説明

画像形成体および情報認証媒体

【課題】画像形成体で、情報識別を目視にて容易に確認することが出来、かつ偽造、改竄の予防性を備えた画像形成体および認証媒体を提供する
【解決手段】基材と、第1の認証情報を有色表示する第1認証情報表示部と、第2の認証情報を回折格子または回折格子状に凹凸を設けた構造体からなる複数のセルによりドット状に表示する第2認証情報表示部と、中間層と保護層とを有し、基材の1方の面上に第1認証情報表示部が基材上に積層され、また、第1認証情報表示部が配置された基材上に、第1認証情報表示部を覆うように中間層が積層され、中間層の開口部に前記第2の認証情報表示部が配置され、さらに前記中間層及び第2認証情報表示部の基材側と反対の面に保護層が積層され、第1の認証情報及び前記第2の認証情報が、同一の認証情報から形成される情報認証媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスポートや査証などの冊子または、カード等の情報認証媒体上に特定の要となる顔画像や指紋を印刷・印字・描画する画像形成体に関わるものであり、特に、所有者の顔や指紋の画像といった識別情報を、回折格子または回折格子状に凹凸を設けた構造体とオンデマンド印刷技術を組み合わせることにより、識別情報の形成を容易にし、情報認証を実施する審査官が識別しやすくなり、かつ偽造および改竄が困難となること、もしくは審査官が摘発しやすくなることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
パスポート及びID(identification)カードなどの情報認証媒体の多くは、目視による情報認証を可能とするために、顔画像を使用している。例えば、パスポートでは、従来、顔画像を焼き付けた印画紙を冊子体に貼り付けていた。しかしながら、そのようなパスポートには、写真印画の貼り替えによる改竄のおそれがある。
【0003】
このような理由で、近年では、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現する傾向にある。この画像再現方法としては、昇華性(熱移行性)染料や、顔料を分散させた樹脂型溶融タイプやワックス溶融タイプを用いた転写リボンによる感熱転写記録法、あるいは電子写真法などが検討されている。
【0004】
パスポートへの画像再現方法としては、上記方式以外に、インクジェットプリンターによる記録法や(例えば、特許文献1参照)、CO2もしくはYAGレーザーおよび感熱発色剤を使用したレーザー印字記録法(例えば、特許文献2参照)、さらには基材中に存在する炭素(C)を利用して基材の深さ方向にも印字記録するレーザーエングレービング印字記録法(例えば、特許文献3参照)などがある。
【0005】
さらに、この種の認識データの入った画像表示体としては、画像データに基づいて形成された画像パターンをポリ塩化ビニルなどのカード基材上に備えたもの、あるいは上記画像パターンに加えてホログラムや回折格子あるいは多層干渉を用いた光学的薄膜(光学設計によりカラーシフト等の効果が得られる)を用いることによる画像に代表されるいわゆるOVD(Optical Variable Devise)画像を具備するもの等が知られている。
【0006】
これらホログラムや回折格子のOVD技術は、高度な製造技術を要し、複製の難しいことから有効な偽造防止手段としてクレジットカード、IDカード、プリペイドカード等のカード類に利用されてきた。さらには、その装飾性の高さから、包装材、書籍、パンフレット、POP等への利用も少なくない。これらOVDを物品に貼着するための手段として従来から転写箔を用いて転写形成するといった方法が採られている。この種の転写は、支持体上に剥離層、ホログラムや回折格子の画像パターンを形成されているレリーフ層と、公知の薄膜形成手段により形成される反射層、接着層を順次接着してなる構成のものが知られている。これら、転写箔に刻まれたOVDパターン(ホログラムおよび回折格子パターン)は、微小な凹凸パターンをニッケル性のプレス版に複製し、レリーフ層に過熱押圧するという周知の方法により大量複製が行なわれる。
【0007】
また、上記反射層は屈折率の異なる透明な物質を真空蒸着法等の公知の薄膜形成手段により形成することで(以下透明薄膜層と呼ぶ)、透明ホログラムや透明回折格子形成体となることは、公知の技術である。この場合、レリーフ層と透明薄膜層との間の屈折率差が大きい程、反射率も大きくなることは、光学的見地からも明らかである。但し、ここで一般的には、
(レリーフ層の屈折率)<(透明薄膜層の屈折率)
の関係がある。
【0008】
