説明

画像形成体

【課題】本発明は、銀行券、商品券、金券、株券、債券などの有価証券類の偽造防止及び真贋判定が容易に行える画像形成体を提供することを目的とする。
【解決手段】可とう性を有する支持体(1)に、該支持体(1)の同一面内もしくは異なる面に、地紋印刷部(2)に埋め込まれた潜像部(3)からなる潜像デバイス(A)と検証用フィルムと同一の機能を有する複数の貫通した穿孔(4A)により形成された穿孔加工部(4)からなる検証デバイス(B)とを具備し、該支持体(1)を変形させ潜像デバイス(A)に対して検証デバイス(B)を重ね合わせたときに潜像画像が出現することを特徴とする画像形成体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、商品券、金券、株券、債券などの有価証券類の偽造防止及び真贋判定方法として、潜像技術を利用し、潜像の埋め込まれた地紋に対して、検証用フィルムを別途必要としない画像形成体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行券、商品券、金券、株券、債券などの有価証券類の偽造防止対策として偽造の困難な媒体の貼付を行ってきた。そこでは、目視による判定(オバート機能)または検証器を用いた判定(コバート機能)により真贋判定を行っている。
【0003】
しかし、目視により真贋判定が行える偽造防止媒体は偽造されやすい。そのため、複写防止機能や偽造防止機能やセキュリティー機能を保持することを必要とする画像形成体が益々多用されるようになってきているが、このような偽造防止対策としての画像形成体の1つとしては、例えば、透明フィルムに微細な多数の平行線条の万線パターンを備えた万線シートを使用することにより画像を観察できる画像形成体がある。
【0004】
このような画像形成体においては、比較的単純なパターンであるため、コピー、スキャナーによる複写物の場合、万線パターンは複写による再現が可能となり、複写物でも同様の機能を保持することができ、さらに、パターンが単純であるため、知見のあるものは比較的容易に作製が可能であり、偽造防止対策としての効果の低いものであった。
【0005】
そこで、有価証券類の偽造防止・真贋判定方法として、潜像技術を利用し、潜像の埋め込まれた地紋に対して、検証用フィルムを重ね合わせることで埋め込み画像の有無を確認する技術が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
この提案の方法は、有効な偽造防止策であるが、真贋判定を行う際は、別途検証用フィルムが必要で、且つ埋め込まれた画像のパターンに応じ、それぞれの検証用フィルムを準備しておく必要があり、非常に煩雑で真贋判定が容易ではない。
【0007】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2001−213042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、銀行券、商品券、金券、株券、債券などの有価証券類の偽造防止及び真贋判定が容易に行える画像形成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、支持体(1)の同一面内もしくは異なる面に、地紋印刷部(2)に埋め込まれた潜像部(3)からなる潜像デバイス(A)と検証用フィルムと同一の機能を有する複数の貫通した穿孔(4A)により形成された穿孔加工部(4)からなる検証デバイス(B)とを具備し、該支持体(1)を変形させ潜像デバイス(A)に対して検証デバイス(B)を重ね合わせたときに潜像画像が出現することを特徴とする画像形成体である。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の画像形成体において、前記穿孔加工部
(4)の穿孔(4A)径(φ)が0.1mm<φ<2.0mmの範囲で、且つ該穿孔(4A)間のピッチ(P)がφ<P<3φの範囲であることを特徴とする画像形成体である。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明は、支持体(1)の同一面内もしくは異なる面に、地紋印刷部(2)に埋め込まれた潜像部(3)からなる潜像デバイス(A)と検証用フィルムと同一の機能を有する複数の貫通した穿孔(4A)と非貫通の穿孔(4B)とで形成された穿孔加工部(4)からなる検証デバイス(B)とを具備し、該支持体(1)を変形させ潜像デバイス(A)に対して検証デバイス(B)を重ね合わせたときに潜像画像が出現することを特徴とする画像形成体である。
