説明

画像形成システム、画像形成装置および画像形成方法

【課題】異なる記録モードが設定された複数の画像でネスティングする場合であっても、インデックスとマスクの組み合わせ及び相対位置関係を崩すことなく、良好な画像を出力することが可能な画像形成システムを提供する。
【解決手段】複数の印刷ジョブデータのそれぞれについて、ネスティングした際のマスクパターンの記録媒体上での開始位置を、個々の印刷ジョブデータに付随された画像データの開始位置情報に基づいて、インデックスパターンの開始位置と一致するように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム、特に、擬似中間調による中間調再現を行う画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、擬似中間調によって濃度表現を行うため、多値の濃度データをドットの記録または非記録を指定する2値情報に変換する処理が行われる。近年では画像処理の解像度よりも高い解像度で記録可能なインクジェット記録装置も多く、この場合には、一連の画像処理を施した画像データを、予め用意したインデックスパターンを用いて記録解像度に対応した2値データに変換する処理が行われることがある。インデックスパターンは、記録解像度に対応した画素をM×Nだけ集合させて構成され、各画素ではドットの記録あるいは非記録が予め定められている。
【0003】
一方、シリアル型のインクジェット記録装置では、記録素子のばらつきに起因する濃度むらや、記録媒体の搬送誤差に起因するつなぎスジなどを低減するために、マルチパス記録方法を採用することが多い。マルチパス記録では、記録ヘッドが1回の記録走査で記録可能な記録媒体上の単位領域に対し、記録ヘッドの複数回の記録走査によって記録を行う。このようなマルチパス記録を行うためには、各記録走査でドットの記録を許容する画素および許容しない画素を予め定めたマスクパターンが使用されている。
【0004】
インデックスパターンもマスクパターンも、記録解像度に対応した2値データの集合体であり、記録の目的に応じてパターンの内容を調整することが可能である。例えば特許文献1には、高画質記録モードが設定された場合には相対的にドットの分散性に優れたインデックスパターンを用い、高速記録モードが設定された場合には相対的にドットが集中して配置されるインデックスパターンを用いる方法が開示されている。また、特許文献2には、特定インクと非特定インクの記録媒体に対する記録順番を、両者の付与量情報に基づいて制御するために、インデックスパターンとマスクパターンを関連付けて構成する方法が開示されている。特許文献2のように、インデックスパターンとマスクパターンを関連づけて構成することは、様々な目的に応じてドットの配列や記録の順番を制御することを可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−168202号公報
【特許文献2】特開2008−173969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、インデックスパターンとマスクパターンを関連づけて構成することによる特許文献2のような効果を得るためには、インデックスパターンとマスクパターンの相対的な位置が固定されていなければならない。インデックス処理もマスク処理もインクジェット記録装置のハードウェアで行われる場合、両者の相対位置は装置内のコントローラにより規定され、崩れるおそれはない。
【0007】
しかしながら、装置の高解像度化や高画質化への要求が高まる近年においては、各パターンのサイズも大きくなり、インデックス処理とマスク処理が必ずしも同じハードウェアで行われる状況にはない。すなわち、ホスト装置のラスタ画像処理プログラムに従ってインデックス処理を行い、その結果得られる印刷ジョブデータを記録装置が受信し、記録装置においてマスク処理および記録動作を行う構成も多くなってきている。このような場合、ホスト装置と記録装置との間で、インデックスパターンとマスクパターンの開始位置を規定する特別なルールを定めておかなければ、両者の相対位置関係は崩れてしまうおそれがある。
【0008】
一方、横幅の大きい大判シリアルプリンタにおいては、大判用紙の余白を節約するために、複数頁を主走査方向に並列して記録するネスティングと呼ばれる印刷制御が採用される場合がある。ネットワーク環境化におけるネスティングでは、一般に、一定時間内に受信した同種の用紙に対する印刷ジョブを主走査方向に並列する。よって、異なるホスト装置でインデックス処理された2種類の2値データが1つの記録装置に入力され、並列して記録されるような状況も生じる。この際、たとえ同種の記録媒体であっても、並列して記録される2つの画像では、指定される記録モードすなわち処理に使用されるインデックスパターンとマスクパターンの組み合わせが異なる場合もある。そして、その結果、インデックスパターンとマスクパターンの相対関係が崩れるような状況も発生してしまっていた。
【0009】
図19(a)および(b)は、このような状況におけるインデックスパターンとマスクパターンの相対関係の崩れを示す模式図である。ここでは、ネットワーク接続された第1のホスト装置より提供された第1の画像と、第2のホスト装置より提供された第2の画像とを、ネスティングにより主走査方向に並列して配置する場合を例に説明する。
【0010】
図19(a)において、231は第1の画像の記録走査方向における記録開始アドレス、232は第2の画像の記録走査方向における記録開始アドレス、を夫々示している。233〜235は第1のホスト装置によってインデックス処理された後の第1の画像の2値データ、236〜236は第2のホスト装置によってインデックス処理された後の第2の画像の2値データを夫々示している。ここでは、4×4画素のインデックスパターンが例示されており、黒で示したエリアはドットを記録する画素、白で示したエリアはドットを記録しない画素を示している。第1の画像と第2の画像とは、夫々のホスト装置において異なる記録モードが設定され、異なるインデックスパターンが使用されている。その結果、第1の画像では上2ラインのエリアに記録する画素が偏っており、第2の画像では記録する画素に偏りが無い。
