説明

画像形成体および画像形成体付き物品および画像形成体製造方法および画像形成体付き物品製造方法および画像形成体製造装置および画像形成体付き物品製造装置

【課題】パスポートや査証用ステッカー、あるいはカード類等の画像形成体上に高セキュリティ性を必要とされる画像形成体について、本人識別を目視にて容易に確認することが出来、かつ偽造、改竄の予防性を備えた情報記録装置および中間転写印字による印画方法を提供する。
【解決手段】第1転写フィルム上に第2転写フィルムの転写リボンを印字し、あらかじめ第3転写フィルム上に第1転写フィルムを印字した画像の上に、前記第2転写フィルムが印字されてあり第1転写フィルムを印字し、それを物品である画像形成体に転写することを特徴とする情報記録装置および印画方法となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスポートや査証などの冊子または、カード等の画像形成体および画像形成体付き物品および画像形成体製造方法および画像形成体付き物品製造方法および画像形成体製造装置および画像形成体付き物品製造装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
パスポートや査証用ステッカー、あるいはカード類といった個人認証に係わる情報記録媒体においては、従来、色々なセキュリティ手法が提案されてきている。例えば、パスポートにおいては、現在使用されているパスポートはいわゆるICAOの規定によれば、目視および光学文字識別方式の両方で読めなければならないとされている。(ICAOは、International Civil Aviation Organizationの略)
ICAOの規定によれば、パスポートに使用する材質やセキュリティに関しては各国の自由裁量であり、セキュリティ機能として一般に使われているのは、有機溶剤等で反応する化学反応体、虹彩色のパールチップ、ファイバー(絹もしくは合成繊維、可視もしくは不可視、蛍光もしくは非蛍光)、ホログラムやマイクロ文字の印刷されたフィルムのセキュリティ糸、透かし模様等を盛り込んだ用紙や退色性インキ、蛍光インキ、感熱インキ、光学的に変化するインキ(いわゆるOVIなど)等の各種インキ、細線印刷、レインボー印刷、凹版印刷、ピクセル印刷等の様々な技法を組み込んでセキュリティと美観の同時向上を図っている。
パスポートの目視確認情報としての顔写真は、従来写真を貼り合わせたものであったが、近年では写真情報をデジタル化し、これをパスポートに再現する傾向にある。パスポートへの画像再現方法としては、顔料を分散させた樹脂型溶融タイプやワックス溶融タイプを用いた転写リボンによる感熱転写記録法、あるいは電子写真法などが検討されている。
【0003】
この種の個人認識データの入った画像表示体としては、画像データに基づいて形成された画像パターンをポリ塩化ビニル等のカード基材上に備えたもの、あるいは上記画像パターンに加えてホログラムや回折格子を具備するもの等が知られている。
【0004】
このホログラムまたは回折格子構造物は、偽造防止手段としてクレジットカード、キャッシュカード、会員証カード、社員証カード、プリペイドカード、運転免許証等の各種カード類、商品券、ギフト券、株券等の各種紙券類や申込用紙、領収書、複写伝票等の各種帳票類や、パスポート、通帳、年金手帳等の各種冊子類の他、本や手帳などの表紙やパネル等のディスプレイ用途等の一部または全体に貼着して使用されている。尚、本発明で述べている全体とは、概念的な意味であり、柄、パターン等を問わず、スポット状、ストライプ状、格子上に貼着されたものや、定型、不定形の網点状のドットで貼着されたものも含まれる。
【0005】
このようなホログラムまたは回折格子転写箔は偽造防止効果としては、充分な機能を果たすが、パスポートの様に顔写真などの画像形成後に該画像上にホログラムまたは回折格子転写層を熱的に転写して形成しているため、偽造技術の発達した現在では何らかの手法により転写層をいったん取り去り、画像データ等の改竄を行った後に改めて転写箔を載せるといったことが行われる可能性もでてきた。
【0006】
さらに、盗難されたパスポート等の認証媒体の顔写真と顔の形状・雰囲気が似ている人を選定して印字写真を顔の上から貼ることで、画像データの改竄が行われる可能性もある。
【0007】
また、顔写真などの画像情報を形成するする手段としての昇華転写方式、熱溶融性の転写リボン方式あるいは電子写真方式などのプリンタは、昨今では一般に広く普及している状況を考慮すると、画像形成部を取り除いた後の領域に新たに画像を形成することは、必ずしも困難とは、言いきれなくなりつつある。