【0012】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項3記載の画像形成体において、前記穿孔加工部(4)の貫通した穿孔(4A)と非貫通の穿孔(4B)とが垂直又は斜めに設けられていることを特徴とする画像形成体である。
【0013】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項3又は4記載の画像形成体において、前記穿孔加工部(4)にホログラム転写層(10)が設けられていることを特徴とする画像形成体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る画像形成体は、支持体の同一面内もしくは異なる面に、地紋印刷部に埋め込まれた潜像部からなる潜像デバイスと検証用フィルムと同一の機能を有する複数の貫通した穿孔により形成された穿孔加工部からなる検証デバイスとを具備し、該支持体を変形させ潜像デバイスに対して検証デバイスを重ね合わせたときに潜像画像が出現することにより、特別な検証用フィルムを使用せずに媒体のみで有価証券類の真贋判定が正確に容易に行える。
【0015】
また、支持体の同一面内もしくは異なる面に、地紋印刷部に埋め込まれた潜像部からなる潜像デバイスと検証用フィルムと同一の機能を有する複数の貫通した穿孔と非貫通の穿孔とで形成された穿孔加工部からなる検証デバイスとを具備し、該支持体を変形させ潜像デバイスに対して検証デバイスを重ね合わせたときに潜像画像が出現することにより、穿孔加工部自体での真贋判定も可能となる。
【0016】
また、非貫通の穿孔箇所と潜像画像の形成箇所とを重ね合わせることでさらに偽造防止効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図1〜図16に基づいて詳細に説明するが、特にこれに制約されるものではない。
【0018】
図1は本発明に係る画像形成体の1実施例を示す平面図であり、図2は本発明に係る画像形成体の潜像デバイスに対して検証デバイスを重ね合わせたときに支持体の同一面が向き合うように支持体を変形させた状態を示す平面図であり、図3は本発明に係る画像形成体を変形させ、検証デバイスを潜像デバイスに重ねた時に出現した潜像画像の1実施例を示す平面図であり、図4は本発明に係る画像形成体のその他の実施例を示す平面図であり、図5は本発明に係る画像形成体を変形させ、検証デバイスを潜像デバイスに重ねた時に出現した潜像画像のその他の実施例を示す平面図であり、図6は図1における穿孔加工部のX−X線断面の1実施例を示す側断面図であり、図7はホログラム転写フィルムの層構成の1実施例を示す平面図であり、図8は図4における穿孔加工部のY−Y線断面の1実施例を示す側断面図であり、図9は図4における穿孔加工部のY−Y線断面のその他の実施例を示す側断面図であり、図10は図4における穿孔加工部のY−Y線断面のまたその他の実施例を示す側断面図であり、図11は図4における穿孔加工部のY−Y線断面のさらにまたその他の実施例を示す側断面図であり、図12は本発明に係る画像形成体の潜像の原理を説明するための説明図であり、図13は図12の万線パターンによる潜像画像のK部分拡大平面図であり、図14は潜像画像を顕像化するための顕像化万線シートの平面図であり、図15は図14の顕像化万線シートのL部分拡大平面図であり、図16は図12の潜像画像を顕像化した状態の1実施例を示す平面図である。
【0019】
本発明の1実施例の画像形成体は、図1に示すように、支持体(1)の同一面内もしくは異なる面に、地紋印刷部(2)に埋め込まれた潜像部(3)からなる潜像デバイス(A)と検証用フィルムと同一の機能を有する複数の貫通した穿孔(4A)により形成された穿孔加工部(4)からなる検証デバイス(B)とを具備しているものである。
【0020】
前記支持体(1)の同一面内に潜像デバイス(A)と検証デバイス(B)とが存在する場合は、図2に示すように、内側に2つ折りに変形させ潜像デバイス(A)に対して検証デバイス(B)を重ね合わせることにより、図3に示すように、その重ね合わせた穿孔加工部(4)からなる検証デバイス(B)の外面に地紋印刷部(2)に埋め込まれた潜像部(3)の潜像画像が出現する仕組みになっている。
【0021】
もしも、前記潜像デバイス(A)が支持体(1)の同一面内ではなく、裏面の異なる面で、且つ検証デバイス(B)が重ねられる位置に存在するようにしても構わないが、その場合は、潜像デバイス(A)側を外側に2つ折りにして、支持体(1)の同一面内に潜像デバイス(A)と検証デバイス(B)とが存在するように変形させて、潜像デバイス(A)に対して検証デバイス(B)を重ね合わせることにより、図3に示すように、その重ね合わせた穿孔加工部(4)からなる検証デバイス(B)の外面に地紋印刷部(2)に埋め込まれた潜像部(3)の潜像画像が出現する仕組みになっている。
