説明

画像形成方法と画像形成装置

【課題】 様々な記録媒体への画像記録ができ、フェザリング、ビーディング及びカラーブリードの発生を防止し、耐擦過性、耐水性、光沢性、ガス褪色耐性に優れたインクジェット記録画像が得られる画像形成方法と画像形成装置を提供する。
【解決手段】 少なくとも色剤と、水と、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物とを含有するインクジェット用インクを、記録ヘッドにより記録媒体に吐出して画像を記録し、該画像に活性エネルギー線を照射した後、該インクジェット用インクを吐出した該記録媒体表面にコーティング材料を付与することを特徴とする画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に形成したインクジェット記録画像上にコーティング材料を付与する画像形成方法と画像形成装置であって、詳しくは、普通紙に形成した画像のフェザリングが良好で、さらにインク吸収性の少ないまたはインク吸収性のない記録媒体に対してはビーディングやカラーブリードが改良され、かつ記録した画像の耐擦過性、耐水性、光沢性、ガス褪色耐性に優れた画像が得られる画像形成方法と画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、比較的簡単な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。また、使用される用途も多岐にわたり、それぞれの目的にあった記録媒体あるいはインクが使用される。
【0003】
特に、近年では記録速度の大幅な向上がみられ、軽印刷用途にも耐え得る性能を持つプリンタの開発も行われている。
【0004】
しかしながら、インクジェットプリンタにおいてその性能を引き出すためにはインクの吸収性を付与したインクジェット専用紙が必要である。
【0005】
インクの吸収性があまり無いコート紙やアート紙、もしくは吸収性の全くないプラスチックフイルム上に記録する際には、異色インク液体同士が記録媒体上で混ざり色濁りを起こすいわゆるブリード等の課題があり、インクジェットに対して記録媒体の多様性をもたせる上で課題となっていた。
【0006】
上記の課題において、室温において固体のワックス等を素材とするホットメルト型インク組成物を用い、加熱等により液化し、何らかのエネルギーを加えて噴射させ、記録媒体上に付着しつつ冷却固化して記録ドットを形成するホットメルト型インクジェット記録方法が提案されている。
【0007】
このインクは室温で固体であるために取り扱い時に汚れることが無く、また、溶融時のインク蒸発量が実質無いためノズルの目詰まりがない。さらに、付着後直ちに固化するため色にじみも少なく、紙質に関係なく良好な印刷品質を提供するインク組成物が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0008】
しかしながらこのような方法で記録された画像は、インクドットが柔らかいワックス状であるため、ドットの盛り上がりに起因する品質の劣化や、擦過性能の不足等の課題があった。
【0009】
一方、紫外線を露光することにより硬化するインクジェット記録用インクが開示されている(特許文献3参照)。また、顔料が必須に含有され、かつ重合性材料として三官能以上のポリアクリレートが必須とされており、かつ、ケトン、アルコールを主溶剤とするいわゆる非水系インクが提案されている(特許文献4参照)。
【0010】
また、水系の紫外線重合モノマーを用いたインクが提案されている(特許文献5参照)。
【0011】
これらの方法では、インク自身を硬化成分により硬化させるため非吸収性の媒体に対しても記録が可能となったが、色剤以外の硬化成分が多量に含有し、かつ揮発しないため記録面がインクドットにより盛り上がり、画質、特に光沢の不自然さを生じさせた。
【0012】
さらに、従来公知の硬化性分に対しては安全上の懸念点があり、たとえ安全性をクリアしたとしても物質選択の狭さがあり素材、物性の自由な設計を行えないという課題があった。
【0013】
更に、形成したインクジェット記録画像の保存性を向上させる手段として、酸素不透過性のラミネートフィルムを、記録画像上に貼り付ける方法が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。また、形成したインクジェット記録画像全面に、成膜性のあるポリマー微粒子を含むラミネート溶液を付着する方法が開示されている(例えば、特許文献7参照。)。しかしながら、ここで開示されている方法では、貼り付ける際にラミネートフィルムと形成画像間に気泡が入ったり、シワ等が生じやすいという課題と共に、ラミネートフィルムまたはラミネート材を付与するインクジェット記録画像自身が、記録媒体の種類によりフェザリング耐性、カラーブリード耐性やビーディング耐性が十分でなく、また形成した画像の耐擦過性、耐水性、光沢性、ガス褪色耐性に劣るため、ラミネート処理を施しても高品位の画像を得ることができないのが現状である。
【特許文献1】米国特許第4,391,369号明細書
【特許文献2】米国特許第4,484,948号明細書
【特許文献3】米国特許第4,228,438号明細書
【特許文献4】特公平5−64667号公報
【特許文献5】特開平7−224241号公報
【特許文献6】特開昭59−104974号公報
【特許文献7】特開2002−201428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、様々な記録媒体への画像記録ができ、フェザリング、ビーディング及びカラーブリードの発生を防止し、耐擦過性、耐水性、光沢性、ガス褪色耐性に優れたインクジェット記録画像が得られる画像形成方法と画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0016】
(1)少なくとも色剤と、水と、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物とを含有するインクジェット用インクを、記録ヘッドにより記録媒体に吐出して画像を記録し、該画像に活性エネルギー線を照射した後、該インクジェット用インクを吐出した該記録媒体表面にコーティング材料を付与することを特徴とする画像形成方法。
【0017】
(2)前記インクジェット用インクを記録ヘッドにより記録媒体に吐出し、活性エネルギー線を照射した後、前記コーティング材料を付与する前に、前記インクジェット用インクに乾燥処理を施すことを特徴とする前記(1)項に記載の画像形成方法。
【0018】
(3)前記インクジェット用インクを記録ヘッドにより記録媒体に吐出し、活性エネルギー線を照射し、次いで前記コーティング材料を付与した後に、前記インクジェット用インク及びコーティング材料に乾燥処理を施すことを特徴とする前記(1)項に記載の画像形成方法。
【0019】
(4)前記コーティング材料は、水蒸気透過性を有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0020】
(5)前記インクジェット用インクは、前記高分子化合物をインク全質量に対して、0.8質量%以上、5.0質量%以下含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0021】
(6)前記高分子化合物の親水性主鎖がポリ酢酸ビニルのケン化物であり、かつケン化度が77%以上、99%以下で、重合度が200以上、4000以下であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0022】
(7)前記高分子化合物の前記親水性主鎖に対する前記側鎖の変性率が、0.8モル%以上、4モル%以下であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0023】
(8)前記コーティング材料は液状であって、前記画像が記録された記録媒体の表面に該コーティング材料を付与した後、該コーティング材料が含有する溶媒を蒸発させることにより膜状に固化して、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0024】
(9)前記コーティング材料は液状であって、前記画像が記録された記録媒体の表面に該コーティング材料を付与した後、活性エネルギー線を照射して該コーティング材料を膜状に固化して、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0025】
(10)前記コーティング材料はフィルム上に保持されていて、前記画像が記録された記録媒体の表面に該フィルムに保持されたコーティング材料を密着させることにより、コーティング材料を該フィルムから記録媒体表面に転写することにより、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0026】
(11)前記コーティング材料はフィルム状であって、前記画像が記録された記録媒体の表面にフィルム状の該コーティング材料を密着させることにより、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0027】
(12)少なくとも色剤と、水と、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物とを含有するインクジェット用インクを、記録ヘッドにより記録媒体に吐出して画像を記録する画像記録手段と、記録した該画像に活性エネルギー線を照射して硬化する活性エネルギー線照射手段と、硬化した画像を有する該記録媒体表面にコーティング材料を付与するコーティング材料付与手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【0028】
(13)前記インクジェット用インクを記録ヘッドにより記録媒体に吐出し、活性エネルギー線を照射した後、前記コーティング材料を付与する前に、前記インクジェット用インクを乾燥させる乾燥工程を有することを特徴とする前記(12)項に記載の画像形成装置。
【0029】
(14)前記インクジェット用インクを記録ヘッドにより記録媒体に吐出し、活性エネルギー線を照射し、次いで前記コーティング材料を付与した後に、前記インクジェット用インク及びコーティング材料を乾燥させる乾燥工程を有することを特徴とする前記(12)項に記載の画像形成装置。
【0030】
(15)前記コーティング材料は、水蒸気透過性を有することを特徴とする前記(12)〜(14)のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0031】
(16)前記インクジェット用インクは、前記高分子化合物をインク全質量に対して、0.8質量%以上、5.0質量%以下含有することを特徴とする前記(12)〜(15)のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0032】
(17)前記高分子化合物の親水性主鎖がポリ酢酸ビニルのケン化物であり、かつケン化度が77%以上、99%以下で、重合度が200以上、4000以下であることを特徴とする前記(12)〜(16)のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0033】
(18)前記高分子化合物の前記親水性主鎖に対する前記側鎖の変性率が、0.8モル%以上、4モル%以下であることを特徴とする前記(12)〜(17)のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0034】
(19)前記コーティング材料は液状であって、前記画像が記録された記録媒体の表面に該コーティング材料を付与した後、該コーティング材料が含有する溶媒を蒸発させることにより膜状に固化して、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする前記(12)〜(18)のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0035】