【0008】
上記のような問題を解決すべく、顔写真等の個人を特定する情報を複数個入れる方法が考えられている。その一方法として、顔写真などの画像情報をホログラムまたは回折格子等で形成することで、カラー画像による顔写真等の改竄と同時にホログラム画像の改竄も行わなければならなくなるため、より改竄を困難にする(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願2009−187654号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来の技術の問題点に鑑みてなされた発明であり、高セキュリティ性を必要とされる画像形成体に対して、耐改竄性を向上させるもので、万一それらの不正がなされた場合であっても被真偽媒体を観察すれば容易に発見できるような発見容易性能を備える画像形成体および画像形成体付き物品および画像形成体製造方法および画像形成体付き物品製造方法および画像形成体製造装置および画像形成体付き物品製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成すべくなされた第1の発明は、
少なくとも第3の転写フィルムの転写層上に第1転写層と、第1の転写フィルム上の少なくとも一部に、第2の転写フィルムの少なくとも一部が積層された複層転写層を有する画像形成体の製造装置であって、
少なくとも2つの熱転写印字記録部を有し、
前記情報記録装置に設置されている熱転写印字記録部と少なくとも3つの転写フィルム設置部を有し、
第1の転写フィルム上の少なくとも一部に、第2の転写フィルムの少なくとも一部が転写されて、第2転写層を備えた複層転写層を形成する第1間接転写機構と、
さらに第3の転写フィルムの転写層上に、第1の転写フィルムの少なくとも一部を転写して第1転写層を形成するとともに、前記複層転写層の少なくとも一部を転写する第2間接転写機構と、
を少なくとも備えることを特徴とする画像形成体製造装置である。
また第2の発明は、
前記第2間接転写機構は、第3の転写フィルム上に転写された前記第1転写層上に前記複層転写層を転写する転写層積層機構をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成体製造装置である。
また第3の発明は、
請求項1乃至2のいずれかに記載の画像形成体製造装置に、
前記第2間接転写機構を経た第3の転写フィルムを物品に転写して画像形成体付き物品を形成する画像形成体付き物品形成機構と、
を備えることを特徴とする画像形成体付き物品製造装置である。
また第4の発明は、
少なくとも第3の転写フィルム上に第1転写層と、第1の転写フィルム上の少なくとも一部に、第2の転写フィルムの少なくとも一部が積層された複層転写層を有する画像形成体の製造方法であって、
少なくとも2つの熱転写印字記録部を有し、
前記情報記録装置に設置されている熱転写印字記録部と少なくとも3つの転写フィルム設置部を有し、
第1の転写フィルム上の少なくとも一部に、第2の転写フィルムの少なくとも一部が転写されて、第2転写層を備えた複層転写層を形成する第1間接転写工程と、
さらに第3の転写フィルムの転写層上に、第1の転写フィルムの少なくとも一部を転写して第1転写層を形成するとともに、前記複層転写層の少なくとも一部を転写する第2間接転写工程と、
を少なくとも備えることを特徴とする画像形成体製造方法である。
また第5の発明は、
前記第2間接転写工程は、第3の転写フィルム上に転写された前記第1転写層上に前記複層転写層を転写する転写層積層工程をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の画像形成体製造方法である。
また第6の発明は、
第1の転写フィルムおよび/または第2の転写フィルムが2色以上のカラーリボンからなることを特徴とする請求項4乃至5のいずれかに記載の画像形成体の製造方法である。
また第7の発明は、
第2の転写フィルムおよび/または第1の転写フィルムがホログラムもしくは回折格子からなることを特徴とする請求項4乃至5のいずれかに記載の画像形成体の製造方法である。
また第8の発明は、
前記第1転写層のうち、前記第2転写層が転写される部分があらかじめ万線および/または彩紋が設けられてなることを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載の画像形成体の製造方法である。