この様にして得られたホログラムまたは回折格子構造物は、偽造防止手段としてクレジットカード、キャッシュカード、会員証カード、社員証カード、プリペイドカード、運転免許証等の各種カード類、商品券、ギフト券、株券等の各種紙券類や申込用紙、領収書、複写伝票等の各種帳票類や、パスポート、通帳、年金手帳等の各種冊子類の他、本や手帳などの表紙やパネル等のディスプレイ用途等の一部または全体に貼着して使用されている。尚、本発明で述べている全体とは、概念的な意味であり、柄、パターン等を問わず、スポット状、ストライプ状、格子上に貼着されたものや、定型、不定形の網点状のドットで貼着されたものも含まれる。
【0009】
このようなOVD転写箔は偽造防止効果としては、充分な機能を果たすが、パスポートの様に顔写真などの画像形成後に該画像上にOVD転写層を熱的に転写して形成しているため、偽造技術の発達した現在では何らかの手法により転写層をいったん取り去り、画像データ等の改竄を行った後に改めてOVD転写箔を載せるといったことが行われる可能性もでてきた。
【0010】
さらに、盗難されたパスポート等の認証媒体の顔写真と顔の形状・雰囲気が似ている人を選定して印字写真を顔の上から貼ることで、画像データの改竄が行われる可能性もある。
【0011】
また、顔写真などの画像情報を形成するする手段としての昇華転写方式、熱溶融性の転写リボン方式あるいは電子写真方式などのプリンタは、昨今では一般に広く普及している状況を考慮すると、画像形成部を取り除いた後の領域に新たに画像を形成することは、必ずしも困難とは、言いきれなくなりつつある。
【0012】
上記のような問題を解決すべく、顔写真等の個人を特定する情報を複数個入れる方法が考えられている。その一方法として、顔写真などの画像情報をホログラムまたは回折格子等で形成することで、カラー画像による顔写真等の改竄と同時にホログラム画像の改竄も行わなければならなくなるため、より改竄を困難にする(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−226740号公報
【特許文献2】特開昭49−131142号公報
【特許文献3】特開2006−123174号公報
【特許文献4】特願2009−187654号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、前記従来の技術の問題点に鑑みてなされた発明であり、高セキュリティ性を必要とされる画像形成体(代表例としてはパスポート、査証、あるいは各種のカード類、等)に対して、顔写真等の耐改竄性を向上させる方法の一つを提供するもので、万一それらの不正がなされた場合であっても、被疑不正品を観察等すると容易に発見できるような発見容易性能を備えるなどの画像形成体を形成するための情報認証媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を達成すべくなされた請求項1に記載の発明は、少なくとも基材と、第1の認証情報を有色で表示する第1認証情報表示部と、第2の認証情報を回折格子で設けた構造体からなる複数のセルよりなるドットの集合で表示する第2認証情報表示部と、中間層と保護層とを有し、前記基材の1方の面上に前記第1認証情報表示部が配置され、また、前記第1認証情報表示部が配置された前記基材上に、前記第1認証情報表示部を覆うように中間層が積層され、前記中間層は前記第1認証情報表示部が配置されていない部分に開口部を有しており、前記中間層の開口部に前記第2の認証情報表示部が配置され、さらに前記中間層及び前記第2認証情報表示部の基材側と反対の面に前記保護層が積層され、前記第1の認証情報及び前記第2の認証情報が、同一対象と認識可能な認証情報からなることを特徴とする情報認証媒体である。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記第2認証情報表示部の下の前記中間層は、部分的に除去されていることを特徴とする請求項1に記載の情報認証媒体である。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記第2認証情報表示部の下の前記中間層は、前記第2認証情報表示部よりも小さい面積で除去されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報認証媒体である。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記第1認証情報表示部上に前記中間層を介して回折格子層を設けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報認証媒体である。