【0022】
前記穿孔加工部(4)の穿孔(4A)径(φ)は、0.1mm<φ<2.0mmの範囲で、且つ該穿孔(4A)間のピッチ(P)がφ<P<3φの範囲であることが好ましい。
【0023】
前記穿孔(4A)の形状は、丸型、楕円型、角型等であり、特に制限されるものではない。
【0024】
また、図6に示すような、検証用フィルムと同一の機能を有する複数の貫通した穿孔(4A)を形成する方法は、CO2レーザやYAGレーザまたは穿孔用プレスもしくはミシン目、針等を用いた微細穴あけ装置などを使用することができる。
【0025】
ここで、本発明に用いることのできる支持体(1)について説明をする。支持体(1)の材料は紙、プラスチックフィルム、プラスチックシート等からなる。その際、その支持体(1)に可撓性が有っても無くてもどちらでも良いが、曲げたときに可撓性が有った方が可撓性が無い支持体よりは一般的に割れにくいので、どちらかと言えば可撓性を有することが好ましい。また、透明性については、不透明なものでも透明なものでもよい。
【0026】
不透明なものとしては、例えば、みつまた、木綿、マニラ麻、亜麻等の繊維を用いた有価証券などの用紙、木材パルプ系の天然繊維を用いた天然和紙、木材パルプ系の天然繊維と合成繊維を用いた混抄和紙、合成繊維のみを用いた合成和紙などの用紙、その他に上質紙、アート紙、コート紙、合成紙、金属箔等を用いることができる。尚、前記用紙の坪量は、50〜150g/m2の範囲が好ましい。
【0027】
次に、透明なものとしては、例えば、延伸加工により作製されたプラスチックフィルムやシートを用いることができる。延伸フィルムには伸ばし方により、1軸延伸、2軸延伸
フィルムがある。これらには、セロハン、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンビニールアルコール(EVOH)、ポリビニールアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(Ny)、アクリル、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどが挙げられる。
【0028】
尚、本発明においては、前記用紙として、製紙工程の段階で透かし画像を設けない用紙、或いは適宜に透かし画像を入れた用紙を使用することも可能であり、また、前記潜像部(3)が埋め込まれた地紋印刷部(2)以外の領域の用紙面には、予め、彩色紋様や細線紋様などの紋様、唐草紋様、文字、数字などが印刷形成されていてもよい。尚、前記穿孔加工部(4)は、印刷の有無の制約はない。
【0029】
次に、前記地紋等を印刷する印刷方式は、オフセット印刷方式、凹版印刷方式、グラビア印刷方式等の公知の印刷方式により、所定の位置に印刷することができる。
【0030】
前記オフセット印刷方式とは、画線部を3μm程度低くした平凹版やPS版、或いは水なし平版を使用し、オフセットインキを用いて印刷する方式である。
【0031】
前記凹版印刷方式とは、画線部を凹ませた状態の版を使用し、凹版用のインキを用いて印刷する方式である。
【0032】
前記グラビア印刷方式とは、鉄製の円筒(シリンダー)表面上に銅メッキを施して下地を形成し、該銅メッキ面上に剥離層を設け、更に銅メッキをして、その表面を鏡面状に研磨した銅面に彫刻方式や腐食方式により、凹部(セル)を作成し、該セル内のグラビア印刷インキを基材面に転移させ、調子物でもカラフルに印刷ができ、且つ訴求効果も高い印刷方式である。
【0033】
前記地紋等を印刷する印刷インキとしては、印刷方式によって、適宜印刷インキは選択する必要があるが、例えば、ボイル油を主成分とする印刷インキ、或いは、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂などの熱硬化性樹脂、又は紫外線により重合硬化する紫外線硬化型樹脂、又はポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂などの熱可塑性樹脂を主体とする樹脂をインキバインダー又はインキビヒクルとする印刷インキを使用することができ、また、p−ニトロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのカチオン重合開始剤及びビスフェノールA−エピクロルヒドリン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂を主成分とする樹脂組成物、及び必要に応じて、反応性希釈剤、有機溶剤、可塑剤など揮発性、又は非揮発性の非反応性希釈剤などを添加した紫外線照射によりカチオン重合し得るエポキシ系樹脂組成物を印刷インキとして使用できる。
