説明

画像形成体、個人認証媒体及びその製造方法

【課題】被疑不正品を容易に発見することが可能な視認性の高い発見容易性能等を備える、画像形成体、個人認証媒体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】透明基材12の少なくとも一方の面へ所有者に関する情報を画像として視認可能に表示した所有者情報表示部2を備え、所有者情報表示部2が備える、ドット状に形成された複数のセル16は、所有者に関する情報の画像を構成する第一OVD層20と、この第一OVD層20に積層する有色接着層24を備え、第一OVD層20は、ホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成されており、有色接着層24は、有色且つ光透過性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスポートや査証用ステッカー等の冊子、または、カード等の個人認証媒体上に、個人特定の要である顔画像や指紋を印刷・印字・描画する画像形成体に係わるものである。特に、個人認証媒体の正当な所有者の顔や指紋の画像といった個人識別情報を、回折格子または回折格子状に凹凸を設けたセルを組み合わせることにより、偽造及び改竄を困難とし、さらに、個人認証を実施する審査官が識別しやすくすることを目的とするものである。
【背景技術】
【0002】
パスポートや査証用ステッカー、あるいは、カード類といった個人認証に係わる情報記録媒体においては、従来から、色々なセキュリティ手法が提案されてきている。
例えば、パスポートにおいては、現在使用されているパスポートは、いわゆるICAOの規定によって、目視及び光学文字識別方式の両方で読めなければならないとされている。ここで、ICAOは、「International Civil Aviation Organization」の略である。
また、ICAOの規定によれば、パスポートに使用する材質やセキュリティに関しては各国の自由裁量である。
【0003】
このため、セキュリティ機能として一般に使われている材質としては、有機溶剤等で反応する化学反応体、虹彩色のパールチップ、ファイバー(絹もしくは合成繊維、可視もしくは不可視、蛍光もしくは非蛍光)、ホログラムやマイクロ文字の印刷されたフィルムのセキュリティ糸等がある。
【0004】
上述した材質以外のものとしては、透かし模様等を盛り込んだ用紙や退色性インキ、蛍光インキ、感熱インキ、光学的に変化するインキ(例えば、OVI:Optically Variable Inks)等の各種インキ等がある。
さらに、印刷方法として、細線印刷、レインボー印刷、凹版印刷、ピクセル印刷等の様々な技法を用いることにより、セキュリティと美観の同時向上を図っている。
また、パスポートの目視確認情報としての顔写真は、従来、写真を貼り合わせたものであったが、近年では、写真情報をデジタル化して、パスポートに再現する傾向にある。
【0005】
パスポートへの画像再現方法としては、昇華性(熱移行性)染料や、顔料を分散させた樹脂型溶融タイプやワックス溶融タイプを用いた転写リボンによる感熱転写記録法、あるいは、電子写真法等が検討されている。
【0006】
パスポートへの画像再現方法としては、上記の方式以外に、インクジェットプリンターによる記録法(例えば、特許文献1参照)や、CO2、または、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザー及び感熱発色剤を使用したレーザー印字記録法(例えば、特許文献2参照)がある。さらに、これらの方法以外にも、基材中に存在する炭素を利用して、基材の深さ方向にも印字記録するレーザーエングレービング印字記録法(例えば、特許文献3参照)等がある。
また、査証用ステッカーにおいても、ステッカー自体を剥がそうとしても綺麗に剥がすことが困難となるように、切り込みを一定パターン状に設けたものを使用する等の工夫がされているものもある。
【0007】
さらに、この種の個人認識データが入った画像表示体としては、画像データに基づいて形成された画像パターンを、ポリ塩化ビニル等のカード基材上に備えたものがある。これ以外にも、上記の画像パターンに加えて、ホログラムや回折格子、あるいは、多層干渉を用いた光学的薄膜(光学設計により、カラーシフト等の効果を得られる)を用いることによる画像に代表される、いわゆるOVD画像を具備するもの等が知られている。ここで、OVDとは、「Optical Variable Device」の略である。
【0008】
上述した、ホログラムや回折格子のOVD技術は、高度な製造技術を要するため、複製が困難であることから、有効な偽造防止手段として、クレジットカード、IDカード、プリペイドカード等のカード類に利用されてきた。
【0009】
さらには、上述した技術は、その装飾性の高さから、包装材、書籍、パンフレット、POP(PointOf Purchase advertising)等への利用も少なくない。
【0010】
上述したOVD画像を物品に貼着するための手段としては、従来から、例えば、転写箔を用いて転写形成するといった方法が採用されている。
【0011】
この種の転写は、支持体上に、剥離層と、ホログラムや回折格子の画像パターンを形成されているレリーフ層と、公知の薄膜形成手段により形成される反射層と、接着層を順次積層してなる構成のものが知られている。
【0012】
そして、これらの転写箔に刻まれたOVDパターン(ホログラム及び回折格子パターン)は、微少な凹凸パターンをニッケル性のプレス版に複製し、レリーフ層に加熱押圧するという周知の方法により、大量複製が行われている。
【0013】
また、上記の反射層は、屈折率の異なる透明な物質を、真空蒸着法等、公知の薄膜形成手段により形成することで(以下、「透明薄膜層」と記載する場合がある)、透明ホログラムや透明回折格子形成体となることは、公知の技術である。
【0014】
この場合、レリーフ層と透明薄膜層との間の屈折率差が大きい程、反射率も大きくなることは、光学的見地からも明らかである。ただし、ここで、一般的には、「レリーフ層の屈折率<透明薄膜層の屈折率」の関係が成立している。
【0015】
上記の方法によって得られたホログラムまたは回折格子構造物は、偽造防止手段として、クレジットカード、キャッシュカード、会員証カード、社員証カード、プリペイドカード、運転免許証等の各種カード類に用いられている。また、各種カード類以外にも、商品券、ギフト券、株券等の各種紙券類や、申込用紙、領収書、複写伝票等の各種帳票類や、パスポート、通帳、年金手帳等の各種冊子類の他、本や手帳等の表紙や、パネル等のディスプレイ用途等の一部または全体に貼着して使用されている。
