転写不良等)が頻発すると、画像形成装置の利用者に不便を生じることになる。そこで、このような状況に陥った画像形成装置に対する速やかな保守作業の実施が望まれる。
【0003】
上記のように画像形成装置などの装置を対象として保守の必要性を判定する技術に関し、これまでに種々の発明が提案されている。
【0004】
例えば、被管理複写機個々の不良発生頻度を計算し、対象となる複写機と同一機種のトータル不良発生頻度の平均値を計算して両者の算出結果を比較し、その比較結果に基づいて警告を発する発明や、被管理複写機個々における不良発生頻度を所定期間分保持し、各期間の不良発生頻度の上昇率が指定係数以上であれば警告を発する発明が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
例えば、警告判定要因を、最近の複数回の期間不良発生頻度の平均値とするか、あるいはリセット後の不良発生頻度と期間不良発生頻度をポイント化し、両者のポイントを掛け合わせた値とすることによって一時的な不良発生頻度の上昇による誤判断を防止する発明や、不良発生頻度の推移傾向が確実に低下する傾向であれば警告を出さないように判定することにより不良発生頻度が低下しているなかで、ほぼ一定期間毎の不良発生頻度やリセット後の不良発生頻度値が基準値を超えた場合にも警告を出さないようにする発明が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
例えば、障害の種類毎に重み付けを行い、その重み係数と発生頻度とを掛け合わせることによって障害率を計算し、その障害率があらかじめ設定された閾値を超えた場合にのみサービスセンターやユーザ等外部に障害発生を通知する発明が提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
例えば、ログデータをもとに印刷装置の障害やイベントの発生頻度を記録し、一定期間ごとに定められた基準値と比較することにより、部品の劣化や使用方法の問題などを自動的に発見し報告する発明や、前回比較と今回比較の発生頻度を比較して差分が基準値を超えたときに上位装置に報告する発明が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−167009号公報
【特許文献2】特開平09−230753号公報
【特許文献3】特開2006−007516号公報
【特許文献4】特開2008−006757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、過去に保守要求に至った画像形成装置における異常の時系列的な発生傾向を保守判定の基準として設定するに際し、処理負担を軽減しつつ、より的確な保守判定の基準を設定することが可能な技術を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る本発明は、複数の画像形成装置で構成されるグループにおける異常の発生に関し、異常の種別毎に、異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置の累計台数の分布と、異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守が施された画像形成装置の累計台数の分布との少なくとも一方を用いて、当該分布において予め定められた基準値を上回る異常の発生回数を基準回数として特定する特定手段と、前記特定手段により基準回数が特定された異常の種別について、前記グループに含まれる画像形成装置のうち異常の発生回数が当該基準回数以上の画像形成装置を特定し、当該特定した画像形成装置で構成されるサブグループを抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出されたサブグループについて保守が施された場合の該当する種別の異常の時系列的な発生傾向を生成し、当該異常の発生傾向が予め定められた設定条件を満たす場合に、当該異常の発生傾向を当該種別に係る保守判定の基準として設定する設定手段と、前記設定手段により発生傾向が設定された異常の種別について、保守判定の対象となる画像形成装置における直近の異常の時系列的な発生傾向と前記設定手段により設定された異常の発生傾向とを比較し、発生傾向の相関度の近さに応じて当該画像形成装置に対する保守の必要性を判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする画像形成システムである。
【0011】
請求項2に係る本発明は、請求項1に係る本発明において、前記判定手段は、前記特定手段により特定された発生回数以上の異常が直近に発生した画像形成装置を保守判定の対象として当該画像形成装置に対する保守の必要性を判定する、ことを特徴とする画像形成システムである。
【0012】
請求項3に係る本発明は、請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記設定手段は、保守が施された場合の時系列的な異常の発生傾向を、対象の画像形成装置に対する保守の要請日時を起点に遡った期間内に当該画像形成装置で発生した異常に基づいて生成する、ことを特徴とする画像形成システムである。
【0013】
請求項4に係る本発明は、請求項1乃至請求項3に係る本発明において、前記設定手段及び前記判定手段は、画像形成装置毎に、その画像形成装置で発生した異常を予め定められた時間長の期間単位で分類して処理するものであり、分類された異常の発生回数がゼロで且つ当該画像形成装置が非稼動の期間については、当該期間を非存在と見做して処理する、ことを特徴とする画像形成システムである。
【0014】
請求項5に係る本発明は、複数の画像形成装置で構成されるグループにおける異常の発生に関し、異常の種別毎に、異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置の累計台数の分布と、異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守が施された画像形成装置の累計台数の分布との少なくとも一方を用いて、当該分布において予め定められた基準値を上回る異常の発生回数を基準回数として特定する特定手段と、前記特定手段により基準回数が特定された異常の種別について、前記グループに含まれる画像形成装置のうち異常の発生回数が当該基準回数以上の画像形成装置を特定し、当該特定した画像形成装置で構成されるサブグループを抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出されたサブグループについて保守が施された場合の該当する種別の異常の時系列的な発生傾向を生成し、当該異常の発生傾向が予め定められた設定条件を満たす場合に、当該異常の発生傾向を当該種別に係る保守判定の基準として設定する設定手段と、を備えたことを特徴とする判定基準設定装置である。