【0034】
次に、本発明のその他の実施例の画像形成体は、図4に示すように、支持体(1)の同一面内もしくは異なる面に、地紋印刷部(2)に埋め込まれた潜像部(3)からなる潜像デバイス(A)と検証用フィルムと同一の機能を有する複数の貫通した穿孔(4A)と非貫通の穿孔(4B)とで形成された穿孔加工部(4)からなる検証デバイス(B)とを具備しており、さらに前記穿孔加工部(4)にホログラム転写層(10)が設けられているものである。
【0035】
前記実施例1と同様に前記支持体(1)の同一面内に潜像デバイス(A)と検証デバイス(B)とが存在する場合は、内側に2つ折りに変形させ潜像デバイス(A)に対して検証デバイス(B)を重ね合わせることにより、図5に示すように、その重ね合わせた穿孔加工部(4)からなる検証デバイス(B)の外面に地紋印刷部(2)に埋め込まれた潜像
部(3)の潜像画像が出現する仕組みになっている。
【0036】
もしも、前記潜像デバイス(A)が支持体(1)の同一面内ではなく、裏面の異なる面で、且つ検証デバイス(B)が重ねられる位置に存在するようにしても構わないが、その場合は、潜像デバイス(A)側を外側に2つ折りにして、支持体(1)の同一面内に潜像デバイス(A)と検証デバイス(B)とが存在するように変形させて、潜像デバイス(A)に対して検証デバイス(B)を重ね合わせることにより、図5に示すように、その重ね合わせた穿孔加工部(4)からなる検証デバイス(B)の外面に地紋印刷部(2)に埋め込まれた潜像部(3)の潜像画像が出現する仕組みになっている。
【0037】
すなわち、地紋印刷部(2)と穿孔加工部(4)との重ね合わせにより、図5に示すように、潜像による画像形成部分[穿孔:第2貫通部分(4A−2)]と穿孔:非貫通部分(4B)により、「TOP」の文字が形成される。尚、[穿孔:第1貫通部分(4A−1)]は、潜像による非画像形成部である。
【0038】
本発明のその他の実施例の画像形成体には、前記穿孔加工部(4)の1部が偽造対策層として、ホログラム転写フィルム(5)のホログラム転写層(10)により、ストライプ状に覆われている。
【0039】
前記偽造対策層には、ホログラム転写層(10)以外にも、例えば、光学薄膜による光干渉を応用して観察角度によって色が変化する多層薄膜とか、金属材料を用いた反射膜、等でも構わない。特に、光学効果を高める反射性薄膜が設けてあるものが好ましい。
【0040】
例えば、前述の反射性薄膜が設けてある表面レリーフ型のホログラムの場合は、回折構造に係る微細な凹凸と反射性薄膜との組み合わせによる光学作用のために、単に画像形成体を観察しただけでは、穿孔加工部(4)の穿孔(4A、4B)の存在を視認することは困難である。しかし、この画像形成体を光に翳して(またはバックライトに当てて)観察した場合は、該穿孔(4A、4B)の存在を視認できる。この効果を簡単な真贋判定の手法として応用できる。
【0041】
前記ホログラム転写フィルム(5)の層構成は、図7に示すように、フィルム基材(11)の片面に剥離層(6)、ホログラム形成層(7)、反射性薄膜層(8)、接着層(9)を順次形成したものであり、前記剥離層(6)、ホログラム形成層(7)、反射性薄膜層(8)、接着層(9)の4層をまとめてホログラム転写層(10)と呼んでいる。
【0042】
このようにして得られたホログラム転写層(10)は、前記穿孔加工部(4)上に熱転写方式により偽造対策層として設けられる。
【0043】
前記フィルム基材(11)は、ホログラム転写層(10)の支持体であり、ある程度の剛性と表面の平滑性を有していれば良く、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートフィルム、ポリプロピレンフィルム等の高分子樹脂フィルムを用いることができる。
【0044】
前記剥離層(6)は、後加工において安定していれば、特に制限されるものではないが、例えば、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、あるいはこれらにオイルシリコン、脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛を添加したものが挙げられる。また、無機物であっても良い。