【0011】
一方、239は第1の画像のためのマスクパターンを示し、230は第2の画像のためのマスクパターンを示している。従来においては、同じ主走査内においてマスクパターンを切り替えることは出来なかった。よって、たとえ第2のホスト装置が第1のホスト装置と異なるマスクパターンを指定しても、図19(a)のように第1、第2ともに第1の画像のために指定されたマスクパターンが使用されてしまった。すなわち、第2のホスト装置が指定したインデックスパターンとマスクパターンの相関は崩れてしまう。こうした状況を避けるために、記録モードが異なる画像についてはネスティングを行わないように設定することも出来るが、この場合には余白領域を節約することが出来なくなってしまう。
【0012】
次に、図19(b)を用いて、インデックスパターンとマスクパターンの相対位置にずれが発生する場合について説明する。図において、240〜249は図19(a)の230〜239と同じものを示している。本例において、244は第1の画像の開始アドレス241から第2の画像の開始アドレス242までの記録媒体上の距離を示している。ここで、第1の画像の幅を210mm、左右の余白を3mm、記録装置の記録解像度を1200dpiとすると、244は9921画素となる。すなわち、第2の画像は、第1の画像の記録開始位置から9921画素距離を置いた位置から記録が開始され、記録装置においてはそのような位置を開始点としてマスクパターン240を配置する。しかしながら、第2の画像のインデックス処理は、第2のホスト装置において所定のラスタプログラムに従って行われ、開始点距離244のような情報は考慮されない。従って、マスクパターンの開始位置243とインデックスパターンの開始位置242の間にずれ245が生じ、両者の相対位置関係が崩れてしまう。
【0013】
以上のように、記録モードによって設定されたマスクパターンとは異なるマスクパターンが使用されてしまったり、インデックスパターンとマスクパターンの相対位置関係が崩れてしまったりすると、むらやテクスチャのような画像弊害が招致される。
【0014】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものである。よってその目的とするところは、異なる記録モードが設定された複数の画像でネスティングする場合であっても、インデックスとマスクの組み合わせ及び相対位置関係を崩すことなく、良好な画像を出力することが可能な画像形成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そのために本発明は、多値の画像データを、該多値の画像データよりも高い解像度の2値の画像データに変換し、該2値の画像データに基づいて印刷ジョブデータを生成する少なくとも1つのホスト装置と、前記少なくとも1つのホスト装置より出力された複数の印刷ジョブデータを受信して、該複数の印刷ジョブデータに対応する複数の画像を、記録ヘッドの走査方向に並列した状態で、マルチパス記録によって記録媒体に記録する画像形成装置とを備えた画像形成システムであって、前記少なくとも1つのホスト装置の夫々は、n×mの記録画素の夫々についてドットの記録あるいは非記録を定めたインデックスパターンを参照することによって、前記多値の画像データを前記2値の画像データに変換する手段と、前記2値の画像データを圧縮してラスタデータを生成し、該ラスタデータに前記2値の画像データの開始位置および記録モードを指定する情報を付加して、前記印刷ジョブデータを生成する手段を備え、前記画像形成装置は、前記マルチパス記録の各記録走査においてドットの記録を許容する画素とドットの記録を許容しない画素を定めたマスクパターンの複数を記憶する手段と、前記複数の印刷ジョブデータのそれぞれについて、前記記録モードに応じて前記複数のマスクパターンの中から1つを選択する手段と、前記複数の印刷ジョブデータのそれぞれについて、前記複数の画像を前記記録ヘッドの走査方向に並列した状態における前記選択されたマスクパターンの記録媒体上での開始位置を、前記画像データの開始位置に基づいて、前記画像データの記録媒体上での開始位置と一致するように設定する設定手段と、前記記録ヘッドによる記録走査中に使用するマスクパターンを、前記複数の印刷ジョブデータの夫々に対応する前記マスクパターンの開始位置に基づいて切り替えながら、マルチパス記録を実行する手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、異なる記録モードが設定された複数の画像でネスティングする場合であっても、インデックスパターンとマスクパターンの組み合わせ及び相対位置関係を崩すことなく、画像を出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に使用可能な画像形成システムの一例を示した図である。
【図2】画像形成装置における制御の構成を説明するためのブロック図である。
【図3】第1のインデックスパターンを示す図である。
【図4】第1の記録モードが指定する第1のマスクパターンを示す図である。
【図5】第2のインデックスパターンを示す図である。
【図6】第2の記録モードが指定する第2のマスクパターンを示す図である。
【図7】(a)〜(c)は、第1の画像のデータの変換の様子を示す図である。
【図8】(a)〜(c)は、第2の画像のデータの変換の様子を示す図である。
【図9】マスクRAMにおけるマスクパターンの格納状態を示す図である。
【図10】マスクパターン切り替えのタイミングを管理するタイミングチャートである。
【図11】ネスティングに関する状態遷移を説明するための模式図である。
【図12】第1の印刷ジョブデータの待機状態に遷移する際のフローチャートである。
【図13】印刷ジョブを受信した際に制御部が実行する処理工程のフローチャートである。
【図14】印刷状態に遷移する際に、制御部が実行する処理工程のフローチャートである。
【図15】印刷終了のタイミングで制御部が実行する処理工程のフローチャートである。
【図16】ネスティング解除制御の工程のフローチャートである。
【図17】第1の画像データと第2の画像データの配列の様子を示す図である。
【図18】ネスティング処理におけるマスクパターンの配置状態を示す図である。
