説明

画像形成ユニット及び画像形成装置

【課題】画像形成ユニットを長時間放置すると帯電ローラと感光ドラムとの当接面で圧接痕が発生し、帯電不良が発生することがあるという課題があった。
【解決手段】回転可能な感光ドラム13と、感光ドラム13に当接し、感光ドラム13の表面を帯電する帯電ローラ20と、感光ドラム13にトナー12を供給して画像を得る現像部とを有する画像形成ユニット10であって、帯電ローラ20は、シャフト21と、シャフト21の周りに設けられた導電性基層22と、導電性基層22の外周面に設けられた表面層23とを有し、表面層23は、5μm〜20μmの平均粒径を有する粒子を分散含有し、表面層単位面積当たりの表面積の値は、1.5〜3.0、となるように構成した画像形成ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成ユニット及びこれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式のプリンタや複写装置等の画像形成装置における画像形成ユニットにおいて、感光ドラムの表面に安定した帯電を行うために、帯電ローラの外周面を電気的絶縁物である粒径15μm〜50μmの酸化マグネシウムの粒を含む半導電性樹脂コート層で覆い、酸化マグネシウムの粒により帯電ローラの外周面を凹凸形状として帯電ローラの表面と感光ドラムの表面との間に微小空隙を形成する技術がある。
【0003】
このような技術は下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−75701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の画像形成ユニットでは、これを長時間放置すると、帯電ローラと感光ドラムとの当接面で圧接痕が発生し、帯電不良が発生するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成ユニットは、回転可能な静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体に当接し、前記静電潜像担持体の表面を帯電する帯電部材と、前記静電潜像担持体に現像剤を供給して画像を得る現像部とを有しており、帯電部材は、軸体と、軸体の周りに設けられた導電性基層と、導電性基層の外周面に設けられた表面層とを有し、表面層は、5μm〜20μmの平均粒径を有する粒子を分散含有し、表面層単位面積当たりの表面積の値は、1.5〜3.0、となるように構成されている。
【0007】
本発明の他の画像形成ユニットは、回転可能な静電潜像担持体と、静電潜像担持体に当接するゴムローラとを有する画像形成ユニットであって、ゴムローラは、シャフトと、シャフトの周りに設けられた導電性基層と、導電性基層の外周面に設けられた表面層とを有し、表面層は、5μm〜20μmの平均粒径を有する粒子を分散含有し、表面層単位面積当たりの表面積の値は、1.5〜3.0、となるように構成されている。
【0008】
本発明の画像形成装置は、前記画像形成ユニット又は前記他の画像形成ユニットを有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像形成ユニット及び画像形成装置によれば、帯電部材の表面層に平均粒径5μm〜20μmの粒子を分散含有し、表面積/面積の値が1.5〜3.0とすることにより、帯電部材には、放置圧接痕が発生せず、更に外添剤の付着による帯電不良も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の実施例1における画像形成装置を示す構成図である。
【図2】図2は図1の画像形成装置における回路構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は図1中の帯電ローラの概略を示す構成図である。
【図4】図4は図2帯電ローラの変形例を示す構成図である。
【図5】図5は図1中の帯電ローラにおける表面層の状態を示す説明図である。
【図6】図6は図1中の帯電ローラにおける圧接痕の発生状況を示す説明図である。
【図7】図7は図1中の帯電ローラへの外添剤の堆積の状況を示す説明図である。
【図8】図8は図3中の微粒子径及び単位面積当たりの表面積と図1中の画像形成ユニットの印刷品質の関係を示す説明図である。
【図9】図9は図8の実例を示す説明図である。