【0045】
該剥離層(6)の形成は、前記樹脂または前記樹脂の混合物を塗料化(もしくはインキ
化)し、バーコート、ブレードコート、エアナイフコート、グラブアロールコート、等のコーティング方式、あるいはグラビア印刷、シルクスクリーン印刷等の印刷方式により、塗布して乾燥することにより、厚さ1〜2μm程度に形成する。
【0046】
前記ホログラム形成層(7)は、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレートなどの熱硬化性樹脂あるいはこれらの混合物、さらにはラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質などが挙げられる。そして、ホログラム画像が形成できる安定性を有するものであれば、何れのものであっても良い。ホログラム画像は特に限定されないが、例えば、0.5〜2μm程度の微小な凹凸により像を表現するレリーフ型ホログラムが好ましい。
【0047】
前記反射性薄膜層(8)は、屈折率の異なるセラミックを交互に特定の膜厚で複数層積層したものであり、例えば、低屈折率層として、酸化マグネシウム(屈折率n=1.6)、二酸化珪素(n=1.5)、フッ化マグネシウム(n=1.4)、フッ化カルシウム(n=1.3〜1.4)、フッ化セリウム(n=1.6)、フッ化アルミニウム(n=1.3)、酸化アルミニウム(n=1.6)の内の1つと、高屈折率層として、二酸化チタン(n=2.4)、二酸化ジルコニウム(n=2.0)、硫化亜鉛(n=2.3)、酸化亜鉛(n=2.1)、酸化インジウム(n=2.0)、二酸化セリウム(n=2.3)、酸化タンタル(n=2.1)の内の1つとを所定の膜厚で積層させた複合層である。この透明蒸着層は、前記の組み合わせからなる層を複数設けることもできる。
【0048】
該反射性薄膜層(8)は、所定の波長領域の光線を反射あるいは透過させること、ならびに見る角度を変えることにより、薄膜内の光路長が変化し、透過光あるいは反射光の色が変わって見えるものである。これにより偽造防止効果を発揮するものである。
【0049】
また、該反射性薄膜層(8)は、膜厚の制御が可能であれば、いかなる成膜方法も使用することができる。中でも薄膜の生成には乾式法が優れており、これには通常の真空蒸着法、スパッタリングなどの物理的気相析出法やCVD法のような化学的気相析出法を用いることができる。
【0050】
前記接着層(9)は、前記反射性薄膜層(8)を変質させたり、冒すものでなければ、通常用いられるもので良く、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリエステル系ポリアミド樹脂などの接着剤があるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0051】
該接着層(9)の形成は、前記接着剤をバーコート、ブレードコート、エアナイフコート、グラビアロールコート、等のコーティング方式、あるいはグラビア印刷、シルクスクリーン印刷等の印刷方式により、塗布して乾燥することにより、厚さ0.5〜2μm程度に形成する。
【0052】
以上のような材料構成からなるホログラム転写フィルム(5)のホログラム転写層(10)を支持体(1)の穿孔加工部(4)の1部を覆うように熱圧着ロールや加熱プレスを用いた熱転写方式で転写する。前記用紙(1)に加熱・加圧により固着し、一体化することにより、該ホログラム転写層(10)を剥がそうとすると、相関剥離現象が発生せず、綺麗に剥離することができない。さらに無理に剥がそうとすると、前記穿孔加工部(4)の穿孔(4A、4B)の1部が破壊されるので、外観等の見栄えが悪くなり、偽造や改竄などが施されたことが一目できる。
【0053】
また、図8〜図11に示すように、前記穿孔加工部(4)に設けられた貫通した穿孔(4A)と非貫通の穿孔(4B)とは、垂直又は斜めに設けられている。このように垂直又は斜めに設けることで、画像形成体に光等を通しただけで、真贋判定が容易になる。
【0054】
図8は、支持体(1)に垂直に貫通した穿孔(4A)と非貫通の穿孔(4B)とを設けて、穿孔加工部(4)を形成した後、該穿孔加工部(4)の1部にホログラム転写層(10)を施したものであり、図4の穿孔加工部のY−Y線断面の1実施例を示す側断面図である。
【0055】
図9は、支持体(1)の穿孔加工部(4)の1部にホログラム転写層(10)を施した後、垂直に貫通した穿孔(4A)と非貫通の穿孔(4B)とを設けたものであり、図4の穿孔加工部のY−Y線断面のその他の実施例を示す側断面図である。
