画像形成体の製造方法、画像形成体及び個人認証媒体
【課題】高品質の画質の画像を表示し、かつ改竄が困難な画像形成体の製造方法及び、その画像形成体を転写して得られる個人認証媒体を提供する。
【解決手段】所有者に関する情報を画像として視認可能に表示した所有者情報表示部を備える複数階調の画像形成体300を、2種以上の回折効率の異なる感熱ホログラムリボンを用い、画像セル毎にそれぞれの印字面積を変えて記録し、作製する。
【解決手段】所有者に関する情報を画像として視認可能に表示した所有者情報表示部を備える複数階調の画像形成体300を、2種以上の回折効率の異なる感熱ホログラムリボンを用い、画像セル毎にそれぞれの印字面積を変えて記録し、作製する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスポートや査証などの冊子または、カード等の個人認証媒体上に個人特定の要となる顔画像や指紋を印刷・印字・描画する画像形成体に係わり、特に、正等な所有者の顔などの個人識別情報を、回折格子または回折格子状に凹凸を設けた構造体とオンデマンド印刷技術を組み合わせることにより、個人識別情報の形成を容易にし、個人認証を実施する審査官が識別しやすくなり、かつ偽造および改竄が困難となること、もしくは審査官が摘発しやすくなる画像形成体の製造方法、画像形成体及び個人認証媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像を使用している。例えば、パスポートでは、従来、顔画像を焼き付けた印画紙を冊子体に貼り付けていた。しかしながら、そのようなパスポートには、写真印画の貼り替えによる改竄のおそれがある。
【0003】
このような理由で、近年では、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現する傾向にある。この画像再現方法としては、昇華性(熱移行性)染料や、顔料を分散させた樹脂型溶融タイプやワックス溶融タイプを用いた転写リボンによる感熱転写記録法、あるいは電子写真法などが検討されている。
【0004】
パスポートへの画像再現方法としては、上記方式以外に、インクジェットプリンターによる記録法や(例えば、特許文献1参照)、CO2もしくはYAGレーザーおよび感熱発色剤を使用したレーザー印字記録法(例えば、特許文献2参照)、さらには基材中に存在する炭素(C)を利用して基材の深さ方向にも印字記録するレーザーエングレービング印字記録法(例えば、特許文献3参照)などがある。
【0005】
さらに、この種の個人認識データの入った画像表示体としては、画像データに基づいて形成された画像パターンをポリ塩化ビニルなどのカード基材上に備えたもの、あるいは上記画像パターンに加えてホログラムや回折格子あるいは多層干渉を用いた光学的薄膜(光学設計によりカラーシフト等の効果が得られる)を用いることによる画像に代表されるいわゆるOVD(Optical Variable Device)画像を具備するもの等が知られている。
【0006】
これらホログラムや回折格子のOVD技術は、高度な製造技術を要し、複製の難しいことから有効な偽造防止手段としてクレジットカード、IDカード、プリペイドカード等のカード類に利用されてきた。さらには、その装飾性の高さから、包装材、書籍、パンフレット、POP等への利用も少なくない。これらOVDを物品に貼着するための手段として従来より転写箔を用いて転写形成するといった方法が採られている。この種の転写は、支持体上に剥離層、ホログラムや回折格子の画像パターンを形成するレリーフ層と、公知の薄膜形成手段により形成される反射層、接着層を順次接着してなる構成のものが知られている。これら、転写箔に刻まれたOVDパターン(ホログラムおよび回折格子パターン)は、微小な凹凸パターンをニッケル性のプレス版に複製し、レリーフ層に過熱押圧するという周知の方法により大量複製が行われる。
【0007】
また、上記反射層は屈折率の異なる透明な物質を真空蒸着法等の公知の薄膜形成手段により形成することで(以下透明薄膜層と呼ぶ)、透明ホログラムや透明回折格子形成体となることは、公知の技術である。この場合、レリーフ層と透明薄膜層との間の屈折率差が大きい程、反射率も大きくなることは、光学的見地からも明らかである。但し、ここで一般的には、
(レリーフ層の屈折率)<(透明薄膜層の屈折率)
の関係がある。
【0008】
この様にして得られたホログラムまたは回折格子構造物は、偽造防止手段としてクレジットカード、キャッシュカード、会員証カード、社員証カード、プリペイドカード、運転免許証等の各種カード類、商品券、ギフト券、株券等の各種紙券類や申込用紙、領収書、複写伝票等の各種帳票類や、パスポート、通帳、年金手帳等の各種冊子類の他、本や手帳などの表紙やパネル等のディスプレイ用途等の一部または全体に貼着して使用されている。尚、本発明で述べている全体とは、概念的な意味であり、柄、パターン等を問わず、スポット状、ストライプ状、格子上に貼着されたものや、定型、不定形の網点状のドットで貼着されたものも含まれる。
【0009】
このようなOVD転写箔は偽造防止効果としては、充分な機能を果たすが、パスポートの様に顔写真などの画像形成後に該画像上にOVD転写層を熱的に転写して形成しているため、偽造技術の発達した現在では何らかの手法により転写層をいったん取り去り、画像データ等の改竄を行った後に改めてOVD転写箔を載せるといったことが行われる可能性もでてきた。
【0010】
さらに、盗難されたパスポート等の認証媒体の顔写真と顔の形状・雰囲気が似ている人を選定して印字写真を顔の上から貼ることで、画像データの改竄が行われる可能性もある。
【0011】
また、顔写真などの画像情報を形成する手段としての昇華転写方式、熱溶融性の転写リボン方式あるいは電子写真方式などのプリンタは、昨今では一般に広く普及している状況を考慮すると、画像形成部を取り除いた後の領域に新たに画像を形成することは、必ずしも困難とは、言いきれなくなりつつある。
【0012】
上記のような問題を解決すべく、顔写真等の個人を特定する情報を複数個入れる方法が考えられている。その一方法として、顔写真などの画像情報をホログラムまたは回折格子等で形成するといった、ホログラムリボンを用いた直接熱転写方式が知られている(例えば特許文献4参照)。これにより、カラー画像による顔写真等の改竄と同時にホログラム画像の改竄も行わなければならなくなるため、より改竄を困難にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−226740号公報
【特許文献2】特開昭49−131142号公報
【特許文献3】特開2006−123174号公報
【特許文献4】特開平10−049647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、ホログラムリボンを用いた直接熱転写方式による画像形成は、精細な画像の形成が困難であり、また、ホログラムリボンはインクリボンに比べて温度検知の性能が劣るため、従来のサーマルヘッド印字技術を用いて階調のついた画像を表現することは非常に困難である。
【0015】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされた発明であり、高セキュリティ性を必要とされる画像形成体、例えばパスポートや査証、あるいは各種のカード類、等に対して、偽造や改竄あるいは変造に対する予防性能や、万一それらの不正が為された場合でも、被疑不製品を、観察などによって容易に発見することが可能な、高品質の画像形成体の製造方法、及びその画像形成体を転写して得られる個人認証媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、透明基材の少なくとも一方の面に所有者に関する情報を画像として視認可能に表示した所有者情報表示部を備える複数階調の画像形成体の製造方法であって、
前記所有者情報表示部はドット状に形成された複数の画像セルを備え、
前記複数の画像セルは、前記所有者に関する情報の画像を構成するOVD層と、当該OVD層に積層する反射層と接着層と、を備え、
前記OVD層は、2種以上の回折効率の異なる感熱ホログラムリボンを熱転写して設けられ、
前記感熱ホログラムリボンは、ホログラムまたは回折格子の微細凹凸から形成され、
前記画像形成体が少なくとも、
(1)2種以上の回折効率の異なる感熱ホログラムリボンを、特定の周期で熱転写の流れ方向に並べて配置する感熱ホログラムリボン作製工程と、
(2)階調がついた画像を読み込む画像読み取り工程と、
(3)前記階調がついた画像の階調に応じて2種以上の感熱ホログラムリボンを、画像セル毎に印字面積を変えて記録する工程と、
を含む工程を経て作製されることを特徴とする画像形成体の製造方法である。
【0017】
請求項2に係る発明は、前記画像形成体の前記製造工程(3)において、前記階調がついた画像を階調に従って複数の階層に分け、前記分けた階層の数と同数の異なる回折効率をもつ感熱ホログラムリボンを用い、各々の階層において、階層に対応する回折効率をもつ感熱ホログラムリボンを、画像セル毎に印字面積を変えて階調を表現して記録する工程を含んで作製されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成体の製造方法である。
【0018】
請求項3に係る発明は、前記感熱ホログラムリボンの回折効率は、微細凹凸の深さによって制御されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成体の製造方法である。
【0019】
請求項4に係る発明は、前記感熱ホログラムリボンの回折効率は、前記OVD層に積層する反射層の厚みによって制御されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成体の製造方法である。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項3又は4に記載の製造方法を用いて作成した画像形成体である。
【0021】
請求項6に係る発明は、前記所有者情報表示部に表示した画像と同じ外観の画像を印刷した所有者情報印刷部を備え、前記所有者情報表示部及び前記所有者情報印刷部は、同一の方向から視認可能であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成体である。
【0022】
請求項7に係る発明は、前記所有者情報印刷層に印刷した画像の面積は、前記所有者情報表示部に表示した画像の面積に対して0.1〜30倍の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成体である。
【0023】
請求項8に係る発明は、請求項5乃至7の何れか1項に記載の画像形成体を被転写基材に転写して形成された個人認証媒体である。
【0024】
請求項9に係る発明は、前記被転写基材の前記画像形成体を転写する面に、予め細線を組み合わせた図柄である彩紋のパターンが印刷されていることを特徴とする請求項8に記載の個人認証媒体である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1から5に記載した発明によれば、ホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成された、所有者に関する個別情報を有する画像形成体を提供することが可能となる。これに加え、偽造などにより個別情報の画像を形成することが困難となるため、セキュリティ性を向上させることが可能となる。また、2種以上の回折効率の異なる感熱ホログラムリボンを用いて複数の階調がついた画像を形成することで、従来のホログラムリボンを用いた印字では表現することが難しかった高品質の画像を形成することが可能となる。