【0016】
なお、上記の説明で述べている「全体」とは、概念的な意味であり、柄、パターン等を問わず、スポット状、ストライプ状、格子上に貼着されたものや、定型、不定形の網点状のドットで貼着されたものも含まれる。
【0017】
このようなOVD転写箔は、偽造防止効果としては充分な機能を果たすが、パスポートの様に、顔写真等の画像を形成した後に、その形成した画像上にOVD転写層を熱的に転写して形成している。このため、偽造技術の発達した現在では、何らかの手法により転写層をいったん取り去り、画像データ等の改竄を行った後に、改めてOVD転写箔を載せるといったことが行われる可能性もでてきた。
【0018】
また、顔写真等の画像情報を形成する手段としての、昇華転写方式、熱溶融性の転写リボン方式、電子写真方式等のプリンタは、昨今では一般に広く普及しているため、この状況を考慮すると、画像形成部を取り除いた後の領域に新たに画像を形成することは、必ずしも困難とは言いきれなくなりつつある。
【0019】
上記のような問題を解決するために、顔写真の他に、個人を特定する情報を複数個入れる方法が考えられている。
【0020】
このような方法としては、顔写真の中に電子透かし情報を入れ、その情報を同一媒体中のICチップに記憶して、電子透かし情報とICチップの情報を照合することで認証する方法がある(例えば、特許文献4参照)。また、顔写真情報の特徴点を数値化して、その値を二次元コード化し、同一媒体中に印字することにより、二次元コードのデータと顔写真の特徴点を照合することで認証する方法がある(例えば、特許文献5参照)。
【0021】
他の検証方法としては、目視情報による認証が可能な顔写真を、複数個入れる方法が考えられる。これは、例えば、上記の方式で設けた顔写真の他に、蛍光材料を用いて同じ顔写真を形成する方法がある(例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8参照)。また、パール顔料を溶融型熱転写インクリボン化して、顔写真を形成する方法がある(例えば特許文献9参照)。
【0022】
また、個人情報をホログラム化する方法として、ホログラムリボンを用いた直接熱転写方式が知られている(例えば、特許文献10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2002−226740号公報
【特許文献2】特開昭49−131142号公報
【特許文献3】特開2006−123174号公報
【特許文献4】特開2001−126046号公報
【特許文献5】特開2004−70532号公報
【特許文献6】特開平7−125403号公報
【特許文献7】特開2000−141863号公報
【特許文献8】特開2002−226740号公報
【特許文献9】特開2003−170685号公報
【特許文献10】特開平10−049647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、特許文献4及び5に記載されている方法では、顔写真やICチップや二次元コードを読み取るために、専用のデコーダーが必要となる。このため、読み取り装置及びデコーダーを所有している人以外は、認証が出来ないという問題がある。
また、特許文献6から8に記載されている方法のように、蛍光材料を用いる方法では、紫外線ランプ(ブラックライト)を用いる必要がある。このため、認証可能な場面が限られているという問題がある。
【0025】
また、特許文献9に記載されている方法で形成された、パール顔料による顔写真は、目視による確認は可能であるが、パール顔料の粒子が大きい。このため、精細な画像の形成が困難なことにより、あくまで補助的な認証にしかならないという問題がある。
また、特許文献10に記載されている方法では、被転写面の平滑性が低いと十分な転写品質が得られないという問題がある。これは、例えば、転写した際に被転写面の紙面の凹凸を拾ってしまい、ホログラムの輝度が著しく減少して見づらくなり、目視での真偽判定が困難になるためである。
そのため、特許文献10に記載されている方法では、被転写媒体が、比較的平滑なプラスチックカードや粘着ラベルに限定されてしまい、パスポートや査証用ステッカー等の冊子では十分な品質が得られないという問題がある。
【0026】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされた発明であり、高セキュリティ性を必要とされるパスポート、査証用ステッカー、あるいは各種のカード類等の個人認証媒体に対して、偽造や改竄あるいは変造に対する予防性能や、万一それらの不正がなされた場合であっても、被疑不正品を、観察等によって容易に発見することが可能な、視認性の高い発見容易性能等を備える、画像形成体、個人認証媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明のうち、請求項1に記載した発明は、透明基材の少なくとも一方の面へ所有者に関する情報を画像として視認可能に表示した所有者情報表示部を備える画像形成体であって、前記所有者情報表示部は、ドット状に形成された複数のセルを備え、前記セルは、前記所有者に関する情報の画像を構成する第一OVD層と、当該第一OVD層に積層する有色接着層と、を備え、前記第一OVD層は、ホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成され、前記有色接着層は、有色且つ光透過性を有することを特徴とするものである。
【0028】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記複数のセルは、前記有色接着層の色が全て同一であることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項3に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記複数のセルのうち少なくとも二つは、前記有色接着層の色が互いに異なることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した発明であって、前記複数のセルのうち少なくとも三つは、前記有色接着層の色が互いに異なり、前記色が互いに異なる少なくとも三つのセルが備える有色接着層の色は、それぞれ、レッド、グリーン、ブルーの三色であることを特徴とするものである。