【0056】
図10は、支持体(1)に斜めに貫通した穿孔(4A)と非貫通の穿孔(4B)とを設けて、穿孔加工部(4)を形成した後、該穿孔加工部(4)の1部にホログラム転写層(10)を施したものであり、図4の穿孔加工部のY−Y線断面のまたその他の実施例を示す側断面図である。
【0057】
図11は、支持体(1)の穿孔加工部(4)の1部にホログラム転写層(10)を施した後、垂直に貫通した穿孔(4A)と非貫通の穿孔(4B)とを設けたものであり、図4の穿孔加工部のY−Y線断面のさらにまたその他の実施例を示す側断面図である。
【0058】
ところで、本発明の画像形成体に利用されている潜像の原理等について、図12〜図16に基づいて説明する。
【0059】
図12に示すように、支持体(1)に通常印刷画像(1a)と万線パターン(30)とを印刷した画像形成体において、前記万線パターン(30)には、潜像万線パターン(30a)(例えば、図示するように六角形パターン部分)を備え、この万線パターン(30)における潜像万線パターン(30a)は、図13のK部分拡大図に示すように、潜像万線パターン(30a)の内側領域と外側領域のそれぞれ平行直線(万線)のピッチ位相を両領域の境界相当部分(潜像万線パターン(30a)の輪郭線)に沿って半ピッチ分ずらすことにより形成されており、図中、潜像万線パターン(30a)である六角形の図形の輪郭に沿って、万線位相ずれ部(30b)が形成されている。
【0060】
すなわち、支持体(1)上にオフセット印刷方式などにより形成される線部(70a)と非線部(70b)の万線(平行直線)比率が1:1の同一万線ピッチによる万線(70)を平行に配置した万線パターン(30)が形成され、該万線パターン(30)領域内に該万線パターン(30)に対して万線位相を半ピッチ分だけずらして形成した潜像万線パターン(30a)を備えている構成である。尚、前記万線パターン(30)を形成する方法は、印刷方式以外に、例えば、アルミニウム箔からなる支持体(1)を用いて、該支持体(1)上に微細なエンボス加工により形成することも可能である。
【0061】
前記万線パターン(30)を構成する平行直線(万線)(70)は、非常に細い微細な線幅となっている。また、この万線パターン(30)の内側領域に形成されている潜像万線パターン(30a)の万線(70)は、その外側領域の万線(70)に対してピッチ位相がずれているだけであり、しかも万線(70)は微細であるので、潜像万線パターン(30a)は、視覚的には(見かけ上は)、画像としては何も目視観察されず、支持体(1)上に両端に文字や絵柄などの画像が印刷された通常印刷画像(1a)と万線パターン(30)だけが観察される。尚、万線パターン(30)の万線幅は非常に微細な線幅などで
構成されているので通常印刷画像(1a)の印刷デザインには支障を及ぼさないので万線パターン(30)内に通常印刷画像(1a)を下絵として用いても構わない。
【0062】
次に、図14に示すように、前記万線パターン(30)と同じ万線比率と同じ万線ピッチの顕像化用万線パターン(50)を透明基材(60)に形成した顕像化万線シート(C)を作製する。該顕像化万線シート(C)は、図15のL部分拡大図に示すように、透明基材(60)上にオフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷、シルクスクリーン印刷などの公知の印刷方式、或いは箔押し、コーティング、インクジェット方式などにより形成される線部(70a)と非線部(70b)の万線(平行直線)比率が1:1の同一万線ピッチによる万線(7)を平行に配置した構成からなっている。
【0063】
前記透明基材(60)は、例えば、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリスチレン樹脂(PS)などの熱可塑性樹脂からなる透明なプラスチックフィルムまたはシート、さらにガラスなどが用いられる。
【0064】
このようにして得られた顕像化万線シート(C)を前記支持体(1)上の万線パターン(30)上に平行に重ね合せると、該万線パターン(30)領域内に形成された潜像万線パターン(30a)の内側領域と外側領域のそれぞれ万線は半ピッチ分ずれているために、顕像化用万線パターン(50)の万線と、該支持体(1)上に形成されている万線パターン(30)の潜像万線パターン(30a)の内側領域と外側領域の半ピッチ分ずれているそれぞれの万線とに、互いに重なり合う(万線パターン(30)の万線が隠れる)部分と、重なり合わない(万線パターン(30)の万線が隠れない)部分が発生する。
【0065】