【0026】
請求項6に記載した発明によれば、画像形成体を所有している人が、画像形成体の真の所有者か否かの識別を行う審査官に対し、所有者情報印刷層により表示された画像と、所有者情報表示部に表示した画像が、同一人物の個人認証情報から選択される。このため、二つの画像を目視によって見比べることで、本人確認を容易に行うことが可能となり、被疑不正品が容易に発見可能となる発見容易性能を発揮することが可能となる。
【0027】
請求項7に記載した発明によれば、請求項5に記載した所有者情報印刷層の画像の面積を、所有者情報表示部に表示した画像の面積に対して、0.1〜30倍の面積とすることによって、用途に応じそれぞれの画像の面積を変更することが可能となる。このため、用途に応じて二つの画像を容易に比較して認証することが可能となる。
【0028】
請求項8に記載した発明によれば、ホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成された、所有者に関する個別情報を有する個人認証媒体を提供することが可能となる。
【0029】
請求項9に記載した発明によれば、被転写基材の画像形成体を転写する面に、予め偽造防止用の彩紋パターンを印刷しておくことで、より偽造が困難な個人認証媒体を提供することが可能となる。これは、偽造を行おうとするものが、本発明のプロセスである中間転写方式ではなく、被転写基材側にホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成された所有者に関する図柄を直接転写すると、被転写基材が有する凹凸の影響が現れるため、転写前にこの凹凸をなくすための処理が必要となるが、予め偽造防止用の彩紋パターンを印刷しておく処理を行うことにより、彩紋パターンの外観が正規品と異なったものとなり、偽造品であることを容易に判別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す個人認証媒体における画像情報表示部の一部分を拡大して示す平面図。
【図3】図2に示す画像情報表示部のI−I線に沿った断面図。
【図4】図1に示す画像情報表示部の他の一部を拡大して示す平面図。
【図5】図4に示す画像情報表示部のII−II線に沿った断面図。
【図6】図1乃至図5に示す画像情報表示部の製造に使用可能な感熱ホログラムリボンの一例を概略的に示す平面図。
【図7】図6に示す感熱ホログラムリボンの一例を概略的に示す断面図。
【図8】図6に示す感熱ホログラムリボンの他の一例を概略的に示す断面図。
【図9】図6乃至図8に示す感熱ホログラムリボンを用いて製造可能な画像形成体の一例を概略的に示す断面図。
【図10】変形例に係る個人認証媒体における画像情報表示部の一部を拡大して示す断面図。
【図11】本発明における画像形成体を製造する工程の一例を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様または類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図である。
【0033】
図1に示す個人認証媒体100は、パスポートなどの冊子体であり、開いた状態を示している。
【0034】
図1において、個人認証媒体100は、所有者情報表示部1と所有者情報印刷部2とを備えている。所有者情報表示部1は、ホログラム及び/又は回折格子が表示する画像である。所有者情報表示部1は、後で詳述するように、例えばサーマルヘッドを用いた熱転写記録と、ホットスタンプ又は熱ロールを用いた熱転写記録とをこの順に行うことにより形成する。
【0035】
所有者情報印刷部2は、所有者情報表示部1に表示した画像、すなわち、所有者の顔写真と同じ外観の画像を、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。
【0036】
所有者情報印刷部2は、例えば、染料及び顔料で構成することができる。この場合、所有者情報印刷部2の形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、またはそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、所有者情報印刷部2は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザービームで描画することにより形成することができる。また、これら方法の組み合わせを利用することも可能である。所有者情報印刷部2の少なくとも一部分は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成しても、或いは印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0037】
所有者情報表示部1と所有者情報印刷部2は、同一人物の顔画像を含んでおり、所有者情報印刷部2の画像の面積は所有者情報表示部1に表示した画像の面積に対して、0.1〜30倍の範囲内に設定されている。
【0038】
これは、以下に記載する理由による。
【0039】
例えば、所有者情報印刷部2に印刷した画像のうち、所有者の顔写真と同じ外観の画像(以下、「印刷顔写真画像」と記載する)が、カラーの顔写真である場合、印刷顔写真画像の解像度としては、175〔線/インチ〕の網点で表現するのが一般的である。これは、一般に175〔線/インチ〕の網点よりも細かい解像度にしても、目視では判断がつかないためである。
【0040】
一方、所有者情報表示部1に表示した画像(以下、「表示顔写真画像」と記載する)を構成する複数の画像セル12a,12a’,12b,12b’は、最小で5〔μm〕の円、または、四角状のサイズが必要である。この最小サイズの画像セル12a,12a’,12b,12b’で所有者の顔写真を形成した場合、175〔線/インチ〕の解像度である印刷顔写真の大きさに対して、1/30の大きさの表示顔写真画像が得られる。
【0041】
そして、1/30の大きさの表示顔写真画像の場合、拡大鏡等で見ないと印刷顔写真画像との比較はできないが、表示顔写真画像を、1/30未満の大きさの画像とした場合、印刷顔写真画像を構成するために必要な画像セル12a,12a’,12b,12b’の大きさが小さくなりすぎ、回折格子として十分な機能が得られなくなる。
【0042】
また、回折格子として機能する最小サイズ(5〔μm〕)の画像セル12a,12a’,12b,12b’を用いても、印刷顔写真画像と同じ画素数の画像を表現することができないため、印刷顔写真画像と表示顔写真画像との画像比較が困難となる。
【0043】
一方、印刷顔写真画像の大きさに対して、表示顔写真画像が10倍を超える大きさとなると、大きすぎるため所有者の情報である個人認証情報が正確に再現できなくなってしまい、印刷顔写真画像と表示顔写真画像との画像比較が困難になる。そのため、印刷顔写真画像と表示顔写真画像との比率として、0.1:1から30:1の範囲が好調である。これは、上述したように、範囲外の比率差があると、印刷顔写真画像と表示顔写真画像の画像比較が困難になり、個人識別の精度が低下するためである。なお、印刷顔写真画像と表示顔写真画像の大きさは、縦横同一比率で拡大・縮小されていてもよい。
【0044】
次に、個人認証媒体100の構造について、図2乃至図5を参照しながら説明する。
【0045】
図2は、図1に示す個人認証媒体100における所有者情報表示部1の一部分を拡大して示す平面図である。図3は、図2に示す所有者情報表示部1のI−I線に沿った断面図である。図4は、図1に示す所有者情報表示部1の他の一部を拡大して示す平面図である。図5は、図4に示す所有者情報表示部1のII−II線に沿った断面図である。
【0046】
画像セル12a,12a’,12b,12b’は、ホログラム及び/または回折光を含んでいる。画像セル12a,12a’,12b,12b’は、図2乃至図5に示すように、所有者情報表示部1に対応したパターン形状を有している。画像セル12a,12a’,12b,12b’の構造及び形成方法については、後で詳述する。
【0047】
剥離保護層13は、画像セル12a,12a’,12b,12b’と基材11とを被覆している。剥離保護層13は、光透過性を有しており、典型的には透明である。剥離保護層13は、例えば樹脂から成る。
【0048】
次に、図6乃至図9を参照しながら、個人認証媒体100の製造方法と画像セル12a,12a’,12b,12b’の構造とを説明する。
【0049】
図6は、図1乃至図5に示す画像情報表示部の製造に使用可能なホログラムリボンの一例を概略的に示す平面図である。図7は、図6に示すホログラムリボンの一例を概略的に示す断面図である。図8は、図6に示すホログラムリボンのほかの一例を概略的に示す断面図である。図9は、図6乃至図8に示すホログラムリボンを用いて製造可能な画像形成体の一例を概略的に示す断面図である。
【0050】
図6乃至図8に示す感熱ホログラムリボン200は、例えば転写リボンである。感熱ホログラムリボン200は支持体21と、支持体21によって剥離可能に支持された転写材層210とを含んでいる。
【0051】
支持体21は、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体21は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体21の転写材層210を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0052】
転写材層210は、剥離層27と微細凹凸形成層24と反射層25と接着層26とを含んでいる。
【0053】
剥離層27は、支持体21上に形成されている。剥離層27は、転写材層210の支持体21からの剥離を安定化すると共に、画像セル12a,12a’,12b,12b’の基材11への接着を促進する役割を果たす。剥離層27は、光透過性を有しており、典型的には透明である。剥離層27は、例えば熱可塑性樹脂により構成されるが、省略することが可能である。
【0054】
微細凹凸形成層24は、剥離層27上に形成されている。微細凹凸形成層24は、回折構造としてホログラム及び回折格子の少なくとも一方を含んでいる。ここでは、微細凹凸形成層24は、表面に回折構造としてレリーフ構造が設けられた透明層である。また、透明層の材料としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂及び熱過疎性樹脂などの樹脂を使用することができる。
【0055】
微細凹凸形成層24の回折構造のパラメータとしては、
(1)回折格子の空間周波数(格子線のピッチ:単位長さ当たりの格子線の本数)
(2)回折格子の方向(格子線の方向)
(3)回折格子の深さ
があり、上記(1)に応じて定点に対してその回折格子パターンが光って見える色が変化し、
上記(2)に応じて、その回折格子セルが光って見える方向が変化し、
上記(3)に応じて、回折格子パターンが光って見える時の光強度(回折効率)が変化する。
【0056】
本発明におけるホログラムリボンは、例えば、図7に示すように、上記(1)及び(2)は同一で上記(3)のみを変化させた微細凹凸形成部H1及びH1’と、H1とは上記(1)のみを変化させた微細凹凸形成部H2及び、H2とは上記(3)のみを変化させた微細凹凸形成部H2’を順に並べた微細凹凸形成層より成る。このとき、微細凹凸形成部H1及びH1’によって、定点で見える色の階調を出し、微細凹凸形成部H2及びH2’によって定点で見える微細凹凸形成部H1とは別の色の階調を表現することが可能となる。上記H1及びH2は高回折効率の微細凹凸形成部であり、H1’及びH2’は低回折効率の微細凹凸形成部である。