【0029】
次に、本発明のうち、請求項5に記載した発明は、請求項3に記載した発明であって、前記複数のセルのうち少なくとも三つは、前記有色接着層の色が互いに異なり、前記色が互いに異なる少なくとも三つのセルが備える有色接着層の色は、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエローの三色であることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項6に記載した発明は、請求項1から5のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記所有者情報表示部に表示した画像と同じ外観の画像を印刷した所有者情報印刷層を備え、前記所有者情報表示部及び前記所有者情報印刷層は、同一の方向から視認可能であることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項7に記載した発明は、請求項6に記載した発明であって、前記所有者情報印刷層に印刷した画像の面積は、前記所有者情報表示部に表示した画像の面積に対して0.1〜30倍の範囲内であることを特徴とするものである。
【0030】
次に、本発明のうち、請求項8に記載した発明は、請求項1から7のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記所有者情報表示部に表示した画像の情報と関連の無い外観の画像を構成する第二OVD層を備え、前記第二OVD層は、ホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成されており、前記第二OVD層が構成した画像は、前記第一OVD層が構成した画像と同一の方向から視認可能であることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項9に記載した発明は、請求項1から8のうちいずれか1項に記載した画像形成体を被転写基材に転写して形成された個人認証媒体であって、前記被転写基材の少なくとも一方の面に、前記第一OVD層、前記有色接着層の順に転写して形成されていることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項10に記載した発明は、請求項9に記載した発明であって、前記被転写基材の前記画像形成体を転写する面に、予め、細線を組み合わせた図柄である細紋のパターンが印刷されていることを特徴とするものである。
【0031】
次に、本発明のうち、請求項11に記載した発明は、請求項9または10に記載した個人認証媒体の製造方法であって、光透過性を有する受像層に前記複数のセルを熱転写して形成した前記画像形成体を、前記被転写基材の少なくとも一方の面に熱転写して形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0032】
請求項1から5に記載した発明によれば、ホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成された、所有者に関する個別情報を有する画像形成体を提供することが可能となる。これに加え、偽造等により個別情報の画像を形成することが困難となるため、セキュリティ性を向上させることが可能となる。また、有色接着層により、従来の、ホログラムのみから形成された画像と比較して、個別情報の視認性を格段に向上させることが可能となるため、個人認証媒体の真偽判定を、目視で容易に行うことが可能となる。
【0033】
また、複数のセルに対し、有色接着層の色を単一とする、または、セル毎に色を変えることによって、様々なバリエーションの、所有者に関する情報の画像を、視認可能に表示することが可能となる。
【0034】
請求項6に記載した発明によれば、画像形成体を所有している人が、画像形成体の真の所有者か否かの識別を行う審査官に対して、所有者情報印刷層により表示された画像と、所有者情報表示部に表示した画像が、同一人物の個人認証情報から選択される。このため、二つの画像を目視により見比べることで、本人確認を容易に行うことが可能となり、被疑不正品が容易に発見可能となる、発見容易性能を発揮することが可能となる。
【0035】
請求項7に記載した発明によれば、請求項6に記載した所有者情報印刷層の画像の面積を、所有者情報表示部に表示した画像の面積に対して、0.1〜30倍の面積とすることによって、用途に応じて、それぞれの画像の面積を変更することが可能となる。このため、用途に応じて、二つの画像を、容易に比較して認証することが可能となる。
また、所有者情報印刷層の構成を、さらに複雑にすることが可能となるため、偽造防止効果を向上させて、再現・改竄を、さらに困難にすることが可能となる。
【0036】
なお、請求項7に記載した発明と異なり、請求項6に記載した所有者情報印刷層の画像の面積が、所有者情報表示部に表示した画像の面積に対して0.1倍未満であると、二つの画像を比較して認証することが困難となる。また、請求項7に記載した発明と異なり、請求項6に記載した所有者情報印刷層の画像の面積が、所有者情報表示部に表示した画像の面積に対して30倍を超えると、二つの画像を比較して認証することが困難となる。
【0037】
請求項8に記載した発明によれば、ホログラムまたは回折格子状の微細凹凸によって、所有者情報表示部に表示した画像の情報と関連の無い外観の画像を構成する第二OVD層を設けることにより、セキュリティ性を、さらに向上させることが可能となる。
【0038】
請求項9に記載した発明によれば、ホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成された、所有者に関する個別情報を有する個人認証媒体を提供することが可能となる。ここで、所有者に関する個別情報である画像は、有色接着層を介して観察することとなるため、より視認性が向上して、個人認証媒体の真偽判定を目視で容易に行うことが可能となる。
【0039】