【図19】(a)および(b)は、インデックスとマスクの相対関係の崩れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図を用いて本発明の画像形成装置について説明する。
【0019】
図1は、本発明に使用可能なネットワーク環境下における画像形成システムの一例を示した図である。第1のホスト装置108および第2のホスト装置109が、LANケーブル107を介して画像形成装置101に接続されている。第1のホスト装置108および第2のホスト装置109は、夫々のホスト装置で生成された画像データを、夫々のホスト装置で指定された記録モードに従って画像処理し、プリンタ言語からなるラスタ表記のジョブデータを生成し、画像形成装置101に転送する。本実施形態において、画像形成装置101は大判の記録物を出力可能なシリアル型のインクジェット記録装置である。
【0020】
制御部102は、画像形成装置101全体を制御するユニットであり、第1のホスト装置108あるいは第2のホスト装置109から送信される印刷ジョブデータを受信し、所定の画像処理を施した後、以下に説明するような記録動作を実行する。
【0021】
記録動作が開始されると、ロール紙ユニット104に保持されている記録媒体が、記録ヘッド103による記録が可能な記録領域まで装置内部を搬送される。記録ヘッド103は、1200dpiの密度でY方向に配列する1280個のノズルを有し、図のX方向に移動しながら記録媒体に対しインクを吐出する。記録ヘッド103による1回の記録走査が終了すると、記録ヘッド103の記録幅に対応した幅だけ記録媒体がY方向に搬送される。このような記録走査と搬送動作を交互に繰り返すことにより、記録媒体上に段階的に画像が形成されていく。記録が完了した記録媒体は、不図示のカッターによって切断され、排出部105より排出される。ユーザは、操作部106を介して、画像形成装置101に指示を出したり、装置内の情報をLCDやLEDから取得したりすることができる。
【0022】
図2は、本発明の画像形成装置101における制御の構成を説明するためのブロック図である。制御部102は、CPU202、ROM203、RAM204、不揮発メモリ205、画像処理回路206を有している。制御部102は、ROM203に格納されているプログラムに従って、CPU202を使用しながら各種制御を行う。この際、RAM204は、ワークエリアとして使用されたり、受信した画像データを一時的に格納するために使用されたりする。不揮発メモリ205は、フラッシュROMやEEPROMで構成され、記録中の記録媒体の種類や記録モードのような情報が、画像形成装置101の電源とは独立して不揮発に記憶される。画像処理回路206は、ホスト装置から受信した画像データに所定の画像処理を施し、記録ヘッド103が記録可能な2値データを生成するための回路である。
【0023】
外部I/F部207は、IPプロトコルのようなネットワーク接続プロトコルによる送受信が可能なインターフェイスである。制御部102は、外部I/F部207を介してホスト装置108やホスト装置109からの印刷ジョブデータを受信し、これをストレージ213にファイルとして保存する。
【0024】
メカ制御部209は、記録媒体の給紙や搬送動作、あるいは記録完了後の記録媒体の切断などを行うために、各種駆動部を制御する。印刷制御部210は、記録ヘッド103の吐出動作や、記録ヘッド103を搭載したキャリッジの移動を行うために各種駆動部を制御する。マスクRAM211は、記録動作中に使用するマスクパターンを格納する。マスク同期部212の詳細については後述するが、キャリッジの移動走査と同期してマスクRAM211からマスクパターンを読み出す役割を担っている。
【0025】
以下、上記ネットワークシステムの下、第1のホスト装置108で生成された印刷ジョブデータに基づく第1の画像と、第2のホスト装置109で生成された印刷ジョブデータに基づく第2の画像を、画像形成装置101にてネスティングする場合について説明する。本実施形態において、ホスト装置内での主な画像処理は300dpiで行われ、その後、多値量子化処理によって17値の濃度データに変換されるものとする。そして、インデックス処理では、この300dpiの17値データを所定のインデックスパターンを参照することによって、本実施形態の記録ヘッド1003が記録可能な1200dpiの2値データに変換する。この際、第1のホスト装置108では、第1の記録モードが指定する第1のインデックスパターンに従ってインデックス処理を行う。そして、処理後のラスタデータと、第1の記録モードが指定するマスクパターンなどの情報を組み合わせて、第1の印刷ジョブデータを生成する。同様に、第2のホスト装置109では、第2の記録モードが指定する第2のインデックスパターンに従ってインデックス処理を行う。そして、処理後のラスタデータと、第2の記録モードが指定するマスクパターンなどの情報を組み合わせて、第2の印刷ジョブデータを生成する。
【0026】
図3は、第1のインデックスパターンを示す図である。本実施形態のインデックス処理では300dpiの17値データを1200dpiの2値データに変換するので、インデックスパターンは4×4のマトリクス構造を有するものとなる。
【0027】
図の左側に示された00000〜10000は300dpiの各画素が有するレベル値1〜17の値を2進数で示した値である。各値の右側に示した4×4のエリアは1200dpiの4画素×4画素の記録画素領域に相当し、黒で示したエリアはドットを記録する画素、白で示したエリアはドットを記録しない画素を夫々示している。レベル数が0のパターンでは、黒で示したエリアの数が0であり、レベル数が上がるにつれて黒で示したエリアの数が増えていく。そして、レベル数が17(10000)のパターンでは、全てのエリアが黒で示されている。
【0028】
4エリア×4エリアからなるこのようなインデックスパターンは、各レベルについてa〜pの16パターン用意されており、各パターンでドットを記録するエリアと記録しないエリアの配置が異なっている。このように1つのレベルに対し複数のパターンを用意しておくことにより、同じレベルが連続するような領域であっても、ドットの配置に偏りを生じさせないようにすることが出来る。但し、本実施形態において、図3に示した第1のインデックスパターンは、ドットを記録する画素が4×4の上半分の領域に偏っているという特徴を有する。