【図10】図10は本発明の実施例2における局所的な電位差を抑制することのできる帯電ローラの表面特性の領域を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0012】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1における画像形成装置を示す構成図である。
【0013】
画像形成装置は、例えば、プリンタであり、画像形成ユニット10を有している。画像形成ユニット10は、その内部にトナーカートリッジ11から補給された現像剤(例えば、トナー)12が収容されており、静電潜像担持体(例えば、感光ドラム)13と、感光ドラム13に対向して配置される回転可能な現像剤担持体(例えば、現像ローラ)14と、現像ローラ14にトナー12を供給する現像剤供給部材(例えば、供給ローラ)15とを有している。この現像ローラ14及び供給ローラ15は、現像部を構成している。感光ドラム13が、矢印方向に回転させられるとともに現像ローラ14と、供給ローラ15とがそれぞれ矢印方向に回転させられる。
【0014】
更に、画像形成ユニット10は、感光ドラム13を帯電させる帯電部材(例えば、帯電ローラ)20と、現像ローラ14上に供給されたトナー12を薄層形成するトナー層厚規制ブレード(例えば、現像ブレード)16と、感光ドラム13上のかぶりトナー12及び転写残トナー12を回収するためのクリーニングブレード17と、感光ドラム13上の残留電位を除去するための除電装置18と、クリーニングブレード17により掻き落とされたトナー(廃トナー)12を回収容器に搬送するための部材(スクリュー等)が収められるトナー受部19を有している。感光ドラム13、現像ローラ14、供給ローラ15、及び帯電ローラ20は、それぞれ図示する矢印方向に回転する。
【0015】
なお、帯電ローラ20は、ゴムローラにより構成できるが、このゴムローラは、帯電ローラ20にみでなく、例えば、現像ローラ14や図示しないクリーニングローラにも適用可能である。
【0016】
画像形成ユニット10の周辺部には、発光ダイオード(以下「LED」という。)光やレーザ光等により複数ドットの発光を行い感光体ドラム13に静電潜像を形成する印刷ヘッド31と、感光体ドラム13上のトナー12を、印加された電圧によって発生した電界により用紙P上に転写させる転写ローラ32と、用紙P上のトナー現像を熱により定着する定着器34とが配置されている。画像形成ユニット10の下方には、図示しない用紙カセットが設けられ、用紙カセットには、記録媒体である用紙Pが格納されている。用紙Pは、用紙搬送ローラ33aによって1枚ずつ繰り出されFa方向に進行するようになっている。用紙搬送ローラ33bは、用紙Pを画像形成ユニット10へ引き込むためのローラで、用紙搬送ローラ33cは、印刷済みの用紙Pを画像形成装置の外部に排出するためのローラである。これらの搬送ローラ33a、33b、33cの動作により、用紙Pは、矢印Fa,Fb,Fc,Fdの方向に搬送される。
【0017】
図2は、図1の画像形成装置における回路構成を示す機能ブロック図である。
画像形成装置は、装置全体を制御する制御部40を有している。制御部40は、図示しないが、マイクロプロセッサ、リードオンリメモリ(以下「ROM」という。)、ランダムアクセスメモリ(以下、「RAM」という。)、入出力ポート及びタイマ等によって構成されている。制御部40は、ROMに格納されているプログラムの制御により、図示しない上位装置から、インタフェース制御部(以下「I/F制御部」という。)51を介して、印刷データ及び制御コマンドを受信して画像形成装置の全体のシーケンスを制御し、印刷動作を行う機能を有している。制御部40は、感光ドラム13の回転数をカウントするドラムカウン夕41と、印刷ドットをカウントするドットカウンタ42とを有している。
【0018】
受信メモリ52は、RAM上に設けられ、上位装置からI/F制御部51を介して入力された印刷データを、一時的に記録する機能を有している。画像データ編集メモリ53は、受信メモリ52に記録された印刷データを受け取り、制御部40によって、イメージデータに編集処理された画像データを記録する記憶部である。
【0019】
操作部54は、画像形成装置の状態を表示するためのLED及び画像形成装置に操作者から指示を与えるためのスイッチや表示部を備えている。センサ群55は、画像形成装置の動作状態を監視するための各種のセンサ、例えば用紙位置検出センサ、温湿度センサ、濃度センサ等から構成されている。
【0020】