また第9の発明は、
第3の転写フィルムの転写層上に転写した第1転写層にて、万線および/または彩紋を形成し、その上に万線および/または彩紋が設けられてなる第1の転写フィルムの転写層を重ねることでモアレ模様が発生することを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の画像形成体の製造方法である。
また第10の発明は、
前記万線および/または彩紋の少なくとも一方はプロセス4色以外の色で形成されてなることを特徴とする請求項8乃至9記載の画像形成体の製造方法である。
また第11の発明は、
前記第3の転写フィルムは、ホログラムもしくは回折格子からなることを特徴とする請求項4乃至10記載の画像形成体の製造方法である。
また第12の発明は、
請求項4乃至11のいずれかに記載の画像形成体の製造方法に、
前記第2間接転写機構を経た第3の転写フィルムを物品に転写して画像形成体付き物品を形成する画像形成体付き物品形成機構と、
を備えることを特徴とする画像形成体付き物品製造方法である。
また第13の発明は、
請求項4乃至11のいずれかに記載の方法によって製造された画像形成体。
である。
また第14の発明は、
請求項12に記載の方法によって製造された画像形成体である。
また、第15の発明は、
ベースフィルム上に剥離層が設けられてあり、
前記剥離層上に、多色リボンと、第1彩紋リボンと、彩紋リボンの少なくとも一部に第2転写フィルムが積層した第2彩紋リボンとを備え、
各色リボンの印字スタート位置を検知するレジマークと、
多色リボンにおける印字スタート位置を検知する先頭レジマークと、
を備えていることを特徴とする熱転写フィルムである。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、第1転写層と第2転写層が積層した構造となるため、耐改竄性及び発見容易性能を備える画像形成体製造装置を提供することが可能となる。
また、第2の発明によれば、第2転写層の両面を第1転写層で挟んだ構造となるため、耐改竄性及び発見容易性能を備える画像形成体製造装置を提供することが可能となる。
また、第3の発明によれば、耐改竄性及び発見容易性能を備える画像形成体付き物品製造装置を提供することが可能となる。
また、第4の発明によれば、第1転写層と第2転写層が積層した構造となるため、耐改竄性及び発見容易性能を備える画像形成体を製造することが可能となる。
また、第5の発明によれば、第2転写層の両面を第1転写層で挟んだ構造となるため、耐改竄性及び発見容易性能を備える画像形成体を製造することが可能となる。
また、第6の発明によれば、複数の転写層から形成される画像をカラー表示することができるため耐改竄性及び発見容易性能を備えることが可能となる。
また、第7の発明によれば、ホログラムもしくは回折格子からなる画像とすることによって、耐改竄性及び発見容易性能を備えることが可能となる。
また、第8の発明によれば、第1転写層のうち、前記第2転写層が転写される部分があらかじめ万線および/または彩紋が設けられた画像とすることによって、耐改竄性及び発見容易性能を備えることが可能となる。
また、第9の発明によれば、モアレ模様が発生する画像とすることによって、耐改竄性及び発見容易性能を備えることが可能となる。
また、第10の発明によれば、万線および/または彩紋の少なくとも一方はプロセス4色以外の色で形成されていることによって、耐改竄性及び発見容易性能を備えることが可能となる。
また、第11の発明によれば、第3の転写フィルムは、ホログラムもしくは回折格子からなることによって、耐改竄性及び発見容易性能を備えることが可能となる。
また、第12の発明によれば、耐改竄性及び発見容易性能を備える画像形成体付き物品を製造することが可能となる。
また、第13の発明によれば、耐改竄性及び発見容易性能を備える画像形成体を提供することが可能となる。
また、第14の発明によれば、耐改竄性及び発見容易性能を備える画像形成体付き物品を提供することが可能となる。
また、第15の発明によれば、本発明の熱転写フィルムを用いることにより、耐改竄性及び発見容易性能を備える画像形成体や画像形成体付き物品を提供することが可能となる。