(20)前記コーティング材料は液状であって、前記画像が記録された記録媒体の表面に該コーティング材料を付与した後、活性エネルギー線を照射して該コーティング材料を膜状に固化して、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする前記(12)〜(18)のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0036】
(21)前記コーティング材料はフィルム上に保持されていて、前記画像が記録された記録媒体の表面に該フィルムに保持されたコーティング材料を密着させることにより、コーティング材料を該フィルムから記録媒体表面に転写することにより、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする前記(12)〜(18)のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0037】
(22)前記コーティング材料はフィルム状であって、前記画像が記録された記録媒体の表面にフィルム状の該コーティング材料を密着させることにより、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする前記(12)〜(18)のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0038】
本発明により、様々な記録媒体への画像記録ができ、フェザリング、ビーディング及びカラーブリードの発生を防止し、耐擦過性、耐水性、光沢性、ガス褪色耐性に優れたインクジェット記録画像が得られる画像形成方法と画像形成装置を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0040】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、少なくとも色剤と、水と、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物とを含有するインクジェット用インクを、記録ヘッドにより記録媒体に吐出して画像を記録し、該画像に活性エネルギー線を照射した後、該インクジェット用インクを吐出した該記録媒体表面にコーティング材料を付与することを特徴とする画像形成方法、あるいは少なくとも色剤と、水と、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物とを含有するインクジェット用インクを、記録ヘッドにより記録媒体に吐出して画像を記録する画像記録手段と、記録した該画像に活性エネルギー線を照射して硬化する活性エネルギー線照射手段と、硬化した画像を有する該記録媒体表面にコーティング材料を付与するコーティング材料付与手段とを有することを特徴とする画像形成装置により、様々な記録媒体への画像記録ができ、フェザリング、ビーディング及びカラーブリードの発生を防止し、耐擦過性、耐水性、光沢性、ガス褪色耐性に優れたインクジェット記録画像が得られる画像形成方法と画像形成装置を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0041】
すなわち、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物を含有するインクジェット用インクを記録媒体に記録した後、活性エネルギー線を照射することにより、インクジェット用インクがゲル状になり、色材が記録媒体体上に固定され、その後、その画像表面にコーティング材を付与することにより、多様な記録媒体に対し、フェザリング、ビーディング、カラーブリードがなく、さらに、出力直後から、耐擦過性、耐水性、光沢性、ガス褪色耐性に優れた高品位のインクジェット記録物が得られる。
【0042】
以下、本発明の画像形成方法及び画像形成装置の詳細について説明する。
【0043】
本発明においては、少なくとも色剤と、水と、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物とを含有するインクジェット用インクを用いることを特徴とする。
【0044】
《インクジェット用インク》
はじめに、本発明に係るインクジェット用インク(以下、単にインクともいう)の各構成要素について説明する。
【0045】
〔活性エネルギー線架橋性の高分子化合物〕
本発明に係る高分子化合物は、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物であり、例えば、ポリ酢酸ビニルのケン化物、ポリビニルアセタール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または前記親水性樹脂の誘導体、ならびにこれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種の親水性樹脂に対して、側鎖に光二量化型、光分解型、光重合型、光変性型、光解重合型等の変性基を導入したものである。光重合型の架橋性基が感度、生成される画像の性能の観点から望ましい。
【0046】
親水性主鎖においては、側鎖の導入に対する簡便性や、取り扱いの観点からポリ酢酸ビニルのケン化物が好ましく、その重合度は200以上、4000以下が好ましく、200以上、2000以下がハンドリングの観点からより好ましい。主鎖に対する側鎖の変性率は0.3モル%以上、4モル%以下が好ましく、0.8モル%以上、4モル%以下が反応性の観点からより好ましい。0.3モル%より小さいと架橋性が不足し本発明の効果が小さくなり、4モル%より大きいと架橋密度が大きくなり硬くてもろい膜となり、膜の強度が落ちてしまう。
【0047】
光二量化型の変性基としては、ジアゾ基、シンナモイル基、スチルバゾニウム基、スチルキノリウム基等を導入したものが好ましく、例えば、特開昭60−129742号公報等の公報に記載された感光性樹脂(組成物)が挙げられる。
【0048】
特開昭60−129742号公報に記載の感光性樹脂は、ポリビニルアルコール構造体中にスチルバゾニウム基を導入した下記一般式(1)で表される化合物である。
【0049】
【化1】

【0050】
式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を表し、A-はカウンターアニオンを表す。
【0051】
特開昭56−67309号公報に記載の感光性樹脂は、ポリビニルアルコール構造体中に、下記一般式(2)で表される2−アジド−5−ニトロフェニルカルボニルオキシエチレン構造、または、下記一般式(3)で表され、4−アジド−3−ニトロフェニルカルボニルオキシエチレン構造を有する樹脂組成物である。
【0052】
【化2】

【0053】
また、下記一般式(4)で表される変性基も好ましく用いられる。
【0054】
【化3】

【0055】
式中、Rはアルキレン基または芳香族環を表す。好ましくはベンゼン環である。
【0056】
光重合型の変性基としては、例えば、特開2000−181062号、特開2004−189841号に示される下記一般式(5)で表される樹脂が反応性との観点から好ましい。
【0057】
【化4】

【0058】
式中、R2はメチル基または水素原子を表し、nは1または2を表し、Xは−(CH2m−COO−または−O−を表し、Yは芳香族環または単結合手を表し、mは0〜6までの整数を表す。
【0059】
また、特開2004−161942号公報に記載されている光重合型の下記一般式(6)で表される変性基を、従来公知の水溶性樹脂に用いることも好ましい。
【0060】
【化5】

【0061】
式中、R3はメチル基または水素原子を表し、R4は炭素数2〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。
【0062】
このような活性エネルギー線架橋型の樹脂は、インク全質量に対して0.8質量%から5.0質量%含有することが、好ましい。0.8質量%以上存在することで、架橋効率が向上し、架橋後のインク粘度の急激な上昇によりビーディングやカラーブリードがより好ましくなる。5.0質量%以下の場合は、インク物性やインクヘッド内状態に悪影響しにくくなり、出射性やインク保存性の観点で好ましい。
【0063】
本発明に係る活性エネルギー線架橋型の高分子化合物においては、元々ある程度の重合度をもった主鎖に対して側鎖間で架橋結合を介して架橋をするため、一般的な連鎖反応を介して重合する活性エネルギー線硬化型の樹脂に対して光子一つ当たりの分子量増加効果が著しく大きい。一方、従来公知の活性エネルギー線硬化型の樹脂においては架橋点の数は制御不可能であるため硬化後の膜の物性をコントロールすることができず、硬くてもろい膜となりやすい。
【0064】
本発明に係る高分子化合物においては、架橋点の数は親水性主鎖の長さと側鎖の導入量で完全に制御でき、目的に応じたインク膜の物性制御が可能である。
【0065】
さらに、従来公知の活性エネルギー線硬化型インクが色剤以外のほぼ全量が硬化性分であり、そのため硬化後のドットが盛り上がり、光沢に代表される画質に劣ることに対し、本発明に用いられる樹脂においては必要量が少量ですみ、乾燥成分が多いため乾燥後の画質の向上が図られ、かつ定着性も良い。
【0066】
〔光重合開始剤、増感剤〕
本発明に係るインクにおいては、上記高分子化合物と共に、光重合開始剤や増感剤を添加するのも好ましい。これらの化合物は溶媒に溶解または分散した状態か、もしくは感光性樹脂に対して化学的に結合されていてもよい。
【0067】
適用される光重合開始剤、光増感剤について特に制限はなく、従来公知の物を用いることができる。
【0068】
適用される光重合開始剤、光増感剤について特に制限はないが、水溶性の化合物が混合性、反応効率の観点から好ましい。特に4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(HMPK)、チオキサントンアンモニウム塩(QTX)、ベンゾフェノンアンモニウム塩(ABQ)が水系溶媒への混合性という観点で好ましい。
【0069】
さらに、高分子化合物との相溶性の観点から、下記一般式(7)で表される4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(n=1、HMPK)や、そのエチレンオキシド付加物(n=2〜5)がより好ましい。
【0070】
【化6】

【0071】
式中、nは1〜5の整数を表す。
【0072】
また、その他の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ビス−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、ビス−N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、チオキサトン、2、4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン等のチオキサントン類、エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類、アセトフェノン類、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2,4,6−トリハロメチルトリアジン類、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール2量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェナントレンキノン、9,10−フェナンスレンキノン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン類、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビスアシルフォスフィンオキサイド及びこれらの混合物等が好ましく用いられ、上記は単独で使用しても混合して使用してもかまわない。
【0073】
これらの光重合開始剤に加え、促進剤等を添加することもできる。これらの例として、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0074】