帯電ローラ用電源56は、制御部40の指示によって帯電ローラ20に電圧を印加し、感光ドラム13の表面を帯電させる。現像ローラ用電源57は、感光ドラム13の静電潜像にトナー12を付着させるために現像ローラ14に所定の電圧を印加する。供給ローラ用電源58は、現像ローラ14にトナー12を供給するために供給ローラ15に所定の電圧を印加する。転写ローラ用電源59は、感光ドラム13に形成されたトナー像を用紙Pに転写するために転写ローラ32に所定の電圧を印加する。なお、帯電ローラ用電源56、現像ローラ用電源57及び供給ローラ用電源58は、制御部40の指示によって電圧を変更することができるようになっている。
【0021】
新旧判別ヒューズ66は、画像形成ユニット10が未使用品か否かを判別する判別ヒューズであり、ヒューズ用電源60は、新旧判別ヒューズ66に電流を流すヒューズ用電源である。ヘッド駆動制御部61は、画像データ編集メモリ53に記録されたイメージデータを印刷ヘッド31(例えば、LEDヘッド)に送り、その印刷ヘッド31を駆動するヘッド駆動制御部である。定着制御部62は、用紙Pに転写されたトナー像を定着するために、定着手段としての定着器34に電圧を印加する定着制御部である。前記定着器34は、用紙P上のトナー像を構成するトナー12を溶融させるための図示されないヒータ、及び温度を検出する図示されない温度センサ等を備えている。前記定着制御部62は、前記温度センサのセンサ出力を読み込み、センサ出力に基づいてヒータを通電させて定着器34が一定の温度になるように制御を行うものである。
【0022】
搬送モータ制御部63は、用紙Pを搬送するための用紙搬送モータ67の制御を行う搬送モータ制御部であり、この搬送モータ制御部63は、制御部40の指示によって所定のタイミングで用紙Pを搬送したり停止させたりする。光源制御部65は、除電装置18の発光制御を行い、感光ドラム13表面へ除電光を照射する。駆動制御部64は、感光ドラム13を動作させるための駆動モータ68を駆動する駆動制御部であり、この駆動制御部64によって駆動モータ68が駆動される。ドラムカウンタ41は、感光ドラム13の回転数をカウントするものである。更に、ドットカウンタ42は、印刷ドットをカウントする機能を有している。
【0023】
図3(a)、(b)は、図1中の帯電ローラの概略を示す構成図であり、図4は、図2の帯電ローラの変形例を示す構成図である。
【0024】
図3(a)は、帯電ローラ20の正面断面図であり、図3(b)はA1−A2断面図である。帯電ローラ20は、軸体(例えば、シャフト)21と、その周囲に導電性基層22を備えており、最外面に耐久性や耐汚染性付与のために表面層23が設けられている。導電性基層22と表面層23との間には、図4に示すように軟化剤移行防止層25や抵抗調整層26を設けてもよい。表面層23は、粒子(例えば、微粒子)24を分散含有しており、表面層23の外周面に微小な凹凸を形成している。
【0025】
シャフト21は、所定の剛性を有すると共に十分な導電性を有する金属であればよく、例えば鉄、銅、真録、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が用いられる。又、金属以外の材料でも導電性と適度な剛性を有する材料であれば用いることができ、例えば、導電性粒子等を分散した樹脂成型品や、セラミックス等を用いることもできる。さらに、ロール形状のほか、空中のパイプ形状とすることも可能である。
【0026】
導電性基層22は、画像印字領域を満足する長さを有しているものであり、体積固有抵抗が10Ω・cm以下となる抵抗層が好ましく、JIS−A硬度10〜40度の、変形し易く、変形回復性に優れた材質が用いられる。例えば、エチレンプロピレンゴム、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルビドリンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム等の公知のゴム材料の何れか一種を選択して、あるいは三種以上が組み合わされて用いられる。或いは、これらの材料を発泡させた発泡材が用いられる。
【0027】
そして、そのような弾性体材料に、導電性粒子あるいは半導電性粒子としてカーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZNO−AL、SNO−SB、In−SnO、ZnO−TiO、MgO−Al、FeO−TiO、TiO2、SnO2、Sb、In、ZnO、MgO等の金属酸化物や、第4級アンモニウム塩等のイオン性化合物等を用いることができ、これらの材料を単独或いは2種以上、混合して用いても良い。更に必要に応じてタルク、アルミナ、シリカ等の無機充填材、フッ素樹脂やシリコーンゴムの微粉等、有機充填材の1種又は2種以上を混合しでも良い。