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記中間層及び前記保護層の厚さはそれぞれ1μm〜20μmの厚さであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の情報認証媒体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、情報認証媒体がそれを所有している人が真の所有者か、また、その媒体が本物かどうかを識別する審査官に対して、有色表示された第1認証情報表示部の画像と同じ画像が回折格子または回折格子状に凹凸を設けた構造体によって第2認証情報表示部に設けられていることにより、2つの画像を目視にて見比べることで容易に本人確認ができる。しかも、この情報認証媒体を改竄しようとした場合、有色表示された前記第1認証情報表示部と回折格子等で構成された前記第2認証情報表示部の両方を形成する必要があり、改竄を困難にすることができる。さらに、有色表示された前記第1認証情報表示部と回折格子等で構成された前記第2認証情報表示部が異なる層間に設けられていることにより、いずれかの層を表面もしくは基材から剥がして裏面から画像を改竄しようとすると、画像が形成されている層以外の層である、接着層、中間層、保護層のいずれかをも破壊する必要があり、そのため改竄を防止することができる。または、改竄等の不正が行なわれても容易に発見できる。
【0021】
また、個人認証媒体の前記第2認証情報表示部が、一定の面積内で部分的に除去した中間層に重なるように設けられることで、前記第1認証情報表示部および前記第2認証情報表示部のあるいずれかの層を表面もしくは基材から剥がして裏面から画像を改竄しようとすると、前記第2認証情報表示部が破壊されるため、改竄防止効果を高めることができる。
【0022】
また、個人認証媒体の前記第2認証情報表示部が、一定の面積を除去された中間層を覆うように設けられることで、前記第1認証情報表示部および前記第2認証情報表示部のあるいずれかの層を表面もしくは基材から剥がして裏面から画像を改竄しようとすると、前記第2認証情報表示部の一部が破壊されて保護層側に残る為、改竄防止効果をより一層高めることができる。
【0023】
以上より、耐改竄性を向上させ、万一それらの不正がなされた場合であっても、被疑不正品を容易に発見できるような情報認証媒体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の情報認証媒体の一例を示した平面図およびX−X線上における断面図。
【図2】本発明の情報認証媒体の一例を示した断面図。
【図3】本発明の情報認証媒体の一例を示した断面図。
【図4】本発明の情報認証媒体の一例を示した断面図。
【図5】本発明の情報認証媒体の一例を示した断面図。
【図6】本発明の情報認証媒体の一例を示した断面図。
【図7】本発明における第一の発明の情報認証媒体を製造する工程の一例を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明における発明は、図1に示した情報認証媒体の概略図および断面図のように、基材11上に、第1の認証情報として顔画像等の目視可能な画像を有色表示することで第1認証情報表示部15が設けられており、さらに第1認証情報表示部15で表示された認証情報と同一人物の認証情報を表示した第2認証情報表示部16に、回折格子からなる複数のセルをドット状に設けることで、ある角度の光源を照射した際に目視可能な画像情報が出現することができるため第1の認証情報と第2の認証情報を比較することで認証できるというものである。
さらに本発明では、第1認証情報表示部15と第2認証情報表示部16が設けられている層が異なり、第1認証情報表示部15および第2認証情報表示部16をそれぞれ書きかえるためには、基材11もしくは接着層12から印字部と回折格子構造部を剥がして、顔写真および回折格子構造を削って新たに別な情報をそれぞれ設ける必要がある。また、顔写真と回折格子構造はそれぞれ別の層に接しており、それぞれを剥がして削るのは難しく、そのため改竄が困難となる。
【0026】
図2および図3は、本発明における情報認証媒体の断面図であり、接着層22,32と中間層23,33の間に第1認証情報表示部25,35を設け、さらに接着層22,32と保護層24,34の間に第2認証情報表示部26,36を設けてなる構成となっている。
【0027】
図3は、第2認証情報表示部が中間層の一部を覆うように設けており、これによって、基材31もしくは接着層32から回折格子構造部をはがして新たに別な情報を設けるためには、第2認証情報表示部の一部を破壊しなくてはならない。そのため改竄がより困難となり、また、改竄しようとしても改竄の痕跡が容易に判別できる。