その結果、図16に示すように、例えば、顕像化用万線パターン(50)の万線と重なり合わない万線パターン(30)の万線が、潜像万線パターン(30a)(例えば、図示するように六角形パターン部)領域内の万線パターン(30)を構成する万線であれば、その万線が顕像化用万線パターン(50)の各万線[不透明な線部(70a)]の間の透明部分[透明な非線部(70b)]を透して目視にて観察されて潜像万線パターン(30a)が顕像化して、ポジティブ画像の顕像画像(D)として観察される。
【0066】
他方、例えば、顕像化用万線パターン(50)の万線と重なり合わない万線パターン(30)の万線が、潜像万線パターン(30a)(例えば、図示するように六角形パターン部)領域外の万線パターン(30)を構成する万線であれば、その万線が顕像化用万線パターン(50)の各万線[不透明な線部(70a)]の間の透明部分[透明な非線部(70b)]を透して目視にて観察されて潜像万線パターン(30a)が顕像化して、ネガティブ画像の顕像画像(D)として観察される。
【0067】
本発明において、図12および図16に図示した万線パターン(30)領域の全体形状は、横長方向に配置した直線条の形状領域としたが、これに限定されず、縦長方向に配置した直線条の形状領域でもよく、また、例えば、直線状、波線状、曲線状、又はこれらの組合せによる線条の形状領域、又は角ドット状、丸ドット状、網ドット状、格子ドット状、又はこれらの組合せによるドット形状など、それぞれ細かく分割された形状領域であってもよい。
【0068】
また、該万線パターン(30)領域が、支持体(1)上の略全領域に亘って又は1乃至数箇所に区分されて形成されていても構わない。さらに前記潜像万線パターン(30a)が、前記万線パターン(30)領域内の異なる箇所に複数形成されていてもよい。
【0069】
前記万線パターン(30)の万線(70)と、顕像化万線シート(C)の顕像化用万線
パターン(50)の万線(70)のそれぞれ万線ピッチは、20〜2000μm、好ましくは、20〜1000μmの範囲の内のいずれかに設定することが好ましく、万線ピッチが20μm未満であると、ピッチに対して1/2の線部(70a)と非線部(70b)のそれぞれ線幅が、10μm未満の極めて細い線幅となるため、潜像万線パターン(30a)のデザインも細かすぎて、顕像化万線シート(C)を重ね合わせて観察しても、再現性が悪く顕像化が弱くなる。
【0070】
他方、前記万線(70)のピッチが2000μmより大きいと、線部(70a)と非線部(70b)の線幅が、それぞれ1000μmより大きい極めて太い線幅となるため、潜像万線パターン(30a)のデザインも粗くなって、顕像化万線シート(C)を重ね合わせて顕像化した際に見ずらく、したがって視認が不可能となる場合があり、また、顕像化万線シート(C)を介在させなくても潜像万線パターン(30a)が判別できてしまったりする。
【0071】
したがって、前記それぞれ万線(70)の線部(70a)および非線部(70b)の線幅(1/2)は、10〜1000μmの範囲のいずれか、好ましくは10〜500μmの範囲のいずれかに設定することが望ましい。
【0072】
本発明において、万線パターン(30)および潜像万線パターン(30a)の万線(70)、及び顕像化万線シート(C)の万線(70)の万線ピッチを20〜1000μmの範囲内、万線(70)の線部(70a)および非線部(70b)の線幅(1/2)を10〜500μmの範囲内において設定することにより、顕像化万線シート(C)を重ね合わせ整合した際には、明確な顕像画像(D)が表出する良好な潜像万線パターン(30a)を備えた画像形成体が得られる。
【0073】
以上のような潜像の原理を利用した、本発明に係る画像形成体は、支持体の同一面内もしくは異なる面に、地紋印刷部に埋め込まれた潜像部からなる潜像デバイスと検証用フィルムと同一の機能を有する複数の貫通した穿孔により形成された穿孔加工部からなる検証デバイスとを具備し、該支持体を変形させ潜像デバイスに対して検証デバイスを重ね合わせたときに潜像画像が出現することにより、特別な検証用フィルムを使用せずに媒体のみで有価証券類の真贋判定が正確に容易に行える。
【0074】
また、支持体の同一面内もしくは異なる面に、地紋印刷部に埋め込まれた潜像部からなる潜像デバイスと検証用フィルムと同一の機能を有する複数の貫通した穿孔と非貫通の穿孔とで形成された穿孔加工部からなる検証デバイスとを具備し、該支持体を変形させ潜像デバイスに対して検証デバイスを重ね合わせたときに潜像画像が出現することにより、特別な検証用フィルムを使用せずに媒体のみで有価証券類の真贋判定が正確に容易に行える。また、穿孔加工部自体での真贋判定も可能となる。さらに、非貫通の穿孔箇所と潜像画像の形成箇所とを重ね合わせることでさらに偽造防止効果が得られる。