【0015】
請求項6に係る本発明は、コンピュータに、複数の画像形成装置で構成されるグループにおける異常の発生に関し、異常の種別毎に、異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置の累計台数の分布と、異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守が施された画像形成装置の累計台数の分布との少なくとも一方を用いて、当該分布において予め定められた基準値を上回る異常の発生回数を基準回数として特定する特定機能と、前記特定機能により基準回数が特定された異常の種別について、前記グループに含まれる画像形成装置のうち異常の発生回数が当該基準回数以上の画像形成装置を特定し、当該特定した画像形成装置で構成されるサブグループを抽出する抽出機能と、前記抽出機能により抽出されたサブグループについて保守が施された場合の該当する種別の異常の時系列的な発生傾向を生成し、当該異常の発生傾向が予め定められた設定条件を満たす場合に、当該異常の発生傾向を当該種別に係る保守判定の基準として設定する設定機能と、を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、5、6に係る本発明によれば、過去に保守要求に至った画像形成装置における異常の時系列的な発生傾向を保守判定の基準として設定するに際し、本発明を適用しない場合に比べて、処理負担を軽減しつつ、より的確な保守判定の基準を設定することができる。
【0017】
請求項2に係る本発明によれば、画像形成装置に対する保守の必要性の判定に係る処理負担を、本発明を適用しない場合に比べて軽減することができる。
【0018】
請求項3に係る本発明によれば、保守の要請日時から保守の実施日時までの期間に発生した異常に起因して判定基準の数が増加することを抑制できる。
【0019】
請求項4に係る本発明によれば、異常発生回数がゼロで且つ非稼働の期間の存在に起因して判定基準の数が増加することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成システムの第1構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像形成システムに係る画像形成装置の構造を例示する図である。
【図3】第1構成例に係る監視装置の基準情報選定部の機能ブロックを例示する図である。
【図4】第1構成例における閾値決定を説明する図である。
【図5】第1構成例における閾値決定の処理フローを例示する図である。
【図6】第1構成例における情報選定の処理フローを例示する図である。
【図7】第1構成例における保守必要性判定の処理フローを例示する図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る画像形成システムの第2構成例を示す図である。
【図9】第2構成例に係る監視装置の異常情報選定部の機能ブロックを例示する図である。
【図10】第2構成例における閾値決定の処理フローを例示する図である。
【図11】第2構成例における情報選定の処理フローを例示する図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る画像形成システムの第3構成例を示す図である。
【図13】第3構成例に係る監視装置の情報補正部及び基準情報選定部の機能ブロックを例示する図である。
【図14】第3構成例におけるデータ補正を説明する図である。
【図15】第3構成例に係る監視装置の情報補正部及び異常情報選定部の機能ブロックを例示する図である。
【図16】第3構成例におけるデータ補正の処理フローを例示する図である。
【図17】第3構成例におけるデータ補正の結果を例示する図である。
【図18】本発明の一実施形態に係る画像形成システムにおいて監視装置として動作するコンピュータのハードウェア構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る画像形成システムの第1構成例を示してある。
本例の画像形成システムは、用紙等の記録材に画像を形成して出力する画像形成装置10と、画像形成装置10の管理者や保守担当者などに利用される保守情報入力端末50と、を有している。図1の例では、2台の画像形成装置10と1台の保守情報入力端末50とを示してあるが、これらの台数は任意である。
【0022】
また、本例の画像形成システムは、画像形成装置10及び保守情報入力端末50のそれぞれと通信網を介して有線又は無線により通信可能に接続され、これらから収集した情報を用いて画像形成装置10に対する保守作業の必要性を判定する監視装置60を有している。図1の例では、監視装置60を1台の装置により構成してあるが、各機能部を複数台の装置に分散した構成としてもよい。
【0023】
画像形成装置10は、用紙等の記録材に画像を形成して出力する画像形成機能を備えた装置である。画像形成装置10としては、プリンタ(印刷装置)、コピー機(複写装置)、ファクシミリ装置などの装置が挙げられるほか、印刷・複写・ファクシミリ等の機能を複合的に備えた複合機も含まれる。
【0024】
画像形成装置10の動作について、図2を参照して概略的に説明する。
図2には、画像形成装置10における画像形成部の構造を例示してある。
本例の画像形成装置10は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式であり、代表的な機能部として、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を用紙P(記録材の一例)に一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着器34と、を備えている。
また、本例の画像形成装置10は、各部の動作を制御する制御部40、利用者への情報の提示や利用者からの指示を受け付けるためのユーザインタフェース(UI)41、を備えている。
【0025】
本例において、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々は、矢印A方向に回転する感光体ドラム11(11Y,11M,11C,11K)を有する。また、感光体ドラム11の各々の周囲には、感光体ドラム11を帯電する帯電器12、感光体ドラム11上に露光ビームBmを照射して静電潜像を書き込む露光器13、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラムクリーナ17、といった各種の電子写真用デバイスが順次配設されている。
これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されており、中間転写ベルト15に対して接離可能に構成されている。