【0028】
図4および図5は、本発明における情報認証媒体の断面図であり、接着層42,52と中間層43,53の間に、中間層に覆われるように第1認証情報表示部45,55を設け、さらに接着層42,52の、基材41,51とは反対側の面に中間層47,57を部分的に設けた上に第2認証情報表示部45を設け、全体の上面(基材とは反対側の面)に保護層44,54を設けてなる構成となっている。
図4の構成からなる情報認証媒体について改竄を図ろうとした場合、第2認証情報表示部を入れ替えるには中間層を残しつつ第2認証情報表示部の回折格子構造を削って新たな情報を貼り付ける必要がある。そのため、改竄はより一層困難となり、改竄しても改竄の痕跡が容易に判別できる。
また図5は、第2認証情報表示部が中間層の一部を覆うように設けており、図3の場合と同じ理由で改竄が更に一層困難となる。
【0029】
図6は、第1認証情報表示部65上に中間層63を介して回折格子層67が設けられている。この回折格子層67を第1認証情報表示部あるいは中間層全体の上面に設けることで、情報認証媒体6上に顔写真等を重ねて貼ることで改竄しようとしても改竄した痕跡が容易に判別でき、また、より一層偽造防止効果が高まる。なお、回折格子層67は中間層の一部の上面に設けても良い。
【0030】
図7は、本発明における第1の発明の情報認証媒体を製造する工程の一例を示した概略図である。図7における概略図では、情報認証媒体6に直接画像を印字するのではなく、いったん中間層転写フィルム上に有色インクリボン133をサーマルヘッド131にて印字することで、第1認証情報表示部を形成し、その後情報認証媒体6へヒートロール137の熱圧で画像および中間層を転移させる。このとき、中間層のある一定の面積部分が除去されるよう予め設定されている。また上記の工程に加え、保護層転写フィルム上に回折格子リボン134をサーマルヘッド132にて印字することで、第2認証情報表示部を形成し、その後情報認証媒体6へヒートロール138の熱圧で画像および保護層を転移させて、情報認証媒体6が得られる。
【0031】
さらに、上記中間層13,23,33,43,53および保護層14,24,34,44,54のいずれか一方もしくは両方の一部または全部に回折格子層を設けることで、より一層の偽造・改竄防止効果が期待できる。
【0032】
情報認証媒体1,2,3,4,5,6の大きさは、特に限定は無いが、携帯が容易なサイズであることが好ましく、オリンピック等のADカードの約95×150mm、パスポートのデータページの約125×88mm、クレジットカードの約86×54mmサイズが一般的に使用されているサイズである。
【0033】
基材11,21,31,41,51,61は、支持体としては、例えば紙、コート紙、および合成紙(ポリプロピレン、ポリスチレンもしくは、それらを紙と貼り合わせた複合材料)等の各種紙類、塩化ビニル系樹脂シート、ポリエチレンテレフタレートベースフィルム、透明のポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートベースフィルム等の各種プラスチックフィルムないしシート、各種の金属で形成されたフィルムないしシート、各種のセラミックス類で形成されたフィルムないしシート等を挙げることが出来る。これらの色は、単色や2色以上の複数色の組合せでも良く、絵柄、図柄を備えているなど特に限定する必要はないが、後の工程で形成される個人認証情報の鮮明性を高めるために、白色顔料例えばチタンホワイト、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム等が添加されているのが好ましい。支持体の厚みは、通常20〜1000μm、好ましくは50〜800μmである。
【0034】
接着層12,22,32,42,52,62は、基材と第1認証情報表示部もしくは第2認証情報表示部および中間層13,23,33,43,53,63を接着して一体化させるものである。これらを接着するための材料としては、通常塩化ビニル酢酸ビニル共重合体やエチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。なお、中間層13,23,33,43,53,63と基材との密着が良好な場合、接着層を省くことができる。
【0035】
中間層13,23,33,43,53,63および保護層14,24,34,44,54,64は、それぞれの層間を接着して一体化させるものである。