これらの光重合開始剤は、親水性主鎖に対して、側鎖にグラフト化されていても好ましい。
【0075】
〔着色剤〕
本発明に係るインクジェット用インクに用いられる色材としては、染料または顔料を用いることが好ましい。
【0076】
[染料]
本発明で用いることのできる染料としては、特に制限はなく、酸性染料、直接染料、反応性染料等の水溶性染料、分散染料等が挙げられる。
【0077】
以下、本発明のインクジェット用インクに適用可能な染料の具体例を列挙するが、本発明では、これら例示する染料にのみ限定されるものではない。
【0078】
(水溶性染料)
本発明で用いることのできる水溶性染料としては、例えば、アゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができる。
【0079】
〈C.I.アシッドイエロー〉
1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、42、44、49、59、61、65、67、72、73、79、99、104、110、114、116、118、121、127、129、135、137、141、143、151、155、158、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、220、230、232、235、241、242、246、
〈C.I.アシッドオレンジ〉
3、7、8、10、19、24、51、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168、
〈C.I.アシッドレッド〉
88、97、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415、
〈C.I.アシッドバイオレット〉
17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126、
〈C.I.アシッドブルー〉
1、7、9、15、23、25、40、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、249、258、260、264、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350、
〈C.I.アシッドグリーン〉
9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109、
〈C.I.アシッドブラウン〉
2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413、
〈C.I.アシッドブラック〉
1、2、3、24、26、31、50、52、58、60、63、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222、
〈C.I.ダイレクトイエロー〉
8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、79、86、87、98、105、106、130、132、137、142、147、153、
〈C.I.ダイレクトオレンジ〉
6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118、
〈C.I.ダイレクトレッド〉
2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254、
〈C.I.ダイレクトバイオレット〉
9、35、51、66、94、95、
〈C.I.ダイレクトブルー〉
1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291、
〈C.I.ダイレクトグリーン〉
26、28、59、80、85、
〈C.I.ダイレクトブラウン〉
44、106、115、195、209、210、222、223、
〈C.I.ダイレクトブラック〉
17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169、
〈C.I.リアクティブイエロー〉
2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176、
〈C.I.リアクティブオレンジ〉
1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、107、
〈C.I.リアクティブレッド〉
2、3、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、228、235、
〈C.I.リアクティブバイオレット〉
1、2、4、5、6、22、23、33、36、38、
〈C.I.リアクティブブルー〉
2、3、4、5、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236、
〈C.I.リアクティブグリーン〉
8、12、15、19、21、
〈C.I.リアクティブブラウン〉
2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46、
〈C.I.リアクティブブラック〉
5、8、13、14、31、34、39、
〈C.I.フードブラック〉
1、2、
等を挙げることができる。
【0080】
更に、染料として、下記一般式(8)で表される化合物または一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
【0081】
【化7】

【0082】
上記一般式(8)において、R1は水素原子または置換可能な置換基を表し、水素原子またはフェニルカルボニル基が好ましい。R2は異なってもよく水素原子または置換可能な置換基を表し、水素原子が好ましい。R3は水素原子または置換可能な置換基を表し、水素原子またはアルキル基が好ましい。R4は水素原子または置換可能な置換基を表し、水素原子、アリールオキシ基が好ましい。R5は異なってもよく水素原子または置換可能な置換基を表し、スルホン酸基が好ましい。nは1〜4の整数を表し、mは1〜5の整数を表す。
【0083】
上記一般式(9)において、Xはフェニル基またはナフチル基を表し、置換可能な置換基で置換されていてもよく、スルホン酸基またはカルボキシル基で置換されていることが好ましい。Yは水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオンまたはアルキルアンモニウムイオンを表す。R6は異なってもよく水素原子またはナフタレン環に置換可能な置換基を表す。qは1または2を表す。pは1〜4の整数を表す。ただし、q+p=5である。Zは置換可能な置換基を表し、カルボニル基、スルホニル基または下記一般式(10)で表される基を表し、特に、下記一般式(10)で表される基が好ましい。
【0084】
【化8】

【0085】
上記一般式(10)において、W1、W2はそれぞれ異なっていてもよいハロゲン原子、アミノ基、水酸基、アルキルアミノ基またはアリールアミノ基を表し、ハロゲン原子、水酸基またはアルキルアミノ基が好ましい。
【0086】
(分散染料)
また、分散染料としては、アゾ系分散染料、キノン系分散染料、アントラキノン系分散染料、キノフタロン系分散染料等種々の分散染料を用いることができ、以下にその具体的化合物を挙げる。
【0087】
〈C.I.Disperse Yellow〉
3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232、
〈C.I.Disperse Orange〉
1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142、
〈C.I.Disperse Red〉
1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328、
〈C.I.Disperse Violet〉
1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77、
〈C.I.Disperse Green〉
9、
〈C.I.Disperse Brown〉
1、2、4、9、13、19、
〈C.I.Disperse Blue〉
3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、
〈C.I.Disperse Black〉
1、3、10、24
等が挙げられる。
【0088】
これら上記列挙した染料は、「染色ノート第21版」(出版;色染社)等に記載されている。
【0089】
[顔料]
本発明で用いることのできる顔料としては、従来公知の有機あるいは無機顔料を挙げることができる。例えば、アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
【0090】
以下、本発明のインクジェット用インクに適用可能な顔料の具体例を列挙するが、本発明では、これら例示する顔料にのみ限定されるものではない。
【0091】
マゼンタまたはレッド用の顔料は、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0092】
オレンジまたはイエロー用の顔料は、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー180等が挙げられる。
【0093】
グリーンまたはシアン用の顔料は、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0094】
また、ブラック用の顔料として、例えば、カーボンブラック等が挙げられる。
【0095】
(自己分散顔料)
また、本発明のインクジェット用インクでは、顔料として自己分散顔料を用いることもできる。自己分散顔料とは、分散剤なしで分散が可能な顔料を指し、特に好ましくは、表面に極性基を有している顔料粒子である。
【0096】
表面に極性基を有する顔料粒子とは、顔料粒子表面に直接極性基で修飾させた顔料、あるいは有機顔料母核を有する有機物で直接にまたはジョイントを介して極性基が結合しているもの(以下、顔料誘導体という)をいう。
【0097】
極性基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、燐酸基、硼酸基、水酸基が挙げられるが、好ましくはスルホン酸基、カルボン酸基であり、更に好ましくは、スルホン酸基である。
【0098】
(顔料分散体の製造方法)
顔料の分散方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各種分散機を用いることができる。また、顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましい。
【0099】
(顔料分散に適用可能な界面活性剤)
顔料分散体の調製において、必要に応じて、顔料分散剤として界面活性剤、高分子分散剤を含有させてもよい。界面活性剤、高分子分散剤の種類は特に制限されないが、界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤を挙げることができ、また、高分子分散剤としては、吐出安定性の観点から水溶性樹脂を用いることが好ましく、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体およびこれらの塩を挙げることができ、更に詳しくは、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等を挙げることができる。
上記の各高分子分散剤のインク全量に対する添加量としては、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.3〜5質量%である。これらの高分子分散剤は、2種以上併用することも可能である。
【0100】
(顔料粒子の粒径)
本発明のインクジェット用インクに使用する顔料粒子の平均粒径は、500nm以下が好ましく200nm以下がより好ましく、10nm以上、200nm以下であることが好ましく、10nm以上、150nm以下がより好ましい。顔料分散体の平均粒径が500nmを越えると、分散が不安定となり。また、顔料分散体の平均粒径が10nm未満になっても顔料分散体の安定性が悪くなりやすく、インクの保存安定性が劣化しやすくなる。