【0057】
後述するが、複数の微細凹凸形成部で形成される画像セルはドット状に転写されるため、転写する画像セルのドット径を変化させることで、複数の階調表現が可能となる。また、微細凹凸形成部H1及びH2とは異なる空間周波数を持つ微細凹凸形成部を設け、例えば、定点での色の見え方がR,G,Bの3色になるようにすれば、フルカラーの複数階調画像を得ることも可能となる。
【0058】
反射層25は、微細凹凸形成層24上に形成されている。反射層25は省略することができるが、反射層を設けると回折構造が表示する画像の視認性が向上する。
【0059】
反射層25としては、例えば、透明反射層又は不透明な金属反射層を使用することができる。反射層25は、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって形成することができる。
【0060】
透明反射層としては、例えば微細凹凸形成層24とは屈折率が異なる透明材料からなる層を使用することができる。透明材料からなる透明反射層は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していても良い。後者の場合、透明反射層は繰り返し反射干渉を生じるように設計されていてもよい。この透明材料としては、例えば、ZnS及びTiO2などの透明誘電体を使用することができる。
【0061】
あるいは、透明反射層として、厚さが20nm未満の金属層を使用してもよい。金属層の材料としては、例えばクロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金及び銅などの金属層を使用することができる。
【0062】
本発明におけるホログラムリボンは、例えば、図8に示すように、空間周波数の違う微細凹凸形成部H1及びH2の2種で構成された微細凹凸形成層より成る。図8では、この微細凹凸形成部H1及びH2の各背面には、成膜材料は同じで膜厚のみ異なる反射層25及び反射層25’が設けられている。画像セル12a,12a’,12b,12b’の輝度は、反射層の膜厚で変えることができる。例えば、反射層としてZnSを用いた場合、10nm程度の膜厚と50nm程度の膜厚とでは画像セルの射出輝度に大きな差が出る。このように成膜材料の膜厚を調整することで、定点で見る時の階調を表現することができる。
【0063】
さらに、図7を用いて説明した時と同様に、微細凹凸形成部H1、H2とは異なる空間周波数を持つ微細凹凸形成部を設け、定点での見え方が、例えば、C,M、Yの3色になるようにすれば、フルカラーの複数階調画像を得ることも可能となる。
【0064】
個人認証媒体100の製造においては、例えば、まず、撮像装置を用いて、人物の顔を撮影する。或いは、印画から顔画像を読み取る。これにより、画像情報を電子情報として得る。この顔画像は階調がついている状態で画像処理する。
【0065】
次に、図9に示す積層体310を準備する。この積層体310は、多層構造を有している層であり、支持体31と、その上に順次形成された剥離保護層33及び樹脂層38とを含んでいる。支持体31に形成された多層構造は、下地層を構成している。支持体31は、この下地層を剥離可能に支持している。
【0066】
上記支持体31としては、例えば図7の支持体21について例示したものを使用することができる。
【0067】
剥離保護層33は、剥離保護層33と画像セル12a,12a’,12b,12b’とからなる転写材層210の支持体21からの剥離を安定化すると共に、画像セル12a,12a’,12b,12b’を損傷から保護する役割を果たす。剥離保護層33としては、例えば、剥離層27について例示したものを使用することができる。樹脂層38が剥離層の状態を有している場合は、剥離保護層33を省略することができる。
【0068】
樹脂層38は、光透過性を有しており、典型的には透明である。樹脂層38は、先の下地層に十分な強度を与える役割を示す。樹脂層38の材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂を使用することができる。熱硬化性樹脂を使用すると、この樹脂層38を、画像形成体300を基材11に接着するための接着層として利用することができる。
【0069】
樹脂層38は、回折構造として、ホログラム及び回折格子の少なくとも一方を含んでいてもよい。例えば、樹脂層38の表面には、回折構造としてレリーフ構造が設けられていてもよい。こうすると、この回折構造が表示する画像と画像セル12a,12a’,12b,12b’が表示する画像とを重ねること、または並べることができる。
【0070】
積層体310は、パターニングされた金属反射層、例えば不透明な金属反射層を更に含んでいてもよい。例えば、樹脂層38上に又は剥離保護層33と樹脂層38との間にパターニングされた金属反射層を設け、この金属反射層に、網点、万線、他の図形、又はそれらの組み合わせを表示させてもよい。このようなパターンは、例えば画像形成体300又は個人認証媒体100の真偽判定に利用することができる。
【0071】
次いで、この積層体310上に、先の顔画像に対応したパターンを有している画像セル12a,12a’,12b,12b’を形成する。具体的には、先の画像情報に基づいて図7及び図8に示す支持体21から、転写材層210の一部を画像セル12a,12a’,12b,12b’として、図9に示す樹脂層38上へと熱転写する。上記画像セル12a,12a’,12b,12b’は、接着層36、反射層35、微細凹凸形成層34、剥離層37を含んでいる。
【0072】
上記熱転写は、サーマルヘッドを利用して、転写材層210のうち樹脂層38上へと熱転写される部分が、先の顔画像に対応したパターンを有するように行う。これにより、支持体31と剥離保護層33と樹脂層38と画像セル12a,12a’,12b,12b’とを含んだ画像形成体300を得る。画像形成体300は、例えば転写リボンである。
【0073】
このようにして得られる画像セル12a,12a’,12b,12b’は、サーマルヘッドを利用した熱転写によって形成するので、典型的には図2乃至図5に示すように複数のドット状部から成る。これらドット状部の各中心は、図2および図4に破線で示す仮想的な平面格子の格子点上に位置している。
【0074】
なお、図2および図4において、先の平面格子は正方格子であるが、この平面格子は、三角格子及び矩形格子などの他の格子であってもよい。また、図2及び図4では、隣合ったドット状部は、それらの輪郭が1点で接するように配置されている。すなわち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と等しい。隣合ったドット状部は、互いから離間していてもよい。すなわち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と比較してより小さくてもよい。或いは、隣接したドット状部は、部分的に重なり合っているが如く配置されていてもよい。即ち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と比較してより大きくてもよい。
【0075】
ドット状部の径又はドット状部の最小中心間距離は、例えば0.085乃至0.508mm(約300乃至約50 dots per inch)の範囲内とし、典型的には0.085乃至0.169mm(約300乃至約150 dots per inch)の範囲内とする。この寸法を大きくすると、画像セル12a,12a’,12b,12b’で顔画像を表示する場合、高精細な画像を表示させることが難しくなる。また、この寸法を小さくすると、画像セルのパターン形状の再現性が低下する。
【0076】
また、画像セル12a,12a’,12b,12b’とは異なる空間周波数を持つ画像セルを併せて設ける場合、異なる空間周波数を持つ画像セルは、画像セル12a,12a’,12b,12b’と重ねることまたは並べることができる。例えば、定点での色の見え方がR,G,Bの3色になるよう、異なる空間周波数の画像セルを重ねる/または並べることで、フルカラーの複数階調画像を得ることができる。
【0077】
次に、支持体21上に形成した転写材層のうち、画像セル12a,12a’,12b,12b’として使用する部分を、支持体21から図3及び図5に示す基材11へと熱転写する。この熱転写には、例えばホットスタンプを利用する。なお、ホットスタンプを利用した熱転写の代わりに、熱ロール又はサーマルヘッドを利用した熱転写を行ってもよい。以上のようにして、基材11に画像表示体12を貼り付ける。
【0078】
基材11には、接着強さを高めるために、接着アンカー層を形成しておいてもよい。
【0079】
画像表示体12を基材11に高い接着強さで接着させることが難しい場合、転写材層のうちに画像表示体12として使用する部分は、接着層を介して、基材11へと熱転写してもよい。例えば、接着リボンを使用してもよい。これを使用すると、画像表示体12と基材11との接着強さを高めることができる。なお、この方法によると、図10に示すように、画像表示体12と基材11との間に接着層36が介在した構造が得られる。
【0080】
以上のようにして画像表示体12を基材11に熱転写した後、必要な工程を適宜実施する。このようにして図2乃至図5を参照しながら説明した個人認証媒体100を得る。
【0081】
サーマルヘッドを利用した熱転写によって画像セル12a,12a’,12b,12b’を基材11上に直接形成した場合、基材11の表面粗さなどに起因して、高画質を達成することは難しい。これに対し、上述した方法では、画像セル12a,12a’,12b,12b’は、基材11上に直接形成しない。すなわち、この方法では、まず、剥離保護層33上に形成し、その後、剥離保護層33と共に基材11へと転写する。それゆえ、基材11の表面粗さなどが画質に大きな影響を及ぼすことはない。
【0082】
以上、パスポートとしての個人認証媒体100を例示したが、個人認証媒体100について上述した技術は、他の個人認証媒体に適用することも可能である。例えば、この技術は、査証やIDカードなどの各種カードに適用することも可能である。
【0083】
画像表示体12を貼り付ける基材の材質は、紙以外であってもよい。例えば、画像表示体22を貼り付ける基材は、プラスチック基板、金属基板、セラミックス基板、又はガラス基板であってもよい。
【実施例】
【0084】
<例1:画像形成体D1の製造>
以下のようにして図7に示す感熱ホログラムリボン200を製造した。
【0085】
まず、支持体21として、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この支持体21上に、グラビアコータを用いて、剥離層27と熱可塑性樹脂層とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離層27の材料としてはアクリル樹脂を使用し、熱可塑性樹脂層の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離層27及び熱可塑性樹脂層の乾燥後の膜厚は、それぞれ、0.6μm及び0.7μmであった。
【0086】
次に、ロールエンボス装置を用いた熱プレスにより、熱可塑性樹脂層の表面に、ホログラムとしての回折構造を2種形成した。このとき、形成した2種の回折構造の深さはそれぞれ約60nmと約100nmであり、空間周波数は1000本/mmで同一とし、格子角度も同一とした。
【0087】
次いで、微細凹凸形成層24上に、蒸着法により、硫化亜鉛からなる反射層25を形成した。反射層25の膜厚は50nmとした。