【0028】
表面層23の材質としては、バインダー樹脂に微粒子24を分散したもので、体積抵抗率が低すぎるとリークし、大き過ぎると感光ドラム13を安定帯電できないため、10〜101O Ω・cmが好ましい。又、平均膜厚は薄すぎるとブリードやブルーミング等の汚染を保護する役割に乏しく、厚過ぎると表面層23の硬度が固くなりロールとしての弾性が薄れるため、表面層23の膜圧としては0.01〜1000μmが好ましい。バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP、PET等のポリオレフイン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂等が用いられる。
【0029】
表面層23に分散されている微粒子24は、導電性基層22と同様のカーボンブラック、金属、金属酸化物や、イオン導電性を発現する第4級アンモニウム塩等のイオン性化合物等の1種又は2種以上が混合される。又、必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン、タルク、シリカ、アルミナ等の無機充填剤や、フッ素樹脂やシリコーン樹脂の微粉等の有機充填材や、シリコーンオイル等の潤滑剤などの、1種又は2種以上を添加することができる。更に、界面活性剤や帯電制御剤等が必要に応じて添加される。
【0030】
表面層23を形成する手段としてはブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ピードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等を用いることができる。
【0031】
(実施例1の画像形成装置全体の動作)
図1及び図2より、画像形成装置及び画像形成ユニット10の全体動作を説明する。
【0032】
制御部40は、I/F制御部51を介して、上位装置から印刷データを受信メモリ52に受信し、画像形成装置全体のシーケンスを制御して印刷動作を行う。制御部40は、受信した印刷データをイメージデータに変換して画像データ編集メモリ53に格納する。その後、搬送モータ制御部63から信号を受信した用紙搬送モータ67は、所定のタイミングで用紙Pを搬送する。用紙搬送ローラ33aによりロールアップされた用紙Pは、矢印Faの方向へ搬送され、用紙搬送ローラ33bを通過する。用紙搬送ローラ33bを通過した用紙Pは、画像形成ユニット10の下を矢印Fb方向に搬送される。感光ドラム13と転写ローラ32との圧接部で、物理的圧力と電気的静電力とで用紙Pへトナー12が転写される。
【0033】
トナー12の転写までの画像形成ユニット10のプロセスは、制御部40から駆動制御部64へ制御データが送信され、駆動モータ68により感光ドラム13が回転することから始まる。回転された感光ドラム13の表面上に、帯電ローラ20が連れ回りしている。制御部40から印刷データを受信した帯電ローラ用電源56は、帯電ローラ20へ負電圧を印加することにより、感光ドラム13は負帯電される。帯電された感光ドラム13は、ヘッド駆動制御部61より制御された印刷ヘッド31により露光され、露光された感光ドラム13の表面に、静電潜像を形成する。その後、現像ローラ14からトナー12が与えられ現像される。
【0034】
現像ローラ14は、供給ローラ15からトナー12を供給される。そのときの現像ローラ14バイアスと、供給ローラ15バイアスは、制御部40から指示された電圧を、現像ローラ用電源57及び供給ローラ用電源58により印加されている。現像ローラ14上に供給されたトナー12は、現像ブレード16を通過することにより、薄層形成される。又、画像形成ユニット10内のトナー12は、トナーカートリッジ11により供給されている。感光ドラム13から用紙Pにトナー12を転写後、感光ドラム13に残留したトナー12は、クリーニングブレード17により除去され、トナー受部19中のスパイラルにより図示されない廃トナーボックスへ廃棄される。トナー像が転写された用紙Pは、定着制御部62により制御された定着器34を通過することにより、トナー像は用紙Pに定着する。定着後、用紙Pは、Fc矢印方向へ搬送され、搬送ローラ33cを通過することにより、画像形成装置外Fd矢印方向へ搬送される。