【0101】
顔料分散体の粒径測定は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることが出来る。また、透過型電子顕微鏡による粒子像撮影を少なくとも100粒子以上に対して行い、この像をImage−Pro(メディアサイバネティクス製)等の画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。
【0102】
〔水溶性溶媒〕
本発明に係るインクには溶媒を含有することができ、溶媒としては水性液媒体が好ましく用いられ、前記水性液媒体としては、水及び水溶性有機溶剤等の混合溶媒が更に好ましく用いられる。好ましく用いられる水溶性有機溶剤の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。
【0103】
〔界面活性剤〕
本発明に係るインクに好ましく使用される界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0104】
これらの界面活性剤は顔料の分散剤としても用いることが出来、特にアニオン性及びノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0105】
〔各種添加剤〕
本発明に係るインクにおいては、その他に従来公知の添加剤を含有することができる。例えば蛍光増白剤、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤、水溶性多価金属塩、酸塩基、緩衝液等pH調整剤、酸化防止剤、表面張力調整剤、非抵抗調整剤、防錆剤、無機顔料等である。
【0106】
《記録媒体》
本発明の画像形成方法では、その優れたインクジェット用インクの特性により、様々な記録媒体への画像記録ができ、適用可能な記録媒体としては、各種紙、各種フィルム、各種布、各種木材、各種インクジェット用記録媒体等の多岐にわたる記録媒体を挙げることができる。
【0107】
〔印刷用塗工紙〕
紙には、塗工紙、非塗工紙があり、塗工紙としては、1m2あたりの塗工量が片面20g前後のアート紙、1m2あたりの塗工量が片面10g前後のコート紙、1m2あたりの塗工量が片面5g前後の軽量コート紙、微塗工紙、マット調仕上げのマットコート紙、ダル調仕上げのダルコート紙、新聞用紙などを挙げることが出来る。非塗工紙としては、化学パルプ100%使用の印刷用紙A、化学パルプ70%以上使用の印刷用紙B、化学パルプ40%以上70%未満使用の印刷用紙C、化学パルプ40%未満使用の印刷用紙D、機械パルプを含有しカレンダー処理を行ったグラビア用紙などを挙げることが出来る。更に詳しくは、「最新紙加工便覧」紙加工便覧編集委員会編、テックタイムス発行、「印刷工学便覧」日本印刷学会編、などに詳細に記載されている。
【0108】
普通紙とは、非塗工用紙、特殊印刷用紙及び情報用紙の一部に属す、80〜200μmの非コート紙が用いられる。本発明で用いられる普通紙としては、例えば、上級印刷紙、中級印刷紙、下級印刷紙、薄様印刷紙、微塗工印刷用紙、色上質紙等特殊印刷用紙、フォーム用紙、PPC用紙、その他情報用紙等があり、具体的には下記する用紙及びこれらを用いた各種の変性/加工用紙があるが、本発明は特にこれらに限定されるものではない。
【0109】
印刷用塗工紙とは、印刷でしばしば用いられる塗工紙であり、一般的には上質紙や中質紙を原紙とし、紙の表面に白土等の顔料を塗布した後、平滑性を高めるためにカレンダー処理をかけて作製される。このような処理により、白色度や平滑性、印刷インクの受理性、あるいは網点再現性、印刷光沢、印刷不透明度などが向上する。塗工量により、アート紙、コート紙、軽量コート紙等の分類があり、また、紙の光沢によりグロス系、ダル系、マット系等に分類される。
【0110】
アート紙は、塗工量が片面20g/m2前後の塗工紙であり、一般的には、紙表面に顔料を塗工した後、カレンダー処理をかけて作製される。特アート、並アート、マット(艶消し)アート、片アート(片面塗工)、両アート(両面塗工)などの種類があり、具体的には、OK金藤N、サテン金藤N、SA金藤、ウルトラサテン金藤N、OKウルトラアクアサテン、OK金藤片面、Nアートポスト、NK特両面アート、雷鳥スーパーアートN、雷鳥スーパーアートMN、雷鳥アートN、雷鳥ダルアートN、ハイマッキンレーアート、ハイマッキンレーマット、ハイマッキンレーピュアダルアート、ハイマッキンレースーパーダル、ハイマッキンレーマットエレガンス、ハイマッキンレーディープマット等がある。
【0111】
コート紙は、塗工量が片面10g/m2前後の塗工紙であり、一般的には、抄紙機の途中に設けた塗工装置で加工して作製される。コート量がアート紙より少なく、平滑度はやや落ちるものの廉価、軽量という利点がある。また、軽量コートや微塗工紙というコート量のさらに少ない種類の塗工紙も存在する。これらのコート紙の具体例として、PODグロスコート、OKトップコート+、OKトップコートS、オーロラコート、ミューコート、ミューホワイト、雷鳥コートN、ユトリロコート、パールコート、ホワイトパールコート、PODマットコート、ニューエイジ、ニューエイジW、OKトップコートマットN、OKロイヤルコート、OKトップコートダル、Zコート、シルバーダイヤ、ユーライト、ネプチューン、ミューマット、ホワイトミューマット、雷鳥マットコートN、ユトリログロスマット、ニューVマット、ホワイトニューVマット等が挙げられる。
【0112】
〔非吸収性記録媒体〕
また、本発明においては、記録媒体として非吸収性記録媒体を用いることもでき、一般的に使用されている各種フィルム等はすべて使用できる。例えば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルムなどがある。また、写真用印画紙であるレジンコートペーパーや合成紙であるユポ紙なども使用できる。
【0113】
〔各種布〕
各種布としては、例えば、天然繊維、化学合成繊維、再生繊維を使用したいずれのものも使用できる。
【0114】
〔インクジェット用記録媒体〕
本発明においては、各種インクジェット用記録媒体を適用することができる。これらは基材として非吸収性支持体や紙を用い、その表面にインク受容層が形成されたものである。インク受容層としては、コート層、膨潤層、微細空隙層からなるものがある。
【0115】
非吸収性支持体として紙基材の両面をオレフィン樹脂で被覆したRCペーパーを用いて、上記微細空隙層を設けたインクジェット記録媒体が、写真画像の面で好んで用いられている。また、インク受容層である膨潤層は水溶性ポリマーからなるインク受容層が膨潤することでインクを吸収する。微細空隙層は二次粒径が20〜200nm程度の無機あるいは有機微粒子とバインダーからなり、100nm程度の微細な空隙がインクを吸収する。
【0116】
《インクジェット記録装置》
本発明の画像形成方法あるいは画像形成装置で、本発明に係るインクジェット用インクを記録媒体上へ吐出する際に適用可能なインクジェット記録ヘッド(インクジェットプリントヘッド)としては、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを挙げることができる。好ましくは電気−機械変換方式であるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
【0117】
《活性ネルギー線照射》
本発明の画像形成方法では、本発明に係る高分子化合物を含有するインクジェット用インクを、インクジェット記録ヘッドにより記録媒体上に吐出した後、活性エネルギー線を照射してインクジェット用インクを硬化することを特徴とする。
【0118】
〔活性エネルギー線、照射方法〕
本発明でいう活性エネルギー線とは、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、エックス線等が挙げられるが、人体への危険性が低く、取り扱いが容易で、工業的にもその利用が普及している観点から電子線や紫外線が好ましい。
【0119】
電子線を用いる場合には、照射する電子線の量は0.1〜30Mradの範囲が望ましい。0.1Mrad未満では十分な照射効果が得られず、30Mradを越えると支持体等を劣化させる可能性があるため、好ましくない。
【0120】
紫外線を用いる場合は、光源としては、例えば、0.1kPaから1MPaまでの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプや紫外域の発光波長を持つキセノンランプ、冷陰極管、熱陰極管、LED等の従来公知の光源が用いられる。
【0121】
〔インク着弾後の光照射条件〕
活性エネルギー線の照射条件としては、記録媒体上にインクが着弾した後、0.001〜1.0秒の間に活性エネルギー線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.5秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングができるだけ早いことが特に重要となる。
【0122】
〔ランプの設置〕
活性エネルギー線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることができる。
【0123】
また、活性エネルギー線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性エネルギー線を照射し、更に活性エネルギー線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性エネルギー線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0124】
《コーティング材の付与》
本発明の画像形成方法あるいは画像形成装置においては、記録媒体上に活性エネルギー線を照射することで硬化する高分子化合物を含有するインクジェット用インクを吐出して画像を記録し、次いで該画像に活性エネルギー線を照射して硬化せしめた後、該硬化した画像上、あるいは画像を有する記録媒体全面にわたり、コーティング材料を被覆して表面保護皮膜を形成することを特徴とする。
【0125】
本発明において、コーティング材料を記録媒体に付与して、その表面に表面保護皮膜を形成する方法としては、特に制限はないが、下記に挙げる方法に従って表面保護皮膜を形成することが好ましい。
【0126】
〔1.コーティング材料を液状にして付与する方法1〕
コーティング材料として有機溶媒に可溶な樹脂を用い、この樹脂を有機溶媒に溶解した塗布液を調製し、この塗布液を公知の塗布方法、例えば、押し出しコーター、カーテンコーター、ワイヤーバー塗布、グラビア塗布、グラビアリバース塗布、ロール塗布等を適用して、記録媒体上に所定の膜厚に塗布した後、塗布液中の有機溶媒を除去して表面保護皮膜を形成する方法である。
【0127】
有機溶媒に可溶の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、エチルセルロース、ニトロセルロース等が挙げられる。
【0128】
また、有機溶媒としては、上記樹脂に対する溶解能を備えていると共に、コーティング材料を含む塗布液を塗設した後、その塗膜より速やかに蒸発する特性を有している低沸点有機溶媒であることが好ましい。本発明でいう低沸点有機溶媒とは、常圧で沸点150℃未満(通常、約30℃以上)の有機溶媒であり、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノ−ル、1−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤;ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコール系溶媒などが挙げられる。好ましくは、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−i−プロピル等のエステル系溶媒である。