【0029】
図4は、第1の記録モードが指定する第1のマスクパターンを示す図である。マルチパス記録を行う場合、記録ヘッドに配列する複数のノズルはマルチパス数に応じた数の領域にY方向に分割され、夫々の領域で互いに補間関係を有するマスクパターンが宛がわれる。本実施形態では8パスのマルチパス記録を行うものとし、1280個のノズルは、160ノズルずつを含む領域1〜領域8の8つの領域に分割される。
【0030】
夫々の領域には、異なるマスクパターンが宛がわれており、各パターンにおいて、図中黒で示したエリアがドットの記録を許容する画素、白で示したエリアがドットの記録を許容しない画素を夫々示している。これらマスクパターンは、4画素×4画素の単位が繰り返し配置されており、互いに排他かつ補間関係を有している。このようなマスクパターンを用いて8パスのマルチパス記録を行うと、Y方向に160画素幅を有する記録媒体の単位領域は、領域1から領域8までの8回の記録走査によって段階的に画像が完成される。
【0031】
実際に記録が行われる際、制御部102は、第1のホスト装置108から受信した2値データ、すなわち図3に示した第1のインデックスパターンに従って記録/非記録が定められた2値データと、図4で示した第1のマスクパターンとの間で論理積をとる。その結果得られる2値データが、各領域および各記録走査で実際にインクを吐出するための2値データとなる。第1のマスクパターンでは、領域1〜領域4において4×4の下半分の領域に記録許容画素が配置され、領域5〜領域8において上半分の領域に記録許容画素が配置されている。よって、このようなマスクパターンと図3で示した第1のインデックスパターンの組み合わせによって記録される単位領域は、5パス以降の後半の記録走査でインクが付与されることが多くなる。すなわち、第1の記録モードでは、第1のインデックスパターンと第1のマスクパターンを指定することによって、なるべく後半の記録走査でインクが付与されるように制御することが出来る。
【0032】
一方、図5は、第2のインデックスパターンを示す図である。第2のインデックスパターンは、ドットを記録するエリアと記録しないエリアの配置が偏りを有さないような、異なる16パターンが用意されている。また、図6は、第2の記録モードが指定する第2のマスクパターンを示す図である。第2のマスクパターンでは、領域1〜領域8の全領域において記録許容画素が一様に配置されている。よって、このようなマスクパターンと図4で示した第2のインデックスパターンの組み合わせによって記録される単位領域は、8回の記録走査で略同量ずつインクが付与されることが期待できる。すなわち、第2の記録モードでは、第2のインデックスパターンと第2のマスクパターンを指定することによって、全ての記録走査で均等にインクが付与されるように制御することが出来る。
【0033】
なお、記録モードで使用するインデックスパターンやマスクパターンは、記録ヘッドから吐出する複数のインク色の夫々について独立に指定することが出来る。よって、例えば、特定のインク色に対してのみ第1のインデックスパターンと第1のマスクパターンを指定し、他のインク色に対しては第2のインデックスパターンと第2のマスクパターンを指定することもできる。このような記録モードでは、特定のインク色を他のインク色よりも後から付与するように、記録媒体におけるインク付与順序をコントロールすることが可能となる。
【0034】
図7(a)〜(c)は、第1のホスト装置における第1の画像のデータの変換の様子を示す図である。図7(a)は、第1の画像データのインデックス処理前の様子を示している。第1の画像の画像領域701は、画像開始位置703を起点として、300dpiの単位画素702が図のように複数配列して構成されている。個々の単位画素702は、1〜17の何れかのレベル値を有している。このような画像データに対し、第1のホスト装置のインデックス処理部では、画像開始位置703の単位画素702から1つずつ順番にインデックス変換を行っていく。具体的には、図3に示した第1のインデックスパターンを参照することにより、個々の単位画素のレベル値に対応する16のインデックスパターンの中から1つを選択し、これを1200dpiの2値データとして配列していく。
【0035】
図7(b)は、図7(a)の画像データをインデックス処理した後の2値データである。画像開始位置703に相当する画素位置902を起点として1200dpiの2値データが配列されている。4エリア×4エリアの領域が、インデックス処理前の1つの単位画素領域に相当している。第1の画像では、第1のインデックスパターンが指定されているので、変換後の2値データも、ドットを記録する画素が4×4の上半分の領域に偏っている傾向を有している。
【0036】
図7(c)は、第1のホスト装置が画像形成装置に転送するための印刷ジョブデータの形態を示す図である。図7(b)のように生成された2値の画像データは更に可逆圧縮処理されて、第1の画像のラスタデータ112としてまとめられる。そして、このラスタデータ112の先頭には、画像データが開始される画素位置902の情報、指定する記録モードやマスクパターンの種類など、画像形成装置101が記録動作を行う際に必要な情報がヘッダ111として付加される。このように作成された第1の印刷ジョブデータが、画像形成装置101に転送される。
【0037】
図8(a)〜(c)は、第2のホスト装置における第2の画像のデータの変換の様子を図7(a)〜(c)と同様に示す図である。図8(b)において、第2の画像では、図5で示す第2のインデックスパターンが指定されているので、変換後の2値データもドットを記録する画素の配置に大きな偏りは有さない。図8(c)において、第2の画像データのヘッダ121には、第1の画像データと同様に画像データが開始される画素位置904の情報が格納されている。但しこの段階でネスティングの有無は考慮されていないので、開始画素位置904の値は、第2の画像を記録媒体の記録開始可能位置から記録する際の情報になっている。
【0038】