【0035】
(実施例1の帯電ローラの動作)
本実施例1の帯電ローラ20の動作を、図3に示す例で説明する。
【0036】
本実施例1の帯電ローラ20は、導電性基層22及び表面層23の二層構造である。シャフト21には、SUM23Lを用い、導電性基層22にエピクロルヒドリンゴム、表面層23にナイロン樹脂、微粒子24には、ポリメチルメタクリレートを用いた。帯電ローラ20においては、微粒子24により表面層23に凸部が形成される。その結果、表面層23は、凸部が形成されている箇所と形成されていない箇所で高低差が発生し、この高さの差により感光ドラム13の表面との間に微小空隙を形成する。この微小空隙において放電が発生し、帯電ローラ20から感光ドラム13へ電荷の注入が行われる。
【0037】
このとき、従来の画像形成ユニット10では、画像形成ユニット10を長時間放置すると感光ドラム13と帯電ローラ20との当接面で圧接痕が発生し、帯電不良が発生するという課題があった。そこで、本実施例1では、微粒子24の粒径及び表面層23の単位面積当たりの表面積と画像形成ユニット10の印刷品質の関係を実験により明らかにした。
【0038】
図5(a)、(b)、(c)は、図1中の帯電ローラにおける表面層の状態を示す説明図である。
【0039】
図5(a)は、顕微鏡により観察した表面層23の拡大図である。図5(b)、(c)は、B1−B2断面図である。図5中“Z”は、鉛直方向を表し、“X”、“Y”は、水平方向を表す。
【0040】
光学倍率1000倍測定で表面層23を観察し、そのとき観察した面積がSaとなる。観察した表面層23にて三次元解析を行うことにより、面積SaでのZ軸方向凹凸を含んだ表面積Ssを求める。面密度を表すSは面積Saと表面積Ssより以下の式にて求まる。
S=Ss/Sa
【0041】
粒径Dが小さい場合や、微粒子24の添加量が少ない場合は図4(b)に示すような状態であり、表面積Ssが狭いためSの値は小さくなる。逆に粒径Dが大きい場合や、微粒子24の添加量が多い場合は図4(c)に示すような状態であり、表面積Ssが広いため、Sの値は大きくなる。なお、表面積Ssを大きくするためには、例えば、次の(1)〜(4)等の方法がある。
(1) 粒径の大きい微粒子24を表面層23に添加する。
(2) 添加する微粒子24の部数を増やす。
(3) 表面層23のコーティングのスピードを遅くする。
(4) 表面層23のコーティング回数を増やす。
【0042】
図6(a)、(b)は、図1中の帯電ローラにおける圧接痕の発生状況を示す説明図であり、図7(a)、(b)は、図1中の帯電ローラへの外添剤の堆積の状況を示す説明図である。
【0043】
図6(a)は、微粒子24の粒径が小の場合の表面層23の断面図で、図6(b)は、微粒子24の粒径が大の場合の表面層23の断面図である。図7(a)は、微粒子24の粒径が大の場合の外添剤の堆積を示す表面層の断面図で、図7(b)は、微粒子24の粒径が小の場合の外添剤の堆積を示す表面層の断面図である。
【0044】
帯電ローラ20は、感光ドラム13に所定量のバネ圧で、圧接されているため、表面層23には、シャフト21方向に圧力が働いている。そのため、図6(b)に示す通り、粒径Dが大きい状態、或いは、微粒子24が堆積された状態では、庄力によって押される微粒子24の変動量が大きいため、圧力によって変形する導電性基層22の割合が多くなる。故に長期保存における永久歪量が大きく、歪面にて感光ドラム13を所定量帯電できなくなってしまう。その結果、印字上に帯電ローラ20の4周期の横黒筋が発生することになる。
【0045】
図7(b)に示すように、画像形成ユニット10に用いられるトナー12を形成する外添剤27は、印刷動作中の各種プロセス、及びストレスによりトナー12の母体から脱落する。脱落した外添剤27は、感光ドラム13を介して帯電ローラ20に到達し、帯電ローラ20の表面層23に堆積してゆく。堆積した外添剤27は、帯電ローラ20のクリーニング機構により除去する方法が知られているが、クリーニング機構がない画像形成ユニット10では感光ドラム13との圧接力により表面層23へ固着、拡大化し、感光ドラム13を安定帯電できず汚れや濃度低下、グレイニネス悪化等の印字不良を発生する。
【0046】
帯電ローラ20の表面に外添剤27が付着すると、帯電ローラ20が絶縁体となり、感光ドラム13を帯電しなくなる。その結果、ドラム電位が低くなり、トナー像が形成され、そのトナー12が用紙P上に転写され定着される。