【0129】
〔2.コーティング材料を液状にして付与する方法2〕
コーティング材料として、水溶性樹脂を用い、この水溶性樹脂を水に溶解した塗布液を調製し、この塗布液を公知の塗布方法、例えば、押し出しコーター、カーテンコーター、ワイヤーバー塗布、グラビア塗布、グラビアリバース塗布、ロール塗布等を適用して、記録媒体上に所定の膜厚に塗布した後、塗布液中の水分を除去して表面保護皮膜を形成する方法である。
【0130】
この方法では、上記1項に記載の方法に対し、沸点の高い水を主溶剤として含んでいるため、記録媒体上に塗布液を付与した後、強制的に水分を除去するため、後述する乾燥工程を設けて、水分を除去することが好ましい。
【0131】
本方法で適用可能な水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。また、これらの水溶性樹脂を含む塗布液には、必要に応じて、形成した塗膜を強化する目的で架橋剤を添加しても良い。
【0132】
〔3.活性ネルギー線硬化型化合物を付与する方法〕
コーティング材料として、活性エネルギー線により硬化する化合物を含む液を、例えば、インクジェット記録方式で記録媒体上に吐出した後、活性エネルギー線を照射して表面保護皮膜を形成する方法である。
【0133】
上記方法で用いるインクジェット記録ヘッドあるいは活性エネルギー照射方法としては、前述のインクジェット用インクの画像形成で用いるのと同様の装置を適用することができる。
【0134】
活性エネルギー線により硬化する化合物としては、本発明に係るインクで用いるのと同様の親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物の他に、ラジカル重合性化合物やカチオン重合性化合物を用いることができる。
【0135】
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態をもつものが含まれる。ラジカル重合性物質は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。
【0136】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられ、具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品もしくは業界で公知のラジカル重合性ないし架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。上記ラジカル重合性物質の添加量は好ましくは1〜97質量%であり、より好ましくは30〜95質量%である。また、ラジカル重合性化合物と共にラジカル重合開始剤が用いられる。
【0137】
また、カチオン重合性化合物としては、カチオン重合により高分子化の起こるタイプのエポキシタイプの紫外線硬化性プレポリマー、モノマーは、1分子内にエポキシ基を2個以上含有するプレポリマーを挙げることができる。このようなプレポリマーとしては、例えば、脂環式ポリエポキシド類、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物類及びエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらのプレポリマーは、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0138】
カチオン重合性組成物中に含有されるカチオン重合性化合物としては、例えば、(1)スチレン誘導体、(2)ビニルナフタレン誘導体、(3)ビニルエーテル類及び(4)N−ビニル化合物類、(5)オキセタン類等を挙げることができる。
【0139】
また、カチオン重合性化合物と共に光酸発生剤が用いられ、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(例えば、有機エレクトロニクス材料研究会編・「イメージング用有機材料」・ぶんしん出版(1993年)・187〜192ページ参照、技術情報協会・「光硬化技術」・2001年、に紹介されている光酸発生剤参照)。
【0140】
〔4.熱溶融性樹脂転写フィルムを付与する方法〕
この方法は、コーティング材料として熱溶融性樹脂転写フィルムを用い、形成した画像上にこの熱溶融性樹脂転写フィルムを密着及び加圧、加熱して、熱溶融性樹脂を画像面上に転写して、表面保護皮膜を形成する方法である。
【0141】
熱溶融性樹脂転写フィルムは、ベースフィルム上に離型層、剥離層、接着層が積層されており、加熱処理を施すことにより熱溶融性樹脂から構成される剥離層及び接着層を画像面上に転写する。
【0142】
ベースフィルムとしては、例えば、厚み12〜50μm程度のシート状のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が用いられ、離形層を構成する素材としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アクリルポリオール、ウレタン樹脂等が挙げられ、剥離層を構成する素材としては、例えば、セルロース誘導体、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩ビ・酢ビ共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。また、接着層を構成する素材としては、例えば、セルロース誘導体、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩ビ・酢ビ共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0143】
〔5.接着フィルムを付与する方法〕
この方法は、コーティング材料として接着材料を有するフィルムを用い、形成した画像上にこの接着フィルムを密着して、フィルムを画像面上に接着して、表面保護皮膜を形成する方法である。
【0144】
ここで用いる接着フィルムとしては、例えば、厚み12〜50μm程度のシート状のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の上に、接着層を設けたものであり、接着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、紫外線硬化型粘着剤など挙げることができる。
【0145】
アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または他の共重合性モノマーとの共重合体が用いられ、ゴム系粘着剤としては、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴムとこれらの混合物、或いは、これらゴム系粘着剤にアビエチン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体などの粘着付与剤を配合したものが用いられる。ウレタン系粘着剤としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールと、ポリイソシアネート系架橋剤とを触媒を用いて反応させた分子量10,000〜300,000のポリウレタンポリオールに、ポリイソシアネート系架橋剤を配合した溶剤型ウレタン系粘着剤が好ましく用いられる。シリコーン系粘着剤としては付加反応硬化型シリコーン粘着剤と縮重合硬化型シリコーン粘着剤がある。また、紫外線硬化型粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または共重合性モノマーとの共重合体(アクリル系ポリマー)と、紫外線硬化成分(例えば、アクリル系ポリマーの側鎖に炭素−炭素二重結合を付加させる成分)および光重合開始剤と、必要に応じて架橋剤、粘着付与剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などの慣用の添加剤を加えたものが用いられる。
【0146】
〔6.熱接着フィルムを付与する方法〕
この方法は、コーティング材料として熱接着フィルムを用い、形成した画像上にこの熱接着フィルムを密着及び加圧、加熱して、表面保護皮膜を形成する方法である。
【0147】
熱接着フィルムとしては、ベースフィルム上に接着層が設けられた構成であり、ベースフィルムとしては、例えば、厚み12〜50μm程度のシート状のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が用いられ、接着層を構成する素材としては、例えば、セルロース誘導体、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩ビ・酢ビ共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0148】
本発明においては、上記で代表される方法に用いられるコーティング材料としては、後述の乾燥処理において、インクあるいは表面保護皮膜からの不要な水分あるいは有機溶媒を効率的に除去する観点から、水蒸気透過性を備えていることが好ましい。
【0149】
〔乾燥処理〕
本発明の画像形成方法あるいは画像形成装置においては、上記のコーティング材料を付与する際に、その接着性をより高める観点から、乾燥処理を施すことが好ましい。
【0150】
乾燥処理の時期として、第1の方法としては、インクジェット用インクで形成した画像に活性エネルギー線を照射した後、上記のコーティング材料を付与する前に、形成した画像に乾燥処理を施すことが、その後に付与するコーティング材料の密着性を高める観点から好ましい。また、他の方法としては、インクジェット用インクを記録ヘッドにより記録媒体に吐出し、活性エネルギー線を照射し、次いでコーティング材料を付与した後に、前記インクジェット用インク及びコーティング材料に乾燥処理を施すことが、前記方法1あるいは2に記載のようにコーティング材料を有機溶媒や水に溶解して付与する方法では、これらの有機溶媒や水を迅速に除去する観点から好ましい。本発明においては、表面保護皮膜を形成するコーティング材料としては、上述のような乾燥処理において、インクあるいは表面保護皮膜からの不要な水分あるいは有機溶媒を効率的に除去する観点から、水蒸気透過性を備えていることが好ましい。
【0151】
本発明で用いられる乾燥手段としては、特に制限はないが、例えば、内部に発熱手段、例えば、電熱線、ヒータ等を設け、そこに空気を流入させて、熱風として記録媒体に吹き付け、記録媒体を所定の温度まで加熱を行う加熱ファン等を用いることができる。
【0152】
更に、本発明に係るコーティング材料の付与方法について、図を用いて具体的に説明するが、本発明ではこれら例示する図面の構成にのみ限定されるものではない。
【0153】
図1は、リバースロール方式でコーティング材料を付与する方法の一例を示す概略図である。
【0154】
図1において、画像印字部1は、キャリッジ4上に、高分子化合物を含有するインクジェット用インク、例えば、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、ライトマゼンタインク(Lm)、シアンインク(C)、ライトシアンインク(Lc)あるいはブラックインク(K)を吐出する画像記録ヘッド2、記録媒体に着弾したインクに活性エネルギー線を照射する照射光源3を備えている。5は、キャリッジが移動する走査ガイドである。
【0155】
画像印字部1で記録された画像Gは下流側に搬送され、その表面にコーティング材料が付与される。コーティング材料の付与方法としては、例えば、受け皿に貯留しているコーティング材料を有機溶媒に溶解した塗布液10を、移送ローラ9に保持させ、次いで塗布ローラ8に移動させた後、記録媒体P及び画像G上に塗布を行い、表面保護皮膜11を形成する。
【0156】
なお、7は記録媒体Pを図で右から左の搬送するための搬送ローラであり、6は搬送する記録媒体Pを保持するためガイドローラである。
【0157】
図1に記載の方法では、コーティング材料を含む塗布液10の付与量は、移送ローラ9と塗布ローラ8とのロール間隙、塗布液10の温度、粘度、濃度あるいは各ローラの回転速度等を適宜設定することにより、所望の膜厚に塗設することができる。