請求項10に記載した発明によれば、被転写基材の画像形成体を転写する面に、予め、偽造防止用の細紋パターンを印刷しておくことで、より偽造が困難な個人認証媒体を提供することが可能となる。これは、偽造を行おうとする者が、本発明のプロセスである中間転写方式ではなく、被転写基材側に、ホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成された、所有者に関する図柄を、直接転写しようとした場合に、プライマー等の易接着処理を行うことを、より困難にさせる効果を狙ったものである。これは、被転写基材側に、所有者に関する図柄を直接転写すると、被転写基材が有する凹凸の影響が顕著に現れるため、転写前にこの凹凸をなくすための処理が必要となるが、予め、偽造防止用の細紋パターンを印刷しておく処理を行うことにより、細紋パターンの外観が、正規品と異なったものとなり、偽造品であることを容易に判別することが可能となる。
【0040】
請求項11に記載した発明によれば、光透過性を有する受像層に複数のセルを熱転写して画像形成体を形成した後に、この形成した画像形成体を、被転写基材へ転写させる。これにより、受像層と被転写基材との間に、所有者情報表示部に表示した画像を設けることが可能となるため、さらに、偽造・改竄を防止する効果が高い個人認証媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明における画像形成体の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明における個人認証媒体の概略構成を示す断面図である。
【図3】図2のIII線矢視図である。
【図4】本発明の変形例における画像形成体の概略構成を示す断面図である。
【図5】本発明の変形例における個人認証媒体の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
以下、本実施形態に係る画像形成体と、この画像形成体を備えた個人認証媒体の構成を説明する。
【0043】
(画像形成体の構成)
まず、図1を用いて、本実施形態の画像形成体1の構成を説明する。
図1は、本実施形態における画像形成体1の概略構成を示す断面図である。
図1中に示すように、本実施形態の画像形成体1は、第一OVD層20と有色接着層24を備えた複数のセル16からなる所有者情報表示部2と、受像層4と、第二透明皮膜層6と、第二OVD層8と、第二剥離層10と、透明基材12と、所有者情報印刷層14を備えている。なお、図1中において、画像形成体1及び画像形成体1が備える各部材の、互いの大きさの対比は、実際とは一致しない場合がある。
【0044】
(所有者情報表示部2の構成)
所有者情報表示部2は、ドット状に形成された複数のセル16を備えており、画像形成体1または個人認証媒体の所有者に関する情報を、画像として視認可能に表示している。なお、本実施形態では、一例として、所有者情報表示部2が所有者に関する情報を視認可能に表示する方向を、図1中に矢印「III」で示す方向としている。また、本実施形態では、一例として、画像として表示する情報を、画像形成体1または個人認証媒体の所有者の顔写真とした場合を説明する。
【0045】
各セル16は、画像形成体1の面積と比較して微小な面積に形成されており、第一剥離層18、第一OVD層20、第一透明皮膜層22、有色接着層24を順に積層して形成されている。なお、図1中では、第一剥離層18、第一OVD層20、第一透明皮膜層22、有色接着層24を、図中の下方から上方へ、順に積層した状態を示している。
【0046】
第一剥離層18は、材料として、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル系樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂に、シリコーンやフッ素系の添加剤を加えたものを用いて形成されている。
【0047】
なお、第一剥離層18の材料としては、上記のような、熱可塑性樹脂に添加剤を加えたもの以外に、例えば、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル系樹脂等、透明基材12から剥離しやすいもの用いてもよい。
また、第一剥離層18は、受像層4と共に、後述する被転写基材上に転写されるため、被転写基材との密着性も兼ね備えていることが好適である。なお、第一剥離層18が、被転写基材との密着性を有していない場合、例えば、別途、一層の接着リボン等を介して、第一剥離層18を、被転写基材と接着させても良い。
【0048】
第一OVD層20は、ホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成されており、所有者に関する情報の画像を構成している。
また、第一OVD層20は、材料として、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル系樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET、ポリプロピレン等の光硬化性樹脂、またはアクリルニトリルスチレン共重合体樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂、またはプロプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂を用いて形成されている。なお、上述した熱可塑性樹脂の硬化物は、全て、光透過性を有しており、その屈折率は、一般的には1.5程度である。
【0049】
第一透明皮膜層22は、材料として、第一OVD層20と屈折率が異なる誘電体層、誘電体多層膜、または、高屈折率材料を用いて形成されている。
ここで、高屈折率材料としては、例えば、屈折率が2.0以上である、ZnS、TiO2、PbTiO2、ZrO、ZnTe、PbCrO4等が好ましい。これは、第一透明皮膜層22と第一OVD層20との屈折率差が小さいと、第一OVD層20の凹凸による回折光の視覚効果が弱まってしまうためである。
具体的には、第一透明皮膜層22と第一OVD層20との屈折率差は、少なくとも0.5以上であると良い。また、第一透明皮膜層22の膜厚は、50〜100[nm]の範囲内程度が好ましい。
【0050】
有色接着層24は、有色であり、光透過性を有している。
具体的には、有色接着層24は、色素を添加して有色化した熱可塑性樹脂等を用いて形成されている。
ここで、有色接着層24を形成する色素としては、例えば、アカネ、ウコン、ベニバナ等から得られる天然染料や、モーヴ、インディゴ、アリザリン等の合成染料等を用いることが可能である。
【0051】