【0047】
図7(b)に示すように、微粒子24が小さいと形成される凹凸も小さいため、山谷に関係なく表面層23全面に外添剤27が堆積、固着してしまう。又、表面層23に対する微粒子24の割合が少ない状態や、分散状態が悪い状態では、凹凸が形成されていない面が広く存在しており、その箇所に外添剤27が堆積・固着してゆく。なお、図7(a)に示すように微粒子24が大きい場合は、微粒子24が存在していない箇所で外添剤27が堆積・固着するが凸部は健在の為、感光ドラム13を安定帯電することが可能である。
【0048】
図8は、図3中の微粒子径及び単位面積当たりの表面積と図1の画像形成ユニットの印刷品質の関係を示す説明図である。更に、図9は、図8の実例を示す説明図である。
【0049】
図8に実施例1の評価結果を示す。図8は、微粒子24の粒径Dと表面層23の単位面積Sa当たりの表面積Ssの値Sのマトリックスで、印字品質を満足する領域を示している。微粒子24の粒径Dは3μm〜24μmまでを用いた。そのときの粒径Dは、超深度形状測定顕微鏡(株式会社キーエンス製VK−8500)を用いて測定した値であり、ランダムに抽出した32個の平均粒径となる。単位面積Sa当たりの表面積Ssの値Sは表面層23の面密度を表す指標である。
【0050】
ここで、超深度形状測定顕微鏡による超深度測定方法について説明する。
超深度測定及びその解析とは、各ピクセルでピントが合った際のカメラの情報である色、輝度を合成して、焦点深度の深い三次元カラー画像を表示し、得られた三次元画像をアナライザを用いて解析することである。以下、順番に(1)〜(6)に分けて説明する。
【0051】
(1) 電荷結合素子(CCD)画像調整を行う。
(a) 被測定対象物をステージに乗せる。
(b) 「VIEWMODE」で「カラー生画」を選択する。
(c) シャッタスピードを「オート」に設定する。
(d) フォーカシングハンドルを調整してピントを合わせる。
【0052】
(2) RUNMODEを選択する。
(e) 「RUNMODE」で「カラー超深度」を選択する。
【0053】
(3) 受光ゲインを調節する。
(f) 受光ゲインを「オート」に設定する。
(g) 「測定開始」ボタンをクリックする。
【0054】
(4) ディスタンス・ピッチ(DISTANCE・PITCH)の設定
(h) 「レンズ位置移動」ボタンをクリックして画像のピントが合わなくなる位置までレンズを上昇させる。
(i) 「H」ボタンをクリックする。
(j) 「レンズ位置移動」ボタンをクリックして画像のピントが合わなくなる位置までレンズを下降させる。
(k) 「L」ボタンをクリックする。
(l) 「PITCH」を入力する。
【0055】
(5) 測定を開始する。
測定条件は、次の通りである。
・対物レンズ倍率:20倍
・15型モニタ上での倍率:400倍
・PITCH:1〜5μm。ただし、被測定物の高さによる。
【0056】
(6) カラー深度測定で得られた三次元画像を、アナライザー(VK ANALYZER)を用いて解析を行う。
(m) 面積解析
・計測解析、二次元解析により全領域解析を行う。
(n) 表面積解析
・計測解析、三次元解析により全領域解析を行う。
(o) 数平均粒径
・全領域における粒子径の総和/全領域における粒子径を算出する。
【0057】
図8のマトリックスにおける「O」及び「×」は、印字を行った結果を示すもので、それぞれ以下の状態とする。
【0058】
○:印字品質を満足する。
×:帯電ローラ20への外添剤27の付着による印字不良、又は長期保存圧接痕による印字不良。
【0059】
評価結果は、初期状態から現像装置寿命である印字枚数2万枚まで連続印刷を行った結果、及び温度50度C、湿度55%環境に現像装置を1ヵ月放置した後の印字評価結果であり総合してプロットした。連続印刷の試験の条件は、次の通りである。
(1) 媒体;A4普通紙
(2) デューティ;5%Beta
(3) 枚数;1万2千枚(ドラムカウントで2万回相当)
(4) 環境;0〜4千枚(温度20度C、湿度15%)、4千枚〜8千枚(温度10C、湿度15%)、8千枚〜1万2千枚(温度28度C、湿度80%)
【0060】
なお、デューティとは、次のことをいう。即ち、用紙Pの印刷可能範囲に全面ベタ印字したときの面積率を100%とし、このときのデューティを100%という。前面ベタ印字したときの面積に対する印刷面積の割合がn%であればそのときのデューティはn%であるという。
【0061】