【0158】
図1に記載の方法は、特に、コーティング材料を有機溶媒に溶解した塗布液を用いた付与方法に好ましく用いることができ、使用する有機溶媒の種類により、自然乾燥のみで溶媒が除かれるため、乾燥工程を省くことができる。
【0159】
図2は、リバースロール方式でコーティング材料を付与した後、乾燥処理を行う方法の一例を示す概略図である。
【0160】
基本的な構成は上記図1と同様の構成であるが、コーティング材料付与部(リバースロール部)の更に下流側に、乾燥ファン12による乾燥工程を設けてある。
【0161】
図2に記載の乾燥工程を備えた方法は、特に、コーティング材料を水や沸点がやや高い有機溶剤に溶解した塗布液を用い場合に、好ましく用いることができる。
【0162】
図3は、画像印字部とコーティング材料を付与の間に乾燥処理を設けた方法の一例を示す概略図である。
【0163】
図2に記載の方法に対し、画像印字部1とコーティング材料付与部(リバースロール部)の間に、乾燥ファン12による乾燥工程を設けた構成であり、記録媒体P上に印字した画像Gに含まれる溶剤等を乾燥ファン12により除去した後、コーティング材料を付与することで、画像Gと表面保護皮膜11との接着性を高めることができる。
【0164】
図4は、インクジェット記録方式(シャトルヘッド方式)で、活性エネルギー線硬化化合物を付与する方法の一例を示す概略図である。
【0165】
図4は、図1〜図3で示した構成を上部から観察した上面図であり、上部に画像印字部1が配置され、複数からなる画像記録ヘッド2の両端に照射光源3が配置され、インクを吐出した後、速やかに活性エネルギー線、例えば、紫外線を照射してインクを硬化させる。
【0166】
上記画像印字部1の下部には、活性エネルギー線硬化化合物を噴射するコーティング用キャリッジ54が、走査ガイド55に保持されて設けられている。このコーティング用キャリッジ54は、活性エネルギー線硬化化合物を吐出するためのコーティング材料用記録ヘッド52とその両端にコーティング材料用照射光源53を備え、画像上にコーティング材料用記録ヘッド52から活性エネルギー線硬化化合物を含むコーティング材料を吐出した後、コーティング材料用照射光源53により活性エネルギー線を照射してインクを硬化する。
【0167】
図5は、熱溶融性樹脂転写フィルムを用いてコーティング材料を付与する方法の一例を示す概略図である。
【0168】
図5において、画像印字部1は図1と同様の構成をとり、その下流部に熱溶融性樹脂転写フィルム付与ユニットを設けた構成である。
【0169】
熱溶融性樹脂転写フィルム付与ユニットは、熱溶融性樹脂転写フィルムF1をロール状に積層した熱溶融性樹脂転写フィルムロール15より、熱溶融性樹脂転写フィルムF1を繰り出し、画像Gとの合流部で内部に加熱手段14を備えた加熱ローラ13で裏面を圧着及び加熱して、熱溶融性樹脂転写フィルムF1の剥離層及び接着層を画像上に転写して表面保護皮膜11を形成し、熱溶融性樹脂転写フィルムF1を構成していたベースフィルム及び離型層は、巻取ローラ16の巻き取られる。なお、17はサポートローラである。
【0170】
加熱ローラ13としては、中空の芯金内部に加熱手段14を内包し、パイプ状の芯金は、主には金属から構成されている。芯金を構成する金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属あるいはこれらの合金を挙げることができる。また、内部に保持する加熱手段14としては、ハロゲンランプ、電磁誘導コイル、ニクロム線等の発熱体を用いることができる。
【0171】
図6は、接着フィルムを用いてコーティング材料を付与する方法の一例を示す概略図である。
【0172】
図6において、画像印字部1は図1と同様の構成をとり、その下流部に接着フィルム付与ユニットを設けた構成である。
【0173】
接着フィルム付与ユニットは、接着フィルムF2をロール状に積層した接着フィルムロール19より、接着フィルムF2を繰り出し、カッター20により所定のサイズに断裁した後、画像Gとの合流部で加圧ローラ18で裏面を圧着して、画像G上に接着フィルムF2を付与して、表面保護皮膜11を形成する。
【0174】
なお、図6では、画像印字部とコーティング材料付与部との間に乾燥ファン12を設けた例を示してある。
【0175】
図7は、熱接着フィルムを用いてコーティング材料を付与する方法の一例を示す概略図である。
【0176】
図7において、画像印字部1は図1と同様の構成をとり、その下流部に熱接着フィルム付与ユニットを設けた構成である。
【0177】
熱接着フィルムユニットは、熱接着フィルムF3をロール状に積層した熱接着フィルムローラ21より、熱接着フィルムF3を繰り出し、カッター20により所定のサイズに断裁した後、画像Gとの合流部で内部に加熱手段14を備えた加熱ローラ13で裏面を圧着及び加熱して、熱接着フィルムF3の接着層を溶融させて、表面保護皮膜11を形成する。図7でも同様に、更に画像印字部とコーティング材料付与部との間に乾燥ファン12を設けた構成例で示してある。
【実施例】
【0178】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0179】
実施例1
《高分子化合物の合成》
〔高分子化合物1の合成〕
ポリアクリル酸(重量平均分子量80万)の100gを、750gのメタノールに加熱溶解させた後、16gの4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルと触媒として11gのピリジンを加え、60℃に保ちながら24時間攪拌した、更に系の温度を95℃に上げ、水を滴下しながらメタノールを溜去した後、イオン交換樹脂(三菱化学性:PK−216H)処理を行い、ピリジンを除去して不揮発性分濃度15%の水溶液を得た。ここに光重合開始剤として、一般式(9)のn=1のイルガキュア2959(チバスペシャリティケミカルズ社製)を15%水溶液100gに対して0.1gの割合で混合しその後イオン交換水にて希釈して高分子化合物1の10%水溶液を得た。
【0180】
〔高分子化合物2の合成〕
グリシジルメタクリレートを56g、p−ヒドロキシベンズアルデヒドを48g、ピリジンを2g、及びN−ニトロソ−フェニルヒドロキシアミンアンモニウム塩を1g、それぞれ反応容器に入れ、80℃の湯浴中で8時間攪拌した。
【0181】
次に、重合度1700、ケン化率88%のポリ酢酸ビニルケン化物の45gをイオン交換水225gに分散した後、この溶液にリン酸を4.5gと上記反応で得られたp−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンズアルデヒドをポリビニルアルコールに対して変性率が1モル%になる様に加え、90℃で6時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却した後、塩基性イオン交換樹脂を30g加え、1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過し、ここに光重合開始剤として、イルガキュア2959(チバスペシャリティケミカルズ社製)を15%水溶液100gに対して0.1gの割合で混合し、その後イオン交換水にて希釈して、高分子化合物2の10%水溶液を得た。
【0182】
〔高分子化合物3〜6の合成〕
上記高分子化合物2の合成において、ポリ酢酸ビニルケン化物の重合度、ケン化度を表1に記載の様に変更し、p−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンズアルデヒドの仕込量を変えて、表1に記載のポリビニルアルコール主鎖の変性率とした高分子化合物3〜6の10%水溶液を合成した。
【0183】
《インクセットの調製》
下記の様にして染料タイプのインクセット1〜12を作製した。
【0184】
〔インクセット1の調製〕
以下に記載の方法に従って、マゼンタインク1及びブラックインク1からなるインクセット1を調製した。
【0185】
(マゼンタインク1)
C.I.アシッドレッド35 5部
高分子化合物1の10%水溶液 30部
グリセリン 7部
ジエチレングリコール 15部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 2部
オルフィンE1010(日信化学社製) 0.2部
以上にイオン交換水を加え、全量を100部としてマゼンダインクを得た。
【0186】
(ブラックインク1)
上記マゼンタインク1の調製において、C.I.アシッドレッド35の代わりにC.I.ダイレクトブラック19を用いた以外は同様にして、ブラックインク1を得た。
【0187】
〔インクセット2の調製〕
上記インクセット1の調製において、それぞれのインクで用いた高分子化合物1の10%水溶液に代えて、一般式(3)でRがp−フェニレン基で表される化合物RSP(東洋合成工業製,主鎖PVA重合度1700、ケン化度88%、変性率0.9mol%、固形分濃度10%)に変更した以外は同様にして、インクセット2を得た。
【0188】
〔インクセット3〜7の調製〕
上記インクセット1の調製において、それぞれのインクで用いた高分子化合物1の10%水溶液に代えて、高分子化合物2〜6の10%水溶液をそれぞれ用いた以外は同様にして、インクセット3〜7を得た。
【0189】
〔インクセット8の調製〕
前記インクセット2の調製において、主鎖PVAの重合度を300とし、変性率を4.0にした以外は同様にして、インクセット8を得た。
【0190】
〔インクセット9の調製〕
以下に記載の方法に従って、マゼンタインク9及びブラックインク9からなるインクセット9を得た。
【0191】
(マゼンタインク9)
1,4−ブタジオールのジエポキシアクリル酸エステル(BASF社製LR8765) 10部
イルガキュア651(チバスペシャリティケミカルズ社製、光重合開始剤)0.4部
C.I.アシッドレッド35 4部
ノイゲンET150の10%水溶液(第一工業製薬製) 7部
ジエチレングリコール 15部
以上にイオン交換水を加え、全量を100部としてマゼンダインク9を得た。
【0192】
(ブラックインク9)
上記マゼンタインク9の調製において、C.I.アシッドレッド35の代わりにC.I.ダイレクトブラック19を用いた以外は同様にして、ブラックインク9を得た。
【0193】
なお、上記LR8765は、水性アクリル系紫外線硬化型モノマーである。
【0194】
〔インクセット10の調製〕
前記インクセット1の調製において、高分子化合物1の10%水溶液を除き、その代わりに同量の水を添加した以外は同様にして、インクセット10を得た。
【0195】
〔インクセット11の調製〕
前記インクセット2の調製において、高分子化合物2の10%水溶液の代わりに、10%のポリビニルアルコール水溶液(重合度2000、ケン化度88%)を用いた以外は同様にして、インクセット11を得た。
【0196】
〔インクセット12の調製〕
前記インクセット2の調製において、高分子化合物2の10%水溶液の代わりに、タケラックW−6060を用いた以外は同様にして、インクセット12を得た。
【0197】
タケラックW−6060:武田薬品社製、ウレタン系ソープフリーラテックス、固形分30%、Tg=25℃、平均粒径=150nm
〔インクセット13の調製〕
前記インクセット4の調製において、高分子化合物の10%水溶液の添加量を30部から60部に変更し、その分のイオン交換水を減らした以外は同様にして、インクセット13を得た。
【0198】
〔インクセット14の調製〕
前記インクセット4の調製において、高分子化合物の10%水溶液の添加量を30部から6部に変更し、その分のイオン交換水を増加した以外は同様にして、インクセット14を得た。
【0199】
【表1】

【0200】
《コーティング用インク液1の調製》
エポキシ化合物:EP−A(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート) 26.9部
オキセタン化合物:OXT221(ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル) 55.5部