【0026】
また、本例の画像形成装置10は、用紙搬送系として、用紙収容部から用紙Pを取り出して二次転写部20へと送り込む給紙動作を行う給紙機構部31と、二次転写部20を通過した用紙Pを定着器34側へと搬送する搬送ベルト32と、用紙Pを定着器34の入口へとガイドする定着入口ガイド33と、定着器34から排紙された用紙Pをガイドする排紙ガイド35と、排紙ガイド58によりガイドされた用紙Pを装置外部に排出する排紙ロール36と、を備えている。
【0027】
すなわち、給紙機構部31により用紙収容部から二次転写部20へと給紙された用紙Pは、二次転写部20にて中間転写ベルト15上のトナー像が静電転写された後、中間転写ベルト15から剥離された状態で搬送ベルト32へと搬送される。そして、搬送ベルト32により、定着器34の動作速度に合わせて、定着入口ガイド33を介して定着器34まで搬送される。定着器34に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着器34によって熱及び圧力を加える定着処理を受けることで用紙P上に定着される。その後、定着画像が形成された用紙Pは、排紙ガイド35及び排紙ロール36を介して、装置外部に設けられた排紙収容部(図示せず)へと搬送される。
【0028】
また、本例の画像形成装置10は、画像形成動作中に装置内で発生した種々の異常を検出して異常情報を生成する機能を有している。異常情報には、主に動作異常に関連するエラーコード情報全般が含まれる。本例では、検出対象として予め定められた異常を検出しており、エラー(故障)の他に、ワーニング(警告)、インフォメーション(情報)といったレベルの異常も検出する。
各異常情報は、その異常の種別毎に予め割り当てられたエラーコードで識別される。例えば、手差し給紙部からの給紙が失敗した場合の異常情報には“75−XXX”のコードが割り当てられ、パンチ屑収容部がフル状態に近い場合の異常情報には“127−XXX”のコードが割り当てられる。本例では、画像形成部のみでも400種類以上のコードを割り当てている。
なお、例えば、「Fuser部(定着器34)でジャムが発生して用紙が排出されない」という訪問要請(保守要請)があった場合において、画像形成装置10で実際に発生した異常は、定着器34の故障であったり、定着器34の入出力部の用紙搬送ロールの磨耗による走行不良であったりし、一つの要因から種別(エラーコード)の異なる複数の異常情報が発生し得る。
【0029】
画像形成装置10により生成された異常情報は、無線又は有線による通信によって監視装置60へ送信される。異常情報の送信は、異常情報の生成に応じて直ちに行われてもよく、生成した異常情報を装置内部のメモリに蓄積しておき、予め定められた送信条件を満たしたことを契機に、蓄積しておいた異常情報を送信する構成を採用してもよい。具体的には、例えば、装置の動作モードが切り替わる際(通常モードから休止モードへの切り替え時など)に送信したり、監視装置60からの要求に応答して送信したり、予め定められた時間間隔毎(例えば、1日毎)に送信してもよい。
本例では、監視装置60へ送信する異常情報に、発生した異常の種別、その異常の発生日時、自装置を識別する装置ID情報などを含めている。
【0030】
次に、保守情報入力端末50について説明する。
本例の保守情報入力端末50は、画像形成装置10の設置場所に訪問して保守作業を実際に行った保守担当者(或いはその報告を受けた者など)から、その保守作業に関する保守情報の入力を受け付けて、監視装置60へ送信する。また、本例の保守情報入力端末50は、画像形成装置10に対する保守の必要性に係る判定結果に関する情報を監視装置60から受信して、画像形成装置10に設けられた表示装置により表示出力する。
本例では、本例において監視装置60へ送信する保守情報は、保守作業の実施日時、当該保守作業により除去された異常の種別、当該保守作業の対象となった画像形成装置10を識別する装置ID情報などを含めている。本例では、保守担当者が、保守作業により除去した異常に該当する異常の種別を入力するようにしてある。
【0031】
次に、監視装置60について説明する。
本例の監視装置60は、画像形成装置10に対する保守の必要性を判定する装置であり、異常情報取得部61、異常情報蓄積部62、保守情報取得部63、保守情報蓄積部64、基準発生パターン生成部65、基準発生パターン蓄積部66、類似度算出部67、保守必要性判定部68、基準情報選定部71、を有している。
【0032】
異常情報取得部61は、画像形成装置10から送信される異常情報を取得(受信)して、異常情報蓄積部62に記憶させる。
異常情報蓄積部62に蓄積(記憶)される異常情報には、画像形成装置10に発生した異常の種別、その異常の発生日時、その異常が発生した画像形成装置10を識別する装置ID情報などが格納されている。
【0033】
保守情報取得部63は、保守情報入力端末50から送信される保守情報を取得(受信)して保守情報蓄積部62に記憶させる。
保守情報蓄積部64に蓄積(記憶)される保守情報には、保守作業の実施日時、当該保守作業による除去対象の異常の種別、当該保守作業の対象となった画像形成装置10を識別する装置ID情報などが格納されている。
【0034】
基準情報選定部71は、基準発生パターン生成部65による基準発生パターン(保守判定の基準の一例)の生成に用いる情報を選定(抽出)する処理部であり、図3に機能ブロックを例示するように、ヒストグラム生成部71a、閾値決定部71b、情報選定部71cを有している。
【0035】
ヒストグラム生成部71aは、異常の種別毎に、予め定められた期間内における異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置10の累計台数の分布を示すヒストグラム(以下、全体ヒストグラムという)と、当該期間内における異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守作業が実施された画像形成装置10の累計台数の分布を示すヒストグラム(以下、保守事例ヒストグラム)を生成する。
【0036】
図4には、ヒストグラム生成部71aにより異常の種別毎に生成されたヒストグラムを例示してある。
図4(a)は全体ヒストグラムの例であり、横軸を異常の発生回数とし、縦軸を該当する回数の異常が発生した画像形成装置10の累計台数とし、発生パターンの抽出対象となる長さの期間(例えば5日間)において該当する回数の異常が発生した画像形成装置10の累計台数を棒グラフで表し、その積算値を折れ線グラフで表している。
図4(b)は保守事例ヒストグラムの例であり、横軸を異常の発生回数とし、縦軸を該当する回数の異常が発生し且つ保守作業が実施された画像形成装置10の累計台数とし、発生パターンの抽出対象となる長さの期間(例えば5日間)において該当する回数の異常が発生し且つ保守作業が実施された画像形成装置10の累計台数を棒グラフで表している。