放置実験の条件は、次の通りである。
(1) 状態;ID実装トナー有り
(2) 環境;温度50度C、湿度55%
(3) 時間;720時間
【0062】
図8中「×」でプロットされた領域のうち、長期保存圧接痕による印字不良の領域は、粒径D=21μm以上であり、粒径D=5μm〜20μmであってもS=3.1以上で発生することを確認した。この領域は、粒径Dが大きいか、或いは図6(b)に示すように微粒子24が堆積された状態である。
【0063】
図8中「×」でプロットされた領域のうち、帯電ローラ20への外添剤27の付着による印字不良の領域は、粒径D=4μm以下であり、粒径5μm〜20μmであってもS=1.4以下で発生することを確認した。この領域は、表面層23の、微粒子24の粒径Dが小さい、又は表面層23に添加された微粒子24の割合が少ない、或いは微粒子24の分散状態が悪く図7(b)のように微粒子24が局在していない状態である。この状態では、外添剤27の脱落が発生すると図7(b)のように外添剤27が表面層23に堆積、固着してゆく。
【0064】
以上述べたように、印字不良が発生しない領域は「○」でプロットした範囲であり、下記の条件となる。
粒子径D; 5μm≦D≦20μm
且つ
表面積Ss/面積Sa=S; 1.5≦S≦3.0
【0065】
この条件を満足する帯電ローラ20を用いることにより、長期保存でも圧縮永久歪による印字不良が発生せず、寿命まで印刷を行っても感光ドラム13を安定帯電することが可能である。更に、帯電ローラ20のクリーニング機構が不要なためコスト削減効果も見込めるものである。
【0066】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、帯電ローラ20の最外層に平均粒径5μm〜20μmの粒子を分散含有し、表面積/面積の値が1.5〜3.0のとすることにより帯電ローラ20には、放置圧接痕が発生せず、外添剤27の付着による帯電不良も抑制することができる。更に、帯電ローラ20のクリーニング機構が不要なためコスト削減効果も見込めるものである。
【実施例2】
【0067】
(実施例2の構成)
本発明の実施例2における画像形成ユニット10、画像形成装置及び帯電ローラ20の構成は、実施例1を示す図1、図2及び図3の構成と同様である。
【0068】
(実施例2の動作)
画像形成装置及び画像形成ユニット10の動作は、実施例1とほぼ同様である。
【0069】
実施例2における帯電ローラ20Bは、実施例1の表面特性に更に、以下の表面特性を持ち合わせた帯電ローラ20Bとする。
十点平均粗さRz; D/2≦Rz≦D
且つ
最大高さRy; D≦Ry≦2D
【0070】
ここで、Rz及びRyの詳細な定義は、JISB0601−1994に記載されている。
【0071】
表面特性の測定は、JIS94に基づき接触式表面粗さ・輪郭形状測定器(株式会社小坂研究所製、SFE3500)を用いる。微粒子24の粒径Dは平均粒径である為、粒子の大きさには当然バラツキがある。又、表面層23上の粒子配列も規則性をもっているわけではなく、ある程度、均一に分散させた状態である。実施例1において感光ドラム13を安定帯電することはできるが、局所的な電位分布には微小な電位差が生じる。そこで、実施例2のRz及びRyの条件において、局所的な電位差も生じ難い帯電ローラ20を提案する。
【0072】
図10は本発明の実施例2における局所的な電位差を抑制することのできる帯電ローラの表面特性の領域を示す説明図である。
【0073】
実施例2の表面特性の測定では、粒径D=11〜15μm、表面積Ss/面積Sa=Sで、S=2.1〜2.5のサンプルを用いる。測定の結果は、図10中領域abcd囲まれた内部であれば局所的な電位差は、10V以下となる。
【0074】
RzがD/2より小さい領域は、微粒子24の分散が悪く、微粒子24による凹凸形成が少ないため、lOVより大きい電位差が生じることがある。RzがDより大きい領域では、微粒子24の分散が悪く微粒子24が凝集して凹凸を形成しているため、10Vより大きい電位差を生じることがある。RyがDより小さい領域では、微粒子24の粒径Dのバラツキが大きく、比較的小さな微粒子24が局在しているか、或いは、微粒子24が表層に埋もれている状態であり、電位として10Vより大きい差が生じることがある。Ryが2Dより大きい領域では、微粒子24の粒径Dのバラツキが大きく、比較的大きな微粒子24が局在しているか、或いは、微粒子24が堆積している状態であり、電位として10Vより大きい差が生じることがある。以上、上述した条件を満たすことにより帯電ローラ20の局所的な電位差を抑制することができる。