光重合開始剤:UVI6992(ダウケミカル社製) 5.0部
トリエタノールアミン 0.10部
上記各添加剤を混合した後、これをプリンター目詰まり防止のため1.0μmのメンブランフィルターで濾過して、コーティング用インク液1を調製した。
【0201】
《インクジェット画像の形成及び評価》
(フェザリングの評価)
ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpi(以下、dpiは2.54cmあたりのドット数を表す。)であるピエゾ型ヘッドを用い、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型のインクジェットプリンタを使用し、普通紙(コニカミノルタビジネステクノロジー社製 First Class紙)に巾250μm、長さ5cmの黒細線をプリントした後、各インクが着弾した0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL 電源電力3kW・hr)を照射した。
【0202】
次いで、上記と同様にオンデマンド型のインクジェットプリンタを使用し、図4に記載の方法でコーティング用インク液1を普通紙全面に、乾燥後の膜厚が5μmとなる条件で付与し、次いでコーティング用インク液1を連続吐出し、着弾した0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL 電源電力3kW・hr)を照射した。
【0203】
また、上記画像形成において、画像形成後、活性エネルギー線の照射のみを行い、コーティング用インク液1を付与しないサンプルも同時に作成した。
【0204】
上記の方法で形成した各黒細線画像を目視観察し、下記の基準に従ってフェザリングの評価を行った。
【0205】
◎:滲みにより線が太ることも無く細線が再現されている
○:滲みにより線が太ることはないが5箇所未満、紙繊維に沿ったインク滲みが観測される
△:滲みにより線が太ることはないが、10箇所未満、紙繊維に沿ったインク滲みが観測される
×:滲みにより線が若干太り、紙繊維に沿ったインク滲みも10箇所以上観測される
××:滲みによる線太りが激しく、紙繊維に沿ったインク滲みも20箇所以上観測される
このうち、×、××は製品として問題があるレベルである。
【0206】
(ビーディングの評価)
ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpiであるピエゾ型ヘッドを用い、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型のインクジェットプリンタを使用し、アート紙(王子製紙製 NKアート金藤N)に10cm×10cmのマゼンダベタをプリントし、各インクを連続吐出した後、着弾した0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL、電源電力3kW・hr)を照射した。
【0207】
次いで、上記と同様にオンデマンド型のインクジェットプリンタを使用し、図4に記載の方法でコーティング用インク液1をアート紙全面に、乾燥後の膜厚が5μmとなる条件で付与し、次いでコーティング用インク液1を連続吐出し、着弾した0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL 電源電力3kW・hr)を照射した。
【0208】
また、上記画像形成において、画像形成後、活性エネルギー線の照射のみを行い、コーティング用インク液1を付与しないサンプルも同時に作成した。
【0209】
上記の方法で形成したマゼンダベタ画像を目視観察し、下記の基準に従ってビーディング耐性の評価を行った。
【0210】
◎:均一な画像である
○:よく見るとわかるまだら状のノイズが5箇所未満存在する
△:よく見るとわかるまだら状のノイズが10箇所未満存在する
×:はっきりとしたまだら状のノイズが10箇所以上存在する
××:まだら状のノイズが20箇所以上存在する
このうち、×、××は製品として問題があるレベルである。
【0211】
(カラーブリード耐性の評価)
ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpiであるピエゾ型ヘッドを用い、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型のインクジェットプリンタを使用し、アート紙(王子製紙製 NKアート金藤N)にマゼンダベタ地の上に巾100μmの黒細線をプリントし、各インクを連続吐出した後、着弾した0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL、電源電力3kW・hr)を照射した
次いで、上記と同様にオンデマンド型のインクジェットプリンタを使用し、図4に記載の方法でコーティング用インク液1をアート紙全面に、乾燥後の膜厚が5μmとなる条件で付与し、次いでコーティング用インク液1を連続吐出し、着弾した0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL 電源電力3kW・hr)を照射した。
【0212】
また、上記画像形成において、画像形成後、活性エネルギー線の照射のみを行い、コーティング用インク液1を付与しないサンプルも同時に作成した。
【0213】
上記の方法で形成した画像を目視観察し、下記の基準に従ってカラーブリード耐性の評価を行った。
【0214】
◎:細線とベタの境界線がはっきりしている
○:わずかに境界がにじんでいる箇所があるが、実用上問題のない品質である
△:境界部ににじみが認められるが、実用上許容限界内の品質である
×:境界部で明らかなにじみの発生が認められ、線幅が1.5倍ほどとなり、実用上問題となる品質である
××:細線とベタ部の境界が不明瞭な品質であり、ブリード耐性が極めて乏しい
(耐擦過性の評価)
1)上記カラーブリード耐性の評価と同様にして、記録紙上に巾100μmの黒細線をプリント及び硬化し、次いでコーティング材料を付与及び硬化した3分後に、黒細線画像を指で20往復擦った試料と、2)上記カラーブリード耐性の評価と同様にして、記録紙上に巾100μmの黒細線をプリント及び硬化した3分後に、黒細線画像を指で20往復擦った試料とを作成し、下記の基準に従って耐擦過性の評価を行った。
【0215】
◎:印画画像に全く変化なし
○:詳細に観察すると、わずかに擦り傷が認められるが、実用上問題のない品質である
△:少量の擦り傷が認められるが、実用上許容限界内の品質である
×:擦り傷の発生に伴い画像濃度が低下し、実用上問題となる品質である
××:形成した黒細線画像が記録紙から剥離し、全く許容されない品質である
(耐水性の評価)
1)上記カラーブリード耐性の評価と同様にして、記録紙上に巾100μmの黒細線をプリント及び硬化し、次いでコーティング材料を付与及び硬化した2分後に純水を滴下し、更に10秒後に黒細線画像上を指で20往復擦った試料と、2)上記カラーブリード耐性の評価と同様にして、記録紙上に巾100μmの黒細線をプリント及び硬化した2分後に純水を滴下し、更に10秒後に黒細線画像上を指で20往復擦った試料について、下記の基準に従って耐水性の評価を行った。
【0216】
◎:印画画像に全く変化なし
○:詳細に観察すると、わずかに擦り傷が認められるが、実用上問題のない品質である
△:少量の擦り傷が認められるが、実用上許容限界内の品質である
×:擦り傷の発生に伴い画像濃度が低下し、実用上問題となる品質である
××:形成した黒細線画像が記録紙から剥離し、全く許容されない品質である
(光沢感)
ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpi(以下、dpiは2.54cmあたりのドット数を表す)であるピエゾ型ヘッドを用い、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型のインクジェットプリンタを使用し、アート紙(王子製紙製 NKアート金剛N)に10cm×10cmの黒ベタをプリントし、各インクを連続吐出した後、着弾した0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL 電源電力3kW・hr)を照射した。
【0217】
次いで、上記と同様にオンデマンド型のインクジェットプリンタを使用し、コーティング用インク液1を普通紙全面に、乾燥後の膜厚が5μmとなる条件で付与し、次いでコーティング用インク液1を連続吐出した後、着弾した0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL 電源電力3kW・hr)を照射した。
【0218】
また、上記画像形成において、画像形成後、活性エネルギー線の照射のみを行い、コーティング用インク液1を付与しないサンプルも同時に作成した。
【0219】
上記の方法で形成した各黒ベタ画像を目視観察し、下記の基準に従って光沢感の評価を行った。
【0220】
◎:記録面と下地の光沢度差が全く認識されず自然である
○:記録面と下地の光沢度差がほとんど無く自然である
△:記録面と下地の光沢度が少し異なるが、許容できるレベル
×:記録面と下地の光沢度がはっきり異なることが目視で観察でき、かつ記録面の光沢度が著しく下地より高い
××:記録面と下地の光沢度がはっきり異なることが目視で観察でき、かつ記録面の光沢度が著しく下地より低い
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0221】
【表2】

【0222】
表2に記載の結果より明らかなように、本発明に係る高分子化合物を含有するインクジェット用インクを用いて画像形成した後、コーティング材を付与して形成した本発明の画像は、比較例に対し、本発明に係る高分子化合物の持つ優れたビーディング耐性、カラーブリード耐性及びフェザリング耐性を維持すること共に、耐擦過性、耐水性及び光沢感が飛躍的に向上していることが分かる。
【0223】
実施例2
《コーティング材料の付与及び画像形成》
ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpi(以下、dpiは2.54cmあたりのドット数を表す。)であるピエゾ型ヘッドを用い、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型のインクジェットプリンタを使用し、普通紙、またはアート紙を用いて、実施例1に記載のインクセット4を吐出して、実施例1と同様の各画像をプリントした後、各インクが着弾した0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL 電源電力3kW・hr)を照射した。
【0224】
次いで、下記の各付与方法で、コーティング材料を付与して、表面保護皮膜を形成した。
【0225】
(付与方法1)
図1に記載の方法で、メチルエチルケトンに溶解した20%アクリル樹脂溶液を、リバースロールを用いて、乾燥後の膜厚が5μmとなる条件で塗布して、画像31を作成した。
【0226】
(付与方法2)
図2に記載の方法で、水性アクリル樹脂の20%水溶液をリバースロールを用いて、乾燥後の膜厚が5μmとなる条件で塗布して、画像32を作成した。
【0227】
(付与方法3)
図3に記載の方法で、メチルエチルケトンに溶解した20%アクリル樹脂溶液を、リバースロールを用いて、乾燥後の膜厚が5μmとなる条件で塗布して、画像33を作成した。
【0228】
(付与方法4)
図5に記載の方法で、厚さ20μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、エポキシ樹脂からなる離型層、スチレン樹脂からなる剥離層及びスチレン共重合体からなる接着層を有する熱溶融性樹脂転写フィルムを用いて、転写後の剥離層及び接着層の総膜厚が10μmの表面保護皮膜を形成して、画像34を作成した。
【0229】
(付与方法5)
図6に記載の方法で、厚さ15μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、糊剤として、ポリエステルポリオールを有する粘着フィルムを使用して、膜厚が18μmの表面保護皮膜を形成して、画像35を作成した。