また、有色接着層24を形成する色素としては、上述した合成染料等以外にも、例えば、金属系フタロシアニン化合物や、アゾ系化合物等の顔料を用いても良い。ただし、何れの色素も、透過性を失わず、且つ接着性や箔キレ性を保てるように、種類や添加量を定める必要がある。
受像層4は、後述する被転写基材と対向する面(図1中では、下側の面)に、所有者情報表示部2が備える複数のセル16が、有色接着層24によって接着されており、画像形成体の厚さ方向(図1中では、紙面と直交する方向)から見て、複数のセル16を内包している。
【0052】
また、受像層4は、材料として、例えば、プロプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂等を用いて形成されている。なお、受像層4の材料は、第二透明皮膜層6の材料や、その他の樹脂との密着力、加刷性のあるものであれば、特に限定するものではない。
ここで、上記の樹脂は、カラーリボンを用いて、顔写真、名前、生年月日等の文字情報等、いわゆる個人認証に係わる情報を書き込むためのものであり、同時に、後述する被転写基材上へ熱転写した際に密着する、接着剤としての機能を兼ね備えていることが好適である。
【0053】
受像層4の膜厚は、特に限定するものではないが、例えば、5.0〜10.0[μm]の範囲内程度であると好ましい。
第二透明皮膜層6は、受像層4の、複数のセル16が接着されている面と反対側の面(図1中では、上側の面)上に積層している。
また、第二透明皮膜層6は、材料として、上述した第一透明皮膜層22と同様、第二OVD層8と屈折率が異なる誘電体層、誘電体多層膜、または、高屈折率材料を用いて形成されている。これは、上述した第一透明皮膜層22と第一OVD層20との関係と同様、第二透明皮膜層6と第二OVD層8との屈折率差が小さいと、第二OVD層8の凹凸による回折光の視覚効果が弱まってしまうためである。
【0054】
具体的には、第二OVD層8と第二透明皮膜層6との屈折率差は、第一透明皮膜層22と第一OVD層20との屈折率差と同様、少なくとも0.5以上であると良い。また、第二透明皮膜層6の膜厚は、第一透明皮膜層22と同様、50〜100[nm]の範囲内程度が好ましい。
【0055】
第二OVD層8は、第二透明皮膜層6の、受像層4と対向している面と反対側の面(図1中では、上側の面)上に積層している。
また、第二OVD層8は、ホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成されており、所有者情報表示部2に表示した画像の情報と関連の無い外観の画像、すなわち、所有者の顔写真と関連の無い外観の画像を構成している。
【0056】
さらに、第二OVD層8は、構成した画像が、第一OVD層20が構成した画像と同一の方向(図1中に矢印「III」で示す方向)から、視認可能となるように形成されている。
また、第二OVD層8は、材料として、上述した第一OVD層20と同様の材料を用いて形成されている。
第二剥離層10は、第二OVD層8の、第二透明皮膜層6と対向している面と反対側の面(図1中では、上側の面)上に積層している。
また、第二剥離層10は、材料として、上述した第一剥離層18と同様の材料を用いて形成されている。
また、第二剥離層10は、第一剥離層18よりも重くなるように形成されている。これは、第二剥離層10の重さが、第一剥離層18の重さ以下である場合、後述するように、透明基材12を第二剥離層10から剥離させる際に、第二剥離層10がセル16等を、後述する被転写基材から剥離させてしまうためである。
【0057】
透明基材12は、透過性のシートであり、第二剥離層10の、第二OVD層8と対向している面と反対側の面(図1中では、上側の面)上に積層している。
また、透明基材12は、材料として、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレン(PE)等のプラスチックシートを用いて形成されている。
また、透明基材12の厚さは、形成後の用途により適切な値は変わるものの、10〜100[μm]の範囲内程度が好ましい。
所有者情報印刷層14は、複数のセル16が接着されている面と同じ面(図1中では、下側の面)に印刷されており、所有者情報表示部2に表示した画像、すなわち、所有者の顔写真と同じ外観の画像を印刷した層である。
【0058】
ここで、本実施形態では、所有者情報印刷層14の構成を、所有者の顔写真と同じ外観の画像に加え、所有者の名前や出身地、生年月日等、所有者に関する情報のうち、文字で示す文字情報を印刷した場合を例に挙げて説明する。
また、所有者情報印刷層14に印刷した画像のうち、所有者の顔写真と同じ外観の画像の面積は、所有者情報表示部2に表示した画像の面積に対して、0.1〜30倍の範囲内に設定されている。
これは、以下に記載する理由による。
【0059】
例えば、所有者情報印刷層14に印刷した画像のうち、所有者の顔写真と同じ外観の画像(以下、「印刷顔写真画像」と記載する)が、カラーの顔写真である場合、印刷顔写真画像の解像度としては、175[線/インチ]の網点で表現するのが一般的である。これは、一般に、175[線/インチ]の網点より細かい解像度にしても、目視では判別がつかないためである。
【0060】
一方、所有者情報表示部2に表示した画像(以下、「表示顔写真画像」と記載する)を構成する複数のセル16は、最小で5[μm]の円、または、四角状のサイズが必要である。この最小サイズのセル16で、所有者の顔写真を形成した場合、175[線/インチ]の解像度である印刷顔写真画像の大きさに対して、1/30の大きさの表示顔写真画像が得られる。
【0061】
そして、1/30の大きさの表示顔写真画像の場合、拡大鏡等で見ないと印刷顔写真画像との比較は出来ないが、表示顔写真画像を、1/30未満の大きさの画像とした場合、印刷顔写真画像を構成するために必要なセル16の大きさが小さくなりすぎて、回折格子として十分な機能が得られなくなる。
また、回折格子として機能する最小サイズ(5[μm])のセル16を用いても、印刷顔写真画像と同じ画素数の画像を表現することができないため、印刷顔写真画像と表示顔写真画像との画像比較が困難になる。
【0062】
一方、印刷顔写真画像の大きさに対して、表示顔写真画像が10倍を超える大きさとなると、大きすぎるため所有者の情報である個人認証情報が正確に再現できなくなってしまい、印刷顔写真画像と表示顔写真画像との画像比較が困難になる。