【0037】
閾値決定部71bは、異常の種別毎に、ヒストグラム生成部71aにより生成された全体ヒストグラム及び保守事例ヒストグラムに基づいて、基準発生パターンの生成に用いる情報を選定するための閾値を決定する。この閾値は、本システムによる管理対象となる複数台の画像形成装置10で構成されるグループから、その異常を特徴付ける画像形成装置10から構成されるサブグループを抽出するためのものであり、本例では、全体ヒストグラムにおける画像形成装置10の累計台数(総数)に対する累計台数(積算値)の割合が基準値α(例えば80%)以上となる最小の異常の発生回数で、且つ、保守事例ヒストグラムにおける画像形成装置10の累計台数(総数)に対する累計台数(積算値)の割合が基準値β(95%)以上となる上方側の分布領域の最小の異常の発生回数を特定し、当該特定した異常の発生回数を閾値(基準回数)に決定する。
【0038】
なお、上記のように、全体ヒストグラム及び保守事例ヒストグラムの両方を用いて閾値を決定するのではなく、その一方を用いて閾値を決定してもよい。すなわち、全体ヒストグラムのみを用いて、該当する異常の発生頻度が高い画像形成装置10に係るサブグループを抽出する閾値を決定してもよく、又は、保守事例ヒストグラムのみを用いて、該当する異常の発生に伴う保守が実施された傾向にある画像形成装置10に係るサブグループを抽出する閾値を決定してもよい。
【0039】
情報選定部71cは、異常の種別毎に、閾値決定部71bにより決定された閾値に基づいて、基準発生パターンの生成に用いる情報を選定(抽出)する。本例では、発生パターンの抽出対象となる期間(例えば5日間)内に閾値(例えば8件)以上の異常が発生した画像形成装置10に係るサブグループを抽出し、当該サブグループに属する画像形成装置10毎に異常情報及び保守情報を選定(抽出)して基準発生パターン生成部65へ供給する。すなわち、閾値決定部71bにより閾値が決定された異常の種別について、画像形成装置10毎に対象期間内における異常の発生回数を異常情報取得部61の記憶内容に基づいて算出し、算出された異常の発生回数が閾値以上の画像形成装置10を特定し、当該特定された画像形成装置10で構成されるサブグループを抽出する。
【0040】
本例の基準情報選定部71による動作の一例を、図5及び図6に例示する処理フローを参照して説明する。
基準情報選定部71では、異常情報蓄積部16を参照し、異常情報が存在する場合に以下の処理を行う(ステップS11、S12)。
まず、ヒストグラム生成部71aが、保守情報蓄積部64に蓄積されている保守情報を取得し(ステップS13)、保守作業に係る異常の種別を特定して、当該異常に対応する異常情報を異常情報蓄積部16から取得して、異常の種別毎に全体ヒストグラム及び保守事例ヒストグラムを生成する(ステップS14、S15)。
次に、閾値決定部71bが、全体ヒストグラムに基づいて、画像形成装置10の累計台数(積算値)の割合が基準値αを超える異常の発生回数を求め(ステップS16)、保守事例ヒストグラムに基づいて、画像形成装置10の累計台数(積算値)の割合が基準値αを超える異常の発生回数(例えば7件)の分布領域において累計台数(積算値)の割合が基準値β以上となる上方側の分布領域における最小の異常の発生回数(例えば8件)を閾値(基準回数)として決定する(ステップS17)。
【0041】
次に、情報選定部71cが、画像形成装置10に対する保守作業を基準に遡った期間(例えば5日以内)における異常の発生回数を算出して前記決定された閾値と比較し(ステップS21)、異常の発生回数が閾値以上の画像形成装置10を特定し、当該特定した画像形成装置10で構成されるサブグループを抽出し、当該サブグループに属する画像形成装置10毎に異常情報及び保守情報を選定(抽出)して基準発生パターン生成部65へ供給する(ステップS22)。一方、異常の発生回数が閾値未満の画像形成装置10に係る異常情報及び保守情報については、基準発生パターンの生成に用いる情報から除外する(ステップS23)。
すなわち、異常の発生回数が閾値未満の場合には、その種別の異常については例外的なケースであるとして、基準発生パターンの生成に用いる情報を排除し、後述する保守判定の為の統計処理の負担軽減と判定精度の向上を図る。
【0042】
基準発生パターン生成部65は、保守情報蓄積部64に蓄積されている保守情報及び異常情報蓄積部16に蓄積されている異常情報のうち、基準情報選定部71によって抽出された(基準情報選定部71から供給された)異常情報及び保守情報に基づいて、過去に緊急呼び出し等に応じて保守作業が施された画像形成装置10について、その保守作業以前における予め定められた長さの期間内に検出された時系列的な異常の発生傾向(以下、発生パターンという)を抽出し、保守判定の基準となる発生パターン(以下、基準発生パターンという)を異常の種別毎に生成して基準発生パターン蓄積部66に記憶させる。
【0043】
本例の基準発生パターン生成部65では、一例として、異常の種別毎の基準発生パターンを以下のようにして生成する。
まず、保守情報蓄積部64に蓄積されている保守情報及び異常情報蓄積部16に蓄積されている異常情報のうち、基準情報選定部71によって抽出された(基準情報選定部71から供給された)異常情報及び保守情報に基づいて、異常の種別毎に保守の実施日時及び装置ID情報の組を取得し、異常の種別毎に取得した保守実施日時及び装置ID情報の組のそれぞれを基に関連する異常情報を特定し、該当する画像形成装置10に対する保守作業を基準に遡った期間(例えば5日以内)における異常の発生パターンを抽出する。本例では、該当する期間内における日別の異常の発生回数(或いは累積回数)を抽出するが、該当する期間を他の時間長(例えば1時間)で区切った単位における単位時間別の発生回数などを抽出するようにしてもよい。
【0044】
次に、異常の種別毎に、過去に保守作業が実施された複数の画像形成装置10のそれぞれについて抽出された異常の発生パターンに基づいて、それぞれの発生パターン間の相関度(本例では相関係数)を算出し、相関度が予め定められた閾値以上となる発生パターン同士を選び出すことにより、相関関係にある複数の発生パターンを要素とした発生パターン群に分類(グルーピング)する。そして、分類毎の発生パターン群に基づいて、その分類に係る基準発生パターンの候補を生成する。本例では、発生パターン群に属する各発生パターンの平均値を、該当する異常の種別に係る基準発生パターンの候補としている。
【0045】
その後、基準発生パターンの候補毎に、異常情報蓄積部62を参照して基準発生パターンの候補と相関関係を有する発生パターンが生じた事例を抽出し、各事例について保守情報蓄積部64を参照して保守作業が発生したか否かを特定し、保守発生件数及び保守未発生件数を求めて保守発生割合を算出する。本例では、基準発生パターンの候補と相関関係を有する発生パターンが生じた事例として、基準発生パターンの候補との相関度が予め定められた閾値以上であるものを抽出する。