また、本発明によれば、においてそれを所有している人が真の所有者かどうか識別を行う審査官に対して、物体色にて有色表示された画像と、同じ画像が、彩紋等で構成された2つの画像層の間に挟まれた形で設けられていることより、前記2種類の画像と本人を目視にて見比べることで容易に本人確認が出来る。また、前記2つの画像層の間に挟まれた画像がホログラムまたは回折格子にて設けられることで、前記同様2つの画像層と識別できることより、より容易に判別効果が得られると同時に改竄防止効果も得られた。さらに、前記2つの画像が万線もしくは網点となっており、2つの画像を重ねることでモアレ模様が発生できることより一層の改竄効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の製造装置の構成を示した概略図である。
【図2】本発明の画像形成体付き物品の一例を示した概略図および断面図である。
【図3】本発明の製造装置に設置する熱転写リボンの一例を示した平面図である。
【図4】本発明の製造装置に設置する熱転写リボンの一例を示した平面図である
【図5】本発明の製造装置に設置する熱転写リボンの一例を示した平面図である。
【図6】本発明の画像形成体の一例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明における画像形成体付き物品の製造装置を概略的に示した模式図である。熱転写記録印字部となるサーマルヘッド15にて、第2転写フィルム12の熱転写層を第1転写フィルム11の熱転写層側に印字され、次にサーマルヘッド14にて、第1転写フィルム11の熱転写層を第3転写フィルム13の熱転写層側に印字し、最後に前記印字された画像をヒートロール16にて物品17に転写される機構となっている。
このとき、あらかじめ第3転写フィルム13の転写層側に第1転写フィルム11で画像を印字し、その上に第2転写フィルム12の転写層が印字された第1転写フィルム11を印字することで、第2転写フィルム12の画像の上下層を第1転写フィルム11の画像で挟まれた構成で第3の転写フィルム13に印字されることになる。なお、ヒートロール16及び物品17を装置から外して、第3転写フィルム13上に転写された第1転写フィルムおよび転写された第2転写フィルムが形成された画像形成体の製造装置としても良い。
【0015】
このように図1の製造装置1にて得られた印字画像は、図2に示した画像形成体の一例を示した概略図および断面図のように、少なくとも一つ以上の第2転写層から形成された第2転写フィルム印字画像22の上下層に少なくとも一つ以上の第2転写層から形成された第1転写フィルム印字画像21が設けられた構成となり、そのため個人情報画像である第2転写フィルム印字画像22を改竄しようとする場合、その前後の層も削れてしまうため、耐改竄性に対して非常に有効である。図1に示すような製造装置1において、第1転写フィルム11および第2転写フィルム12の熱転写リボンが複数色の場合、同じ熱転写フィルムを同じヘッドで印字すると熱転写フィルムの伸縮が少ないため、各色の印字見当が精度良く出力され、改竄を困難にする。
このとき、第2転写フィルム印字画像22がホログラムまたは回折格子で形成された転写フィルムを用いた場合、物体色の有色画像である第1転写フィルム印字画像21との判別が容易であることより、さらに耐改竄性に対して有効となる。
【0016】
図3は、図1における第1転写フィルム11を構成する熱転写リボンの一例を示した平面図で、第1転写フィルム3は、ベースフィルム上に剥離層が設けられてあり、さらにその上に各色の印字スタート位置を検知するレジマーク35および多色リボン構成における印字スタート位置を検知する先頭レジマーク36、熱転写Yリボン31、熱転写Mリボン32、熱転写Cリボン33、熱転写リボンBk34に加えて、第2転写フィルム印字部37および熱転写彩紋リボン38で構成されている。このうち、個人認証画像を印字するためのフィルムとして、熱転写Yリボン31、熱転写Mリボン32、熱転写Cリボン33および熱転写Bkリボン34を用い、さらに第1転写フィルムを直接第3印字フィルムに印字する熱転写彩紋リボン38および第2転写フィルムを印字させる第2転写フィルム印字部37が設けられている。
前記熱転写彩紋リボン38は、緑色や紫色等の黄色、赤色、青色、黒色のいわゆるプロセス4色以外の色で構成されている方が改竄防止の点から好ましく、あらかじめ彩紋を形成されていなくとも、サーマルヘッド印字で彩紋を形成しても良い。さらに、他の熱転写リボン31、32、33、34をサーマルヘッドで印字して彩紋形成することで代用しても良い。この場合第2転写フィルム印字部37の彩紋をプロセス4色以外の色で構成するのが好ましい。