【0088】
更に、この反射層25上に熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂を印刷することにより、接着層26を形成した。接着層26の膜厚は0.6μmとした。
【0089】
以上のようにして図7に示す感熱ホログラムリボン200を完成した。
【0090】
次に、図9に示す画像形成体300を、以下の方法により製造した。
【0091】
まず、支持体31として、厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この支持体31上に、グラビアコータを用いて、剥離保護層33と樹脂層38とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離保護層33の材料としてはアクリル樹脂を使用し、樹脂層38の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離保護層33及び樹脂層38の乾燥後の膜厚は、それぞれ、1.2μm及び1.0μmであった。
【0092】
次に、300dpiのサーマルヘッドを用いた熱転写を行うことにより、画像セル12a,12a’,12b,12b’を、支持体21から樹脂層38上へと転写することにした。このためにまず、所有者情報表示部の顔画像を5階調となるように画像処理を行った。画像セルの転写は、ホログラムリボンのうち、深さ100nmの回折構造が形成されている部分で、印字面積を変えて、元画像の高輝度部分の階調を2段階で表示し、深さ60nmの回折構造が形成されている部分で、印字面積を変えて、元画像の低輝度部分の階調を2段階で表示した。このとき、双方の回折構造の印字面積は、隣合うドット状部が重なり合わない条件で最大となるサイズと、その1/2のサイズの2種である。
【0093】
以上のようにして何も印字されていない部分を含め5段階の階調を持つ画像形成体を完成した。以下、この画像形成体を「画像形成体D1」と呼ぶ。
【0094】
<例2:画像形成体D2の製造>
以下のようにして図8に示す感熱ホログラムリボン200を製造した。
【0095】
まず、支持体21として、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この支持体21上に、グラビアコータを用いて、剥離層27と熱可塑性樹脂層とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離層27の材料としてはアクリル樹脂を使用し、熱可塑性樹脂層の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離層27及び熱可塑性樹脂層の乾燥後の膜厚は、それぞれ、0.6μm及び0.7μmであった。
【0096】
次に、ロールエンボス装置を用いた熱プレスにより、熱可塑性樹脂層の表面に、ホログラムとしての回折構造を形成した。この時の回折構造の深さは約100nm、空間周波数は1000本/mmである。
【0097】
次いで、微細凹凸形成層24上に蒸着法によりZnSからなる反射層を形成した。このとき、膜厚は20nmと80nmの2種とした。
【0098】
更に、この反射層上に熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂を印刷することにより、接着層26を形成した。接着層26の膜厚は0.6μmとした。
【0099】
以上のようにして図8に示す感熱ホログラムリボン200を完成した。
【0100】
次に、図9に示す画像形成体300を、以下の方法により製造した。
【0101】
まず、支持体31として、厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この支持体31上に、グラビアコータを用いて、剥離保護層33と樹脂層38とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離保護層33の材料としてはアクリル樹脂を使用し、樹脂層38の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離保護層33及び樹脂層38の乾燥後の膜厚は、それぞれ、1.2μm及び1.0μmであった。
【0102】
次に、300dpiのサーマルヘッドを用いた熱転写を行うことにより、画像セル12a,12a’,12b,12b’を、支持体21から樹脂層38上へと転写することにした。このためにまず、所有者情報表示部の顔画像を5階調となるように画像処理を行った。画像セルの転写は、ホログラムリボンのうち、厚み50nmのZnS反射層が形成されている部分で印字面積を変えて、元画像の高輝度部分の階調を2段階で表示し、厚み20nmのZnS反射層が形成されている部分で印字面積を変えて、元画像の低輝度部分の階調を2段階で表示した。このとき、双方の回折構造の印字面積は、隣合うドット状部が重なり合わない条件で最大となるサイズと、その1/2のサイズの2種である。
【0103】
以上のようにして何も印字されていない部分を含め5段階の階調を持つ画像形成体を完成した。以下、この画像形成体を「画像形成体D2」と呼ぶ。
【0104】
<例3:画像形成体D3の製造>
まず、ZnS反射層の厚みを50nmで一定としたこと以外は例2で示したのと同様の方法で感熱ホログラムリボン200を作製した。
【0105】
次に、図9に示す画像形成体300を、以下の方法により製造した。
【0106】
まず、支持体31として、厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この支持体31上に、グラビアコータを用いて、剥離保護層33と樹脂層38とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離保護層33の材料としてはアクリル樹脂を使用し、樹脂層38の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離保護層33及び樹脂層38の乾燥後の膜厚は、それぞれ、1.2μm及び1.0μmであった。
【0107】
次に、300dpiのサーマルヘッドを用いた熱転写を行うことにより、画像セルを、支持体21から樹脂層38上へと転写した。画像セルの転写は、例1及び例2で用いたのと同じ5階調の顔画像に基づき、印字面積を隣合うドット状部が重なり合わない条件で最大となるサイズと、その3/4,1/2,1/4の4種のサイズとなるようにして行い、画像形成体を完成した。以下、この画像形成体を「画像形成体D3」と呼ぶ。
【0108】
以上のようにして製造した画像形成体D1乃至D3を観察したところ、画像形成体D1及びD2は元画像に基づき5段階で階調のついた所有者情報表示部となる顔画像を形成しており、優れた画質の画像を表示した。一方、画像形成体D3に関しては、印字面積を隣合うドット状部が重なり合わない条件で最大となるサイズと、その3/4のサイズのドット状部で形成された部分の輝度がほぼ同一となり、また、上記の1/4のサイズとなるドット状部の形成は為されず、結果として所有者情報表示部となる顔画像は3段階でしか階調がつかなかった。
【0109】
上記画像形成体300は、図11に示す工程によって作製される。図11は上記画像形成体300を製造する工程の一例を示した概略図である。
【0110】
図11において201は例えば撮像装置等の画像入力装置で、顔写真等の画像を画像処理装置202へ入力する。画像処理装置202は、例えばパーソナルコンピュータ等を使用したもので、画像入力装置201から入力された画像を処理し、上記実施形態で説明したように画像セルを形成して転写印字制御装置204へ出力する。この転写印字制御装置204は、サーマルヘッド205を備え、画像処理装置202から送られてくる画像セル情報に従ってサーマルヘッド205を制御し、上記感熱ホログラムリボン200を使用し、熱転写記録を行って画像形成体300を作製する。
【符号の説明】
【0111】
1…所有者情報表示部、2…所有者情報印刷部、100…個人認証媒体、200…感熱ホログラムリボン、210…転写材層、300…画像形成体、310…積層体、11…基材、21,31…支持体、12…画像表示体、12a,12a’,12b,12b’…画像セル、13,33…剥離保護層、24,34…微細凹凸形成層、25,25’,35…反射層、26,36…接着層、27,37…剥離層、38…樹脂層、H1,H2,…高回折効率の微細凹凸形成部、H1’,H2’…低回折効率の微細凹凸形成部、201…画像入力装置、202…画像処理装置、203…ロール、204…転写印字制御装置、205…サーマルヘッド。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスポートや査証などの冊子または、カード等の個人認証媒体上に個人特定の要となる顔画像や指紋を印刷・印字・描画する画像形成体に係わり、特に、正等な所有者の顔などの個人識別情報を、回折格子または回折格子状に凹凸を設けた構造体とオンデマンド印刷技術を組み合わせることにより、個人識別情報の形成を容易にし、個人認証を実施する審査官が識別しやすくなり、かつ偽造および改竄が困難となること、もしくは審査官が摘発しやすくなる画像形成体の製造方法、画像形成体及び個人認証媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像を使用している。例えば、パスポートでは、従来、顔画像を焼き付けた印画紙を冊子体に貼り付けていた。しかしながら、そのようなパスポートには、写真印画の貼り替えによる改竄のおそれがある。
【0003】
このような理由で、近年では、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現する傾向にある。この画像再現方法としては、昇華性(熱移行性)染料や、顔料を分散させた樹脂型溶融タイプやワックス溶融タイプを用いた転写リボンによる感熱転写記録法、あるいは電子写真法などが検討されている。
【0004】
パスポートへの画像再現方法としては、上記方式以外に、インクジェットプリンターによる記録法や(例えば、特許文献1参照)、CO2もしくはYAGレーザーおよび感熱発色剤を使用したレーザー印字記録法(例えば、特許文献2参照)、さらには基材中に存在する炭素(C)を利用して基材の深さ方向にも印字記録するレーザーエングレービング印字記録法(例えば、特許文献3参照)などがある。
【0005】
さらに、この種の個人認識データの入った画像表示体としては、画像データに基づいて形成された画像パターンをポリ塩化ビニルなどのカード基材上に備えたもの、あるいは上記画像パターンに加えてホログラムや回折格子あるいは多層干渉を用いた光学的薄膜(光学設計によりカラーシフト等の効果が得られる)を用いることによる画像に代表されるいわゆるOVD(Optical Variable Device)画像を具備するもの等が知られている。
【0006】
これらホログラムや回折格子のOVD技術は、高度な製造技術を要し、複製の難しいことから有効な偽造防止手段としてクレジットカード、IDカード、プリペイドカード等のカード類に利用されてきた。さらには、その装飾性の高さから、包装材、書籍、パンフレット、POP等への利用も少なくない。これらOVDを物品に貼着するための手段として従来より転写箔を用いて転写形成するといった方法が採られている。この種の転写は、支持体上に剥離層、ホログラムや回折格子の画像パターンを形成するレリーフ層と、公知の薄膜形成手段により形成される反射層、接着層を順次接着してなる構成のものが知られている。これら、転写箔に刻まれたOVDパターン(ホログラムおよび回折格子パターン)は、微小な凹凸パターンをニッケル性のプレス版に複製し、レリーフ層に過熱押圧するという周知の方法により大量複製が行われる。