そして、保守発生割合が基準値以上(例えば60%以上)となる基準発生パターンの候補を基準発生パターンに設定し、該当する異常の種別と対応付けて基準発生パターン蓄積部66に記憶させる。
【0046】
類似度算出部67は、基準発生パターンの設定後に、新たに異常が発生した画像形成装置10から取得されて異常情報蓄積部62に蓄積された異常情報に基づいて、その異常の種別について直近の異常の発生パターンを抽出し、その異常の種別に対応する基準発生パターンとの相関度を算出する。該当する異常の種別に対して複数の基準発生パターンが設定されている(基準発生パターン蓄積部66に記憶されている)場合には、基準発生パターン毎に相関度を算出する。
【0047】
保守必要性判定部68は、類似度算出部67により算出された相関度の近さに応じて、画像形成装置10に対する保守の必要性を判定する。すなわち、判定対象の画像形成装置10における直近の異常の発生パターンについて基準発生パターン毎に算出された相関度を予め定められた閾値と比較し、当該閾値以上のものが見つかった場合(すなわち、直近の異常の発生パターンに類似する基準発生パターンが設定されている場合)に、その異常の発生パターンが抽出された画像形成装置10に対して保守作業を施す必要があると判定する。なお、異常の種別と保守作業の内容とを関連付けておけば、どのような保守作業を施すべきかについても判定できる。
【0048】
本例の類似度算出部67及び保守必要性判定部68による動作の一例を、図7に例示する処理フローを参照して説明する。
まず、類似度算出部67が、保守の必要性を判定する対象となる画像形成装置10に係る直近の期間内の異常情報を異常情報蓄積部16から抽出する処理を行い(ステップS31)、該当する異常情報が存在するか否かを判定する(ステップS32)。
該当する異常情報が存在しない場合には処理を終了し、一方、該当する異常情報が存在する場合には、その異常の種別について抽出フォーマット(本例では、異常の発生回数の時系列推移を表すフォーマット)に従って異常の発生パターンを抽出する(ステップS33)。また、その異常の種別に対する基準発生パターンを基準発生パターン蓄積部66から取得する処理を行い(ステップS34)、該当する基準発生パターンが1種類か否かを判定する(ステップS35)。
【0049】
該当する基準発生パターンが1種類の場合には、その基準発生パターンとステップS33で抽出した発生パターンとの相関度を算出し(ステップS36)、一方、該当する基準発生パターンが2種類以上の場合には、各基準発生パターンとステップS33で抽出した発生パターンとの相関度をそれぞれ算出してその最大値を選択する(ステップS37)。
その後、保守必要性判定部68が、ステップS36又はステップS37で得られた相関度を相関判定用の閾値と比較して(ステップS38)、相関度が閾値未満である(相関関係を有しない)場合には処理を終了し、一方、相関度が閾値以上である(相関関係を有する)場合には保守作業を施す必要があると判定して、その旨を示す情報を保守情報入力端末50へ送信して警告出力させる(ステップS39)。
【0050】
以上のように、第1構成例では、異常を特徴付ける画像形成装置(異常の発生回数が比較的多く、保守作業の実行率が比較的高いもの)を抽出し、それ以外については基準発生パターンの生成に用いる対象から除外するように構成している。
これにより、保守作業に至った原因である可能性が低いと推定される異常に関する情報が、基準発生パターンの生成に用いる対象から除外されることになる。したがって、保守発生前に特徴的に出現した異常の発生パターンをより的確に表現した基準発生パターンを生成することができ、保守の必要性判定の精度向上に寄与することができるとともに、基準発生パターン生成部65による処理対象のデータ量を削減でき、装置全体としての処理負担を軽減することができる。
【0051】
図8には、本発明の一実施形態に係る画像形成システムの第2構成例を示してある。
本例の画像形成システムは、第1構成例における基準情報選定部71に代えて(或いは基準情報選定部71と共に)異常情報選定部72を備えた構成となっている。以下では、主に第1構成例と異なる部分について説明し、他の部分については説明を省略する。
【0052】
基準発生パターン蓄積部66には、異常の種別毎の基準発生パターンのそれぞれに、その基準発生パターンに係る異常の発生回数の最小値を示す基準値(基準回数)が対応付けられている。この基準値は、保守を実施しなかった傾向にある異常発生回数に係る画像形成装置における異常の情報を除外するためのものであり、第1構成例における基準情報選定部71(閾値決定部71b)で決定された閾値に相当する。基準情報選定部71を有する構成の場合には、基準情報選定部71により基準値の対応付けが行われる。なお、一の異常の種別に対して複数の基準発生パターンが存在する場合には、各基準発生パターンに係るそれぞれの基準値は互いに異なり得る。
【0053】
異常情報選定部72は、類似度算出部67による類似度算出に係る異常の発生パターンの生成に用いる情報を選定(抽出)する処理部であり、図9に機能ブロックを例示するように、基準値抽出部72a、閾値決定部72b、情報選定部72cを有している。
【0054】
基準値抽出部72aは、基準発生パターン蓄積部66から異常の種別毎の基準発生パターンに対応付けられた基準値を抽出する。
閾値決定部72bは、異常の種別毎に、各基準発生パターンに対応付けられた基準値のうち最小のものを閾値に決定する。
情報選定部72cは、閾値決定部71bにより決定された閾値に基づいて、類似度算出に係る異常の発生パターンの生成に用いる情報を選定(抽出)し、類似度算出部67へ供給する。
【0055】
本例の異常情報選定部72による動作の一例を、図10及び図11に例示する処理フローを参照して説明する。
異常情報選定部72では、まず、基準値抽出部72aが、基準発生パターン蓄積部66から基準発生パターンを抽出する(ステップS41)。
次に、閾値決定部72bが、異常の種別毎に、各基準発生パターンに対応付けられた基準値のヒストグラムを生成し(ステップS42)、そのヒストグラムにおいて最小の基準値を閾値に決定する(ステップS43)。
【0056】
その後、情報選定部72cが、基準発生パターンの設定後に新たに異常が発生した画像形成装置10に係る該当する異常情報に基づいて、その異常の種別について直近の異常の発生回数を求めて前記決定された閾値と比較し(ステップS51)、異常の発生回数が閾値以上の事例に係る異常情報及び保守情報を相関度算出に係る異常の発生パターンの生成に用いる情報に選定して類似度算出部67へ供給する(ステップS52)。一方、異常の発生回数が閾値未満の事例に係る異常情報及び保守情報については、相関度算出に係る異常の発生パターンの生成に用いる情報から除外する(ステップS53)。