【0230】
(付与方法6)
図7に記載の方法で、厚さ15μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、スチレン共重合体からなる接着層を有する熱粘着フィルムを使用して、膜厚が18μmの表面保護皮膜を形成して、画像36を作成した。
【0231】
《形成画像の評価》
実施例1で作成した画像4、18と、上記作成した画像31〜36について、実施例1に記載の方法と同様にして、ビーディング耐性、カラーブリード耐性、フェザリング耐性、耐擦過性、耐水性、光沢感の各評価と、下記の方法に従って密着性の評価を行った。
【0232】
〔密着性の評価〕
アート紙上に形成した各画像上に、格子状に切り傷をカミソリで入れて、セロテープ(登録商標)を圧着し、急激に引き剥し、コーティング材料の剥離面積を求め、下記の基準に従って密着性の評価を行った。
【0233】
◎:接着力は非常に強く、剥離面積は2%未満で殆ど剥離しない
○:接着力は強く、剥離面積は2%以上、5%未満である
△:剥離面積は5%以上、10%未満である
×:剥離面積は10%以上、20%未満である
××:剥離面積は20%以上である
以上により得られた結果を、表3に示す。
【0234】
【表3】

【0235】
表3に記載の結果から明らかなように、実施例1に記載のインクジェット方式によるコーティング材料付与方法の結果と同様に、図1〜3、図5〜7に記載の方法に従ってコーティング材料を付与して形成した画像は、比較例に対し、本発明に係る高分子化合物の持つ優れたビーディング耐性、カラーブリード耐性及びフェザリング耐性を維持すること共に、耐擦過性、耐水性及び光沢感が飛躍的に向上していることが分かる。更に、コーティング材料付与前に乾燥処理を施すことが、高い密着性が得られる観点から好ましいことが分かる。
【0236】
実施例3
実施例1に記載の画像形成及びコーティング材料付与方法において、各インクセットの色材を、各染料に代えて、C.I.ピグメントレッド122(マゼンタインク)及びCabot社製のカーボンブラック自己分散物cabo−jet300(ブラックインク)を用いて、実施例1に記載の方法と同様にして、各評価を行った結果、実施例1に記載の結果と同様に、本発明に係る高分子化合物を含有するインクジェット用顔料インクを用いて画像形成した後、コーティング材を付与して形成した本発明の画像は、比較例に対し、本発明に係る高分子化合物の持つ優れたビーディング耐性、カラーブリード耐性及びフェザリング耐性を維持すること共に、耐擦過性、耐水性及び光沢感が飛躍的に向上していることを確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0237】
【図1】リバースロール方式でコーティング材料を付与する方法の一例を示す概略図である。
【図2】リバースロール方式でコーティング材料を付与した後、乾燥処理を行う方法の一例を示す概略図である。
【図3】画像印字部とコーティング材料を付与の間に乾燥処理を設けた方法の一例を示す概略図である。
【図4】インクジェット記録方式(シャトルヘッド方式)で、活性エネルギー線硬化化合物を付与する方法の一例を示す概略図である。
【図5】熱溶融性樹脂転写フィルムを用いてコーティング材料を付与する方法の一例を示す概略図である。
【図6】接着フィルムを用いてコーティング材料を付与する方法の一例を示す概略図である。
【図7】熱接着フィルムを用いてコーティング材料を付与する方法の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0238】
1 画像印字部
2 画像記録ヘッド
3 照射光源
4 キャリッジ
5 走査ガイド
6 ガイドローラ
7 搬送ローラ
8 塗布ローラ
9 移送ローラ
10 コーティング材料を含む塗布液
11 表面保護皮膜
12 乾燥ファン
13 加熱ローラ
14 加熱手段
15 熱溶融性樹脂転写フィルムロール
16 巻取ローラ
17 バックローラ
18 加圧ローラ
19 接着フィルムロール
20 カッター
21 熱接着フィルムローラ
52 コーティング材料用記録ヘッド
53 コーティング材料用照射光源
54 コーティング用キャリッジ
55 走査ガイド
F1 熱溶融性樹脂転写フィルム
F2 接着フィルム
F3 熱接着フィルム
G 画像
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも色剤と、水と、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物とを含有するインクジェット用インクを、記録ヘッドにより記録媒体に吐出して画像を記録し、該画像に活性エネルギー線を照射した後、該インクジェット用インクを吐出した該記録媒体表面にコーティング材料を付与することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記インクジェット用インクを記録ヘッドにより記録媒体に吐出し、活性エネルギー線を照射した後、前記コーティング材料を付与する前に、前記インクジェット用インクに乾燥処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記インクジェット用インクを記録ヘッドにより記録媒体に吐出し、活性エネルギー線を照射し、次いで前記コーティング材料を付与した後に、前記インクジェット用インク及びコーティング材料に乾燥処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記コーティング材料は、水蒸気透過性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記インクジェット用インクは、前記高分子化合物をインク全質量に対して、0.8質量%以上、5.0質量%以下含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記高分子化合物の親水性主鎖がポリ酢酸ビニルのケン化物であり、かつケン化度が77%以上、99%以下で、重合度が200以上、4000以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記高分子化合物の前記親水性主鎖に対する前記側鎖の変性率が、0.8モル%以上、4モル%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記コーティング材料は液状であって、前記画像が記録された記録媒体の表面に該コーティング材料を付与した後、該コーティング材料が含有する溶媒を蒸発させることにより膜状に固化して、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記コーティング材料は液状であって、前記画像が記録された記録媒体の表面に該コーティング材料を付与した後、活性エネルギー線を照射して該コーティング材料を膜状に固化して、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記コーティング材料はフィルム上に保持されていて、前記画像が記録された記録媒体の表面に該フィルムに保持されたコーティング材料を密着させることにより、コーティング材料を該フィルムから記録媒体表面に転写することにより、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記コーティング材料はフィルム状であって、前記画像が記録された記録媒体の表面にフィルム状の該コーティング材料を密着させることにより、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項12】
少なくとも色剤と、水と、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物とを含有するインクジェット用インクを、記録ヘッドにより記録媒体に吐出して画像を記録する画像記録手段と、記録した該画像に活性エネルギー線を照射して硬化する活性エネルギー線照射手段と、硬化した画像を有する該記録媒体表面にコーティング材料を付与するコーティング材料付与手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
前記インクジェット用インクを記録ヘッドにより記録媒体に吐出し、活性エネルギー線を照射した後、前記コーティング材料を付与する前に、前記インクジェット用インクを乾燥させる乾燥工程を有することを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記インクジェット用インクを記録ヘッドにより記録媒体に吐出し、活性エネルギー線を照射し、次いで前記コーティング材料を付与した後に、前記インクジェット用インク及びコーティング材料を乾燥させる乾燥工程を有することを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記コーティング材料は、水蒸気透過性を有することを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記インクジェット用インクは、前記高分子化合物をインク全質量に対して、0.8質量%以上、5.0質量%以下含有することを特徴とする請求項12〜15のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記高分子化合物の親水性主鎖がポリ酢酸ビニルのケン化物であり、かつケン化度が77%以上、99%以下で、重合度が200以上、4000以下であることを特徴とする請求項12〜16のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記高分子化合物の前記親水性主鎖に対する前記側鎖の変性率が、0.8モル%以上、4モル%以下であることを特徴とする請求項12〜17のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記コーティング材料は液状であって、前記画像が記録された記録媒体の表面に該コーティング材料を付与した後、該コーティング材料が含有する溶媒を蒸発させることにより膜状に固化して、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする請求項12〜18のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項20】
前記コーティング材料は液状であって、前記画像が記録された記録媒体の表面に該コーティング材料を付与した後、活性エネルギー線を照射して該コーティング材料を膜状に固化して、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする請求項12〜18のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項21】
前記コーティング材料はフィルム上に保持されていて、前記画像が記録された記録媒体の表面に該フィルムに保持されたコーティング材料を密着させることにより、コーティング材料を該フィルムから記録媒体表面に転写することにより、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする請求項12〜18のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項22】
前記コーティング材料はフィルム状であって、前記画像が記録された記録媒体の表面にフィルム状の該コーティング材料を密着させることにより、記録媒体上に表面保護皮膜を形成することを特徴とする請求項12〜18のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−83565(P2007−83565A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275406(P2005−275406)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】