【0017】
図4は、本発明の情報記録装置に設置する第1転写フィルムである熱転写リボンの一例を示した平面図であり、第1転写フィルムの印字画像42が熱転写万線リボン47上に印字されている。あらかじめ第3転写フィルム上に熱転写万線リボン48を印字し、その上に前記第1転写フィルム印字画像42が印字されてある熱転写万線リボン47を印字する。このとき、熱転写万線リボン47および48は、お互いを重ねることでモアレ模様が出現するような構成にするとより一層の改竄効果が得られる。
【0018】
図5は、本発明の情報記録装置に設置する熱転写リボンの一例を示した平面図であり、情報記録装置に設置する熱転写リボンに万線パターンを採用して、モアレ模様56を出現させている。モアレの発生方法は、第1万線模様57と第2万線模様58を文字や記号になるように交差させて表現するか、万線の一部を半分ずらして文字や記号を形成する等の公知の方法で行うことができ、第2万線模様58はサーマルヘッド印字により描画することも可能で、これにより1枚毎に異なるモアレ模様を発生させることもできる。また、万線パターン以外にも網点パターンを採用することもでき、さらにそれらを組み合わせてより一層の改竄効果を得ることも可能である。
【0019】
図6は、本発明の画像形成体の一例を示した概略図である。
【0020】
図3、4の第1転写フィルムを使った場合、第1転写フィルム印字画像61は、第3転写フィルムの保護層?上に第2サーマルにおいて熱転写Yリボン31、熱転写Mリボン32、熱転写Cリボン33、34熱転写Bkリボンをそれぞれ熱転写して、有色画像を表示する。また、第3転写フィルムの保護層?上の別の場所には、熱転写彩紋リボン38を熱転写する。
第2転写フィルム印字部37に第2転写フィルム印字画像42を第1サーマル15にて熱転写する。←先に印字するか戻ってから印字するか?
その後、熱転写彩紋リボン38が熱転写された部分に、第1サーマル14にて第2転写フィルム印字部37と第2転写フィルム印字画像42が積層した部分を熱転写にて重ね合わせる。そうすると37と38によってモアレ66が表示される。
【0021】
前記で説明した万線を用いたモアレ模様66の間に第2転写フィルム印字画像62が形成されており、第1転写フィルム印字画像61の認証画像と第2転写フィルム印字画像62の認証画像および本人を見比べることで本人認証が可能となり、改竄防止効果が高い画像形成体および画像形成体付き物品6が得られる。
【0022】
画像形成体付き物品2、6の大きさは、特に限定は無いが、携帯が容易なサイズであることが好ましく、オリンピック等のADカード(Accreditation Card)の約95×150mm、パスポートのデータページの約125×88mm、クレジットカードの約86×54mmサイズが一般的に使用されているサイズである。また、用途についても必ずしも限定されない。代表例としてはパスポート、査証、遊具あるいは各種のカード類、等が挙げられる。
【0023】
物品24の基材は、支持体としては、例えば紙、コート紙、および合成紙(ポリプロピレン、ポリスチレンもしくは、それらを紙と貼り合わせた複合材料)等の各種紙類、塩化ビニル系樹脂シート、ポリエチレンテレフタレートベースフィルム、透明のポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートベースフィルム等の各種プラスチックフィルムないしシート、各種の金属で形成されたフィルムないしシート、各種のセラミックス類で形成されたフィルムないしシート等を挙げることが出来る。これらの色は、単色や2色以上の複数色の組合せでも良く、絵柄、図柄を備えているなど特に限定する必要はないが、後の工程で形成される個人認証情報の鮮明性を高めるために、白色顔料例えばチタンホワイト、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム等が添加されているのが好ましい。支持体の厚みは、通常20〜1000μm、好ましくは50〜800μmである。
【0024】
第1転写フィルム印字画像21、61は、画像形成体または画像形成体付き物品を所有している人が本人自身であり、その身分を証するかどうかを審査官が判断するために設けられる第1個人認証画像で、本人を特定できる、顔写真、指紋、サイン等を設けることができる。さらに顔写真の場合、カラーおよび白黒のいずれでも良い。
【0025】
