説明

画像形成体

【課題】透明層内部に画像を有する偽造防止に適した画像形成体であって、透明層の内部を該透明層の表面と平行な方向に光を通すことにより、透明層の厚さ方向に画像を表示できる画像形成体を提供すること。
【解決手段】透明層2の内部に選択形成された光散乱点3を含む画像形成面4を有し、該画像形成面が、前記透明層の表面に対して傾斜している。また、前記画像形成面に選択形成された光散乱点が、レーザ光の照射により形成されることを特徴とする画像形成体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明層内部に画像を有する偽造防止に適した画像形成体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パスポート、IDカード、等の表示情報の認証を重視する製品は、偽造防止に適した構造の画像形成体を用いてきた。また、近年は、医薬品、電子部品、を初め、広い分野でセキュリティーやトレーサビリティーの必要から、種々の偽造防止の手段が採用されるようになった。
【0003】
偽造防止の手段として、透明プラスチックやガラス等の透明層の内部にレーザ光を照射して文字や図形をマーキングする加工手段が有力な方法である(特許文献1〜3参照)。加工用のレーザ光源として、Nd:YAGレーザやNd:YVOレーザ等のLD励起固体レーザが一般に用いられ、1.064μmの波長を有する基本波または非線形光学結晶による波長変換を経た第2高調波が使用できる。その他、大出力用として、COレーザも用いられる。
【0004】
レーザ光により透明層の内部が加工されるメカニズムの詳細は不明であるが、レーザ光の収束角度と焦点を調節することにより、一定の内部深さの点に「焼き付け」に相当する損傷または物性値の変化領域を作り出すことができ、照明光を与えた時に光散乱点となって周囲の他の領域と異なる見え方をするため、全体を画像として捉えることができると見られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−336981号公報
【特許文献2】特開2001−80297号公報
【特許文献3】特開2008−221659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、レーザ光を利用することにより、透明層内部に画像を有する偽造防止に適した画像形成体を得ることができるが、引き続き高度化する偽造手段に対抗するために、偽造防止のための更なる改良も必要である。画像形成体の画像が特定の照明光に対応する一定の画像として認識され、画像と照明光との状態を認証することができれば、さらに偽造防止の効果を高めることができる。また、画像形成体に接続する専用の照明光を与えることにより、周囲の照明とは別に、色彩を選択して意匠性を高めた画像形成体とすることができる。
【0007】
本発明は、前記の問題点に鑑みて提案するものであり、本発明が解決しようとする課題は、透明層の内部を該透明層の表面と平行な方向に光を通すことにより、透明層の厚さ方向に画像を表示できる画像形成体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、透明層の内部に選択形成された光散乱点を含む画像形成面を有し、該画像形成面が、前記透明層の表面に対して傾斜していることを特徴とする画像形成体である。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記画像形成面に選択形成された光散乱点が、レーザ光の照射により形成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成体である。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、複数の前記透明層を積層してなることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成体である。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記透明層が3層よりなる画像形成体であって、前記3層の透明層の内部の3つの画像形成面のそれぞれが、最終的に表示したいカラー画像データをR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色に分解したデータの内、いずれか一色づつのデータに対応する光散乱点群を有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成体である。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、前記透明層の最下層の下面に不透明層を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成体である。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、前記透明層の最上層の上面に半透明の隠蔽層を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の画像形成体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、透明層の表面に対して傾斜している画像形成面を前記透明層の内部に選択形成した画像形成体を提供する。従って、前記透明層の内部を表面と平行な方向に光を通すことにより、透明層の厚さ方向に画像を表示することができる。上記の機能を有する画像形成体は、使用する照明光と一体化することにより、さらに偽造防止効果を高め、また、前記照明光の色彩を選択して意匠性を高めることができる。