【0007】
また、上記反射層は屈折率の異なる透明な物質を真空蒸着法等の公知の薄膜形成手段により形成することで(以下透明薄膜層と呼ぶ)、透明ホログラムや透明回折格子形成体となることは、公知の技術である。この場合、レリーフ層と透明薄膜層との間の屈折率差が大きい程、反射率も大きくなることは、光学的見地からも明らかである。但し、ここで一般的には、
(レリーフ層の屈折率)<(透明薄膜層の屈折率)
の関係がある。
【0008】
この様にして得られたホログラムまたは回折格子構造物は、偽造防止手段としてクレジットカード、キャッシュカード、会員証カード、社員証カード、プリペイドカード、運転免許証等の各種カード類、商品券、ギフト券、株券等の各種紙券類や申込用紙、領収書、複写伝票等の各種帳票類や、パスポート、通帳、年金手帳等の各種冊子類の他、本や手帳などの表紙やパネル等のディスプレイ用途等の一部または全体に貼着して使用されている。尚、本発明で述べている全体とは、概念的な意味であり、柄、パターン等を問わず、スポット状、ストライプ状、格子上に貼着されたものや、定型、不定形の網点状のドットで貼着されたものも含まれる。
【0009】
このようなOVD転写箔は偽造防止効果としては、充分な機能を果たすが、パスポートの様に顔写真などの画像形成後に該画像上にOVD転写層を熱的に転写して形成しているため、偽造技術の発達した現在では何らかの手法により転写層をいったん取り去り、画像データ等の改竄を行った後に改めてOVD転写箔を載せるといったことが行われる可能性もでてきた。
【0010】
さらに、盗難されたパスポート等の認証媒体の顔写真と顔の形状・雰囲気が似ている人を選定して印字写真を顔の上から貼ることで、画像データの改竄が行われる可能性もある。
【0011】
また、顔写真などの画像情報を形成する手段としての昇華転写方式、熱溶融性の転写リボン方式あるいは電子写真方式などのプリンタは、昨今では一般に広く普及している状況を考慮すると、画像形成部を取り除いた後の領域に新たに画像を形成することは、必ずしも困難とは、言いきれなくなりつつある。
【0012】
上記のような問題を解決すべく、顔写真等の個人を特定する情報を複数個入れる方法が考えられている。その一方法として、顔写真などの画像情報をホログラムまたは回折格子等で形成するといった、ホログラムリボンを用いた直接熱転写方式が知られている(例えば特許文献4参照)。これにより、カラー画像による顔写真等の改竄と同時にホログラム画像の改竄も行わなければならなくなるため、より改竄を困難にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−226740号公報
【特許文献2】特開昭49−131142号公報
【特許文献3】特開2006−123174号公報
【特許文献4】特開平10−049647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、ホログラムリボンを用いた直接熱転写方式による画像形成は、精細な画像の形成が困難であり、また、ホログラムリボンはインクリボンに比べて温度検知の性能が劣るため、従来のサーマルヘッド印字技術を用いて階調のついた画像を表現することは非常に困難である。
【0015】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされた発明であり、高セキュリティ性を必要とされる画像形成体、例えばパスポートや査証、あるいは各種のカード類、等に対して、偽造や改竄あるいは変造に対する予防性能や、万一それらの不正が為された場合でも、被疑不製品を、観察などによって容易に発見することが可能な、高品質の画像形成体の製造方法、及びその画像形成体を転写して得られる個人認証媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、透明基材の少なくとも一方の面に所有者に関する情報を画像として視認可能に表示した所有者情報表示部を備える複数階調の画像形成体の製造方法であって、
前記所有者情報表示部はドット状に形成された複数の画像セルを備え、
前記複数の画像セルは、前記所有者に関する情報の画像を構成するOVD層と、当該OVD層に積層する反射層と接着層と、を備え、
前記OVD層は、2種以上の回折効率の異なる感熱ホログラムリボンを熱転写して設けられ、
前記感熱ホログラムリボンは、ホログラムまたは回折格子の微細凹凸から形成され、
前記画像形成体が少なくとも、
(1)2種以上の回折効率の異なる感熱ホログラムリボンを、特定の周期で熱転写の流れ方向に並べて配置する感熱ホログラムリボン作製工程と、
(2)階調がついた画像を読み込む画像読み取り工程と、
(3)前記階調がついた画像の階調に応じて2種以上の感熱ホログラムリボンを、画像セル毎に印字面積を変えて記録する工程と、
を含む工程を経て作製されることを特徴とする画像形成体の製造方法である。
【0017】
請求項2に係る発明は、前記画像形成体の前記製造工程(3)において、前記階調がついた画像を階調に従って複数の階層に分け、前記分けた階層の数と同数の異なる回折効率をもつ感熱ホログラムリボンを用い、各々の階層において、階層に対応する回折効率をもつ感熱ホログラムリボンを、画像セル毎に印字面積を変えて階調を表現して記録する工程を含んで作製されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成体の製造方法である。
【0018】
請求項3に係る発明は、前記感熱ホログラムリボンの回折効率は、微細凹凸の深さによって制御されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成体の製造方法である。
【0019】
請求項4に係る発明は、前記感熱ホログラムリボンの回折効率は、前記OVD層に積層する反射層の厚みによって制御されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成体の製造方法である。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項3又は4に記載の製造方法を用いて作成した画像形成体である。
【0021】
請求項6に係る発明は、前記所有者情報表示部に表示した画像と同じ外観の画像を印刷した所有者情報印刷部を備え、前記所有者情報表示部及び前記所有者情報印刷部は、同一の方向から視認可能であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成体である。
【0022】
請求項7に係る発明は、前記所有者情報印刷層に印刷した画像の面積は、前記所有者情報表示部に表示した画像の面積に対して0.1〜30倍の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成体である。
【0023】
請求項8に係る発明は、請求項5乃至7の何れか1項に記載の画像形成体を被転写基材に転写して形成された個人認証媒体である。
【0024】
請求項9に係る発明は、前記被転写基材の前記画像形成体を転写する面に、予め細線を組み合わせた図柄である彩紋のパターンが印刷されていることを特徴とする請求項8に記載の個人認証媒体である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1から5に記載した発明によれば、ホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成された、所有者に関する個別情報を有する画像形成体を提供することが可能となる。これに加え、偽造などにより個別情報の画像を形成することが困難となるため、セキュリティ性を向上させることが可能となる。また、2種以上の回折効率の異なる感熱ホログラムリボンを用いて複数の階調がついた画像を形成することで、従来のホログラムリボンを用いた印字では表現することが難しかった高品質の画像を形成することが可能となる。
【0026】
請求項6に記載した発明によれば、画像形成体を所有している人が、画像形成体の真の所有者か否かの識別を行う審査官に対し、所有者情報印刷層により表示された画像と、所有者情報表示部に表示した画像が、同一人物の個人認証情報から選択される。このため、二つの画像を目視によって見比べることで、本人確認を容易に行うことが可能となり、被疑不正品が容易に発見可能となる発見容易性能を発揮することが可能となる。
【0027】
請求項7に記載した発明によれば、請求項5に記載した所有者情報印刷層の画像の面積を、所有者情報表示部に表示した画像の面積に対して、0.1〜30倍の面積とすることによって、用途に応じそれぞれの画像の面積を変更することが可能となる。このため、用途に応じて二つの画像を容易に比較して認証することが可能となる。
【0028】
請求項8に記載した発明によれば、ホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成された、所有者に関する個別情報を有する個人認証媒体を提供することが可能となる。
【0029】
請求項9に記載した発明によれば、被転写基材の画像形成体を転写する面に、予め偽造防止用の彩紋パターンを印刷しておくことで、より偽造が困難な個人認証媒体を提供することが可能となる。これは、偽造を行おうとするものが、本発明のプロセスである中間転写方式ではなく、被転写基材側にホログラムまたは回折格子状の微細凹凸から形成された所有者に関する図柄を直接転写すると、被転写基材が有する凹凸の影響が現れるため、転写前にこの凹凸をなくすための処理が必要となるが、予め偽造防止用の彩紋パターンを印刷しておく処理を行うことにより、彩紋パターンの外観が正規品と異なったものとなり、偽造品であることを容易に判別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す個人認証媒体における画像情報表示部の一部分を拡大して示す平面図。
【図3】図2に示す画像情報表示部のI−I線に沿った断面図。
【図4】図1に示す画像情報表示部の他の一部を拡大して示す平面図。
【図5】図4に示す画像情報表示部のII−II線に沿った断面図。
【図6】図1乃至図5に示す画像情報表示部の製造に使用可能な感熱ホログラムリボンの一例を概略的に示す平面図。
【図7】図6に示す感熱ホログラムリボンの一例を概略的に示す断面図。
【図8】図6に示す感熱ホログラムリボンの他の一例を概略的に示す断面図。
【図9】図6乃至図8に示す感熱ホログラムリボンを用いて製造可能な画像形成体の一例を概略的に示す断面図。
【図10】変形例に係る個人認証媒体における画像情報表示部の一部を拡大して示す断面図。
【図11】本発明における画像形成体を製造する工程の一例を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様または類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図である。
【0033】
図1に示す個人認証媒体100は、パスポートなどの冊子体であり、開いた状態を示している。
【0034】
図1において、個人認証媒体100は、所有者情報表示部1と所有者情報印刷部2とを備えている。所有者情報表示部1は、ホログラム及び/又は回折格子が表示する画像である。所有者情報表示部1は、後で詳述するように、例えばサーマルヘッドを用いた熱転写記録と、ホットスタンプ又は熱ロールを用いた熱転写記録とをこの順に行うことにより形成する。
【0035】
所有者情報印刷部2は、所有者情報表示部1に表示した画像、すなわち、所有者の顔写真と同じ外観の画像を、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。