そのため、印刷顔写真画像と表示顔写真画像との比率として、0.1:1から30:1の範囲が好適である。これは、上述したように、範囲外の比率差があると、印刷顔写真画像と表示顔写真画像の画像比較が困難になり、個人識別の精度が低下するためである。なお、印刷顔写真画像と表示顔写真画像の大きさは、縦横同一比率で拡大・縮小されていても良い。
【0063】
(個人認証媒体の構成)
次に、図1を参照しつつ、図2及び図3を用いて、本実施形態の個人認証媒体26の構成を説明する。
図2は、本実施形態における個人認証媒体26の概略構成を示す断面図である。また、図3は、図2のIII線矢視図である。ここで、図2中に示す矢印IIIは、図1中に示す矢印IIIと同様、所有者情報表示部2が所有者に関する情報を視認可能に表示する方向である。
【0064】
図2中に示すように、個人認証媒体26は、上述した構成の画像形成体1と、被転写基材28を備えている。
被転写基材28は、カード状に成形した、紙や樹脂(プラスチック)を用いて形成されている。
また、被転写基材28の画像形成体1と対向する面(図2中に示す上側の面)には、予め、細線を組み合わせた図柄である細紋のパターン(図示せず)が印刷されている。
なお、図3中には、第一OVD層20が構成している画像、すなわち、所有者の顔写真の画像を、符号20aを付して示している。同様に、図3中には、第二OVD層8が構成している画像、すなわち、所有者の顔写真と関連の無い外観の画像を、符号8aを付して示している。
【0065】
これに加え、図3中には、所有者情報印刷層14に印刷されている画像、すなわち、所有者の顔写真と同じ外観の画像を、符号14aを付して示し、所有者に関する文字情報を、符号14bを付して示している。
ここで、第一OVD層20が構成している画像20aは、上述した表示顔写真画像に対応している。同様に、所有者情報印刷層14に印刷されている所有者の顔写真と同じ外観の画像14aは、上述した印刷顔写真画像に対応している。
【0066】
(画像形成体1の形成方法)
以下、図1から図3を参照して、本実施形態における画像形成体1の形成方法を説明する。
画像形成体1は、有色接着層24が設けられた図示しないホログラムリボン(ホログラム転写リボン)によって、受像層4上に、所有者情報表示部2が視認可能に表示している画像が熱転写されたものである。
【0067】
ここで、ホログラムリボンの構成について説明する。
ホログラムリボンは、有色のホログラムを狙った場所へセル状に転写し、有色のホログラムを表現する部材である。本実施形態では、有色且つ光透過性を有する有色接着層24により、ホログラムの有色表現をする。
また、ホログラムリボンは、熱転写により受像層4上に接着した後、第一剥離層18と接触しているリボン基材(図示せず)から剥離する機能を有するものである。ここで受像層4上に転写されたホログラムリボンの画像は、矢印III側から、有色接着層24を介して観察されるため、有色表現もし易く、従来の回折光のみによる表現と異なり、視認性にも優れるものとなる。
【0068】
ここで、ホログラムリボンが転写された画像形成体1は、その後、さらに、被転写基材28上へ熱転写される。すなわち、本実施形態の画像形成体1は、ホログラムリボンやインクリボンが転写される被転写体であると同時に、画像形成体1自身が被転写基材28へ転写される転写体である。
このため、ホログラムに求められる機能としては、画像形成体1上への転写時の熱だけでなく、被転写基材28上への転写時の熱にも十分耐えられる耐熱性が挙げられる。
また、ホログラムリボンにより、滑らかで高精細な画像を表現するためには、非常に微小なドットで熱転写されなければならないため、第一剥離層18を基材から剥離する際には、良好な箔キレ性が要求される。
【0069】
(有色のホログラムを形成する方法)
以下、上述したホログラムリボンの熱転写によって、有色(フルカラー)のホログラムを形成する方法を説明する。
例えば、パソコン(PC)のモニタ上で表示されるような、一般的な三原色RGB(レッド・グリーン・ブルー)によるフルカラー画像のデータを、コンピューターのプログラム上にインプットする。そして、インプットしたデータを、サーマルヘッド等の熱転写装置のプログラムにアウトプットし、予め用意したRGBの三種類(三色)の有色接着層24を設けたホログラムリボンを用いて、それぞれの有色接着層24を狙った場所へ転写していくと、RGB色とホログラムの回折光により、写真がそのまま発光したかのようなフルカラーホログラムを形成することが可能である。
【0070】
また、ホログラムの回折格子パターンを、それぞれ特定の角度に、RGBそれぞれの回折光が射出されるように設計したものを用い、かつ、それぞれのホログラムパターン上に、RGBの三種類(三色)の有色接着層24をそれぞれ設けることで、より鮮明なフルカラーホログラムを形成することも可能である。
また、上述したホログラムリボンの転写時におけるセル16のドットサイズは、特に限定されるものではないが、ドットの一辺の長さが、0.042〜0.508[mm]の範囲内(600〜50[dpi]の範囲内)が好適である。
【0071】
しかしながら、パターニングされたホログラム図柄を、対象となる個人の顔写真にする場合には、ドットの一辺の長さが、0.042〜0.169[mm]の範囲内(600〜150[dpi]の範囲内)であることが好適である。これは、ドットサイズが大きくなると、ホログラム図柄の表現力が低下し、逆に、ドットサイズが小さくなると、転写時のばらつきの影響が大きくなるためである。
【0072】
(個人認証媒体26の製造方法)
以下、図1から図3を参照して、本実施形態における個人認証媒体26の製造方法を説明する。
個人認証媒体26は、上述した構成の画像形成体1を、被転写基材28に転写した後、透明基材12を第二剥離層10から剥離させて形成されている。ここで、個人認証媒体26は、被転写基材28の画像形成体1を転写させる面(図2中に示す上側の面)に、第一OVD層20、有色接着層24の順に転写して形成されている。なお、個人認証媒体26を形成する際には、必要に応じて、他の媒体及びプロセスを有しても良い。
すなわち、個人認証媒体26は、光透過性を有する受像層4に、複数のセル16を熱転写して形成した画像形成体1を、被転写基材28の少なくとも一方の面に熱転写して形成されている。
【0073】
(効果)
本実施形態の画像形成体1及び個人認証媒体26であれば、受像層4にインクリボンで印刷された印刷顔写真画像等の個別情報と、ホログラムリボンの熱転写により同じ個別情報が形成された表示顔写真画像の、二つの画像を目視で見比べて、真偽を容易に判定することが可能となる。