【0015】
また、請求項4によれば、自然色のカラー表示が可能な画像形成体を提供することができる。
【0016】
また、請求項5によれば、不透明層に適当な単色を設けたり、光反射層とすることにより、背景に対して認識しやすい画像を表示できる。
【0017】
また、請求項6によれば、半透明の隠蔽層により光散乱点の加工を通常は隠しておくことができ、前記透明層の内部を表面と平行な方向に光を通す場合に、散乱光による画像を浮かび上がらせることができるので、本発明の画像形成体の表示時と非表示時との対比をさらに明瞭にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一つの構成例を説明するための模式断面図である。
【図2】本発明の画像形成体の使用状態を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は模式断面図である。
【図3】本発明の積層タイプの構成例とその使用状態を説明するための模式断面図である。
【図4】本発明の不透明層を設けた構成例を説明するための模式断面図である。
【図5】本発明の隠蔽層を設けた構成例を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態を、以下、図面に従って説明する。
図1は、本発明の一つの構成例を説明するための模式断面図である。画像形成体1を構成する透明層2があって、透明層2の内部に光散乱点3が選択的に形成される。前記光散乱点3は、一平面上に形成されており、該一平面が画像形成面4であって、前記画像形成面
4は、前記透明層2の表面に対して傾斜している。
【0020】
前記画像形成面4に選択形成される光散乱点3は、レーザ光の収束角度と焦点を一点ごとに順次調節した照射を繰り返すことにより、透明層2の内部の深さを変えて、焼き付け形成することができる。また、他の方法として、前記透明層2を前記画像形成面4とすべき面で分割した初期の分割透明層を予め準備して、画像形成面4となる初期の分割透明層の一方の表面にレーザ光の焼き付けをして光散乱点3を形成し、然る後に、前記画像形成面4が内部に傾斜して位置するように他方の分割透明層を貼り合わせることにより、画像形成体1を形成することもできる。
【0021】
なお、前記透明層2に光散乱点3を焼き付け形成するための加工用のレーザ光源として、上述のNd:YAGレーザやNd:YVOレーザ等のLD励起固体レーザや、COレーザが使用できる。
【0022】
図2は、本発明の画像形成体の使用状態を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は模式断面図である。画像形成体1を組み込んで使用する製品10において、画像形成体1を構成する透明層2の表面と平行な方向、即ち、透明層2の厚さ方向と垂直な方向に照明光7を通すのに最適な位置に照明光源6を設置して点灯する。画像形成体を使用する製品10の上方に表示画像5が観察できるのは、照明光7が透明層2の内部を通り、光散乱点3に到達して散乱することにより、上方に抜け出てくる散乱光8を観察できるからである。
【0023】
図2(a)では、照明光源6を透明層2の一辺の近傍に設置しているが、照明光源6からの照明光7が効率よく透明層2の内部に取り込める構造が望ましいので、照明光源6を前記画像形成体1と合体して、使うことがさらに好ましい。照明光源6としては、近年、液晶表示装置等の平面型電子表示装置に多用される極細の蛍光管やLED光源等、小型、薄型タイプの光源を使うことができる。光源の特性や追加で使用する色フィルタにより、得られる照明光7の分光スペクトルを選択でき、白色または各種の着色光源として利用できる。
【0024】
また、照明光7を取り込む透明層2の一辺は、透明層2の表面に対して傾斜する画像形成面4が透明層2の表面と交わる線と平行に近い関係であることが、有効な散乱を光散乱点3で多く発生させる上で、望ましい。
【0025】
次に、前記画像形成体1を構成する透明層2を複数層重ねて、一体の画像形成体とする例について、図3により説明する。図3は、本発明の積層タイプの構成例とその使用状態を説明するための模式断面図である。透明層21、22、23の各層は、それぞれが図1に示した透明層2の構造と同様に、内部に選択形成された光散乱点3を含む画像形成面41、42、43を有し、該画像形成面41、42、43が、前記透明層21、22、23の表面に対して傾斜している。
【0026】
前記積層タイプの構成例において、画像の表示は、照明光源61、62、63を前記各透明層21、22、23のそれぞれの特定の辺に接近させて設置し、照明光7を透明層内に通し、光散乱点3の各点での散乱光8を得て、図の上方に表示させることができる。図では、画像形成面41、42、43を同一の傾斜で同一の方向に揃えて示しているが、各透明層の画像形成面の傾斜や、方向を変化させることもできる。また、前記画像形成面の向きに応じて、上述のように照明光7を取り込む透明層の一辺を特定し、照明光源61、62、63の具体的な設置位置を決めることができる。さらに言えば、設計上、照明光源を設置したい位置を考慮して、各透明層の画像形成面の向きを決めれば良い。
【0027】
前記複数の透明層21、22、23を積層して、それぞれの透明層の内部に専用の照明光7を通し、光散乱点3の各点での散乱光8を得て、図の上方に併せて表示させるために、照明光7が各透明層の内部をほぼ直進して光散乱点まで到達することが望ましい。使用する照明光源61、62、63の照明の指向性が高いことが有利であるが、各透明層21、22、23の光学的特性を選択することによっても高い指向性を得ることができる。各透明層の屈折率が異なるように、材料を選択する、または、画像形成体を構成する前記各透明層の間に特に低屈折率の材料から成る透明接続層(図示せず)を追加で設けて前記各透明層が相対的に高い屈折率を保つようにすることによって、照明光の導波路としての機能を各透明層に与えることができる。