本実施形態の画像記録装置101は、図7(c)および図8(c)で示した2つの印刷ジョブデータを受信し、これをネスティング処理して1つの記録媒体に記録する。これら印刷ジョブデータが入力されると、制御部102はこれらデータを一度ストレージ213に格納する。そして、各印刷ジョブデータのヘッダを解析し、指定されたマスクパターンをROM203から読み出し、順番にマスクRAM211に記憶する。
【0039】
図9は、マスクRAM211におけるマスクパターンの格納状態を示す図である。第1の印刷ジョブデータによって指定されたマスクパターンは、第1の領域131に格納される。第2の印刷ジョブデータによって指定されたマスクパターンは、第2の領域133に格納される。すなわち、第1の領域131には図4で示したマスクパターンが2値データとして保存され、第2の領域133には図6で示したマスクパターンが2値データとして保存される。更に第3の印刷ジョブデータが存在すれば、これによって指定されたマスクパターンは、第3の領域135に格納される。このように、本実施形態の画像形成装置101は、所定の時間内に連続して受信した複数の印刷ジョブデータが指定するマスクパターンを、その順番を守りながら、マスクRAM211に格納していく。このとき、個々のマスクパターンが格納されているマスクRAM211内の先頭アドレスも、記憶しておく。図の例では、第1のマスクパターンが格納されている領域の先頭アドレスは0XA00000、第2のマスクパターンは0XA10000、第3のマスクパターンは0XA20000となっている。
【0040】
なお、以上では簡単のため、個々の印刷ジョブデータについて1つのマスクパターンを格納する例で説明したが、複数のインク色で異なるマスクパターンを使用する場合には、各領域の中に更に複数のマスクパターンを格納すればよい。
【0041】
制御部102は、ストレージ213に格納された複数の画像データを主走査方向に並列させ、同じ記録走査でこれら複数の画像データの記録を行う。この際、夫々の画像データを、個々に指定された適切なマスクパターンを用いて記録するため、同じ記録走査中にマスクパターンを切り替える必要がある。そのため、本実施形態のマスク同期部2012には、記録走査中にマスクパターンを切り替えるタイミングを管理するための複数のカウンタが用意されている。
【0042】
図10は、上記カウンタを用い、マスクパターンを切り替えるタイミングを管理するためのタイミングチャートである。
【0043】
図1を参照するに、主走査方向(X方向)における記録ヘッド103の位置は、記録ヘッド103の走査方向に平行に配備されたエンコーダスケールを、記録ヘッド103と共に移動するエンコーダセンサが読み取ることにより管理されている。この際、記録ヘッド103がホームポジションに位置する際には、ホームポジション信号142が発信される。本実施形態では、記録ヘッド103がホームポジション信号142を基準位置としながら時間軸Tに同期して移動する際に、同期信号144あるいは147の発生に伴ってマスクパターンを切り替えるようになっている。
【0044】
ここで、タイミングチャートAは、第1の同期カウンタのタイミングチャートである。第1の同期カウンタには、ホームポジションから記録媒体の端部までの距離を画素数に換算した値と、第1の印刷ジョブデータに格納されている画像開始位置902の値とを加算した、第1の切り替え画素数145が設定されている。ホームポジション信号142を発信した後、第1の同期カウンタは、切り替え画素数145に基づいたタイミングで、第1マスク同期信号144を発信する。これにより、制御部102は、マスクRAM211に格納された第1のマスクパターンをその先頭アドレス(0XA00000)から順番に読み出す構成になっている。その結果、記録中の記録ヘッド103が使用するマスクパターンが、第1のマスクパターンに設定され、第1の画像のラスタデータと、第1のマスクパターンとの間で論理積演算が行われ、走査中の記録ヘッドが実際に吐出を行うための2値データが生成される。なお、本実施形態において、ホームポジションから記録媒体の端部までの距離は、記録媒体が給紙されたタイミングにおいて不図示の検出手段によって検出される仕組みになっている。
【0045】
一方、タイミングチャートBは、第2の同期カウンタのタイミングチャートである。第2の同期カウンタには、ホームポジションから記録媒体端部までの画素数と、第1の画像の画像開始位置902と、第1の画像の主走査方向の画素数と、第2の画像の画像開始位置904の値と、を加算した第2の切り替え画素数148が設定されている。ホームポジション信号142を発信した後、第2の同期カウンタは、切り替え画素数148に基づいたタイミングで、第1マスク同期信号147を発信する。これにより、制御部102は、マスクRAM2011に格納された第2のマスクパターンをその先頭アドレス(0XA10000)から順番に読みに出す構成になっている。その結果、記録中の記録ヘッド103が使用するマスクパターンが、第2のマスクパターンに設定され、第2の画像のラスタデータと、第2のマスクパターンとの間で論理積演算が行われ、走査中の記録ヘッドが実際に吐出を行うための2値データが生成される。
【0046】
第3以降の印刷ジョブデータが存在する場合も、同様の処理が行われる。すなわちN番目の画像データに対しては、ホームポジションから記録媒体端部までの距離と、第1〜Nの画像の画像開始位置の値と、第1〜N−1の画像の主走査方向の画素数と、を加算した第Nの切り替え画素数が、第Nの同期カウンタに設定されれば良い。このようにすれば、記録ヘッド103が一走査中に使用するマスクパターンを適切なタイミングで切り替えることが出来るので、第Nの画像のラスタデータと第Nのマスクパターンとの間でズレのない論理積演算が行われ、記録モードに従った画像出力が可能となる。
【0047】
図11は、本実施形態のネスティングに関する画像形成装置101の状態遷移を説明するための模式図である。画像形成装置101は、各タイミングで発信されるイベントに伴って、その状態を遷移する。以下、順を追って各状態を説明する。
【0048】