【0036】
所有者情報印刷部2は、例えば、染料及び顔料で構成することができる。この場合、所有者情報印刷部2の形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、またはそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、所有者情報印刷部2は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザービームで描画することにより形成することができる。また、これら方法の組み合わせを利用することも可能である。所有者情報印刷部2の少なくとも一部分は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成しても、或いは印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0037】
所有者情報表示部1と所有者情報印刷部2は、同一人物の顔画像を含んでおり、所有者情報印刷部2の画像の面積は所有者情報表示部1に表示した画像の面積に対して、0.1〜30倍の範囲内に設定されている。
【0038】
これは、以下に記載する理由による。
【0039】
例えば、所有者情報印刷部2に印刷した画像のうち、所有者の顔写真と同じ外観の画像(以下、「印刷顔写真画像」と記載する)が、カラーの顔写真である場合、印刷顔写真画像の解像度としては、175〔線/インチ〕の網点で表現するのが一般的である。これは、一般に175〔線/インチ〕の網点よりも細かい解像度にしても、目視では判断がつかないためである。
【0040】
一方、所有者情報表示部1に表示した画像(以下、「表示顔写真画像」と記載する)を構成する複数の画像セル12a,12a’,12b,12b’は、最小で5〔μm〕の円、または、四角状のサイズが必要である。この最小サイズの画像セル12a,12a’,12b,12b’で所有者の顔写真を形成した場合、175〔線/インチ〕の解像度である印刷顔写真の大きさに対して、1/30の大きさの表示顔写真画像が得られる。
【0041】
そして、1/30の大きさの表示顔写真画像の場合、拡大鏡等で見ないと印刷顔写真画像との比較はできないが、表示顔写真画像を、1/30未満の大きさの画像とした場合、印刷顔写真画像を構成するために必要な画像セル12a,12a’,12b,12b’の大きさが小さくなりすぎ、回折格子として十分な機能が得られなくなる。
【0042】
また、回折格子として機能する最小サイズ(5〔μm〕)の画像セル12a,12a’,12b,12b’を用いても、印刷顔写真画像と同じ画素数の画像を表現することができないため、印刷顔写真画像と表示顔写真画像との画像比較が困難となる。
【0043】
一方、印刷顔写真画像の大きさに対して、表示顔写真画像が10倍を超える大きさとなると、大きすぎるため所有者の情報である個人認証情報が正確に再現できなくなってしまい、印刷顔写真画像と表示顔写真画像との画像比較が困難になる。そのため、印刷顔写真画像と表示顔写真画像との比率として、0.1:1から30:1の範囲が好調である。これは、上述したように、範囲外の比率差があると、印刷顔写真画像と表示顔写真画像の画像比較が困難になり、個人識別の精度が低下するためである。なお、印刷顔写真画像と表示顔写真画像の大きさは、縦横同一比率で拡大・縮小されていてもよい。
【0044】
次に、個人認証媒体100の構造について、図2乃至図5を参照しながら説明する。
【0045】
図2は、図1に示す個人認証媒体100における所有者情報表示部1の一部分を拡大して示す平面図である。図3は、図2に示す所有者情報表示部1のI−I線に沿った断面図である。図4は、図1に示す所有者情報表示部1の他の一部を拡大して示す平面図である。図5は、図4に示す所有者情報表示部1のII−II線に沿った断面図である。
【0046】
画像セル12a,12a’,12b,12b’は、ホログラム及び/または回折光を含んでいる。画像セル12a,12a’,12b,12b’は、図2乃至図5に示すように、所有者情報表示部1に対応したパターン形状を有している。画像セル12a,12a’,12b,12b’の構造及び形成方法については、後で詳述する。
【0047】
剥離保護層13は、画像セル12a,12a’,12b,12b’と基材11とを被覆している。剥離保護層13は、光透過性を有しており、典型的には透明である。剥離保護層13は、例えば樹脂から成る。
【0048】
次に、図6乃至図9を参照しながら、個人認証媒体100の製造方法と画像セル12a,12a’,12b,12b’の構造とを説明する。
【0049】
図6は、図1乃至図5に示す画像情報表示部の製造に使用可能なホログラムリボンの一例を概略的に示す平面図である。図7は、図6に示すホログラムリボンの一例を概略的に示す断面図である。図8は、図6に示すホログラムリボンのほかの一例を概略的に示す断面図である。図9は、図6乃至図8に示すホログラムリボンを用いて製造可能な画像形成体の一例を概略的に示す断面図である。
【0050】
図6乃至図8に示す感熱ホログラムリボン200は、例えば転写リボンである。感熱ホログラムリボン200は支持体21と、支持体21によって剥離可能に支持された転写材層210とを含んでいる。
【0051】
支持体21は、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体21は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体21の転写材層210を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0052】
転写材層210は、剥離層27と微細凹凸形成層24と反射層25と接着層26とを含んでいる。
【0053】
剥離層27は、支持体21上に形成されている。剥離層27は、転写材層210の支持体21からの剥離を安定化すると共に、画像セル12a,12a’,12b,12b’の基材11への接着を促進する役割を果たす。剥離層27は、光透過性を有しており、典型的には透明である。剥離層27は、例えば熱可塑性樹脂により構成されるが、省略することが可能である。
【0054】
微細凹凸形成層24は、剥離層27上に形成されている。微細凹凸形成層24は、回折構造としてホログラム及び回折格子の少なくとも一方を含んでいる。ここでは、微細凹凸形成層24は、表面に回折構造としてレリーフ構造が設けられた透明層である。また、透明層の材料としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂及び熱過疎性樹脂などの樹脂を使用することができる。
【0055】
微細凹凸形成層24の回折構造のパラメータとしては、
(1)回折格子の空間周波数(格子線のピッチ:単位長さ当たりの格子線の本数)
(2)回折格子の方向(格子線の方向)
(3)回折格子の深さ
があり、上記(1)に応じて定点に対してその回折格子パターンが光って見える色が変化し、
上記(2)に応じて、その回折格子セルが光って見える方向が変化し、
上記(3)に応じて、回折格子パターンが光って見える時の光強度(回折効率)が変化する。
【0056】
本発明におけるホログラムリボンは、例えば、図7に示すように、上記(1)及び(2)は同一で上記(3)のみを変化させた微細凹凸形成部H1及びH1’と、H1とは上記(1)のみを変化させた微細凹凸形成部H2及び、H2とは上記(3)のみを変化させた微細凹凸形成部H2’を順に並べた微細凹凸形成層より成る。このとき、微細凹凸形成部H1及びH1’によって、定点で見える色の階調を出し、微細凹凸形成部H2及びH2’によって定点で見える微細凹凸形成部H1とは別の色の階調を表現することが可能となる。上記H1及びH2は高回折効率の微細凹凸形成部であり、H1’及びH2’は低回折効率の微細凹凸形成部である。
【0057】
後述するが、複数の微細凹凸形成部で形成される画像セルはドット状に転写されるため、転写する画像セルのドット径を変化させることで、複数の階調表現が可能となる。また、微細凹凸形成部H1及びH2とは異なる空間周波数を持つ微細凹凸形成部を設け、例えば、定点での色の見え方がR,G,Bの3色になるようにすれば、フルカラーの複数階調画像を得ることも可能となる。
【0058】
反射層25は、微細凹凸形成層24上に形成されている。反射層25は省略することができるが、反射層を設けると回折構造が表示する画像の視認性が向上する。
【0059】
反射層25としては、例えば、透明反射層又は不透明な金属反射層を使用することができる。反射層25は、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって形成することができる。
【0060】
透明反射層としては、例えば微細凹凸形成層24とは屈折率が異なる透明材料からなる層を使用することができる。透明材料からなる透明反射層は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していても良い。後者の場合、透明反射層は繰り返し反射干渉を生じるように設計されていてもよい。この透明材料としては、例えば、ZnS及びTiO2などの透明誘電体を使用することができる。
【0061】
あるいは、透明反射層として、厚さが20nm未満の金属層を使用してもよい。金属層の材料としては、例えばクロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金及び銅などの金属層を使用することができる。
【0062】
本発明におけるホログラムリボンは、例えば、図8に示すように、空間周波数の違う微細凹凸形成部H1及びH2の2種で構成された微細凹凸形成層より成る。図8では、この微細凹凸形成部H1及びH2の各背面には、成膜材料は同じで膜厚のみ異なる反射層25及び反射層25’が設けられている。画像セル12a,12a’,12b,12b’の輝度は、反射層の膜厚で変えることができる。例えば、反射層としてZnSを用いた場合、10nm程度の膜厚と50nm程度の膜厚とでは画像セルの射出輝度に大きな差が出る。このように成膜材料の膜厚を調整することで、定点で見る時の階調を表現することができる。
【0063】
さらに、図7を用いて説明した時と同様に、微細凹凸形成部H1、H2とは異なる空間周波数を持つ微細凹凸形成部を設け、定点での見え方が、例えば、C,M、Yの3色になるようにすれば、フルカラーの複数階調画像を得ることも可能となる。
【0064】
個人認証媒体100の製造においては、例えば、まず、撮像装置を用いて、人物の顔を撮影する。或いは、印画から顔画像を読み取る。これにより、画像情報を電子情報として得る。この顔画像は階調がついている状態で画像処理する。
【0065】
次に、図9に示す積層体310を準備する。この積層体310は、多層構造を有している層であり、支持体31と、その上に順次形成された剥離保護層33及び樹脂層38とを含んでいる。支持体31に形成された多層構造は、下地層を構成している。支持体31は、この下地層を剥離可能に支持している。
【0066】
上記支持体31としては、例えば図7の支持体21について例示したものを使用することができる。
【0067】
剥離保護層33は、剥離保護層33と画像セル12a,12a’,12b,12b’とからなる転写材層210の支持体21からの剥離を安定化すると共に、画像セル12a,12a’,12b,12b’を損傷から保護する役割を果たす。剥離保護層33としては、例えば、剥離層27について例示したものを使用することができる。樹脂層38が剥離層の状態を有している場合は、剥離保護層33を省略することができる。