これに加え、セキュリティ性アップの要となる表示顔写真画像が、画像形成体1を形成する各層の中間に位置するため、非常に改竄しにくい構成となっている。
また、画像形成体1に第二OVD層8を設けているため、更に、セキュリティ性を向上させることが可能となっている。
また、従来のホログラムリボンのみであると、紙面等の被転写基材28に熱転写すると、紙面等の凹凸を拾って回折光が散乱してしまい、輝度が低くなって目視で見えづらくなるという問題があったが、本実施形態の画像形成体1及び個人認証媒体26であれば、有色接着層24を介して回折光を観察することが可能となるため、視認性を大きく向上させることが可能となる。
【0074】
(実施例)
図1から図3を参照して、上述した第一実施形態において説明した画像形成体1及び個人認証媒体26と同様の構成を有するサンプル(以下、「本発明例のサンプル」と記載する)を製造し、その物性の評価を行った結果について説明する。
本発明例のサンプルを製造する際には、まず、画像形成体1を形成した。
まず、透明基材として、厚み25[μm]のポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、第二剥離層10、第二OVD層8の順に、グラビアコーターで印刷を行ってフィルムを形成した。そして、オーブンを用いて乾燥させた後、第二剥離層10の膜厚を0.6[μm]とし、第二OVD層8の膜厚を0.7[μm]として形成した。
【0075】
次に、上記のように形成したフィルムを、固定図柄ホログラム版を用いて、ロールエンボス装置にて熱プレスを行うことにより、第二OVD層8に、固定図柄のホログラムを成形した。
そして、第二OVD層8上にZnS蒸着を行うことにより、第二透明皮膜層6を設けた。ここで、第二透明皮膜層6の膜厚を80[nm]とした。
また、第二透明皮膜層6上に、グラビアコーターを用いて、受像層4の印刷を行った。ここで、受像層4の膜厚を0.6[μm]とした。
【0076】
次に、ホログラムリボンを作成した。第一剥離層18と接触する基材として、厚さ12[μm]のポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、第一剥離層18、第一OVD層20の順に、グラビアコーターで印刷を行った。そして、オーブンを用いて乾燥させた後、第一剥離層18の膜厚を0.6[μm]とし、第一OVD層20の膜厚を0.7[μm]として形成した。
次に、上記のように形成したフィルムを、空間周波数1000[本/mm]の回折格子ホログラムで形成された版を用いてロールエンボス装置にて熱プレスを行い、ベタ柄ホログラムを成形した。
さらに、第一OVD層20上にZnS蒸着を行うことにより、第一透明皮膜層22を設けた。ここで、第一透明皮膜層22の膜厚を80[nm]とした。
【0077】
そして、上記のように形成したフィルムに、R、G、Bの各色に着色した有色接着層24の印刷を、グラビアコーターにより行った。ここで、有色接着層24の膜厚を、それぞれ、0.6[μm]とした。
また、有色接着層24は、色素として、「VALIFAST RED」、「VALIFAST GREEN」、「VALIFAST BLUE」(全て、オリエント化学工業社製)を、有色接着層24の主剤固形分100部に対して1部ずつ加えて、R、G、Bそれぞれのカラーで着色することにより、有色且つ光透過性を有する有色接着層24を形成した。
【0078】
有色接着層24を形成した後、上記のフィルムを、転写リボンサイズの幅にスリットして小分けし、R、G、B、R、G、Bと繰り返すようにそれぞれを繋ぎ合わせて、ホログラムリボンを作成した。
そして、ホログラムリボンを作成した後、サーマルヘッドを用いて、受像層4上の狙った位置にホログラムリボンを転写し、フルカラーホログラム顔画像を形成した。
なお、所有者の顔写真の画像を形成する際には、予め、被写体となる人物の顔写真を撮影して、三原色RGBのドット状セルで構成された画像データに変換し、コンピューターのプログラム上にインプットした。そして、インプットしたデータを、サーマルヘッド熱転写装置のプログラムにアウトプットし、ホログラムリボンのRGB部分を、それぞれの場所へドット状に転写していき、顔写真の画像を形成した。この際の解像度は、300[dpi](1ドットの一辺の長さが0.084[mm])で行った。
【0079】
次に、公知のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクリボンを用意し、同様に画像形成体1の受像層4上に、顔写真及び文字情報を印字して、画像形成体1とした。そして、画像形成体1と被転写基材28を接着した後に透明基材12を剥離させることで画像形成体1を転写し、本発明例のサンプルを得た。
次に、本発明例のサンプルに対する比較対照として、二種類のサンプル(以下、「比較例Aのサンプル、比較例Bのサンプル」と記載する)を製造した。
【0080】
比較例Aのサンプルは、本発明例のサンプルにおける有色接着層24の代わりに、従来の透明材料を使い、空間周波数1000[本/mm]の回折格子ホログラム一種類からなるホログラムリボンを用いた。
そして、予め、被写体となる人物の顔写真を撮影してモノクロデータに変換し、上記と同様に、ホログラムリボンのサーマルヘッド熱転写によって300[dpi]の顔画
像を形成し、比較例Aのサンプルを得た。
【0081】
一方、比較例Bのサンプルは、本発明例のサンプルにおける有色接着層24の代わりに、従来の透明材料を使い、空間周波数1140[mm](Rの回折光が出る設計)、空間周波数1310[mm](Gの回折光が出る設計)、空間周波数1540[mm](Bの回折光が出る設計)、の三種類からなるホログラムリボンをそれぞれ用いて形成した。
【0082】
そして、上記と同様に、三原色RGBのドット状セルで構成した画像データに変換し、ホログラムリボンのサーマルヘッド熱転写によって300[dpi]の顔画像を形成
して、比較例Bのサンプルを得た。
以上の手順を経て得た三種類のサンプル(本発明例のサンプル、比較例Aのサンプル、比較例Bのサンプル)に対し、目視で真偽判定を行った結果、比較例Aのサンプル、比較例Bのサンプルは、ともに、回折光の輝度が低く視認性が悪いため、顔写真と見比べての真偽判定が非常に困難であった。
【0083】
これに対し、本発明例のサンプルは、有色接着層24の色によって視認性が向上し、顔写真と見比べての真偽判定が容易となることが確認できた。