【0075】
なお、Rz及びRyを調整するには、次の方法がある。
(1) 微粒子24の粒径の変更
(2) 微粒子24の部数の変更
(3) 表面層23のコーティングスピードの変更
(4) 表面層23のコーティング回数の変更
(5) 表面層23の乾燥条件の変更
(6) 基層仕上げ粗さの変更
【0076】
(実施例2の効果)
本発明の実施例2によれば、実施例1の効果に加え、D/2≦Rz≦D、D≦Ry≦2Dの条件を満たすことにより、帯電ローラ20の局所的な電位差を抑制することができる。
【0077】
(変形例)
本発明は、上記実施例1,2に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(b)のようなものがある。
【0078】
(a) 本発明は、プリンタに限らず複合機(MFP)やファクシミリ装置、複写装置等、画像形成装置に一般に適用可能である。
【0079】
(b) 上記実施例1,2では、帯電ローラ20は、感光ドラム13に所定量のバネ圧で圧接されているため、表面層23には、シャフト21方向に圧力が働いていることで説明したが、帯電ローラ20と感光ドラム13との軸間を調整し、帯電ローラ20が感光ドラム13に押し込まれて圧接するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 画像形成ユニット
13 感光ドラム
14 現像ローラ
15 供給ローラ
20 帯電ローラ
21 シャフト
22 導電性基層
23 表面層
24 微粒子
27 外添剤
31 印刷ヘッド
32 転写ローラ
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体に当接し、前記静電潜像担持体の表面を帯電する帯電部材と、
前記静電潜像担持体に現像剤を供給して画像を得る現像部と、
を有する画像形成ユニットであって、
前記帯電部材は、軸体と、前記軸体の周りに設けられた導電性基層と、前記導電性基層の外周面に設けられた表面層とを有し、
前記表面層は、5μm〜20μmの平均粒径を有する粒子を分散含有し、
前記表面層単位面積当たりの表面積の値は、1.5〜3.0、
となることを特徴とする画像形成ユニット。
【請求項2】
回転可能な静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体に当接するゴムローラとを有する画像形成ユニットであって、
前記ゴムローラは、
シャフトと、
前記シャフトの周りに設けられた導電性基層と、
前記導電性基層の外周面に設けられた表面層とを有し、
前記表面層は、5μm〜20μmの平均粒径を有する粒子を分散含有し、
前記表面層単位面積当たりの表面積の値は、1.5〜3.0、
となることを特徴とする画像形成ユニット。
【請求項3】
前記表面層単位面積当たりの表面積の値は、
前記表面層表面積をSs、
前記表面層面積をSaとすると、
Ss/Saから求められることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成ユニット。
【請求項4】
前記粒子の径をDとすると、
前記表面層の十点平均粗さRzは、D/2以上で且つ前記表面層の最大の高さRyは、2D以下となることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成ユニット。
【請求項5】
前記粒子は、カーボンブラック、金属、金属酸化物及びイオン導電性を発現する第4級アンモニウム塩を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成ユニット。
【請求項6】
前記表面層は、バインダー樹脂に前記粒子を分散配置して構成されていることを特徴とする請求項1〜5項に記載の画像形成ユニット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の前記画像形成ユニットを有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−17961(P2011−17961A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163531(P2009−163531)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】