初期状態S151にある画像形成装置は、例えば操作部106から入力されるユーザからのネスティング設定コマンド(E155)によって、第1の印刷ジョブデータの待機状態(S152)に遷移する。第1の印刷ジョブデータが受信されると(E157)、ネスティングタイマをスタートし、ネスティングタイマのフルカウントまで第2以降の印刷ジョブデータを待機する(S153)。ネスティングタイマとは、ネスティング処理する印刷ジョブデータを受信する期限を定めるためのタイマであり、当該タイマがフルカウントに達する以前に受信された印刷ジョブデータに限って、第1の印刷ジョブデータとのネスティング処理が行われる。ネスティングタイマのフルカウント値は、ユーザにが設定することが出来る。
【0049】
ネスティングタイマがフルカウントに達する(E159)、あるいはネスティングがユーザによって解除される(E160)と、画像形成装置は印刷状態(S154)へ遷移する。そして、待機状態S152およびS153で受信した印刷ジョブデータについて、記録動作を行う。すなわち、これら複数の印刷ジョブデータが有する画像データを、記録媒体幅の許す限り主走査方向に並列して記録する。このような記録動作が終了すると(E162)、印刷状態は解除され再び次のネスティングのための第1の印刷ジョブデータの待機状態(S152)に移行する。もし、この待機状態においてネスティング解除のコマンドが受信されれば(E156)、画像形成装置は再び初期状態S151に戻る。
【0050】
図12は、画像形成装置101が第1の印刷ジョブデータの待機状態(S152)に遷移する際に、制御部102が実行する処理の工程を説明するためのフローチャートである。ユーザが操作部106を介してネスティング設定コマンドを入力すると、制御部102は初期状態にある画像形成装置101を第1の印刷ジョブデータの待機状態に移行する(ステップS161)。続いて、制御部102は、マスク同期部212の各同期カウンタをリセットする(ステップS162)。
【0051】
図13は、印刷ジョブデータの待機状態(S152あるいはS153)において、印刷ジョブを受信した際に、制御部102が実行する処理の工程を説明するためのフローチャートである。まず、ステップS1701において、制御部102は、受信された印刷ジョブデータのヘッダ部を解読することにより、当該印刷ジョブデータがネスティングの対象であるか否かを判断する。印刷ジョブデータが指定する記録媒体が現在給紙中の記録媒体と異なる場合や、画像を縦方向に並べるバナー印刷を指定するような印刷ジョブの場合は、ネスティングの対象とはならないジョブと判断し、ステップS1710へ進む。一方、受信した印刷ジョブデータがネスティングの対象であると判断した場合はステップS1702へ進む。
【0052】
ステップS1702では、受信した印刷ジョブが最初の印刷ジョブデータであるか否かを判断する。最初の印刷ジョブデータではないと判断した場合は、そのままステップS1704へ進む。最初の印刷ジョブデータであると判断した場合は、ステップS1703において、第1の印刷ジョブデータの待機状態(S152)から第2以降の印刷ジョブデータの待機状態(S153)へ遷移してから、ステップS1704へ進む。
【0053】
ステップS1704では、現在取得している印刷ジョブデータを主走査方向に並列してもなお、記録媒体に次の画像データを並列するだけの領域があるか否かを判断する。記録媒体にまだ領域があると判断した場合はステップS1705に進む。既に領域に余裕がないと判断した場合はステップS1711へ進む。
【0054】
ステップS1705ではネスティングタイマをリセットし、ステップS1706ではネスティングタイマのカウントをスタートさせる。
【0055】
ステップS1707において、制御部102は、受信した印刷ジョブのヘッダに従って指定されたマスクデータをROM203から読み出し、図9で説明した構成に従ってマスクRAM211に展開する。更に、ステップS1708において、図10を用いて説明した構成に従って、マスク同期部212の同期カウンタの設定を行う。
【0056】
続くステップS1709では、実際にインクの吐出を行うための記録データの生成指示を出す。このような記録データの生成は、既に説明したように印刷ジョブデータに格納されている2値データと、指定されたマスクパターンとの論理積演算等の処理が必要とされるため、処理の負荷が大きい。よって、本実施形態の画像形成装置では、このような処理は別タスクに移行され、複数の印刷ジョブのための処理が並列に行われるようになっている。以上の処理が終了すると本処理は終了し、制御部は次のジョブデータの待機状態に戻る。
【0057】
一方、ステップS1701において、受信した印刷ジョブがネスティングの対象ではないと判断された場合は、ステップS1710へ進み、既に現在ネスティング中の印刷ジョブデータが存在するか否かを判断する。ネスティング中の印刷ジョブデータが存在しないと判断した場合はステップS1714へ進み、ネスティング処理を行うことなしに受信した印刷ジョブデータに対する通常処理を行う。この場合の通常処理とは、特殊印刷の実行か、記録媒体の交換要求の表示となる。
【0058】
ステップS1710にて、ネスティング中の印刷ジョブデータが存在すると判断した場合は、ステップS1711へ進む。
【0059】
ステップS1711では新たに受信した印刷ジョブデータを待機させ、ステップS1712ではネスティングタイマをリセットし、ステップS1713にてネスティングタイマのイベント(E159)を発行する。ネスティングタイマのイベント発行に伴い、画像形成装置は印刷ジョブデータの待機状態(S153)から印刷状態154へ遷移し、これまでの印刷ジョブデータの記録動作を実行する。
【0060】
図14は、印刷状態(S154)に遷移する際に、制御部102が実行する処理の工程を説明するためのフローチャートである。待機状態にある画像形成装置101に対し、ネスティングタイマイベントが発行(E159)されたり、ネスティング解除コマンドが入力(E160)されたりすると、制御部102は印刷状態に遷移する(ステップS181)。続いて、制御部102は、これまで受信され、ネスティングされた画像データの記録動作を実行する(ステップS182)。このとき、図13で説明したステップS1708によって、マスク同期部212の各カウンタは適切な値に設定されている。よって、この段階で記録される画像は、指定されたインデックスパターンとマスクパターンが同期して生成されたネスティング画像となる。