【0068】
樹脂層38は、光透過性を有しており、典型的には透明である。樹脂層38は、先の下地層に十分な強度を与える役割を示す。樹脂層38の材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂を使用することができる。熱硬化性樹脂を使用すると、この樹脂層38を、画像形成体300を基材11に接着するための接着層として利用することができる。
【0069】
樹脂層38は、回折構造として、ホログラム及び回折格子の少なくとも一方を含んでいてもよい。例えば、樹脂層38の表面には、回折構造としてレリーフ構造が設けられていてもよい。こうすると、この回折構造が表示する画像と画像セル12a,12a’,12b,12b’が表示する画像とを重ねること、または並べることができる。
【0070】
積層体310は、パターニングされた金属反射層、例えば不透明な金属反射層を更に含んでいてもよい。例えば、樹脂層38上に又は剥離保護層33と樹脂層38との間にパターニングされた金属反射層を設け、この金属反射層に、網点、万線、他の図形、又はそれらの組み合わせを表示させてもよい。このようなパターンは、例えば画像形成体300又は個人認証媒体100の真偽判定に利用することができる。
【0071】
次いで、この積層体310上に、先の顔画像に対応したパターンを有している画像セル12a,12a’,12b,12b’を形成する。具体的には、先の画像情報に基づいて図7及び図8に示す支持体21から、転写材層210の一部を画像セル12a,12a’,12b,12b’として、図9に示す樹脂層38上へと熱転写する。上記画像セル12a,12a’,12b,12b’は、接着層36、反射層35、微細凹凸形成層34、剥離層37を含んでいる。
【0072】
上記熱転写は、サーマルヘッドを利用して、転写材層210のうち樹脂層38上へと熱転写される部分が、先の顔画像に対応したパターンを有するように行う。これにより、支持体31と剥離保護層33と樹脂層38と画像セル12a,12a’,12b,12b’とを含んだ画像形成体300を得る。画像形成体300は、例えば転写リボンである。
【0073】
このようにして得られる画像セル12a,12a’,12b,12b’は、サーマルヘッドを利用した熱転写によって形成するので、典型的には図2乃至図5に示すように複数のドット状部から成る。これらドット状部の各中心は、図2および図4に破線で示す仮想的な平面格子の格子点上に位置している。
【0074】
なお、図2および図4において、先の平面格子は正方格子であるが、この平面格子は、三角格子及び矩形格子などの他の格子であってもよい。また、図2及び図4では、隣合ったドット状部は、それらの輪郭が1点で接するように配置されている。すなわち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と等しい。隣合ったドット状部は、互いから離間していてもよい。すなわち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と比較してより小さくてもよい。或いは、隣接したドット状部は、部分的に重なり合っているが如く配置されていてもよい。即ち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と比較してより大きくてもよい。
【0075】
ドット状部の径又はドット状部の最小中心間距離は、例えば0.085乃至0.508mm(約300乃至約50 dots per inch)の範囲内とし、典型的には0.085乃至0.169mm(約300乃至約150 dots per inch)の範囲内とする。この寸法を大きくすると、画像セル12a,12a’,12b,12b’で顔画像を表示する場合、高精細な画像を表示させることが難しくなる。また、この寸法を小さくすると、画像セルのパターン形状の再現性が低下する。
【0076】
また、画像セル12a,12a’,12b,12b’とは異なる空間周波数を持つ画像セルを併せて設ける場合、異なる空間周波数を持つ画像セルは、画像セル12a,12a’,12b,12b’と重ねることまたは並べることができる。例えば、定点での色の見え方がR,G,Bの3色になるよう、異なる空間周波数の画像セルを重ねる/または並べることで、フルカラーの複数階調画像を得ることができる。
【0077】
次に、支持体21上に形成した転写材層のうち、画像セル12a,12a’,12b,12b’として使用する部分を、支持体21から図3及び図5に示す基材11へと熱転写する。この熱転写には、例えばホットスタンプを利用する。なお、ホットスタンプを利用した熱転写の代わりに、熱ロール又はサーマルヘッドを利用した熱転写を行ってもよい。以上のようにして、基材11に画像表示体12を貼り付ける。
【0078】
基材11には、接着強さを高めるために、接着アンカー層を形成しておいてもよい。
【0079】
画像表示体12を基材11に高い接着強さで接着させることが難しい場合、転写材層のうちに画像表示体12として使用する部分は、接着層を介して、基材11へと熱転写してもよい。例えば、接着リボンを使用してもよい。これを使用すると、画像表示体12と基材11との接着強さを高めることができる。なお、この方法によると、図10に示すように、画像表示体12と基材11との間に接着層36が介在した構造が得られる。
【0080】
以上のようにして画像表示体12を基材11に熱転写した後、必要な工程を適宜実施する。このようにして図2乃至図5を参照しながら説明した個人認証媒体100を得る。
【0081】
サーマルヘッドを利用した熱転写によって画像セル12a,12a’,12b,12b’を基材11上に直接形成した場合、基材11の表面粗さなどに起因して、高画質を達成することは難しい。これに対し、上述した方法では、画像セル12a,12a’,12b,12b’は、基材11上に直接形成しない。すなわち、この方法では、まず、剥離保護層33上に形成し、その後、剥離保護層33と共に基材11へと転写する。それゆえ、基材11の表面粗さなどが画質に大きな影響を及ぼすことはない。
【0082】
以上、パスポートとしての個人認証媒体100を例示したが、個人認証媒体100について上述した技術は、他の個人認証媒体に適用することも可能である。例えば、この技術は、査証やIDカードなどの各種カードに適用することも可能である。
【0083】
画像表示体12を貼り付ける基材の材質は、紙以外であってもよい。例えば、画像表示体22を貼り付ける基材は、プラスチック基板、金属基板、セラミックス基板、又はガラス基板であってもよい。
【実施例】
【0084】
<例1:画像形成体D1の製造>
以下のようにして図7に示す感熱ホログラムリボン200を製造した。
【0085】
まず、支持体21として、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この支持体21上に、グラビアコータを用いて、剥離層27と熱可塑性樹脂層とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離層27の材料としてはアクリル樹脂を使用し、熱可塑性樹脂層の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離層27及び熱可塑性樹脂層の乾燥後の膜厚は、それぞれ、0.6μm及び0.7μmであった。
【0086】
次に、ロールエンボス装置を用いた熱プレスにより、熱可塑性樹脂層の表面に、ホログラムとしての回折構造を2種形成した。このとき、形成した2種の回折構造の深さはそれぞれ約60nmと約100nmであり、空間周波数は1000本/mmで同一とし、格子角度も同一とした。
【0087】
次いで、微細凹凸形成層24上に、蒸着法により、硫化亜鉛からなる反射層25を形成した。反射層25の膜厚は50nmとした。
【0088】
更に、この反射層25上に熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂を印刷することにより、接着層26を形成した。接着層26の膜厚は0.6μmとした。
【0089】
以上のようにして図7に示す感熱ホログラムリボン200を完成した。
【0090】
次に、図9に示す画像形成体300を、以下の方法により製造した。
【0091】
まず、支持体31として、厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この支持体31上に、グラビアコータを用いて、剥離保護層33と樹脂層38とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離保護層33の材料としてはアクリル樹脂を使用し、樹脂層38の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離保護層33及び樹脂層38の乾燥後の膜厚は、それぞれ、1.2μm及び1.0μmであった。
【0092】
次に、300dpiのサーマルヘッドを用いた熱転写を行うことにより、画像セル12a,12a’,12b,12b’を、支持体21から樹脂層38上へと転写することにした。このためにまず、所有者情報表示部の顔画像を5階調となるように画像処理を行った。画像セルの転写は、ホログラムリボンのうち、深さ100nmの回折構造が形成されている部分で、印字面積を変えて、元画像の高輝度部分の階調を2段階で表示し、深さ60nmの回折構造が形成されている部分で、印字面積を変えて、元画像の低輝度部分の階調を2段階で表示した。このとき、双方の回折構造の印字面積は、隣合うドット状部が重なり合わない条件で最大となるサイズと、その1/2のサイズの2種である。
【0093】
以上のようにして何も印字されていない部分を含め5段階の階調を持つ画像形成体を完成した。以下、この画像形成体を「画像形成体D1」と呼ぶ。
【0094】
<例2:画像形成体D2の製造>
以下のようにして図8に示す感熱ホログラムリボン200を製造した。
【0095】
まず、支持体21として、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この支持体21上に、グラビアコータを用いて、剥離層27と熱可塑性樹脂層とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離層27の材料としてはアクリル樹脂を使用し、熱可塑性樹脂層の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離層27及び熱可塑性樹脂層の乾燥後の膜厚は、それぞれ、0.6μm及び0.7μmであった。
【0096】
次に、ロールエンボス装置を用いた熱プレスにより、熱可塑性樹脂層の表面に、ホログラムとしての回折構造を形成した。この時の回折構造の深さは約100nm、空間周波数は1000本/mmである。
【0097】
次いで、微細凹凸形成層24上に蒸着法によりZnSからなる反射層を形成した。このとき、膜厚は20nmと80nmの2種とした。
【0098】
更に、この反射層上に熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂を印刷することにより、接着層26を形成した。接着層26の膜厚は0.6μmとした。
【0099】
以上のようにして図8に示す感熱ホログラムリボン200を完成した。
【0100】
次に、図9に示す画像形成体300を、以下の方法により製造した。
【0101】