本発明に用いられる中間層は、第lang=EN-US>1認証表示部が設けられた主面を部分的に被覆しているため、第1認証表示部の視認性を挙げるために透明であることが望ましく、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリオールアクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレート、トリアジンアクリレート及びトリアジンメタクリレートなどの熱硬化性樹脂style='font-size:10.5pt;font-family:"MS 明朝"'>、又はこれらの混合物を使用することができる。 さらに保護層は、第1認証情報表示部および第2認証情報表示部の識別画像の判別を妨害するキズ、汚れ等から守る役目を持つ材料であれば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線あるいは電子硬化樹脂のいずれであっても良いが、その下層の第1認証情報表示部および第2認証情報表示部を中間層もしくは保護層に転写する場合、ベースとなるフィルム基材(図示せず)から剥がして基材、接着層もしくは中間層に間接転写して使用する場合が多いことより、柔軟性、箔切れ性を考慮し、熱可塑性樹脂が好ましい。その例としては、熱可塑性ポリアクリル酸エステル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スリレンアクリレート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の樹脂を単独あるいは複合して用いることができる。また、箔切れ性や耐摩性を考慮し、石油系ワックス、植物系ワックス等の各種ワックス、ステアリン酸等の高級脂肪酸およびその金属塩やエステル類、シリコンオイル等の滑材や、フッ素樹脂パウダー、ポリエチレンパウダー、シリコーン系微粒子やアクリルニトリル系微粒子等の有機フィラーおよびシリカ微粒子等の無機フィラーを添加することもできる。
【0036】
中間層または保護層の方面しくは両方の一部または全部に回折格子層を設けることができ、これらを設けることで、より一層耐改竄防止効果が高くなる。
【0037】
また、中間層および保護層の厚さは、それぞれ1μm〜20μmの間であることが好ましく、厚みが薄いと中間層および保護層に改竄が加えられても発見しにくくなるおそれがあり、逆に厚みが厚い場合でも市販のフィルム上に顔写真等を設けてうまく添付すれば、改竄されているかどうか見分けが付かなくなる恐れがある。そのため、目視で厚み差が発見し易くかつ、市販フィルム上に印字して情報認証媒体に添付する改竄を防止できる1μm〜20μmの厚みの間であることが好ましい。
【0038】
第1認証情報表示部は、情報認証媒体を所有している人が本人自身であり、その身分を証するかどうかを審査官が判断するために設けられているもので、本人を特定できる、顔写真、指紋、サイン等を設けることができる。さらに顔写真の場合、カラーおよび白黒のいずれでも良い。
第1認証情報表示部を設ける方法として、通常使われている印刷方法であるオフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、凸版印刷法の他に、インクリボンを用いて昇華転写させて基材、接着層、中間層もしくは保護層に捺染させる方法、同じくインクリボンを用いて熱溶融により転写する方法、インクジェット法、トナー固着法等のいずれの方法で形成しても良い。
【0039】
さらに、基材もしくは接着層に直接印字する方法がある。レーザーエングレービング法は、基材の表面および内部に印字した構成である。レーザーによるエネルギーのかけ方で、深さ方向に発色できることにより、改竄防止効果が高い方法となる。
【0040】
本発明における第2認証情報表示部は、回折格子または回折格子状に凹凸を設けた構造体からなる複数のセルによりドット状に表示される。セルは、外光を回折させる方向や角度、明るさ等を制御して階調を複数種類設定することで、観察する角度に応じて、表示画像を変化させることが可能である。
回折格子のパラメータとして、
(1)回折格子の空間周波数(格子線のピッチ:単位長さ当たりの格子線の本数)
(2)回折格子の方向(格子線の方向)
(3) 回折格子の描画領域(回折格子セルの配置)
の3つがあり、上記(1)に応じて定点に対してその回折格子パターンが光って見える色が変化し、上記(2)に応じて、その回折格子セルが光って見える方向が変化し、上記(3)に応じて、表示画像(認証情報等)が決定される。第2認証情報表示部の内部に回折格子からなる複数のセルをドット状に配列して、セル(画像)毎にこれらのパラメータを様々に変化させた回折格子を形成することで指向性のある光沢を有する表示画像を構成することが出来る。また、上記以外にも各セルの形状や厚さ、材料、大きさ等を変化させることによって階調を複数種類設定したセルを作製し、各セルを用途や目的、表示する認証情報によって適宜選択して、複数配置して認証情報を表示することも出来る。