【0028】
前記透明層としては、一般的に用いられる有機材料または無機材料を用いることができる。例えば、アクリル系樹脂や光学ガラス材料をベースに屈折率の調節を行うことができる。
【0029】
また、前記複数の透明層が3層よりなる画像形成体であって、前記3層の透明層の内部の3つの画像形成面41、42、43のそれぞれが、最終的に表示したいカラー画像データをR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色に分解したデータの内、いずれか一色づつのデータ、例えば、41はRに、42はGに、43はBに対応する光散乱点群を有するように形成することができる。そのように形成された画像形成体に、照明光源61、62、63をそれぞれR、G、Bの光の3原色の各分光スペクトルに対応する照明光を発するように選択すれば、自然色のカラー表示が可能な画像形成体として用いることができる。
【0030】
また、上記3つの照明光源の1つまたは2つを選択して点灯すれば、画像形成体が色分解された単色または合成色での表示媒体として用いられる。さらに、上記3層の透明層より成る画像形成体の例で、照明光源61、62、63をそれぞれY(黄色)、M(マゼンタ色)、C(シアン色)の減色混合の3原色の各分光スペクトルに対応する照明光を発するように選択すれば、明るいカラー表示が可能な画像形成体として用いることができる。なお、前記複数の透明層が3層よりなる画像形成体の場合を代表例として説明したが、さらに透明層の数を増やして、特殊な色彩表現を加えることも容易に考えられる。
【0031】
図4は、本発明の不透明層を設けた構成例を説明するための模式断面図である。
前記透明層21、22、23の最下層(本例では透明層21)の下面に不透明層91を設ける。例えば、不透明層91として、白色のポリカーボネート層を貼り合わせることによって、前記透明層21、22、23のそれぞれの画像形成面41、42、43上の光散乱点3の各点から発せられる散乱光8の内、下向きの散乱光を前記ポリカーボネート層の表面で反射して上方へ向ける。背景色となる白の中に光散乱点からの合成散乱光が浮かび上がる表現を得ることができる。
【0032】
前記不透明層91は白色に限定されず、他の適当な単色に着色したプラスチック板を用いることも可能であり、また、金属板や金属薄膜を利用して金属反射を活かす色表現も可能である。上記のいずれも、光散乱点3からの散乱光8を際立たせ、背景に対して認識しやすい画像を表示することができる。
【0033】
図5は、本発明の隠蔽層を設けた構成例を説明するための模式断面図である。
前記透明層21、22、23の最上層(本例では透明層23)の上面に半透明の隠蔽層92を設ける。前記半透明の隠蔽層92により光散乱点3の加工状態を通常は隠しておくことができる。前記透明層の内部を表面と平行な方向に光を通す場合に、散乱光による画像を半透明の隠蔽層92を通して明示することができるので、本発明の画像形成体の表示時と非表示時との対比をさらに明瞭にすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1・・・画像形成体
2・・・透明層
3・・・光散乱点
4・・・画像形成面
5・・・表示画像
6・・・照明光源
7・・・照明光
8・・・散乱光
10・・・画像形成体を使用する製品
21、22、23・・・透明層(積層)
41、42、43・・・画像形成面(積層)
61、62、63・・・照明光源(積層)
91・・・不透明層
92・・・半透明の隠蔽層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明層の内部に選択形成された光散乱点を含む画像形成面を有し、該画像形成面が、前記透明層の表面に対して傾斜していることを特徴とする画像形成体。
【請求項2】
前記画像形成面に選択形成された光散乱点が、レーザ光の照射により形成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成体。
【請求項3】
複数の前記透明層を積層してなることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成体。
【請求項4】
前記透明層が3層よりなる画像形成体であって、前記3層の透明層の内部の3つの画像形成面のそれぞれが、最終的に表示したいカラー画像データをR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色に分解したデータの内、いずれか一色づつのデータに対応する光散乱点群を有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成体。
【請求項5】
前記透明層の最下層の下面に不透明層を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成体。
【請求項6】
前記透明層の最上層の上面に半透明の隠蔽層を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の画像形成体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−51197(P2011−51197A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201374(P2009−201374)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】