【0057】
以上のように、第2構成例では、基準発生パターンの生成に用いる事例の抽出に用いた基準(異常の発生回数の最小値)を特定し、当該基準を満たす回数の異常が少なくとも発生した事例のみを相関度算出に係る異常の発生パターンの生成に用いる対象として抽出し、他の事例については相関度算出に係る異常の発生パターンの生成に用いる対象から除外するように構成している。
これにより、基準発生パターンとの比較に足りない回数の異常に関する情報が、相関度算出に係る異常の発生パターンの生成に用いる情報から除外されることになる。したがって、類似度算出部67による処理対象のデータ量を削減でき、装置全体としての処理負担を軽減することができる。
【0058】
図12には、本発明の一実施形態に係る画像形成システムの第3構成例を示してある。
本例の画像形成システムは、第1構成例における基準情報選定部71及び第2構成例における異常情報選定部72に加え、情報補正部73を備えた構成となっている。以下では、主に第1構成例及び第2構成例と異なる部分について説明し、他の部分については説明を省略する。
【0059】
情報補正部73は、基準情報選定部72及び異常情報選定部73による処理に用いられる情報を補正する処理部であり、図13及び図15に機能ブロックを例示するように、起点日特定部73a、データ補正部74bを有している。
【0060】
基準情報選定部71による処理に用いられる情報を補正する処理に関して、図13及び図14を参照して説明する。
起点日特定部73aは、過去に保守作業が施された画像形成装置10に係る保守作業以前の期間内に検出された異常の発生パターンを生成する起点となる起点日を特定する。この場合の起点日とは、図14(b)に例示するように、保守の要請があった日から遡り、保守の要請要因(当該保守による除去対象の異常)と一致する種別の異常が直近に発生した日(すなわち、画像形成装置10の使用に支障をきたす故障が発生したと推定される日)を指す。本例では、保守情報入力端末50から送信される保守情報に、その保守の要請日時が含められており、これを起点日の特定に用いている。
【0061】
データ補正部74bは、その画像形成装置10で検出された該当種別の異常について、起点日特定部73aにより特定された起点日から遡り、予め定められた長さの日数分(例えば5日分)の異常情報を抽出して基準情報選定部71へ供給する。その際、図14(a)に例示するように、該当種別の異常の発生回数がゼロの日があり、且つ、その日に画像形成装置10が非稼働(例えば、画像形成枚数のカウント値の差分=0)であった場合には、当該画像形成装置10についての処理においては、その日自体が存在しなかったものと見做す。また、このままだと、非存在と見做した日数分のデータが欠如することになるため、非存在と見做した日数分を更に遡って異常情報を抽出する。
図14(c)には、上記の処理の結果として抽出される異常情報の日別の発生回数を例示してある。
【0062】
異常情報選定部72による処理に用いられる情報を補正する処理に関して、図15を参照して説明する。
起点日特定部73aは、現在の日付を起点日として特定する。
データ補正部74bは、基準発生パターンの設定後に新たに異常が発生した画像形成装置10に係る該当種別の異常について、起点日特定部73aにより特定された起点日から遡り、予め定められた長さの日数分(例えば5日分)の異常情報を抽出して異常情報選定部72へ供給する。その際、該当種別の異常の発生回数がゼロの日があり、且つ、その日に画像形成装置10が非稼働であった場合には、当該画像形成装置10についての処理においては、その日自体が存在しなかったものと見做す。また、このままだと、非存在と見做した日数分のデータが欠如することになるため、非存在と見做した日数分を更に遡って異常情報を抽出する。
【0063】
なお、本例では、日を単位とした粒度で処理を説明しているが、他の時間長の単位で処理するようにしてもよい。
また、本例では、画像形成の枚数が0枚の場合に画像形成装置10が非稼働であると判断しているが、画像形成装置10から送信されるモード情報により休止モードと判定される場合や、起動状態の画像形成装置10から定期的に送信される情報が途絶えている場合など、画像形成装置10から得られる他の情報に基づいて画像形成装置10が非稼働か否かを判断するようにしてもよい。
【0064】
図16には、基準情報選定部71による処理に用いられる情報を補正する処理に関する処理フローを例示してある。
情報補正部73では、まず、起点日特定部73aが、保守情報蓄積部64に蓄積されている保守情報を取得し(ステップS61)、保守作業に係る異常の種別を特定する(ステップS62)。そして、特定した異常の種別について、当該保守情報に対応する画像形成装置10における直近の異常の発生日を検索し、起点日として設定する(ステップS63)。
【0065】
次に、データ補正部74bが、その画像形成装置10で検出された該当種別の異常について、起点日特定部73aにより特定された起点日から遡り、予め定められた長さの日数分(例えば5日分)における日々の異常の発生回数とカウント値とを突き合わせる(ステップS64)。このカウント値は、画像形成装置10が稼働しているか否かの特定に用いられる情報であり、本例では画像形成した枚数のカウント値を用いるが、用紙搬送ロールの駆動距離のカウント値など、他の情報を用いてもよい。そして、カウント値の更新が無く(すなわち、画像形成装置10が非稼働)、特定した異常の種別が発生していない日を時系列データ(日々の異常の発生回数)から除外する(ステップS65)。また、除外した日数分のデータを補充するために、その日数分を更に遡って上記の処理(ステップS64、S65)を行う。
【0066】
図17には、情報補正部73によるデータ補正の結果を例示してある。
図17(a)〜(c)には、データ補正前の日別の異常の発生回数について3パターンを例示してあり、同図(d)には、これら3パターンに対するデータ補正の結果を例示してある。
図17(a)と(b)を比較すると、稼働日と非稼働日の態様及び稼働日における異常の発生回数が一致するものの、保守の要請日と訪問日(保守の実施日)の関係が相違している。また、図17(b)と(c)を比較すると、保守の要請日と訪問日の関係及び稼働日における異常の発生回数が一致するものの、稼働日と非稼働日の態様が相違している。
このように、データ補正前は異なる内容となっているが、データ補正を行うことで、図17(d)に示すように1つのパターンに集約される。
【0067】
以上のように、第3構成例では、画像形成装置10の稼働状況や画像形成装置10に対する保守の要請日と実施日とのズレ等によるデータのばらつきによって、本来的には1つに集約されるべき複数の基準発生パターンが生じることが抑制され、基準発生パターンの数が抑えられる。