【0041】
回折格子のセルに用いる材料は、成形性が良好で、ムラが生じ難く、明るい再生像が得られ、基材や保護層や接着層との接着性が良好である樹脂が良い。例えばポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレートなどの熱硬化性樹脂あるいはこれらの混合物、さらにはラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料などが使用可能であり、また、上記以外のものでも、回折格子を形成可能な安定性を有する材料であれば使用可能である。そして、上記材料を用いて可視光線を透過する可視光線透過層とするのがさらに好ましい。
【0042】
セルの形状は特に限定しないが、可視面側の形状が円や楕円、三角形や四角形などの多角形からなる立方体や、円錐形や四角錐などでも良い。また可視面側の表面は平滑でも良いし、曲面や凸型構造があっても良く、選択的には変形または破壊しても良い。必要な階調を得るために適宜選択すれば良い。また、凸型構造については円柱形状のもの、円錐形状のもの、三角や五画または六画錘等の多角錘状のもの、円柱に円錐を接合した形状のもの、角柱に角錐を接合した形状のもののほか、半球、半楕円球、弾丸型、お椀型、あるいは半ラグビーボール形状のように、厳密には半楕円体ではない半球体であっても良い。凹型構造となる円錐や角錐、紡錘等の凹部を形成したものであっても良く、また、円筒錘状、角筒状等の凹部を形成したものであっても上記実施の携帯と同様の機能及び効果を発揮出来る。
【0043】
セルの厚みについては、0.1〜2.0μmで目視可能な画像を再現することが出来る。複数配列されたセルの厚みが均一でも良いし、セル毎に厚みが異なっていても良い。転写箔として認証媒体に設けた場合でも第2認証表示部のみを削ることによる改竄は非常に困難である。
【0044】
セル間の距離については、隣接するセル同士の距離が遠すぎると認証情報が正確に表示出来なくなってしまう。そこで隣接するセル同士は300μm以下にしておくのが好ましい。一方セル同士の距離が近すぎると表示された認証情報に干渉ムラや視認不具合が発生してしまう可能性がある。セルの材質によって適宜調整する必要がある。
【0045】
また、第2認証情報表示部に認証情報を表示させるために、回折格子を出現させる必要がある。その方法として、セルに高屈折率層を設ける方法がある。可視光線透過層の屈折率よりも高い材料を設けることで、回折格子が出現出来る。高屈折率層の材料に可視光線を透過する材料を使用することで、その下層にある画像も目視で確認することが出来る。
【0046】
前記高屈折率層は、金属酸化物、金属間化合物、樹脂材料もしくは金属酸化物や金属間化合物または樹脂材料を微粒子化して樹脂材料に分散させたものを、単層もしくは複数層設けることで構成される。
【0047】
高屈折率層に用いる材料として具体的には、セルに用いた材料より屈折率の高い透明材料であって、例えばSb2S3、Fe2O3、TiO2、CdS、CeO2、ZnS、PbCl2、CdO、Sb2O3、WO3、SiO2、Si2O3、In2O3、PbO、Ta2O3、ZnO、ZrO2、Cd2O3、Al2O3、Ge等のような無機材料等が使用可能である。さらに透明薄膜層は複数の層を重ね合わせて形成しても良く、異なる屈折率の層の組合せ、高屈折率の層と低屈折率の層とを交互に積層した多層膜としても良い。
【0048】
また、このような高屈折率層の形成する方法としては、真空蒸着法の他にスパッタリング法、イオンプレーティング法等の成膜手段が適用可能であり、膜厚としては10nm〜1000nmの範囲にあることが好ましい。また透明性薄膜層としては、TiO2等の高屈折率粉末を樹脂などの中に分散し、レリーフ形成層との屈折率差を0.2以上としたものでも良い。この場合には、一般的なコーティング法で塗膜形成できるため、上記膜厚に限定されるものではない。
【0049】
また、第2認証情報表示部に個人認証情報を表示させるために、回折格子を出現させる他の方法として、反射層を設ける方法がある。反射層としてAl、Sn、Ni、Co、Cr、Fe、Ag、Auといったような金属を非連続的な薄膜として形成したものでも良い。
【0050】