【0061】
図15は、印刷状態(S154)において印刷が終了したタイミングで、制御部1002が実行する処理の工程を説明するためのフローチャートである。
【0062】
ステップS191において、制御部102は、ネスティング解除イベント(E161)が発行されているか否かを判断する。ネスティング解除イベント(E161)が発行されている場合、ステップS194へ進み、ネスティングを終了しネスティング状態外へ遷移する。一方、ネスティング解除イベント(E161)が発行されていない場合、ステップS192へ進み、次のネスティングのために、最初の印刷ジョブデータの待機状態(S152)へ遷移し、マスク同期部212のカウンタを初期化する(ステップS193)。以上で本処理が終了する。
【0063】
図16は、制御部102が実行するネスティング解除制御の工程を説明するためのフローチャートである。本処理が開始されると、制御部102は、ステップS201において、ネスティング解除コマンドがどの状態で受信されたのか判断する。最初の印刷ジョブデータの待機状態(S152)で受信された場合はステップS206へ進み、ネスティング状態外へ遷移し、画像形成装置を初期状態S151へ戻す。
【0064】
ステップS201において、ネスティング解除コマンドがネスティングタイマカウント中(S153)で受信されたと判断した場合は、ステップS202へ進み、画像形成装置の状態を、待機状態(S153)から印刷状態(S154)移す。そして、ステップS203において、これまで受信およびネスティング処理された印刷ジョブデータの印刷実行を指示する。更にステップS204にて、ネスティングタイマをリセットし、ステップS205へ進む。
【0065】
一方、ステップS201において、ネスティング解除コマンドが印刷状態(S154)で受信されたと判断した場合は、そのままステップS205へ進む。
【0066】
ステップS205では、ネスティング解除の予約を行う。ネスティング解除の予約とは、実行中もしくは、次に実行する印刷の終了後にネスティング状態外への状態遷移を予約することである。この解除予約によって、印刷終了後にネスティングを解除することが可能となる。
【0067】
なお、以上説明した図12〜図16のフローチャートは、制御部102がROM203に格納されているプログラムに従って実行するものである。
【0068】
図17は、本実施形態のネスティング処理の結果、第1の画像データと第2の画像データの配列の様子を示す図である。第1の画像データ901は、図7(b)で説明した画像開始位置902と同じ位置を起点として配置されている。一方、第2の画像データ903は、第1の画像データの画像開始位置902に、第1の画像データの主走査方向の画素数と、図8(b)で説明した第2の画像データの画像開始位置904を加算した位置905を起点として配置されている。このように配置された画像データを記録ヘッド103は、X方向に移動しながら実際の記録を行っていく。
【0069】
図18は、本実施形態のネスティング処理の結果、図17で示した画像データを記録する際に使用されるマスクパターンの配置状態を示す図である。第1のマスクパターン211は、図7(b)で説明した画像開始位置902と同じ位置となる第1のマスクパターン開始位置212を起点として配置されている。一方、第2のマスクパターン213は、第1のマスクパターンの開始位置212に、第1の画像データの主走査方向の画素数と、第2の画像データの画像開始位置904を加算した位置と同じ第2のマスクパターン開始位置214を起点として配置されている。このように、本実施形態では、マスクRAM211およびマスク同期部212を利用することにより、インデックスパターンの起点に合わせてマスクパターンの起点を配置することが可能となる。すなわち、第1の画像については、主に後半の記録走査でインクが付与されるように制御しながら、第2の画像については、全ての記録走査で均等にインクが付与されるように制御することが出来る。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、異なる記録モードが設定された複数の画像でネスティングする場合であっても、個々の画像について、インデックスパターンとマスクパターンの記録媒体上での開始位置を一致させることが出来る。その結果、インデックスパターンとマスクパターンの組み合わせ及び相対位置関係を崩すことなく、記録モードの設定どおりに画像を出力することが可能となる。
【0071】
なお、以上説明した画像形成装置では、インクジェット方式の大判プリンタを例示しているが、本発明はこのような画像形成装置に限定されるものではない。画像形成装置自体は、シリアル型の記録装置であれば、その記録方式が電子写真方式でも、サーマルヘッド方式でも、昇華型でも、適用することは出来る。無論、大判プリンタではなく、デスクトップ型のカセット給紙や手差し給紙のプリンタや、複数の給紙段を有するプリンタや、スキャナやFAXと組み合わされた多機能型の複合機であっても、本発明は応用可能である。
【0072】
更に、図1では、LANケーブルを介してネットワーク接続を行っているが、USBやIEEE1394、あるいはeS−ATA等で接続される構成としても、本発明は無論有効である。
【0073】
更にまた、上記実施形態では4×4のインデックスパターンを用いて300dpiの多値データを1200dpiの2値データに変換する場合を例に説明したが、無論このような形態も本発明を限定するものではない。画像処理の解像度や画像形成装置の記録解像度は、いかなる値であってもよく、両者の解像度を適切に変換可能なn×mのインデックスパターンが用意されれば、本発明は有効に機能する。
【0074】
また、以上では、ドットの記録(1)/非記録(0)が定められた2値データに従って記録を行う画像形成装置を例に説明して来たが、本発明はこのような2値プリンタに限定されるものでもない。例えば1つのノズルが大ドットと小ドットのような複数段階のドットを記録可能な多値プリンタの場合にも本発明を応用することは出来る。
【0075】
更に、以上の実施形態では、第1の印刷ジョブデータと第2の印刷ジョブデータを異なるホスト装置から出力する形態で説明してきたが、無論1つのホスト装置から異なる記録モードが指定された複数の画像データを記録する場合にも、本発明は有効に機能する。