第2転写フィルム印字画像22、42、62は、前記第1転写フィルム印字画像21、61と同様の画像を設ける第2個人認証画像で、審査官の判断材料を増やすと同時に改竄防止効果を向上させる働きがある。その状態は、通常の有色インクによる熱転写リボンの他、回折格子または回折格子状に凹凸を設けた構造体からなる複数のセルによりドット状に表示される。セルは、外光を回折させる方向や角度、明るさ等を制御して階調を複数種類設定することで、観察する角度に応じて、表示画像を変化させることが可能である。
回折格子のパラメータとして、
(1)回折格子の空間周波数(格子線のピッチ:単位長さ当たりの格子線の本数)
(2)回折格子の方向(格子線の方向)
(3)回折格子の描画領域(回折格子セルの配置)
の3つがあり、上記(1)に応じて定点に対してその回折格子パターンが光って見える色が変化し、
上記(2)に応じて、その回折格子セルが光って見える方向が変化し、
上記(3)に応じて、表示画像(個人認証情報等)が決定される。
第2個人認証画像の内部に回折格子からなる複数のセルをドット状に配列して、セル(画像)毎にこれらのパラメータを様々に変化させた回折格子を形成することで指向性のある光沢を有する表示画像を構成することが出来る。また、上記以外にも各セルの形状や厚さ、材料、大きさ等を変化させることによって階調を複数種類設定したセルを作製し、各セルを用途や目的、表示する個人認証情報によって適宜選択して、複数配置して個人認証情報を表示することも出来る。
【0026】
回折格子のセルに用いる材料は、成形性が良好で、ムラが生じ難く、明るい再生像が得られ、基材や保護層や接着層との接着性が良好である樹脂が良い。例えばポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレートなどの熱硬化性樹脂あるいはこれらの混合物、さらにはラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料などが使用可能であり、また、上記以外のものでも、回折格子を形成可能な安定性を有する材料であれば使用可能である。そして、上記材料を用いて可視光線を透過する可視光線透過層とするのがさらに好ましい。
【0027】
セルの形状は特に限定しないが、可視面側の形状が円や楕円、三角形や四角形などの多角形からなる立方体や、円錐形や四角錐などでも良い。また可視面側の表面は平滑でも良いし、曲面や凸型構造があっても良く、選択的には変形または破壊しても良い。必要な階調を得るために適宜選択すれば良い。また、凸型構造については円柱形状のもの、円錐形状のもの、三角や五画または六画錘等の多角錘状のもの、円柱に円錐を接合した形状のもの、角柱に角錐を接合した形状のもののほか、半球、半楕円球、弾丸型、お椀型、あるいは半ラグビーボール形状のように、厳密には半楕円体ではない半球体であっても良い。凹型構造となる円錐や角錐、紡錘等の凹部を形成したものであっても良く、また、円筒錘状、角筒状等の凹部を形成したものであっても上記実施の携帯と同様の機能及び効果を発揮出来る。
【0028】
セルの厚みについては、0.1〜2.0μmで目視可能な画像を再現することが出来る。複数配列されたセルの厚みが均一でも良いし、セル毎に厚みが異なっていても良い。転写箔として画像形成体に設けた場合でも第2個人認証表示部のみを削ることによる改竄は非常に困難である。
【0029】
セル間の距離については、隣接するセル同士の距離が遠すぎると個人認証情報が正確に表示出来なくなってしまう。そこで隣接するセル同士は300μm以下にしておくのが好ましい。一方セル同士の距離が近すぎると表示された個人認証情報に干渉ムラや視認不具合が発生してしまう可能性がある。セルの材質によって適宜調整する必要がある。
【0030】
また、第2個人認証画像を表示させるために、回折格子を出現させる必要がある。その方法として、セルに高屈折率層を設ける方法がある。可視光線透過層の屈折率よりも高い材料を設けることで、回折格子が出現出来る。高屈折率層の材料に可視光線を透過する材料を使用することで、その下層にある画像も目視で確認することが出来る。
【0031】
前記高屈折率層は、金属酸化物、金属間化合物、樹脂材料もしくは金属酸化物や金属間化合物または樹脂材料を微粒子化して樹脂材料に分散させたものを、単層もしくは複数層設けることで構成される。
【0032】