図4および図5において第2認証情報表示部の回折格子を、反射層や高屈折率層を用いて出現させるときに、第2認証情報表示部46,56の下の情報が目視できることが好ましい。そこで、第2認証情報表示部の回折格子を出現させ、かつその下層にある中間層の情報を目視で確認できる方法として、金属光沢層をハーフミラー化する方法がある。例えば、アルミニウムの場合、膜厚が20〜40nm程度の層を設けた場合、角度により金属光沢を有するが、他の角度では下地が透過して見える。このような方法で第2認証情報表示部の回折格子を出現させる層を設けても良い。
【0051】
また、図4および図5の中間層47,57の代わりか、もしくは基材面に、部分的に残した中間層を介して印字部を設けてもよく、その場合、第2認証情報表示部の回折格子を出現させ、なおかつその下層にある情報を目視で確認できる方法として、金属光沢層をハーフミラー化(上記)する他に、ディメタライズする方法がある。アミ点状もしくは万線状に金属光沢層の金属を除去することで、第2認証情報表示部の回折格子が視認できかつ、その下層にある印字情報も目視確認できる。
【0052】
第2認証表示部の回折格子を出現させる同様の方法にて、回折格子17,47,57,67を出現させることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、パスポートや査証などの冊子または、カード等の認証媒体上に情報を印刷・印字・描画する画像形成体に係るものであり、特に正等な所有者の顔や指紋の画像といった画像情報などを、回折格子を設けたセルを複数配置して構成し、さらに有色画像で構成された認証情報が設けられている層と、回折格子で構成された認証情報が設けられている層が異なる層間に配置されていることにより、偽造や改竄を困難にし、さらに識別を行なう審査官に対してより不正行為があるものを判別し易くし、より精度良く認証ができる。
【符号の説明】
【0054】
1,2,3,4,5,6 ・・・・・ 情報認証媒体
11,21,31,41,51,61 ・・・基材
12,22,32,42,52,62 ・・・接着層
13,23,33,43,53,63,47,57,・・・中間層
14,24,34,44,54,64 ・・・保護層
15,25,35,45,55,65 ・・・第1認証表示部
16,26,36,46,56,66 ・・・第2認証表示部
17,67 ・・・ 回折格子層
131、132 ・・・・・ サーマルヘッド
133 ・・・・・・・・ 有色インクリボン
134 ・・・・・・・・ 回折格子リボン
135 ・・・・・・・・ 中間層転写フィルム
136 ・・・・・・・・ 保護層転写フィルム
137、138 ・・・・・ ヒートロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材と、第1の認証情報を有色で表示する第1認証情報表示部と、第2の認証情報を回折格子で設けた構造体からなる複数のセルよりなるドットの集合で表示する第2認証情報表示部と、中間層と保護層とを有し、前記基材の1方の面上に前記第1認証情報表示部が配置され、また、前記第1認証情報表示部が配置された前記基材上に、前記第1認証情報表示部を覆うように中間層が積層され、前記中間層は前記第1認証情報表示部が配置されていない部分に開口部を有しており、前記中間層の開口部に前記第2の認証情報表示部が配置され、さらに前記中間層及び前記第2認証情報表示部の基材側と反対の面に前記保護層が積層され、前記第1の認証情報及び前記第2の認証情報が、同一対象と認識可能な認証情報からなることを特徴とする情報認証媒体。
【請求項2】
前記第2認証情報表示部の下の前記中間層は、部分的に除去されていることを特徴とする請求項1に記載の情報認証媒体。
【請求項3】
前記第2認証情報表示部の下の前記中間層は、前記第2認証情報表示部よりも小さい面積で除去されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報認証媒体。
【請求項4】
前記第1認証情報表示部上に前記中間層を介して回折格子層を設けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報認証媒体。
【請求項5】
前記中間層及び前記保護層の厚さはそれぞれ1μm〜20μmの厚さであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の情報認証媒体。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−16884(P2012−16884A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155675(P2010−155675)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】