したがって、類似度算出部67による処理対象のデータ量を削減でき、装置全体としての処理負担を軽減することができると共に、保守の必要性の判定制度を向上させることができる。
【0068】
ここで、第1構成例〜第3構成例に示した監視装置60は、保守判定の基準を設定する判定基準設定装置と、設定された保守判定の基準に基づいて画像形成装置10に対する保守の必要性を判定する判定装置とを一体に備えた構成であるが、これらを別体の装置により構成してもよい。
【0069】
また、本例においては、基準発生パターンの設定に係る画像形成装置10と保守判定の対象の画像形成装置10は、同じ装置であってもよく、異なる装置であってもよい。すなわち、1以上の画像形成装置10(保守判定の対象の画像形成装置10が含まれてもよい)における過去の異常情報及び保守情報に基づいて基準発生パターンを設定し、その後、当該基準発生パターンを用いて保守判定の対象の画像形成装置10に対する保守の必要性を判定する。
【0070】
図18には、本例の予測システムにおいて監視装置60として動作するコンピュータのハードウェア構成を例示してある。
本例では、各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)81、CPU81の作業領域となるRAM(Random Access Memory)82や基本的な制御プログラムを記録したROM(Read Only Memory)83等の主記憶装置、本発明の一実施形態に係るプログラムや各種データを記憶するHDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置、各種情報を表示出力するための表示装置及び操作者により入力操作に用いられる操作ボタンやタッチパネル等の入力機器とのインタフェースである入出力I/F85、他の装置との間で有線又は無線により通信を行うインタフェースである通信I/F86、等のハードウェア資源を有するコンピュータにより構成されている。
そして、本発明の一実施形態に係るプログラムを補助記憶装置84等から読み出してRAM82に展開し、これをCPU81により実行させることで、本発明の一実施形態に係る判定基準設定装置の各機能をコンピュータ上に実現している。
【0071】
なお、本発明の一実施形態に係るプログラムは、例えば、当該プログラムを記憶したCD−ROM等の外部記憶媒体から読み込む形式や、通信網等を介して受信する形式などにより、本例に係るコンピュータに設定される。
また、本例のようなソフトウェア構成により各機能部を実現する態様に限られず、それぞれの機能部を専用のハードウェアモジュールで実現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10:画像形成装置、 50:保守情報入力端末、 60:監視装置、
61:異常情報取得部、 62:異常情報蓄積部、 63:保守情報取得部、 64:保守情報蓄積部、 65:基準発生パターン生成部、 66:基準発生パターン蓄積部、 67:類似度算出部、 68:保守必要性判定部、 71:基準情報選定部、 72:異常情報選定部、 73:情報補正部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像形成装置で構成されるグループにおける異常の発生に関し、異常の種別毎に、異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置の累計台数の分布と、異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守が施された画像形成装置の累計台数の分布との少なくとも一方を用いて、当該分布において予め定められた基準値を上回る異常の発生回数を基準回数として特定する特定手段と、
前記特定手段により基準回数が特定された異常の種別について、前記グループに含まれる画像形成装置のうち異常の発生回数が当該基準回数以上の画像形成装置を特定し、当該特定した画像形成装置で構成されるサブグループを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出されたサブグループについて保守が施された場合の該当する種別の異常の時系列的な発生傾向を生成し、当該異常の発生傾向が予め定められた設定条件を満たす場合に、当該異常の発生傾向を当該種別に係る保守判定の基準として設定する設定手段と、
前記設定手段により発生傾向が設定された異常の種別について、保守判定の対象となる画像形成装置における直近の異常の時系列的な発生傾向と前記設定手段により設定された異常の発生傾向とを比較し、発生傾向の相関度の近さに応じて当該画像形成装置に対する保守の必要性を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記判定手段は、前記特定手段により特定された発生回数以上の異常が直近に発生した画像形成装置を保守判定の対象として当該画像形成装置に対する保守の必要性を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記設定手段は、保守が施された場合の時系列的な異常の発生傾向を、対象の画像形成装置に対する保守の要請日時を起点に遡った期間内に当該画像形成装置で発生した異常に基づいて生成する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記設定手段及び前記判定手段は、画像形成装置毎に、その画像形成装置で発生した異常を予め定められた時間長の期間単位で分類して処理するものであり、分類された異常の発生回数がゼロで且つ当該画像形成装置が非稼動の期間については、当該期間を非存在と見做して処理する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項5】
複数の画像形成装置で構成されるグループにおける異常の発生に関し、異常の種別毎に、異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置の累計台数の分布と、異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守が施された画像形成装置の累計台数の分布との少なくとも一方を用いて、当該分布において予め定められた基準値を上回る異常の発生回数を基準回数として特定する特定手段と、
前記特定手段により基準回数が特定された異常の種別について、前記グループに含まれる画像形成装置のうち異常の発生回数が当該基準回数以上の画像形成装置を特定し、当該特定した画像形成装置で構成されるサブグループを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出されたサブグループについて保守が施された場合の該当する種別の異常の時系列的な発生傾向を生成し、当該異常の発生傾向が予め定められた設定条件を満たす場合に、当該異常の発生傾向を当該種別に係る保守判定の基準として設定する設定手段と、