高屈折率層に用いる材料として具体的には、セルに用いた材料より屈折率の高い透明材料であって、例えばSb2S3、Fe2O3、TiO2、CdS、CeO2、ZnS、PbCl2、CdO、Sb2O3、WO3、SiO2、Si2O3、In2O3、PbO、Ta2O3、ZnO、ZrO2、Cd2O3、Al2O3、Ge等のような無機材料等が使用可能である。さらに透明薄膜層は複数の層を重ね合わせて形成しても良く、異なる屈折率の層の組合せ、高屈折率の層と低屈折率の層とを交互に積層した多層膜としても良い。
【0033】
また、このような高屈折率層の形成する方法としては、真空蒸着法の他にスパッタリング法、イオンプレーティング法等の成膜手段が適用可能であり、膜厚としては10nm〜1000nmの範囲にあることが好ましい。また透明性薄膜層としては、TiO2等の高屈折率粉末を樹脂などの中に分散し、レリーフ形成層との屈折率差を0.2以上としたものでも良い。この場合には、一般的なコーティング法で塗膜形成できるため、上記膜厚に限定されるものではない。
【0034】
また、第2個人認証表示部に個人認証情報を表示させるために、回折格子を出現させる他の方法として、反射層を設ける方法がある。反射層としてAl、Sn、Ni、Co、Cr、Fe、Ag、Auといったような金属を非連続的な薄膜として形成したものでも良い。
【0035】
反射層や高屈折率層を用いて回折格子を出現させるときに、第2個人認証表示部13の下の情報が目視できることが好ましい。そこで、第2個人認証表示部の回折格子を出現させかつその下層にある基材や名前等の個人認証情報を目視で確認出来る方法として、金属光沢層をハーフミラー化する方法がある。例えばアルミニウムの場合、膜厚が20〜40nm程度の層を設けた場合、角度により金属光沢を有するが、他の角度では下地が透過して見える。このような方法で第2個人認証表示部の回折格子を出現させる層を設けても良い。
【0036】
第2個人認証表示部の回折格子を出現させ、なおかつその下層にある名前等の個人情報画像を目視で確認出来る方法として、金属光沢層をディメタライズする方法がある。アミ点状もしくは万線状に金属光沢層の金属を除去することで、第2個人認証表示部の回折格子が視認できかつ、その下層にある名前等の個人情報画像も目視確認出来る。
【0037】
第2個人認証表示部の回折格子を出現させる同様の方法にて、回折格子層17、67、77、117を出現させることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、パスポートや査証などの冊子または、カード等の画像形成体付き物品上に個人特定の要である顔画像や指紋を印刷・印字・描画する画像形成体および画像形成体つき物品に係わるものであり、特に正当な所有者の顔や指紋の画像といった画像情報などの個人認証情報を、回折格子を設けたセルを複数配置して構成し、その上下層に彩紋や万線模様を施した有色層を設けることにより、偽造や改竄を困難にし、さらに個人識別を行う審査官に対してより不正行為があるものを判別し易くし、より精度良く認証ができる。
【符号の説明】
【0039】
1 製造装置
2、6 画像形成体付き物品
3、4、11 第1転写フィルム
12 第2転写フィルム
13、23 第3転写フィルム
14、15 サーマルヘッド
16 ヒートロール
17 物品
21、61 第1転写フィルム印字画像
22、42、62 第2転写フィルム印字画像
23 第3転写フィルム
24 物品基材
31 熱転写Yリボン
32 熱転写Mリボン
33 熱転写Cリボン
34 熱転写Bkリボン
35、45 レジマーク
36 先頭レジマーク
37 第2転写フィルム印字部
38 熱転写彩紋リボン
47、48 熱転写万線リボン
56、66 モアレ模様
57 万線模様1
58 万線模様2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第3の転写フィルムの転写層上に第1転写層と、第1の転写フィルム上の少なくとも一部に、第2の転写フィルムの少なくとも一部が積層された複層転写層を有する画像形成体の製造装置であって、
少なくとも2つの熱転写印字記録部を有し、
前記情報記録装置に設置されている熱転写印字記録部と少なくとも3つの転写フィルム設置部を有し、
第1の転写フィルム上の少なくとも一部に、第2の転写フィルムの少なくとも一部が転写されて、第2転写層を備えた複層転写層を形成する第1間接転写機構と、
さらに第3の転写フィルムの転写層上に、第1の転写フィルムの少なくとも一部を転写して第1転写層を形成するとともに、前記複層転写層の少なくとも一部を転写する第2間接転写機構と、
を少なくとも備えることを特徴とする画像形成体製造装置。