したがって、以上のように構成した本実施形態の個人認証媒体26は、従来のものと比較して、所有者に関する情報を画像として視認可能に表示した部分が、非常に目視で見やすくなったことが確認された。
【0084】
また、顔写真と個別情報ホログラムを見比べることにより、容易に真偽判定ができることも分かった。そのため、万が一、偽造品や改竄品が出回った際に、目視で容易に真偽判定を行うことが可能な、高いセキュリティ性を有する画像形成体1及び個人認証媒体26を提供可能であることが確認された。
【0085】
(応用例)
以下、第一実施形態の応用例を列挙する。
(1)第一実施形態では、画像形成体1の構成を、第二透明皮膜層6及び第二OVD層8を備えている構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、図4及び図5中に示すように、画像形成体1の構成を、第二透明皮膜層6及び第二OVD層8を備えていない構成としてもよい。なお、図4は、本発明の第一実施形態の変形例における、画像形成体1の概略構成を示す断面図である。また、図5は、本発明の第一実施形態の変形例における、個人認証媒体26の概略構成を示す断面図である。
【0086】
(2)第一実施形態では、画像形成体1のうち、所有者情報表示部2と、第二OVD層8と、所有者情報印刷層14以外を、透明な層で形成したが、これに限定するものではない。すなわち、画像形成体1のうち、所有者情報表示部2と、第二OVD層8と、所有者情報印刷層14以外を、視認可能な範囲で着色してもよい。
また、例えば、受像層4の一部に、網点、万線及び図形のいずれか、または、組み合わせにより表現される不透明な反射層を設けてもよい。この場合、その下に表示される個別情報を有するホログラム図柄や印刷された細紋パターンは隠蔽されることになる。
【0087】
なお、画像形成体1のうち、所有者情報表示部2と、第二OVD層8と、所有者情報印刷層14以外を、透明な層で形成した理由は、画像形成体1は、被転写基材28へ転写された後は、個人認証媒体26の最表面に位置するため、個別情報がパターニングされたホログラム画像や、印刷された細紋パターンの視認性を上げるために透明であることが望ましいためである。
【符号の説明】
【0088】
1 画像形成体
2 所有者情報表示部
4 受像層
6 第二透明皮膜層
8 第二OVD層
10 第二剥離層
12 透明基材
14 所有者情報印刷層
16 セル
18 第一剥離層
20 第一OVD層
22 第一透明皮膜層
24 有色接着層
26 個人認証媒体
28 被転写基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも一方の面へ所有者に関する情報を画像として視認可能に表示した所有者情報表示部を備える画像形成体であって、
前記所有者情報表示部は、ドット状に形成された複数のセルを備え、
前記セルは、前記所有者に関する情報の画像を構成する第一OVD層と、当該第一OVD層に積層する有色接着層と、を備え、
前記第一OVD層は、ホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成され、
前記有色接着層は、有色且つ光透過性を有することを特徴とする画像形成体。
【請求項2】
前記複数のセルは、前記有色接着層の色が全て同一であることを特徴とする請求項1に記載した画像形成体。
【請求項3】
前記複数のセルのうち少なくとも二つは、前記有色接着層の色が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載した画像形成体。
【請求項4】
前記複数のセルのうち少なくとも三つは、前記有色接着層の色が互いに異なり、
前記色が互いに異なる少なくとも三つのセルが備える有色接着層の色は、それぞれ、レッド、グリーン、ブルーの三色であることを特徴とする請求項3に記載した画像形成体。
【請求項5】
前記複数のセルのうち少なくとも三つは、前記有色接着層の色が互いに異なり、
前記色が互いに異なる少なくとも三つのセルが備える有色接着層の色は、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエローの三色であることを特徴とする請求項3に記載した画像形成体。
【請求項6】
前記所有者情報表示部に表示した画像と同じ外観の画像を印刷した所有者情報印刷層を備え、
前記所有者情報表示部及び前記所有者情報印刷層は、同一の方向から視認可能であることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載した画像形成体。
【請求項7】
前記所有者情報印刷層に印刷した画像の面積は、前記所有者情報表示部に表示した画像の面積に対して0.1〜30倍の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載した画像形成体。
【請求項8】
前記所有者情報表示部に表示した画像の情報と関連の無い外観の画像を構成する第二OVD層を備え、
前記第二OVD層は、ホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成されており、
前記第二OVD層が構成した画像は、前記第一OVD層が構成した画像と同一の方向から視認可能であることを特徴とする請求項1から7のうちいずれか1項に記載した画像形成体。
【請求項9】
請求項1から8のうちいずれか1項に記載した画像形成体を被転写基材に転写して形成された個人認証媒体であって、
前記被転写基材の少なくとも一方の面に、前記第一OVD層、前記有色接着層の順に転写して形成されていることを特徴とする個人認証媒体。
【請求項10】
前記被転写基材の前記画像形成体を転写する面に、予め、細線を組み合わせた図柄である細紋のパターンが印刷されていることを特徴とする請求項9に記載した個人認証媒体。
【請求項11】
請求項9または10に記載した個人認証媒体の製造方法であって、
光透過性を有する受像層に前記複数のセルを熱転写して形成した前記画像形成体を、前記被転写基材の少なくとも一方の面に熱転写して形成することを特徴とする個人認証媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−71477(P2012−71477A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217407(P2010−217407)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】