を備えたことを特徴とする判定基準設定装置。
【請求項6】
コンピュータに、
複数の画像形成装置で構成されるグループにおける異常の発生に関し、異常の種別毎に、異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置の累計台数の分布と、異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守が施された画像形成装置の累計台数の分布との少なくとも一方を用いて、当該分布において予め定められた基準値を上回る異常の発生回数を基準回数として特定する特定機能と、
前記特定機能により基準回数が特定された異常の種別について、前記グループに含まれる画像形成装置のうち異常の発生回数が当該基準回数以上の画像形成装置を特定し、当該特定した画像形成装置で構成されるサブグループを抽出する抽出機能と、
前記抽出機能により抽出されたサブグループについて保守が施された場合の該当する種別の異常の時系列的な発生傾向を生成し、当該異常の発生傾向が予め定められた設定条件を満たす場合に、当該異常の発生傾向を当該種別に係る保守判定の基準として設定する設定機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項1】
複数の画像形成装置で構成されるグループにおける異常の発生に関し、異常の種別毎に、異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置の累計台数の分布と、異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守が施された画像形成装置の累計台数の分布との少なくとも一方を用いて、当該分布において予め定められた基準値を上回る異常の発生回数を基準回数として特定する特定手段と、
前記特定手段により基準回数が特定された異常の種別について、前記グループに含まれる画像形成装置のうち異常の発生回数が当該基準回数以上の画像形成装置を特定し、当該特定した画像形成装置で構成されるサブグループを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出されたサブグループについて保守が施された場合の該当する種別の異常の時系列的な発生傾向を生成し、当該異常の発生傾向が予め定められた設定条件を満たす場合に、当該異常の発生傾向を当該種別に係る保守判定の基準として設定する設定手段と、
前記設定手段により発生傾向が設定された異常の種別について、保守判定の対象となる画像形成装置における直近の異常の時系列的な発生傾向と前記設定手段により設定された異常の発生傾向とを比較し、発生傾向の相関度の近さに応じて当該画像形成装置に対する保守の必要性を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記判定手段は、前記特定手段により特定された発生回数以上の異常が直近に発生した画像形成装置を保守判定の対象として当該画像形成装置に対する保守の必要性を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記設定手段は、保守が施された場合の時系列的な異常の発生傾向を、対象の画像形成装置に対する保守の要請日時を起点に遡った期間内に当該画像形成装置で発生した異常に基づいて生成する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記設定手段及び前記判定手段は、画像形成装置毎に、その画像形成装置で発生した異常を予め定められた時間長の期間単位で分類して処理するものであり、分類された異常の発生回数がゼロで且つ当該画像形成装置が非稼動の期間については、当該期間を非存在と見做して処理する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項5】
複数の画像形成装置で構成されるグループにおける異常の発生に関し、異常の種別毎に、異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置の累計台数の分布と、異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守が施された画像形成装置の累計台数の分布との少なくとも一方を用いて、当該分布において予め定められた基準値を上回る異常の発生回数を基準回数として特定する特定手段と、
前記特定手段により基準回数が特定された異常の種別について、前記グループに含まれる画像形成装置のうち異常の発生回数が当該基準回数以上の画像形成装置を特定し、当該特定した画像形成装置で構成されるサブグループを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出されたサブグループについて保守が施された場合の該当する種別の異常の時系列的な発生傾向を生成し、当該異常の発生傾向が予め定められた設定条件を満たす場合に、当該異常の発生傾向を当該種別に係る保守判定の基準として設定する設定手段と、
を備えたことを特徴とする判定基準設定装置。
【請求項6】
コンピュータに、
複数の画像形成装置で構成されるグループにおける異常の発生に関し、異常の種別毎に、異常の発生回数に対する当該異常が発生した画像形成装置の累計台数の分布と、異常の発生回数に対する当該異常の発生に伴って保守が施された画像形成装置の累計台数の分布との少なくとも一方を用いて、当該分布において予め定められた基準値を上回る異常の発生回数を基準回数として特定する特定機能と、
前記特定機能により基準回数が特定された異常の種別について、前記グループに含まれる画像形成装置のうち異常の発生回数が当該基準回数以上の画像形成装置を特定し、当該特定した画像形成装置で構成されるサブグループを抽出する抽出機能と、
前記抽出機能により抽出されたサブグループについて保守が施された場合の該当する種別の異常の時系列的な発生傾向を生成し、当該異常の発生傾向が予め定められた設定条件を満たす場合に、当該異常の発生傾向を当該種別に係る保守判定の基準として設定する設定機能と、
を実現させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−145977(P2012−145977A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1425(P2011−1425)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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