【0075】
さらに、検証デバイスにホログラム転写層からなる偽造防止層を付与することにより、より一層の偽造防止効果の向上と改竄防止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る画像形成体の1実施例を示す平面図である。
【図2】本発明に係る画像形成体の潜像デバイスに対して検証デバイスを重ね合わせたときに支持体の同一面が向き合うように支持体を変形させた状態を示す平面図である。
【図3】本発明に係る画像形成体を変形させ、検証デバイスを潜像デバイスに重ねた時に出現した潜像画像の1実施例を示す平面図である。
【図4】本発明に係る画像形成体のその他の実施例を示す平面図である。
【図5】本発明に係る画像形成体を変形させ、検証デバイスを潜像デバイスに重ねた時に出現した潜像画像のその他の実施例を示す平面図である。
【図6】図1における穿孔加工部のX−X線断面の1実施例を示す側断面図である。
【図7】ホログラム転写フィルムの層構成の1実施例を示す平面図である。
【図8】図4における穿孔加工部のY−Y線断面の1実施例を示す側断面図である。
【図9】図4における穿孔加工部のY−Y線断面のその他の実施例を示す側断面図である。
【図10】図4における穿孔加工部のY−Y線断面のまたその他の実施例を示す側断面図である。
【図11】図4における穿孔加工部のY−Y線断面のさらにまたその他の実施例を示す側断面図である。
【図12】本発明に係る画像形成体の潜像の原理を説明するための説明図である。
【図13】図12の万線パターンによる潜像画像のK部分拡大平面図である。
【図14】潜像画像を顕像化するための顕像化万線シートの平面図である。
【図15】図14の顕像化万線シートのL部分拡大平面図である。
【図16】図12の潜像画像を顕像化した状態の1実施例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0077】
A・・・潜像デバイス
B・・・検証デバイス
C・・・顕像化万線シート
D・・・顕像画像
K・・・拡大部分
L・・・拡大部分
1・・・支持体
1a・・・通常印刷画像
2・・・地紋印刷部
3・・・潜像部
4・・・穿孔加工部
4A・・・貫通した穿孔
4B・・・非貫通の穿孔
4A−1・・・潜像による非画像形成部[穿孔:第1貫通部分(4A−1)]
4A−2・・・潜像による画像形成部分[穿孔:第2貫通部分(4A−2)]
5・・・ホログラム転写フィルム
6・・・剥離層
7・・・ホログラム形成層
8・・・反射性薄膜層
9・・・接着層
10・・・ホログラム転写層
11・・・フィルム基材
30・・・万線パターン
30a・・・潜像万線パターン
30b・・・万線位相ずれ部
50・・・顕像化用万線パターン
60・・・透明基材
70・・・万線
70a・・・線部
70b・・・非線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の同一面内もしくは異なる面に、地紋印刷部に埋め込まれた潜像部からなる潜像デバイスと検証用フィルムと同一の機能を有する複数の貫通した穿孔により形成された穿孔加工部からなる検証デバイスとを具備し、該支持体を変形させ潜像デバイスに対して検証デバイスを重ね合わせたときに潜像画像が出現することを特徴とする画像形成体。
【請求項2】
前記穿孔加工部の穿孔径(φ)が0.1mm<φ<2.0mmの範囲で、且つ該穿孔間のピッチ(P)がφ<P<3φの範囲であることを特徴とする請求項1記載の画像形成体。
【請求項3】
支持体の同一面内もしくは異なる面に、地紋印刷部に埋め込まれた潜像部からなる潜像デバイスと検証用フィルムと同一の機能を有する複数の貫通した穿孔と非貫通の穿孔とで形成された穿孔加工部からなる検証デバイスとを具備し、該支持体を変形させ潜像デバイスに対して検証デバイスを重ね合わせたときに潜像画像が出現することを特徴とする画像形成体。
【請求項4】
前記穿孔加工部の貫通した穿孔と非貫通の穿孔とが垂直又は斜めに設けられていることを特徴とする請求項3記載の画像形成体。
【請求項5】
前記穿孔加工部にホログラム転写層が設けられていることを特徴とする請求項3又は4記載の画像形成体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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