【請求項2】
前記第2間接転写機構は、第3の転写フィルム上に転写された前記第1転写層上に前記複層転写層を転写する転写層積層機構をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成体製造装置。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の画像形成体製造装置に、
前記第2間接転写機構を経た第3の転写フィルムを物品に転写して画像形成体付き物品を形成する画像形成体付き物品形成機構と、
を備えることを特徴とする画像形成体付き物品製造装置。
【請求項4】
少なくとも第3の転写フィルム上に第1転写層と、第1の転写フィルム上の少なくとも一部に、第2の転写フィルムの少なくとも一部が積層された複層転写層を有する画像形成体の製造方法であって、
少なくとも2つの熱転写印字記録部を有し、
前記情報記録装置に設置されている熱転写印字記録部と少なくとも3つの転写フィルム設置部を有し、
第1の転写フィルム上の少なくとも一部に、第2の転写フィルムの少なくとも一部が転写されて、第2転写層を備えた複層転写層を形成する第1間接転写工程と、
さらに第3の転写フィルムの転写層上に、第1の転写フィルムの少なくとも一部を転写して第1転写層を形成するとともに、前記複層転写層の少なくとも一部を転写する第2間接転写工程と、
を少なくとも備えることを特徴とする画像形成体製造方法。
【請求項5】
前記第2間接転写工程は、第3の転写フィルム上に転写された前記第1転写層上に前記複層転写層を転写する転写層積層工程をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の画像形成体製造方法。
【請求項6】
第1の転写フィルムおよび/または第2の転写フィルムが2色以上のカラーリボンからなることを特徴とする請求項4乃至5のいずれかに記載の画像形成体の製造方法。
【請求項7】
第2の転写フィルムおよび/または第1の転写フィルムがホログラムもしくは回折格子からなることを特徴とする請求項4乃至5のいずれかに記載の画像形成体の製造方法。
【請求項8】
前記第1転写層のうち、前記第2転写層が転写される部分があらかじめ万線および/または彩紋が設けられてなることを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載の画像形成体の製造方法。
【請求項9】
第3の転写フィルムの転写層上に転写した第1転写層にて、万線および/または彩紋を形成し、その上に万線および/または彩紋が設けられてなる第1の転写フィルムの転写層を重ねることでモアレ模様が発生することを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の画像形成体の製造方法。
【請求項10】
前記万線および/または彩紋の少なくとも一方はプロセス4色以外の色で形成されてなることを特徴とする請求項8乃至9記載の画像形成体の製造方法。
【請求項11】
前記第3の転写フィルムは、ホログラムもしくは回折格子からなることを特徴とする請求項4乃至10記載の画像形成体の製造方法。
【請求項12】
請求項4乃至11のいずれかに記載の画像形成体の製造方法に、
前記第2間接転写機構を経た第3の転写フィルムを物品に転写して画像形成体付き物品を形成する画像形成体付き物品形成機構と、
を備えることを特徴とする画像形成体付き物品製造方法。
【請求項13】
請求項4乃至11のいずれかに記載の方法によって製造された画像形成体。
【請求項14】
請求項12に記載の方法によって製造された画像形成体。
【請求項15】
ベースフィルム上に剥離層が設けられてあり、
前記剥離層上に、多色リボンと、第1彩紋リボンと、彩紋リボンの少なくとも一部に第2転写フィルムが積層した第2彩紋リボンとを備え、
各色リボンの印字スタート位置を検知するレジマークと、
多色リボンにおける印字スタート位置を検知する先頭レジマークと、
を備えていることを特徴とする熱転写フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−230390(P2011−230390A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103239(P2010−103239)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】