【符号の説明】
【0076】
101 画像形成装置
102 制御部
103 記録ヘッド
108 第1のホスト装置
109 第2のホスト装置
144 同期信号
147 同期信号
202 CPU
211 マスクRAM
212 マスク同期部
902 第1の画像の画像開始位置
905 第2の画像の画像開始位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多値の画像データを、該多値の画像データよりも高い解像度の2値の画像データに変換し、該2値の画像データに基づいて印刷ジョブデータを生成する少なくとも1つのホスト装置と、
前記少なくとも1つのホスト装置より出力された複数の印刷ジョブデータを受信して、該複数の印刷ジョブデータに対応する複数の画像を、記録ヘッドの走査方向に並列した状態で、マルチパス記録によって記録媒体に記録する画像形成装置と
を備えた画像形成システムであって、
前記少なくとも1つのホスト装置の夫々は、
n×mの記録画素の夫々についてドットの記録あるいは非記録を定めたインデックスパターンを参照することによって、前記多値の画像データを前記2値の画像データに変換する手段と、
前記2値の画像データを圧縮してラスタデータを生成し、該ラスタデータに前記2値の画像データの開始位置および記録モードを指定する情報を付加して、前記印刷ジョブデータを生成する手段を備え、
前記画像形成装置は、
前記マルチパス記録の各記録走査においてドットの記録を許容する画素とドットの記録を許容しない画素を定めたマスクパターンの複数を記憶する手段と、
前記複数の印刷ジョブデータのそれぞれについて、前記記録モードに応じて前記複数のマスクパターンの中から1つを選択する手段と、
前記複数の印刷ジョブデータのそれぞれについて、前記複数の画像を前記記録ヘッドの走査方向に並列した状態における前記選択されたマスクパターンの記録媒体上での開始位置を、前記画像データの開始位置に基づいて、前記画像データの記録媒体上での開始位置と一致するように設定する設定手段と、
前記記録ヘッドによる記録走査中に使用するマスクパターンを、前記複数の印刷ジョブデータの夫々に対応する前記マスクパターンの開始位置に基づいて切り替えながら、マルチパス記録を実行する手段と
を備える
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記画像形成装置は、一定時間内に受信した前記複数の印刷ジョブデータについて、前記複数の画像を前記記録ヘッドの走査方向に受信した順に並列した状態で記録することを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記画像形成装置は、前記複数の印刷ジョブデータのうち、前記記録媒体における前記走査方向に並列することが可能な数の印刷ジョブデータについて、前記複数の画像を前記走査方向に受信した順に並列して記録することを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記設定手段は、前記複数の印刷ジョブデータのそれぞれについて、前記複数の画像を前記記録ヘッドの走査方向に並列した状態における前記選択されたマスクパターンの前記記録媒体上での開始位置を、前記画像データの開始位置の前記記録ヘッドの走査方向における基準位置からの画素数に基づいて、設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記画像形成装置は、前記複数の印刷ジョブデータの前記記録モードを解析することにより、前記複数の印刷ジョブデータに対応する前記複数の画像を、記録媒体に並列して記録可能か否かを判断する手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成システムに使用可能な画像形成装置。
【請求項7】
多値の画像データを、該多値の画像データよりも高い解像度の2値の画像データに変換し、該2値の画像データに基づいて印刷ジョブデータを生成する少なくとも1つのホスト装置と、
前記少なくとも1つのホスト装置より出力された複数の印刷ジョブデータを受信して、該複数の印刷ジョブデータに対応する複数の画像を、記録ヘッドの走査方向に並列した状態で、マルチパス記録によって記録媒体に記録する画像形成装置と
を備えた画像形成システムの画像形成方法であって、
前記少なくとも1つのホスト装置の夫々において、
n×mの記録画素の夫々についてドットの記録あるいは非記録を定めたインデックスパターンを参照することによって、前記多値の画像データを前記2値の画像データに変換する工程と、
前記2値の画像データを圧縮してラスタデータを生成し、該ラスタデータに前記2値の画像データの開始位置および記録モードを指定する情報を付加して、前記印刷ジョブデータを生成する工程と、
前記画像形成装置において、
前記マルチパス記録の各記録走査においてドットの記録を許容する画素とドットの記録を許容しない画素を定めたマスクパターンの複数を記憶する工程と、
前記複数の印刷ジョブデータのそれぞれについて、前記記録モードに応じて前記複数のマスクパターンの中から1つを選択する工程と、
前記複数の印刷ジョブデータのそれぞれについて、前記複数の画像を前記記録ヘッドの走査方向に並列した状態における前記選択されたマスクパターンの記録媒体上での開始位置を、前記画像データの開始位置に基づいて、前記画像データの記録媒体上での開始位置と一致するように設定する設定工程と、
前記記録ヘッドによる記録走査中に使用するマスクパターンを、前記複数の印刷ジョブデータの夫々に対応する前記マスクパターンの開始位置に基づいて切り替えながら、マルチパス記録を実行する工程と
を有する
ことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−38714(P2013−38714A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175242(P2011−175242)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】