まず、支持体31として、厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この支持体31上に、グラビアコータを用いて、剥離保護層33と樹脂層38とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離保護層33の材料としてはアクリル樹脂を使用し、樹脂層38の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離保護層33及び樹脂層38の乾燥後の膜厚は、それぞれ、1.2μm及び1.0μmであった。
【0102】
次に、300dpiのサーマルヘッドを用いた熱転写を行うことにより、画像セル12a,12a’,12b,12b’を、支持体21から樹脂層38上へと転写することにした。このためにまず、所有者情報表示部の顔画像を5階調となるように画像処理を行った。画像セルの転写は、ホログラムリボンのうち、厚み50nmのZnS反射層が形成されている部分で印字面積を変えて、元画像の高輝度部分の階調を2段階で表示し、厚み20nmのZnS反射層が形成されている部分で印字面積を変えて、元画像の低輝度部分の階調を2段階で表示した。このとき、双方の回折構造の印字面積は、隣合うドット状部が重なり合わない条件で最大となるサイズと、その1/2のサイズの2種である。
【0103】
以上のようにして何も印字されていない部分を含め5段階の階調を持つ画像形成体を完成した。以下、この画像形成体を「画像形成体D2」と呼ぶ。
【0104】
<例3:画像形成体D3の製造>
まず、ZnS反射層の厚みを50nmで一定としたこと以外は例2で示したのと同様の方法で感熱ホログラムリボン200を作製した。
【0105】
次に、図9に示す画像形成体300を、以下の方法により製造した。
【0106】
まず、支持体31として、厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この支持体31上に、グラビアコータを用いて、剥離保護層33と樹脂層38とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離保護層33の材料としてはアクリル樹脂を使用し、樹脂層38の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離保護層33及び樹脂層38の乾燥後の膜厚は、それぞれ、1.2μm及び1.0μmであった。
【0107】
次に、300dpiのサーマルヘッドを用いた熱転写を行うことにより、画像セルを、支持体21から樹脂層38上へと転写した。画像セルの転写は、例1及び例2で用いたのと同じ5階調の顔画像に基づき、印字面積を隣合うドット状部が重なり合わない条件で最大となるサイズと、その3/4,1/2,1/4の4種のサイズとなるようにして行い、画像形成体を完成した。以下、この画像形成体を「画像形成体D3」と呼ぶ。
【0108】
以上のようにして製造した画像形成体D1乃至D3を観察したところ、画像形成体D1及びD2は元画像に基づき5段階で階調のついた所有者情報表示部となる顔画像を形成しており、優れた画質の画像を表示した。一方、画像形成体D3に関しては、印字面積を隣合うドット状部が重なり合わない条件で最大となるサイズと、その3/4のサイズのドット状部で形成された部分の輝度がほぼ同一となり、また、上記の1/4のサイズとなるドット状部の形成は為されず、結果として所有者情報表示部となる顔画像は3段階でしか階調がつかなかった。
【0109】
上記画像形成体300は、図11に示す工程によって作製される。図11は上記画像形成体300を製造する工程の一例を示した概略図である。
【0110】
図11において201は例えば撮像装置等の画像入力装置で、顔写真等の画像を画像処理装置202へ入力する。画像処理装置202は、例えばパーソナルコンピュータ等を使用したもので、画像入力装置201から入力された画像を処理し、上記実施形態で説明したように画像セルを形成して転写印字制御装置204へ出力する。この転写印字制御装置204は、サーマルヘッド205を備え、画像処理装置202から送られてくる画像セル情報に従ってサーマルヘッド205を制御し、上記感熱ホログラムリボン200を使用し、熱転写記録を行って画像形成体300を作製する。
【符号の説明】
【0111】
1…所有者情報表示部、2…所有者情報印刷部、100…個人認証媒体、200…感熱ホログラムリボン、210…転写材層、300…画像形成体、310…積層体、11…基材、21,31…支持体、12…画像表示体、12a,12a’,12b,12b’…画像セル、13,33…剥離保護層、24,34…微細凹凸形成層、25,25’,35…反射層、26,36…接着層、27,37…剥離層、38…樹脂層、H1,H2,…高回折効率の微細凹凸形成部、H1’,H2’…低回折効率の微細凹凸形成部、201…画像入力装置、202…画像処理装置、203…ロール、204…転写印字制御装置、205…サーマルヘッド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも一方の面に所有者に関する情報を画像として視認可能に表示した所有者情報表示部を備える複数階調の画像形成体の製造方法であって、
前記所有者情報表示部はドット状に形成された複数の画像セルを備え、
前記複数の画像セルは、前記所有者に関する情報の画像を構成するOVD層と、当該OVD層に積層する反射層と接着層と、を順に備え、
前記OVD層は、2種以上の、空間周波数は同一で回折効率の異なる感熱ホログラムリボンを熱転写して設けられ、
前記感熱ホログラムリボンは、ホログラムまたは回折格子の微細凹凸から形成され、
前記画像形成体が少なくとも、
(1)2種以上の回折効率の異なる感熱ホログラムリボンを、特定の周期で熱転写の流れ方向に並べて配置する感熱ホログラムリボン作製工程と、
(2)階調がついた画像を読み込む画像読み取り工程と、
(3)前記階調がついた画像の階調に応じて2種以上の感熱ホログラムリボンを、画像セル毎に印字面積を変えて記録する工程と、
を含む工程を経て作製されることを特徴とする画像形成体の製造方法。
【請求項2】
前記画像形成体の前記製造工程(3)において、前記階調がついた画像を階調に従って複数の階層に分け、前記分けた階層の数と同数の異なる回折効率をもつ感熱ホログラムリボンを用い、各々の階層において、階層に対応する回折効率をもつ感熱ホログラムリボンを、画像セル毎に印字面積を変えて階調を表現して記録する工程を含んで作製されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成体の製造方法。
【請求項3】
前記感熱ホログラムリボンの回折効率は、微細凹凸の深さによって制御されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成体の製造方法。
【請求項4】
前記感熱ホログラムリボンの回折効率は、前記OVD層に積層する反射層の厚みによって制御されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成体の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の製造方法を用いて作製した画像形成体。
【請求項6】
前記所有者情報表示部に表示した画像と同じ外観の画像を印刷した所有者情報印刷部を備え、前記所有者情報表示部及び前記所有者情報印刷部は、同一の方向から視認可能であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成体。
【請求項7】
前記所有者情報印刷層に印刷した画像の面積は、前記所有者情報表示部に表示した画像の面積に対して0.1〜30倍の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成体。
【請求項8】
請求項5乃至7の何れか1項に記載の画像形成体を被転写基材に転写して形成された個人認証媒体。
【請求項9】
前記被転写基材の前記画像形成体を転写する面に、予め細線を組み合わせた図柄である彩紋のパターンが印刷されていることを特徴とする請求項8に記載の個人認証媒体。
【請求項1】
透明基材の少なくとも一方の面に所有者に関する情報を画像として視認可能に表示した所有者情報表示部を備える複数階調の画像形成体の製造方法であって、
前記所有者情報表示部はドット状に形成された複数の画像セルを備え、
前記複数の画像セルは、前記所有者に関する情報の画像を構成するOVD層と、当該OVD層に積層する反射層と接着層と、を順に備え、
前記OVD層は、2種以上の、空間周波数は同一で回折効率の異なる感熱ホログラムリボンを熱転写して設けられ、
前記感熱ホログラムリボンは、ホログラムまたは回折格子の微細凹凸から形成され、
前記画像形成体が少なくとも、
(1)2種以上の回折効率の異なる感熱ホログラムリボンを、特定の周期で熱転写の流れ方向に並べて配置する感熱ホログラムリボン作製工程と、
(2)階調がついた画像を読み込む画像読み取り工程と、
(3)前記階調がついた画像の階調に応じて2種以上の感熱ホログラムリボンを、画像セル毎に印字面積を変えて記録する工程と、
を含む工程を経て作製されることを特徴とする画像形成体の製造方法。
【請求項2】
前記画像形成体の前記製造工程(3)において、前記階調がついた画像を階調に従って複数の階層に分け、前記分けた階層の数と同数の異なる回折効率をもつ感熱ホログラムリボンを用い、各々の階層において、階層に対応する回折効率をもつ感熱ホログラムリボンを、画像セル毎に印字面積を変えて階調を表現して記録する工程を含んで作製されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成体の製造方法。
【請求項3】
前記感熱ホログラムリボンの回折効率は、微細凹凸の深さによって制御されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成体の製造方法。
【請求項4】
前記感熱ホログラムリボンの回折効率は、前記OVD層に積層する反射層の厚みによって制御されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成体の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の製造方法を用いて作製した画像形成体。
【請求項6】
前記所有者情報表示部に表示した画像と同じ外観の画像を印刷した所有者情報印刷部を備え、前記所有者情報表示部及び前記所有者情報印刷部は、同一の方向から視認可能であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成体。
【請求項7】
前記所有者情報印刷層に印刷した画像の面積は、前記所有者情報表示部に表示した画像の面積に対して0.1〜30倍の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成体。
【請求項8】
請求項5乃至7の何れか1項に記載の画像形成体を被転写基材に転写して形成された個人認証媒体。
【請求項9】
前記被転写基材の前記画像形成体を転写する面に、予め細線を組み合わせた図柄である彩紋のパターンが印刷されていることを特徴とする請求項8に記載の個人認証媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−173464(P2012−173464A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34467(P2011−34467)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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